TODAY'S CD
 

このコーナーでは、僕が通勤途上で聴いたCDを、新旧取り混ぜて、3〜5行程度で紹介します。第一印象重視でいきます。詳細は省きますが、質問が多ければ「お気に入りのCD」にアップするか、落書き帳でお答えいたします。単純な良し悪しは書けませんが、好き嫌いはなるべく書こうと思っています。異論がありましたら、バリバリ落書き帳へ!

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2010.12.31 Mavis Staples ; You Are Not Alone ; ANTI 87076-2

2010年リリース。これは素晴らしいゴスペル・アルバムです。のどを痛めたのか往年の声の張りのないメイヴィスですが、それをプラスに変えています。丁寧にじっくり歌い込んだ感じが全編によく出ています。タイトル曲の厳かなコーラス、ローバックを意識したようなギターが美しい「ルージング・ユー」でのじっくりと歌い上げる感じは、今のメイヴィスにこそできる歌ではないでしょうか。ちなみにギターはリック・ホルストロムで、いい仕事してます。何より嬉しかったのがC.C.R.の隠れた名曲「すべての人に歌を」の素晴らしいカヴァーです。原曲にほぼ忠実にやっているんですが、歌の情感がぐっと来ます。続くタイトな演奏のリトル・ミルトン・ナンバー「ウィーア・ゴナ・メイク・イット」もさすがの出来栄えです。年の最後に本当にいいアルバムに出会いました。




2010.12.30 Buddy Guy ; Living Proof ; JIVE/SILVERTONE 88697-78107-2

2010年リリース。「74才の若さ」なんて歌うバディ、元気です。歌もけっこう張りがあるし、ギターはバリバリ弾き倒してます。でも、このギター、僕は駄目です。全然色気とか艶がないんだもん。プロデュースを疑います。バディのプレイ自体が変わらなくても、、もう少しアンプのチューニングに気を使うとかできたんじゃないでしょうか。「ステイ・アラウンド・ア・リトル・ロンガー」でのB.B.キングのギターとゆったり落ち着いた歌の方がずっと魅力的に思えました。




2010.12.29 Lil' Pookie & The Zydeco Sensations ; Just Want To Be Me ; MAISON DE SOUL MDS-1092

2010年リリース。いやいや続々出てきますね。この人はオペルーサ出身の若手で、3ローを中心としたボタン・アコーディオンを奏でながら歌います。例に漏れずヌーヴォー・ザディコの影響を受け、クラブ・サウンドの香りのするコーラスワークを取り入れていますが、アコーディオン自体は伝統に基づくスタイルでけっこうしっかりしています。ややテンポの速めなダンサブルなトゥーステップが得意で、この人もクラブなどでみんなを踊らせてるんでしょうね。歌がちょっと弱いのが残念。




2010.12.28 Lucky Peterson ; You Can Always Turn Around ; DREYFUS JAZZ DRY 36967-2

2010年リリース。ウッドストックで活躍するセッションマンのラリー・キャンベルのサポートを受けて、アコースティック・サウンドを中心にしたアルバムに仕上げています。一昔前のウッドストック・サウンドを意識したようですが、楽曲は新しく、ことしギル・スコット・ヘロンが出した「アイム・ニュー・ヒア」をいち早くカヴァーしたり、トム・ウェイツやルシンダ・ウィリアムズの曲を取り上げたりしています。一方でアコースティック・ブルースにも挑戦していますが、これはどうなのかな。ラッキーにはやっぱりエレキをガツンと弾いてもらいたいです。お気に入りはゴスペル・テイスト溢れる「アイ・ウィッシュ・アイ・ニュー・ハウ・イット・ウッド・フィール・トゥ・ビ・フリー」で、ラッキーのピアノにタマラとの掛け合いも素晴らしいです。




2010.12.26 Buckwheat zydeco's Bayou Boogie ; Music For Little People ; RHINO R2 524468

2010年リリース。タイトル通り子供向けの曲をたっぷりやったもので、子供のコーラスも入っててかわいいです。でも曲は童謡ばかりでなく「ベアフッティン」「ロコ・モーション」「ウォーキン・ザ・ドッグ」「ツイスト・アンド・シャウト」といったダンス曲もあります。子供の会話とか犬の吠え声、鶏の時の声などが入ってて楽しい雰囲気。ラス前に「パーティは終わり」、そしてラストは「またあした」とちゃんとお開きにするあたりも教育的というか。このシーズンには向いた企画ものです。




2010.12.24 Kawol ; Let's Go To Bethlehem And See This Thing That Has Happened ; PLAKA FOR EARDRUM PFED121

2007年リリース。カオルはコージのサポート・ギタリストとして知ったんですが、先日偶然お会いしてCDを購入しました。このクリスマスソング集は、ギターの音の響きを最大限生かしたもので、それも、生音というわけではなく、適切なエフェクトをかけた音処理がされています。背後にエレキの音が秘かに忍ばせてあったり。その結果、透明感があるようで、どこか不安げな雰囲気が漂います。この計算されたサウンドは癖になりますね。こういうBGMで迎えるクリスマスというのは、ある意味とてもお洒落かもしれません。




2010.12.22 Step Rideau & The Zydeco Outlaws ; Like Never Before ; BRIDGE TO ENTERTAINMENT BEZ 82010

2010年リリース。イントロなどにサウンドエフェクトを多用していて、ずいぶんモダン化を図ってるなと思いますが、でも曲が始まると、基本はステップのしっかりしたアコーディオンが全面に出ているので、実にザディコらしさの強いアルバムになっています。「カモン・オーヴァー」は何か笛のような音が入っていて面白いし、ヴォーカルを野太くする音処理も上手くはまっているように思います。ワルツの後に出てくる「ドント・ストップ・ザディコ・ミュージック」、かっこいい!アコーディオンで勝負できているステップのザディコはこれからも期待しちゃいます。




2010.12.21 Wiggins & Harris ; DC Blues ; WIGGINS & HARRIS no number

盟友シーファス亡き後のウィギンズがパートナーに選んだのはコリー・ハリスでした。ここのところアフリカ音楽やレゲエに傾倒していたコリーも、今回はどっぷりとブルースをやっています。元々名手ですからオーソドックスなスタイルはお手のもの。これにウィギンズのきらびやかな生ハープが絡みつきます。でもシーファスのギターがピードモント・スタイルをベースにしているのに対し、コリーのそれはどちらかというとデルタ系でスライドも使いますから、肌合いが違います。ウィギンズのよく歌うハーモニカは少し押さえ気味になっているように思いました。その中で圧巻はハーモニカでやっちゃうブラインド・ブレイクの「CC・ピル・ブルース」で、絶妙のリズム感と正確なフレージングはさすがです。これ1曲で得した感じ。




2010.12.20 Lil Nathan & The Zydeco Big Timers ; Deceived Degraded But Not Destroyed ; CHA CHA no number

2010年リリース。3ローのボタンアコを中心にしたサウンドに、ドスの効いたヴォーカルといったいつものスタンスは変わりません。ヴォイス・エフェクトをかけたり今風のコーラスを取り入れたりしていますが、リズムは今回はそれほど重たい感じは受けませんでした。少しゆったり目のテンポのトゥーステップが目立ち、「カム・バック・トゥ・ミー」なんて洒落た語りのイントロからスタートする曲が多く、打ち込みも使っていますが、実際のライヴでもこういうのをSEで流すんでしょうか。もしそうならクラブ的なサウンドを意識してるってことなんでしょうね。




2010.12.17 Mark Pentone & Smoky Greenwell ; We Earned The Right To Sing The Blues ; SMOKY GREENWELL no number

2010年リリース。グリーンウェルはインストものが多いハーピストですが、今回はマーク・ペントーネと組んで歌ものブルースに取り組んでいます。「ベトウィーン・ザ・イラク・アンド・ア・ハード・プレイス」なんて社会性のあるオリジナルの他、「セント・ジェイムズ病院」「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」「カモン・イン・マイ・キッチン」などブルースの有名どころも取り上げています。でも本質的にはフォーク系でしょうか。ペントーネの歌は渋みがあり、なかなか味です。グリーンウェルはいつもよりおとなしいかな。




2010.12.16 Leon Chavis & The Zydeco Flames ; Zydeco Soulchild ; LEON CHAVIS no number

2010年リリース。レオンのザディコは新世代と言っていいのですが、タイトなビートやコーラスワークといった新しい要素と、ボタンアコの伝統的なプレイスタイルとを極めてバランス良くミックスしていると思います。またメロディワークが上手く、リフや曲がキャッチーで覚えやすいんです。「クレイジー」のリフなどありそうでなかったものですし。スモーキー・ロビンソンとミラクルズの「ウー・ベイビー・ベイビー」を小気味よいテンポのザディコにするセンスなど抜群だと思います。たくみにキーボードを絡ませるなど、アルバムの音作りもしっかりしており、トゥーステップもこの位モダン化してくれば若者の支持も得られると思います。ザディコではことしの一押しです。




2010.12.15 Albert King with Stevie Ray Vaughan ; In Session... ; STAX 0888072318397

1983年のセッションに映像が付いたものです。スティーヴィーと言えば、無名時代にディヴィッド・ボウイの「レッツ・ダンス」でアルバートそっくりのギターを弾いたというのがあって、まあ師弟対決っていう感じですね。冒頭の「ストーミー・マンディ」では貫禄の差を感じさせますが、続く「プライド・アンド・ジョイ」ではスティーヴぃーもガツンといっていて、それに絡もうとするアルバートが面白いです。時折スティーヴィーがアルバートにつられた感じになってるのが微笑ましいですね。曲はアルバートのナンバーがメインですから、主役はやっぱりそちらってことで。でもスティーヴィーのプレイには好感が持てました。




2010.12.14 Squeezebox Boogaloo ; Map To Your Heart ; MAMBITO MR004

2010年リリース。白人たちが主体のバンドですが、サウンドはどちらかというとザディコです。全体にポップさがあり軽めで聴きやすいですね。「ディギ・リギ・ロー」なんて古い歌も取り上げていたり、「ミスティカル・ナイト」のようなクレズマーの香りがする曲もやってます。「シャローム・サラーム」という歌をやっているところからすると、ユダヤ系の人たちなのかもしれません。いろいろな音楽の要素が混じり合っているようで、つかみどころがないんですが、けっこう楽しめました。




2010.12.13 v.a. ; Treme - Music From The HBO Original Series, Season 1 ; GEFFEN B0014910-02

2010年リリース。トレメ地区はニューオーリンズのディープなエリアで、多数のミュージシャンを輩出した地域。一方でカトリーナの被害を強く受けたと聞いています。そんなトレメに縁のあるミュージシャンたちの多分ライヴ・イヴェントの模様です。ジョン・ブッテがそのものズバリの「トレメ・ソング」を歌い、リバース・ブラスバンドやトレメ・ブラスバンドがワイルドにかまします。カーミット・ラフィンが歌い、トロンボーン・ショーティとジェイムズ・アンドリュースが「ウー・プー・パー・ドゥー」で場を盛り上げます。ドクター・ジョン、ポール・サンチェスからルイス・プリマ、アーマ・トーマスまで、この街を愛するものが集って歌います。ハイライトはマルディ・グラ・インディアンによる「インディアン・レッド」ですね。この街の音楽を生み出すパワーは不滅だと思いました。




2010.12. 9 Neville Brothers ; Authorized Bootleg / Warfield Theatre, San Francisco, CA. Faburuary 27, 1989 ; HIP-O / A&M B0014682-02

アルバム「Yellow Moon」発売前の、ある意味最も油の乗っていた時期のライヴ2枚組です。その新作からは表題曲の他「マイ・ブラッド」「ヴードゥー」「ウェイク・アップ」「シスター・ローザ」と5曲取り上げており、すでにライヴの定番として位置づいていた曲がアルバム化された事情を見て取ることができます。ギターはブライアン・ストルツ。例によってリズムの洪水のようなライヴで、時折「テル・イット・ライク・イット・イズ」のような清涼剤が置かれる他は、グルーヴ溢れる演奏が繰り返されています。また終盤のロックンロール・メドレーの構成は昨年の来日時のものとほぼ同じで、20年の時を経てもライヴに向かう姿勢が同じであることも分かります。とにかく臨場感たっぷりの素晴らしいライヴです。




2010.12. 2 Cedric Watson et Bijou Creole ; Creole Moon ; VALCOUR VAL-CD-0014

2010年リリースのライヴ盤です。スタジオ盤よりタイトなリズム隊をバックに、ライヴならではの勢いのあるトゥーステップからスタート。臨場感のある録音で、セドリックの熱さが良く伝わってきます。途中フィドルに持ち替えながら、ジョン・デラフォース、クリス・マギーからクりフトン・シェニエやボー・ジュックまで、ザディコやケイジャンの先達の曲をドライヴ感豊かに演奏していきます。クレオール・フレンチで歌われるワルツは特に独特の味わいがあって、セドリックの立ち位置をよく表しています。若手でありながら、伝統を大切にするこういうミュージシャンが一方にいることにより、ヌーヴォー・ザディコも花開くのかななんて勝手に思ってしまいました。好盤です。




2010.12. 1 Spencer Bohren ; The Blues According To Hank Williams ; VALVE #2987

2010年リリース。タイトル通りハンク・ウィリアムズのカヴァー集になっています。歌もハンクを意識してかいつもに比べカントリー風になってます。マンドリンやスライドが入り、いつも通りとっても丁寧な音作りで、味わい深いものはあるんですが、いつになく後ろ向きな印象を受けるのは、ハンクの音楽から先を見る意識が見えてこないからでしょうか。ノスタルジーを大切にするのもいいとは思いますが、そこから新しい何かが見えるような音楽が僕は好きです。




2010.11.29 Leroy Thomas ; Jewel Of The Bayou ; MAISON DE SOUL MDS-1089

2010年リリース。主にダイアトニックのボタン・アコーディオンを使った、トゥーステップ中心のサウンドで、ベースをどっしり効かせたサウンドが心地良いです。歌はそんなに印象に残りませんが、ザディコの王道を行くサウンドは聴いていて安心できますね。サム・クックの「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥー・ミー」を取り上げたり、レオ・トーマスが歌う「カム・バック」なんてソウルフルな曲も入っていて、けっこう変化に富んでいます。洒落たミックスの「タクシー・テイク・ミー・トゥ・ザ・トレイルライド」、ザディコ版「プロミスト・ランド」など、ダンサブルでいい感じです。




2010.11.26 Jambalaya Brass Band ; It's A Tungle Out There ; 890 WEST MUSIC

2010年リリース。このバンドはどちらかというとファンク寄りのサウンドを目指しているようです。「ザ・ビースト」と「P.F. フライヤー」ではカーク・ジョゼフがゲストで参加。面白かったのは「ジャンバラヤ・ガット・ファイア」で、みんなでテーマをコーラスしてる楽しい曲。伝統に乗っ取った「マルディ・グラ・イン・ニューオーリンズ」なんて定番曲もちょこっとジャジーな味付けをして個性を出そうとしています。




2010.11.24 Guitar Slim Jr. ; Brought Up The Hardway ; GUITAR SLIM JR no number

2010年リリース。いきなりクラーレンス・カーターとオーティス・レディングを接ぎ木したような曲からスタート。タイトル曲もオールドスタイルなソウル・ナンバーで、チタリン・サーキットの香りがたっぷりです。父親に比べギターはおとなしく、あんまりジュニアって感じじゃないですね。録音もチープですし、やっぱり親の名前に頼っているのかなぁ。歌はそんな悪くないし、ギターも弾けているんで、いいプロデューサが付いたらもう少し面白くなりそうなもんなんですが。




2010.11.22 Dumpsta Phunk ; Everybody Want Sam ; DUMPSTAPHUNK no number

2010年リリース。これはもう掛け値なしにかっこいいです!ネヴィルズの次世代バンドって感じで、アイヴァンにイアンが参加、強烈なファンクビートに、素晴らしいヴォーカルが乗ってきます。メインヴォーカルはアイヴァンかな。コーラスも強力で、続々繰り出される低重心のファンク・ナンバーの数々はどれもどれもかっこいいこと。ことし聴いたニューオーリンズものでは最もインパクトの強いアルバムになりました。「スタンディン・イン・ユア・スタッフ」はなんとジガブーの曲で、これがまたいかしてるんです。こういうの大好き!




2010.11.19 Joe Krown, Russell Batiste Jr., Walter 'Wolfman' Washington ; Triple Threat ; JOEKROWN JRK 1004

2010年リリース。このトリオでの2作目になりますが、相変わらずいいですね。モダンなコード・プログレッションで、ちょっと間違うとフュージョンになっちゃうんですが、そこはニューオーリンズの強者達で、フォンクなリズムでぐっと引き戻します。「ライディン・トゥルー・ザ・マウンテンズ」の大きなノリの気持ちいいこと!タイトル曲もクラウンらしい曲でいかしてます。で、続く「トウェルヴ」がこれまたかっこいいです。ちょっとひなびた味のあるワシントンの歌も魅力たっぷりで、一気に聴き通してしまいました!こりゃいいです!




2010.11.17 Kenny Wayne Shepherd ; Live! In Chicago ; ROADRUNNER 1686-177422

2010年リリース。ゲストにヒューバート・サムリン、ブライアン・リー、ビッグアイズ・スミスを迎えたライヴです。もちろんケニーは冒頭はギュルンギュルンのギターを引っ提げて登場、スティヴィー・レイ・ヴォーンの正当な後継者のひとりって感じでゴリゴリやるんですが、「デジャ・ヴードゥー」あたりから雰囲気が変わります。以降はかなりオーソドックスにブルースやってますが、この辺りからゲストが入ってくるわけですね。ビッグ・アイズのハーモニカがケニーにマッチしてるかって言うと、ちょっと疑問ではあるんですが。その後ゆったりした「シック・アンド・タイアード」を経て、「トランプ」スタイルの「フィード・ミー」でヒューバート登場。歌はちょっと厳しいけど、ギターは一発で分かるサウンドです。その後も「キリング・フロア」風のリフの曲が出てきたりで、ゲストを立てようという姿勢がはっきり。まあちょっと無理矢理感のあるコラボでしたが。




2010.11.15 Kermit Ruffins ; Happy Talk ; BASIN STREET BSR 0111-2

2010年リリース。毎作質の高いアルバムを作るカーミットですが、このアルバムも期待を裏切りません。オールド・ジャズからスタートすると、モダンなジャズ・サウンドに乗って味のあるヴォーカルを披露するかと思えば、フォンクネス溢れる「エイント・ザット・グッド・ニュース」やらシャッフルで決める「アイ・ガット・ア・トレメ・ウーマン」と、全体としてはジャズ・テイストが強めになっています。ラストのペットが暴れるブルース「ニュー・オーリンズ」は、カーミットが思いのたけを詰め込んでいるように聞こえました。カーミットに外れなし!




2010.11.12 Aaron neville ; I Know I've Been Changed ; TELL IT 5099960651020

2010年リリースのアーロンのゴスペル・アルバムです。ピアノにアラン・トゥーサンを迎え、しっかりしたバンドサウンドをバックに、丁寧に歌います。「アイ・ダーン・メイド・アップ・マイ・マインド」のアコースティックな雰囲気は、どこかジョン・ブッテに繋がるものも感じます。アカペラから入る「オー・フリーダム」の美しさはアーロンの真骨頂。ラストの「テアズ・ア・ゴッド・サムホウェア」のピアノの素晴らしさも聴きものです。




2010.11.10 Tonny Joe White ; The Shine ; SWAMP 8572202

2010年リリース。いつも通りドロ〜ンとしたギターサウンドに、ぼそぼそっとしたヴォーカルを乗せてやっています。最初聴いているとあんまり感じないんですが、しばらくしてくると身体がゆったり揺れてきます。この人にはそういう独特のグルーヴがあるんです。派手な感じは全くないんですが、存在感があり、他の誰にも代え難い音楽を作るこうした人には、長く続けてもらいたいものです。「ストレンジ・ナイト」はけっこう勢いのあるバックなんですが、それにこのぼそっとした歌が、妙にはまるんですよね。「シーズン・ムーン」「ロール・トレイン・ロール」のアコースティックなサウンドが気に入りました。




2010.11. 8 Koray Broussard & The Zydeco Unit ; Trapped ; MTE 5092

2010年リリース。この人もヌーヴォー・ザディコのひとりといっていいと思いますが、3ローのアコーディオンから繰り出されるダンサブルなサウンドは、それほど奇をてらったものではなく、まっすぐなトゥーステップが主です。ヴォーカルこそ最近のブラック・シーンから影響を受けていますが、オルガンなどを加えたサウンドは少し厚みが増していますけど、芯にあるのはルイジアナ原産のリズムです。クリス・アルドワンのような大胆な冒険はできないと言ったところでしょうか。




2010.11. 4 Alabama Slim ; Blue & Lonesome ; MUSIC MAKER no number

多分2010年のリリースで、録音は2006〜2007のようです。アラバマ・スリムはジョン・リー・フッカー系の歌が魅力のブルースマンで、この作品はエレキ弾き語りに、メンバー知れずのバックが入ったもの。どこかのスタジオか部屋かなんかで、さっと録って焼いたって感じです。歌のディープな感じは仲々なんですが、もうちょっとチャント音を作った方がいいものになりそうなんですけどね。しかしアメリカのローカル・シーンにはどんだけ人材が隠れてるんでしょうね。




2010.11. 2 Duke Robillard ; Passport To The Blues ; DIXIEFROG DFGCD 8694

2010年リリース。白人ブルースギタリストとしては最高峰のひとりと言っていいデュークの新譜です。トム・ウェイツの「メイク・イット・レイン」を除くとすべてオリジナルという意欲作で、ダウンホームからジャジーなものまで、いろんなタイプのブルースをやっています。でもこの人は割とジャジーなスタイルが似合うと思います。そういう意味では「フェイタル・ハート・アタック」や「ホウェン・ユーア・オールド・ユーア・コールド」等がしっくり来ました。ただ、この人のヴォーカルは僕は苦手です。なんかわざとらしい。別にヴォーカル入れたらいいんじゃないかななんて余計なお世話を感じちゃいました。




2010.10.31 The 44s ; Boogie disease ; T'S MUSIC TS 1004

2010年リリース。ウォーでも活躍していた仲村テツが参加しているバンドのアルバムです。キッド・ラモスのギターとテツのハーモニカの歪み具合が絶妙で、西海岸直送のロッキン・ブルース・アルバムに仕上がっています。ヴォーカルはギタリストのジョニー・メインで、なかなかディープ。インストナンバーの「ブロウィン・ファイク・ヘル」でのテツの伸びやかなプレイが白眉でしょう。




2010.10.27 やぎたこ ; Can't You Hear The Steel Rails Hummin' ; RAILWAY YTM-101

2010年リリース。やなぎと辻井貴子の、古いアメリカン・フォークを歌うデュオの初アルバムです。ウッディ・ガスリー、ボブ・ディランからフォスターの曲まで、主に2本のギターとふたりのコーラスで綴っています。歌もギターも丁寧で、歌を大切にしている様子がよく分かります。どちらかというとゆったりした曲より「ドレミ」のようなアップテンポの方が僕は気に入りました。全体に肩にちょっと力が入った感じで、歌を楽しむところに届いていない気がします。その辺の壁を越えたらぐっと良くなるかな。後は英語で歌うアメリカンソングであるならば、アメリカ英語の発音はもっと意識した方がいいと思いました。それが「硬さ」を感じさせるひとつの原因でもあると思うので。




2010.10.25 Junior Wells & The Aces ; Live In Boston 1966 ; DELMARK DE 809

ライヴの様子を回しっぱなしのテープで収めたものをCD化したようです。ですから音質はよくありませんが、途中のノーカットと思われるトークも含め、どんな風にライヴが展開されたかがよく分かります。バンドはもちろんディヴとルイスのマイヤーズ兄弟にフレッド・ビロウ。自分のオリジナルよりもシカゴ・ブルースの有名局を矢継ぎ早に出していくライヴのスタイルは、おそらく聴衆の多くが白人だったからではないでしょうか。そんな中で、乗りのいい「ジュニアズ・フープ」、ルイス・マイヤーズの腕の見せどころの「ハイダウェイ」など、ライヴならではの曲もあります。で、こうして聴くとフレッド・ビロウって、実はあんまりブルース向きの太鼓じゃないのかなって思っちゃいました。




2010.10.22 Eric Lindell ; Betoween Motion And Rest ; SPARCO NO.002

2010年リリースのミニアルバムです。前作のALLIGATOR盤に比べると、ポップさが薄れてぐっと黒っぽくなった気がします。でも彼の味の良さは十分出ていて、ブラスが絡んだサウンドの荒削りな艶が旨味たっぷりに広がります。インプレッションズのバラードに、マジック・サムの「ザッツ・ホワイ・アイム・クライング」なんて渋いマイナー・ブルースを交えていますが、楽曲の多様性はこの人ならでは。素晴らしい創造性を持ったエリックの今後にますます期待しちゃいます。




2010.10.20 James Cotton ; Giant ; ALLIGATOR ALCD4940

2010年リリース。歌えなくなってからもコットンは精力的です。スラム・アレンをヴォーカルに据えたバンドでの本作でも、一音聴けばコットンと分かるハーモニカは存在感抜群。マディ・ナンバーにオリジナルをかませていますが、ファンキーな「チェンジ」がかっこいいです。シャッフルやスローよりこういった曲の方が歌も合ってると思うんですが。ラストに亡くなったココ・テイラーに捧げるブルースが入っていますが、ここでのコットンのプレイは気合い十分で、盟友に対する深い愛情を感じました。




2010.10.18 The Robert Cray Band ; Cookin' In Mobile ; VANGUARD 78073-2

2010年リリース。おそらく最近のライヴで、ボーナスにDVDがついています。最近のロバート・クレイ・バンドはメンバーが90年代から一緒にやっているジム・ピューのキーボードに、旧友のリチャード・カズンズのベースが戻って、とても安定したなって印象があります。このライヴもそうで、落ち着いたバックの演奏に乗って、ロバート・クレイが伸びやかに歌い、ギターを奏でています。そのサウンドは唯一無二で、ワンパターンとも言えるんですが、そこにクレイの魅力が詰まっているわけですから、僕はこの姿勢でいいと思うんです。古い「ライト・ネクスト・ドア」から新しい「チキン・イン・マイ・キッチン」と繋がるところでも全く違和感がない、この変わらないクレイが僕は好きですね。丁寧に作られたいいライヴ盤だと思います。




2010.10.14 Kenny Neal ; Hooked On Your Love ; BLIND PIG BPCD 5137

2010年リリース。タイトル曲から落ち着いたケニーの歌とギターが冴えます。ALLIGATOR時代に比べてぐっと渋みを増したなって思いました。リトル・ミルトン、ボビー・ブランドといったブルーズン・ソウルな人の歌も上手く消化して歌っていますし。でも何より魅力的なのは、やっぱりルイジアナに根差した「ダウン・イン・ザ・スワンプ」や「ヴードゥー・ママ」といった曲でしょうか。歌の跳ね具合が心地良く、ケニーらしさが前に出ていて思わず体が揺れてきます。後は欲を言えばサウンドメイキングですか。特にブラスの音がちょっとチープに思えました。




2010.10.12 Carolina Chocolate Drops ; Genuine Negro Jig ; NONESUCH 7559-79839-8

2010年リリース。以前ミシシッピ・シークスのトリビュートで聴いて面白かったので、単独盤を聴いてみました。まず思ったことは、こうした古いスタイルを今やろうという黒人ミュージシャンはほとんどなくて、むしろ60年代から白人のフォーク畑の方が多かったわけで、いよいよ時代が変わってきたのかなと思います。つまり自分たちの生活に根付いた伝統の継承、あるいは生活に根付くゆえの拒絶ではなく、過去を振り返ってその音楽の面白さを再現していこうって姿勢を感じるんです。つまりかなりインテレクチャルなものがそこにあるように思います。このユニットはよく研究し、テクニックを磨き、その面白さを現代から未来に伝えようとする姿勢を感じました。だから古くささを感じないんです。楽曲もジグ・スタイルばかりでなく、リル・グリーンの「ホワイ・ドンチュー・ドゥー・ライト」をアンニュイにやってたりしますし。そして続く「キャンディ・ギャル」では素晴らしいバンジョーを聴くことができたり。注目したいユニットです。




2010.10. 8 Joe Louis Walker ; On The Legendary Rhythm & Blues Cruise ; DIXIEFROG DFGCD 8695

2010年リリースのライヴ盤ですが、参加ミュージシャンが豪華です。オルガンにマイク・フィニガン、ピアノはミッチ・ウッド、ハーモニカにはケニー・ニールの名前も見えます。でもすごいのはギターで、ジョニー・ウィンターにデューク・ロビラート、タブ・ベノア、ニック・モス、カーク・フレッチャーにパリス・スリムとまあそうそうたるメンバーが入れ替わり立ち代わり登場してます。まずは「エイント・ザット・コールド」のジョニー・ウィンターですね。ちょっとフェイズをかけたスライドがギュインギュインで、この存在感は唯一無二。続く「ユー・ゴナ・メイク・ミー・クライ」では、マイク・フィニガンの素晴らしい歌を聴くことができます。「ボーン・イン・シカゴ」ではジェイソン・リッチのハープが炸裂、ラストの「747」はタブ・ベノアも参加。とにかく全編豪華絢爛ですが、その中でジョーの存在がきちんと前に出ています。煮え切らないスタジオ作が多かった中で、これは当たりだと思います。




2010.10. 6 Russell Batiste & Friends ; Follow Your Dreams ; RUFF PUP no number

2010年リリース。日本人をふたり含むバンド編成で、セカンドラインからファンクから取り混ぜながら、パーティノリでやってる感じです。バティステのドラムは以前に比べるとずいぶん柔らかく懐が深くなったように思います。ただ、ちょっと油断するとフュージョンぽくなっちゃうのが僕には今ひとつでしたね。歌ものもあり、リード・ヴォーカルはジェイスン・ネヴィルとのこと。あの一家なのかな。後半にドラムの音をわざとチープに録ったようなものもあって、不思議な感じを受けました。




2010.10. 4 近藤房之助 ; 1968 ; ZAIN ZACL-9044

2010年リリース。房之助ソロデビュー20周年記念ということで、ブルースの名曲のカヴァー集です。ジャケットにリゾネイタをつま弾く姿が写っていましたから、弾き語り中心かなと思いましたが、バンド演奏が多くて救われました。ただしドラムが打ち込みのようで、その分グルーヴ感が失われているのが残念。特に「リトル・バイ・リトル」のアレンジは成功してるとは思えないなぁ。ゲストのKOTEZは随所で素晴らしいプレイをしていますし、房之助自身のギターも歌も気が入っていて悪くないので、いいリズム隊をバックに録ったらもっと面白くなったと思うんですが。リゾネイタを弾くドロンとした感じの曲も、いつもと違う味で楽しめました。




2010.10. 1 Lance Lopez ; Salvation From Sundown ; MIG 20022 CD+DVD

2010年リリース。フライングVを操るブルースマンで、名前からするとヒスパニックなのかな。けっこう正統派のギター・フレーズを、ちょっと歪みをかませたギターで弾いています。時折スティーヴィー・レイヴォーンの影が見えるようにも思いました。歌はちょっとドラ声で大仰ですが、一所懸命歌ってるので悪くないです。「エル・パソ・シュガー」なんて曲からすると、テキサス系でちょっとZZトップが入ってるかなと思ったら、まんま「ラ・グランジ」やってました。ロバート・ジョンソンの「ストーンズ・イン・マイ・パスウェイ」をゆったりとしたスローに仕立ててますが、この辺はやっぱりロック畑の人かなって思いました。




2010. 9.30 Lucky Peterson ; Heart Of Pain ; JSP 8824

2010年リリース。これは実に全うなブルース・アルバムです。時折意識的と思われるアルバート・キング節を交えながら、シャッフル、スローともに久々に伸びやかにギターを弾いています。ジェイムズ・エリスやお約束の奥方タマラの歌をフィーチュアした曲もあり、特にタマラとのデュオ「ヒーズ・ジ・アンサー」はなかなか素敵なソウル・ナンバーになってます。また、「ラッキーズ88」では見事なピアノも披露。で、こうやって聴いていくと、実にJSPらしいんですよね。音楽的には全然冒険できていないんです。ラッキーはもっと未来を見たブルースをやって欲しいので、こうしたやや後ろ向きなものは残念な気もします。演奏のグレードが高いのでなおさらそう思っちゃうんです。




2010. 9.27 Blindside Blues Band ; Raised On Rock ; GROOVEYARD GYR065

2010年リリース。バンド名に騙されましたが、アルバムタイトルの方が正しいですね。ギブソンにマーシャルといった黄金の組み合わせによるディストーションたっぷりのギターサウンドの上に、何ともこなれない大仰な歌が乗ってます。「チャイルド・オヴ・ザ・サン」などを聴けば、確かに根っこにブルースがいることは分かるんですけど、それを言ったら大概のロックの根っこにブルースがいますから。う〜ん、息子に聴かせたらなんと言うかなぁ。僕には面白くないアルバムでした。




2010. 9.24 Alabama Mike ; Tailor Made Blues ; P-VINE PCD-24261

2010年リリースです。この人、歌はハイトーンでテッド・テイラーを思い出させます。楽曲は70年代のブルーズン・ソウルをよく消化して現代に蘇らせたっていう趣で、その辺のサウンドの好きな人にはたまらないでしょう。そんな中にすっと力を抜いたアコースティックな「アイム・ゴーン」をさりげなく挟んであるあたりが、現代的といえるアルバム作りですね。続く佳作「イナフ・トゥ・キープ・ミー・ホールディン・オン」とのコントラストが出ててよりインパクトを強めてます。サニーボーイ〜ジュニア・ウェウズの「フー・ドゥー・マン」はどろりとしたバックの上を高い声でけっこう歌いきっちゃってるのがユニーク。まあところどころまだ歌のこなれていない部分が耳につきますが、これからどんどん良くなるんじゃないでしょうか。




2010. 9.21 John Meneth ; Name The Day! ; BLIND PIG BPCD 5134

2010年リリース。メネスは若手の白人ヴォーカリストでハーモニカも達者です。ブルースもやってますが、どちらかというとソウル・ナンバーの方が魅力的かな。歌がまだまだ軽くて、深みに欠けますが、溌剌と歌うのには好感が持てます。また、ソロモン・バークの「ホーム・イン・ユア・ハート」以外をオリジナルで固めていて、意欲的ですね。曲としては「セイヴ・ア・リトル・ラヴ」がけっこう気に入りました。スローの「ホワイ・ノット・ミー」も未消化な部分は感じますが丁寧な歌い方で好感が持てます。




2010. 9.16 Andy J. Forest ; Notown Story: The Triumph Of Turmoil ; ANDY J FOREST no number

ニューオーリンズのハーピスト、アンディの新譜です。全曲オリジナルで、ラウドに録音されたドラムの響きをバックに、ややざらっとした感じの音作りで、臨場感を感じさせます。ジャンルはブルースに限らず、「ユー・ガッタ・ペイ」では複音ハーモニカのような音でレゲエやってますし、「プア・ユー」ではファンキーなバックにサード・ポジションを合わせていて、ちょっとユニークなサウンドになっています。もちろんブルースはなかなかの出来で、ラストのインスト・シャッフル「ハープビンガー」はマジック・ディックの「ワーマー・ジャマー」に近い楽曲ですが、ひと味いなたさがあってその味わいの違いを比べるのも面白いかも。




2010. 9.13 Mitch Kashmar & The Pontiax ; 100 Miles To Go ; DELTA GROOVE DGPCD140

2010年リリースですがボーナストラック以外は1988年録音ようです。。オリジナルを主体としたブルース・アルバムです。タイトル曲のテキサス・マナーのシャープな演奏がまず耳を引きました。アンプリファイドなハーモニカも、奇をてらうようなテクニックはないですが、深い音作りで心地良いです。特に「ホーン・オヴ・プレンティ」ではウィリアム・クラークとのダブル・ハープを聴くことができますが、この楽器の持つ魅力を見事に引き出した名演だと思います。ボーナス・トラックの「ザ・ペトロリアム・ブルース」ではセカンドラインに乗った作りですが、ひょっとしたら原油流出事故を歌ってるのかもしれませんね。




2010. 9. 9 Robert Randlph & The Family Band ; We Walk The Road ; WARNER BROS 9362-49855-8

2010年リリース。イントロダクションのように古いスピリチュアルを入れた後に、そのモダンなカヴァーをやるといったユニークなスタイルで、コンセプト・アルバムに仕立てています。「トラヴェリン・シューズ」の斬新なコーラスワークとか、ロックなボブ・ディランの「ショット・オヴ・ラヴ」とか、全方向を向いたようなスタイルで、さすがメジャーって感じですか。ブラインド・ウィリー・ジョンスンの「イフ・アイ・八ド・ウェイ」のちょっとカントリー・タッチを取り入れたアレンジなど、センスの良さを感じます。取り上げている楽曲はジョン・レノンからプリンスに及び、守備範囲も広いです。全体にきちんと練り上げた楽曲が多く、弾きまくりのランドルフを期待するとちょっとおとなしめですが、完成度は高いです。欲を言えば、セイクリッド・スティールらしい思いっ切り高揚感のあるゴスペルで締めくくってくれたら嬉しかったですが。




2010. 9. 6 Wardell Quezergue ; After The Math ; JAZZ FOUNDATION OF AMERICA no number

2010年リリース。ニューオーリンズ、いやアメリカのブラックミュージックきってのアレンジャー、ワーデルが仕掛けたアルバムは今回はジャズアルバム。でもドラムはフォンキーなハーマン・アーネスト等を使い、ボトムのどっしりした演奏が続きます。セカンドラインの香りたっぷりなワーデル作の曲の数々は、この人のたぐいまれなる才能を存分に知らしめてます。例えば「CJ」という曲の楽しさは、ニューオーリンズ音楽を知り抜いたものでなければなかなか出せないでしょうね。ドクター・ジョンも参加していて、素敵なライナーを書いています。様々なジャンルの音楽のガンボがニューオーリンズ・ミュージックの真髄だということを見事に表したアルバムだと思います。




2010. 9. 3 Hosea Hargrove ; Texas Golden Nugget ; DIALTONDE / P-VINE PCD-25120

2010年リリース。DIALTONEはこうして次々ローカルミュージシャンで臭みのあふれる人を発掘してきます。「トランプ」風の自己紹介歌からスタートすると、ドロドロ、ザラザラのサウンドが続きます。軽快な「ラヴ・マイ・ライフ」、ディープな「44・イン・マイ・ハンド」、いなたい「モジョ・ワーキン」、すっとこどっこいなリズムの「ブーガルー」と、まあいろんなスタイルをやりますけど、ちょっとでれっとしててライトニンからの影響を感じるヴォーカルと、洗練とは対極を行くダーティでリアルなギターの存在感は抜群です。ローカルシーンでライヴ見たら面白いでしょうね。




2010. 9. 1 鬼頭つぐる ; Tsuguroots 〜I Have Done It By Myself ; KITOH TSUGURU no number

2010年リリース。アカペラの「ベンツが欲しい」でスタートするつぐるちゃんの新譜はカバー集です。普段のライヴでもよく歌うジャジーでスウィンギーな「アイル・シー・ユー・イン・マイ・ドリームズ」や「ジー・ベイビー」、「ジャスト・ア・ジゴロ」に、トロピカルな「小さな竹の橋の上で」、それにビートルズやディランを弾き語ります。確かなギターの技術と、ちょっとハスキーでエモーションを感じさせるヴォーカルという彼の魅力が上手く捉えられていますね。ラストはセルフ・カヴァーの「川を越えて行こうよ」、よりライヴに近いスタイルで、目をつぶると目の前で歌う姿が思い出されます。




2010. 8.30 Pinetop Perkins & Willie 'Big Eyes' Smith ; Joined At The Hip ; TELARC TEL-31850-02

2010年リリース。パイントップ御歳97才とは思えない元気さです。歌はもっぱらビッグ・アイズで、本作ではドラムは息子に任せてハーモニカをプレイしています。40年来の付き合いのある二人ですから、呼吸はバッチリ。いぶし銀のプレイが超ベテランならではの味わいになっています。でもその中でも感動的なのがスローブルース仕立てにしたゴスペル・ナンバー「テイク・マイ・ハンド・プレシャス・ロード」で、これはもはやパイントップにしか歌えない世界。この1曲には本当に感動しました。




2010. 8.25 Big Daddy 'O' ; Used Blues ; RABADASH RAB-033

2010年リリース。ジャケットでビッグ・ダディがレスポール持ってるのにびっくりしましたが、このアルバムではエレキをプレイしています。もちろんアコースティックの曲もあるんですが、エレキ、予想通り上手いです。でもそこに彼の魅力があるのかっていうとまた別の問題かな。ジャジーなアレンジの「ジョニー・B.グッド」なんてのもやってますけど、いまひとつぴんと来なかったですね。楽曲としてはラストの「トゥー・トール・トゥ・マンボ」は歌い回しも含めて愉快で楽しかったです。。




2010. 8.23 Cyndi Lauper ; Memphis Blues ; MERCER STREET DWT70166

2010年リリース。シンディのブルース・アルバムっていうので聴いてみました。彼女は歌に対して真摯な姿勢で向かっている印象があったので、どうかなと思いましたが、フルソンの「シャッタード・ドリームズ」の思ったより素直な解釈を聴いて、期待通りだなと思いました。ゲストにチャーリー・マッセルホワイト、アラン・トゥーサン、B.B.キングが参加。特にB.B.とやるルイ・ジョーダンの「アーリー・イン・ザ・モーニン」の力の抜け方がすごく心地良かったです。一方「ローリン・アンド・タンブリン」ではアン・ピーブルズと共演してますが、この場面にアンが出てくるとその真っ黒具合が余計目立ちますね。ジョニー・ラングが2曲弾いてますが、「クロスロード」はいまいちでした。




2010. 8.20 有山岸 ; そろそろおこか 〜Careless Love〜 ; BOUNDEE DDCB-14012

2010年リリース。有山じゅんじとニューオーリンズな山岸潤史がアコースティック・ギターでコラボすると、こんなのになるんですね。有山の軽い歌声がなかなか味わいがあって、二人の確かなギターと上手く絡み合っていい感じ。軽快な「ヤング・ボーイ・ブルース」もいいノリですね。でも歌は有山さんに任せきった方が良かったかも。途中2曲ベースで細野晴臣も参加してます。「ジャマイカ・ソング」なんて美しいですし、「上を向いて歩こう」のインスト・ヴァージョンもさすがの出来栄え。いわゆる超絶テクニックをひけらかすのではない、でもべらぼうに上手いこの二人のコラボはやっぱり面白かったです。




2010. 8.18 Jonny Lang ; Live At The Ryman ; CONCORD 0888072320079

2008年ナッシュヴィルでのライヴです。天才ブルース少年のような売り出し方で登場したジョニーもこのライヴの時点で27才。ブルースを根っこに置きながらも立派なロック・ミュージシャンに成長しています。でもそのブルースから離れることにより、この人の「売り」もまた見えづらくなるわけで、妙にエモーショナル風なヴォーカルとギターだけで押していけないんじゃないでしょうか。そういう意味でマイナー中心の楽曲がどうもワンパターンで、ちょっといかした曲だと思うと例えばプリンスの「アイ・アム」だったりします。そういう意味ではアコースティックな「ブレイキン・ミー」などは気に入りました。




2010. 8.16 Truckstop Honeymoon ; Homemade haircut ; SQUIRREL 1055

2010年リリース。カントリー、ブルーグラス、ウエスタン・スウィングにジャズの要素を取り込んだサウンドはいつ聴いてもほっとさせるものがあります。隙間感がたっぷりあるリズムが心地良くって、ついついはまってしまいますね。「チャイルドフッド・メモリーズ」なんてブルーグラスな曲を聴くと、高い演奏力をバックに、何とも身近な感じのヴォーカルがいい感じ。ロッキンな「バーゲン・ハンティング」も楽しい曲。マンドリンが美しい「ロマンティック・カンヴァセイションズ」にも癒されました。




2010. 8.12 Magic Slim & The Teardrops ; Raising The Bar ; BLIND PIG BPCD 5136

2010年リリース。いきなりファンキーなアレンジの「パートタイム・ラヴ」でスタート、ちょっと意外でしたが、2曲目からは元に戻ります。ボトムリフを中心としたサウンド作りは相変わらずですが、「ブレイキング・アップ・サムバディズ・ホーム」をこれだけいなたくやるのもこの人ならではかな。まあアイすべきワンパターンですね。「4:59 A.M.」のようなリズムの曲がもっとあってもいい気はしますけれど。でもあの粘り気の強いギターとややしゃがれた歌声を聴くとなぜかほっとしちゃうってのはあります。




2010. 8. 9 Shamarr Allen & Paul Sanchez ; Bridging The Gap ; THREADHEAD no number

2010年リリース。片や金管楽器からキーボード、ベースにドラムまでこなすマルチプレイヤー、片や今ニューオーリンズで旬のシンガー・ソングライター、この二つの異なる才能をつなごうというのがアルバムタイトルによく現れています。オリジナルはシャマーの曲の方が多いくらいで、イニシアティヴもシャマーが握ってるように思いましたが、ポールの味も随所に出ています。何より歌の肌合いが二人であまり違わないので、独特の暖かみのある音になっています。ジョン・レノンの「インスタント・カーマ」なんてのもやってますが、面白かったのはレゲエ仕立てのウィリー・ネルソン・ナンバー「スティル・イズ・スティル・ムーヴィング・トゥ・ミー」。全体に古いジャズの味わいを感じさせるサウンドで、気に入りました。




2010. 8. 5 Solomon Burke ; Nothing's Impossible ; E1 E1E-CD-2086

2010年リリース。僕は忙しくて見逃してしまったんですが、先頃来日して素晴らしいライヴを展開した大王ソロモン・バークの新譜です。プロデューサはメンフィスの大御所ウィリー・ミッチェル。でも彼は1月に心臓マヒで亡くなっていますから、これが遺作ってことになるのでしょうか。とにかく素晴らしい出来栄えです。ソウル・サウンドを愛し続けたウィリーが、希代の歌唱力を持つソロモンと組んだわけですから、最高のサウンドでサポートしています。特にスローナンバーの味わい深さは、ソロモンの丁寧な歌い回しもあって心を揺さぶります。またミディアムの、例えばタイトル曲では、往年のHIサウンドを彷彿させる、心地良く跳ねたリズムに柔らかくストリングが絡み、ホーンがアクセントを加えるといった最高のフィーリングで、あの時代の大好きな僕は涙が出てきました。ある種最強のコラボレイトといってもいいのではないでしょうか。




2010. 8. 2 Coco Montoya ; I Want It All Back ; RUF 1153

2010年リリース。冒頭の「ヘイ・セニョリータ」で、あれ、いつものモントーヤと違うなという感じを受けました。ロックっぽさが押さえられ、ラテンな香りたっぷりのピアノに絡みつくギターが的確で、とても心地良いんです。よく跳ねるリズム隊と、適度な隙間感のあるサウンドメイクが素晴らしく、いいプロデュースに当たったなと思ってみれば、なんとケブ・モでした。モントーヤの人柄を感じさせるオリジナル楽曲の数々は、ブルース色を押さえたもの。一方ゆったりしたアレンジの「ファニー・メイ」ではきちんとブルース魂を感じさせていますが、これに彩りを添えているのがロッド・ピアッツァのいぶし銀のハープです。この方向性、僕は好きです。




2010. 7.26 The Neville Brothers ; From The Beginnings Vol. 1 ; THE NEVILLE BROTHERS no number

1977年結成直後のライヴです。ビッグ・チーフ・ジョリーとワイルド・チョピトーラスも入っていますから本当に最初期のものですね。盤はブートのようです。いきなりスティーヴ・ミラー・バンドのヒット「フライ・ライク・アン・イーグル」からスタート。「グルーヴィン」「モジョ・ハンナ」といったニューオーリンズなナンバーに「フィーヴァー」「ビリー・ジョーの歌」といったヒット曲を絡めるのは、当時彼らがライヴシーンでどんな方向を狙っていたかが分かります。「ヘイ・ポッキー・ウェイ」からはチャント状態で、ラストは「ブラザー・ジョン〜アイコ・アイコ」というお得意のパターン。まだネヴィルズとしての個性が確立されていませんが、ミーターズの方向から離れようとする医師は感じられます。




2010. 7.23 Charles Pasi ; Uncaged ; SACEM no number

2009年リリース。フランスの若手ハーピストとして注目を集めたパジですが、このアルバムではヴォーカリストとしても一皮むけた気がします。ガツンと来る「ロスト・ジェネレーション」に、なんとアーチー・シェッブのサックスが泣き叫ぶ「フェアウェル・マイ・ラヴ」あたりが特に強烈。特に後者はそのマイナーなメロディの向こうには、ボブ・ディランの香りを感じてしまうのですがいかがでしょうか。こんな失恋歌唄われちゃった暁にはねぇ。サニー・テリーの物まねから突入する軽いハープが印象的な「ベター・ウィズ・バター」もいいなぁ。同じようなハープは「リメンバー・ザ・ディ」でも聴くことができますが、とてもいい雰囲気を出していますね。とにかくブルース、ソウル、ジャズ、ロック、フォークとジャンルを軽くまたいで曲作りをするパジの才能は侮れません。




2010. 7.21 Bob Corritore & Friends ; Harmonica Blues ; DELTA GROOVE DGPCD139

1989〜2009年にかけて、コリトアが絡んだ録音のベスト集です。コリトアはハーモニカ・プレイヤーですが、それよりプロデューサとしての仕事がおもしろいかもしれません。ロックウッドとの仕事が割と有名だと思いますが、ここには「ザッツ・オール・ライト」が収録。この他ココ・テイラー、ヘンリー・グレイ、エディ・クリアウォーター、ココ・テイラー、リトル・ミルトンなどそうそうたるメンバーとの共演作が収録されてます。嬉しかったのはキャロル・フランの「アイ・ニード・トゥ・ビ・ビード・ウィズ」が入ってたことかな。キャロルの豊かな歌が堪能できます。いろんな味わいを聴くことができてお得なコンピです。




2010. 7.20 Honey Island Swamp Band ; Good To You ; THREADHEAD no number

2010年リリース。いきなりホーンセクションが絡む「チョコレート・ケーキ」を聴いて、いつもと肌合いが違うなって思いました。かっこいい!このホーンはタブ・ベノアやエリック・リンデルとの仕事もあるジミー・カーペンターのアレンジだそうで、いい仕事しています。ハーモニカにはショーン・コリーの名前も。ホーンのせいもありぐっと重心が下がり、いつになく黒っぽい演奏になっています。全曲オリジナルでエリック・リンデルも絡む「ジョセフィーン」あたりはかなりカントリーっぽさの出た曲で、このバンドらしいかな。クリス・ミューレの的確なスライドがスワンピーな感じを出し、ゲストのマーク・アダムズのオルガンが音に厚みを出しています。これ、気に入りました。




2010. 7.14 Big sam's Funky Nation ; King Of The Party ; HYPERSOUL no number

2010年リリース。タイトル曲、いきなりのメタリックなロックサウンドでした。ありゃ、路線変更かと思ったら「クランクト・アップ」でいつものファンク路線に戻ったんで一安心。ブラスバンド的な要素を感じさせるファンク・バンドで、なかなかビッグなリズム隊が気持ちよく、そこにブラスセクションやワウを効かせたギターが絡んできます。これ、札幌の某バンドに聴かせてみたいなぁ。また、ロック的な要素もあり、「ロック・ヨ・ソウル」なんてタイトルからもろですね。お気に入りは「シー・ミー・ダンス」。生で見たいバンドです。




2010. 7.11 Gadjo ; El Big Quilombo ; GADJO EDICITONES GADJOCDO3

2008年リリース。実は何でこのCDが我が家にあるんだか分からないんです。多分アマゾンで注文したんですけど、どうしてこれが来たんだろう?内容はバルセロナ録音で、いわゆるロマ(ジプシー)の音楽の要素を取り入れながら、独特のラテン風味もあります。楽器の編成が面白く、様々な管楽器にスーザホーンだのアコーディオンだのバンジョーだのが入っており、ある種ジャグバンド的でもあります。初めてクレズマー音楽を聴いたときのことを思い出しました。ジャズの素養もあり、非常に高い音楽性を感じますが、あまり聞きつけない音楽なのでなかなか踏み込めません。言語的にもラテン語と英語の両方にまたがっている感じですね。う〜ん、やっぱり不思議。




2010. 7. 8 Robert Cray ; Live / Outdoor Concert, Austin, Texas 05/25/87 ; MERCURY B0013999-02

「公認された海賊盤」と銘打たれたシリーズです。1987年といえば「スモーキング・ガン」が大ヒットした直後で、クレイが最も油に乗っていた頃。演奏にもその辺の充実ぶりが良く出ています。ジョン・リー・フッカーとの初来日でも披露していたジョニー・ギター・ワトソンの「ドント・タッチ・ミー」もかなりこなれた歌い方になっていますし、途中にジミー・スミスの曲というか、バンドライヴの定番インストと言ってもいい「バック・アット・ザ・キッチン・シャック」をゆったり目にやったりと、こんなこともやってたのねって感じ。ライヴはその後の「ニュー・ブラッド」あたりから佳境に入り、彼の才能を見せつけた「フォーン・ブース」、ブルースナンバーの「プレイン・イン・ザ・ダート」、そして「スモーキング・ガン」へとなだれ込みます。ラストは「ライト・ネクスト・ドア」。かなりいい状態のライヴで楽しめました。




2010. 7. 5 Big J & The Zydeco Dogpound ; Big Dog Status ; HIT IT BIG HIBR1001

2010年リリース。ザディコ界は続々新手の若者が登場しますがこの人もそのひとり。やはりクリス・アルドワン以降の人でその影響をかなり強く感じます。アコーディオンはどうやら3ローのようでが、他のタイプも使ってるかな。それほどビートを強調せず、しっかりした演奏をしています。ア・カペラの「ガール・オン・マイ・ドリームズ」あたりは新機軸かな。でもけっこう伝統に根差したスタイルにいいものがあるように思いました。歌がもう少しこなれてくるとぐっと良くなりそう。




2010. 7. 1 Outlaw X ; Out Of The Box ; OUTLAW X OX-5921

2007年リリース。シカゴのベーシスト、ラリー・キンペルが中心となって結成されたブルースバンドで、ラストのフェイセズの「ステイ・ウィズ・ミー」を除くとすべてオリジナル曲で固め、クールなタッチのモダン・スタイルなブルースにソウル・ナンバーを交えた作りです。演奏技量は極めて高く、楽曲も練り込まれていますが、この破綻のなさがかえって面白味を欠いているように思えちゃいます。ブルースってこんなに予定調和な音楽なのかなぁ。むしろ「オールド・ガッションド・ガール」のようなロック・テイストの強い曲の方が魅力的でした。




2010. 6.30 Eric Bibb ; Booker's Guitar ; TELARC TEL-31756-02

2010年リリース。エリック・ビブらしい、アコースティックの響きを全面に生かしたアルバムです。2008年に古い雑貨屋で録音したその残響がまず素晴らしく、ブッカ・ホワイトのリゾネイタをつま弾くタイトル曲のサウンドは、リゾの味わいを十二分に生かしています。B.B.キングの自伝からヒントを得た「ライリー」や、ニューオーリンズの香り漂う「ロッキング・チェア」も佳曲。圧巻はリトル・ウィリー・ジョンスンの「ノーバディズ・フォルト・バット・マイン」を、グラント・ダマーティのハーモニカ1本をバックに歌うもの。こうした気の入った演奏は何度聴いても心が洗われます。




2010. 6.28 Captain Squeeze & The Zydeco Moshers ; Fine People Everyone ; CSZM no number

2010年リリース。この人はどうやらニューヨーク界隈をベースにしているようです。「ギヴ・ヒム・コーブレッド」などを聴けば歴然ですが、音が全体に軽く、ハーモニカが入ってたりと、ルイジアナ直送ものに比べ善くも悪くも洗練されています。コーラスワークも妙に綺麗だし。毒気の抜けた上品なザディコって感じて、物足りないですね。




2010. 6.24 Hollywood Blue Flames / Hollywood Fats Band ; Deep In America / Larger Than Life, Vol.2 ; DELTA GROOVE DGPCD136

2010年リリース。ブルー系の新譜リリースではいま一番元気なDELTA GROOVEからの2枚組です。ジャケット裏にT-ボーン・ウォーカーのイラストがあるように、ジャジーな演奏からスタート。歌はすべてアル・ブレークで、独特の枯れた味わいが魅力です。ジュニア・ワトソンのギターはどちらかというとテキサス流儀、一方カーク・フレッチャーはぐっとシカゴ寄りな感じ。アルのハーモニカは派手さはないけど丁寧で好感が持てます。「ミュージック・マン」「ヒップ・ホッピン・トード」等ではアルがメタルボディのリゾネイタを爪弾きちょこっとデルタ風にやってたりします。「ハッシュパピー」はフレッド・カプランのピアノソロ。とにかくみんなでいろいろやってます。2枚目はハリウッド・ファッツ・バンドの1979〜80年のライヴ音源で、ハリウッド・ファッツのギターはシカゴからテキサス経由でロサンゼルスまで渡り歩く変幻自在のスタイル。1枚目冒頭で再演してた「ニット・ウィット」の熱いライヴテイクが聴きもので、ブルー・フレイムズが彼の遺志をついでいることがよく分かります。




2010. 6.22 Anders Osbone ; American Patchwork ; ALLIGATOR ALCD 4936

2010年リリース。髭面になったジャケットでびっくり!ALLIGATORに移籍したアンダーズはいきなり低重心のロックサウンドを響かせてます。でもタイトルにあるようにいろんなタイプの曲をやってて一安心。彼独特の粘っこい声で歌うレゲエ「ゲット・ユア・ハート」当たりを聴くと、この人の歌の魅力がよく出てますね。ゆったりした「アカプルコ」も気に入りました。ロックとフォークが交互に出てくるような感じで、変化はあるんですがちょっと落ち着かないかな。「ミート・ミー・イン・ニュー・メキシコ」位のミディアムな感じが好きです。




2010. 6.21 John Carey & Piano Bob ; Back In New Orleans ; JOHN CAREY & PIANO BOB no number

2010年リリース。まずゲスト陣が豪華です。エリック・リンデル、ジョン・フォウル、ジャンピン・ジョニー・サンソン、マーク・ストーンといった具合です。サウンドは緩やかで穏やか。ところどころセカンドライン風味がちりばめてありますが、どちらかというとグッド・オールド・アメリカン・ミュージックといった風情で、ブルースとカントリーの良質なミクスチュアですね。カリーのハーモニカは出しゃばらず音楽に色合いを与える役目に徹していて交換が持てます。ボブのピアノは派手に鳴るわけではありませんが的確。なかなかいい感じのアルバムです。




2010. 6.17 Dwayne Dopsie & The Zydeco Hellraisers ; Up In Flames ; SOUND OF NEW ORLEANS SONO 1071

2009年リリース。ドウェイン独特のフェイズのかかったようなアコーディオンとドライヴ感ある押しの強いヴォーカルが、けっこう強烈なリズム隊に支えられて押し寄せてきます。「ジャスト・カム・バック・ホーム」あたりのスクエアなリズムはラフィエ近辺のプレイヤーからはなかなか聴くことのできないもので、ロックやファンクからの影響が強いことをうかがわせます。一方「バック・イン・ザ・ウッド」のダンサブルなトゥーステップからはしっかり伝統から引き継いだものも感じさせます。全体としてはいつもよりオーソドックスかも。




2010. 6.14 Garage A Trois ; Power Ptoriot ; THE ROYAL POTATO FAMILY PRF 1395

2009年リリース。何の気なしに買ってみましたが、スタントン・ムーアがやってるキーボード・サックス、それになんとエレクトリック・ドアベルなんて楽器のカルテットによるガレージ系ジャムバンドでした。いきなりノイジーなさウンドが飛び出してきましたが、そこはスタントンのバンド、グルーヴ感は半端じゃないです。初期のギャラクティックをもっとアバンギャルドにした感じですね。サックスのスケリックからはジャズの素養を強く感じました。




2010. 6.10 Marc Stone ; Trickeration & Rascality ; THREADHEAD no number

2010年リリース。マークは白人のヴォーカリストでギタリストで、張りのある伸びやかな声で歌います。なかなかソウルフルでパワーも感じますが、ちょっと歌い回しに癖があったりもします。このアルバムではバックにジョー・クラウン、ボーナラマのホーン、カーク・ジョゼフ等が加わり、コーラスにはビッグ・アル・カーソンも参加するなど、豪華な面々をそろえています。ザ・バンドの「シェイプ・アイム・イン」ではテレンス・シミエンが素晴らしい歌声を聞かせます。また「ラヴストラック」のエレキ、「ピムピン・グリーン」ではリゾネイタのスライドやラップ・スティールでいかしたソロを奏でています。




2010. 6. 7 Sean Ardoin + R.O.C.K. ; How Great Is Your Love ; ZYDEKOOL no number

2009年リリース。弟のクリスと共にヌーヴォー・ザディコ路線を突っ走ってきたショーンの新作は、前作よりはザディコ色が強くなった気がします。でも「ファーザー・トゥ・サン」や「アイ・アム・トゥ・ワーシップ・ウィズ・ユー」は今風のR&Bですし、続く「ファインド・ミー」や「エックスマン」はヒップホップです。ふたつの要素を強引に混ぜ合わせるのではなく、併置することで、自分の世界を表現しようという姿勢かな。ショーンは歌が上手いので、こうしたアプローチは当たりのような気がします。




2010. 6. 2 やもとなおこ ; ふわふわ寄り道しよウウヨ ; YAMOTO NAOKO no number

2009年リリース。ことしライヴ会場で知り合った人ですが、透明感のある割に、ガツンとソウルフルな力も持っていて、とても面白い才能を持っています。この4曲入りのアルバムでも、「ふわふわ」という文字通り浮遊感のある曲の次に「ゴー・ザ・ロング・ウェイ」ていうファンキーな曲も出てきたりして、その懐の深さはかなりのものです。フルアルバム、期待しちゃいますね。




2010. 5.31 Big Al Carson ; 3 Phat Catz And 1 Skinny Dogg ; RABADASH RAB-035

2010年リリース。ビッグ・アルはニューオーリンズをベースにしたヴォーカリストで、その体型に支えられた豊かな暖かみのある声が魅力です。バックも達者な面々で、K.C.ダグラスのブルースをファンキーに仕立てた「ブラック・キャット・ボーン」特にかっこいいです。また、オールドスクールなソウル・バラードも味わい深く歌い上げています。とにかくどんな歌でも柔軟に対応できる歌唱力がこの人の魅力だと思います。オリジナルのソウル・ナンバーもかなりいい感じ。そんな中にロバート・ジョンソンの「32-20ブルース」をモダンに仕立てたのが入ってたりして。やりますねぇ。




2010. 5.27 下間 哲 ; Stardust ; YPM YPM-024

2009年晩秋の録音です。ピアノに名手小林創をしたがえて、深みのあるトランペットを響かせています。トランペットというと、攻撃的で突き抜けるような音という印象がありますが、この人の音はまろやかで暖かく、熟成したワインのような味わいがあります。またユニークなのは、ジャズのスタンダードの他、日本のメロディ、特に彼の出身地秋田の「草刈り唄」「長持唄」を取り上げているところです。「秋田県民歌」には驚きました。そうした曲のメロディが、決してかび臭くなく聞こえてくるところが、この人の確かな力量の現れだと思います。




2010. 5.24 Ingrid Lucia ; Midnight Rendezvous ; THREADHEAD ILCD 2010

2010年リリース。こりゃテーマはラテンですね。それもスペイン直送って感じのサウンドです。もちろんママではなく、ひねりはたっぷり加わってますけど。ジョン・フォウルに加えパーカッションはアンダーズ・オズボーンが参加してて、ジャズっぽさは押さえられている印象。歌はちょっと舞台がかった感じで、長見順を思い出しちゃいました。全曲オリジナルでマイナーなスローナンバーが多く、ジャケットの上目使いのイングリッドのイメージがぴったり。存在感あるなぁ。後半に行くほどラテン色は薄くなってますが、どこかフラメンコに通じるものを感じちゃうんです。




2010. 5.20 Trombone Shorty ; Backtown : VERVE FORCAST B0014194-02

2010年リリース。いやぁ、格好良すぎでしょう。冒頭の「ハリケーン・シーズン」の分厚いブラス・アレンジに続く「オン・ユア・ウェイ・ダウン」は作者のアラン・トゥーサンも参加してますが、このヒップなアレンジといったら!現在進行形のヒップホップ感覚をしっかり取り込みながら、一方でニューオーリンズならではのブラスの使い方、さらにはフォンクなリズムもあって、タイトル曲など最高にクールです。一辺にマイルス・ディヴィスの打ち立てたジャズの頂点を見ながら、他辺ではしっかりクレッセント・シティな香りを残している、素晴らしい作品だと思います。ことしのベスト5に間違いなく入りますね。




2010. 5.17 The Mannish Boys ; Shake For Me ; DELTA GROOVE DGPCD137

2010年リリース。カーク・フレッチャーとフランク・ゴールドワッサーという今の西海岸でバリバリのギタリストをメインに、フィニアス・タスビー、アーサー・アダムズ、ジョニー・ダイアーといったヴォーカル、ハーモニカにはロッド・ピアッツァ、ミッチ・カシュマー、リンウッド・スリムとくれば外れようのない演奏になります。オリジナルの楽曲に対する並々ならぬ愛情があればこそのカヴァー集で、ブルース・ファンとしては思いっ切り楽しめる内容です。でも、ある意味これは閉塞しているんですよね。過去の栄光をなぞることでノスタルジーに浸るのもいいけど、それでは光は見えないようにも思うんです。難しいところですが。




2010. 5.13 Jack Brass Band ; Fourth Movement ; JACK BRASS BAND JBBCD004

2009年リリースの彼らの4枚目のアルバムです。う〜ん、いろんな面で分かりやすい。ビリー・プレストンの大ヒット「ナッシング・フロム・ナッシング」のいかしたアレンジでスタート。ラテンテイストあり、往年の名曲のカヴァーありとアルバムを重ねる事に地力をつけてきていますね。特に今回は「リーン・オン・ミー」「パート・タイム・ラヴァー」などニューソウルと言うべき70年代以降の名曲がいっぱいで、しかもいい感じのアレンジで個人的には楽しかったです。高校のブラスバンドでこんなのやるところがあったらいいなぁ。




2010. 5.10 Nico Wayne Toussaint ; Blues Entre Les Dents ; DIXIEFROG DFGCD 8670

2009年リリース。ニコはフランスの若手ハーモニカ吹きのひとりで、穏やかで丁寧な歌もけっこう魅力的。英語とフランス語を混ぜたように歌うのが面白いです。生音でハンド・ヴィブラートをかけ、柔らかい吸い口でニュアンスを出す吹き方は僕はかなり好きです。ブラインド・ウィリー・ジョンスンの「ノーバディ・フォルト・バット・マイン」を結構へヴィーにアレンジしてやってますが、他はどちらかというとシンガー・ソングライター的な印象が強いです。その他マディのレパートリーやO.V. ライトの曲を取り上げていますが、比較的しっとりと仕上げています。ヴォーカルが柔らかいのでこのアレンジは当たりだと思いました。根っこにソウルも感じますし、もう少しじっくり聴いてみたい人です。




2010. 5. 6 Bobby Charles ; Timeless ; RICE 'N' GRAVY RIC 517

2010年リリース。ことし亡くなったボビーの追悼版のようになってしまいましたが、ドクター・ジョンとサニー・ランドレスがバックについて素晴らしいアルバムに仕上がっています。冒頭の「ハッピー・バースディ・ファッツ・ドミノ」にはなんとデレク・トラックスやジョン・クリアリーが参加、大変豪華な演奏になっています。全編を流れるセカンドラインなノリがなんと言っても心地良く、ボビーは今頃天国でこのアルバムの音を聴きながらうとうとしてるんじゃないでしょうか。またテックスメックスな「オールド・メキシコ」も素敵です。そして自分のために歌ったような「ローリン・ラウンド・ヘヴン」、おそらく自分の死期を悟っていたんじゃないでしょうか。




2010. 5. 2 Antoine Holler ; Love In Stereo ; SACEM 01071981/1

2009年リリース。アントワンはフランスのシンガーで、ちょっと霞のかかったような柔らかい声がまず印象に残ります。ギターもかなり達者で、暑苦しくないけどソウルをたたえた、どことなくアンニュイな都会的なサウンドを生み出しています。またハーモニカにはこれまたフランス新進気鋭のシャルル・パジが2曲で参加して彩りを添えています。ベストトラックは「ミュージック・メイクス・ミー・ハイヤー」かな。ジャズやレゲエの要素も取り入れたこの人の音楽世界は、じっくり聴き込む価値のあるものです。




2010. 4.30 Stanton Moore ; Groove Alchemy ; TELARC TEL-31890-02

2010年リリース。スタントン名義になっていますが、実際はほぼロバート・ウォルターのオルガントリオ演奏といっていいと思います。ギターはウィル・バーナード。とは言え、これだけ歌うドラムも珍しいですね。オルガンの奏でるメロディにぴったり寄り添って、めりはりをきっちりつけていますから演奏が生えること生えること。ミーターズ的なシンコペーションたっぷりの曲や「ポット・リッカー」「ルート・セラー」のようなジャズ・ファンク系の曲でもスタントンのファットバックなドラムが炸裂しています。キープ・オン・グウィン」ではロバートはピアノを弾き、ウィルはスライドをプレイしていますが、こうしたオールドスタイルも難なくこなしちゃうのがすごいです。そんな中に「アレッタ」や「ヒー・ストプト・ラヴィング・ハー・トゥディ」なんて古い感じのギター曲が入ってたりしますから油断なりません。


2010. 4.27 Little Freddie King ; Gotta Walk With Da King ; MADEWRIGHT MRW65

2010年リリースのライヴ録音です。いきなりいなたさのある「クレオズ・バック」でスタート。決して切れ味のいい演奏ではないんですが、どこか味があるんですよね。「ウォーキング・ウィズ・フレディ」なんてブギも、リズムは相当怪しいんですけど、なんか強引に持ってちゃうような感じがあって、この感覚が年期なのかもしれません。「チキン・ダンス」ではチキン・ピッキングに鳴き声の声帯模写まで入れて、張り切ってやってます。「キングヘッド・シャッフル」で刻み出すボトムリフとフレーズは「ハイダウェイ」に通じるんですが、どちらかというとハウンドドッグ・テイラーに接近してるかもしれません。リヴィング・ブルースマンの今を捉えた作品と言っていいと思います。




2010. 4.24 生活便利Goods ; すっぽんぽん〜本当の気持ちは I Love You ; SKB_GOODS SKBR-004

2009年リリース。とにかくタイトル曲が最高です。心を開き合う人間付き合いをテーマにして、これだけダンサブルに楽しくやっちゃうんですから。ライヴでもテーマのようにやっていますが納得です。「大願成就」も笑える歌ですし、とにかく愉快という言葉がぴったり!




2010. 4.21 生活便利Goods ; 夜明け間近のカンツォーネ ; SKB_GOODS SKBR-002

2008年リリース。今度は花粉症とか浮気がバレるネタだとかをユニークにやってます。タイトル曲はほとんど「ホテル・カリフォルニア」のコード進行から劇的なカンツォーネになっちゃうって言う優れもの。「春先のレイン」ではロッキンな中にヴァイオリンが実によく効いています。「ザッツ・坂道」はぐっとファンキー。とにかくこの人たち、曲作りのセンスが半端じゃないです。お薦め。




2010. 4.19 The Vodka ; Monkey Action ; UP'N DOWN UDR-001

2010年リリース。ストーンズにどっぷりつかりながら、日本語のブルースやロケンロールを追求してきたこのバンドの最新ミニアルバムです。出てくるサウンドはやはりストーンズからの影響をもろに受けたものですが、それがこのバンドの持ち味であり、二昔前の若々しいストーンズのテイストがあって心地良いです。辻のヴォーカルは抜けが良く冴え渡っています。またライヴが見たいなぁ。




2010. 4.15 Sugar Blue ; Threshold ; BEEBLE BB802

2009年リリース。この人はある意味才能を持て余しているのかもしれません。誰もが認める超絶級のハーモニカのテクニックを持っているんですが、どうも自分の目指す音楽性が良く見えないようなんです。超ファンキーな「メッシン・ウィズ・ザ・キッド」とKING / ALLIGATOR時代のサウンドに行くかと思うと、「コットン・トゥリー」のようなジャズテイストを求めたり、「トゥナイト」のようにAORっぽくなったりと定まりません。ひとつは歌がいまひとつ上手くないんですね。「ドント・コール・ミー」など危なっかしくて。そんな中、「ストップ・ザ・ウォー」はシュガーらしさが出ていてぐっと来るものがありました。いいプロデューサーをつけたらもっと面白くなると思います。




2010. 4.12 John Fogerty ; The Blue Ridge Rangers Ride Again ; UNIVERSAL CLASSICS & JAZZ UCCB-1035

2009年リリース。ジョン・フォガティはC.C.R.解散直後にこのバンド名を使ったワンマン録音によるカントリー・アルバムを作りましたが、これはその路線、つまりカントリーをやろうって作品です。今回はちゃんとメンバーを集めてやってます。リック・ネルソンの「ガーデン・パーティ」ではヴォーカルにドン・ヘンリーがフィーチュア、この他バック・オーウェンズ、ジョン・デンヴァーの曲もあり、演奏もドブロやフィドルを入れてカントリー色たっぷりです。ラストナンバーはエヴァリー・ブラザーズの「ホウェン・ウィル・ビ・ラヴド」で、ブルース・スプリングスティーンとのデュオです。ブルース、R&Bとこのカントリーへの愛着が、ジョン・フォガティの音楽を形作っているのが再確認できました。




2010. 4. 9 Tamara & Lacky Peterson ; Darling Forever ; JSP 8814

2009年リリース。タマラは元々ラッキーのバンドのコーラスだったようですが、現在は夫婦です。そのタマラを前面に押し出したアルバムをラッキーが作りました。タイトル通り愛情たっぷりで、心なしかいつもよりラッキーのギターに気合いが入っているかも。「ロスト・ザ・ナイト」のようなおしどりデュオもあったりしますが、ほぼタマラのリーダー作と言ってもいいと思います。アルバート・キング・テイスト丸出しのギターが炸裂するタイトル曲など、路線はラッキー流儀のブルーズン・ソウルです。タマラの歌はまあ合格点と言ったところでしょうか。ラッキーと組んでなければフロントを張れる力があるかどうかはちょっと疑問ですね。まあそこは夫婦の力でアルバムをものしたというところでしょう。




2010. 4. 7 Little Freddie King ; At Home In The New Orleans Musician's Village ; MUSIC MAKER MMCD120

多分2009年のリリースではないかと思います。曲目も何にも書いていないCD-Rで、裏には「ミュージック・メイカー・リリーフ・ファンデーション」なんてありますから、ミュージシャンを義援するためのもののようです。リトル・フレディ・キングはティム・ダフィーのギターを従えての弾き語り。それこそ街の隅っこかなんかに座り込んで、さらっとブルースを歌ってますって雰囲気の録音です。割合ワンパターンな感じですが、ある意味リアルとも言えます。全12曲。でもせめて曲名くらいは書いて欲しいなぁ。




2010. 4. 4 Ruthie Foster ; "The Truth" Japan Tour 2009 March 28 / TAKUTAKU, kYOTO ; HOI-HOI D10043

こちらは京都でのライヴで同じく2枚組。曲順を組み替えながらの演奏ですが、テンションは変わりません。ただレーベルが録音慣れしている成果、サムズ・アップでの録音の方が迫力を感じました。しかし演奏のグレードはこちらの方がさらにいいように思いました。前半のブルース中心の構成は京都のお客さんにはより好まれたようで盛り上がっていくのも早い気がします。そしてライヴの終盤、「スモール・タウン・ブルース」「トゥルース!」「トラヴェリン・シューズ」という構成がやっぱりなんと言っても素晴らしく、場内は完全にヒートアップしてます。アンコールもゴスペルで始まり、彼女のライヴ盤でもやっていた「フル・サークル」という素晴らしい曲で大団円!これを生で見た人は本当に得をした感じがしたと思います。




2010. 4. 1 Ruthie Foster ; "The Truth" Japan Tour 2009 March 26 / Thumbs Up, Yokohama ; HOI-HOI D10042

最近流行のライヴ会場一発撮り現地販売のスタイルで録られた2枚組のライヴです。実はこのライヴ、見に行きたかったんですが行けずじまいだったんで、特に嬉しいです。メンバー全員が女性で、ベースはルーシーの従姉妹だそうですが、パワフルなサウンドと素晴らしいコーラスワークを聴かせます。ルーシーはゴスペルとブルース、それにフォークを根っこに持っていて、最近のアルバムではソウル・テイストを濃くして来ていますが、このライヴではかなりブルージーなサウンド。ピアノとギターを持ち替えながらけっこうゴリゴリと音を紡いでいきます。で、何よりヴォーカルの迫力がありますね。伝統を感じさせるバラード「フルーツ・オヴ・マイ・レイバー」のソウルフルなこと!2枚目に突入するとしっとりと聴かせる「ラヴ・イン・ザ・ミドル」からスタート。「ウォークアップ・ディス・モーニン」のゴスペル溢れる歌に続く新作のタイトル曲「トゥルース!」あたりがライヴのハイライト。ぐいぐい引きつけます。ラストはこれまた得意なゴスペル「トラヴェリン・シューズ」。場内が盛り上がった後のアンコールは「ノー・ウーマン・ノー・クライ」から始まるメドレー、大ラスはロッキンでファンキーな「ヒール・ユアセルフ」と、素晴らしいライヴです。見に行きたかったなぁ。




2010. 3.29 Paco Shipp ; One In A Million ; EARWAVE EW 115

2008年リリースのナッシュヴィル録音です。パコはハーモニカ吹きとして知られていますが、ギターも達者で、ちょっとボブ・ディランを思わせるラフ・タッチの歌もけっこう味があります。何曲かドブロでロブ・アイクスがその腕前の片鱗を披露。でも面白かったのはカントリー系の曲ではなく、「ネヴァー・サティスファイド」「ライク・ユー」「ベター」といった、スワンプ・ロックに通じるような泥臭さのある曲です。「ダウン・ヒア」のちょっとファンキーな感じも悪くないですね。多才な人だなと思いました。




2010. 3.26 Paul Sanchez ; Live At Papa Roux ; THREADHEAD no number

2008年秋にインディアナポリスの倶楽部で行われたライヴで、DVDもついています。ポールについてはジョン・ブッテとの活動で注目していたんですが、しっかりしたテクニックのアコースティック・ギターによる弾き語りは素晴らしいです。ちょっとジャジーだったり、フォーキーだったり、おそらく彼の出自からのラテン風味だったりと、いろんな顔を見せます。超絶的なギターを聴かせるわけじゃないんですが、その穏やかで味のあるヴォーカルを的確に支えています。全部で22曲、ジョン・ブッテなどとの共作もありますがオリジナルで押し通し、そして全く飽きさせないライヴ、見習いたいです。




2010. 3.23 Mighty Mo Rodgers ; Dispatches From The Moon ; DIXIEFROG DFGCD 8672

2009年リリース。月と交信しているイラストのジャケットを見たとき一瞬購入をためらいましたが、聴いていくと面白いコンセプトのアルバムだなと思いました。粘りのあるヴォーカルでブルースに限らずレゲエ、アフリカンなどの要素を取り入れて、月から地球へブルースや愛というメッセージを送るといった感じで、途中交信を模した会話も挿入されています。丁寧な作りのブックレットにその辺のことを綴ってありました。フランスでも録音が行われたようで、JJミルトゥが参加してたりします。来るまで聴いているとその会話についつい耳が奪われたりしまして、けっこう楽しんで聴けました。




2010. 3.19 Quintus McCormick Blues Band ; Hey Jodie! ; DELMARK DE 801

2009年リリース。表ジャケットの下の方に「Jodieは不倫相手という意味」なんて書いてありますが、冒頭のタイトル曲は大人の雰囲気のソウル・ナンバーでした。でもその後はけっこうバリバリとブルースギターを弾きながら歌ってます。雰囲気はけっこうチタリン・サーキット向けなんじゃないでしょうか。バイオを読むと20年くらい前からJ.W.ウィリアムズとやり始めたそうですから、菊田俊介あたりとのギグもあったんでしょうね。「ユー・ガット・イット」などファンク系のブルースもやってますが、もうひとつ重心が低くないのが残念。でもラストのB.B.キング風「レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール」以外はオリジナルで固める意欲作です。




2010. 3. 18 Rod Piazza & The Mighty Flyers ; Blues In The Night ; HEP CAT HEP 2744-2

2008年リリース。西海岸で精力的に活動するハーピストの代表はやはりロッドでしょう。ワンパターンに陥らないよういろいろなタイプのブルースを取り混ぜていますが、ピアノの奥方ハニー・ピアッザを初めとした実力派のミュージシャンが生み出すバンドサウンドも特筆ものです。サウンドがしっかりしているので、ロッドのちょっと線の細い歌でも味わいを感じることができるように思いました。中に強烈な1曲があるといいんですけどね。一番気に入った曲はサード・ポジションで複音を吹く「ロー・ダウン・ドッグ」かな。




2010. 3. 15 v.a. ; Things About Comin' My Way - A Tribute To The Music Of The Mississippi Sheiks ; BLACK HEN MUSIC BHMCD 55

2009年リリース。ミシシッピ・シークスのトリビュートが出るとはちょっと思ってませんでしたが、冒頭は予想通りノース・ミシシッピ・オールスターズ。アコースティックでもあのざらついたガレージ感を出してくるのは彼らならでは。その他はカナダのフォーク系のシンガーなどに混じり、ジョン・ハモンドやジェフ・マルダーなどの大ベテランも参加してます。「シッティン・オン・トップ・オヴ・ザ・ワールド」を歌うのは現在進行形のストリングバンドのザ・キャロライナ・チョコレート・ドロップスで、低音気味の女性ヴォーカルがけっこう味わいがあります。ケリー・ジョー・フェルプスはおそらくビスケット・コーンのメタル・ボディ・リゾネータをつま弾いていますが、なかなか味わいがありますね。ジェフ・マルダーは元々ジャグバンドやってましたからお手のもの。いい味出してます。そしてボブ・ブロズマンがいつものように素晴らしいスライドを聴かせています。いろいろ聴き所の多い1枚でした。




2010. 3.11 Joe Bonamassa ; Black Rock ; J&R ADVENTURES / AVEX NFCT-27211/B

2010年リリースのボナマサ10枚目のアルバムはDVD付きです。DVDの方は以前出されていた2枚のDVDからの抜粋ですが。この人は今最も旬なブルース・ロッカーと言っていいと思います。オリジナルの他ジェフ・ベックの「スパニッシュ・ブーツ」、オーティス・ラッシュの「スリー・タイムズ・ア・フール」あたりをバリバリのロックサウンドで決めてるあたりは如何にもボナマサなんですが、今回はけっこうアコースティックもやっていて、「アセンズ・トゥ・アセンズ」ではブズーキとスライドを使って不思議なオリエンタル・ムードを出してますし、続く「ブルー&イーヴィル」もジミー・ペイジが好きそうなイントロだったりします。極めつけはブラインド・ボーイ・フラーの「ベイビー・ユー・ガッタ・チェンジ・ユア・マインド」で、ラグタイムも弾けちゃいますってのを聴かせます。ユニークなのは「クォーリーマンズ・ラメント」で、クラリーノを尺八のように使い、マンドリンも鳴るマイナーなメロディは実に東アジアな雰囲気です。極めつけはタイトにアレンジされた「ナイト・ライフ」で、何とB.B.キングとの共演です。かなり面白いことをやってるなという印象ですが、もうひとつ引き込まれませんでした。




2010. 3. 8 The Brind Boys Of Alabama ; Duets ; SAGUARO ROAD 24962-D

1994年のボニー・レイットから2009年のマーヴァ・ライトとのライヴ「ハウ・アイ・ゴット・オーヴァー」まで、彼らが様々なミュージシャンと共演した音源を集めたコンピです。トップは予想通りベン・ハーパーとの共演アルバムからで、これで一気に注目度が高まったのが分かります。またソロモン・バークとの「ノン・オヴ・アス・アー・フリー」も素晴らしい出来です。この他ルー・リードとの未発表コラボ「ジーザス」でも重厚なコーラスワークで曲にずっしりとした味わいを加えています。




2010. 3. 4 Cedric Watson Et Bijou Creole ; L'esprit Creole ; VALCOUR VAL-CD-0009

2009年リリース。このヌーヴォー・ザディコ全盛期にあって、伝統の香りを色濃く残しながら、タイトにまとめていくセドリックの姿勢は重要だと思います。フランス語で歌われる楽曲はロックなどの影響を受けながらもくっきりとトゥーステップの味わいを残しています。フィドルが入ってケイジャンとの親和性の高い曲もありますし。やはりこの辺りはセドリックの巧みなアコーディオン・ワークが生きているように思います。そんな中「ザディコ・パラダイス」ではブラスが入ってまるでスカのようなラテン風味を出しており、懐の深さを感じました。またラストの「ブルーランナー」では見事なフィドルを聴かせています。好盤です。




2010. 3. 2 Carey Bell & Tough Luck ; Mellow Down Easy ; ABLIND BIG BP74291

1991年リリース。バックを白人のバンドで固めた演奏です。キャリーの魅力はなんと言ってもサード・ポジションの表現力豊かなハーモニカで、例えば「ファイヴ・ロング・イヤーズ」などでいかんなく発揮されています。また、素朴な生ハープのインスト「セント・ルイス・ブルース」も、いわゆるドブルースマンはあまりやらない曲だけに新鮮でした。シカゴ・ブルースの名曲にオリジナルを配していますが、スタイルがはっきりしていますから破綻はありませんね。もっとファンキーな曲やったらいいなとは思いますが。




2010. 3. 1 Cluster Lee ; Sweet Home New Orleans ; SOUND OF NEW ORLEANS SONO 1070

2009年リリースです。クラスター・リーはニューオーリンズのブルースマンで、いわゆるモダンスタイルの破綻のないブルースをやります。かと思うと「ワット・ア・ディファレンス・ア・ディ・メイクス」なんてジャズ・ナンバーやロギンズ&メッシーナの「ママはダンスを踊らない」、「ヴァレンタイン」「マエストロ」なんてソウル・ナンバーをやってますけど、どうなんでしょ。笑ってしまうのがタイトル曲やら「グッド・タイムズ・イズ・オールライト」などの替え歌をオリジナルとしちゃってるところ。さすがに「ショットガン・サリー」はサー・マック・ライスのクレジットにしてますけど、途中で「ショットガン」そのものになっちゃってるんでいいんですかねぇ。何とも節操のないB級ブルースマンて感じ。このレーベルはけっこう外れがあるのよね。




2010. 2. 26 ZZ Top ; Live From Texas ; ISOL DISCUS ORGANIZATION / EAGLE GQCP 59114

2007年のライヴです。ZZトップの正規ライヴって、「Fandango」のA面以来じゃないでしょうか。このバンドの変わらない魅力が詰まってます。例えば「ウェイティン・フォー・ザ・バス」〜「ジーザス・ジャスト・レフト・シカゴ」のドロッとしたブルージーな感覚は30年以上経っても変わらないってのがすごいです。80年代の大ヒットアルバム「Afterburner」以降の曲を敢えて外して、中盤に「Elminator」の曲を固めてますが、僕の好きな70年代の曲がたっぷり入ってるのがたまりませんね。ラスト2曲の「ラ・グランジェ」「タッシュ」になると思わず立ち上がっちゃいました。映像も出ているようなので、是非見たいです。




2010. 2.25 v.a. ; Superharps ; TELARC CD-83472

1999年リリース。ジェイムズ・コットン、ビリー・ブランチ、チャーリー・マッセルホワイト、シュガー・レイ・ノリカの4人のハーモニカ吹きが、様々な組み合わせで、時にはお互いをサポートしたり掛け合いをしたりしながらブルースをやるって趣向のアルバムです。一番張り切っているのはシュガー・レイでしょうか。歌もけっこういいし。ハーモニカの音の深さはダントツでジェイムズ・コットンですけど、歌ってませんね。このころに喉をやっちゃったんでしょうか。センスがいいのがビリー・ブランチの「ルート66」で、これって再録してたような気が。




2010. 2.24 Rod Piazza & The Mighty Flyers Blues Quartet ; Soul Monster ; DELTA GROOVE DGPCD134

2009年リリース。ディープな音色のサード・ポジション・ハーモニカで始まるタイトル曲から、ロッドらしさが押し出されています。「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」「ユー・ベター・ワッチ・ユアセルフ」といったハープ定番曲だけでなく、リトル・ウィリー・ジョンの「トーク・トゥ・ミー」やジミー・リギンズのジャンプ・ナンバーを取り上げ、変化をつけています。その中にオリジナルが混じってるって感じです。ハーモニカの深みある音はさすがのベテランですが、軽めでやや情けないヴォーカルもけっこう味があります。




2010. 2.23 Tiny Topsy & Lula Reed ; Just A Liitle Bit - FEDERAL's Queens Of New Breed R&B ; ACE CDLUX 003

1957〜1962年録音。ルラ・リードはフレディ・キングのデュオで知られていますが、時流に乗った「ドゥ・ザ・プレジデント・トゥイスト」など4曲もすべて収録されています。まずはタイニー・トゥプシーですが、ビッグ・ママ・ソーントンに通じるようなパンチのある歌が持ち味で、「ジャスト・ア・リトル・ビット」はロスコ・ゴードンの曲と歌詞は多分共通ですが、マイナーで雰囲気はずいぶん異なります。「ウェスタン・ロックン・ロール」は「ザ・ウォーク」風のリフに乗ったノヴェルティ・タッチの曲で笑えます。一方のルラ・リードの方が時代が遅いせいもありますが、幾分軽めです。特にトゥイスト時代に入ってくると、その手の軽快なリズムが増えてきますが、バラードでもけっこういい味出してますね。




2010. 2.22 生活便利Goods ; 荒野のやせガマンMan ; SKB_GOODS SKBR-003

2009年リリース。タイトル曲のやせ我慢の他、頭髪のネタをフランシスコ・ザビエルに託しちゃう「生え際瀬戸際」、ひょうさんが歌う演歌「ぽつり酒」など、相変わらずの生活密着ネタを多彩な楽曲に載せてやってます。でもこの中で僕の一番のお気に入りは「さよならFallin' Angel」、こんな綺麗で切ないラヴソングを書けるんですね。脱帽です。




2010. 2.19 Hubert Sumlin ; Wake Up Call ; BLUES PLANET BPCD-1116

1998年リリース。ネチっとしたヒューバートのギターを前に押し出した録音で、このギタリストに対する愛情を感じるミックスです。曲はオーソドックスなシカゴスタイルのブルースが中心ですから、安心して聴くことができます。まあヒューバートのヴォーカルは元々線が細めなので、こんなもんでしょう。「ゴナ・ムーヴ」で得意のグリッサンド奏法を聴けたのが嬉しいですね。またファンキーな「ヒューバート・ランズ・ザ・フードゥー・ダウン」も面白かったです。




2010. 2.18 Eugene Hideaway Bridges ; Live In San Antonio ; ARMADILLO ARMD 00029

2009年リリース。普段はイギリスで活動しているハイダウェイ・ブリッジズの凱旋ライヴになるのでしょうか。いつも通りの端正なブルースを聴かせます。ギターはB.B.キングのサウンドでT-ボーン的テキサス流儀のフレージングが全開。またサム・クックのナンバーなどポップな曲やオリジナルのソウル・ナンバーも交え、ライヴとしての変化もつけています。何より伸び伸び歌っているのはいいです。ただバンドにうねりが少なく、後に残らないんですよね。もうひとつインパクトが欲しいな。




2010. 2.17 Sam Lay Blues Band ; Stone Blues ; EVIDENCE 26081-2

1994年録音。最近も精力的にブルースマンの音源を発掘したり、往年のブルースマンをサポートしているフレッド・ジェイムズがプロデュースとギターを務めています。サムのヴォーカルは野太く、マディの「ウォーキン・スルー・ザ・パーク」などは仲々はまっています。でもライトニンの「ショート・ヘアード・ウーマン」あたりになると、毒気が抜けちゃっててちょっとつまらないですね。やっぱりリズムの跳ねるアップテンポの方が歌もドラムも生き生きしてていいと思います。そういう意味では自信たっぷりの「シャッフル・マスター」なんて曲がありますが、もっと速い曲がいいなぁ。




2010. 2.16 The Paul Butterfield Blues Band ; The Paul Butterfield Blues Band ; ELEKTRA 7294-2

1965年リリースのデヴュー盤です。ブルースが大好きだったシカゴ在住の白人の若者たちが中心になって結成されたバンドで、メンバーはポール・バターフィールドの他ギターにマイク・ブルームフィールドとエルヴィン・ビショップ、オルガンはマーク・ナフタリンといずれものちのシーンで活躍した人たちです。リズム隊は黒人でドラムはサム・レイ。シカゴ・ブルースのスタンダードをメインにオリジナルもやっていますが、歌がやや弱いものの、同時代の例えばストーンズのようなイギリスのブルースのカヴァーに比べ、ぐっとシーンに近いサウンドを生み出していますね。特にマイクのギターは爆発的な破壊力を持っています。




2010. 2.15 生活便利Goods ; もったいないBlues ; SKB_GOODS SKBR-001

2006年リリース。1月に出会ったこのお二人、とにかくライヴの楽しさが抜群なんですが、こうしてコツコツ作った音源がこれまた面白いんです。ひっこみじあん、洗濯、シャンプーなどまさに生活に密着した話題を、ロックやらファンクやらブルースに乗っけて歌っちゃうわけですから。歌唱力抜群、曲作りも最高で、「ニュー・シャンプー」なんてまるでP-ファンク!この人たちからはしばらく目が離せません。




2010. 2.12 Cyril Neville ; The Essential Cyril Neville 1994-2007 ; M.C. MC-0065

ソロ作のベストです。ずっと追っかけてきた人なんでほぼすべての音を聴いてますけど、例えば軽快なパーカッションから始まる「フォクシー・レディ」などは斬新です。「アイティ」のポップな感覚、ブラスを生かした楽しい「ニューオーリンズ・クッキン」といった陽性な面があるかと思うと、訴えかけるような「フォーチューン・テラー」、超弩級のファンクネス溢れたラップの「プロジェクト」、そしてブラック・インディアン・チャントの流れを汲む「インディアンズ・ゴット・ザット・ファイア」など、多彩な才能を上手く捉えています。何より歌が上手いのが魅力ですね。シリル入門にうってつけです。




2010. 2.10 J. Geils Band ; The Morning After ; ATLANTIC 82807-2

1971年リリースのセカンド・アルバムです。名曲「ワマー・ジャマー」やヴァレンティのズのヒットのカヴァー「ルッキン・フォー・ラヴ」を含むアルバムで、しっかりした作りでR&Bサウンドに取り組んでいます。必要な音を的確に弾くガイルズのギターがやはり素晴らしく、表情豊かなピーター・ウルフの歌とのコントラストが魅力ですね。ただ、この次に出たライヴ盤があまりに素晴らしすぎるので、どうしても陰に隠れちゃう作品といえるでしょう。




2010. 2. 9 Bobby Sheen ; Anthology 1958-1975 ; ACE CDCHD 1257

17才の時ロビンズでキャリアをスタートしたボビー・シーンのアンソロジーです。若者なドゥー・ワップの次はフィル・スぺクターによる分厚いサウンドをバックにしたブルー・ジーンズ時代で、同時期のガールズ・グループのように白人市場を意識したサウンドになっています。独立してからは明らかにMOTOWNを意識したアップナンバーと、逆にサザンソウル的なバラードの対比が、この時代の立ち位置を良く表していて面白いです。CAPITOLでSのソロ「ザ・シェルター・オヴ・ユア・アームズ」はサミー・ディヴィス・ジュニアの曲のリメイクだそうですが、ここにもフィル・スぺクターの色合いが出ています。70年代になるとファンク化したサウンドの影響を強く受けていきますが、強烈なインパクトを与えるほどではありませんね。時代の鏡のようなアンソロジーだと思いました。




2010. 2. 8 John Fogerty ; The Long Road Home - In Concert ; FANTASY 0888072300842

2005年9月15日にロサンゼルスで行われた2枚組ライヴ盤です。C.C.R.時代の代表曲をほぼカヴァーしながら、時折ソロアルバムからの曲を挟むと言った構成で、こうして1曲3〜4分の曲を立て続けに並べる姿は、やっぱり彼はロケンローラーなんだなって思いました。「ボーン・オン・ザ・バイユー」の伸びやかな歌は全く衰えを感じさせず、やっぱりかっこいいです。2枚目に入ると全開で、息もつかせぬロケンロール大会!もう一気に行ってしまいます。やっぱり僕にとっては永遠のヒーローです。




2010. 2. 5 Zora Young ; Sunnyland ; AIRWAY 4765

2009年リリース。バックにヒューバート・サムリン、ボブ・ストロージャーらを加えたアルバムです。中に「ヒューバーツ・グルーヴ」なんて「トランプ」風のインストが入ってたり、2曲サムリンの歌が入ってますから、名義はともかくサムリンが準主役と位置付けられていますね。全体に音の作りが軽く、ゾラもさほど力んだ感じではありません。だいたいタイトル曲がインスト・ナンバーですから。そのひとつの要因がバレルハウス・チャックのピアノにあるのかもしれませんね。タイトル曲で聴くことができるように、軽妙なピアノでサウンドの要を押さえています。




2010. 2. 4 Ernest James Zydeco ; Jubiree ; JAM RAT no number

2009年のリリースです。この人は初めて聴きました。ちょっとこもった音のボタンアコを操り、軽快なノリのバンドをバックに歌います。面白かったのはルンバ調の「マイ・リトル・ジョゼフィーン」、アコーディオンを使ってませんからおよそザディコって感じはありませんが、マイナーなアレンジのこの曲は初めてでした。この他「セツル・ダウン」や「クライ・オール・ナイト」なんて曲もアコーディオンなしで、特に前者はエレキ仕込みのリゾネイタでスライドまで聴かせてますが、ドロンとしたワンコードで、ヨーデルも出るなどかなりユニーク。いわゆるザディコの枠の中に収まる人じゃないです。その分半端な感じは否めませんが。




2010. 2. 3 The Doobie Brothers ; What Were Once Vices Are Now Habits ; WARNER MUSIC JAPAN WPCR-75027

1974年リリース。全米No.1ヒットの「ブラック・ウォーター」を生んだアルバムで、ジャケットのライヴシーンもインパクトがありました。一方でブラスセクションを入れたソウル指向の音作りをし、他方でカントリー・テイストを出すというある種ロックバンドとして様々な試みを始めたなっていうのが聴いたときの印象で、「ブラック・ウォーター」のヒットはもしかするとバンドにとって必ずしもプラスじゃなかったのかななんて思ってます。方向がぼやけましたから。僕はやっぱりトム・ジョンストンの根アカなアメリカン・ロック指向が好きだったんで。




2010. 2. 2 v.a. ; The Complete GOLDWAX Singles Volume 2 ; ACE CDCH2 1236

1966〜67年の音源です。やはりこのセットで重要なのはジェイムズ・カーだと思います。名曲「ザ・ダーク・エンド・オヴ・ザ・ストリート」を含む5枚10曲が含まれます。また、スペンサー・ウィギンズ、オヴェイションズなども次々と素晴らしい作品を出しています。一方ヨー・ヨーズなどのポップなグループあり、テリーズといったカントリー・バンドあり、ジーン・ミラーはMG'sを意識したようなオルガン・インストを出したりしてます。意外だったのがアイボリー・ジョー・ハンターで、ここではポップなアップ・ナンバーにトライしていました。この南部のローカル・インディらしいごった煮が、サザン・ソウルを形作ったのかと思うと時代のマジックを感じますね。




2010. 2. 1 Jose Alvarez ; Diggin In ; TOLUCA ROCKET MUSIC no number

2009年リリース。ニューヨーク録音ですがミックスはルイジアナです。まずはアルバート・コリンズに捧げた「フェネル・セント・フロスト」からスタート。次のヒューイ・スミスの名曲「ドンチュー・ジャスト・ノウ・イット」ではヴォーカルにテレンス・シミエンをフィーチュア、ちょっと大人っぽいけど楽しくやってます。ギターのロカビリーっぽさがなかなかいいですね。で、オールマンズ風あり、テレンスのアコーディオンを従えた「アイム・レディ」あり、タジ・マハルの「クィーン・ビー」ありと、ジャジーだったりダウンホームだったりと、良く言えば器用、でもつかみ所のない感じです。あんまり印象に残らない人でした。




2010. 1.30 The Doobie Brothers ; Stanpede ; WARNER MUSIC JAPAN WPCR-75028

1975年リリース。このアルバムの冒頭の「スウィート・マキシン」、一発ではまりました。それにこれはヒットしたMOTOWNのキム・ウェストンのカヴァー「テイク・ミー・イン・ユア・アームズ」も好きでした。MOTOWNの良さを上手く引き出してロック化していましたから。僕にとってドゥービーズはこのアルバムまでですね。マイケル・マクドナルドが苦手なんです。




2010. 1.29 The Doobie Brothers ; Toulouse Street ; WARNER MUSIC JAPAN WPCR-13654

1972年リリース。最近CD化しました。ドゥービーズの地位を決定的にした大ヒット「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」で始まるアルバムですが、このカリフォルニアのバンドの伸びやかなロックが一番生き生きしているアルバムじゃないでしょうか。続く「ロッキン・ダウン・ザ・ハイウェイ」の心地良さ、「ジーザス・イズ・じゃスト・オールライト」のパーカッシヴな魅力、そんな中にサニーボーイの「ドント・スタート・ミー・トゥ・トーキン」のロックなカヴァーが混じってるあたりがセンスの良さを感じます。




2010. 1.27 Johnny Rawls ; Ace Of Spades ; CATFOOD CFR-006

2009年リリースで、タイトル曲以外はオリジナルという意欲作です。でもそのタイトル曲がまたいいんです。敢えて取り上げたのがよく分かります。少しハスキーな声でO.V.ライトの名曲をガッツを込めて歌い上げてます。そして郷愁をそそるバラード「ゴーイング・バック・ホーム」、さらに「俺はブルースマンだ」と高らかに宣言する気概そのもののアルバムですね。ゴージャスな「アメリカン・ドリーム」の他、HIサウンドを思わせる曲がいいんですが、とりわけちょっとテンポダウンした「ヒーズ・ア・グッド・マン」など、本物のHIリズムで歌ってもらいたいな。ライヴ以上に好調ですが、もっと金かけていいバックをつけたらぐっと良くなる気がします。




2010. 1.26 Johnny Rawls ; Red Cadillac ; CATFOOD CFR-004

2008年リリース。ミッティ・コリアらとの来日講演で素晴らしいパフォーマンスを聴かせたジョニー・ロウルズのアルバムをライヴ会場で購入しました。チタリン・サーキットで鍛え抜かれたブルーズン・ソウルはアルバムでも健在で、ハイトーンで抜けるヴォーカルを上手く生かした明るめのアレンジの曲がよく似合っています。楽しい「ミシシッピ・バーベキュー」にはアコーディオンも入り、全体に軽快なノリですが、そんな中に「ワッシュ・ユア・ハンズ」なんてしっとりしたバラードが来るとたまりません。続く「シュア・ミス・ユア・ラヴ」のイントロのギターがかっこいい!そして「ノー・ワン・ギヴズ・ア・ダム」、「メンバーズ・オンリー」系のバラードですがよくはまります。全編オリジナルで押し通した佳作ですね。




2010. 1.25 Galactic ; Ya-Ka-May ; P&C GALACTIC FUNK / P-VINE PCDT-5

2010年リリースの出来立てほやほやの新譜です。いやはや、豪華絢爛のゲスト仁を迎えても、全く喰われることのないサウンドですね。ぐっとヒップホップ寄りにシフトしながら、ニューオーリンズ・テイストがガッツリ効いているのは、例えばリバース・ブラス・バンドを迎えた「ボー・マネー」などを聴くとよく分かります。アーマ姉さんやアラン・トゥーサンをヒップホップに引きずり込んでしまう強引さも全然嫌味がないです。トロンボーン・ショーティとコリー・ヘンリーの2本のトロンボーンをぶち込んだ「シネラマスコープ」のジャムっぷりや、ジョン・ブッテを手足のように使って超重量級ファンクに仕立てた「ダーク・ウォーター」もすごい。3組のラッパーがまたしっくり来ちゃうわけで、前進するギャラクティックの底力を感じました。




2010. 1.22 Lucky Peterson ; Organ Soul Sessions - Brother Where Are You? ; UNIVERSAL MUSIC JAZZ FRANCE 531 380-1

2009年リリース。このシリーズのジャケットはひょっとしたら愛妻タマラ(タメイラ?)でしょうか。3枚の中ではこれが一番気に入っています。それは「悲しい噂」「マーシー・マーシー・マーシー」が入ってるからで、けっこう低重心な前者、ゆったりした後者とも、特に凝ったアレンジではないんですが、なにしろ曲が好きなんで。どっしりした「アンチェイン・マイ・ハート」もいいですね。例によってラストナンバーのタイトル曲は女性ヴォーカルをフィーチュアしてます。このシリーズ、お店のBGMにいいかもね。




2010. 1.21 Talking Heads ; The Best Of Talking Heads ; SIRE / WARNER 8122-76488-2

1977〜88年に渡るベストです。このバンドは名前は知ってましたがまともに音を聴いたことがなかったんですが、先日グッピーで映像を見て興味を持ちました。いわゆるテクノ・サウンドかと思っていたんですが、思ったより黒っぽいなと。「テイク・ミー・トゥ・ザ・リヴァー」のカヴァーの縦ノリの処理など、改めて聴くとブラック・ミュージックから相当インスパイアされてるんだってことを感じました。後期になるほど音処理に手がかけられているようですが、ディヴィッド・ボウイに通じるヴォーカルと、ファンクネスを内側に取り込んだようなグルーヴはユニークですね。




2010. 1.20 Lucky Peterson ; Organ Soul Sessions - Mercy ; UNIVERSAL MUSIC JAZZ FRANCE 531 380-0

2009年リリース。三部作の2枚目です。ギターとサックスの入る「サン・オブ・ア・プリーチュア・マン」と女性ヴォーカルが加わった「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」を除くとギターまたはサックスのトリオ構成です。定番の「ザ・サイドワインダー」なんてのもありますが、歌もののソウル曲をアレンジしたものがやっぱり面白いです。ムーディな響きの「レイニー・ナイト・イン・ジョージア」、ファンキーなアレンジの「ミー&ボビー・マギー」など面白かったです。また「テル・イット・ライク・イット・イズ」「イエロー・ムーン」アーロン・ネヴィルの歌ものを2曲取り上げていますが、あのハイノートに惹かれるものがあるんでしょうか。




2010. 1.19 Lucky Peterson ; Organ Soul Sessions - The Music Is The Magic ; UNIVERSAL MUSIC JAZZ FRANCE 531 379-9

2009年リリース。ラッキーが6才でデビューしたときの楽器がオルガンで、ライヴでも達者なプレイを聴かせているので、いずれこうした企画は出てくると思ってました。全編ファンキーなB-3のサウンドで、ほど良くジャジーで心地良いです。タイトル曲では歌も披露。「ザ・ムーチ」や「マイ・シェリー・アモール」なんてカヴァーもありますが、なかなか粋なアレンジになってます。ラストの「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」はゴスペルタッチの女性ヴォーカルを入れてますが、ラッキーも教会でこの曲を弾いたりしてたんでしょうか。




2010. 1.18 オグリ昌也 & ハニーボーイ小林 ; 阿佐ヶ谷ジュークジョイント ; SOUTHSIDE SSBC-018

2009年リリース。阿佐ヶ谷で活躍するオグリ昌也に、横須賀のパッカー・ハーピストのハニーボーイ小林がコラボしたアルバムです。オグリのちょっとすっとんきょうなヴォーカルは、最初聴くとびっくりしますが、何度も聴いてると癖になります。面白いのは「アイ・キャント・ビ・サティスファイド」で、曲はマディのそれなんですけど、歌詞は「オラ東京さ行くだ」だったりします。「ゆうやけこやけ」の哀愁のある世界にハニーボーイの達者なハーモニカが色を添えるかと思うと、ボ・ディドリー風のブギ「モナ」のストレートなパワーはインパクトありますね。そんな中「春風」なんて優しげな曲がはさまってるのがこの人の幅広さだと思いました。




2010. 1.15 Mr. Big ; Big, Bigger, Biggest: The Best Of Mr. Big ; ATLANTIC amcy 2020

1989〜1996年に発売された作品からのベストです。このロックバンドはハードでメタリックなんですけど、けっこうポップでメロディアスな面もあり、割合好きです。特にエリック・マーティンの抜けのいいハイトーンのヴォーカルは、意外と耳につかず心地良さがあります。またアコースティック・サウンドの使い方の上手さはボストンなんてバンドを思い出させました。そんな中でも特に魅力的な曲は、「ジャスト・テイク・マイ・ハンド」や「トゥ・ビ・ウィズ・ユー」といった、アコースティックとコーラスワークを生かしたポップ・チューンです。やっぱりオヤジ趣味なのかな。




2010. 1.14 Chris Duarte ; Something Old, Something New, Something Borrowed, All Things Blue ; BLUES BUREAU INTERNATIONAL BB 2069-2

2007〜2009年の作品からのハイライトに、未発表だった「アウトサイド・マン」と、ブートレグと銘打たれたライヴ音源を加えたものです。ジミ・ヘンドリクス〜スティーヴィー・レイ・ヴォーン路線のクリスの特徴はよく捉えられていますね。ライヴ音源はあまり録音は良くないんですが、その分臨場感のあるノリが感じられます。クリスを初めて聴く人にはこれはいいかもしれません。




2010. 1.13 Boo Boo Davis ; Ain't Gotta Dime ; BLACK & TAN CD B&T034

2009年リリース。いつも通りのラウドで低重心に歪んだバンドサウンドをバックに、朴訥としたハーモニカとヴォーカルを聴かせます。以前はFAT POSSUMの音を意識してたのかなとも思いましたが、この作品を聴くと素直にガレージ・ロックとブルースの融合と捉えればいいようです。まあおそらくバックのメンバーがヨーロッパ系で、シャッフルのリズムがちょっとすっとこどっこいだったり、サウンドがロックっぽくてあんまりファンクネスを感じさせないのがこの人の作風なんでしょうね。




2010. 1.12 Bobby Rush ; Blind Snake ; DEEP RUSH DRD 1005

2009年リリース。コンスタントにアルバムを出してますが、毎作ファンクネス溢れるグレードの高いできです。タイトル曲からシンプルだけどどっしり落ち着いたリズムのファンクが3連発。「キャットフィッシュ・ブルース」風の「シーズ・オールライト、シーズ・オールライト」はアコースティックですが低重心。マディの「メイク・ラヴ・トゥ・ユー」のモダンなアレンジ、HI時代のシル・ジョンスンに通じるものを感じさせる曲もあり、ビンビン来ました。また来日しないかなぁ。




2010. 1.10 Muddy Waters ; Fathers And Sons ; CHESS/MCA 088 112 648-2

1969年録音で、同年のライヴ音源がボーナスでついています。タイトルの由来は参加ミュージシャンで、マイケル・ブルームフィールド、ポール・バターフィールド、ドナルド・ダック・ダンなど白人ミュージシャンが参加、マディの音楽に対する敬愛溢れるサポートをしているからです。比較的オーソドックスなブルース・フォーマットの、それもややモダンなタイプの曲が多く選ばれているのも、こうしたメンバーとの親和性からでしょうか。演奏はオーティス・スパンが要所を締めていることもあって、よく言えば落ち着いた、悪く言えば冒険のないものになっています。一方ライヴはかなり多くの観客がいた大きな会場のもののようで、伸びやかなマディのギターが前面に押し出されています。




2010. 1. 9 JJ Milteau ; Harmonicas ; DIXIEFROG DFGCD 8678

1991〜99年録音。今やオしも押されぬコンテンポラリ・ハーモニカ走者の第一人者となったミルトゥの90年代名演集が3枚組で出ました。初期のジェイムズ・コットンに影響された強烈な「ブギ・ミックス」などのように、根っこはブルースにあるんですが、ジャズにも触手を伸ばし、またフランス出身ゆえでしょうか。ヨーロッパ風味の強い曲はもちろん、ケイジャンもやっています。カヴァー曲がまた素晴らしく、ディープな「ビリー・ジョーの歌」、そして超絶テクニックの「チキン」などは目から鱗です。最近の作品では歌のバックでいぶし銀のプレイをすることも多いですが、ここでは彼のソロプレイをたっぷり堪能できます。




2010. 1. 8 Charlie Musselwhite Blues Band ; Tennessee Woman ; VANGUARD 6528-2

1969年リリース。「Stand Back!」に比べ、サウンドに幅が出て来ています。特にバック・ミュージシャンの違いによるのか、ロック色が増し、ジャズ的なアプローチも感じさせるようになっています。また、マッセルホワイトのハーモニカもフレーズが多彩になり、のちのスタイルの萌芽が見られます。ロッド・ピアッツァ、ティム・カイハツ、さらにはなんとフレッド・ルーレットが参加しているのも、シカゴ色を薄めている要因かもしれません。方向性がいまひとつはっきりしない感じもありますが、その後のマッセルホワイトにとって、言わばサナギのような時代だったのかもしれませんね。




2010. 1. 7 Donald Fagen ; The Nightfly ; WARNER BROS. 7599-23696-2

1982年リリース。このアルバムは当時行きつけだった飲み屋でほぼ毎日のように聴いていました。ヒットしたレゲエ仕立ての「I.G.Y.」など、耳について離れませんでしたね。AORの王道と言った感じです。で、改めて聴き直すと、当時はあまり気づいていなかったんですが、スティーリー・ダンからの影響がめちゃめちゃ強かったんですね。ただしより耳触りが良く、ソフトに仕立ててある感じですが。タイトル曲はクウィンシー・ジョーンズに通じるものも感じますね。「ニュー・フロンティア」の軽快なノリがやっぱり好きです。




2010. 1. 6 Charley Musselwhite's South Side Band ; Stand Back! ; VANGUARD VMD 79232

1967年リリース。多分マッセルホワイトのデビュー盤だと思います。タイトルから分かるように、当時のシカゴ・ブルース・シーンを意識した作品で、オーソドックスなブルース・ハープと、結構いける歌を聴かせます。どうしてもバターフィールド・ブルース・バンドと比べてしまいますが、ギタリストなどバックはいまひとつインパクトに欠けますね。そんな中サニーボーイやリトル・ウォルターに対する深い敬愛を感じるマッセルホワイトのプレイはひたむきさを感じます。




2010. 1. 5 Tower Of Power ; Back To Oakland ; WARNER MUSIC JAPAN WPCR-12910

1974年リリース。ベイエリアを代表するファンク・バンドの代表作です。白人主体のバンドですからどす黒さは少ないんですが、グルーヴ感は抜群。当時人気のあったシカゴのような妙な理屈っぽさは感じさせず、良質なソウルを体現しているレニー・ウィリアムズの歌を、隙のないアンサンブルで支えています。リズム・ナンバーはもちろん、「今からが最高」などのバラードの美しさは、他のゴリゴリ・ファンク・バンドとは異質なものを感じますね。カリフォルニアならではの明るさが心地よく、車のお供に最高です。




2010. 1. 4 Jerry Portnoy & The Streamliners ; Home Run Hitter ; INDIGO IGOCD 2026

1995年リリース。ジェリーはこのアルバムをレコーディングしたときにはクラプトンのバンドで吹いていたと思います。ちょうど「From The Cradle」を出した後で、来日講演を見に行ったときにジェリーがいたのを覚えていますから。キム・ウィルソンを共同プロデュースに迎えたこのアルバムは、チャールズ・バームやブライアン・テンプルトンをヴォーカルに立てて、ジェリーが多彩なハーモニカを披露しています。「アイ・ドント・ノウ」を彷彿させる「チャージ・イット」などではゆるーいヴォーカルも披露。これが仲々いけますね。ハーモニカは多彩で、シカゴ・スタイルからムーディな「ミスティ」のインスト・テイクまで名手ぶりを存分に発揮しています。オリジナル曲が多いのも意欲を感じました。




2010. 1. 3 ウルフルズ ; ウルフルズがやって来る! ヤッサ09Final!! ; WARNER MUSIC ENTERTAINMENT WPZL 90001/3

2009年8月30日、万博特設会場でのウルフルズのとりあえずのラストライヴ完全映像です。「世界の国からこんにちは」をBGMに、御輿?に乗っかってやってくるメンバー。曲は「ウルフルズA・A・Pのテーマ」から始まり、古い曲、サム・クックの「グッド・タイムズ」の日本語カヴァーのようにめったに聴けない曲、新曲を織り交ぜ、たくさんの見せ所を交えて、たっぷり3時間はあろうかという熱演です。周囲はどんどん暗くなり、途中「ダメなものはダメ」ではけーやんはセリフ噛んじゃうし、インフルエンザのせいでジェット風船は取りやめ、そのかわり会場全体で「六甲おろし」歌ったりと、地元ならではの熱気あふれるライヴです。アンコールは別ディスクで、3回あり、2回目のアンコールでは、トータスが休止ヘの思いを語る場面も。まあ微妙に方向性がずれてきたんだろうけど、そのことには触れてませんでしたね。ラストは「いい女」。毎度お馴染みのものです。彼らのある意味予定調和的なところのあるライヴ、でもだからこそ安心して楽しめたんだと思います。前日の模様からのボーナス映像と、新曲のシングルCDもついていました。




2010. 1. 2 Paul Sanchez ; Exit To Mystery Street ; PAULSANCHEZ no number

書いてませんが多分2009年のリリースだと思います。ポールはジョン・ブッテとの仕事で知ったニューオーリンズのギタリスト/シンガーで、1曲目の「プア・ポッピン」はそのジョン作の軽快なロッキン・ナンバー。ブラス入りのドクター・ジョンなどにも通じるニューオーリンズらしい「エクジット・トゥ・ミステリー・ストリート」あり、もろスパニッシュな「アディオス・サン・ペドロ」ありと、非常に幅広い音楽性を感じさせます。根っこにあるのはアコースティックなサウンドを生かした歌心で、「アップ・トゥ・ミー」などファジーなギターが入っているんですが、全体としては柔らかく暖かいものを感じさせます。柔軟なアイディアが詰まった作品で楽しめました。




2010. 1. 1 Hindu Love Gods ; Hindu Love Gods ; GIANT 9 24406-2

1990年リリース。このバンドはウォーレン・ジヴォンがやったブルースバンドで、その独特のロック的解釈が面白いです。明らかにバターフィールド・ブルースバンドを下敷きにした「ウォーキン・ブルース」でスタート。シカゴブルースやモダンブルースを独自のセンスで味付けしたアレンジでやっていますが、中でも面白かったのは、プリンスの「ラズベリー・ベレー」秀逸なアレンジでロックにしちゃってます。ドロッとしたブルースロックにありがちなアレンジではなく、どこかポップさを感じさせる演奏はウォーレンのセンスでしょうか。新鮮な発見のあるアルバムでした。





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