SNOOKS EAGLIN の CD -part 1 1958年〜70年代
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*注 ここに紹介するCDは僕の保有するものであり、決してすべてを網羅しているわけではありません。
[01]: COUNTRY BOY DOWN IN NEW ORLEANS (ARHOOLIE CD-348)
- Courtry Boy Down In New Orleans
- Mama Don't Your Tear My Clothes
- I've Had My Fun
- Bottle Up And Go
- Give Me The Good Old Boxcar
- Walking Blues
- Possum Up A Simmon Tree
- That's All Right
- Veal Chop And Pork Chop
- Down By The Riverside
- Model T And The Train
- Jack O'diamonds
- Death Valley Blues
- Rock Me Mama
- John Henry
- Locomotive Train
- I Had A Little Woman
- Rock Me Mama
- Mailman Passed
- Going Back To New Orleans
- Mardi Gras Mambo
- Bottle Up And Go
- This Train
ハリー・オスター博士が「発見」し、ストリート・ミュージシャンとして録音したものを集めたアルバムで、1958年11月録音のものが主である*1。(7)〜(18)は FOLKLYRIC からリリースされたLPに収録(のちにARHOOLIEで再発)されていたものだ。6弦、12弦のアコースティック・ギターの弾き語りと、ルシアス・ブリッジズ、パーシー・ランドルフのワッシュボードとコーラス(一部ハーモニカ)を加えた曲が混在している。
まず、弾き語りでは、(1)はスヌークス自身のテーマ曲のようで、軽快なナンバー。ハーレム・ハムファッツのホーカム・ソング(2)も同様に陽気で楽しい。(3)はセントルイス・ジミーの十八番で、スローブルースのスタンダード、「ゴーイン・ダウン・スロウ」のことだ。弾き語りでも上手く処理している。(4)はトミー・マクレナンの曲だが、よりダンサブルに演っている。ライトニン・ホプキンスが元歌の(6)は一転して泥臭いカントリー・ブルースだが、ギターとヴォーカルのユニゾンが出たりして、どこか都会的。(9)ではタムタムを叩いているのか、ギターのボディを叩きながら愉快に語っている異色ナンバー。
(10)はフォーク・シンガーもよく取り上げる曲(ゴスペル?)だが、ギターソロが「クシコスの郵便馬車」(運動会で良くかかる曲!)の一節とそっくりだったりするのが楽しい。(17)はスローブルース(オリジナル?)で、バンド演奏を弾き語りに置き換えたようなギターだ。(19)もミディアムのブルース(これもオリジナル?)で、巧みなギターが聴ける。タイトルを繰り返す(20)はスローブルースだが、ギターはコードストロークでフォークソングのようなバックだ。でもソロになるといきなりモダンなフレーズが出るからこの人は恐ろしい。この辺の曲になると、耳で音楽を覚えたスヌークスなので、いろんな曲がガンボになって出てくるようだ。
ワッシュボードが加わった曲も何曲かある。(5)はフォーク調のカントリーでヨーデルがのどかだ。(7)ではギターをパーカッションの様に叩くところもあり、カリブに面したニューオーリンズならではのナンバー。ヴォーカルはスヌークスではないと思うが。(13)は当時のスヌークスのフェヴァリットのひとり、アーサー・クルーダップのナンバー。オーソドックスに演っているが、(13)のタムの音がのどかだ。(14)はブルースの大スタンダードのひとつだが、誰のヴァージョンからとったのだろう?この曲の同名曲(18)もクルーダップ・ナンバーだが、歌はスヌークスではないと思う。この辺りはクレジットがいい加減で困る。(15)は代表的な伝承曲だが、これも歌はスヌークスではないと思う。
残りの曲はハープが加わっている。(8)はクルーダップの「イフ・アイ・ゲット・ラッキー」であり、「ザッツ・オール・ライト・ママ」ではない。けっこうオリジナルに忠実に演っている。(11)はタイトル通り汽車とT-モデル・フォードの競争といった、いわゆるトレイン・ピースの曲で、主役はパーシー・ランドルフだ。(16)も同様の曲。続く(12)はブラインド・レモン・ジェファーソンも取り上げていた伝承曲で、ハープとパーカッション(おそらくスヌークスの叩くギター)による演奏。歌はパーシー。
このアルバムでの最大の聞き物は(21)だろう。ニューオーリンズ・クラシックとでもいうべきこの有名曲を、ストリート・スタイルで演奏している。このラテン臭はどうだ。メイン・ヴォーカルはルシアス・ブリッジスか。スヌークスはコーラスをつけている。(22)は(4)よりかなりキーが低いが、声はスヌークス。最後の(23)はシスター・ロゼッタ・サープの有名なゴスペルで、ルシアスとスヌークスのコーラスにパーシーのハーモニカが絡む。でもこの曲って、リトル・ウォルターの「マイ・ベイブ」に似ている。このように聴いてみると、スヌークスひとりで演っている曲は、当時のヒット曲が多く、伝承的な曲はどちらかというとルシアスやパーシーがメインで、スヌークスはバックをつけているものが多い。オスター博士は後者のような録音を狙っていたのだろうが、スヌークス自身はそうした伝承や伝統に収まりきらないパフォーマンスを展開したといえるのではないか。ところでジャケットに写る老若男女?はいったい何なのだろう。
*1ブルース&ソウル・レコーズ No.6 p.19の中山義雄氏の指摘による。なお、各曲のオリジナルなどについての記述は、この雑誌のアルバム評、鈴木啓志氏の解説(p.23〜26)を参考にしている。
[02]: NEW ORLEANS STREET SINGER (STORYVILLE STCD 8023)
- Alberta
- That's Alright
- Malaguena
- When They Ring Them Golden Bells
- Remember Me
- Fly Right Back Baby
- I Don't Know
- Mean Old World
- I Must See Jesus
- She's One Black Rat
- Don't You Lie To Me
- Well, I Had My Fun
- Brown Skin Woman
- Mama, Don't You Tear My Clothes
- Who's Been Foolin' You
- When Shadows Fall
- One More Drink
- I Got A Woman
- Come Back, Baby
- Trouble In Mind
- I Got My Questionaire
- The Drifter Blues
- Every Day I Have The Blues
- A Thousand Miles From Home
- I'm Looking For A Woman
ショートヘアーのりりしいスヌークスの姿が捉えられたジャケットの、これもハリー・オスター録音を集めたものであるが、ほとんどが弾き語りで、[01]とのダブりは(14)の1曲のみ。まずは1958年3月*1録音が(19)〜(25)まで7曲収録されている。(19)はブルース・スタンダードで、チャンピォン・ジャック・デュプリーからとったそうだが、ギターなどはローウェル・フルソンに通じるものを感じる。次の(20)も大スタンダードで、こちらはシスター・ロゼッタ・サープのものを下敷きにしたとのことだが、テンポが随分ゆっくりになっている。(21)はストレートブルース。オリジナルだろうか?(22)はチャールズ・ブラウンの「ドリフティン・ブルース」で、オリジナルに近い感じで唄っている。続く(23)はゆったりした演奏で、ローウェル・フルソンがベースなのだろうが、マイナーっぽい節回しになっている。カントリー・アーティストのジミー・ロジャーズ原作のバラード(24)はけっこうポップ。これと次のニューオーリンズ・R&Bともいうべき曲などを聴くと、この時期にすでにスヌークスはギター・プレイ・スタイルを完成させていたことが分かる。後述の[04]に通じる作品だ。
これらの他は1960〜61年の作品。(1)はトラッドの「コリーヌ・コリーナ」の改作か。レッドベリーの「アルバータ」とは曲が違う。続く(2)はアーサークルーダップの名曲、プレスリーの初録音曲としても知られる。一部歌詞が変わっている(オリジナルで"One and one is two" と歌っているところ、スヌークスは"Three times seven"とやっている)。この辺は耳で覚えた曲を、知っているフレーズや常套句でつないで歌詞をを構成するスヌークスお得意のやり方だ。
問題は次のインスト(3)、まるでフラメンコ*2だ!これって本当にひとりで演ってるの?12弦とはいいながら、大変なテクニックだ。続く(4)はゴスペル、ルシアス・ブリッジズとパーシー・ランドルフが参加している。次の(5)もソウル・スターラーズ原曲のゴスペルで朗々と唄っている。まったく何が飛び出すか分からん。(6)はブルース・ナンバーで、聞いたことのある歌詞が続々。(7)はウィリー・メイボンの大ヒット曲。歌詞をはしょりながら演っているけど、ムードはバッチリ!上手いなぁ。次のブルース・スタンダード(8)は、誰のヴァージョンからとったのだろう?オーソドックスな演奏だ。
ゴスペル(9)を朗々と唄っているかと思うと、切れ味のいいギターを聞かせるロッキン・ナンバー(10)、次のタンパ・レッド作の(11)は、ファッツ・ドミノのものを下敷きにしているようだ。ときおりギターのボディを叩くパーカッシヴな演奏。(12)は[01]でも演っていた「ゴーイング・ダウン・スロウ」、ただし別ヴァージョン。こちらの方がギターが派手な感じがする。(13)はバラードに近いブルース。三連のコードストロークにときおりギター・スリムを思わせるフレーズが絡む。(15)のロッキン・ナンバーもどこかで聞いたような歌詞だ。クルーダップの影響を強く感じる。
(16)のインストはきれいなメロディを持っていて素敵。イギリスのウィズ・ジョーンズがカヴァーしてるそうだ。(17)はエイモス・ミルバーン得意の「酒物」のカヴァー。酔い方は本家の方が上だ。この辺が当時(20)代そこそこのスヌークスの若さか。そして(18)、これがこの時代の曲では一番好きだ。いうまでもないレイ・チャールズのヒット曲だが、原曲をほぼ忠実に、弾き語りで再現している。ギターの切れ味、ソロ、コード回し、そして哀愁のある、でもほんわりした歌。どれも最高だ。さすが人間ジュークボックス!
*1前掲中山氏によると、2月となっている。
*2KO-1 さんの指摘によると、この曲はメキシコのエルピディオ・ラミレス作で、メキシコのウァステカ地方の民謡を元に作られたといわれているそうだ。ちなみにタイトルはスペインの港町「マラガの娘」という意味とのこと。
[03]: THAT'S ALL RIGHT (P-VINE PCD-1046 = [LP] BLUESVILLE BV 1046)
- Mama Dom't You Tear My Clothes
- Mailmam Passed
- I'm A Country Boy
- I've Got A Woman
- Alberta
- Brown Skinned Woman
- Don't You Lie To Me
- That's All Right
- Well, I Had My Fun
- Bottle Up And Go
- The Walkin' Blues
- One More Drink
- Fly Right Baby
[01][02]と同時期のハリー・オスター録音。タイトル表記に一部違いがあるが、(1)〜(3),(9)〜(11)は[01]((10)は[01]-(4))、(4)〜(7),(12),(13)は[02]に収録されている。ジャケットの写真も[01]と同じときの撮影のようだ。音質はこちらの方がシャープ。ただしマスタリング処理の差であろうか、何曲かで曲のテンポがやや速くなっている。またタイトル曲(8)は[02]と同じクルーダップの曲であるが、歌詞が微妙に異なっており、別ヴァージョン。
[04]: THE COMPLETE IMPERIAL RECORDINGS (CAPITOL CDP 7243 8 33918 2 0)
- Yours Truly
- Nobody Knows (The Trouble I've Seen)
- That Certain Door
- By The Water
- If I Could
- Guess Who
- C. C. Rider
- (Mama) Talk To Your Daughter
- I've Been Walkin'
- My Head Is Spinnin'
- Would You
- Travelin' Mood
- Goin' To The River
- I'm Slippin' In
- Nothing Sweet As You
- Don't Slam That Door
- People Are Talkin'
- Long Gone
- Willy Lee
- Reality (Wake Up)
- If I Loved You Baby
- You Call Everybody Sweetheart But Me
- Little Eva
- Cover Girl
- Is It True
- Down Yonder (We Go Balling)
スヌークスがデイヴ・バーソロミューのプロデュースにより、1960〜63年に IMPERIAL に残した全録音を収めたもの。(1)〜(4)は60年4月にベース・ドラムスをバックに録音。ゴスペルの改作といわれる(1)の軽快なギターワーク、(2)のスローバラードでも手数の多いフレーズを聴かせる。生ギターに近い音質だが、このテクニック、やはり凄い。(3)も BLACK TOP 時代に再録するスマイリー・ルイスのスローバラード。(4)はレイ・チャールズの「ドラウン・イン・マイ・オウン・ティアーズ」で、ギターの音質等はハリー・オスター録音に通じる感じだ。しかしリズム・セクションを加えることにより、非常に締まった演奏になっている。
(5)〜(8)は61年2月にジェームズ・ブッカーのピアノを加えて録音されたもので、有名曲が並ぶ。(5)はポップなバラード、(6)はアイヴォリー・ジョーハンターも取り上げているカントリーフレイヴァー溢れるバラード。原曲はジューシー・ベルヴィン。続く(7)は有名な伝承曲でハリー・オスターの下でも録音している(未聴)が、マ・レイニーあたりを下敷きにしたようだ。チャック・ウィリスの影響も感じるが、ずっとスロー。ジェームズ・ブッカーのピアノが効いている。後半のギターソロは聞き物。うって変わって(8)はもちろんシカゴのJ.B.ルノアのロッキン・ナンバー。スヌークスはジャジーなアレンジをバックにゆったりと演っている。原曲がドライヴする感じだったのに対し、こちらはスウィング感溢れる演奏だ。
続く12曲にはブラスが加わる。1961年6月の4曲はどれも非常にできが良く、楽しめる。(9)はセカンドライン風味の効いたアップナンバーで、リヴァーブのたっぷりかかったギターがいかにもスヌークスらしい。(10)は歌のうしろで得意のスぺーシーな三連トリルが心地よい。(11)はポップなミディアム・ナンバー。しかしなんといっても傑作はウィリー・ウェイン作の(12)だろう。のちに二度も再録しているスヌークスお気に入りのナンバーで、ジェームズ・ブッカーのピアノと絡み合うギターの跳んでいること!でも歌はゆるいんだよね。このCDのマストだと思う。
61年10月の4曲も同様にニューオーリンズしている。ファッツ・ドミノの原曲よりセカンド・ライン・ビートを強調した(13)は女性コーラスも加わり一段と華やかになっている。次の(14)もニューオーリンズ・ビートの素敵な曲で、ブラスのアレンジがいかにもといった感じ。二弦弾きがおしゃれな甘いポップ・バラードの(15)、[01]-(2)をスローにしたような(16)も捨てがたい。
62年6月の録音ではよりポップな路線となる。(17)〜(20)ではスヌークスのギターは殆ど活躍せず、コーラスを加えたアレンジはかなりコマーシャルな路線を狙った感じを受ける。売りにかかったという感じだが、スヌークスの魅力も半減、狙いは見事に外れたと言ってよいのだろう。
続く62年末から63年初めの録音と思われる2曲はいずれもお蔵入りしたもので、ブラスをトランペット1本に絞った、多分にセッション的な作品。真剣にリリースしようと作ったものとは思えない。でも粘っこい音色のギターには聞きどころもある(特にエンディングはおもしろい)。
スヌークスの IMPERIAL 最後のセッションとなる63年4月の録音は、メンバーをブラスいりに戻し、結構気合いの入った演奏が聞ける。アール・キングの「カモン」風のリフを持つニューオーリンズ・ナンバー(23)や、「ユア・トゥルーリー」と「アイ・ガット・ア・ウーマン」を掛け合わせたような(24)は、ギターも快調で、ジャズっぽいフレーズも飛び出す。一方(25)はギターのリフが力強いR&Bフレイヴァー漂うブルースナンバーで、強力なリフとたたみかけるようなソロが印象的だ。ラストはこれもたびたび再録するスマイリー・ルイス・ナンバーで、切れ味のいいカッティングが心地よい。
この IMPERIAL 時代の作品、総じてクォリティが高く、これでなぜ売れなかったのかは結構不思議だ。もちろん今の耳でそう思うわけだから、ひょっとすると時代を先取りしすぎていたのかもしれない。それから残念なことにこのアルバムは廃盤のようだ。このシリーズのジャケットの水彩っぽいイラスト、僕は気に入っていたのに..。見つけたらすぐに買ってしまって絶対に損はない。超お薦めの1枚!
[05]: THE REGACY OF THE BLUES VOL.4 (SONET/KING KICP 2207)
- Boogie Children
- Who's Loving You Tonight
- Lucille
- Drive It Home
- Good News
- Funky Malaguena
- Boogie Woogie
- That's Same Old Train
- I Get The Blues When It Rains
- Young Boy Blues
- Tomorrow Night
1971年、クイント・デイヴィスがプロデュースして作られたアルバム全12曲からから11曲収録されたもので、(1)〜(9)はマイティ・ジョー・ヤングのアルバムからの曲。ジャケット裏面にこの写真が使われている。背景は当然ニューオーリンズの地図。全編アコースティックの弾き語りで、やはりハリー・オスターの呪縛から逃れられなかったのだろうか。しかしクォリティは高い。
(10)はジョン・リーの「ブギ・チレン」がコンセプトのベースにある歌だが、曲はブギというよりはファンク。途中ボディをパーカッシヴに叩いたり、切れ味のいい16ビートのカッティングが入っている。この曲の歌詞については、サミュエル・チャーターズ『ブルースの本』(晶文社 1980)のp.172〜3参照。(12)は、シカゴ・ブルースの重鎮ジミー・ロジャーズの「ザッツ・オール・ライト」のことで、ウォーキング・ベースを効かせながらも、曲全体では鋭いカッティングとコードストロークで演奏し、あまりダウンホームな感じではない。歌も溌剌とした感じだ。
続く(12)はご存じリトル・リチャードのロックンロールであるが、これも16ビートに仕立て、よりファンキーな感じで演っている。このアルバムでのスヌークスのヴォーカルは、いつものほわっとした感じでなく、結構めりはりのある歌い方が目立つ。途中でラップがはさまっていたり、JBの様なシャウトが飛び出したりと、気持ちのいいヴァージョンだ。(13)は自作のファンキーなナンバー。「ビリー・ジョーの歌」アップにした様な曲だが、とにかく生ギター1本でこれだけのビートが出せるんだから凄い。
次の(14)はサム・クックの「エイント・ザット・グッド・ニュース」。[02]-(18)と同じスタイルの演奏だ。(15)のインストは初めはフラメンコ風なんだが、リズムの解釈がモダン。突然ブルースのパッセージが挿入されたり、キャロル・キングの「イッツ・ツー・レイト」風の演奏に乗って「ファンキー・マラゲーニャ」と唄ったり、スヌークスの頭の中を覗いてみたい。そしてパイントップ・スミスの(16)!これをギターでやるか!世のギタリスト諸君!この2曲をコピーして披露したら君もスターだ!
さて、ちょっと落ち着いて次にいこう。ゴスペル風味の感じられるオリジナルのバラード(17)に続いて、アロンゾ・ステュワート原作のリズミカルな(18)では、ドラムのフィル・インを真似て再びギターを叩いている。ベン・E・キングの(19)、ロニー・ジョンソンの戦後の大ヒット(20)は、比較的オリジナルに忠実で、朗々と唄う。さすが人間ジュークボックス!でもエンディングはサッチモみたい!やはりスヌークスはおちゃめであった。
[06]: DOWN YONDER (GNP/CRECENDO GNPS 10023 [LP])
SIDE ASIDE B
- Down Yonder
- No More Doggin'
- Talk To Your Daughter
- Going To The River
- Oh Red
- Yours Truly
- Travelling Mood
- St. Pete. Florida
- A Teeny Bit Of Your Love
- Mustang Sally
- Let The Four Winds Blow
- San Jose
このコーナーは「CD紹介」で、当初の予定ではCDに限って紹介する予定だった(誰もが入手しやすく、聴きやすいと思って)。しかし KO-1 さんがご厚意で、このアルバムの音を聴かせてくださり、クールなデザインのジャケット写真まで提供してくださった。さらにこのLPの現物入手に大きな手助けをしていただいた。ここに厚く御礼申し上げるとともに、その厚意に答えるべく、内容を紹介したい。
ソネットの2回目のセッションとして、1977年11月にニューオーリンズで録音された本盤は、バックにエリス・マルサリス(ウイントン・マルサリスの父)のピアノ、クラレンス・フォードのサックス、ジョージ(ベース)とボブ(ドラムス)のフレンチ兄弟をむかえ、スヌークスもエレキギターを手に演奏している。全体的に、ニューオーリンズのセカンドライン・ビートとジャズの香りがプンプンする演奏で、特に高音の明るいピアノが印象的だ。前作と異なり、スヌークスの歌がゆるくて気持ち良い。ただ、ギターにディストーションが効いて、痩せこけた音質の曲が多いのは不満だ。バックの演奏が共通の箱鳴りで調和して響いているのに、ギターだけ浮き上がってしまっている。まるで、アンプを通さずにコンソールに直結して録音、その時入力オーヴァーで歪んだような音だ。リヴァーブもかかっていない。その後のスヌークスのCDでこういった音は聞かれないので、本人の好みでなったのではないと思われる。しかし演奏内容は良い。
(A-1)は[04]-(26)の再演、ディキシーランド風味で、ギターソロに「オクラホマ・ミキサー」がちょろっと登場するのがご愛敬。(A-2)はロスコー・ゴードンのヒット曲を軽快にこなし(ラストの方でまたまたアール・キングの「カモン」風コード・カッティングが聞こえる)、(A-3)で[04]-(8)をアレンジもほとんど同じで再録している。(A-4)も[04]-(13)の再録だが、ドラムがよりファンキー。(A-5)はハーレム・ハムファッツの曲だが、スヌークスはスマイリー・ルイスの8ビート・ヴァージョンを下敷きにしたようだ。跳ねるようなセカンドライン・ビートに乗った快演だ。(A-6)も[04]-(1)の再演。殆ど同じように演っている所をみると、スヌークスはやはり IMPERIAL 時代が一番のお気に入りなのだろう。この路線はのちの BLACK TOP 時代につながっていく。
(B-1)も[04]-(12)の再演。スヌークスの代表曲ともいえるこの曲、スヌークスお決まりの「One, two, you know what you do!」というカウントで始める。でもやっぱりギターの音質が気になる。あの三連トリルがスぺーシーに響かないのだ。残念!ラストはルーファス・トーマスのような掛け合いコーラスが飛び出し、曲のムードは最高。続く(B-2)はムーディなサックスが絡むスローブルース。出た!ギターとスキャットのユニゾン!ジャジーに始まり、T-ボーン・ウォーカーのようなチョーキングまでユニゾンで披露。(B-3)はロスコー・ゴードンの「ジャスト・ア・リトル・ビット」で、ピアノが心地よい。お次はウィルソン・ピケットの(B-4)!ギターのカッティングがかっこいいが歌はのどかでいかにもスヌークスだ。多重録音?のコーラスが義務的で笑える。
(B-5)はデイヴ・バーソロミューとファッツ・ドミノの共作で、ロイ・ブラウンがヒットニューオーリンズ・クラシック。おそらくドミノのヴァージョンをベースにしたのだろう。リラックスした演奏で、ヴォーカルも肩の力が抜けていて非常に気持ちがよい。ラストはフレディ・キングの代表的インスト・ナンバー。原曲の突っ込むようなバッキングではなく、あくまでもセカンドラインで跳ねるバックの下、スヌークスは変幻自在なソロを披露する。ピアノ、サックスもソロを取り、強者たちのセッションとでもいうような演奏が続く中、フェードアウトして終わる。このアナログ、見つけたら買って損はないと思うが、それより早くCD化して欲しい。P-VINEさん!お願い!何とかして!!!
[A]: HOT LEFTOVERS (KING not for sale)
- Little Girl Of Mine
1992年 KING から発売の「ブルース名盤コレクション」の10対1特典CDに、[05]で漏れた1曲が収録されている。曲はポップなR&Bナンバーで、シンプルなコードカッティングをバックに、楽しそうにスヌークスが唄う。ときおり「ひとりコーラス」が入るのがご愛敬。この画像(非売品ならではの味気なさ)と音を聴かせてくださったKO-1 さんに感謝!
[B]: I BLUESKVARTER 1964, VOLUME 3 (JEFFERSON SBACD 12658/9)
DISK 1
- Yours Trury
- Pine Top's Boogie Woogie
- My Babe
- Let Me Go Home, Whiskey
- Careless Love
- Rock Island Line
- C C Rider
- I'm Looking For A Woman
- Hello Dolly
- Lomesome Road
レッドビターの「Blues Records 1943 to 1970」にリストされていたので、その存在は知っていたが、今まで音を耳にすることができなかった、「幻」の音源がついに公開された。元々スウェーデンのラジオ番組用に録音された音源のようで、収録は1964年2月6日ニューオーリンズ、全編弾き語り。録音状態も良く嬉しいリリースだ。なお、ジャケット写真はこのシリーズ共通の、シカゴの壁絵のようで、ニューオーリンズとは直接の関係はない。
(1)はお得意のナンバーで、短いが小気味よいプレー。(2)は[05]で再演されているパイントップ・スミスの代表曲だが、重厚でしっかりしたブギを刻んでいる。ノリと切れが本当に素晴らしい。(3)はリトル・ウォルターのヒット曲でウィリーディクソン作。[1]でやっていた"This Train"と基本的に曲は同じだ。イチロクニーゴのコードワークがモダンで明るい雰囲気を出している。
エイモス・ミルバーンお得意の酒場ソング(4)を、スヌークスはその洒落た味を活かしつつ巧みなコードワークでさらっと仕上げている。彼の歌はこういう曲には実に良く合うと思う。続く8小節のブルースクラシック(5)はインストに仕立ててある。歌メロとソロパートを見事なコードワークとソロ演奏の組み合わせで仕上げている。ひとりでこれだけ弾けたらどれだけ気持ちがいいことか。レッドベリーで有名な(6)も切れのいいギターが力の抜け具合が絶妙な歌を支えている。[04]でもやっていた(7)も実にリラックスした演奏。
(8)は自作となっているが、おそらくボーディドリーの同名曲にインスパイアされたものだろう。味のある歌をベースラインのしっかりしたギターが支えている。サッチモの大ヒット曲(9)は、メロディを巧みに弾き込んだインストで、ジャジーなコードワークも楽勝でこなしている。この辺りの間口の広さはさすがというほかない。ラストの(10)はジーン・オースティンがオリジナルだが、この軽妙さはジミー・ランスフォード楽団のものでもベースにしたのだろうか?
結局ここに並べられたものを聴くと、特にヨーロッパではIMPERIAL時代のバンドサウンドは当時殆ど評価されておらず、スヌークスは弾き語りのブルースマンとして捉えられていたのではないか。しかしその限られた条件の中で、何でもありでやってしまうスヌークスの凄さを感じた。SONETの録音と基本的な方向は同じだが、僕は時代の古いこちらの方がむしろシャープな切れを感じるが如何なものだろうか。
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