LOWELL FULSON の CD -part 5 80年代〜
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*注 ここに紹介するCDは僕の保有するものであり、決してすべてを網羅しているわけではありません。
[51]:THE BLUES SHOW! LIVE AT PIT INN (P-VINE PCD-2843)
- Jumpin' With L.F.
- You're Gonna Miss Me
- Going To Chicago
- Blue Shadows
- Talkin' Woman
- Everyday I Have The Blues
- River Blues
- Walkin' With Mr. Lee
- Reconcider Baby
- Blues Pain
- Sinner's Prayer
- Tramp
1980年11月28日の第2回ブルースショウの際の六本木PIT INNでのライヴ録音。僕はこの第1部を現場で見ていた思い出の多いアルバムで、元々はYUPITERUから出ていたもののストレートリイシュー。ジャケットはその時のものと違い、来日時のものとは異なるチェックの上着の写真をセピア仕立てで使用。バックインレイの写真(来日時のもの)が結構いいのだが。
ブルース・ブロンバーグのMCに続いてファンキーなインスト(1)が始まる。観客は総立ち。フルソンの野太いギターの音が鳴った瞬間に会場は興奮の坩堝。続く(2)は自身がタイトルを紹介して始まるお得意のシャッフル。その歌声の深さにぶっ飛んだのを覚えている。最高のブルースヴォイスだ。大股なソロといい、唐突な終わり方といい、インパクト充分。次はジミー・ラッシングの持ち歌で、フルソンもKENT時代にやっていた(3)。ささやくようなMCのあと、フルソン自身のギターからスタート(デニス・ウォーカーが最初ベースのフレーズを間違えているのはご愛敬)。ナット・ダヴの印象的なピアノをバックに、気合いのこもった歌声を聞かせる。リー・アレンのソロをあおるようなフルソンのギター・カッティングがやる気満々さを感じる。
スローブルースが続く。(4)はフルソンの代表曲のひとつ。伸びやかなフルソンのギターの音から、やや力を抜いた歌い出し。これがだんだん力が入ってくると、もうディープなフルソン節で身震いすらするくらい。リー・キングの的確なバッキング・ギターも光る。一転してタイトなリズムの(5)。これもKENT時代の曲で、出だしの語りの後に明らかに僕の声と分かる笑い声が入っている。イントロの後「字余り」があってバックとちょっと合わなかったけどそんなのお構いなし。リー・アレンの素晴らしいソロに思わず身体が揺れてくる。さらにもう言うことのない名曲6をゆったりとしたスローにしての演奏。ここまで6曲はおそらく第1部の演奏を無編集でそのまま収録したように思う。そのくらい本番のライヴも充実していた。
主催者のリクエストに応えて、ピアノ、ドラムをバックにした準弾き語りのカントリー・スタイルで演奏されたディープなブルース(7)は第2部からの収録。会場はしんと静まりかえり、その中でフルソンの切迫感のある唄が響き渡る。続く(8)はリー・アレンの代表的なインスト・ナンバー。ライヴではフルソンが登場する前に披露した曲で、「フロム・ファッツ・ドミノ・バンド、ミスター・リー・アレン!」のMCの後にゆったり目のテンポで演奏される。途中ドラムだけのバックでロングトーン(この途中に聞こえる「ヤァ」という声の主はうちのバンドのフクダだ)まで披露、その非凡な技が充分に堪能できる。エンディングが合わずに1コーラス余分にやっているのもご愛敬。
フルソン最大のヒット曲(9)はじっくりとしたテンポで、ネトッとしたギターのイントロに続き、これぞフルソンという歌い出しに痺れる。ワイルドさを感じるソロも圧巻。次の(10)は多分第2部から。まるで「ブルースは歌だ!」とでも主張するかのような、魂の底から絞り出すような「痛み」のブルース、リー・キングのオブリガートがよくマッチしている。とにかく全員のテンションが異様に高い演奏だ。
(7)と同じ編成で弾き語り風に歌っている(11)は、オリジナルよりもぐっと高い声域を使い、シャウトする。ラフだけど感情移入たっぷりで引き込まれる。そして引き続きアンコールに応えた(12)、やや手数の多いジョニー・タッカーのドラムもこの曲では効果的に演奏を盛り上げている。とにかくテンションが高い。会場も大盛り上がりの様子がびんびん伝わってくる。
このアルバムはフルソン唯一のライヴアルバムだが、おそらく数あるブルースのライヴ盤の中でも屈指の1枚だ。ライヴ盤嫌いのフルソンだそうだが、このアルバムを世に残してくれたことに感謝したい。ここにはまさにリアル・ブルースが息づいている。
[52]:BLUE SHADOWS (STONY PLAIN SPCD 1233)
- Oh! Well Oh! Well
- Reconsider Baby
- I Cried
- Guitar Shuffle
- Blue Shadows
- Stoop Down
- Sinner's Prayer
- You're Gonna Miss Me
- Mean Old World
- Do You Feel It
- Interview With Lowell Fulson
1981年、カナダはヴァンクーヴァーで、パウダー・ブルースというおそらく現地のバンドのメンバーをバックにした録音。1997年にリリース。パウダー・ブルースは三管を含むバンドで、特にジャンプ系の曲がなかなかイカしている。(1)がその手の代表で、[46]-21の再演。はつらつとした声だ。イントロのリフをブラスでやっている代表曲の再演(2)もじっくり落ち着いて歌う。この2曲のギターソロはフルソンではない。これも名曲の再演(5)ではピアノ、これも[46]-15でやっていた、チック・ウィリスの曲(もとはシャッフル)を結構ノリのいいファンキーなエイトビートにした(6)では、サックスがソロを取るなど、バックバンドを立てた造りだ。いずれもフルソンの歌はいい。
フルソンのギターはSWING TIME時代の代表的インスト(4)で3コーラス弾いているが切れはいまひとつ。むしろライヴ盤とほぼ同じアレンジの(8)でのイントロのギターがいかにもフルソンらしい。またT-ボーン初期の名曲(9)のソロも落ち着いた好プレイ。しかし彼が歌うとよりごつごつしたフルソン節になるのがすごい。
(8)の他、何曲かはブラスなしの演奏。ディープな歌が聞こえる(7)にはハーモニカのソロが入っている。またKENT時代の曲の再演3でもタフな歌声を聴くことができる。すっきりしたワンコードのエイト(10)はジャムセッション的な演奏だ。
このCDには最後に17分に及ぶインタビューが収録されている。内容はテキサス・アレキサンダー、カリフォルニアへ移ったこと、「リコンシダー・ベイビー」の録音、レイ・チャールズ、「トランプ」、パーシー・メイフィールド、オークランド周辺のレコード会社、西海岸の音楽シーン、ロックンロール等について語っている。この中で「T-ボーン、ジョー・ターナー、そして俺がウェストコーストのビッグ3だ」と自信を持って語っているのがジャケットのアップの顔写真とタブって印象的だ。
[53]:ONE MORE BLUES (EVIDENCE ECD 26022-2 / BLACK & BLUE BB 430.2)
- Hot Mama
- I Can't Stand It
- Ten More Shows To Play
- Thanks A Lot For The Offer
- Guitar Shuffle
- One Room Country Shack
- Worried About The Blues
- Your Love For Me Is Gone
- Think About It
- One More Blues
- Jump Children
1984年のヨーロッパツアー中にフランスで録音されたもののCD化。バックはフィリップ・ウォーカーのバンドで、ベースのデニス・ウォーカーとドラムのジョニー・タッカーは80年に来日したときのリズム隊。オリジナルの新曲が多い意欲的なアルバムで、ジャケットのモノクロ写真に写るごついふたつの指輪が何だか自信たっぷりだ。
(1),(2)ともアップテンポでファンキーなエイト。この手のリズムはデニス、ジョニーのリズム隊はお手のものだ。(1)のマイク・アイスマン・ヴァーニス(後にロバート・クレイ・バンドにも参加)のサックスソロがなかなかいい。(8)も同系統でこれは[31]「Tramp」あたりの曲に通じるムード。
スローブルースにも佳作が多い。例えばアルバムタイトル曲(10)ではフルソン、いいソロ弾いているし、(9)ではヴォーカルに絡みつくサックスがいいムード。またミディアムスローの(3)ではアート・ヒラリーのピアノが大活躍している。カヴァーの(6)はマーシー・ディの代表曲でかなりモダンなアレンジ。この歌はちょっと投げやりなフルソンの歌い方がよく似合う。また(7)はクレジットでは自作になっているけど、フルソン自身何度も録音しているビッグ・メイシオの「ウォリード・ライフ・ブルース」だ。
意外とシャッフル系は少なく、(4)と(5)くらい。(4)ではサックスが絡みつき、フルソンのギターも大活躍。また十八番のインストをぐっとアップテンポにした(5)でも、フルソンは[52]よりはるかに弾けている。サックス、フィリップのギターソロも素晴らしいなかなかの名演だ。ラストのボーナストラック(11)は[46]-21と同じ曲。軽快なジャンプナンバー。フィリップのギターがさえ渡る。
全体に切れ味鋭いフィリップ・ウォーカーと大股なフルソンのギターソロのコントラストがはっきりしていて面白い。またヴォーカルも良く歌えている。おそらくこのヨーロッパツアーはかなりリハーサルを積んで臨んだのだろう。近作ではお薦めの1枚だ。
なお、1999年にはBLACK & BLUEから一部曲順を変え、また(7)のタイトルとクレジットを訂正したものも出ている。このシリーズ独特のセピア色のデジパック仕様で、なかなかいい顔したフルソンだが、バックの飛行機はどうも意味不明だ。
[54]:THINK TWICE BEFORE YOU SPEAK (JSP JSPCD 207 / 290)
- Parachute Woman
- I'm Tough
- Thinke Twice Before You Speak
- Well Oh Well
- One Room Country Chack
- Meet Me In The Bottom
- Come On
- You're Gonna Miss Me
- Lowell's Jump
- Come Back Baby
- Sinner's Prayer
これも1984年のロンドン録音。メンバーはギターのエディ・C.キャンベル以外はおそらく現地のミュージシャン。ジャケット、No.違いで2種類リリースされており、さらにこれらのジャケットはLPとも異なるややこしさ。左の207の方はちょっとさえない表情でES345?を構える(ブランコテールピースにぶら下がったサムピックに注目)もので、右の290は彼がよく着ているチェックのジャケットでやや強面。ちなみに290は新たにリミックスしたようで、音の粒立ちやバランスが向上しており、ライナーノートの内容も異なる。以下この盤は本来のイシューに近い207に基づいて見ていきたい。
全体にフランジャーをかけたようなギターの音と、ちょっとこもり気味のヴォーカルで、おとなしい印象を受ける。 ミディアムスローの(1)や[46]-21の再演(4)を聴くとその辺を強く感じる。特に(4)は[53]に比べるとリズム隊を中心にしたバックがおとなしい。声もこもり気味。(5)も[53]でやっていたマーシー・ディの曲で、アレンジは普通のスローブルースになっている。こうした同じ曲を聴き比べるとアルバムとしての出来は[53]に軍配があがる。ミディアムのシャッフル(7)もオクターヴァをかけたようなサックスのオブリガート(実際はオーヴァーダブ)が何だか不思議だが、やっぱりリズム隊のドライヴ感が不足しているように思う。珍しくベースがチョッパーをかませているファンキーなインスト(9)も、ドラムがおとなしいので何だか中途半端な感じ、サックスのリフも何だか田舎くさい。フルソンのソロは結構頑張っているが、ギターの音がチープだ。
比較的出来がいいのはタイトル曲のスロー(3)。アル・キングの1965年の曲で、いかにもフルソン節といった歌い回しがインパクトがあってなかなかいい。バリトンサックスのソロが渋く、ピアノの好サポートも光る。また(2)はブレイクのある軽快なシャッフルで、ラストにちょっと面白いフレーズのソロを弾いている。一方(6)はバンブル・ビー・スリムやアンディ・カーク楽団などで知られる「オー・ローディ・ママ」の改作といえる曲。やや「字余り」気味に歌うがバックは上手く対応している。(8)は来日時の演奏を彷彿とさせるイントロやソロだけど、歌の迫力などはかなり落ちる。でも悪い出来ではない。ソロに「ギター・シャッフル」のフレーズが出るのがフルソンらしい。
このアルバムでの聴きものは(10),(11)。ギター2本のみの演奏で、ちょっと初期のマーティン・フルソンとの録音を思い出させる。歌も押さえ気味ながらしっかり歌えていて結構良く、特に(11)は来日時の歌に迫るものも感じる。このアルバムのベストトラックだと思う。
[55]:IT'S A GOOD DAY (ROUNDER CD 2088)
- Thanks A Lot
- It's A Good Day
- Ten More Shows
- Your Love For Me Is Gone
- I'm Tough
- Keep That Smile
- Slow Down Baby
- Blues And My Guitar
- One More blues
- Push On
1987年ルイジアナでの録音で、ロイド・ランバート、アルヴィン・レッド・タイラー、ウィリー・ティーといったニューオーリンズ所縁のミュージシャンが参加。ロン・リーヴィの手堅いプロデュースを得てしっかりした仕上がりのアルバムになっている。特にフルソンのギタープレイを前面に押し出しているのが嬉しい。ただし音処理はかなり軽めで、フルソンの魅力である重厚さが失われ気味なのは残念。ジャケットの髭を蓄えたフルソンの笑顔、奥さんを亡くしたばかりの寂しさをどことなく感じるが、考えすぎか?
まず[53]からの再演が4曲ある。ジャジーに仕立て直されたシャッフル(1)は落ち着いた歌い方で、ウィリー・ティーのシンセサイザーがムーディ。一方(3)は[53]-3に比べアルトサックスが絡みつくなかなかどっしりとした仕上がり。歌もやや衰えは感じるがディープで素晴らしい。さらに(9)はKENT時代に通じるビートを効かせたスローブルースとなっている。力強い作品だ。ファンキーなエイト(4)は非常にまとまった演奏で、ちょっとこじんまりし過ぎているようにも思える。でもフルソンのギターはよく鳴っていて聴きごたえがある。
[54]からのの再演もある。(5)がそうでロックンロール調でかなりポップ。新曲(10)もちょっと「ファニー・メイ」を思わせるサックスのリフが印象的なシャッフルで、これもロックンロール的な仕上がりになっている。またタイトル曲(2)は割合ゆったりしたエイトでニューオーリンズ風味がちらり。ポップな曲だがギターはフルソンそのものでコントラストが面白い。他方「トランプ」風のファンキーなエイト(7)は、フルソンのリフに対し、手堅すぎるバックのグルーヴが不足しているように思う。
今作もスローブルースが充実している。先に書いた(9)の他、(6)は「シナーズ・プレア」を彷彿させるイントロから、典型的なフルソン節に。でも歌はかなり押さえた感じに聞こえる。ギターソロは最初の一音からフルソンと分かる典型的なパターンでいい。また(8)もフルソンらしいギターのイントロから始まり、歌は押さえ気味ながらもフルソンの魅力がよく出ている。
[56]:HOLD ON (BULLSEYE BLUES CD BB 9525)
- Working Man
- Shake, Rattle And Roll
- Me And My Woman
- Ain't That Sweet
- Quicker The The Better
- It's No Need
- Real Name Is Danger Zone
- I'm Just A Fool About You
- Cryin' Won't Help
- Hold On
- Love Is The Bottom Line
1992年ロサンゼルス録音。前作に引き続きロン・リーヴィのプロデュースで手堅くまとまっている。バックには何とジミー・マクラックリン、ボビー・フォーテが加わっている。ジャケットはイラストで、以前の写真によく出ていた白いビグズビーアーム付フルホロウのギターをかまえている。
フルソンのギターにはディストーションでもかけられているのか、ざらっとした音質になっている。そのギターから始まるスロー(1)は、ヴォーカルにもちょっとわざとらしいエコーをかけてあるが、充分にディープ。ボビーのテナーが絡みつく。KENT時代のアフタービートを強調したリズムのミディアム・スロー(4)にはゴージャスなホーンがついている。またマクラックリン作の(11)は、フルソンらしい非常にゆったりとしたスロー。歌もディープだし自身のギターによるオブリガート(後から入れたようにも聞こえるが)、ソロもじっくり弾いていて良い。これがベストトラックかな?同じくマクラックリン作の7は突っかかるようなリズムを持ったブルースで、ちょっとマイティ・ジョー・ヤングの「ハード・タイムズ」を思い出す曲調だ。えぐみのあるギターがいい味を出している。
残りはファンク色の強いエイトビートだが、タイトル曲の女性コーラスの入った(10)や、同様のリズムを持つ(9)のように、ゆったりとしたファンキーなエイトは割合いいアレンジだと思う。ボビーのサックスがイカしてる(9)はJEWEL時代のリメイクか?しかしジョー・ターナーの代表曲をロック系のリズムをもつエイトにアレンジした(2)は、女性との掛け合いの語りから始まるあたり、オーティス・レディングとカーラ・トーマスがカヴァーした「トランプ」でも意識したのかな。ゴージャスなホーンも絡むがこの曲でこのアレンジにする必要性は感じなかった。
残る曲はやや首をかしげたくなるできばえだ。ブラスがゴージャスに響くファンキーなナンバー(3)は、オーヴァーアレンジでフルソンの持ち味をかえって損なっているようだし、「セックス・マシン」風のファンク(5)など、歌は「トランプ」のような語りだがあまりしっくりきてない。終盤のブラスアレンジはロバート・クレイの曲みたい。女性コーラス入りの(6)など全くピンとこなかった。バックのギターが「キリング・フロア」みたいな(8)は、歌はなかなかいいのだが、アレンジはいまひとつに思えた。
[57]:THEM UPDATE BLUES (BULLSEYE BLUES CD BB 9558)
- What's The Matter Baby
- Think About It
- Don't Lie
- My Secret Love
- Sun Going Down
- Get Me Down (Them Update Blues)
- Lonely Man
- Forty-Four
- Too Soon To Tell
- Not A Dime
- L & L Special
1995年リリースのフルソンのラストアルバム。ロン・リーヴィがプロデュースした3作目で、今回はサウス・セントラル・リズムの面々にメンフィス・ホーンズという手堅いバックでがっちりと固めた造りになっている。でもそれがはたして成功したかというと、かなり疑問が残る。フルソン自身の歌、ギターの衰えが隠せない上に、フルソンの持ち味のディープさを引き出すことに成功していないように思えるからだ。決して出来の悪いアルバムではないが、不完全燃焼に感じた。
スローブルースはかなりKENT時代の音作りを意識している。例えばオルガンが印象的な(1)やブラスのリフが効いた(2),リズムの粒立ちの良い(7)(リトル・ミルトンのものとは同名異曲)など、「ブラック・ナイツ」に通じる雰囲気を持っている。ミディアムのインスト(11)などでもフルソンはなかなかいいギターを弾いているが、やはり衰えは隠せないようだ。
このような中で、ウェインのイカしたトランペットから始まるミディアム・スローの(9)は、フルソンの大股なソロが相変わらずでかっこいい。また出だしだけはKENT時代の「バック・ドア・キー」そっくりの(5)もゆったりとしたスローで、ここでもフルソンらしいギターは健在。ただ曲がやや冗長か。
(4)はブラスがアクセントを効かせたミディアムなシャッフルで、バックの演奏は手堅い。また(10)はホーンアレンジのかっこいいファンキーなエイトだが、いずれもちょっとヴォーカルが弱い。さらにタイトなエイト(6)はブレイクが効いていて面白い曲だが、やや単調な印象を受けた。残る(3)と(8)はファンクナンバー。いずれも流石メンフィス・ホーンズと言うべき洒落たホーンアレンジ。(3)でのアンドリューのサックスソロもいい。なお(8)はハウリン・ウルフで有名なデルタ伝統の曲とは同名異曲だ。
ジャケットの写真はいつものようにES-345?をかまえて微笑むフルソンだが、このころ歳はすでに70歳を優に超えている。初レコーディングから50年近くやり続けてきた風格をびしっとスーツを着込んだその姿から感じるが、一方で「寄る年波」の現実もにじみ出ている。やはり感慨深いものがある。
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