THE METERS の CD -part 1 オリジナル・アルバム
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*注 ここに紹介するCDは僕の保有するものであり、決してすべてを網羅しているわけではありません。
[01]: THE METERS (JOSIE/SUNDAZED SC 6146)
- Cissy Strut
- Here Comes The Meter Man
- Cardova
- Live Wire
- Art
- Sophisticated Siccy
- Ease Back
- 6V6 LA
- Sehorn's Farm
- Ann
- Stormy
- Sing A Simple Song
- The Look Of Love
- Soul Machine
1969年、JOSIE(JOS-4010)として出されたミーターズのLP第1弾に、ボーナスを2曲追加したもの。ジャケットにいろいろな計器、物差しが映っているのがまさにミーターズだ。
まずはミーターズお得意のミディアム・ファンク・ナンバーから。(1)はシングル第2弾としてリリース、R&Bチャート4位(ポップチャート23位)まで上がったヒット曲。ミッドなノリでギター、ベース、それに一部オルガンも加わったリフがすべてといったテーマに、すかすかでややオフビート気味のドラムが絶妙に絡む。元々クラブでの息抜きにやっていた曲だそうだが、ルーズさとタイトさが入り交じったこの感覚はミーターズならでは。こうした曲はミーターズお得意で、バンドのテーマソングともいうべき(2)はややアップ、シンコペが気持ちいいドラム(ソロもかっこいい)にコード中心のギターが絡む。続く(3)はベースのイントロからぐっと来る。隙間だらけのユニゾンのテーマからオルガン・ソロへ、最後の2弦弾きのギターが効果的。
シングル第3弾でこれもR&Bチャート20位(ポップチャート61位)になった(7)は、リラックスしたミディアムで、グルーヴィーなベースにレオ独特のトーンを持ったギターが魅力的な曲だ。この辺りのテンポはミーターズの独壇場と言った感じか。これぞまさにセカンドライン・ファンク!ミーターズのシングル第1弾にしてR&Bチャート7位(ポップチャート34位)に達した(6)は、さらにぐっとテンポを落とし、ゆったりした、しかし自在なベースに倍速のドラムが絡みつく。テーマを弾くオルガンより途中の「グルーヴィン」の様なギターの方が耳に残る。
こうした中、よりオーソドックスなファンク・チューンもある。スライ&ファミリー・ストーンのヒット(12)は、ヴォーカルパートをオルガンで演奏している。原曲の音の洪水のようなファンクと違い、リズムに透き間があり、かえってリフが印象づけられている。細かいドラムに大きなリフ、そこにメロディアスなオルガンが乗る(4)はレオのギターソロも冴える。テレヴィの真空管から名付けられたという(8)は、珍しくスクエアなリズムで、シンプルかつファンキー。
さらに変化のついたものとして、(5)はラテン風味の効いたジャングル・ビートにタイトル通りアートのオルガンが大活躍。ギターのリフが印象的だ。転調で曲に変化をつける。またマーシャル・シホーンから名前が取られた(9)は、どこかで聴いたことのあるメロディをオルガンが奏でるポップ・チューン。このテーマはスヌークス・イーグリンが「ダウン・ヤンダー」のラストでやっていた。
ちょっと変わり種は、ウェス・モンゴメリーをよく聴いていたというレオのジャズ・ルーツを発揮した(10)は、複雑なコード展開でメロディアスに曲を作っている。ギターのオクターブ奏法がお洒落。こりゃいわゆるフュージョンだ。続く嵐を模写したキーボードから一転して静かに展開する(11)は、嵐の後、静まった海面に徐々に日が射していく情景を思わせる。映画の挿入歌に使いたいような曲だ。
ボーナストラックのうち(13)は有名なバカラック・ナンバーで、レオのオクターブ奏法で奏でられるインスト。こうしたポップ・チューンにあって、ベースとドラムがどうしてもはみ出してしまうのが愉快だ。一方(14)は細かいドラムをバックにキーボードが自由に動くミディアム。スネアの音の違い、ギターのリヴァー分のかかり具合、それにちょっとキング・カーティスを思わせるサックスを考えると、録音時期がかなり異なるのではなかろうか。
このファースト・アルバム、初期ミーターズの隙間を味わうにはまず格好の1枚だと思う。
[02]: LOOK-KA PY PY (JOSIE/SUNDAZED SC 6147)
- Look-Ka Py Py
- Rigor Mortis
- Pungee
- Thinking
- This Is My Last Affair
- Funky Miracle
- Yeah, You're Right
- Little Old Money Maker
- Oh, Calcutta!
- The Mob
- 9 'Til 5
- Dry Spell
- Grass
- Borro
1970年に JOSIE(JOS-4011)としてリリースされた本作(CDでは2曲ボーナスを追加)は、[01]以上にそのスタイルを明確に打ち出している。それはズバリ「透き間ファンク」![01]ではけっこういろんなパターンを試しているというか、やや間に合わせ的な曲もあったが、こちらはほぼ徹底的にやっている。曲によってはレオのギターをリフとカッティングでチャンネルを変えたりしているが、さほどの意味は感じられない。
まずはR&Bチャート11位(ポップチャート56位)のタイトル曲(1)。突っかかるようなリフを持ったミーターズの代表曲のひとつで、切れのいいギターと1音下げたブリッジがかっこいい。合いの手やヴォーカルが効果的でファンク度を高めている。(3)もミディアムなセカンドライン・ファンクで、ギターとオルガンがユニゾンで奏でるテーマの後ろで自在に動くベースとドラムは凄いの一言。ブリッジの決めが効果満点。続く(4)は跳ねるようなリズムが印象的で、これももたったように突っかかるドラムがアクセント。コード展開が面白い。
(6)はドラムとベースがドライヴするタイトル通りの曲で、全員でリフを決める一体感が凄い。途中ブレークでは全員がフィルを取る。(7)も独特のアクセントをもつミディアム・ファンクで、いかにもミーターズ。ラストのドライなレオのギターソロがいい。続くややアップな(8)はドラムのためにあると言っていい。ここでの"ジグは"とにかく凄いの一言。
一方スカスカだけどボトムの効いたベースとドラムで始まるスロー・ファンク(2)は、リフ主体の初期ミーターズの典型。ギターとドラムの絡みで迎えるエンディングも印象的。(10)もスカスカなファンクだが、こうした佳曲の中にあってはちょっと印象は薄いか。
けっこう凝った曲もある。(11)はキーボードとベースのリフの上にワウワウを効かせたギターが絡んで始まるが、途中テンポとリズムが二転三転する複雑な構成の曲。次のオルガンのテーマが印象的な(12)は、R&Bチャート39位になった小ヒット曲で、ソロに突入するとリズムがいきなり粒だってくる。アートが大活躍のスロー気味の曲だ。映画の主題歌にでもなりそうなムードを持ったポップで流れるような9でも、ドラムははみ出しそうになるからおかしい。この他メロディアスな5はオルガンがよく歌うミディアムで、ちょっと息抜きといった感じだ。
ボーナストラックの(13)は、ギターの音色をやや押さえ気味にしたミディアムで、シンコペイトするギターソロがおもしろい。でもこの曲、他のコンピレーションを聴くとシングル盤で出てた"Sassy Lady"と同じなので、未発表ではないのでは?(14)はギターのコードワークで構成されたややポップな曲。転調してからはいかにもミーターズといったオルガンソロが展開される。
ジャケットの自信に満ちあふれたメンバーの顔からも分かるように、このアルバムはインスト・バンドとしては完成されたサウンドで満ち溢れており、セカンドライン・ファンクの金字塔、文字どおり歴史的名盤だと思う。
[03]: STRUTTIN (JOSIE/SUNDAZED SC 6148)
- Chicken Strut
- Liver Splash
- Wichita Lineman
- Joog
- Go For Yourself
- Same Old Thing
- Hand Clapping Song
- Darling Darling Darling
- Tippi-Toes
- Britches
- Hey! Last Minute
- Ride Your Pony
- Funky Meters' Soul
- Meter Strut
1970年、JOSIE(JOS-4012)として出された本作(CDではボーナス2曲追加)は、ジャケットにあるように、"ジグ"のオンドリの鳴き真似からスタートする。ちょっと聴くと前作の延長線上にあるようだが、実はこのR&Bチャート11位、ポップ・チャート50位となった(1)に、ミーターズの変化(というか進歩)がにじみ出ている。演奏と一体化しているが、鶏の鳴き真似や「ジャスト・キープ・オン・ストラッティン」という合いの手、手拍子、タンバリンといった、4人の楽器以外の要素が付け加えられているのだ。特にアートのヴォーカルをフィーチャーした曲が、後の REPRISE 時代へと発展していく萌芽だと思う。
(7)はそうした曲の代表で、タイトル通りの手拍子とコーラスが中心。ギターはコーラスとユニゾンでリフを刻む。少し歌が入った後はチキン・ピッキング風ギターとヴォーカルのユニゾンによるソロ。この曲もR&Bチャート26位まで上がる。(6)もタイトルを歌う合いの手が効果的で、転調してからの決めが格好いい。後半はパーカッシヴな歌が全面に出てくる。曲自体は初期ミーターズと同様なのだが、ヴォーカルを加えることによって幅が増している。
こうした合いの手的な歌ではなく、本格的な歌ものも登場する。トレモロの効いたポップなギターのイントロから始まるバラード(3)は、途中ドラムが倍テンになるなどの仕掛けはあるが、アートの落ち着いた歌声が素敵だ。またポップなアートのヴォーカル・チューン(8)は、タイ・ハンターというデトロイトの歌手が1963年に CHESS から出した曲(僕は未聴)だが、完全にREPRISE 時代に繋がっていくものだ。実に味のあるいい歌だ。これだけの歌い手を擁しながら、インストだけでいくことに行き詰まりを感じたのだろうか。さらにリー・ドーシーの1965年のスマッシュヒット(12)は、オリジナルよりビートとリフを強調してある。これを聴いているとジュニア・ウォーカー&オールスターズの「ショットガン」を思い出す。リー・ドーシーのオリジナル自体に「シュート」と唄ってピストルの音が挿入されており、ミーターズの方には「ショットガン」と同じ唄い回しの部分があるせいもあるが、案外その辺の影響が歌の導入の背後にあるのかもしれない。
一方前二作からの延長となるインストものもある。(2)は透き間だらけのベース、切れのいいギター、得意の転調を使った展開など、そのものだ。また(4)も初期ミーターズならではの透き間だらけの曲で、ドラム、ベース、はおろかギター、オルガンまでもスカスカな演奏、でもそれが絡み合うとミーターズ・サウンドのでき上がり!出色なのは(9)で、まるでバンジョーのようなミュートの効いたバンジョーのカッティングが印象的だ。いつもより重た目な"ジグ"のドラムが大活躍する。
しかしこうしたインストの中にはいまひとつと思われる曲もある。(5)はかなりロック調の曲で、オルガンの活躍が目立つが、ミーターズらしい緊張感は途中のドラム・ブレークくらいだ。また、ギターのイントロの裏を取るようにしてドラムが入ってくる(10)は、途中16ビートに展開するが、ちょっと単調。こうしたインスト曲の限界が表れているようだ。(11)はベースとギターのユニゾンを軸にした曲で、ギターのフレーズには(1)に通じるものがあるが、強引にも聞こえる転調で変化をつけるが、明らかに(1)よりつまらない。
ボーナスの(13)はメンバー紹介を兼ねたようなポップな曲。ドラムがいつになく軽い。途中のブレークでは歌に応じて4人がフィルを入れる。ポップなロック調の(14)もドラムが軽く、ミーターズらしいうねりが足りない。
その後 JOSIE は倒産、ミーターズも新しい時代に突入していく。
[04]: CABBAGE ALLEY (REPRISE/SUNDAZED SC 6168)
- You've Got To Change (You've Got To Reform)
- Stay Away
- Birds
- The Flower Song
- Soul Island
- Do The Dirt
- Smiling
- Lonesome And Unwanted People
- Gettin' Funkier All The Time
- Cabbage Alley
- Chug Chug Chug-A-Lug (Push And Shove) -pt. 1
- Chug Chug Chug-A-Lug (Push And Shove) -pt. 2
モノトーンの路地をふさぐフレッシュ・グリーンのキャベツ!この印象的なジャケットをもつ本作が1972年にリリースされた REPRISE 第1弾(MS-2076)だ(CDにはボーナス2曲追加)。
ゲストのシリルが叩くコンガの連打から始まる(1)は、音に厚みを増したパーカッシブな演奏とコーラスから、どこかアフリカ的なものを感じる。パーカッションが加わったことにより、あたかもツイン・ドラムのような響きになっている。ワウワウやディストーションといったエフェクターを加え、ロックっぽいソロすら展開するギターなど、明らかに JOSIE 時代とは異質なサウンドだ。2本のギターとベースのハーモニーから始まる(2)も、やはりアフリカの香りを感じるファンクだ。オーヴァーダブを駆使し、エコーでディレイを効かせたヴォーカルなど、よりロック的なアプローチが見られるのは時代だからであろうか。しかし途中のブレークなどでは、ミーターズ本来の透き間感覚がしっかり息づいていることが分かる。
印象的なオルガンのイントロを持つポップでパーカッシヴな(5)は、アフリカ的なコーラスと、ギゾやコンガなどのパーカッション、まるでスティールドラムのようなギターソロなど、ニューオーリンズ=カリブ=アフリカの連続を感じさせる曲だ。一方アート自作となっているが、実はプロフェッサー・ロングヘアのニューオーリンズ・クラシック「ヘイ・ナウ・ベイビー」(10)は、ピアノを効かせ、オリジナルのイメージを損なわないようにしながら、しっかりミーターズ流の味付けがされている快演だ。途中のブレークがインディアン・チャントを思わせて気持ちがいい。
(6)はファンクなヴォーカル・ナンバー。ツインドラムでリズムを細かくしているが、演奏自体はシンプルでドライ。(9)はミーターズ本来のスカスカのミディアム・ファンク。コーラス、合いの手ともに控えめで、心地よいセカンドラインが跳ねる。
このアルバムでは歌ものがバランスよく配置されている。ニール・ヤングの(3)はしっとりしたバラード(原曲未聴)だ。曲はポップだが、ミーターズはそれに流されていない。ギターにワウを多用し、オルガンにピアノを加えた演奏は、どっしりしたコーラスとともに、曲をゴージャスにしており、後のネヴィル・ブラザーズに繋がっていくものを感じる。(8)もポップなバラード。レオの凝ったコードワークが聞かれるが、印象は弱い。ドラムの派手さがミーターズらしいが。
純粋なインスト(4)はジャジーでムーディなミディアム・ナンバー。途中でリズムがドライになり、演奏もロック色を増す。でもいまひとつ精彩がない。ラストのオクターヴ奏法はこのころよりレオの得意技となっていく。またファンキーなインスト(7)は、ミーターズ得意の転調による曲展開だが、多重録音が利用できるようになったせいか、ユニゾンのリフは影を潜め、ギターのコードワークが目立つようになった。
ボーナスの(11)と(12)は2パートに及ぶ粘っこい曲調のファンクで、透き間だらけのベース、パーカッシヴなオルガンとギターをバックにユニゾンのコーラスがかぶる。ブリッジにいくと急にノリがロックっぽくなるのが折衷的な感じだ。なお、この曲をソロ・ヴォーカルにして、アレンジを変えたものが[07]に収録される。
このアルバムではアフリカ回帰的なサウンドが見られるようになる。この辺り、すでにネヴィル・ブラザーズへ繋がる志向性を感じるのだが。
[05]: REJUVENATION (REPRISE/SUNDAZED SC 6169)
- People Say
- Love Is For Me
- Just Kissed My Baby
- What'cha Say
- Jungle Man
- Hey Pocky A-Way
- It Ain't No Use
- Loving You Is On My Mind
- Africa
- People Say -single ver.
- Hey Pocky A-Way -single ver.
タイトルを訳すなら「充電完了!」とでもしようか。1974年満を待して出された REPRISE 第2弾(MS-2200)は、チープなジャケットとは裏腹な、大傑作アルバムとなった。
まずは名曲(1)((10)は短く編集されたシングル・ヴァージョンで、R&Bチャート52位)、ブラック・インディアン・チャントに通じるビートに貫かれた、正統ニューオーリンズ・ファンクだ。シンプルなブラスを印象的に配し、象徴的なコーラスなど、曲の構造はポップだが、演奏はあくまでもファンキー。途中のベース・ギターのユニゾンなど涙が出そうにおいしい。これも代表曲で、ネヴィル・ブラザーズにとっても重要なレパートリーとなる(6)((11)は短いシングル・ヴァージョン、R&Bチャート31位)も、ニューオーリンズの伝統に根づく、ブラック・インディアン・チャントにルーツを持つ曲だ。タイトルは「That's Alright」というような意味であり、チャントでの挨拶言葉だそうだ(ドクター・ジョン『フードゥー・ムーンの下で』ブルース・インターアクションズ,1994,p.31参照)。何といってもパーカッシヴなドラムがこの曲のベースであり、他の楽器はこのリズムをいかに盛り上げるかといった演奏をする。ここではギターまでがパーカッションと化している。名曲中の名曲。ちなみにこのリズム、ドクター・ジョンがアルバム「In The Right Place」の中の「シュー・フライ・マーチズ・オン」で使っていた。バックはもちろんミーターズ。
(9)も名曲だ。こちらはタイトル通りアフリカを意識した楽曲で、"Africa"と"I feel good"をかけた歌詞が非常に印象的。裏で響く木琴のようなパーカッション、途中鳥の鳴き真似も入り、気分はジャングル・クルーズ。とくれば次は(5)、ドラムとクラヴィネットの絡みが格好いいファンク。全体にユニゾンで曲が構成されているが、ベースの隙間がミーターズを自己主張している。
LPではA面にあたる曲は怒濤のファンク大会。クラヴィネットを思わせるワウワウ・ギターから始まるスローファンク(3)も、ミーターズ本来のスカスカのベース、ドラムを土台にしたご機嫌な1曲。裏にスライドが絡んでくるが、クレジットはないが、これはおそらくこのころアラン・トゥーサンとかかわりを持っていたローウェル・ジョージだろう(ライナーにはセッションに参加した旨記されている)。続く(4)はまるでスライ・ストーンとアラン・トゥーサンが合作したようなメロディアスなファンク・ナンバー。曲調がどんどん変わっていくのが面白い。こちらは本物のクラヴィネットが彩りを添える。一方女性コーラスも加わるミディアム・バラード(2)は、切なさを感じるアートの歌がすばらしい。サビではけっこうビートが強調されており、ファンクネスも感じる。
残る(7)はマイナーな曲調に女性コーラス、アコースティックギターによるバッキング、ロックっぽいギターといった、ポップ・チューンの要素をすべてぶち込んだような曲。ビートは違うがラベルの「レディ・マーマレード」に通じるものを感じてしまう。後半は壮絶なインプロヴィゼィション大会となる10分を超える長尺ナンバー。次の(8)はラテン・フレィヴァーを感じさせるポップな準インスト・チューン。ピアノが印象的なテーマを繰り返し、後半レオがフュージョン調のギターを絡めてくる。息抜きかな?
アラン・トゥーサンのセッションバンドとしての緻密さと、当代きってのライヴ・バンドとしてのグルーヴが見事に一体化したこのアルバム。今までCD化されなかったのが信じ難い。ニューオーリンズの音楽を語る上で避けて通れない1枚だ。
[06]: FIRE ON THE BAYOU (REPRISE/SUNDAZED SC 6167)
- Out In The Country
- Fire On The Bayou
- Love Slip Upon Ya
- Talkin' 'Bout New Orleans
- They All Ask'd For You
- Can You Do Without
- Liar
- You're A Friend Of Mine
- Middle Of The Road
- Running Fast
- Mardi Gras Mambo
- Running Fast -long ver.
1975年リリースの REPRISE 第3弾(MS-2228)は、タイトル通り燃えるようなジャケットが印象的な作品(CDでは1曲ボーナス)だ。このアルバムからシリルが正式メンバーとなる。そのせいもあってか、全体に4人の緊張感溢れるインタープレイといった、ミーターズ元来の色合いが薄れ、よりポップで親しみやすくなっているようだ。例えば(1)はスカスカなリフのわりに、ポップな曲となっている。シリルが加わることにより、歌に幅が出てきた。一方ご当地ソング(4)はテーマと決めがはっきりしたポップな曲だ。ミーターズ特有のファンクながら、緊張感が取れ、聞きやすくなっている。この辺が初期と後期の違いで、評価の分かれるところだろう。(6)はクールなベースラインを持つファンクで、ヴォーカルを楽器の一部のようにして使い、グルーヴと丸みを同時に出している。途中の決めがかわいい。
後にネヴィル・ブラザーズでも再演する(2)は、アフロなコーラスを軸にした代表的なニューオーリンズ・ファンクで、透き間を上手く使った曲作りはミーターズならではのもの。これも名曲だ。(10)は(2)に似たマイナー系のファンクで、アルバム収録ヴァージョンはやけに短い。(12)がフル・ヴァージョンのよう(シングル・ヴァージョンより若干長い)で、けっこういかした曲なんだけど、ちょっと単調かな。また、スリー・ドッグ・ナイトのヒットで有名な(7)は、よりファンキーでパーカッシヴな演奏となっている。オルガンが格好いい。この時代未発表曲などを聴いてもロックの楽曲を取り上げることが多くなっている。(3)はワンコードを基調としたファンクで、ドラムとベースの跳ねるリズムにパーカッシヴなエレピとギターのカッティングが加わり、いかしたコーラスとロックっぽいギターが絡んでくる、癖になりそうな曲だ。
このアルバムのひとつの特徴は、リラックスした曲をLPの各面のラストに配置したことだ。それにより親しみやすさが増すことを狙ったようだが、なかなか上手くいっていると思う。A面ラストに当たる(5)はカントリー・フレィヴァー溢れるパーティ・ソング。ドクター・ジョンなどに通じる楽しい曲で、「ボン・トン・ルーレ」「クロウフィッシュ・フィッシン」「ガンボ」といったクリオール・ミュージックにつきものの台詞が飛び交ってマルディ・グラの気分が味わえる。またB面ラストに当たる、アートのホウケッツでの記念すべきデビュー曲のリメイク(11)は、20年前のオリジナルの味わいを損なうことなく、よりタイトに仕上げている。
一方、ちょっと首をかしげたくなる曲もある。例えば(9)はエレピからオクターヴ奏法を多用したギターに引き継がれるジャジーなインスト・ナンバー。技量は認めるが、ミーターズがやる必要があるとは思えない。(8)はミディアムのバラードだが、ミーターズはこの手の曲をやっても過度にソウルフルにならず、素直な感じの仕上がりになることが多い。これもニューオーリンズの土地柄か。しかしなぜか後半フュージョンを思わせるインプロヴィゼィションが聞かれる。この辺もちょっと気になるところだ。
こうして聴くと、演奏や楽曲に幅が出てきた反面、段々バンドの持つ一体感が薄れてきた印象を受ける。この両立は極めて困難な課題といえるが、この辺りにミーターズ解散の遠因があるような気がする。
[07]: TRICK BAG (REPRISE/SUNDAZED SC 6170)
- Disco Is The Thing Today
- Find Yourself
- All These Things
- I Want To Be Loved By You
- Suite For 20 G
- (Doodle Loop) The World Is A Little Bit Under The Weather
- Tric Bag
- Mister Moon
- Chug-A-Lug
- Hang 'Em High
- Honkey Tonk Woman
1976年、ミーターズがヨーロッパ・ツアー中にマーシャル・シホーンが練習テープを寄せ集めて勝手にリリースしようとした、いわく付きのアルバム(MS-2252)。REPRISE はそれらの曲の半分は没にして、ツアーから帰ったミーターズは結局4曲録音してリリースすることになった。ジャケットはまさにヒップ!
ストリングやコーラスなど、ここまでやるかって感じのディスコ・ナンバー(1)は、そうした新たな録音のうちの1曲だ。当時音楽界を席巻していたディスコに未来を感じたらしいレオの発案で吹き込まれたらしい。冗談のような曲だが、決めとかはしっかりミーターズしているのがおかしい。続くちょっとキャプテン&テニールを思わせるようなポップな曲調を持つ(2)も、おそらく後から加えた曲だと思う。魅力的なコード・ラインなんだけど、ワンパターンの繰り返しで、曲の練り込み不足を感じる。
(3)はアートの唄うソウル・バラード。これはいい曲だ。ちょっとアーロンにも通じるような唄い回しで、切々と唄う。演奏も落ち着いていてよい。でも"ジグ"のドラムがおとなしいよな。次の単純なリフのポップな感じのメディアム。ファンクになりきらないのは、ディスコを意識したようなストリングのせいか。
(5)は軽い感じのフュージョン風のポップ・ナンバー。レオが大好きなオクターブ奏法と、シンセサイザーを多用した演奏。これじゃミーターズじゃないな。途中のピアノになんとかニューオーリンズ・フレィヴァーを感じることができるが。(6)は REPRISE 時代のミーターズらしいミディアム。この辺が練習テープなんだろう。タイトでドラムも生き生きしているが、いまひとつインパクトには欠ける。
アルバムのタイトル曲(7)は、アール・キングが1962年に IMPERIAL に吹き込んだ名曲のリメイクで、アール本人がヴォーカルで参加しているようだ(3番後半で明らかに声が変わる部分か?)。シンプルなリズムのアレンジながら、印象的なキメによりタイトな佳曲に仕上がっている。(8)もアートのヴォーカルとシリルのコンガが生きた曲だ。複雑なリズムを持ったファンク・ナンバー(9)では、シリルのヴォーカルが大活躍だ。オルガンの音など、ちょっとパーラメントを彷彿させるナンバーだが、ミーターズらしい透き間が印象的な曲で、これも悪くない。バンドはシリルを迎え、おそらく彼を全面に出したレパートリーを仕上げようとしていたのだろう。そうした練習テープの中の上質なものがはからずも世に出てしまったのだろう。
(10)は細かいリズムをドラムとコンガで刻むインストで、なんとなくサンタナを思わせるフレーズをレオが弾きまくる。
この曲のエンドとかぶるように始まる(11)はご存じストーンズの名曲。演奏はロックでも、アートの唄い回しは決してロックにはならない。でもレオのギターはロックしちゃうんだよね。通して聴いてみると、おそらく最初の4曲が後から録音したもので、残り、少なくともLPのB面(CDの(6)以降)が練習テープからのものだと思われる。そしてその練習テープの方がミーターズらしいのは皮肉というべきか。ここに来て、特にニューオーリンズの伝統に根差そうとするネヴィル兄弟と、新しいものをどんどん取り入れようとするレオとの方向性の違いを感じる。バンド解散の理由はこの辺にもありありそうだ。
[08]: NEW DIRECTIONS (WARNER BROS./SUNDAZED SC 6171)
- No More Okey Doke
- I'm Gone
- Be My Lady
- Mi Name Up In Lights
- Funkify Your Life
- Stop That Train
- We Got The Kind Of A Love
- Give It What You Can
解散をすでに決めていたミーターズが、サンフランシスコに出向き、タワー・オヴ・パワーのホーン・セクションなどを加えて1977年に録音したのがこのアルバム(BS-3042)だ。プロデューサーはディヴィッド・ルービンソン。
のっけからファンキーな(1)で幕を開ける。すばらしいブラス・セクションを迎え、躍動感溢れる演奏にのって、シリルがのびのびと唄って気持ちがいい。ブラスが効果的なファンクナンバー(4)でも、曲調はややポップだがシリルのヴォーカルが生き生きしていて良い。続く(5)はベースがチョップしギターはトーキング・モジュレーターまでかませたミディアムのファンク。セカンドライン色は薄れているが、なかなかグルーヴィーな演奏だ。ラストの8(も)ボトムの効いたドライヴ感のあるファンク・ナンバーで、ブラスが格好いい。もっとこうした曲で押していった方が、ミーターズの魅力は生きたような気がする。
一方(3)はホーンがいかしたミディアムで、当時AORといわれていたものに近い感じがする。その分ミーターズのファンク色は薄れているが、ファンキーなベースが聞かれるかくれた名曲。R&Bチャート78位。ギターソロでジョージ・ベンソンばりのヴォーカルとギターのユニゾンも飛び出す。(7)も同系統の曲で、落ち着いたフュージョン風の演奏をバックに、シリルがのびのび唄う。しかし時代の要請とはいえ、これがミーターズの目指す音なのだろうか。この辺にこのアルバムが商業的に失敗した理由が見える。聴衆に媚びすぎたのだ。
ニューオーリンズ・フレィヴァー溢れる(2)は、アラン・トゥーサンがプロデュースして、ミーターズがバックをつけたキング・ビスケット・ボーイの曲を自ら再演したもの。トゥーサンらしいポップなナンバーで、このアルバムの中では異色といえるかもしれない。アートの唄はシリルに比べ、もったりとした感じだが捨てがたい味がある。異色といえばボブ・マーレィのレゲエ(6)は、プロデューサーの指示でやったようだ。アートの唄は結構ハマっているんだが、ミーターズに向いているかというと疑問だ。
演奏およびサポートは申し分ないとはいえ、アルバムタイトルとは裏腹に、プロデューサー、メンバー(特にネヴィル兄弟とその他の3人)の向いていた方向はバラバラだったといえる。依然として当代きっての演奏能力を持ったバンドであったが、ジャケットの写真が暗喩しているように、もはやひとつの方向を向いて進むことは不可能だった。この後ネヴィル兄弟は新しい方向=ネヴィル・ブラザーズの結成に向け、バンドを離れていくことになる。
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