SNOOKS EAGLIN の CD -part 2 BLACK TOP 時代以降
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*注 ここに紹介するCDは僕の保有するものであり、決してすべてを網羅しているわけではありません。
[07]: BABY, YOU CAN GET YOUR GUN! (BLACK TOP CD BT-1037 ; P-VINE PCD-3774) P-VINE BONUS TRACKS
- You Give Me Nothing But The Blues
- Baby Please
- Oh Sweetness
- Profidia
- Lavinia
- Baby, You Can Get Your Gun!
- Drop The Bomb!
- The Certain Door
- Mary Joe
- Nobody Knows
- Pretty Girls Everywhere
- That Same Old Train
- I'll See You In My Dreams / Mr. Sandman
- Got Love If You Want It
BLACK TOP から劇的な復活をとげた記念すべき作品で、1986年秋の録音。バックはデヴィット・ラスティのサックス、ロン・リーヴィのキーボード、アーヴィング・チャールズ・ジュニアのベース、スモーキー・ジョンソンのドラムで、ロニー・アールが3曲でサイド・ギターを弾いているけど、あまり存在感はない。全体にヴォーカルはほのぼの、緩やかで、声の張りなどは少しブランクを感じさせる。
(1)はギター・スリムの SPECIALITY 時代の曲で、ジャジーなサックスのリフを持つシャッフル。オリジナルのラフなムードと違い、しっかりしたアレンジがなされ、スヌークスも落ち着いてプレーしている。(2)のスローはパーシー・メイフィールドのTANGELINE時代の曲でパーシーらしい落ち着いた歌い回しの佳曲。ここではギターとスキャットのユニゾンが登場、途中"I say, baby"などと唄っている。歌は深みはないが、リラックス。ギターは落ち着いてジャジーだ。まずはウォームアップと言ったところか。
(3)はオリジナルのアップ・ナンバーで、切れのいいバッキング・ギターに乗って溌剌と唄い、ギターを弾く。ライヴだと盛り上がりそうな曲だ。続く(4)はヴェンチャーズで有名な「パーフィディア」で、KO-1 さんが教えてくださったところによると、ペレス・プラードでヒットしたそうだ。作曲はメキシコのマラカス奏者、アルベルト・ドミンゲス作。ベース・ドラムスが入っているが、ふだんはソロで演っているのだろう。ソロ、リズム、ベースをひとりで弾きこなしている。途中ではパーカッション代わりにギターを叩く荒業!これは凄い。(5)はニューオーリンズのトミー・リッジリーのIMPERIAL時代の曲で、典型的なディヴ・バーソロミュー・サウンドのスローバラード。スヌークスはほのぼのと唄っているが、ギター・ソロはシャープ。
(6)はアール・キングの ACE 時代の曲で、(1)をややアップにした感じ。比較的オリジナルには忠実だが、完全に自分持ち歌にしている。2コーラス目のソロは得意技で、こういうフレーズを弾く発想の豊かさがスヌークスの魅力のひとつだ。ジャジーなピアノのサポートも気持ちいい。次の(7)はファンク!自作とクレジットされているが、元歌はトラブル・ファンク。JBみたいに唄っているが、かなり楽しんでいる様子。こういったバッキングもこの人は上手い。エンディングは爆弾というよりロケット花火か?続く(8)はスマイリー・ルイスのバラードで、[04]でも取り上げている。1音間違え?て入るダブるストップのソロがムードを盛り上げる。こういうのをきっと弾き語りでさらっと演っちゃうんだろうな。聴いてみたい。
(9)のシャッフルはフォー・ブレイジズのお洒落なジャンプ・ナンバー(原題は"Mary Jo")、最小限のバックでさらっと仕上げている。ソロでの同じフレーズのしつこいほどの繰り返し、こういうの、好きだな。(10)はIMPERIAL時代にやっていたオリジナルのスロー・ナンバーで、決して上手いとは言えないが、人柄のにじみ出たた味のある唄を聴かせてくれる。次の(11)、いつものカウントから始まるユージン・チャーチのR&Bナンバーで、オリジナルは女性コーラスも入りおちゃらけたポップな感じ。スヌークスは効果的なサックスのリフをバックに、シンコペの効いた16ビートの切れのいいバッキング・ギターで、ソロとの切り替えが凄い。本当に何でもやってしまう。
ボーナスの(12)は1991年録音で、「ブルース・パジャマ・パーティ」に収録されていた曲だ。ロリー・マッギルと言う人の曲(MERCURY の8枚組に、この人は収録されていたが、この曲はなかった)で、ゴスペルに通じる曲調だが、ギター・ソロはアグレッシヴでかっこいい。(13)は1990年録音のソロ演奏で、元歌は古いスタンダード、映画の挿入歌としてドリス・デイがヒットさせたそうだ。そして後半はコーデッツのヒット曲。いずれもチェット・アトキンスがカヴァーしており、おそらくそれらを参考にしたんだろう、チェットばりのテクニックが満喫できる。ラストはスリム・ハーポの曲で、原曲以上にルンバ風のリズムを強調した仕上がりだ。1991年録音。
ジャケットは P-VINE 盤は原盤と同じ写真を使用しているが、画質がやや落ち、ロゴも少し変更されている。
[08]: OUT OF NOWHERE (BLACK TOP CD BT-1046 ; P-VINE PCD-3775) P-VINE BONUS TRACKS
- Oh, Lawdy, My Baby
- Lipstick Traces
- Young Girl
- Out Of Nowhere
- You're So Fine
- Mailman Blues
- Wella Wella Baby-La
- Kiss Of Fire
- It's Your Thing
- Playgirl
- West Side Baby
- Cheeta
- Bombastic
- Young Boy Blues
- Kiss Of Fire -alt.
1989年にリリースされた BLACK TOP 2作目は、ご覧のようなインパクトの強いジャケットと、それに負けない強烈な内容を持った作品だ。録音は1988年。全体は大きくふたつのセッションから構成されていて、それぞれ豪華メンバー。ロン・リーヴィは両方のセッションに参加している。まず、アンソン・ファンダーバーグのギターとマーク・"カズ"・カザノフのサックスをフューチャーしたセッションから。(1)はトミー・リッジリーのIMPERIAL時代の曲で、オリジナルよりタイトな、ブラス・セクションの加わったドライヴするセカンド・ラインをバックに、アグレッシブで切れるギターと、どこかのほほんとした歌のコントラストが面白い。アンソンもスヌークスの前ではただの人か?(3)はジェリー・マッケインのバラード(オリジナルのタイトルは"Listen! Young Girls")で、ジェリーのかつてのレーベル・メイト、サム・マイヤーズの暖かいハープがほのぼの・ユルユルなムードをいっそう高める。次の(4)はジャジーなインスト。元々は瓶グ・クロスビーなどがヒットさせたスタンダードで、チャーリー・パーカーなどジャズの曲としてよく取り上げられている。これは上手い!オクターヴも決める。カズのサックス・ソロもいかしているが、そのバックに回った時のスヌークスのコードワークも見事。
(5)はウィルソン・ピケット作のファルコンズのナンバーで、楽しそうに演っている。かっこいいギター。歌にディープさがまったく感じられないのがスヌークスの持ち味だ。(7)はナッピー・ブラウンのマイナーなミディアム。ナッピーはスヌークスにとってのアイドルなんだそうだ。でも、なんで SAVOY 時代のナッピーのまともなリイシューってされないんだろう。「ライト・タイム」とかも聴きたいのに・・・なんて書いていたら2枚組のリイシューが出て大満足。余談はさておき(12)は歌詞も楽しいスヌークスのナンバー。タイトルの「チータ」はターザンの相棒のことだろう。ブラスのリフからしてニューオーリンズ丸出しで、結構曲がポップで親しみやすいナンバーだ。
もうひとつのセッションはロニー・アールのギターと元リトル・リチャード・バンドのグラディ・ゲインズのサックスがフューチャーされている。リトル・スヌークス・ジュニアがベースを2曲ほど弾いているが、息子だろうか?さて、(2)は低音の魅力ベニー・スペルマンのヒット曲で、スヌークスにはキーが低いなと思っていると、ちゃんとオクターヴ上げて唄う。こう来なくっちゃ!ひとりコーラスも聴かせてくれておちゃめだ。ジャズっぽいコードワークとラストの16のカッティングは得意技のひとつだ。
ロイド・プライスがオリジナルの(6)は、原曲よりかなりアップにして、ロックンロールっぽく仕上げている。先のソロはロニー・アールで、結構がんばっている。途中でT-ボーン風の決めもあったりして。(9)はアイズレー・ブラザーズのスマッシュ・ヒットで、いろんな人がカヴァーしているが、スヌークスは結構適当な歌詞で唄っている。でもバッキングとオブリやソロの切り替えが凄い。次の(10)はスマイリー・ルイスの曲で、これも原曲よりかなり軽快に仕上げてある。ジャズっぽいコードワークやギターのベース・ランニング、シンコペするソロが素敵。ジャズ・フレーヴァーに溢れる曲だ。一転して(11)はT-ボーンのスローブルース。ゴージャスなムードで、落ち着いて唄う。このアルバムは結構ジャズがかっているようだ。ロニーのギター、グラディのサックスもいいんだが、スヌークスのスケールの大きなソロがやはり格好いい。
ソロ・インストの(8)はタンゴの名曲で、KO-1さんによればタンゴの超有名曲"El Choclo"の英語タイトルだそうだ。「エル・チョクロ」と読み、一般的にはトウモロコシの意味だとか。ブエノスアイレスのアンヘル・ビジョルドの作。しかし超絶テクニックですな。ボーナスの(15)は別ヴァージョン。残りのボーナスも1988年録音で、(13)はシャッフルのインスト。サム・マイヤーズのリトル・ウォルター風のアンプリファイド・ハープがいい。ファンダーバーグのサザン・ビートのバッキングに乗って、結構シカゴ風なギターも聴かれる。(14)はベン・E・キングの名曲で[05]の再録。
このアルバムからは、BLACK TOP のハモンド・スコットの、スヌークスに対する並々ならぬ愛情を感じる。名盤。お薦めの1枚!
[09]: TEASIN' YOU (BLACK TOP CD BT-1072 ; P-VINE PCD-3776) P-VINE BONUS TRACKS
- Baby, Please Come Home
- Soul Train
- When It Rains It Pours
- Teasin' You
- Dizzy Miss Lizzy
- Black Night
- Sleepwalk
- Travelin' Mood
- Jesus Will Fix It
- Don't Take So Hard
- Heavy Juice
- Lilly May
- My Love Is Strong
- Red Beans
- I'm Slippin' In
- Besame' Mucho
- Baby, Please Come Home
元ミーターズの「隙間命」べーシスト、ジョージ・ポーター・ジュニアとそのトリオがバックについた1991年録音の BLACK TOP 第3弾。酒場でリラックスした雰囲気のジャケットが楽しい。サックスにまたもグラディ・ゲインズや"カズ"・カザノフが参加している。(1)はロイド・プライスのアップ・ナンバーで、お洒落なブラス・セクションなど、オリジナルのムードを活かしながら、楽しくスタート。ジョージ初め演奏がどっしりとしており、楽曲としてのまとまりがしっかりしてきた。グラディのソロもフューチャー。(2)はアール・キング作の曲で、カーリー・ムーア、次いでボビー&ザ・ヘヴィーウェイツによってリリースされた。おそらくスヌークスは後者を下敷きにしたと思われ、ちょっとロックっぽい面もある。歌はほのぼの、でもギターソロは鋭い。
(3)は決めの格好いいビリー・"ザ・キッド"・エマーソンのスロー・ナンバーで、ジェームズ・コットンも演ってた。このアルバムの特徴となる、楽曲重視の演奏で、しっかり仕上げている感じだ。アルバム・タイトルとなる(4)はウィリー・ティーの曲。この人はニューオーリンズの人ながらノーザンぽいサウンドで、結構オリジナルに忠実に演っている。でもソロはブルージーだ。コーラスはジョージ。原曲自体がインプレッションズの「イッツ・オール・ライト」の影響をもろに受けているが、このヴァージョンは、エンディングで「イッツ・オール・ライト」そのものになっちゃうのがご愛敬。
(5)はビートルズでも有名なラリー・ウィリアムズのロックンロール。切れる16ビートのバッキング、スピード感抜群だ。でも歌はどこかのんびりしているんだよね。と次の(6)は一転してスロウ。このギャップが凄い。曲はチャールズ・ブラウンの超有名曲。普通この歌とかを演ると、どこかチャールズになってしまうんだが、そこは飽くまでもスヌークス、全然チャールズっぽくない。ギターとスキャットのユニゾンもお洒落、このソロ、間のとり方が最高。ジョージが惚れ込むわけだ。(7)はサント&ジョニーのギター・デュオでヒットさせたインストだそうで、ひとり二役、ニュアンスたっぷりのポップなギタープレイが魅力的。ときおり見せるハンマリングやトリルの速くて切れのいいこと、本当に上手い。
3回目の録音となるジェイムズ・ウェインの(8)は、今回はずっと重心を下げたファンキーなアレンジにトライしている。このリズムセンスにはただただ脱帽。オリジナルのイメージは歌を除くとかけらもない。続くゴスペル・ナンバーの(9)は明るいムード。スヌークスの唄うゴスペルはみんな明るいんだよね。でもギターは何か演ってやるぞって感じ。フィラデルフィアのアール・コネリー・キング(オリジナルは未聴)といった(10)は、ギター・スリム風のバッキングでのどか。ルイジアナ丸出しって感じだ。スヌークスのギターのトリッキーさが満喫できる。
(11)はタイニー・ブラッドショウのインスト。格好いいテーマに続いてのサックスはカズ。バッキングのギターがスヌークスの並々ならぬ音楽センスを伺わせる。曲自体は軽く決めたって感じだ。スヌークスの大好きなスマイリー・ルイスの(12)は原曲よりテンポを落としている。6thの効いたバッキングが印象的だ。ソロでは[07]-(6)と同じフレーズも飛び出し、ブルースの枠を完全に超越したソロだ。もっともこの人はブルースの人じゃないけど。オリジナル通り、ひとり二役の腹話術のような会話がご愛敬。(13)はアールキングのルイジアナ三連、原作ほど感情移入をしない軽い唄い口、ほっとする曲だ。(14)はロックンロール・ナンバーで、ギターまでロックしてる。ぐいぐい引っ張るギターがとっても気持ちがいい。
このアルバム、P-VINE 盤は廃盤で、このページを作った頃僕は BLACK TOP 盤しか持っていなかった。でも例によってKO-1さんのご厚意により、音を聴くことができた。感謝!その後めでたく P-VINE盤も入手した。で、(15)は1994年録音で、「ブルース・コスチューム・パーティ」に収録されていたものだそうだ。気持ちのいい曲だ。(16)と(17)は1991年録音で(17)は(1)の別テイク。メキシコ音楽の超有名曲(16)はギター・インスト。作者はコンスエロ・ベラスケス、どことなくエキゾチックな演奏がお洒落だ。
[10]: SOUL'S EDGE (BLACK TOP CD BT-1112 ; P-VINE PCD-3777) P-VINE BONUS TRACKS
- Josephine
- Show Me The Way Back Home
- Ling Ting Tong
- Aw' Some Funk
- I'm Not Ashamed
- Nine Pound Steel
- Answer Now
- Skinny Minnie
- Thrill On The Hill
- You And Me
- I Went To The Mardi Gras
- Talk To Me
- Mama And Papa
- God Will Take Care
- Brown Alert
- Drive Her Home
- Tipitina
スヌークスのBLACK TOP最終作。ジャケットに写っているケースの中身はエピフォン。前回に引き続きジョージ・ポーター・ジュニアのトリオがバックを固めている。1994年録音。のっけから御機嫌なファンキー・ドラミングで幕を開ける(1)、セカンドラインの効いたビートでファッツ・ドミノ・ナンバーが始まる。原曲はスネアが印象的な、ちょっとヒューイ・スミスに通じるエイトビートだが、そのイメージを完全にぶっ飛ばすようなリズム!透き間だらけのポーターのベースがファンク指数を高めている。このアルバムに対する並々ならぬ意気込みを感じさせる曲だ。続く(2)、オリジナルはウィリー・ティのATLANTIC録音「アイ・ウォント・サムバディ」、一言「格好いい!」切れ味のいいストレートなアップナンバーで、スヌークスとリズム隊との絡みも最高。ソロではスパニッシュ風のフレーズも飛び出す。(3)はファイヴ・キーズの曲(オリジナル未聴)だそうだが、セカンドライン丸出しで、ニューオーリンズしか考えられないサウンドだ。ピアノはディヴィッド・トーカノフスキーでいかしてる。ジョージ・ポーターのバンドに絞り込んだのが、演奏をタイトにして好結果を出していると思う。
(4)はタイトでドライヴ感のあるシャッフル・インストで、このドラムもただものではない。次の(5)はボビー・ブランドのソウル・バラードだが、スヌークスの手にかかるとこれもニューオーリンズ・チューンになってしまう。ブラスの使い方が控えめで、スヌークスが活きている。(6)はジョー・サイモンのゴスペルっぽいソウル・バラード(オリジナル未聴)、囚人の心をしみじみと唄い上げている。切れ目なく続く(7)はタイトル通り(6)へのアンサー・ソングのようなインストで、途中"Answer now, Baby"とジョージらの声が入る。現代的な曲とアレンジ。この辺りを聴くと、このアルバムがトータルに構成されているのがよく分かる。
ビル・ヘイリーとコメッツのナンバー(8)は、原曲にほぼ忠実なラテン風のアレンジ。でもリズムはやっぱりセカンドライン。ジョージのベースが効いている。初めはブルージーだったのが、途中でスパニッシュ風になるソロはスヌークスならでは。次のハンク・バラッドとミッドナイターズのR&Bナンバー(オリジナル未聴)(9)は、冒頭のコーラスから楽しげで、スヌークス個人というよりはバンドの曲になっている。ソロはおとなしめだが、それでも何が出るか分からない。続く(10)はスローブルース風のインスト。ジャジーなフレーズを交えたり、左手の高速トリルとか、落ち着いた演奏なのに凡百のブルースにならないのがスヌークス。後半激しくなっていくところが圧巻。
(11)はプロフェッサ・ロングヘアなどに通じるルンバ調のマルディ・グラ・ソング。クレジットはスヌークス、とトミー・リッジリー、それに BLACK TOP のオーナーのスコットとなっているが、実はジョー・ラッチャーの「マルディ・グラ」が原曲。こういう音はニューオーリンズならでは。ここでもディヴィッドのピアノが大活躍。リトル・ウィリー・ジョンのスローバラード(12)は、ゆったり、穏やかに演っている。結構ムーディな1曲。(13)はインペリアル時代のアール・キングの曲で、ブラスも入ったニューオーリンズ・フォンクですな。またまた腹話術的会話も登場。やっぱりおちゃめ。アルバムを締めくくるのにふさわしいゴスペル・ワルツの(14)、2度目の来日のライヴでもこれをラストに演っていた。思わず涙が出てきたのを思い出す。
ボーナスの3曲も1994年録音。(15)はオリジナルとされているが、ローウェル・フルソンの SWING TIME 時代のインスト、「ギター・シャッフル」だ。この曲、他のページで取り上げておいたように、エディ・テイラーも演っていたが、こちらは大変落ち着いた演奏で気持ちいい。でも、この曲人気あるんだなぁ。(16)は得意のミディアム。16ビートの効かせ方がなんとも言えない快感。ラストはスヌークスの盟友だったプロフェッサ・ロングヘアの代表曲。ゆったりとファンクっぽくアレンジしている。
このアルバムはスヌークスのヴォーカルがあまりほんわかしておらず、締まった感じになっている。しかし何より音処理、選曲など、アルバムとしての完成度が高く、長尺なのに通して聴いてまったく飽きが来ない。間違いなくスヌークスの最高傑作だろう。買って損なし、超お薦めの1枚だ。
[11]: SOUL TRAIN FROM NAWLINS (P-VINE PCD-4789)
- Quaker City
- I Went To The Mardi Gras
- Soul Train
- Don't Take It So Hard
- My Girl Josephine
- Down Yonder, We Go Ballin'
- My Love Is Strong
- Teasin' You
- Lillie Mae
- Nine Pound Steel
- It's Your Thing
- Your's Truly
- Boogie On Reggae Woman
- Black Night
- Red Beans
- God Will Take Care
- Travelin' Mood
1995年12月のパークタワー・ブルース・フェスティヴァルのライヴ。録音は9日と10日からセレクトして構成されている。バックはジョージ・ポーター・ジュニアのトリオ。録音のせいか、スヌークスのギターの音色を捉えきれていない面はあるが、非常に充実したライヴの模様であるから、充分に聴き応えのあるアルバムとなった。でもジャケットの写真でポーターの胴体しか写ってないのがちょっと残念。
イントロデュースの後、まずは軽快なシャッフル・インスト(1)でスタート。16分音符のフレーズやジャズ的フレーズもちりばめられていて、まずは軽いウォームアップといったところか。(2)は[10]から、リラックスした演奏で、後半盛り上がる。(3)はこのアルバムのタイトルともなっている[09]からの曲。ややテンポを速めて急行列車といった趣。途中ジョージとのヴォーカルの掛け合いが聴かれる。続く(4)も[09]からのスローナンバーで、スタジオ作よりもリラックス、スヌークス自身が楽しんでいる様子が伝わってくる。
ドラムのイントロから始まる(5)、これ、ライヴで演っちゃうの!と見に行って驚いた[10]の曲。本当にこのドラムは凄い!それにジョージのベースも盛り上げる。次の(6)は[04]や[06]で演っていたスマイリー・ルイスの曲で、「その昔、ルイスとのセッションで俺がギター弾いたんだぜ」といって始める。お得意のナンバーだけあって、これも楽しい。変幻自在のギターソロが聴き物。唄で掛け合うポーターも楽しそう。最後は会場との掛け合いまで飛び出す。次も友人アール・キングの曲で[09]からのセレクト。ほっとする1曲だ。
「ゴメン、弦を見てなかったよ」と盲目のスヌークスが言いながら始まる(8)は[09]のタイトル曲。本当にリラックスしてるなぁ。遊びに来て演っているみたい。ソロでもしっかり遊んでるし。(9)はまたまたスマイリーの曲で[10]から。軽快な演奏で、例の腹話術掛け合い(女役はジョージだったっけ?)も聴ける。やっぱりこの人、エンターティナーだなぁ。と思っているとしっとりとした(10)、これも[10]から。ソロでちらっと見せるベースとの決め、ジョージはツボを心得ている。阿吽の呼吸ですな。
[08]からのファンク・ナンバー(11)、このスタートが傑作だ。曲の紹介をして「いいかい」とイントロを弾きはじめるんだが、すぐに中断。「キューを出し忘れたよ」とカウントからやり直す。好きだなぁ。この曲でも会場との掛け合いがある。もう少しホールの音を拾うマイクをしっかり据えておけば、場のムードがよりリアルに伝わったのに。惜しい。「ピー・ウィー・クレイトンの曲」と紹介して始める(12)は、彼の IMPERIAL でのデビュー曲で、[04]に収録、[06]でも再録しているお得意のナンバー。ギターソロでも[07]-(6)で演ってたお得意のフレーズが。そして次がスティーヴィー・ワンダーのヒット曲(13)、いったいどういう選曲なんだろう。原曲より軽快な感じに仕上げてある。何を演ってもスヌークス。
(14)は「ソフトに」とチャールズ・ブラウン・ナンバー。[09]収録。「ストマン」進行のスローブルースに仕立ててあり、「弦こすり奏法」もたびたび登場。そして圧巻は"ミスター隙間"ジョージ・ポーター・ジュニアのベースソロだ。エフェクタをかけて縦横に弾きまくる。でも隙間がいいんだよね。そして出た!ギターとスキャットのユニゾン。スヌークスのスロー・ナンバーの面白さはすべて出たって感じだ。お次はドライヴ感抜群の(15)で[09]のラスト・ナンバー。思いっきり盛り上がって本ステージは幕を閉じる。
これで客が黙っているわけはなく、怒濤のアンコールの足踏み!で再登場して始めた曲は(16)で、こちらは[10]のラストを飾っていたゴスペル・ワルツだ。スタジオ盤よりもはるかにゆっくり演奏し、客をクールダウン?いえいえ、楽しかったライヴの余韻に浸らせてくれる。恋人同士で行っていたら肩組んで目をつぶるムードだ。ラストはお待ちかねスヌークスの代表曲とも言える「トラヴェリン・ムード」だ。アレンジは当然[09]のもの。アンプも程よく暖まり、ドライヴ感充分!ふだんは座って弾いているスヌークスが、立ち上がって、ギターを背中に回して弾く姿(ライヴで見た)を彷彿させる演奏だ。また来てその姿を見せてくれ!と叫びたくなる幕切れだ。
この作品についてはsumoriさんによる紹介も合わせてご覧いただきたい。
[12]: LIVE IN JAPAN (BLACK TOP CD BT-1137)
- Quaker City
- I Went To The Mardi Gras
- Soul Train
- Don't Take It So Hard
- Josephine
- Down Yonder (We Go Ballin')
- Lillie Mae
- Nine Pound Steel
- It's Your Thing
- Your's Truly
- (Boogie On) Reggae Woman
- Black Night
- Travelin' Mood
- Reprise
[11]と同じ音源を使ったもの。曲はこちらが少ない。(2)の出だしのミスがカットされている、(5)のカウントがなくなっている、(9)([11]-(11))の頭の失敗がなくなっているなど、より作品として完全なものにするための編集がなされているようだ。確かに[11]はライヴ後3ヶ月でリリースされているから、いろいろアラもあったわけだが、その分面白かったとも言える。ちなみにこちらのジャケットではポーターの顔が写っている。また、エピフォンを使用しているのが分かるが、僕が見た2回のライヴではいずれもストラトだった。音の違いを聴いてみたかった。
[13]: THE WAY IT IS (MONEY PIT MPR-1111 ; P-VINE PCD-5677) P-VINE BONUS TRACKS
- Can You Hear Me?
- Boogie Rambler
- Lock Doctor
- Trees
- I Don't Speak Espanol
- A Mother's Love
- Goast Of A Chance
- Express Yourself
- I Done Got Over It
- The Cokin' Kind
- Cubano Mambo
- Looking Back
- I've Been Around The World
- You're A Sweetheart
スヌークスの2002年に出た新譜は、彼の最も信頼している元BLACK TOPのハモンド・スコットがプロデュースし、MONEY PITというインディ・レーベルから出された。内容はBLACK TOP時代の名作[10]よりはインパクトは薄いものの、その延長線上にあり、期待を裏切らない佳作となった。まるで子供向けのお菓子か絵本のパッケージのようなカラフルな文字のジャケット、近くP-VINEから出る日本盤では変えられるそうだが、僕はけっこう気に入っているのだが。
このアルバムには、アーヴィング・チャールズ・ジュニアのベースとレイモンド・ウェーバーとのトリオをベースにしたセッションと、最近アルバムを出したイギリス人若手キーボーディスト、ジョン・クリアリー(彼はアルバムのアソシエート・プロデューサに名を連ねている)と彼のアブサルト・モンスター・ジェントルメン(しかしなんてネーミングだ!)とのセッションがおさめられている。前者は比較的どっしりした安定感のあるリズムをベースにしており、スヌークスのプレイも落ち着いている。例えばギター・スリムのSPECIALTY時代の曲(9)やジョー・サイモンの代表曲(10)がその代表で、(9)ではオリジナルより少しテンポアップした、モダンなテンションコードの使い方が実にスヌークスらしいし、(10)は逆にややテンポを落とし、どっしりした演奏がスヌークスのギターをひときわ引き立てているように思う。
(12)はブルック・ベントンとクライド・オーティスの作によるナット・キング・コールの名曲。ぐっと甘さを押さえ、ハートのこもったスヌークスのちょっと切ないヴォーカルが心に染み渡る。このアルバムで僕の最も好きな曲。しかしチャールズのベースにジョージ・ポーター・ジュニアの影が見えるのは気のせいか?
ビング・クロスビーの曲(未聴)で、最近出たAPOLLOのイリノイ・ジャケーのものにも入っていたインスト(7)では、トニー・ダグラーディのムーディなサックスが全面的にフューチャーされている。ここではスヌークスは生ギターを弾いているが、思いっ切りジャジー。AMGによるとレスター・ヤングもやっているようなので、その辺をベースにしたのかな?またゲイトマウスのPEACOCK時代のシャッフルナンバー(2)では、若干キーとテンポを落としており、ダグラーディのサックスがムーディに絡む。ギタープレイはまごうことないスヌークス節で、オリジナルと聴き比べるとその個性の違いが浮き立って面白い。ライヴで聴きたいナンバーだ。
一方ジョン・クリアリーのバンドとのセッションは、軽快でファンキーな曲に味がある。その代表がオリジナルの(1)。途中でコードチェンジがあるが、ほぼ1コードのファンクナンバーで、後述する(13)とともにジャムセッション的だ。クリアリーのファンキーなクラヴィネットをバックに、スヌークスのギターはナイロン弦を思わせるナイーヴさを感じるサウンドだ。チャールズ・ライトの代表曲(8)も同様のサウンドで、スヌークスの切れ味のいいギターと軽い声がよくマッチしている。
(3)はBLACK TOP時代のレーベルメイト、ジェイムズ・ハーマンの曲だけれど僕は未聴。シンコペの効いたゆったりしたエイトビートのブルースナンバーで、ソロの後のブレイクも気だるさを感じさせていい。オリジナルを聴いてみたい。アール・キング作のバラッド(6)は、オリジナルの三連を軽快なエイトビートにアレンジし直してあり、得意なジャジーなフレーズに絡むクリアリーのB-3が効果的だ。また(4)は古くは1930年代にフレッチャー・ヘンダーソンもやっていたジャズのスタンダードのようで、プラターズやスパニエルズも歌もの(元々アルフレッド・ジョイス・キルマーという19世紀末〜20世紀初頭の詩人の作品に曲をつけたもののようだ)として取り上げていたナンバーだが、ここでは複弦弾きのジャジーでお洒落なインストとなっている。
クリアリーのバンドは多彩なサウンドを苦もなくこなしている。(11)はオリジナルのカリプソ風インストで器用なクリアリーのピアノにウェーバーのパーカッションが絡んでムードたっぷり。時折混じるブルージーなフレーズがいかにもスヌークス。一方 (5)もカリプソナンバーだが、こちらはアコースティック・ギターを用いたチャールズ/ウェーバーとのトリオ(パーカッションのオーヴァーダブはあるが)。タイトルからも分かるユーモラスな歌と演奏で実にくつろいでいる。スヌークスが時折やる裏声の語り(女声を模している)が何とも楽しい。
さてラストナンバー(13)はクリアリー達とのジャムセッションぽい、ちょっとゴスペル風味を感じさせる2コードのファンク・ナンバー。スヌークスの「世界中いろんなところを回っているよ」という語りっぽい歌の冒頭「ジャパン」から始まるのを聞くと、やっぱりスヌークスにとって日本は遠い土地なんだなって思う。でもまた来て欲しいなぁ。「この街でやってた俺のバンドにはアレン・トゥーサンもいたぜ」なんて歌っているところに、スヌークスのプライドを感じた。でもライナーにもあるように、スヌークスと永らく付き合いのあったドクター・ジョンと、特にジョージ・ポーター・ジュニアの名前があえて除かれている。何で読んだか聞いたかあいにく失念したが、ジョージによると「俺がいろいろ指図しすぎるってことで、首になった」なんて話していたと思うが、どうやら本当のようだ。
P-VINE盤のボーナストラックはクリアリーとのセッション。1937年の同名のミュージカル映画の主題歌で、ドリー・ドーンという女性歌手の持ち歌だそうだ。瑞々しい歌。オクターブ奏法を用いた落ち着いたソロ。アルバムのバランスからいえば「蛇足」かもしれないけど、やっぱりファンとしては嬉しい。最後にP-VINE盤のジャケットデザイン(下段)について一言。おそらく初来日時の写真(鈴木敏也撮影)で、素晴らしい写真だと思うが、僕はオリジナルのデザインがよりアルバムの中身を表しているように思った。確かに初めてスヌークスを手に取ろうっていう人は、ピンク地にカラフルな文字というデザインでは引いてしまうかもしれない。でもそれが味なんだっていうことは聴けば分かると思うのだが(オリジナルデザインはブックレットの裏表紙になっている)。
[A]: BLACK TOP BLUES-A-RAMA VOLUME 6 (BLACK TOP CD BT-1073)
- I Cry, Oh!
- Irene
- Apache
- Certainly Ya'll
- Dizzy Miss Lizzy
BLACK TOP のライヴ・オムニバスにスヌークスが5曲収録されている。ジャケット写真もご覧の通りスヌークス。やはり看板なのだろう。1989年ニューオーリンズはティピティーナのライヴで、バックは[11]と同じくジョージ・ポーター・ジュニアのトリオ。(7)はエディ・ボーのナンバー(オリジナル未聴)で、得意のアップ・ナンバー。例によって16ビートのカッティングとソロのスウィッチングが見事だ。スヌークスとジョージのコンビネーションも完璧。このメンバーは以前からしょっちゅうクラブで演っていたことを伺わせる。次の(8)はルイジアナのギター・ゲイブルの曲で、原曲よりやや軽快に演っている。ジョージのコーラスが和ませる。でもギターソロはいつも通りの八面六臂の大活躍。
参考文献は、スヌークス・イーグリンのページと同じ
続く(9)はヴェンチャーズ・ナンバー!例によって完全なソロ演奏の後にドラム・ベースがくっついているっていう感じだ。途中で聴かせるギターのパッセージにしっかりラテンやフラメンコの風味が入ってるのがスヌークス。色々な人の要素がガンボになっているようだ。ギター・スリムの(10)(オリジナル未聴)は軽快なシャッフル・ナンバーで軽く決めたって感じ。ラストの(11)は後に[09]で取り上げるロックンロール。こういう大量のレパートリーから何曲かピックアップしてアルバムを作っているのだろうか?[09]はそういう傾向がありそうだ。[10]はよりしっかりプロデュースしたようだが。
最後にこのアルバムの他の収録について。1〜6はスヌークスの録音にも参加しているアンサン・ファンダーバーグで、サム・マイヤーズも加わっている。12〜15はシカゴの職人ギタリスト、ヒューバート・サムリン。
[07]〜[10]のCD 写真はすべて BLACK TOP 盤のものを使用
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