LOWELL FULSON の CD -part 4 JEWEL 時代〜70年代
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*注 ここに紹介するCDは僕の保有するものであり、決してすべてを網羅しているわけではありません。
[41]:MY BABY (JEWEL JCD-5003)
- Look At You Baby
- Why Don't We Do In The Road
- Sleeper
- Lady In The Rain
- My Baby
- Man On The Run
- Don't Destroy Me
- This Feeling
- Trouble Everywhere
- Chiating Woman
- Man Of Motion
1969年、ファッツ・ワシントンの口利きでJEWELに移籍したフルソンが、最初にリリースしたアルバム「In A Heavy Bag」(JEWEL LPS 5003)のストレート・リイシュー(一部曲順が変わっている)と思われる(CD番号より)。オリジナルのジャケットはサイケデリックなデザインであったが、こちらはピンボケの演奏風景で地味だ。アルバムとしてはストレートなブルースというよりは、ブルース・ロック的な要素のある作品で、明らかに非黒人マーケットを意識したものだ。そのため、1970年にリリースされた時、かなり賛否が分かれていたらしく、イギリスの「ブルース・アンリミテッド」誌の評者の中には年間ベストに挙げた者もいたとか。現在聴くとやはりかなり首をひねりたくなる面の多い作品で、フルソン自身もさほど気に入っていないようだ。
まず驚くべきは、マッスル・ショールズ録音があることだ。エディ・ヒントン(G)、バリー・バケット(ORG)、デヴィッド・フッド(B)、ロジャー・ホーキンス(D)といった名うてのミュージシャンをバックにフルソンが唄っている。「トランプ」系のかっこいい(4)あたりは、ブレイクが入ったり、ロック系のギターが絡んだりするが、あまり違和感がなく、風邪気味だったというフルソンの歌も、その割にははつらつとしていて成功作だ。また(7)はドアーズみたいなオルガンが入った、どことなくサイケデリックなアレンジのスローで、唄い回しはフルソン節そのもの。この2曲は本人もまあ気に入っていたようだ。しかし驚くべきは(2)で、何とビートルズ・ナンバーのミディアム・ロックだ。フルソンは歌えているけど、狙いが分からない。
(3)は1969年ビッグ・ジェイ・マクニーリー(T.SAX)、マックスウェル・ディヴィス(P)を含むバンドとのセッションで、ホーンの利いたファンキーなエイト。KENT時代の延長戦上にあり、フルソンの「ロープ」ギターも健在。結構流行ったようで、いろいろなコンピに入っており、JEWELでのベスト・テイクと言えるか。
「Blues Records」によると残りは1970年録音で、メンバーなどデータは不明。「ブルース&ソウル・レコーズNo.12」で鈴木啓志さんはマッスルショールズ録音としている。しかしこのセッションはいまひとつ頂けない。変形スローブルース(5)はオルガンのバッキングやスライドなど、もろにブルースロック。(6)のワウワウの効いたギターに生ハープがバッキングを付けるスローブルースも、いかにもロック的な解釈で、「トランプ」のヒット以来、非黒人市場にもマーケットをひろげようとしたのだろうか。でもファンキーじゃないんで印象が弱い。(9)はジミ・ヘンドリックスあたりの影響が濃厚なイントロから入るエイト。もっといいアレンジでバックをつけたらかなりファンキーな曲だと思うんだが、変なギターの絡み合いでこれもピントのぼけた曲になっている。
(8)はKENT時代にもやっていたちょっとニューオーリンズ風味の跳ねるリズムの曲で、フルソンの唄もなかなかいいが、ワウワウギターと生ハープが曲をぶち壊していると思う。またファンキーなエイト(11)は、曲調やリズムはいいんだけどロック調のギターが出しゃばりすぎ。さらに(1)は得体の知れないスライドが絡むBメロ付き「ブラック・ナイト」風スローでいまひとつ。ロックンロールの(10)は、途中シャッフルにリズムチェンジしてギターソロにいくが、なぜフルソンに弾かせないんだろうか。ヴォーカルが結構いいだけにもったいない。終盤のスロー三連になるあたり、まるでブリティッシュ・ブルース・ロック・バンドだ。
このようにかなりロックっぽく、ロック全盛になってきた時代を考えると、この辺りが評価の分かれる部分だろう。JEWELはライトニン・ホプキンスにも変なファズギターをダビングしたケースもあったし、同時期のSEVENTY-SEVENのフェントン・ロビンソンも似たような録音だった。まさに転換期の試行錯誤といえるのでは。
[42]:I'VE GOT THE BLUES (JEWEL JCD-5009)
- Theach Me
- I've Got The Blues
- Every Second A Fool Is Born
- Don't Leave Me
- Change Of Heart
- Fed Up
- Searchin' Out
- Crying Won't Help
- Too Soon
- Stoned To The Bone
- The Last One To Know
同名のアルバム(JPS 5009)のストレートリイシューでジャケットの写真は同じものを使っている。ただしロゴがオリジナルでは"Fulsom"と綴っていたのに対し、こちらはロゴの位置も変わり、"Fulson"になっている。このアルバムは3つのセッションからの寄せ集めのようで、前作以上にピントのぼやけた作品となってしまった。最も古いセッションは1969年ダラスで行われた(9)で、これは本人も気に入っているようで、なかなか良い。サックスのイントロに続く唄い始めは、明らかにパーシー・メイフィールドの「プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラヴ」に影響されたバラード。ブラス入り。落ち着いた歌でじっくり聴かせる。
ブラスの入っているセッションはおそらく1969〜70年L.A.録音。(2)は派手なブラスの絡んだ「ブラック・ナイト」調の曲でBメロ付き。リズム隊がタイト。ギターソロに変なエフェクターがかかっていて気持ち悪い。(4)も同様の曲で、イントロまで「ブラック・ナイト」と同じタイプ。抑制の利いたバックに要所でブラスが入る好演。欲を言えばギターソロをもっと目立たせて欲しかった。(11)も同系統で、ブラスのリフが短調ながら印象的だ。でもこうして聴くと当時「お蔵入り」していたものを集めて出したという印象はぬぐえない。多分もろにブルースしているのが避けられた理由だと思われる。「コンフェッシン・ザ・ブルース」風のシャッフル(7)は、ブラス入りで歌はおとなし目、でもギターは結構弾けていて悪くない。でもこれより同曲はこれよりずっといいものがあと2ヴァージョンある(後述)。
残りのセッションは[43]のライナーによると、ソニー・トンプソンによって、マッスルショールズのセッションを意識して、シカゴで録音されたもののようだ。このセッションではフルソンがギターソロを弾いているのだが、これにもう1本ギターがかぶさっている。この出来が最悪で、まったく意図が分からないちゃちな演奏で興ざめだ。またヴォーカルも声が少し曇った感じで抑え気味(フルソンが風邪をひいていたと記憶しているのはこのセッションのことではないだろうか)。全体に元気がない。タイトでファンキーな(1)、どっしりしたスロー(3)、ターンアラウンドのオルガンが印象的なミディアム・ブルース(5)、ミディアム・スロー(8)、さらにボー・ディドリー・ビート(6)と曲調はヴァラエティに富んでいるのだが。(10)はリズムはシャッフル系だが、モダンなアレンジと洒落たコード進行のロック調の曲。この辺りが「マッスルショールズ風」なのだろうが、とても成功しているとは言い難い。
[43]:I'VE GOT THE BLUES (...AND THEN SOME!) (WESTSIDE WESD 234) DISK 1
- Lady In The Rain
- Letter Home
- Too Soon
- Why Don't We Do In The Road
- Sleeper
- How Do You Want Your Man
- Don't Leave Me
- Thug
- Do You Feel It?
- Don't Destroy Me
- Lonesome Christmas -pt. 1
- Lonesome Christmas -pt. 2
- Bluesway
- My Baby
- Man Of Motion
- Theach Me
- Change Of Heart
- Every Second A Fool Is Born
- Look At You Baby
- Fed Up
DISK 2
- I've Got The Blues
- Man On The Run
- This Feeling
- Trouble Everywhere
- Chiating Woman
- Searchin' Out
- Stoned To The Bone
- The Last One To Know
- Baby
- Crying Won't Help
- Deep In Love
- Please Let Me Go
- Stop And Think
- You're Gonna Miss Me
- Henpecked
- Hurry Home
- I Started Out Wrong
- Take My Hand
- Lonesome Christmas -pt. 2 (unedited ver.)
世紀末にJEWEL時代のほぼ完全なリイシューが登場した。[41]の全曲(ただしチャンネルが左右逆)と[42]の10曲((8)は別ヴァージョンが収録、また(2)はモノラル)にシングルのみの作品、未発表、さらには1964年のファッツ・ワシントンによる録音と2枚組にてんこ盛りだ。ジャケット写真は白人とプレイしているので、この時代以降のもの。気持ちよさそうに唄うフルソンがなかなかいい。
まず1-(2)が1969年のマッスルショールズ録音で、[41]-(4)の裏面としてシングルカットされていたものだ。トゥービートのカントリーフレイヴァ溢れる曲で、ワウの利いたギターとエレピのサウンドをバックに、フルソンらしからぬストレートな唄い方で面白い。まるで遊んでいるようだ。一方1-(6)と1-(8)は[41]-(3)と同じセッション。シングルの裏面だったスローブルース1-(6)は、ホーンなどのアレンジはさすがマクスウェル・ディヴィス。張りのある声とファットなギターがいかにもフルソンらしい。1-(8)もしっとりと唄い上げるフルソンらしいスローブルースで好演。これは[42]-4のフリップサイドだ。ブラス入りのタイトなエイト2-(12)もこの時期の録音と思われる。ブラス入りでKENT時代と似た録音なので、ひょっとしたら古いテイクかも知れない。
SWINGTIME時代のヒット・クリスマス・ソングを再演するため、わざわざアルト・サックスのアール・ブラウンを探し出して録音した1-(11)・(12)(2-(19)は編集前の「完全版」)はジャジーなピアノがいかしている。ちょっとワウのかかったギターソロもフルソンらしいゆったりしたもの。同じくSWING TIME時代の「ロー・ソサエティ」のエイトビート版インスト1-(13)にもかっこいいアルト(アール・ブラウンとはちょっと違うようにも聞こえるが)が絡んでいる。演奏はタイト。1-(9)もこの時のセッションと思われ、ワンコードのファンキーでファットな曲で[41]-(6)の裏面として出されていたもので、このセッションの特徴であるワウワウの利いたギターにブラスが絡む、トランプなどをさらにモダンにした感じで結構いい。2-(10)は[42]-(8)のものとは別ヴァージョンでこれもこの時のセッションだろう。アルトサックスのオブリがかっこいい。
2-(15)は「Blues Records」では1964年の曲とリストされているが、曲調、オルガン、ツインギターなどを考えると1970〜1971年録音ではないかと思われる。結構タイトなエイトだ。2-(16)〜(18)はすべてこの時のセッションと思われ、ひょっとすると[42]のシカゴでの録音の一部かもしれない。タイトなシャッフル2-(16)、ミディアムのエイト2-(18)ではツインギターが絡む。2-(17)はミーターズの好んでやるようなコードブレイクのイントロから始まるタイトなスロー。声がちょっとこもり気味でギターにも元気がないか。
珍しいのは2-(11)だ。女性コーラスも入ったフルソンには珍しいゴスペルタッチのスロー・バラード。レイ・チャールズあたりを意識したようにも思える。フルソンはゴスペルの香りをあまり感じさせないが、これは異色。
フルソンはファッツ・ワシントンの口利きでJEWEL入りしたが、その時ワシントンが持っていた1964年の録音の権利もJEWELに渡ったようだ。このアルバムのクレジットでは1971年となっているが、間違いだ。2-(9)はMOVIN'128,131、PROWLIN'128としてリリースされたもの。この時代すでにKENTでのサウンドを確立しているのが凄い。ブラスがビートを強調し、良く転がるピアノ(ロイド・グレン?)をバックに、フルソンのギターと歌が乗ってくる。短いけれど傑作だ。2-13はそのフリップサイドで、アップテンポの曲で、のどかなハーモニカが絡むユニークな曲調。ブレイクの後にタイトルが唄われるのが印象的。2-(14)はフルソン十八番のシャッフル(MOVIN' 131,RIDE 139)で、ドライヴ感のあるベース・ドラムをバックにのびのびと唄う。
[44]:I'VE GOT THE BLUES (FUEL 2000 302 061 082 2)
- Theach Me
- I've Got The Blues
- Every Second A Fool Is Born
- Don't Leave Me
- Change Of Heart
- Fed Up
- Searchin' Out
- Crying Won't Help
- Too Soon
- Stoned To The Bone
- The Last One To Know
- How Do You Want Your Man
- Thug
- Baby
- I Started Out Wrong
- Please Let Me Go
- You're Gonna Miss Me
- Hurry Home
タイトル通り[42]の全曲にシングル曲、未発表等を加えたもので、これも世紀末に出された。シングル・未発表についてはすべて[43]に収録されているので、そちらがあればこの盤は不要といえる。ただし(2)はオリジナルアルバムと同じくステレオ、また(8)はアルバム・ヴァージョンなので[43]のものとは異なる。ジャケット写真はCHESS時代のもののようだ。また裏ジャケの曲リストでは、(17)と(18)が逆になっている。
現在JEWELの音源はすべてEMusicという会社が握っており、アメリカ盤はFUEL2000、ヨーロッパ盤はWESTSIDE、日本盤はP-VINEが配給することになっているようだ。したがって今後P-VINEがJEWEL音源をリイシューする可能性もある。実はJEWELの録音で未CD化のものはまだある。下の曲は[41]-8のヴァージョンとは異なる。ドライヴ感のあるベース・ドラムをバックにじっくり歌を聴かせている。ギターにワウがかかっているので[43]-2-10の別テイクだと思われるが、サックスが入っていない。唄い回しも落ち着いている。
[G]:Man On The Run (P-VINE PJ-106)
SIDE A
- Crying Won't Help
このアルバムについては、KO-1さんに音を聴かせていただき、またライナーも拝見することができた。前述の「フルソンの風邪」などのエピソードは、日暮泰文さんのライナーノートを参考にした。KO-1さん、感謝!(その後めでたく入手しました)
[45]:THE OL' BLUES SINGER (JET=GRANITE/INDIGO IGOCD 2022)
- Do You Love Me
- Step At A Time
- Name Of the game
- Walk On
- The Old Blues Singer
- Monday Morning Blues
- Cloudy Day
- Just A Kiss
- Kansas City Bound
- Something's Wrong
1970年、フルソンはメンフィスのTMIスタジオに行き、ブッチ・パーカーのプロデュースの下、1枚のアルバムを作る。スティーヴ・クロッパー(G)、アル・ジャクソン・ジュニア(D)を迎えたゴージャスなアルバムは、初めJETから出され、1975年にGRANITEからリリースされたアルバムのストレート・リイシュー。パナマ帽をかぶってくつろいだ表情のフルソンの写真の通り、余裕のある好アルバムだ。
このアルバムはとにかくバックのサウンドが豪華。究めつけは(6)で、ストリングにホーン、女性コーラスまで入ったゴージャスなバックのミディアム。B.B.の「スリル・イズ・ゴーン」などの影響もあるのだろうか。悪くはないけどフルソンにはあまりしっくりはきていない。(3)も同様にゴージャスなマイナー・ブルース。ここまでやるとちょっとやりすぎにも思えるが。しかし8小節のブルース・バラード(8)はイントロなどで派手なストリングが付くが、フルソンお得いのパターンなので良く唄えている。ギターソロもなかなかいい。リトル・ミルトンの「Blues 'N' Soul」を彷彿とさせる曲だ。
「トランプ」のヒットの後だけあって、ファンク系の曲も多い。(1)はシャープなギター・カッティングに女性コーラスを従えた軽快なファンク・ナンバーで、いかにもスティーヴ・クロッパーといったギターワークにホーン、キーボードまで入ったバックに乗って、歌、ギターとも快調な演奏だ。2もファズ・ギターにエレピのバッキングがちっともいやらしく感じさせない秀逸なアレンジのミディアム・ナンバーで、フルソンも気持ちよさそうに唄い、爪弾く。ゴージャスなバックに支えられた(4)は、ミディアム・エイトをバックに、フルソン節が全開で気持ちのいいナンバー。(7)もファズギターの刻むリフがかっこいい軽快なファンク・ナンバーで、フルソンにはこうした曲が似合う。ギターソロもドライヴ感があっていい。
変わったところはタイトル曲(5)。アンプりファイド・ハープのイントロから、ブルースというよりはスワンプ・ロックといった感じのややフォーク調のナンバー。カントリー・フレイヴァの溢れるギターにストリングも絡んで、サザン・ソウルに通じるアレンジがけっこうはまる。ただフルソンの声がちょっと荒れているのが気になる。この他まるでブルース・ブラザーズのようなバッキングの、メンフィス・サウンドもろだしのシャッフル(9)は気持ちいいし、クラヴィネットのイントロから始まるミディアムエイトのブルース(10)も、時代の移行期といった音だが、結構うまくこなしているようだ。フルソンのロープギターも健在。
[46]:THE CRAZY CAJUN RECORDINGS (EDSEL EDCD 582)
- Blood, Sweat AndTears
- I Won't Affection Not Protection
- You Gonna Miss Me
- Funky Soul
- Don't Make Promises You Can't Keep
- Everyday Blues
- Blue Shadows Falling
- I Cried Like Baby
- Rat Race
- Gettin' Drunk
- The Things I Used To Do
- Your Woman
- You Don't Know
- Walk On
- Stoop Down Baby
- The Sweet Thing
- Black Widow Spider
- Mean Old World
- Kansas City
- Driftin' Blues
- Well Oh Well
- Come Back Baby
ヒューストンのヒューイ・P.モー(ジャケット写真の左の人物かな?)の下で1978年ごろ録音された音源を集めたものだ。バックはピアノ(曲によってはオルガンも加わる)、ベース、ドラムにフルソンのギターと歌といった、きわめてシンプルなもので、リハーサルは殆どやった形跡がなく、録音もチープ、とにかくスタジオに押し込んで録音しちゃったものを出したといった感じだ。しかし当時のフルソンのある意味リアルな姿を捉えているのかもしれない。
(1)、(5)のスローブルースではフルソン自体はそこそこ唄えているが、チープなバックがやはり魅力をそいでいる。オーソドックスなスローブルース(16)あたりではフルソンのギターが本当に「大股」だったり、SWINGTIME時代の自作の再録(17)、スローブルースのスタンダード(18)のヴォーカルは流石フルソンといった風格がある。(20)はチャールズ・ブラウンの曲とは異なる、どちらかというとロイ・ブラウンの「ハード・ラック・ブルース」を下敷きにした感じのスロー。これも歌は悪くないがリハ不足を感じる。エレピにオルガンをバックにした18番(6)もプロデュースとリハーサル不足。フルソンのいいところが引き出しきれていない。続くこれも自作の名曲(7)も歌は気合いが入っていていいんだが、当時ライヴでやっていたのを一発録りしたって感じ。ギターのミストーンが目立つ。ギター・スリムの超有名曲(11)も、歌は完全にフルソン節だがでも緊張感に欠ける。(22)はSWINGTIME時代の8小節のブルース・バラードの再録だが、オリジナルに比べヴォーカルに力がない。
シャッフル系ではお得意の(3)が、アレンジとかは来日時のライヴに近い。すっきりしているがフルソン自体は悪くない。(13)は「トーキン・ウーマン」の改作か?歌は結構いける。チック・ウイリス72年のヒット曲(15)も軽快なシャッフルで、高目の音域で歌うフルソンの声が魅力的。一方ウィルバート・ハリスンの大ヒット曲(19)は歌にちょっと元気がない。(8)、(10)、(21)あたりのシャッフルになると、グルーヴの出ないバックとやる気がいまひとつ見られないフルソンという感じで、いまひとつさえない。そんな中ではちょっと「ホンキートンク」風のギター・シャッフル(12)は、サザンビートっぽく、歌もまあまあだ。なお(21)は歌詞は異なるが、オリジナルはジミー・ウィザースプーンの1948年の「ジャンプ・チルドレン」。ワイノニーの「グッド・ロッキン・トゥナイト」とも同系で、おそらく後のディヴ・バーソロミューの同名の曲に繋がるものだと思う。
バックが「低予算」のせいか、ファンキーなエイトは数が少ない。(2)はミディアムのエイトで、本来ファンキーな曲だがバックが弱いので印象が薄い。[45]-4の再録(14)もさらっとしていてうねりが足りない。これに比べインストはチープながらミーターズを意識したような音作りで面白い。オルガン入りのファンキーな(4)では、フルソンはわりと軽く弾いてる感じ。(9)のギターはフルソンらしくていい。バックにもう少し力量があれば面白くなったと思う。
[47]:LOVEMAKER (BIG TOWN/P-VINE PCD-3878)
- When Things Go Wrong
- Love Her With A Feeling
- Your One Success Is On Me
- I Am Not Worried
- Lovemaker
- Bending Like A Willow Tree
- Get The Cash And Let The Credit Go
- My Mind Is Trying To Leave Me Too
- Price For Love
- All I Want Is For You To Love Me
1978年、MODERNの別レーベルBIGTOWNにフルソンは戻っていった。ジャケットでくつろいだように笑うフルソンの上に書かれた名前が"Fulsom"になっていることに注意。メンバー等のクレジットはないが、ホーン抜きのややロックっぽさの残るサウンドながら、フルソンの持ち味がうまく引き出された好盤となった。
(1)はタンパ・レッド作でエルモア・ジェームズで有名な「イット・ハーツ・ミー・トゥー」のフルソン・ヴァージョン。珍しくアンプリファイド・ハープが絡む。かなり濃厚なサウンドでディープな仕上がりだ。続く(2)もジュニア・ウェルズ等で知られる曲(原作はタンパ・レッドか?)のエイトビート・ヴァージョンで女性コーラスが絡むモダンなサウンド。ちょっと裏で絡むギターがうるさいかな。ヴォーカルは力がこもっていていい。さらに(4)は「シッティン・オン・ザ・トップ・オヴ・ザ・ワールド」のフルソン・ヴァージョン。これも少々ロックっぽいアレンジだがフルソンの歌に力があるため重厚なブルースになっている。
(3)はややロックっぽいアレンジのボトムの利いたスロー。濃厚な歌とギターでどっしりと来る。(8)も同様の曲で、ドライヴ感があり、ギターソロもなかなか聴かせる。
LP時代のB面(1)〜(3)に当たる(5)〜(7)は、当時のディスコ時代を意識したのか、明らかにダンスホールでかかることを計算したエイトビート3連発だ。ファンキーなエイトビートのブルース(5)は、重心が低く歌・ギターともにフルソン節全開。続く(6)もファンキーなエイトで、ディスコほど速く軽くはないが、当時の流行を取り入れようという姿勢だろう。さらに(7)も同様のエイト、しかしどっしりしていてヴォーカルも迫力がある。
(9)と(10)はCD化に際したボーナス・トラック。(9)はハーモニカが絡み、フルソンのギターにエコーがかかっていてよりブルースっぽい印象のミディアムだ。ギターが良く唄っている。(10)も(9)と同様、シンプルだがなかなか気持ちのよい演奏だ。
[G]:T-BONE WALKER/LOWELL FULSON "BLUE ON BLUE" (FUEL 2000 302 061 192 2)
- Henpecked
- Deep In Love
- Stop And Think
- Bluesway
- Take My Hand
- Sleeper
ジャケットにも二人が並んでいるように、テキサス〜西海岸の両巨匠のカプリング。内容はフルソンについてはJEWEL音源で、すべて[43]に収録済み。
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