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N'awlins Gumbo Kings ; We're The Gumbo Kings ; HERRING, HOWARD SIZER no number (2005. 1.25)

2004年リリース。中身どんなものか考えず、バンド名だけで買ったんですが、最初中ジャケの白人のおじさんたちを見たとき、「ハズしたか?」と思いました。でも杞憂でしたね。1曲目の「ジョー・エイヴェリーズ・ブルース」、これは「ザ・セカンド・ライン」なんですけど、ドラムから何からしっかりセカンドラインしてて気持ちがいいです。この人達は多分ベテランのニューオーリンズ・ジャズ・プレイヤーだと思われ、「スウィート・ロレイン」や「サマータイム」なんてムーディに決めてるんですが、そこにファンキーなタイトル曲、ブラスバンド風味の「サウス・ランパート・ストリート・パレード」「バーボン・ストリート・パレード」、さらにはディキシーランドな「アット・ザ・ジャズ・バンド・ボール」「ザッツ・ア・プレンティ」など、ガンボ・キングスの名に偽りなし!ニューオーリンズ音楽の玉手箱的な楽しいアルバムです。



Nacomi ; Grabbed My Heart ; BSMF-2062 (2007.10.25)

2007年リリース。ニューオーリンズの救援活動でもお馴染みのナコミ嬢がソロ・アルバムを出しました。ベースにはコンフントJでも活躍してるパブロ内田。ゲストには塩次伸ニに打田十紀夫とエレキ、アコギの大御所が加わっています。セカンドライン風味が格好いいタイトル曲の他、オリジナルも英語で書き下ろしていますし、カヴァーもジミー・リードからシッピー・ウォーレスまで幅広く、特に「フィーヴァー」はぐっと落ち着いてジャジーな仕上がり。彼女の魅力は的確なギターと自然体のヴォーカル。特に歌は力むことも演じることもなく、好きな歌に愛情を注いでいるって感じ。でもファンキーにアレンジされた「トゥッティ・フルッティ」など、パンチは充分に効いてます。こりゃ是非生で見たいものです。



Nappy Brown ; Don't Be Angry ; SAVOY/NIPPON COLUMBIA COCY-78185 (2000.11.11)

1954〜56年録音。中古で購入。ことし「Night Time Is The Right Time」という決定的2枚組がリリースされましたが、それが出るまで、SAVOY時代のナッピーを手軽に聴くことのできるCDでした。タイトル曲や「リトル・バイ・リトル」といった代表作は先に紹介した2枚組に収録されています。ゴスペル仕込みのナッピーのヴォーカルは、張りのある声と、ちょっとかすみがかかったような声が交互に出てきて、まるでふたりで唄っているように聞こえることすらあります。噛めば噛むほど味の出るヴォーカリストだと思います。



Nappy Brown ; Night Time Is The Right Time ; SAVOY 92908-2 (2000. 7.28)

1954〜62年録音の2枚組。これは待ちに待ったCD化です。なにしろレイ・チャールズで有名な表題曲のオリジナルが聴けるんですから。90年代に入ってからも新譜を出し続けているナッピーですが、日本での評価はお世辞にも高いとは言えません。しかしこのアルバムを通して聴いてみると、凄い歌唱力の持ち主であることが分かります。張りのある声と、ややドスの効いた声とを交互に使い分ける曲など、まるで二人の人間が唄っているようです。曲はブルースからジャンプまで何でもあり、特にジャンプ系の曲はジョー・ターナーばりの乗りで迫ります。スローな曲ではニュアンス豊かに時に朗々と、時に哀愁を込めて唄います。少しポップな感じになることもありますが、これも持ち味のうちでしょう。バックはミッキー・ベイカー、サム・テイラー、バド・ジョンソン、キング・カーティスなど、ニューヨークの名うてのミュージシャンばかり、文句なしです。僕にとってことしのベスト・リイシューです。


Nappy Brown ; Something Gonna Jump Out The Bushes ; BLACK TOP CD BT-1039 (2007. 9.23)

1988年リリース。ナッピーはもちろんSAVOY時代が有名だし名曲も多いんですが、その後も割とコンスタントにアルバムを出しているようです。そうした中でこのアルバムはかなり良質なものだと思います。バックをアンサン・ファンダーバーグ、ロニー・アール、アール・キング、ロン・リーヴィ、カズ・カザノフなど、まさにBLACK TOPのオールスターキャストに支えられて、軽快な「ハヴ・マーシー・マーシー・ベイビー」からファンキーなタイトル曲、そしてたっぷりしたバラードの「ナッシング・テイクス・ザ・プレイス・オヴ・ユー」と、いろんなタイプの曲を披露しています。B.B.キングに通じるメリスマたっぷりの伸びやかな高音から、ちょっとしゃがれてドスの効いた低音まで、多彩な声はSAVOY時代を彷彿させます。制作者のナッピーに対する愛情を感じました。



Nappy Brown ; Long Time Coming ; BLIND PIG BPCD 5119 (2007.12.14)

2007年リリースですが、「アウ・シュックス・ベイビー」だけ2002年の録音です。間もなく80才を迎えようというナッピーじいさんですが、どっこい元気です。タイトなバンドをバックに、いきなり「ベイビー・ベイビー。好きになっちまったぜ」ですからねぇ。さすがに声の張りは往年のものとはだいぶ違っちゃってますけど、それでも声色を変えながら歌うスタイルは変わらず。SAVOY時代の代表曲「ドント・ビ・アングリー」や「ライト・タイム」も元気に歌いますし、リトル・ウォルターの「フー」なんてのもやってます。嬉しかったのは「チェリー・レッド」で、クリーンヘッド・ヴィンスンの向こうを張るような歌い方。ゲスト・ミュージシャンも多彩で、ジュニア・ワトソン、ボブ・マーゴリン、ジム・ピュー、キッド・ラモスなんて名前も見えます。なお「アウ・シュックス・ベイビー」のセッションはボブ・コリトアが仕切っており、ピアノにヘンリー・グレイ、ギターにはキッド・ラモスが参加してます。



Nathan & The Zydeco Cha Chas ; Creole Crossroads ; ROUNDER CD 2137 (2003.11.18)

1995年リリース。ライナーに「ザディコとケイジャンの違いは?」なんてあるように、ゲストにボーソレイのマイケル・ドゥーセを迎え、デュオで録音した曲もあり、そのふたつの音楽の親和性のよく分かる曲が多いです。また、いろんなタイプの古い曲を自分なりに消化して自作曲に仕立て上げているのも面白く、これって「グッド・モーニング・リトル・スクールガール」じゃないの?とか、ギター・スリムみたいとか色々あります。スワンプポップといってもいいようなコマーシャルなチューンもあったりして、ネイザンの明るい声と多彩な鍵盤アコーディオンが見事に生かされた楽しい作品です。



Nathan & The Zydeco Cha Chas ; Hang It High, Hang It Low ; ROUNDER 11661-2164-2 (2006.10.15)

2006年リリースの新譜です。ネイザンは鍵盤アコの名手で、ブルース系の曲も多いんですが、そのアコーディオンプレイは華やか。2曲目にオーティス・レディングの「ファ・ファ・ファ・ファ」が出てきたときは思わずにんまりしてしまいました。ヴォーカルはちょっとぶっきらぼうで、でも根っこに優しさを感じます。バックをつけているのはおそらく一族の面々でしょう。気のあったプレイが展開されていますが、特にデニス・ポール・ウィリアムズのギターはなかなかのものです。スタイル的に目新しさはないけど、アコーディオンの音が気持ちよくて楽しめました。



Nathaniel Mayer ; Why Don't You Give It To Me? ; ALIVE NATURALSOUND 0079-2 (2007.12. 3)

2007年リリース。デトロイト録音です。こりゃなんて言ったらいいんでしょうか。1960年代のサイケデリック・サウンドと、70年代のガレージ・パンクを足して2で割ったようなサウンドをバックに、思いっ切りしゃがれ声で、口の中には唾をいっぱいためたような歌い方で、やや投げやりに歌います。確かにブルージーであり、またソウルも感じますが、かなりアヴァンギャルド。不思議な印象を残す音楽です。



Neil Diamond ; Gold ; GEFFEN/UNIVERSAL UICY 1289/90 (

1968〜72年にリリースされたアルバムからのベストです。中学〜高校時代、結構なポップフリークだったので、彼の曲はかなり聴いていたんですが、カントリーにドラマティックな手法を取り入れたシンガー・ソングライターくらいのイメージしかなかったんです。でもこうしてたっぷり聴いてみると、ラテンフレイヴァーもあったり、かなり重層的な音楽なんですよね。素晴らしい曲に、あの顔に似合わないダミ声が妙にマッチするんです。そしてライヴ盤からのセレクトを聴いて、この人の音楽の背後にゴスペルがあるんだって事に改めて気付かされました。ホワイト・ゴスペルだと思うんですが、コール&レスポンスやタンバリンを使ったリズムなど、デラニー&ボニーやスティーヴン・スティルスに通じるものを感じました。これがカントリー的なネアカさとかセンチさとは違う味わいを付け足してるように想います。ただ、そこにストリングを加えたりした構成力が、彼の持ち味かな。面白いですね。



Neil Young ; Greatest Hits ; REPRISE/WEA WPCR-11995
(2006.11. 5)

1969〜91年の作品集ですが、その多くは70年代前半までに集中しています。ニール・ヤングはグッピーでよくかかるんで、僕はアルバムはあんまり持ってないんですけど、こうやって改めて「ダウン・バイ・ザ・リヴァー」「ヘルプレス」「オハイオ」「ライク・ア・ハリケーン」と聴いていくと、カントリーテイストの中にニールならではのロック色が注入されているのがよく分かります。ビヤビヤのギターも何ともいえない味で気持ちいいですね。こうして聴くと「孤独の旅路」が実にポップな曲だって再確認。なるほど全米1位になるわけです。



Nella Dodds ; This Is A Girl's Life - The Complete WAND Recordings 1964-65 ; KENT CDKEND 282 (2007. 9.27)

ネラ・ドッヅは1950年メリーランド生まれといいますから、この吹き込みの時はまさにタイトル通りのティーンエイジャーだったわけです。WANDというレーベルはニューヨークにあり、当時流行っていたMOTOWNサウンドの影響を受けたバックにのって、ネラは愛らしさの残る声で一所懸命歌ってるって感じです。「カム・シー・アバウト・ミー」なんてもろですし、カーラ・トーマスの「ジー・ウィズ」もやってます。ケネス・ギャンブルが何曲か楽曲を提供しています。ただサウンドはMOTOWNのそれよりある意味端正すぎて、ちょっと鈍重、跳ねや乗りが足りない感じですね。結局彼女はここに残した録音だけで音楽をやめてしまったようです。



Nellie Lutcher ; The Best Of Nellie Lutcher ; CAPITOL JAZZ CDP 7243 8 35039 2 6 (2002. 3. 3)

1947〜51年録音。ヒットした「ハリー・オン・ダウン」に始まる21曲。ネリーのちょっとコケティッシュで小粋なヴォーカルと、かなり達者なピアノが実にジャイヴィーです。泥臭さはなく、洗練した演奏で、ジャズ的なものは確かにあるようですが、もっとエンテーティナー的な要素を強く感じました。時々キャブ・キャロウェイのような唄い回しが出てきたり、表情が豊かで、小さなクラブでピアノを弾き唄う彼女を、ブランデーでもくゆらせながら堪能してみたくなりました。大人の音楽ですね。



Nellie "Tiger" Travis ; I Got It Like That ; TIGER BELLE no number (2001. 2. 8)

昨年菊田俊介のアルバムでメインヴォーカルをとったネリーの2000年録音の新譜。のっけのブルースのギター、一発でそれと分かるシュンのギターで開幕します。良い音だなぁ。ネリーのヴォーカルは丁寧で一所懸命、好感がもてます。でもなにか僕にはひとつもの足りないです。曲とか声とか、いまひとつ華が足りないように思えます。ビリー・ブランチが2曲ハープを入れていたり、バックも堅実なんですが、彼女の魅力が引き出せてないように思えるんです。オリジナルで固めたようで、曲が悪いわけではないんですが、インパクトに欠けます。シュンのアルバムの方が僕は好きだな。



Nellie "Tiger" Travis ; I'm A Woman ; CDS no number (2008. 6. 7)

書いてないけど多分2008年のリリースです。以前菊田俊介と組んで歌ってたネリーのソロアルバムは、ぐっとソウル寄りになっていて、これがひょっとしたら本来の姿なんじゃないでしょうか。シンセ多用のかなりチープなバックのサウンドですが、ネリーはなかなか落ち着いた歌を聴かせています。まあこのクラスの歌手はあちらにはごろごろしてるんでしょうが、それなりの水準は保ってますね。でもガツンてくる曲はなかったな。スタイルもちょっとオールドファッションだし。びっくりしたのが「フー・ノウズ・ユー」で、何と今を時めくスタン・モズレーとのデュエット。でもこうして聴き比べちゃうと、スタンの表現力の深さが際立っちゃいますね。



The Neville Brothers ; From The Beginnings Vol. 1 ; THE NEVILLE BROTHERS no number (2010. 7.26)

1977年結成直後のライヴです。ビッグ・チーフ・ジョリーとワイルド・チョピトーラスも入っていますから本当に最初期のものですね。盤はブートのようです。いきなりスティーヴ・ミラー・バンドのヒット「フライ・ライク・アン・イーグル」からスタート。「グルーヴィン」「モジョ・ハンナ」といったニューオーリンズなナンバーに「フィーヴァー」「ビリー・ジョーの歌」といったヒット曲を絡めるのは、当時彼らがライヴシーンでどんな方向を狙っていたかが分かります。「ヘイ・ポッキー・ウェイ」からはチャント状態で、ラストは「ブラザー・ジョン〜アイコ・アイコ」というお得意のパターン。まだネヴィルズとしての個性が確立されていませんが、ミーターズの方向から離れようとする医師は感じられます。




Neville Brothers ; Authorized Bootleg / Warfield Theatre, San Francisco, CA. Faburuary 27, 1989 ; HIP-O / A&M B0014682-02 (2010.12. 9)

アルバム「Yellow Moon」発売前の、ある意味最も油の乗っていた時期のライヴ2枚組です。その新作からは表題曲の他「マイ・ブラッド」「ヴードゥー」「ウェイク・アップ」「シスター・ローザ」と5曲取り上げており、すでにライヴの定番として位置づいていた曲がアルバム化された事情を見て取ることができます。ギターはブライアン・ストルツ。例によってリズムの洪水のようなライヴで、時折「テル・イット・ライク・イット・イズ」のような清涼剤が置かれる他は、グルーヴ溢れる演奏が繰り返されています。また終盤のロックンロール・メドレーの構成は昨年の来日時のものとほぼ同じで、20年の時を経てもライヴに向かう姿勢が同じであることも分かります。とにかく臨場感たっぷりの素晴らしいライヴです。




The Neville Brothers ; Walkin' In The Shadow Of Life ; BACK PORCH/EMI 72435-70989-2-2 (2004.11. 7)

2004年リリース。待ちに待ったネヴィルズの新譜はいきなりファンクの4連発でした。それも冒頭のタイトル曲あたりはまだネヴィルズらしい明るさを感じますが、「キャント・ストップ・ザ・ファンク」になると、まるでパーラメンツみたいなドロドロしさ、さらに懲りに凝ったアレンジのテンプテーションズ・ナンバー「ボール・オヴ・コンフュージョン」が続きます。ファンク好きにはたまらないです。続く「キングダム・カム」は途中ラップの入る、ちょっとブラック・インディアン・チャントを思わせるシリルの曲で、この辺のチャールズのサックスははまりますね。メッセージ色の強い「ジャンキー・チャイルド」「ユア・ライフ」など、サウンド全体にヒップホップの手法を取り入れながらも、やっぱりネヴィルズらしさがしっかり出ています。自叙伝的な「ブラザーズ」から、とっても素敵なアレンジのレゲエ・クラシック「リヴァーズ・オヴ・バビロン」と、終盤は結構しっとりした感じで、ネヴィルズの懐の深さを感じました。アートがやせこけて杖を突いているのが心配ですが、こんな良質なアルバムが作れるんですから、大丈夫ですよね。



The Nevilles ; Jazz Fest Live 2005 ; MUNCKMIX no number (2006. 1. 3)

カトリーナの被害が出る前に買ったんですが、ようやく聴くことができました。バンド名から分かるように、兄弟だけではなく、アイヴァンなど子供の世代も参加し、ファミリーバンドとしてやっています。曲は「コンゴ・スクエア」からスタート。サニー・ランドレスの名曲を、チャールズの哀愁を感じるサックスとアーロンの憂いのある声が絡み合いながら演奏すると、オリジナルとはまた違う味わいです。世紀のライヴ盤のテイクより生々しい感じがしました。新しいアルバムからも「キャント・ストップ・ダ・ファンク」やタイトル曲、さらに「バビロン河」など取り上げています。一方「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」「ビリー・ジョーの歌」「べサ・メ・ムーチョ」などスタンダードもネヴィル流の解釈でこなしています。さらにお得意の「ビッグ・チーフ」「ブラザー・ジョン」といったインディアン・チャントものはさすがのノリですね。2枚組ですがやはりこのライヴは体験したかったです。アートが元気になって来日してくれないかしらね。



The Neville Brothers ; Live At Jazz Fest 2009 ; MUNCKMIX/BUFFALO MM-09NB (2009. 8.11)

ネヴィルズのライヴは「コンゴ・スクエア」でスタート。音質はややこもった感じですが、これはこのCD-Rの性質上仕方がないですね。「ファイア・オン・ザ・バイユー」の他「ティピティーナ」「ビッグ・チーフ」「アイコ・アイコ」といったニューオーリンズ・クラシックに混じって、アーロンが「クレイジー・ラヴ」を歌ったのが珍しいかな。チャールズのインスト「ベサメ・ムーチョ」は昨年の来日の時にもやってました。「ビッグ・チーフ」のイントロ、この時のアートはやっぱり上手く弾けていません。ファンクネス溢れる「ヴー・ドゥー」などを挟み、ラスト2曲はアーロンの独壇場。やっぱり彼の「アメイジング・グレース」はぐっと来ますね。トータルに見て絶好調時とは程遠いですが、がんばってるなって感じでした。




The New Birth Brass Band ; Cell Block 0009 ; NEW BIRTH BRASS BAND no number (2004. 2.17)

2000年リリース。CD-R焼きで如何にも手作りのインナースリーブという自家製作の極みを尽くしたようなアルバムですが、中に詰っている音はタイトル通りストリートの熱気をたっぷり含んだ、ニューオーリンズのブラスバンドならではのものです。まず冒頭の「カリビアン・セカンド・ライン」がタイトル通りラテンフレーヴァーたっぷりで、ウキウキしてきます。「セント・ジェイムズ病院」ではキャブ・キャロウェイ譲りの「ハイ・ディ・ホー」も登場しますし、2ヴァージョンあるタイトル曲にはファンクネスが溢れているなど、ブラックミュージックのいいとこ取りをして、それを見事に自分たちの音に昇華しているのが凄いです。それにスネアのロールが気持ち良くって、生で見たいですね。やや入力過多で耳に押しつけられるようなサウンドがかえって快感でした。



New Birth Brass Band ; New Birth Family ; FAT BLACK no number (2004. 9.20)

2004年ニューオーリンズでのスタジオライヴで、惜しくも亡くなったチューバ・ファッツに捧げられています。ジョージ・ポーター・ジュニアのプロデュースの下、いかにも一発録りといったややラフな演奏ですが、それが逆に躍動感を増しているように思いました。ジャズテイストに彼の地のブラスバンドらしいファンクネスが溢れ、勢い溢れる「アイヴ・ガット・ア・ウーマン」なんてもろにはまっています。「カメレオン」みたいなリフで始まる「プロジェクト・ラヴ」、クールさを感じさせる「ハッシュ・ユア・マウス」の間に「グローリーランド」といったゴスペルがはさまるのも憎い構成。大音量で聴くと快感ですね。



New Birth Brass Band ; New Orleans Second Line! ; MARDI GRAS MG1107 (2006.11.29)

2006年リリース。いきなりサイレンから始まる「フー・ダット・コールド・ダ・ポリス」のファンキーな演奏がたまらないんですが、続く「アパッチ」倍テンリズムにラップを絡めたアレンジも面白く、スネアドラムがリズムをガンガン引っ張っていくのが気持ちいいです。トラッドナンバーはニューオーリンズ・ジャズのテイストを感じさせ、いかにもストリートで練り歩いてる雰囲気ですし、ライヴな録音はタイトルに偽りなしってところですね。サッチモみたいな声で歌う「ショウ・ミー・ザット・ダンス・コールド・ザ・セカンド・ライン」はアルバムタイトル曲に当たるんでしょう。とても印象的な曲で気に入りました。ブラック・インディアン・チャントの流れを汲む「ウナネー・ニュー・バース」、活きのいいサウンドで楽しめました。



New Orleans Jazz Vipers ; New Orleans Jazz Vipers ; NEW ORLEANS JAZZ VIPERS NOJV 001 (2008.12.19)

2002年スタジオとライヴ録音が混ざってます。これがこのバンドのデビュー作でしょうか。古いスタイルのジャズを演奏しているんですが、どことなくザラッとしたところがあって、それがいい感じの生々しさになっています。「ディガディガ・ドゥ」って、「買い物ブギ」の元歌みたいですね。有名な「ザ・ムーチ」、ガツンとした感じの演奏です。このバンド、ギターの切れがすごくいいんですよ。ホーンのちょっと野太くてダーティな感じの音をびっと締めてる感じです。まだまろやかさはちゃんと出ていませんけどね。




New Orleans Jazz Vipers ; Live On Frenchmen Street ; NEW ORLEANS JAZZ VIPERS NOJV 002 (2008.12.16)

2004年リリース。ニューオーリンズはスポッテッド・キャットというところでのライヴ録音です。ジョー・ブラウンをはじめとしたメンバーが、オールド・ジャズを演奏しながらとっかえひっかえ歌っていきます。ジョーはサッチモを意識したようなしゃがれ声なのに対し、ギターのジョン・ロドリは若々しいハイトーンで歌います。曲も「ダイナ」「セントルイス・ブルース」「ゴースト・オヴ・ア・チャンス」「ロンサム・ミー」といった古いスタンダードな曲が中心で、肩のこらない演奏は聴いていて気楽に楽しめる感じです。でもチャーリー・ファロデラのトランペットの音色はさすがニューオーリンズといった張りのあるもので、切れのいいリズムといい、このバンドの実力を存分に発揮した作品です。




New Orleans Jazz Vipers ; Hope You're Comin' Back ; NEW ORLEANS JAZZ VIPERS NOJV 003 (2008.12.13)

2006年録音。まずはオリジナルのタイトル曲「ホープ・ユーア・カミン・バック・トゥ・ニューオーリンズ」が印象的です。ちょっと「ドゥ・ユー・ノウ・ホワット・イット・ミーンズ・ミス・ニューオーリンズ」に似たメロディで、サッチモっぽいヴォーカルが入ってきます。この他全体的にオールド・ジャズのスタイルで、クラリネット、フィドルなどを交えたちょっとザラッとしてますが暖かい演奏です。曲も「インディアン・サマー」古いジャズ・ナンバーが多いようですが、よく知らない曲ばかりなのでかえって新鮮でした。




New Orleans Juice ; Fortfied ; DASHHIKI/LOUISIANA RED HOT LRHR 1127 (2002. 1.18)

1999年録音。ニューオーリンズの比較的若手ではないでしょうか。ブラスを含むジャム/ファンク・バンドといっておきましょう。少々軽めですがタイトなリズムセクションに、トロンボーンなど彼の地のブラスバンドの伝統をしっかり引き継いだホーンが乗ってきます。曲によっては明らかにミーターズを意識したような、ちょっと突っかかるドラミングも聞こえます。うねりっていう点ではちょっと物足りなさを感じますが、活きの良さが補っていると思いました。何曲かで聴くことができるヴォーカルはギャラクティックのデクローをちょっと思わせるイメージ。これが流行りなのかな。



New Orleans Juice ; All It Up ; LOUISIANA RED HOT LRHR 1153 (2002. 6. 1)

2002年リリース。1曲目を聴いて、そのロック系のサウンドと、ドクター・ジョンのようなヴォーカルに、前作とのイメージの違いを感じました。ファンキーなハーモニカの入る曲はJ.ガイルス・バンドを思わせる感じだったり、スライドが絡んでちょっとリトル・フィートみたいだったりと、良質なロックサウンドをベースにしながら、しっかりニューオーリンズ風味を加えている感じです。ひとつはセカンドライン的なビートの曲がいくつかあること、もうひとつはチャーリー・デナードのオルガンからアート・ネヴィルの香りがプンプンするからでしょう。トロンボーンがいなくなった分ギターにサウンドがシフトしたのでしょうか。「スペシャル・ナット・ストラット」という曲がとっても気に入りました。サックスインストなんですが、タイトで突っかかり気味のドラムが作るグルーヴが最高なんです。これ1曲で「得した」と思いました。



Juice ; Hey Buddy ; NEW ORLEANS JOUCE DJR 0001 (2005.11.12)

2004年、各地でやったライヴから集めたものです。このバンド、ニューオーリンズ・ジュースからブラスセクションを外したセットで、もちろんニューオーリンズのセカンドラインを土台にしたフォンクバンドなんですけど、ロック系ジャムバンドの要素も入ったサウンドは、なかなか勢いがあっていいです。ゲストにロバート・ランドルフを思わせるスティールを奏でるマーク・ヴァン・アレンが入ると、その独特のサウンドがスパイスとなって、ジェイミー・ギャロウェイのハーモニカと上手くマッチしています。それより驚いたのは2枚目の中盤の「リヴィング・ラージ」で、これってジョー・クラウンだよなと思ったら、それもそのはず、オルガンは当のご本人が担当してました。ゆったりといい感じの演奏で、彼の参加によってどっしりとサウンドが落ち着いたのかもしれません。タジ・マハルの「ファーザー・オン・ダウン・ザ・ロード」もハープ自体はオリジナルを意識していますが、重心がとっても低くて気持ちいいなぁ。来日しないかしら。



New Orleans Klezmer Allsters ; Borvis ; STRETCHY SR-182 (2003. 9.11)

2003年リリース。CD店のニューオーリンズのコーナーに、スーパーマンもどきの「濃い」人物が、何やら街の上を飛んでいくジャケを見たら、僕のようなおっちょこちょいは「こりゃ新しいファンクバンドかな」なんて思ってしまいます。で、聴いてみたらアコーディオン、クラリネット、時折ヴァイオリンが奏でる、摩訶不思議な音楽なんです。ひょっとしてボヘミアンかとも思いましたが、そういった肌合いもあるけど、中近東風味のメロディもあるし。やっぱり無知は怖いです。クレズマーというのはどうやらユダヤ人の音楽のようですね。道理でロマ(ジプシー)にある面近いけど、ぴったり来なかったわけです。歪み系のギターなど入り、モダンな面もありながら、流浪の民の音楽という感じは十分すぎるくらい。こりゃ癖になりそうなくらい面白いです。そういえばジャケットの眼下の街、ひょっとしたらエルサレム?



New Orleans Night Crawlers ; Live At The Old Point ; VIPER CD VP8888 (2002. 9.28)

2000年3月録音。このバンドはどうやらオールスター的なバンドのように思います。ニューオーリンズのブラスバンドのメンバーとかには詳しくないんですが、非常にファンキーで、個々のプレイヤーの技量が高く感じられるからです。ライヴなのでアンサンブルなどに粗さが感じられる部分もありますが、とにかく熱いです。曲はメンバーのオリジナルが中心ですが、サンタナのカヴァーで有名(というかそれしか知らない)「オエ・コモ・ヴァ」、パーカッションを担当しているチーフ・スマイリー・リックス(ソロアルバムも出しています)のインディアン・チャント「チューファンカ/オン・ザット・ウェイ」など、実に楽しいライヴになっています。そしてラストはデビー・ディヴィスをヴォーカルに迎えて、なんとドゥービー・ブラザーズの「ブラック・ウォーター」。これも確かにニューオーリンズをモチーフにしていたと思いますが、オリジナルよりはるかにドロッとして濃いです。生で見たい。



New Orleans Nightcrawlers ; Slither Slice ; THREADHEAD no number (2009. 6.25)

2009年リリース。クレイグ・クレインを中心にしたブラス・ファンク・バンドの新譜はゲストにスタントン・ムーアやブライアン・ストルスを迎え、ますますファンク度を増した作品になっています。マット・ペリネの自在にうねるスーザホーンを土台に、ブラス陣が強烈なリフを構築してぐいぐい迫ります。タイトル曲などインパクト抜群。全曲オリジナルで固めていますが、トランペットのオオタサトルも2曲提供。トップとラストを飾っています。特にラストの「オキナワ」はレゲエのリズムに乗って沖縄旋法を生かしたメロディが印象的です。




New Orleans Rhythm Conspiracy ; Dancin' Ground ; RHYTHMCONSPIRACY no number (2007. 6.10)

2007年リリース。冒頭の「イン・ディス・ワールド」を聴くと、ちょっと昔のブラスロック風の演奏に、ソウルフルなお姉さんの歌が乗った感じで、懐かしさを覚えたんですけど、ブラック・インディアン・チャントのスタイルを踏襲した「ダンシン・グラウンド」なんてのもあり、典型的なニューオーリンズのバンドらしさが出ています。スライドも絡めたギターのせいもあり、演奏はかなりロック寄りなんですが、歌の方はソウルフルで、この辺りのコントラストが魅力とも言えますし、ちょっと古くささを感じさせるところでもあります。「テル・アップ・ザ・トゥルース」くらいの軽めのファンクが気持ちいいな。



The New Orleans Social Club ; Sing Me Back Home ; BURGUNDY/SONY BMG 82876 80589-2 (2006. 4.21)

2006年リリース。まずこのバンドのメンバーが凄いんですよ。ピアノにヘンリー・バトラー、オルガンはアイヴァン・ネヴィル、ギターにレオ・ノセンテリ、そしてベースはジョージ・ポーター・ジュニア。これで格好いい音が出ないわけがありませんね。まずはシリル・ネヴィルの「ディス・イズ・マイ・カントリー」、このカントリーはやっぱりニューオーリンズのことなんでしょうか。続くアイヴァンが歌う「フォーチュネイト・サン」、C.C.R.の反戦/政府批判歌を、素晴らしいセカンドライン・フォンクに仕立てて21世紀に蘇らせました。原曲にない「大頭領」や「政府」を歌い込むのは、戦争や水害に対する痛烈な批判でしょう。アーマ・トーマスとマーシャ・ボールがアラン・トゥーサンの「ルック・アップ」をデュエット、ドクター・ジョンがファッツ・ドミノの「ウォーキン・トゥ・ニューオーリンズ」をフォンキーヴァージョンで仕上げ、バンドがミーターズの「ラヴィング・ユー・イズ・オン・マイ・マインド」をさらりとやっちゃう中で、トロイ・アンドリュース、サブデューデズ、モンク・ブードロー、ウィリー・ティーなどが次々とフロントを取っていきます。でも聴きものは「99 1/2 ウォント・ドゥ」をやっているマイティ・チャリオッツ・オフ・ヴファイア」で、ふつふつと沸き上がるようなゴスペルのエネルギーが、ジワッと効いてくるのがたまりませんね。ラストのジョン・ブッテの「ホワイ」、しっとりと、でも力強さを感じる歌です。これもやはり水害について歌っているんでしょうか。ことしのベスト5入りは確定のアルバム。何度でも聴いてしまいます。



Nicholas Payton ; Gumbo Nouveau ; VERVE 531 199-2 (2005. 6. 3)

1996年リリース。ニューオーリンズものに目がない僕としては、このタイトルを見たらすぐに手を出してしまいます。しかも曲目に「リトル・ライザ・ジェーン」や「聖者の行進」、「セント・ジェイムズ病院」なんてのがあるんですから。でも冒頭の「フーピン・ブルース」こそちょっとリズムがセカンドラインしてましたが、リズム、アレンジ、コードワークなど、これはモダンジャズの世界ですね。ニコラスのペットはなかなか芯のある太めの音で好きなんですが、やっぱりもっと猥雑で真っすぐなサウンドを求めて買った者としては、ちょっと違うかなって感じでした。



Nick Moss & The Flip Tops ; First Offence ; BLUE BELLA (2000. 8. 8)

きょうは2作品です。これも1998年の作品。ジミー・ロジャーズとの共演もある白人ギタリストで、曲の多くはシカゴ・ブルースの王道を行くような作品です。いなたいという形容詞はこの人のためにあるような感じです。ヴォーカルはかなり弱く、音程も危ういんですが、気持ちがこもっていて好感が持てました。フル・ホロウ特有のビヤついたウォームな音で奏でるブルースは、50年代に引き戻されるようなサウンドです。殆どオリジナル。曲によってはB.B.キングになりきったり、ソウル・ジャズもやっちゃったりして、ほほえましかったりもします。ジャケットのチープさは必見かも。


Nick Moss ; Count Your Blessings ; BLUE BELLA BBCD1003 (2003. 9. 6)

2003年、フリップ・トップス名義の新譜です。ゲストにサム・マイヤーズ、アンソン・ファンダーバーグ、ビッグ・アイズ・スミス、ボブ・ストロジャー、リンウッド・スリム、バレルハウス・チャックなど交友関係のあるメンバーを集め、ある意味集大成のようなアルバムになっています。サウンドは全体を通して、古き良きシカゴブルースを彷彿させるもので、こだわりのあるギターやアンサンブルを随所に聴くことができ、伝統に対するニック達の愛情を感じました。ブルースはもはや黒人だけのものじゃないんだといった主張を感じる作品です。



Nick Moss & The Flip Tops ; Sadie Mae ; BLUE BELLA BBCD 1004 (2008. 3.21)

シカゴで活動するニックの新作は、オリジナルを中心とした意欲作です。マジック・サムなどのギターをしっかり吸収しながら、少しばかりロックなテイストも加わったサウンドは独特で、特にいかにもハムバッカーのリアを鳴らしてるってギター・サウンドはダーティな味わいがあります。カツンと突き刺さるようなインパクトのあるフレーズが格好いいですね。楽曲も工夫されていて割合飽きません。ヴォーカルもかなり良くなりました。



Nico Wayne Toussaint ; Blues Entre Les Dents ; DIXIEFROG DFGCD 8670 (2010. 5.10)

2009年リリース。ニコはフランスの若手ハーモニカ吹きのひとりで、穏やかで丁寧な歌もけっこう魅力的。英語とフランス語を混ぜたように歌うのが面白いです。生音でハンド・ヴィブラートをかけ、柔らかい吸い口でニュアンスを出す吹き方は僕はかなり好きです。ブラインド・ウィリー・ジョンスンの「ノーバディ・フォルト・バット・マイン」を結構へヴィーにアレンジしてやってますが、他はどちらかというとシンガー・ソングライター的な印象が強いです。その他マディのレパートリーやO.V. ライトの曲を取り上げていますが、比較的しっとりと仕上げています。ヴォーカルが柔らかいのでこのアレンジは当たりだと思いました。根っこにソウルも感じますし、もう少しじっくり聴いてみたい人です。




Noble "Thin Man" Watts ; King Of The Boogie Sax ; WILD DOG DOG 9102 (2006.12. 4)

1993年リリース。のっけからタイトル曲のギター・ブギに乗ってシン・マン・ワッツのサックスが炸裂します。さすがに往年の迫力はなく、途中「ブロウ!ブロウ!」って叫びたくなっちゃう部分もありますけど、「センド・ミー・サムワン・トゥ・ラヴ」「ドロウン・イン・マイ・ティアーズ」などのバラードで聴かれる歌心溢れるサックスは、熟年の魅力でしょう。それより前者で鳴り響くフィドルは、ゲイトマウス・ブラウンではないですか!「モジョ・ウーマン」で歌ってるのもゲイトかな?この他オルガンにはラッキー・ピーターソンの名前も見えますし、「ジョージア・ミュール」ではジミー・スプルーイルのジャキジャキしたギターも聴かれます。こういう掘り出し物があるんで中古盤漁りは止められません。



Nooney & The Zydeco Floaters ; We Bringing The Heat ; NOONEY & THE BRINGING THE HEART no number (2002.12.18)

2001年リリース。いきなり街の雑踏を録音した「イントロ」で始まるんで、えらくファンキーだなと思ったんですが、出てくる音もファンキーそのもの。ミュートをがちがちにきかせたタイトなドラムを思いっ切り音数多く叩く中、複弦弾き多用のベース、しまったアコーディオンとコーラスを重視したヴォーカルが思いっ切りあおってきます。途中そのものズバリの「ファンキー・グッド・タイム」のリフが出てきたり、「ルイ・ルイ」の替え歌「ヌーニー・ヌーニー」とか、遊び心もいっぱい。テキサスサイドのザディコのようですが、クリスなどとはまた違ったアプローチで21世紀のザディコを追求しています。御機嫌!



Nooney & The Zydeco Floaters ; Bounce Back ; NOONEY & THE FLOATERS no number (2008. 8.10)

引き締まったリズムとドライなボタン・アコの音色は、ザディコという音楽が今の若者にとっても充分ダンス音楽として機能するのがよく分かります。ヌーニーの場合、ヒップホップなどに通じる新しい感覚をしっかり持ちながら、それを前面に押し出すのではなく、伝統的なトゥーステップの流れの中に上手く取り入れていくことにより、ザディコの革新をはかっているように思えますが、この作品はそうした取り組みがかなり成功している例と言えるのではないでしょうか。例えばブーズー・シェイヴィスの曲とクレジットされている「マイ・ベイビー・シーズ・ゴーン」では途中ラップが入っていますが、現代風の無機的なサウンドではなく、バックのリズムはあくまでもトゥー・ステップ。この辺りにクリス・アルドワンとは異なるアプローチを感じます。ラストのゆったりした「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥー・ミー」、決して上手い歌ではないけど、何か曲に対する愛情のようなものを感じました。




Nora Jean Bruso ; Sings The Blues ; RED HURRICANE 5601 (2006. 8.31)

2003年リリースです。選曲を見るとハウリン・ウルフが5曲、マジック・サムが2曲(この中の「ヒー・ビロングス・トゥ・ミー」が一番のお気に入りです)などシカゴ・ブルースの本流と、デニス・ラサールやリトル・ミルトン、ボビー・ブランドの「メンバーズ・オンリー」といったMALACOサウンドを軸にしたアルバム作りで、ゴスペルテイストにシャウトを絡めたシカゴの女性ヴォーカルの王道といってもいいようなヴォーカルがなかなかの迫力です。ただ僕の好みとしてはもうちょっと力みのない歌の方が好きなんですけどね。1曲ジミー・ドウキンズがヴォーカルで参加していますがなかなか落ち着いていていいです。サックスにエディ・ショウ、ベースは今は亡きウィリー・ケントと達者なメンバーが脇を固めているんで、聴いていて安心はできますが、あと一声何かインパクトが欲しいなぁ。



Nora Jean Bruso ; Going Back To Mississippi ; SEVERN CD-0030 (2005. 1.19)

2004年リリース。シカゴで1970年代中頃から歌っているノラ・ジーンが、全曲書き下ろした意欲作です。ハウリン・ウルフが好きだったというだけあって、のっけからドスの効いた喉を聴かせますが、ビッグ・ママ・ソーントンの線を少し細くしたような感じでしょうか。「アイヴ・ゴット・トゥー・メン」なんてまるで「ハウンドドッグ」です。一方ソウルナンバーの「ブロークン・ハート」などでは、かなりゴスペルを歌いこんできたのが分かります。体中で歌にぶつかっている感じで、かなり好感が持てます。バックを固めるギタリストもそれぞれ個性を出していていい感じなんですが、特にカール・ウェザーズビーがいいですね。クランチの効いた彼とすぐに分かる音色で、ちょっとアルバート・キングではなくコリンズに通じるようなたたみかけるフレーズを多用しています。むしろ自身のアルバムより勢いがあるくらい。カールファンにもオススメです。



Norridge Mayhams & The Blue Chips ; 1936 ; DOCUMENT DOCD-5488 (2008. 8.29)

これはユニークなユニットです。ブルー・チップスはクラリネットの入ったバックに乗ったジャイヴィーなコーラスを聴かせるんですが、テーマの中にはスピリチュアルと思われるものもある一方、ブルースの「アイム・ア・ラトルスネイク・ダディ」なんてのもあったり、小唄を朗々と歌う「アイス・イン・ザ・ホール」、オペラがかった歌から始まるジャジーな「オー・モナ」まで、多くの曲はイントロこそ1-6-2-5のピアノでワンパターンなんですが、中身は結構多彩です。終盤6曲はバーベキュー・ボーイズ名義で、ジョニー・ターンシルという女性がヴォーカルを取っていますが、こちらはクラシック・ブルース・マナー。でも「ラップ・ユア・トラブルズ・イン・ドリーム」のかなりオールドスタイルなものも入っていて、なんだか得した気分です。




North Mississippi Allstars ; Shake Hands With Shorty ; TC34047-1177-2 (2001.12. 4)

2000年リリース。1年くらい前にネットで話題になっていたものを思い出して聴いてみました。バンド名通り、バーンサイド、フレッド・マクドゥエルといった北ミシシッピのブルースマンの曲を取り上げていて、ファイフにはオサー・ターナーの名前も見えますが、サウンドはちょっと現代風のストレートなロックサウンドです。ジョン・スペ絡みのバーンサイドよりよっぽどまっすぐです。スピード感のあるドラムと、ややぎごちないけれど変に技巧に走らないスライドが魅力的。歌は線は細いですが、レイナード・スキナードをちょっと彷彿させるコーラスとか、瑞々しいです。ラストナンバーはまるで田舎の「エリザベス・リードの追憶」。しっかりサザンロックを受け継いでいました。温故知新とでも言ったらいいでしょうか。不思議な新鮮さを感じました。



North Mississippi Allstars ; HERNANDO ; SOUND OF THE SOUTH/BUFFALO LBCY-322 (2008.11.19)

2008年リリース。ジョン・クリアリーのライヴの時アンケート書いたら当たっちゃいました。このバンドはブルースを根っこに据えながらも、ガレージ・パンクっぽさも感じさせるのが面白いところ。しかもジョン・スペンサーほどブッ壊れてなくて、ストレートなロック魂を感じます。「ミジップ」なんて曲は軽快な中にどこかサザンロックのテイストを感じさせ、続く「ブロウ・アウト」のロケンロールな雰囲気もいい感じ。どっしりした曲もヘヴィ過ぎず馴染みます。ライヴ見てみたいバンドです。




Nublues ; Dreams Of A Blues Man ; 21ST. CENTURY BLUES 21CB-CD-2109 (2004.11.22)

2004年リリース。21世紀ブルースの「革新」を目指すクリス・トーマス・キングが自身のレーベルから新たな刺客を送りこんできました。リゾネイタをかましながらヒップホップしているサウンドはなかなか斬新で、クリス自身のものよりセンスの良さを感じます。音処理も今っぽくドライで、曲によってはなかなか綺麗な音作りもしています。確かに面白みもあるんですが、ブルースにスクラッチサウンドを絡めればいいってもんでもないななんて感じちゃう瞬間もあり、いまひとつ入り込めませんでした。



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