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Mabel Scott ; 1951-1955 ; CLASSICS 5107 (2004.12.17)

CLASSICS2枚目ですが、16曲しか入っていません。しかし中身は濃いです。写真を見るとかなりセクシーな姉御って感じですが、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴとツアーの先々で録音したんでしょうか?それぞれの街のバンドをバックに迫力満点の歌を聴かせます。女流シャウターといってもいいくらいの気っ風のいい歌で、脂が乗り切っている感じ。ところがオーストラリアツアー中のシドニーでの録音を最後に引退しちゃったみたいです。もったいないなぁ。でもラストナンバーが「ブギ・ウギ・サンタ・クロース」の再録ってのが季節柄に合ってます。



Madeleine Peyroux ; Careless Love ; ROUNDER 11661-3192-2 (2005. 1.31)

2004年リリース。「カフェ・ソサエティ」というサイトのブログで紹介されていたんで買ってみましたが、これ、いいです。狭い部屋でデッドに録音したアコースティック度の高いジャズなんですけど、力の抜けたメイデレインのちょっと霞んだヴォーカルが耳元で鳴ると、思わずゾクッと来る瞬間があります。大人のヴォーカルですね。ゆったり余裕があるんですけど、アンニュイすぎることはなく、自然な芳香が漂う感じ。ブルースナンバーはジャズが勝ちすぎることもなく、かといって決して泥臭くなりません。ギターも達者で自らの歌を絶妙にサポートします。関内あたりのジャズクラブで、眼前で見たらきっと参っちゃいます。



Macavine Hayes ; Drink House ; MUSIC MAKER MMCD53 (2005.11.26)

2005年リリース。いやはやタイトル通りです。アコースティックギターをかき鳴らしながら、呂律の回りきっていないふにゃふにゃの声で、いきなりチャック・ベリーの「グッバイ・ジョニー・B.グッド」ですから。裏ジャケの写真でも一杯やってますし。この他ブルースの常套句を並べたような曲に、「ジャスト・ア・リトル・ビット」のようなR&B風の曲、さらにはゴスペルまで、気の向くまま歌っているって感じです。演奏も歌も思いっ切りユルユルなんですけど、これがなかなか癖になりますね。ギターにテクニックがあるわけでもないし、バックの演奏もまさに適当なんですけど、気持ちいいんです。やっぱり酔っ払いにしか分からない快感かもしれません。こりゃ酔っぱらって聴いたらはまり込みそう!



Maceo & All The King's Men ; Doing Their Own Thing ; CHARLY SNAP 003 CD (2005. 4.29)

1970年録音。トランペットのクッシュ・グリフィン、ギターのジミー・ノーレン、そしてドラムハメルヴィン・パーカーと、この時代のJBのバックを務めていたメンバーによるファンクアルバムで、メイシオのジャズマナーのクールなサックスをメインにすえたサウンドは、さすが鍛え抜かれたものです。抑制の効いたアレンジで、「サウスウィック」ではミーターズを引用したり、抑えたバラードがあったりと、どっしりとした余裕を感じさせます。でも「マグ・プー」はまごう事なきJB'sサウンドですし、ラストの「サンキュー」は、まるでスライ&ファミリー・ストーンに「ファンクってこうやってやるのよ」と挑戦状を突きつけているようなゆったりとしたグルーヴィーなサウンド、これを聴いて思わず唸ってしまいました。



Maceo Parker ; Southern Exposure ; NOVUS 01241 63175-2 (2003.11. 1)

1993年リリース。まあメンバーを見ただけで思いっ切り楽しみになる1枚です。なにしろメイシオ、フレッド・ウェズリー、ピー・ウィー・エリスといったJB'sのブラスセクションというか、ホーニー・ホーンズに、レオ・ノセンテリ、ジョージ・ポーター・ジュニアのミーターズ、その上ドラムにハーマン・アーネストV世ですから悪いわけがないです。特にジョージとハーマンのリズム隊の隙間たっぷりのグルーヴ感は素晴らしいです。レオはあんまり目だってません。メイシオのジャズを感じさせるクールなプレイが随所に光っていますし。でもベストトラックはリバース・ブラス・バンドとやっている曲かな?特に「マーシー、マーシー、マーシー」はクールさと熱さが絶妙にミックスしていて、暑い温泉の中で打たせ湯を浴びたみたい。この盤のありかを教えてくれたbooneyさんに感謝!



Mad Words ; マッドワーズの大傑作! 〜フリッツに捧ぐ〜 ; P-VINE PCD-25042 (2006. 4. 3)

2006年リリース。横浜ジャグバンド祭にいけなかった腹いせ?で購入しました。なにしろ昔ちょっと付き合いのあったムーニーさんに、大好きな日倉士さん、ナニワのテッチャンが参加してるんですから、面白くないはずはないです。まず笑ったのが「コケイン・ハビット・ブルース」で、ムーニーさん、「妙なオレンジ、妙蓮寺」って住んでるところを入れるのでブッこけました。勢いのある「のぼれロープウェイ」なんか、ジャンル分けが虚しくなる楽しさ。ジャグバンドって言いながら、いろんな音楽を様々に消化した面々が集まって作るだけのことはあります。でもやっぱりタフな日倉士さんの歌が好きだなぁ。とっ散らかった感じが魅力でもあり、ちょっと座りを悪くしてる面も感じました。



Mae Moore & Lester Quitzeau ; Oh My! ; POETICAL LICENSE PL 003 (2007. 6.28)

2004年リリース。響きの大変美しいアコースティック・スライドを軸に、落ち着いたメー・ムーアのヴォーカルにレスター・キゾーのコーラスが寄り添います。スライドプレイとかちょっとワンパターンなところがあったりしますが、丁寧な音作りは好感が持てますね。ブルージーな「トラブルド・ウェイズ」ではレスターが結構泥臭く歌ってます。オリジナルで固めているんですが、ど真ん中にジミ・ヘンドリクスの「リトル・ウィング」がデンと居座っています。そしてこれがなかなかの佳作。敢えてカヴァーを入れたのも納得ですね。



Magic Sam ; Out Of Bad Luck ; P-VINE PCD-2123 Click Here!

Magic Sam ; Out Of Bad Luck - The COBRA, CHIEF & CRASH Sessions 1957-1966 ; P-VINE PCD-24062 Click Here!

Magic Sam ; ...With A Feeling! ; WESTSIDE WESA 890 Click Here!

Magic Sam ; Magic Sam Live ; P-VINE PCD-1810/11 Click Here!

Magic Sam ; Rockin' Wild In Chicago ; DELMARK/P-VINE PCD-24126 Click Here!

Magic Sam ; Magic Touch ; BLACK TOP CD BT-1085 Click Here!

Magic Sam ; The Late Great Magic Sam ; P-VINE PCD-2194 Click Here!

Magic Sam ; West Side Soul ; DELMARK/P-VINE PCD-1801 Click Here!

Magic Sam ; Black Magic ; DELMARK/P-VINE PCD-1956 Click Here!

Magic Sam ; Give Me Time ; DELMARK/P-VINE PCD-1836 Click Here!

Magic Sam ; The Magic Sam Legacy ; DELMARK/P-VINE PCD-5218 Click Here!

Magic Slim / Joe Carter ; That Ain't Right ; DELMARK DE-786 (2006. 7.22)

1977年、ラルフ・ベースが仕切ったセッションから。マジック・スリムはちょうどALLIGATORの「Living Chicago Blues」でのセッションを録音する前あたりになるんじゃないでしょうか。ちょっと録音が悪いですが、あの時代のゴリッと硬質な押しまくる感じがとらえられています。のちのわざとらしさを感じさせる演奏より、この時代の方が面白いですね。一方ジョー・カーターはスライドを駆使した、エルモアからの影響を感じさせる人で、なかなか魅力的な声をしています。サニーランド・スリムのきらびやかなピアノも聴きどころ。フレッド・ビロウがシカゴブルースドラマーの「お約束」のような「ルート66」を歌ってるのはご愛敬。「Living Chicago Blues」より生々しいアルバムです。



Magic Slim & The Teardrops ; Tin Pan Alley ; WOLF 120.809 CD (2006. 3. 6)

新譜のような面構えでショップに並んでましたが、録音は1992〜98年で、後半はライヴです。マジック・スリムの魅力は好き嫌いはともかく、シンプルなフレーズをごり押しとも言える真っすぐなノリでがつがつ行く感じだと思うんですが、このアルバムもまさにその世界です。バックはジョン・プライマーを含むタイトなバンドですが、スリルなどかけらもないんですが、なぜか身を任せると安心できる雰囲気があります。疲れてるとき大音量で一杯やりながら聴くと桃源郷かしらね。でも「テキサス・フラッド」、完全にSRVの世界に入っちゃってますけど。



Magic Slim And The Teardrops ; Snakebite ; BLIND PIG BPCD 5060 2000. 8.19

2000年リリースの新譜。愛すべきワンパターン、マジック・スリムの最高傑作かもしれません。もともとボトムのはっきりした「ガッガガッガ」という乗りをベースにした2ギターのカルテットで押し通していたわけで、僕が最初に聴いた20年以上前の「Living Chicago Blues」時代から殆ど変わっていません。オリジナル中心(人の曲もオリジナルと同じように仕上げるのが凄い)で、楽曲の魅力より、「押し」とか「乗り」とか「魂」の世界です。ギター・ソロの構成(曲によってはマジック・サムからの影響をはっきり感じます)もワンパターン。こういうのを「ワン・アンド・オンリー」というのでしょう。録音・乗りとも素晴らしい作品です。ファンにはたまらないでしょうね。


Magic Slim & The Teardrops ; Anything Can Happen ; BLIND PIG BPCD 5098 (2005.10.10)

2005年にリリースされた、カリフォルニアでのライヴ盤です。マジック・スリムらしい豪快な刻みと、ややざらついた独特の粘り気のあるギター、それにタフな声でブルースを歌いますが、スタジオ盤に比べ勢いで押していく感じがあり、なかなか気持ちの良いアルバムです。「マインド・ユア・オウン・ビジネス」なんてお得意の強烈な乗りにノックアウトされそうです。またエイトビート系の曲もぐいぐい来るんで、ライヴならではのテンションを感じます。大味なんですがそれが彼の魅力でもあるんで、やはりライヴの方がしっくり来るなと思いました。



Magic Slim & The Teardrops ; Midnight Blues ; BLIND PIG BPCD 5125 (2008.10. 1)

2008年リリースです。マジック・スリムを最初に聴いたのは多分ALLIGATORの「Living Chicago Blues」のシリーズで、その時はあのガッガガッガと来るリズムに結構インパクトを覚えました。でもその後WOLFなどからそれこそ粗製乱造のように出されたアルバムは、正直言って苦手で、本作もどうしようかと思ったくらい。ところがこれはなかなかいけるんです。スリムらしいちょっとクランチの効いた、ジャキーンとしたギターとタフな声が、かなり野太いサウンドになって録られています。「スパイダー・イン・マイ・シチュー」は確か先のALLIGATOR盤でもやってたと思いますが、それを彷彿させる内容。また「ロンリー・マン」がオーティス・ラッシュの「キープ・オン・ラヴィング・ミー・ベイビー」に化けちゃうあたりもご愛敬。「フル・ロード・ブギ」なんて典型的なウエスト・サイド・スタイルの曲ですが、生で聴きたいですね。とにかくこれはいいです。




Magic Slim & The Teardrops ; Raising The Bar ; BLIND PIG BPCD 5136 (2010. 8.12)

2010年リリース。いきなりファンキーなアレンジの「パートタイム・ラヴ」でスタート、ちょっと意外でしたが、2曲目からは元に戻ります。ボトムリフを中心としたサウンド作りは相変わらずですが、「ブレイキング・アップ・サムバディズ・ホーム」をこれだけいなたくやるのもこの人ならではかな。まあアイすべきワンパターンですね。「4:59 A.M.」のようなリズムの曲がもっとあってもいい気はしますけれど。でもあの粘り気の強いギターとややしゃがれた歌声を聴くとなぜかほっとしちゃうってのはあります。




Magnolia Sisters ; Apres Faire Le Boogie Woogie ; ROUNDER 82161-6108-2 (2004.11.26)

2004年リリース。まずは軽快な「ホンキー・トンク・ブギ」から始まって、この調子で行くのかと思ったら、以降は典型的なケイジャンサウンドでした。この女性4人組の魅力は、全員がソロを取れる歌の良さで、4人の個性的な声が調和したコーラスワークは素晴らしいものがあります。楽器の腕も確かで、安心して聴けました。ラストに「キープ・ア・ノッキン」を持ってきて、再び景気づけ。おかげで満足できました。



Mahalia Jackson ; The Essential Mahalia Jackson ; SONY MUSIC DIRECT MHCP 229~30 (2009.11.11)

1954〜67年のCOLUMBIAヘの録音から集めたベスト盤です。マヘリアにとっては名声を確立した後で、やや定型的な雰囲気がしますが、その歌の上手さ、迫力、そして信仰心を感じさせる力はさすがというしかありません。代表曲「ハウ・アイ・ガット・オーヴァー」のライヴテイクで始まり、「聖者の行進」「ダウン・バイ・ザ・リヴァーサイド」のような白人にも「受ける」曲、もありますが、このアルバムの価値を高めているのが、APOLLO録音で彼女の出世かつ大ヒットの「ムーヴ・オン・アップ・ア・リトル・ハイヤー」が2部にわたって収録されていることでしょう。1946年頃に録音されていますが、歌はギミックを感じさせないまっすぐなもので、大仰さなどは感じさせないんですが、でも感動的なんです。これを聴けただけで満足です。




Major Lance ; The Best Of Major Lance ; BGO BGOCD369 (2007. 7. 5)

1962〜72年の、文字通りランスの黄金時代のヒット曲をてんこ盛りしたコンピです。シカゴ・ソウル・シーンの中にあって、ハイトーンの済んだ声で割合ポップな歌を歌う感じは、どこかMOTOWNに似た印象もありますが、カーティス・メイフィールドの提供する曲が素晴らしく、代表曲「モンキー・タイム」や「ウム・ウム・ウム・ウム・ウム・ウム」(日本でカーナビーツあたりがカヴァーしてませんでしたっけ?)の他、「エイント・イット・ア・シェイム」「サムタイムズ・アイ・ワンダー」など、キャッチーだけど単にポップなだけじゃないものを感じます。バンドサウンドも格好良く、この時代のシカゴの熱さを感じますね。



Makoto Tanaka ; Good Rockin' PARADISE VALLEY IREZ-1001 (2004. 2. 9)

1995年リリース。ジャケットの雰囲気などから、ドロドロのスライド弾き語りかと思って買いましたが、サックスに藤井康一、ハープに八木のぶおが加わるなど、マンドリンなども交えた、プリミティヴな雰囲気とニューオーリンズやルイジアナの香りを交えた作品でした。全曲英語で、ドクター・ジョンみたいなしゃがれ声で歌いますが、ちょっと聴くととても日本のミュージシャンとは気付かない雰囲気です。ただ、僕がこの手の声が苦手ってのがあって、すんなり入っていけなかったのが残念。サウンド処理などはとても面白いんですけど。ボーナスの弾き語りブルースの方がすんなり行けました。



The Mamas & The Papas ; The Best Of The Mamas And The Papas ; MCA MCBD 19519 (2005.11.17)

1965年から1971年の再結成までを網羅したベスト盤です。最近いろんなベスト盤にはまってますが、これは自分にとっては意外でした。「夢のカリフォルニア」が1965年の曲だったって事にビックリです。もっと新しいものだとばかり思っていたんで。フォークソングから生まれたコーラスグループだと思うんですが、やはり西海岸の一味違う雰囲気を感じます。どうしてもフラワームーヴメントとかぶってしまうんです。「マンディ・マンディ」などを聴いていると特にそう思いますね。この曲などフィル・スペクターのウォール・サウンドに通じるものも感じてしまいます。さりげなく入ってる「ドゥ・ユー・ウォナ・ダンス」もいい感じのヴァージョンです。美しいコーラスの背後に感じさせる影が時代を反映しているように思いました。



Mamie Smith ; The Best Of Mamie Smith ; COLUMBIA/LEGACY CK 65712 (2004.10. 5)

1920〜31年録音。デビュー曲「クレイジー・ブルース」は、初のブルース録音として有名ですが、ディキシーランド・ジャズとボードヴィルを合せたような、艶めかしくクラリネットやコルネットが動き回るサウンドをバックに、艶を感じさせる、まさにクラシックブルースとでもいうような歌い回しで、曲を重ねていきます。「ご当地ソング」が多いのも、旅回りの合間に曲を書いていたのが想像されます。でもぐっと染み入るような深みはあまり感じませんでした。因みに「メイミー・スミス・ブルース」で自分を「メイミー、メイミー」と連呼するんで、名前の読みの謎は氷解しました。



Mance Lipscomb ; Texas Songster ; ARHOOLIE CD 306 (2007. 1.14)

1960年と64年の録音です。タイトルにソングスターとありますが、選曲は「ゴーイング・ダウン・スロー」「ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー」「ビッグ・ボス・マン」とブルースよりの曲が多く、オリジナルでも「シェイク・シェイク・ママ」などアップテンポのいかしたブルースです。一方ブラインド・レモンもやっていた「ジャック・オー・ダイアモンド」、スキップ・ジェイムズに通じる「バウト・ア・スプーンフル」など自作になっていますが、コモンストックと言っていいのでしょうか。しっかりしたピッキングに時折スライドを織り交ぜ、どちらかというと淡々と歌うリプスコムのスタイルは、このCDのオリジナルが出されたフォークブームにしっくりはまっていたんでしょう。スリリングではないですが、味わいがあります。



Mance Lipscomb ; Captain, Captain! ; ARHOOLIE 465 (2007. 1.29)

1960年と66年の録音で、LP時代未発表だった曲もかなり収録されています。達者なギターに、柔らかく暖かいヴォーカルという組み合わせは、ブルースの持つドロドロしたイメージとは異なって、何かほっとします。ギターソロのラグタイムでは、録音時70才を超えていたとは思えない華麗な指さばきを披露、またテキサスブルースの名曲「サンタ・フェ・ブルース」、重いテーマの「トム・ムーアズ・ファーム」、ピクニックなどでやって人々を踊らせたのではないかと思わせる「ヒール・アンド・トゥー・ポルカ」など、レパートリーも多彩です。このアルバムなどは癒し系としてのんびり聴くのがいいかもしれません。



Mannish Boys ; That Represent Man ; DELTA GROOVE DGPCD100 (2005. 2. 1)

2004年リリース。ギターの名手カーク・フレッチャーにフランク・ゴールドワッサーが組んで、エディ・テイラー・マナーのシカゴ系ブルースをやらせたら、多分現在最強のサウンドになるでしょう。冒頭2曲のジミー・リードマナーの曲を聴いてて実感しました。続くB.B.キングの「パーティン・タイム」では、自然体のファイニス・タスビーのヴォーカルがリアルで素晴らしいです。全体に泥臭さがあるけどベタっとせずに気持ち良く跳ねるリズム隊に、枯れ味をうまく活かしたギターが絡み、例えばALLIGATORあたりのぎらついたサウンドとは対極にある、木の床とツウィードアンプのぬくもりを感じるサウンドが気持ちいいです。シカゴもルイジアナもメンフィスもテキサスもゴチャッとミキサーに突っ込んで、ギュルギュル混ぜ合わせ、好きな音だけ抽出したって感じ、たまりませんね。デトロイト・ジュニアの「コール・マイ・ジョブ」には思わずにんまり。ゲストも多彩でミッキー・チャンピオンはなかなか姉御な歌ですし、ポール・オッシャーも見事なスライドを披露してます。ブルース好きには本当に美味しいところがいっぱいあるたまらない1枚です。



Mannish Boys ; Live & In Demand ; DELTA GROOVE DGPCD105 (2005.11.23)

2005年7月17日、ウエストコーストはワシントン州ウィンスロップという、カナダとの国境に程近いカスケード山中の避暑地で行われているリズム&ブルース・フェスティヴァルでのライヴです。マニッシュ・ボーイズというのはかっちりしたメンバーで構成されているわけではなさそうで、パリス・スリムことフランク・ゴールドワッサーを軸に、主に西海岸で活動するブルースマン達が集まっているようです。今回はギターにキッド・ラモスが参加、粘りのあるサウンドで御機嫌なインスト・ジャンプ・ナンバーを聴かせます。またヴォーカルにはディープでダウンホームなジョニー・ダイヤーが何とマディの「マニッシュ・ボーイ」をやっちゃいますし、さらにメイン・ヴォーカルとしてファイニス・タスビーが、ややハイトーンの、伸びのある声を聴かせます。「ミステリー・トレイン」なんてバンドサウンドの良さもあって、見事にはまってますね。またキッドの情のこもったギターに誘われるようにして歌う「アズ・ザ・イヤー・ゴー・パッシング・バイ」も素晴らしい出来。ラストの「ウォーキン&ウォーキン」は「ハード・ラック・ブルース」をエイトビートに改作したような曲で、気持ちのいいノリです。このメンバーで来日しないかなぁ。



The Mannish Boys ; Shake For Me ; DELTA GROOVE DGPCD137 (2010. 5.17)

2010年リリース。カーク・フレッチャーとフランク・ゴールドワッサーという今の西海岸でバリバリのギタリストをメインに、フィニアス・タスビー、アーサー・アダムズ、ジョニー・ダイアーといったヴォーカル、ハーモニカにはロッド・ピアッツァ、ミッチ・カシュマー、リンウッド・スリムとくれば外れようのない演奏になります。オリジナルの楽曲に対する並々ならぬ愛情があればこそのカヴァー集で、ブルース・ファンとしては思いっ切り楽しめる内容です。でも、ある意味これは閉塞しているんですよね。過去の栄光をなぞることでノスタルジーに浸るのもいいけど、それでは光は見えないようにも思うんです。難しいところですが。




Marc Adams ; Adams Rides Again ; MARC ADAMS no number (2004. 3.31)

ブライアン・リー、マーヴァ・ライトなどのアルバムでキーボードを担当しているマークの2000年リリースのアルバムです。キーボード、ベース・ドラムのトリオですからかなり低重心のサウンドが期待でき、実際タイトル曲はかなりドロッとしたファンクなんですが、全体としてはソウル・ジャズ色の強いアルバムという感じです。歌も歌ってますが、華はないものの結構上手いので悪くないですね。ドラムが結構ファットな感じで気持ちがいいです。でもそれほどニューオーリンズ色は強くないかな。



Marc Adams Can't Give It Away ; Grooves For Sale ; MARC ADAMS no number (2007. 6.11)

2007年リリース。2〜4曲目のAORというかフュージョンのようなサウンドでしまったと思いましたが、聴き進むにつれどんどんファンキーになり、「ブーガルー」が気持ちいいソウルジャズ風、「イフ・アイ・ワー・ユー」でちょいと洒落たブルースと言った具合に、どんどん僕の好みになってきます。マークのスモーキーな声はブルースに合うなぁ。「キャンと・ギヴ・イット・アウェイ」ではショーン・クリアリーのはっちゃけたヴォーカルを聴くことができますが、この人ってジョンの兄弟か何かかしら。ともかく後ろに行くほど面白いアルバムでした。



Marc Broussard ; S.O.S.: Save Our Soul ; VANGUARD 79826-2 (2007. 9.19)

2OO7年リリース。ブルッサーという名前から、ケイジャン系の音楽かと思って聴いたらびっくり!タフなソウルアルバムでした。それもブルー・アイド・ソウルと呼ぶのが失礼なくらいソウルフル。マーヴィン・ゲイ、アル・グリーン、ジェリー・バトラー、フレデリック・ナイト、ジョニー・ブリストルからルーサー・イングラムまで、渋い選曲のカヴァーが並びますが、決して楽曲負けしない歌唱力で歌い上げます。粘っこい「イエス・ウィー・キャン・キャン」からラストの暖かいオリジナル「カム・イン・フロム・ザ・コールド」と続くラスト2曲が特に印象的でした。バックの音はストリング入りですが、決して派手になりすぎず、歌をしっかり盛り立てています。ところでところどころで聞こえるスティーヴィー・ワンダーを地味にしたようなハーモニカ、誰が吹いてるんでしょうか?



Marc Broussard ; Keep Coming Back ; ATLANTIC 512257-2 (2009. 1. 6)

2008年リリース。前作でソウルフルな歌をたっぷり聴かせてくれたブルッサーが、何とATLANTICから新譜を出しました。この人は本当に歌が上手く、じっくり練り込まれたアレンジに乗って快調に飛ばします。特にハイ・サウンドを意識したような曲は軽快なノリが心地良いですし、スティーヴィー・ワンダーっぽい曲もあったりします。良くできたアルバムですね。でも、前作のようなインパクトが逆になくなっちゃいました。ポップになりすぎちゃった気もするんですよね。この辺のバランスって本当に難しいです。




Marc Stone ; EP-3 The Homebrew Sessions ; TULIP/THREADHEAD no number (2009. 5. 8)

2009年リリースのミニアルバムです。表のラップスティールや裏ジャケのメタルボディを見たらブルース系のアルバムかなと思ったら、けっこう泥臭さのあるロックでした。メンバーにはカーク・ジョゼフやジョー・クラウンの名前も。ラストナンバーがザ・バンドの「ザ・シェイプ・アイム・イン」で、これが仲々いい感じでした。フルアルバムを聴いてみたいですね。




Marc Stone Trickeration & Rascality ; THREADHEAD no number (2010. 6.10)

2010年リリース。マークは白人のヴォーカリストでギタリストで、張りのある伸びやかな声で歌います。なかなかソウルフルでパワーも感じますが、ちょっと歌い回しに癖があったりもします。このアルバムではバックにジョー・クラウン、ボーナラマのホーン、カーク・ジョゼフ等が加わり、コーラスにはビッグ・アル・カーソンも参加するなど、豪華な面々をそろえています。ザ・バンドの「シェイプ・アイム・イン」ではテレンス・シミエンが素晴らしい歌声を聞かせます。また「ラヴストラック」のエレキ、「ピムピン・グリーン」ではリゾネイタのスライドやラップ・スティールでいかしたソロを奏でています。




Marce Lacouture ; La Joie Cadienne ; CUT UP no number (2002.10.30)

2000年リリース。マーシー(でいいのかな?)は名前やアルバムタイトルで分かるようにケイジャンの人で、古いケイジャン・ソングやザディコを学び、大切にしています。このアルバムはサニー・ランドレスの全面的サポートを得て作られていますが、彼女の透明感のある、暖かく優しい歌が見事に生かされた素晴らしいアルバムになっています。フィドルやアコーディオンを中心にすえた典型的なケイジャンだけでなく、心に染み入るようなバラードも素敵ですし、タイトル曲などどこか沖縄のエイサーに通じるものを感じました。また"Inez"、"Lula"といった往年のルイジアナの先輩歌手を歌い上げたオリジナルには、深い愛情が溢れ、感動的です。サニーはアコースティック、エレキ両方のスライド、さらにはコーラスも付けていますが、抑制の効いた絶妙なバッキングで、他のゲストミュージシャンとともにマーシーの歌を最大限生かすサウンド作りをしています。これを聴くとちょっとステレオタイプになりがちなケイジャンのイメージが変わりました。



Marcia Ball, Angela Strehli, Lou Ann Barton ; Dreams Come True ; ANTONE'S/P-VINE PCD-1809 (2001. 5. 9)

1991年リリースの、ドクター・ジョンがプロデュースした女性ヴォーカル3人をメインに立てたアルバムです。もらい物ですが、気持ちよかった!3人ともメインを張れる実力者で、ジャケット写真を見るとちょっとお歳を召したテキサスの白人女性達ですが、それぞれの個性ある歌だけでなく、見事なコーラスワークが冴えています。ブルージーな曲もいいんですが、ニューオーリンズ風味を感じる跳ねたリズムの曲とか、ゴスペルっぽいコーラスワークの曲とか、ヴァラエティに富んでいて、あっと言う間の12曲でした。いい意味でポップさがあり、ドライヴのお供にもってこい。バックの演奏も確かです。



Marcia Ball ; Presumed Innocent ; ALLIGATOR ALCD 4879 (2001. 9. 9)

2001年リリース。アメリカ南西部を中心に活躍するマーシャは、あまりねちっこくないスムースなヴォーカルを聴かせます。録音はテキサスですが、サウンドはニューオーリンズからルイジアナの雰囲気が色濃く、特にサニー・ランドレスのギターとパット・ブリューのアコーディオンの加わった曲ではケイジャン風味を醸し出していますが、同時にかなり洗練されたサウンドにもなっていて、その辺に魅力を感じました。トランペットにはウェイン・ジャクソンの名前も見えます。バラードあり、ロッキン・ナンバーありでけっこう楽しめました。



Marcia Ball ; Peace, Love & BBQ ; ALLIGATOR ALCD 4922 (2008. 6.14)

2008年リリース。いやいやこれは楽しいアルバムです。ボビー・チャールズの「パーティ・タウン」に「ピース、ラヴ&BBQ」「ウォーターメロン・タイム」とウキウキしそうなタイトルが並び、ノリのいい曲が来ます。でもだんだんシリアスになるのよね。「ミラクル・イン・ノックスヴィル」を聴いていて思い出したのは「ビリー・ジョーの歌」。ゆったりとした「ホエア・ドゥ・ユー・ゴー」は、カトリーナについて歌ったのだと思うんですがどうでしょうか。ドクター・ジョンとのデュエット「アイル・ネヴァー・ビ・フリー」は恋に捕らわれた女の歌かな。これに続く曲がケイジャン風味の「マリード・ライフ」っていうのが何とも。オリジナルで固めたアルバムなんですが、ラストにビル・ウィザーズの「アイ・ウィッシュ・ユー・ウェル」を持ってきたのはどんな思いなんでしょうか。とにかく聴き応えのある好盤だと思います。



Marcus Belgrave ; You Don't Know Me - Marcus Belgrave Presents A Tribute To New Orleans... ; MARCUS BELGRAVE no number (2007. 8. 1)

2006年リリース。マーカス・ベルグレイヴとチャーリー・ガブリエル、ジョアン・ボウの3人が主になって、ジャジーな雰囲気でニューオーリンズの古い女性たちのジャズ・ソングとレイ・チャールズ・ナンバーを取り混ぜたレビュー形式のアルバムです。ジェリー・ロール・モートンの曲やデューク・エリントンの「ザ・ムーチ」と、レイ・チャールズの「アンチェイン・マイ・ハート」や「ドロウン・イン・マイ・オウン・ティアー」が並ぶといった選曲は、なかなか飽きさせません。落ち着いた演奏に乗って、男女のヴォーカルがじっくり歌い込んでおり、聴き応えのある作品になっています。



Mardi Grass. BB ; Supersmell ; UNIVERSAL JAZZ 159 014-2 (2006.11.22)

2000年リリース。ジャムバンド系のブラスバンドと言えばいいんでしょうか。いろいろミックスを載せながらファンクやラテンの要素も盛り込み、凝った作りの録音になってます。もっとシンプルに吹きまくってくれてもいいかなとも思いますが、「ドリームタイム・イン・メンフィス」のグルーヴ感などはなかなか気持ちいいです。バタバタした「子象の行進」も、何か子象が泡食ってるみたいで面白いな。ラストの「レット・イット・シャイン」みたいなブラスがガンガン出てくる演奏が僕の好みでした。しかしハイブリッドでゲーム入りって音楽CDも面白いですね。ゲームはやってませんが。



Mardi Gras.BB ; Heat ; UNIVERSAL JAZZ 06024 9809582 (2005. 4.23)

2003年リリース。ヒップホップ風スクラッチとちょっとオールドファッションなアナウンスに呼ばれて登場したサウンドは、とっても今風のファンクリズムに乗ったボーカルと、ニューオーリンズものにしてはタイトさを感じるブラスでした。完全にヒップホップ世代の音楽で、ダンスホールで大音響で鳴り響くと格好いいんでしょうね。ドラムの音もサンプリングのように聞こえますし。でもやっぱりバンド名から期待した音とは随分違いました。これはこれで気持ちいいんですけど、ちょっと無機質な感じが強いのが僕の中心線からずれています。ほかの人の感想も聴いてみたいところですね。



Margaret Lewis ; Lonsesome Bluebird ; ACE CDCHD 572 (2009. 6.12)

1959〜61年にRAMレコードに残された、テキサスの白人女性シンガーの録音集で、ギターにはグレース・テネシーという女性がフューチュアされています。写真を見ると端整な顔立ちの清潔感ある女性ですが、意外とドスの効いた声を出したりしています。曲も「ロール・オーヴァー・ベートーヴェン」なんて曲から、ルイジアナ風味の3連など、スワンプ・ポップに通じる肌合いで、かなりR&Bに傾倒していた模様。いわゆる明るさたっぷりのカントリーとは一味も二味も違います。どこか黒っぽいフィーリングもあり、テキサスという土地はそういうもののミクスチュアが割合抵抗なく行われていたのかななんて想像してしまいます。




Maria Muldaur ; Louisiana Love Call ; SHOUT DK 34343 (2005. 6.15)

2005年リリース。いきなりの「セカンド・ライン」で気持ちいいノリにマリアのヴォーカルが気持ち良く乗ってきて、ウキウキさせられました。ジャジーな「ベスト・オヴ・ミー」ドクター・ジョンが渋い声で絡んだり、ザッカリー・リシャードのほのぼのとしたアコーディオンをバックに、タイトル曲で上のハモリを入れてるのがアーロンだったりと、豪華なゲストのサポートも素晴らしく、それこそ一気に聴き通せます。J.J.ケイルの「ケイジャン・ムーン」ではチャールズ・ネヴィルが哀愁あるサックスを響かせてますし。その他カズ・カザノフ、ハーマン・アーネスト3世、ディヴィッド・トカノフスキーと手練のバック陣ですから気持ち悪いわけがありません。こういうしっかりした作りのアルバムは本当に心地よいですね。



Mark Hummel ; Harmonica Party ; MOUNTAIN TOP IV (2007. 1. 9)

1984〜1993年に残されたハメルの演奏集です。確かなテクニックに裏打ちされたハメルのアンプリファイド・ハープの音色は、ブルージーだけどどこか西海岸らしい明るさがあります。これはバックを担当するパット・チェイズやラスティ・ジンのギターワークに寄るところもあるかもしれません。マディ、ジミー・ロジャーズ、リトル・ウォルターと言ったシカゴブルースの名手の曲から、にくい選曲としてはフランク・フロストの「バックスクラッチャー」、さらにフルソンの「ハング・ダウン・ヘッド」は歌もなかなかいけます。未発表もあり、チャールズ・ブラウンの「ブラック・ナイト」なんて曲も、歌詞を変えながら取り上げてたりします。朝鮮(Korea)の代わりに兄弟はどこ行ったかちょっと聴き取れませんでしたが。オリジナルのインストも格好いいし、ピアノには名手ジム・ピューの名前も見えます。ハメルの昔のプレイを俯瞰するには格好の一枚でしょう。



Mark Lemhouse ; Big Lonesome Radio ; YELLOW DOG YDR 1038 (2003. 3. 8)

2002年リリース。メンフィス録音です。ナショナル・リゾネイタにアップライトベースのサウンドが気持ちいいタンパ・レッド・ナンバーからスタート。この人、ギターもですが歌がかなりいけます。トラディッショナルなブルースをリゾネイタでやる曲は割合落ち着いた演奏で、一方エレキでやるととたんにジョン・リーの初期とかFAT POSSUMを思わせるラフでタフな感じになります。チャールズ・ブラウンの「ドリフティン」もまるでジョン・リーがやったみたいなギターですが、物まねじゃないです。コントロールされているので聴きづらさはありません。ジョニー・シャインズからチャーリー・パットンの「ポニー・ブルース」と結構ディープな選曲の中に、カントリー・タッチのオリジナルが入ったりワルツが来たりと変化球も十分。トム・ウェイツの曲がハードなブルースになっても違和感がないし、自分のスタイルをしっかり持っているなって思いました。かなり面白かったです。



Mark Pentone & Smoky Greenwell ; We Earned The Right To Sing The Blues ; SMOKY GREENWELL no number (2010.12.17)

2010年リリース。グリーンウェルはインストものが多いハーピストですが、今回はマーク・ペントーネと組んで歌ものブルースに取り組んでいます。「ベトウィーン・ザ・イラク・アンド・ア・ハード・プレイス」なんて社会性のあるオリジナルの他、「セント・ジェイムズ病院」「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」「カモン・イン・マイ・キッチン」などブルースの有名どころも取り上げています。でも本質的にはフォーク系でしょうか。ペントーネの歌は渋みがあり、なかなか味です。グリーンウェルはいつもよりおとなしいかな。




Martin Simpson ; Prodigal Son ; TOPIC 7 4466 2 (2007.11. 9)

2007年リリース。ジャケットの内側にカッタウェイのリゾネイタを見たとき、スライドを期待したんですが、どちらかというと丁寧なフィンガー・ピッキングによるフォークソングといった感じです。バンジョーやラップ・スライドも弾いていますが、ぎゅんぎゅん言う感じではなく隠し味のように利かせています。こういうのをまさにルーツ・ミュージックと呼ぶべきなんでしょう。アコーディオンなども交えながらじっくりと作り込んだ演奏は、派手さはありませんが美しさに溢れています。大人の音楽ですね。ヴォーカルにジャクソン・ブラウンも参加。「ダンカン&ブレイディ」あたりはチェット・アトキンスの香りもする、とにかくギターの音色の美しい作品です。



Marva Wright ; Do Right Woman ; SHOUT! 31 (2007. 1. 8)

1993年のマーヴァのアルバムが再発されました。すでにこの時代から恰幅がいいんですが、声は若くはじける感じで、特にアップテンポの曲が跳ね回ってます。「ハウンド・ドッグ」のセカンドラインの効いたアレンジも格好いいし。曲によってはサニー・ランドレスのスライドが影に日向に活躍していて、それも聴き所のひとつ。一方スローではゴスペルテイストたっぷりに、タイトル曲など丁寧に歌い上げています。で、このビート、すごく馴染むなと思ってクレジットを見れば、ドラムはハーマン・アーネスト!やっぱりこの人のドラムは好きですね。しっかりとした作りの好盤です。



Marva Wright ; Bluesinia Mama ; AIM A8 CD (2001.12.14)

1994年ルイジアナ録音。いただきものです。もっとルイジアナ〜ニューオーリンズしているかと思いましたが、思ったよりブルーズン・ソウルなアルバムでした。マーヴァはまだ荒削りなものを感じますが、ゴスペルルーツを感じさせるスロウナンバーにぐっと来るものを感じました。「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」などたっぷりの語りとゆったりとした歌がスケールの大きさを感じさせます。バンドはけっこうタイトなんですが、特にギターがいまひとつ「味」が足りない気がします。またバンドの趣向なんでしょうが、ラストの「ブギ」(ジュニア・パーカーの「フィール・ソー・グッド」)あたりをマーヴァが歌う必然性は全然感じませんでした。



Marva Wright ; Marvalous ; MARDI GRAS MG 1026 (2002. 2. 9)

1995年のアルバム。マーヴァはかなりMALACOを意識したようです。ボビー・ブランド、Z.Z.ヒルのヒット曲を取り上げています。一方ジュニア・パーカーの「ドライヴィング・ホウィール」、ウィリー・ディクソンの名作「ワン・ダン・ドゥードゥル」などR&Bカラーの強い選曲が目立ちます。これをゴスペルで鍛えた強靭な喉でメリスマたっぷりに歌うわけですが、ちょっと力みすぎに感じました。特にサム・クックの「ユー・センド・ミー」はねぇ。あんな感じで迫られたら、僕、引いちゃいます。もう少しニューオーリンズらしい軽妙さが欲しいと思いました。



Marva Wright ; Heartbreakin' Woman ; MARDI GRAS MG 1038 (2002. 3. 5)

1998年リリース。基本的には前作?の「Marvalous」と同じく、ソウルフルなブルース路線といった感じですが、歌が変わってきたように思います。力みが取れて、表現力がましたように思えるんです。ブランドの曲もリラックスして歌っているように感じますし、アルバート・キングの「ボーン・アンダー・ア・バッド・サイン」もバックはオリジナルにかなり忠実、以前ならもっとシャウトするんじゃないかなと思って聴いたんですが、それほどでもなく、歌い回しをかなり丁寧にしている印象を受けました。僕はこっちの方がいいな。



Marva Wright ; Marva ; AIM 5010 CD Click Here!

Marva Wright ; After The Levees Broke ; AIM 5015 CD (2007. 6.15)

2007年リリース。カトリーナ惨禍からそろそろ2年を迎えようという時期に、マーヴァのこのアルバムが届きました。冒頭の「ザ・レヴィー・イズ・ブレイキング・ダウン」での生々しい水音とヘリコプターの効果音からスタートし、「カトリーナ・ブルース」ヘつなぎます。途中「ユー・アー・マイ・サンシャイン」「アイ・ハッド・ハヴ・マイ・ファン」(=「ゴーイング・ダウン・スロウ」といったスタンダードを挟みながら、街に対する思いや仲間の苦難を歌っていきます。ゴスペルに根差すその歌は、いつになく抑制が効いていて、それがかえって彼女の悲しみを表しているようにも思いました。そしてラストの「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」で、街の未来に対する希望を歌い上げるマーヴァには、感動すら覚えました。好盤です。



Marvin Gaye ; Let's Get It On ; MOTOWN/POLYDOR POCT-1956 (2000. 9.25)

1973年リリース。昔行きつけの飲み屋でよくかかっていました。ムーディと言うか、甘茶ソウルと言うか、歴史的なアルバムだと思います。前作の「What's Going On」が内容的にはストイックだっただけに、このストレートな表現とのギャップは何なのって、多くの解説者が書いてますが、気持ちいい音ですよね。こういうのをバックに口説くのかなぁ。だから行きつけでよくかかっていたわけですね。僕は止まり木で独り飲んでましたが。でも頭の曲から最後の別れまで、ストーリーがはっきりしてます。別れる直前にエッチしちゃうのが凄いですけど。



Mary Flower ; Bywater Dance ; YELLOW DOG YDR 1242 (2007.12.10)

2005年リリース。これはニューオーリンズのミュージシャンとの共演盤ですが、あんまり彼の地の匂いがしないのは、やはりメアリの個性がオレゴンあたりにあるからでしょうか。「クロウ・ジェーン」「ノーバディ・フォルト・バット・マイン」なんて有名な歌も歌っているんですが、前者は割合いいんですけれど、後者はいわゆる艶が足りない感じなんです。ちょっとアルトな声で、優等生な歌い方をするからだと思います。それにゲストにヘンリー・バトラー、ジョン・クリアリーが入っていてもあんまりニューオーリンズっぽく感じられないのはやっぱり歌のせいかな。「ニューオーリンズ・ホップ・スコップ・ブルース」なんてカーク・ジョゼフ、クレイグ・クレイン、マット・ペリネなんて豪華なホーンまで入っているのに、なんだか宝の持ち腐れ。やっぱりインストの方がいいなぁ。



Mary Flower ; Instrumental Breakdown ; YELLOW DOG 1362 (2007.12. 8)

リリースは2006年ですが、それ以前の彼女のアルバムからインスト曲だけを集めたコンピです。この人は初めて聴きましたが、とにかくギターが上手いです。フィンガー・ピッキングはもちろん、スライドも巧みにこなす上、バンジョーも見事に弾きこなしています。コードワークも多彩で、型にはまらないプレイは、ブルースやブルーグラスなどのテクニックを吸収した上、自分のものにしていますね。「グッド・ニューズ・ワルツ」なんて名演だと思います。また共演者も多彩で、ドアベルのちーんという音、やっぱりウォッシュボード・チャズでした。



Mary Gauthier ; Between Daylight And Dark ; LOST HIGHWAY B8965-02 (2007.11.29)

2007年リリース。アコースティックなサウンドに溢れたサウンドをバックに、ちょっと投げやりに、アンニュイにメアリーは歌います。歌詞は旅をテーマにしたものが多く、その向こうに郷愁とか孤独とかを感じさせますが、歌のスタイルと良くマッチしています。歌詞にI-10が登場するなど、録音はカリフォルニアですが、ルーツはルイジアナのようですね。丁寧に練り込まれたサウンドは、インパクトは余りないんですが、聴き込んでいくうちに染みてきます。ときに「ハーヴェスト」のニール・ヤングを思わせる瞬間もあったりしました。



Mary Hopkin ; Post Card ; APPLE/TOSHIBA-EMI TOCP-67566 (2006. 2.10)

1969年のデビューアルバムに大ヒット「悲しき天使」などを加えた作品です。ウェールズ出身の少女をポール・マッカートニーが見いだし、大ヒットを生むといったシンデレラストーリーは良く知られていると思いますが、やはり「悲しき天使」は名曲です。ポールのクラシックを意識したアレンジが、メアリーの瑞々しい声を見事に引き立てています。アルバムの方はオリジナルのフォークソングにスタンダードを取り混ぜたもので、「ヤング・ラヴ」なんてのをやってるのが意外でした。やはり小編成の管楽器がついた室内音楽的なバックのものが、自然な雰囲気でいいですね。フォーク調のものはちょっと線が細い感じ。でも最初のヒットがあまりに大きすぎで、他の曲はすべてかすんで聞こえてしまいました。



Mary Jane Hooper ; Psychedelphia ; FUNKY DELICACIES DEL CD 0008 (2006.11.18)

1966〜70年の録音を集めたものです。メアリ・ジョー・フーパーことセナ・フレッチャーは、最初エディ・ボーと仕事をしていたようで、例によってあのニューオーリンズB級ファンクの面白さがいっぱい詰まっています。歌の線は細いんですが、バックの乗りが最高ですね。「ハウ・ロング」などのバラードもそこそこは歌えてるんですが、ちと迫力に欠けます。面白いのはタイトル曲ともなった「サイケデルフィア」で、この辺りはカリフォルニア録音かもしれませんが、妙にフィフス・ディメンションに似てるんですよ。あとは「ティーチ・ミー」は彼女のチャーミングな味がよく出たバラードで聴きものです。



Mary Taylor ; Victim Of Love ; JSP JSPCD2138 (2007. 7.11)

2000年リリース。プロデュースとリズム・ギターにジョニー・ロウルズの名前が見えますから、この人もおそらく彼と一緒に行動する人なんじゃないでしょうか。声はしっかりしているんですが、どちらかというと歌い方は軽めで、あんまりぐっと来るタイプじゃないですね。むしろギターに耳を奪われることが多かったです。まあ取り立てて素晴らしい歌い手というほどじゃないですけれど、アルバムとしては丁寧に作られているのでまあ楽しめました。



Masters Of Groove ; Meet Dr. No ; JAZZATERIA JZZ 20306-2 (2001. 5.14)

ことしリリース。レーベン・ウィルソン、バーナード・パーディなどが「007 ドクター・ノー」の音楽に挑戦したアルバムのようです。すっきりしたソウル・ジャズで、安定したオルガンと、クールなギターが軸になっています。この手のサウンドは元々好きだったので気に入りました。ただ、あまりこういった音楽をたくさん聴いているわけではないので、この盤がどういった位置づけになるのかは不明です。強者が軽く一発決めた感じではないでしょうか。余裕のあるサウンドです。



Matt Guitar Murphy ; Lucky Charm ; ROESH RR0038(2000.12.12)

2000年リリース。「ブルース・ギター・マエストロ」という称号がぴったりのマットの新譜です。とにかくクレジットを見るとギターにはマットの名前しかないんですが、「七色仮面」「怪人二十面相」とでも言いましょうか、まさに七変化!エレキからナイロンまで、コットン時代の再現とも言うべきブギからダウンホーム・スタイル、ファンク、ジャズ、果ては70年代のスティーヴィー・ワンダーの様な曲まで。ヴォーカルを別に立てた曲が多く(インストも多いです)、ブルース・ブラザーズ・バンドのホーンセクションを加えたり、ヴァラエティに富んでいて、面白いんですが、肝心のマットのイメージが焦点を結ばないんです。1音聴けば分かるB.B.キングと好対照と言えばいいでしょうか。フロイド・マーフィー・ジュニアのドラムはけっこう聴きものでした。これからが楽しみ。



Matt Perrine ; Sunflower City ; LOUISIANA MUSIC FACTORY no number (2007.11.21)

2007年リリース。スーザホーン奏者のマット・ペリーネはボナラマやティン・メン等で活動していますが、その人脈をフルに活かして豪華なアルバムを作りました。たっぷりなメンバーが参加した「マスクラット・ランブル」はラテン風味が素敵な曲。一方バンジョーとウォッシュボード・チャズと3人の「モワン・アイメ・ドゥーボン・モワン」はスーザホーンがメロディ楽器に。優しいホーンの音が心地良いです。ヴァイオリンなどの響きが入りファンクネスより穏やかな印象の音楽となっていて、午後のまどろみのBGMに使えるかも。またラテン・テイストが強く、なんかホッとするんです。なんて油断するとタイトル曲で思いっ切りチャントが入ってきますから要注意。ニューオーリンズ音楽を本当に広範に集めて再構築したような音は、聴くにつれはまり込んでいきます。



Matt Walker & Ashley Davies ; Catch That Plane ; STOVEPIPE/P-VINE PCD-93233 (2009. 4.20)

1997年から2005年にかけて出されたアルバムからのベストのようです。オーストラリアのギタリストとドラマーという異色のデュオですが、まずアシュリーのドラムが格好いい!変に控えめになることなく、ビートをきっちり刻み出しています。スネアのゴーストの切れとか、凄くグルーヴィーです。その上に乗ったマットのギターと歌、それにハーモニカ、どれを取ってもリズム感が抜群で、その上まっすぐに迫ってくるものがあります。アコースティック・ギターでのハードなプレイ、エレキを使ったサウンド、いずれも存在感があります。そして歌はみずみずしさがあります。サニー・ランドレスの歌を思い起こしました。




Matthew Robinson ; Bad Habits ; FEDRA FCD 5008 (2001.12.16)

1998年録音。この人のギターは適度な粘っこさと絶妙の「隙間」があり、ローウェル・フルソンに凄く通じるものを感じます。典型的なテキサス・スタイルですが、ゲイトマウスやアルバート・コリンズ(彼のインスト「ドント・ルーズ・ユア・クール」をやってます)、ジョニー・ギター・ワトソンのような瞬発力より、ずっとゆったりしたフレージングなんです。ちょっと突っかかるようなところがたまらない「臭み」でいいです。ヴォーカルも一聴してマシューって分かる個性でこれは希有なものだと思います。ただし好みは分かれますね。ちょっとこの歌は僕は苦手です。でもとにかく注目株。



Matthew Robinson And The Texas Blues Band ; Matthew Robinson And The Texas Blues Band ; DIALTONE DT0006 (2001.11.12)

録音年とかは不明ですが、おそらくバリバリの新譜です。このレーベルは本当に目が離せません。よく作り込まれたサウンドのギターで、テキサス・アグレッシヴの伝統をしっかり引き継ぎつつも、ロックサウンドも吸収したフレージングは快感です。曲も「トゥー・メニー・ドライヴァーズ」から弾き語り風「ドント・スタート・ミー・トゥ・トーキン」などカヴァー中心ですが、アレンジが結構凝っていて面白いです。自作の「パーティ・オール・ナイト」がミルトンの「ブルーズ・イズ・オールライト」のパクリってのが微笑ましいし。ヴォーカルはちょっと癖のある軽めのダミ声で、かなり歌えるんですが、やや不自然な感じもありました。もっと素直に歌ったらいいのになぁ。むしろ2曲入ってるグレンダ・スー・ハージス(1曲は自作)という女性の方がすっきり歌っていて気に入りました。



The Matthew Skoller Band ; Bone To Pick With You ; TOUNGE 'N GROOVE no number (2001. 4.23)

1996年リリース。ちょうど一月前に聴いたシカゴのハーピストの前作で、新作に比べ、ブルースバンドのカラーがずっと強いです。ジェームズ・コットンやウォルター・ホートンの曲を取り上げ、フレージングとかは元歌にかなり忠実な解釈で演奏していますが、サウンドにマシューと分かる個性があります。歌は決して上手いとは言えませんが、一所懸命なものを感じました。カルロス・ジョンソンのギターが聴きもので、特に「ディンジャラス・ゲーム」でのプレイはすばらしく、この人のリーダー作を聴きたくなりました。



The Matthew Skoller Band ; Shoulder To The Wind ; TOUNGE 'N GROOVE no number (2001. 3.23)

1999年リリース。シカゴのハーピストのアルバムですが、いわゆるブルースアルバムというよりは、カントリー、ロック、フォークなどの要素も含まれた、もっと幅広い音楽性を持った作品です。アンプリファイド、生ハープ共にとてもニュアンスに溢れたフレージングと、しっかりと作り込まれた音質で魅力的です。かなり個性的で、温かみと優しさを感じました。ヴォーカルの方は決してうまいとはいえませんが、言葉を大切にして唄い込んでいるのに好感がもてました。「ジュニア・ウェルズの思い出に」とあるように、彼の「ブローク&ハングリー」をファンキーにやり、次にホートンの「ハード・ハーテッド・ウーマン」を決めるあたりが一番の聴き所かもしれません。



Matthew Skoller's Lost Trio ; Tap Root ; TONGUE 'N GROOVE no number (2003. 8.17)

2003年リリース。マシューの新作はギター、ピアノをバックに付けたドラムレスのトリオです。いきなり「キング・ビスケット・タイム」を思わせるサニーボーイの「マイティ・ロング・タイム」、マシューの歌も思い入れたっぷりで、変な力みもなくよくマッチしていると思いました。このコンセプトは正解じゃないでしょうか。全体にサニーボーイに対する敬意が満ち溢れているように感じました。ノリのいい「ベイカー・ショップ・ブギ」、定番の「ウォリード・ライフ・ブルース」なども無理がなくいい感じです。一方でロックっぽいノリを感じさせる「ウォーキン・ブルース」もしっくりきています。楽に聴けた一枚。



The Matthew Skoller Band ; These Kind Of Blues! TONGUE 'N GROOVE no number (2005. 1.24)

2005年リリース。最近好調が伝えられるルリー・ベルがほぼ全曲で参加し、しっかり抑えの効いたプレイでマシューをサポートしています。タイトル曲のジュニア・パーカーを始め、ジェイムズ・コットン、ジミー・リードなど、マシューがアイドルにしているブルースマンの曲もありますが、オリジナルが中心で意欲を感じます。アンプリファイドでもあんまりコテッとせず、生ハープではちょっとルイジアナテイストすら感じさせるハーモニカはもちろん素晴らしいんですが、ちょっとダミ声なヴォーカルも、以前より肩の力が抜け、かなりいい感じ。オーソドックスなブルースより1曲目の「ゲット・ペイド」のようなロッキンナンバーをもっと聴きたいと思いました。



Mavis Staples ; Have A Little Faith ; ALLIGATOR/P-VINE PCD-23547 (2004. 9. 5)

2004年リリースの新譜です。先日来日したときに予告があったんですが、期待を全く裏切らない好作が仕上がってきました。来日ライヴでも声のざらつきが気になり、本作でもかつての伸びやかなシャウトを望むとそれは裏切られますが、そんなことは問題にならない、深く、ニュアンスに溢れるメイヴィスの歌の魅力で聴くものを圧倒します。声が出ない分かえって内面をしっかり歌い込んだ表現の豊かさが増したように思いました。タイトル通りゴスペルアルバムで、父を歌った「ポップス・リサイプ」などは、ちょっと「リスペクト・ユアセルフ」あたりを思い出させました。全体にALLIGATORらしいややロックした音ですが、落ち着きのあるメイヴィスの歌を上手く盛り上げています。ラストの定番「ウィル・ザ・サークル・ビ・アンブロークン」、ぐっときましたねぇ。



Mavis Staples ; We'll Never Turn Back ; ANTI 86830-2 (2007. 8. 4)

2007年リリース。声がかなりハスキーになったメイヴィスに、プロデューサーのライ・クーダーが合わせた音は、ザラっとしたサウンドです。ジム・ケルトナーが低重心のリズムを打ち出し、さらにパーカッションを加えた上に、ライの粘りのあるスライドがゆったりとうねり回ります。その上をメイヴィスが自在に泳ぎ回りながら、深い神の愛の歌を歌い上げていくスタイルは、若い頃の勢いのあるメイヴィスとはまた違った、味わいのある歌が上手く生かされていると思いました。特に「99 & 1/2」のどっしりした重みはすごいなぁ。ライが以前やっていた「ジーザス・イズ・オン・ザ・メイン・ライン」をラストにもってきて、じっくりと仕上げたあたりに、このアルバムの目指すところを感じました。僕は好きです。



Mavis Staples ; You Are Not Alone ; ANTI 87076-2 (2010.12.31)

2010年リリース。これは素晴らしいゴスペル・アルバムです。のどを痛めたのか往年の声の張りのないメイヴィスですが、それをプラスに変えています。丁寧にじっくり歌い込んだ感じが全編によく出ています。タイトル曲の厳かなコーラス、ローバックを意識したようなギターが美しい「ルージング・ユー」でのじっくりと歌い上げる感じは、今のメイヴィスにこそできる歌ではないでしょうか。ちなみにギターはリック・ホルストロムで、いい仕事してます。何より嬉しかったのがC.C.R.の隠れた名曲「すべての人に歌を」の素晴らしいカヴァーです。原曲にほぼ忠実にやっているんですが、歌の情感がぐっと来ます。続くタイトな演奏のリトル・ミルトン・ナンバー「ウィーア・ゴナ・メイク・イット」もさすがの出来栄えです。年の最後に本当にいいアルバムに出会いました。




Maxine Brown ; Out Of Sight ; EPIC/SONY MHCP 857 (2006. 5.20)

1969年デトロイト録音のアルバムに2曲ボーナスを加えたものです。いきなりサム・クックの「シュガー・タンブリン」でスタートしますが、いかにもエディ・ウィリスらしいギターの響きから、MOTOWNにも通じるデトロイトの香りがしてきます。マキシンの歌もあまり重すぎず、こうしたバックには良く合っており、スタンダードの「サニー」、洒落たアレンジの「アイ・ウィッシュ・イット・ウッド・レイン」、そして「イン・マイ・エンタイアー・ライフ」「ドント・ビリーヴ・ミー・ベイビー」といったオリジナルでは、適度にポップなバックに乗って、洗練された感じにちょっぴりディープなエキスがかかったマキシンらしさが良く出ていると思います。終盤のハワード・テイトの「ストップ」や、「男が女を愛するとき」(歌詞は男女逆転してます)あたりになると、この人のディープさがむしろ前に出てきてこの幅の広さが魅力かなって思いました。間もなく来日。全盛期は過ぎていますが、円熟した歌声を期待したいです。



Meade Lux Lewis ; 1941-1944 ; CLASSICS 841 (2002.12. 2)

ブギウギ・ピアノの名手ミード・ラクスのピアノソロ集です。いきなりハープシコードの音(ちょっとオルガンぽい響き)で「自画像」なんて曲をやりだしたんでちょっとビックリしました。面白いのは「ドール・ハウス・ブギ」で、途中から右手がセレスタになり、さらに両手でセレスタを弾きだすんです。鉄筋のようなサウンドで、左手のベースラインがかわいくて、何だかおもちゃのピアノの前に座っている姿を想像しちゃいました。全編強いタッチのパワフルなピアノで、昔はバレルハウスでみんなを踊らせてたんだろうななんて想像しちゃいました。「ブルース・ホイッスル」の口笛、まるで小鳥が鳴いているみたい。やっぱり凄い芸人根性を感じました。



Mel Brown ; Blues - A Beautiful Thing ; ELECTRO-FI E-FI 3394 (2006. 6.10)

2006年リリース。メル・ブラウンの新作は重心の低いシャッフルに乗って、少し力の抜けたヴォーカルと、決して弾き倒さない、でも職人気質を感じる丁寧なギターを披露する「テイク・ユア・タイム」からスタートします。タイトル曲はスローバラードのインストナンバーですけど、まさにタイトル通りの美しいフレーズが印象的な曲で、これだけでこのアルバムを聴いてよかったと思いました。染みます。この他リフの印象的なファンキーチューン、ギター弾き語りからピアノ弾き語り、ソウルナンバーまで様々に趣向を凝らしながら、味わい深い歌とギターをたっぷり聴かせます。「サンダウン」ではまろやかなジャズギターも披露。やっぱりギター・マイスターの名がふさわしい人です。



Mel Melton & The Wicked Mojos ; Mel Melton & Wicked Mojos ; LOUISIANA RED HOT LRHR 1100 (2006. 4. 1)

2005年リリース。これは面白いです。まず複音ハーモニカをまるでダイアトニック・アコーディオンのように扱って演奏する「ザディコ・ラズル」にぶっ飛びました。本当にアコかと思ったんです。スワンプ・ポップあり、ブルースあり、ファビュラス・サンダーバーズを思わせるロッキンナンバーありと、飽きさせない曲構成で、ハーモニカも見事なら、サポートする面々もいい感じのプレイを展開しています。「ファンキー・ノラ」ではジョン・ムーニーかタブ・ベノアを思わせるサウンドが飛び出しますし、ちょっとC.C.R.を思わせるようなサウンドもあり、僕の琴線はくすぐられっぱなしです。ちなみに「イル・ソン・パルティ」ではサニー・ランドレスが存在感のあるスライドを弾いてたりします。



Mel Waiters ; Material Things ; WALDOXY WCD 2825 (2001. 4.21)

1999年リリース。のっけからいかにもMALACOといった音作りのバックに乗って、メルは落ち着いた歌を聴かせます。女性コーラスを交えたムーディな歌は、サザン・ソウルここに健在なりと言った印象で、すごく良質なソウル・アルバムだと思います。曲もほぼ自作曲で固めており、時代の最先端とは対極の、ある意味王道を行くシンガーだとました。特にミディアムの曲にメルの良さが光っています。ただしバックの演奏はまるでスリルに欠けているのがちょっと残念。



Melvin Sparks ; Texas Twister / '75 ; BGP CDBGPD 092 (2006. 7.31)

1973年と75年のアルバムの2on1です。いきなりファンキーな「ウィップ・ウォップ」、なるほどBGPらしいなあと妙に感心してしまいました。メルヴィンのギターはもちろんジャズテイストに溢れているんですが、キング・カーティスの「ソウル・トゥイスト」のギターに通じる「ジュディーズ・グルーヴ」、オルガンが効いたソウルジャズ風のタイトル曲と、なかなか野趣溢れる演奏もあります。一方「'75」の方は頭とラストにジミー・スコットのヴォーカルをフィーチュア、いずれも明るい雰囲気のソウルナンバーになっています。また「モッキンバード」なんて曲のカヴァーもあったり、コーラスをたくみに取り入れたりしてます。リズムはかなりファンキーなんですが、ギター自体はぐっとフュージョン的なフレーズが多くなってきます。やはり時代なんでしょうか。



Melvin Sparks ; This Is It! ; SAVANT SCD 2065 (2005. 7.20)

2005年リリース。ギターインストアルバムです。ギブソンのホロウボディらしいまろやかで暖かみのあるサウンドで、ジャズテイストのバンドをバックにギターを弾いていますが、メロディがしっかりしているせいか、一歩間違うと僕の苦手なフュージョンサウンドになりそうなところを、ギターの歌心によって踏みとどまっています。テンプスの「マイ・ガール」の斬新なアレンジが面白いです。オルガンをもっと前に出してソウルジャズ風にしていくと、より僕の好みになる感じがしました。



Melvin Taylor & The Slack Band ; Rendezvous With The Blues ; EVIDENCE ECD 26123-2 (2002. 7. 9)

2002年リリースの新譜です。このアルバムを購入して、データベースに登録していたら、アーティストはすでに登録済み。よもやと思って調べたら、やはり「The New Bluesblods」でした。かれこれ15年前。でもその頃の印象は薄いです。で、今作はいきなり「カミン・ホーム・ベイビー」でオクターヴ奏法と実にモダンでジャジーです。とにかくクール。サニーボーイ2世の「ヘルプ・ミー」も途中「リコンシダー・ベイビー」の歌詞を交えながら、決して表面は熱くならない感じです。でも割って食べると舌を火傷するたい焼きみたいな感じかな?ジョン・リーへのトリビュートはそれとなく聴き流してしまいましたが、ZZ-トップの「ブルージーン・ブルース」は妙にはまっていました。演奏と楽曲のクールさが絶妙にマッチした感じです。ギターはワウワウを含め、よく唄っています。ギターキッズに特にお薦めの1枚かな。



Mem Shannon ; A Cab Driver's Blues ; HANNIBAL HNCD 1387 (2002. 4. 1)

1995年リリース。中古で購入。タイトルにあるように、タクシーの運転手になぞらえたコンセプトアルバムのようです。運転手と客の会話らしきものが曲間に挿入されていて、曲をつないでいるんですが、これがなかなかいいムード。なんだかアメリカ映画を見ているような感じになりました。ギターは良く鳴っているし、癖のあるヴォーカルもここでは味を感じて気に入りました。タクシーには観光客、地元の水商売と思われる女性、ビジネスマン、消防士?といろんな人が乗るようで、言葉遣いのちがいも面白いな。ややファンキーなブルースが主ですが、中にセカンドラインしたニューオーリンズ・フォンクが混じっていて思わずにんまりしてしまいました。英語が良く分かったらもっと面白いんだろうな。



Mem Shannon ; Mem Shannon's 2nd Blues Album ; HANNIBAL HNCD 1409 (2005. 8.14)

1997年リリースのメム2作目です。落ち着いたファンクネス溢れるバックに支えられ、自作の曲を歌い継いでいきます。粘りのあるヴォーカルは好みの分かれるところでしょうが、僕は好きですね。わざとらしくないもので。しっとりと歌うスローも味があるんですが、やっぱり「チャリティー」「セイ・ザット・ゼン」といったファンキーなサウンドに乗って野太い声で歌う曲に魅力を感じます。またそのギタープレイもメロディを大切にしていて、おそらくフュージョン系のギターを好んでいたんでしょうが、それがいい方向に出ています。深みのあるギターサウンドは「ブルーズ・イズ・バック」などで曲をぐっと引き締めていますし。こうしたきちんとしたプロデュースがメムの魅力を引き出しているように思いました。もっと日本で注目されてもいい人だと思います。



Mem Shannon ; Memphis In The Morning ; SHANACHIE SHA 9031 (2001. 7. 4)

2001年リリース。メム・シャノンはニューオーリンズのブルーズン・ソウルマンということですが、初めて買いました。この作品はタイトル通りメンフィス録音で、メンフィス・ホーンズが入っています。非常に個性的な低音の効いたヴォーカルを、しっかりとした演奏の上に乗せて聴かせます。曲もB.B.キングの「ホワイ・アイ・シング・ザ・ブルース」を除けば自作で固められており、きちんと作られたアルバムという印象が強く、ヴォーカルのアクが気にならなければ、かなりの好盤です。ギターは割合すっきりしたシンプルな音使いで、温かみを感じました。全体にリラックスしていて、大人のサウンドです。曲調とかアレンジがちょっと初期のロバート・クレイを思わせるものがありますが、それはプロデューサーのデニス・ウォーカーのせいでしょう。けっこう気に入りました。



Mem Shannon ; I'm From Phunkville ; NORTHERN BLUES NBM0029 (2005. 5.21)

2005年リリース。現在のニューオーリンズきってのブルースマンがメムだと思いますが、その期待に完璧に答える新譜です。ビッグ・イージーならではの、ファンク味からジャジーなサウンドまで、バックは安定しているけど多彩な演奏を聴かせますが、メムのプレイにブレはありません。かなりモダンでちょっと間違うとフュージョンになっちゃうギターと、腰のすわったヴォーカルは存在感があります。例えばMALACOの大人のブルースにもマッチしそうな声とギターなんですが、ある種予定調和なそうしたサウンドとはどこか違うんですよね。枠を目いっぱい使っていると言えばいいのかな。ほぼオリジナルで固めていますが、唯一のカヴァーの「エリナー・リグビー」の解釈が出色です。ジュニア・パーカーを始めこの曲を取り上げた人は結構いますが、これだけ原曲と異なるニュアンスで、曲の良さを引き出したのはないんじゃないかな。完全に生まれ変わってます。



Mem Shannon ; Live A Night At Tipitina's ; NORTHERNBLUES MUSIC no number (2007. 5.28)

2007年2月のライヴで、これもフルアルバムに向けたプロモーション用のCDのようです。ファンキーなバックに乗って、ちょっとフュージョンがかった、繊細なブルースギターが鳴り響き、メムの枯れたヴォーカルが響いてきます。ちょっとディストーションをかけたギターのミディアムや、ブラコンぽいバラードと変化をつけていますが、後半の長尺のファンキーナンバーになると、ちょっと冗長な感じですね。やっぱりこういうフュージョン系の演奏は苦手です。1曲が無駄に長い気がしました。まあフルアルバムが出たらどう感じるかはまた別なんでしょうけどね。



Memphis Slim ; The Come Back ; UNITED/DELMARK/P-VINE PCD-24128 (2002.11. 3)

1952〜54年録音。メンフィス・スリムのUNITED録音には「Memphis Slim USA」という決定盤があって、続くVEE-JAYの「At The Gate Of Horn」とともに名盤の名を欲しいままにしていましたが、これはその続編となります。ということは時に2本のサックスの入った都会的なバンドサウンドに乗って、張りのあるスリムの歌声が満喫できる訳ですが、その軽快なピアノプレイの素晴らしさもたっぷり味わえます。タイトル曲はVEE-JAY盤の冒頭を飾っていた曲の前身で、2テイク入っていますが、録音時期が異なり、曲の変化していく様子がよく分かります。全体にスローブルースに佳曲が多い印象です。そして当然もうひとりの主役はマット・マーフィー!全編で見事なサポートを聴くことができる他、インスト「シャッフルボード」ではかなり西海岸的なフレーズを見事なテクニックで披露していますが、「クール・ダウン・ベイビー」ではまるでT-ボーンかと思うようなイントロからなんとマット自身のヴォーカルが登場!これ、もちろんスリムの前では勝負になりませんが、ややひなびた感じで味があって僕は好きです。この他女声コーラス、フレッド・ビロウのハンドドラム入りオーディション、サックスを前面に出したアーネット・コブの「スムース・セイリン」など、幅広い方向性を知ることができるのもこのアルバムの面白さのひとつだと思いました。



Memphis Slim ; At The Gate Of Horn ; VEE-JAY/P-VINE PCD-5253 Click Here!

Memphis Slim ; I'll Just Keep On Singin' The Blues ; STLAND/32 BLUES 32193 (2000. 8.17)

1961年シカゴ録音。VEE-JAY時代に続く時期で、マット・マーフィーのギターも冴えています。VEE-JAY時代は結構きっちりアレンジがされていますが、こちらはそれに比べるとかなり荒削りな感じです。スリムの唄い方も少しラフな感じです。でもその分臨場感があり、かなり楽しめました。ギターの音も太めで、マット節が随所に聴かれます。こんなアルバムがあったんですね。


Memphis Slim ; WORRIED LIFE ; ROOTS RTS 33013 (2001. 3. 6)

1961年ニューヨーク録音。CHESSのリイシューと期待していましたが、違いました。古いブルースをいろいろと紹介しながらスリムの他、ジャズ・ジラムやアービー・スティダムが歌い継いでいきますが、いかにも非黒人向けの演奏で、緊張感に欠けます。スティダムのギターはチューニングがかなりひどいし、スリムのピアノも「カウ・カウ・ブルース」なんてかなり雑な演奏です。でもスリムの声はやっぱり良いなぁ。朗々としています。「ハーレム・バウンド」あたりは好きな唄なのでけっこう楽しめました。



Memphis Slim / Matt Murphy ; Live From Antone's ; ANTONE'S ANCD 9.00450 O (2006.12. 3)

1985年12月のライヴです。中古で購入。パリに住んでいるメンフィス・スリムがアメリカに戻り、テキサスで演奏したんですが、ここにかつての盟友マット・マーフィーが加わりました。この他ギターにルーサー・タッカー、サックスにはマーク・カザノフと名うてのメンバーがバックを支えています。曲は「ウィッシュ・ミー・ウェル」「ステッピン・アウト」と馴染みの曲が入っており、これらはマーフィーとVEE-JAY時代に共演しています。70才のメンフィス・スリムは声はやや衰え、ピアノも往年の切れはなくなって来ていますが、ビートが出だすと素晴らしい乗りになります。マーフィーはどちらかというと控えめな演奏で、職人芸的なバッキングは素晴らしいんですが、もう少し弾きまくって欲しかったな。



Memphis Willie B. ; Introducing Memphis Willie B. ; P-VINE PCD-1970 (2006.12. 2)

中古で購入。1961年サム・チャーターズなどのプロデュースで出されたアルバムです。メンフィス・ウィリー・B.ことウィリアム・ボーラムはメンフィスの伝統的な流れを汲むブルースマンで、達者なアコースティック・ギターを弾き語ります。声は少し詰まったような切実感があり、どこかスリーピー・ジョン・エスティスに通じるものもあります。ホルダーでハーモニカを吹きますが、デルタブルースより軽めの雰囲気がいいですね。どこか「ザ・スタッフ・イズ・ヒア」はジャグ・バンド的なアプローチのホーカム・ソングで、アルバムの中では異色かな。全体にギターのパターンなどほぼふたつしかなく、多彩とは言い難いんですが、歌の味わいがそんなものを吹き飛ばしてしまいます。



The Merced Blue Notes ; Get Your Kicks On Route 99 ; ACE CDCHD 1026 (2009. 6.15)

1961〜66年録音です。マースド・ブルー・ノーツはカリフォルニアのファンキーなバンドで、オルガンを軸にしたインスト・ナンバーはちょっとソウル・ジャズを思わせます。例えばエイモス・ミルバーンの代表曲「バッド・バッド・ウィスキー」をアップテンポにしたインストはその典型例。でも歌ものもあってオーソドックスなブルースもやってます。また「ルーファス」のシリーズがご機嫌で、ままやらジュニアやらが出てきます。MGズのような革新的なリズムは出てきませんが、「ウォーターメロン・マン」を取り上げるあたりバンドの指向性がよく出ています。こういうの好きです。




Frankie Lee Sims / Mercy Dee Walton ; Masterly Texas Blues 1953-1957 / 1949-1955 ; JSP 4217A/B (2009.11.26)

それぞれ1枚にまとまっていますから、なんで2枚組セットにしているんだか分かりませんが、流通を考えてなんでしょうかねぇ。シムズの方はSPECIALTYとACEに残されたほぼ全作品を集めたもので、例のビヤビヤのギターに乗ってベチャッと歌う持ち味がたまりません。時折T-ボーン風のフレーズを弾いたり、ハープ入りの曲もあります。ACE時代になるとサックスやピアノの入った曲もありますが、基本姿勢は同じですね。一方マーシー・ディーですが、SPIRE、IMPERIAL、SPECIALTY、RHYTHM、FLAIRといったレーベルの正規リリース盤を集めたものです。テキサス・マナーのピアノ弾き語りに乗った、ちょっとコミカルな「G.G.フィーヴァー」以降は、「ロンサム・キャビン・ブルース」に代表される、寂しげなブルースが中心になっています。のちにバックにギターやドラムが入ってきますが、基本姿勢は「ワン・ルーム・カントリー・シャック」まで大きく変わることはありません。これがRHYTHMに移籍した頃からバックバンドをつけたノリのいいサウンドに変化していきます。特にFLAIRでは「メイベリーン」なんて曲までやってます。変わるもんです。




Merl Saunders ; Struggling Man ; RELIX RRCD2107 (2004.11.17)

2000年リリース。ジミー・クリフのタイトル曲にB-3サウンドってことで、最初はソウル・ジャズからファンクなアプローチを期待して聴いていたんですが、なんだかえらくロックっぽい感じ。「M.S.」は期待したような音だったんですが、タイトル曲、ボブ・ディランの「ミート・ミー・イン・ザ・モーニング」を聴いたら70年代のウエスト・コースト〜サザン・ロックみたいだなって思いました。で、この人どこかで見たことある名前だとクレジットをよくよく見れば、グレイトフル・デッドでオルガン弾いてた人じゃないですか。ラスト2曲はガルシアの曲で、ギターもまるっきりガルシアサウンド。なるほどジャムバンドって考えればすっきりです。いろんな音楽の要素がグワって詰め込まれていて、何度か聴くたびに発見がありそうですね。



Merle Travis ; The Merle Travis Guitar ; RIGHTEOUS PSALM 23:2 (2009. 8.16)

1957年のインスト・アルバムに1946〜51年のシングル盤を加えたものです。まずアルバムの方ですが、マールといえばトラヴィス・ピッキングで知られるツーフィンガーの名手。でもこれって本当に二本指なのってプレイが続出です。本当に速いし正確だし凄いなぁ。「ブルー・スモーク」や「バーグル・コール・ラグ」なんてとんでもないです。「アラビアの酋長」も気持ちよくギャロップしてます。一方40年代終わりの歌ものは、バックのギターもさることながら、マールの歌手としての素晴らしさがよく出ていますね。特に語りの入る「ナイン・パウンド・ハンマー」に「シクスティーン・トンズ」はワーカーズ・ソングとして秀逸ですね。




Merrill E. Moore ; The House Of Blue Lights ; ACROBAT ACMCD4051 (2009. 1.28)

1952〜57年録音。メリル・ムーアはサンディエゴで活動したカントリー・ミュージシャンで、ウェスタン・スウィングやブギウギを得意とするピアニストです。いきなりフィドルが響き渡る思いっ切りカントリーな「コリーヌ・コリーナ」がのどかに響きますが、左手のストライドが格好いいピアノのスタイルはかなりいけます。鍵盤のかなり高いところを使ったブギウギが軽快な感じで、この辺はジェリー・リー・ルイスに影響を与えたかもしれません。曲も「ハウス・オヴ・ブルー・ライツ」とか「カウ・カウ・ブギ」「ダウン・ザ・ロード・アピース」など、R&Bチャートをにぎあわせた曲を取り上げていて馴染みやすいです。こういう曲にペダル・スチールが絡むってのもなかなかいいですね。




The Meter Men ; Live At Jazz Fest 2009 ; MUNCKMIX/BUFFALO MM-09MM (2009. 8.13)

このユニットはレオ・ノセンテリ、ジョージ・ポーター・ジュニア、ジガブー・モデリステの、アート・ネヴィルを除くミーターズの面々ですね。曲はもちろんミーターズ・ナンバーのオンパレード。でもトリオなのに意外と後期のヴォーカルものが多かったです。初期のインストものはメドレーにしていますが、この辺はファンキー・ミーターズと同様のアプローチですね。音質がいまいちなのもありますが、一番の不満はジガブーのドラムです。昔の独特の「ため」が全然感じられません。これだと魅力は半減です。




The Meters ; The Meters ; JOSIE/SUNDAZED SC 6146 Click Here!

The Meters ; Look-Ka Py Py ; JOSIE/SUNDAZED SC 6147 Click Here!

The Meters ; Struttin ; JOSIE/SUNDAZED SC 6148 Click Here!

The Meters ; Funky Miracle ; CHARLY CD NEV 2 Click Here!

The Meters ; Funkify Your Life - The Meters Anthology ; RHINO R2 71869 Click Here!

The Meters ; Crescent City Groove Merchants ; CHARLY CPCD 8066 Click Here!

The Meters ; Good Old Funky Music ; ROUNDER CD 2104 Click Here!

The Meters ; Zony Mash ; SUNDAZED SC 6211 Click Here!

The Meters ; Kickback ; SUNDAZED SC 11081 Click Here!

The Meters ; The Meters Jam ; ROUNDER CD 2105 Click Here!

The Meters ; Cabbage Alley ; REPRISE/SUNDAZED SC 6168 Click Here!

The Meters ; Rejuveantion ; REPRISE/SUNDAZED SC 6169 Click Here!

The Meters ; Fire On The Bayou ; REPRISE/SUNDAZED SC 6167 Click Here!

The Meters ; Live On The Queen Mary ; P-VINE PCD-1862 Click Here!

The Meters ; Trick Bag ; REPRISE/SUNDAZED SC 6170 Click Here!

The Meters ; New Directions ; WARNER BROS./SUNDAZED SC 6171 Click Here!

Michael Burks ; Make It Rain ; ALLIGATOR ALCD 4878 (2001.12.13)

2001年リリース。フライングV(ヘッドには The "V" と書かれています)を絞り出すような適度な歪みと伸びのあるギターサウンドがまず耳をひきました。マイケルは使用楽器からみても明らかなアルバート・キング・フォロアーのひとりですが、その影響はむしろギターよりもヴォーカルに感じました。中低音の太い声を、腹の底から響かせる唱法はまさに直系。ロックファンにもなじみやすいギターサウンドとともに、マイケルの大きな魅力です。ただやや単調なところも感じました。もう少しギターにニュアンスが感じられるといいな。スヴェンの曲を取り上げているのが、「ブルースに国籍はない」って感じでいいですね。



Michael Burks ; I Smell Smoke ; ALLIGATOR ALCD 4892 (2003. 7. 6)

2003年リリース。このバークスの新作は前作の延長線上にあり、最近のALLIGATORらしいブライトな音作りに、ディストーションのがっちりかかったギターをぐいぐい弾いていきます。ヴォーカルは相変わらずアルバート・キングの濃厚な影を感じますが、アップナンバーでは少しハイトーンの歌で独自性を出そうとしているようにも思えました。というわけで、ロックファンにはすごく取っ付きやすいアルバムだと思いますが、僕にはちょっと「歌謡曲」に聞こえる瞬間もありました。曲調は結構多彩なんですが、バンドのうねりが不足しているのと、オルガンの音がちょっと過剰だったり、予定調和的な展開、そして何よりワンパターンなギターの音色とフレージング。リズムギターなどいい仕事していますし、一工夫あるとぐっと面白くなる可能性大です。



Michael Coleman ; Do Your Thing! ; DELMARK DE-747 (2001. 4.29)

2000年録音。マイケル・コールマンはジェームズ・コットンのバックで来日したとき見て、畳み込むようなフレーズが印象的だったのでソロを買ってみました。シャープな音作りで意欲はビンビンに感じましたが、いかんせん歌が弱すぎます。ミックスのせいか、曲によってはヴォーカルが埋没しているものも。ジミー・リードの曲とかはその中ではマイケルに合っていると思いました。ギターはフェントン・ロビンソンを彷彿させる音数の多いフレーズが中心で、これは割と良かったです。選曲は人の有名曲が多く、「ドック・オヴ・ベイ」などけっこうソウルよりの曲があるのはシカゴのシーンそのままなんでしょうね。マシュー・スコーラーが3曲ハープを吹いていますが、かなりの聴きもの。



Michael Coleman ; Blues Brunch At The Mart ; DELMARK/P-VINE PCD-23758 (2006. 5. 3)

2005年6月のライヴです。マイケル名義になってますけど、実際は「ブルース・ブランチ」というシカゴ・ブルース・フェスティヴァルでのDELMARK顔見せ興行ライヴといった趣です。マイケルはホストバンドを仕切ってますが、メインアクトとしては2曲だけ。リトル・アーサー・ダンカン、ルリー・ベル、ボニー・リー、ゾラ・ヤング、それに先日ソロライヴを出して評判だったテイル・ドラッガー(今作も存在感抜群です)など豪華絢爛なメンバーが入れ代わり立ち代わり登場しますが、その分散漫な印象は否めません。マイケルはスローの「ザ・スカイ・イズ・クライング」とファンキーな「ユーア・ゴーイング・トゥ・ミス・ミー」で見事なギターワークを披露、この他ルリーもなかなか切れのいいギターを弾いていて最近の好調ぶりを感じさせます。一方涙ものはウィリー・ケント、このちょっとひなびたような歌をもう聴くことが出来ないってのは残念です。途中スティーヴ・バーのブギウギピアノやアーロン・ムーアのピアノ弾き語りが良い口直しになってますね。



Michael Jackson ; Number Ones ; EPIC 2 513800 (2004. 4.26)

2003年に出たベストでヨーロッパ盤です。79年からのヒット集ですが、やはり80年代一世を風靡したサウンドは良くできています。クウィンシー・ジョーンズの、ソウルにたっぷりフュージョンのドレッシングをかけ、チョロッとファンクなスパイスを利かせながら、ロックっぽいギターでポップに仕上げるその手法は、聴いていくうちに時代を思い出させるくらい僕の80年代のイメージになってます。でもこの鮮やかすぎるサウンドが当時は結構苦手で、泥臭いブルースばかり聴いていたんですが。年代順に並んでいるんで、現在に近付くにつれ粘り気が増すのがよく分かります。



Michael Powers ; Prodigal Son ; BUFFALO BUF-136 (2006.11.23)

2006年リリース。パワーズはもう50才をまわっているんですが、ソロデビューは前作の「Onyx Blues」で、これは僕も聴いたんですが、何だかブルースというよりロックなアルバムで、ちょっとぴんと来ませんでした。今作もやはりロックっぽいサウンドが目立ちますが、ジミ・ヘンドリクスなどを吸収した、なかなか達者なギターですね。またリゾネイタなどを使ったざらついたアコースティック・サウンドに、ロカビリーみたいなアーミングを利かせた「トレイン・ケプト・ア・ローリン」など、サウンド的にも多彩になって来たように思います。でも何だかつかみ所がないって言うか、「これが俺だ!」みたいなものを感じられないんで、いまひとつ引き込まれませんでした。ちなみにタイトル曲はロバート・ウィルキンス〜ストーンズのものとは同名異曲のオリジナルです。



Michelle Willson And The Evil Gal Festival Orchestra ; Wake Up Call ; BULLSEYE BLUES & BOOGALOO 11661-9639-2 (2001. 9.17)

2001年リリース。いやぁ、1曲目のクールなジャズファンクをバックに、大人の女の妖艶さすら感じるヴォーカルに痺れました。演奏も歌もジャジーなんだけれど、いわゆるジャズ・ヴォーカルのような技巧的な歌い方でなく、もっとぐっと来る感じでした。演奏もバス・クラリネットなどを上手く使った渋い音作りで、これ1曲で参りました。全体には同じようなジャズ風味の強い曲と、より明るめのロッキンサウンドとがありますが、どちらかというと前者に佳曲が多いように思いました。こりゃブランデーに合いますね。部屋を暗くして、フレィヴァ・キャンドルかなにかくゆらせたらいいだろうな。



Mick Clarke ; Live In Luxembourg ; TAXIM TX 1053-2 TB (2003. 9.16)

2003年リリース。この人、イギリスの人のようです。ざらざらしてソリッドな感触のSGから繰り出されるフレーズは、かなりラフでタフ。流暢さとは対極をいくんですが、魂を感じました。何だか引き込まれちゃうんですよ。フレージングに時折ジャズの香りを感じるのがこの人の個性です。一方ヴォーカルも結構歌えてるんですが、ライヴのせいかこちらはややがなり気味で、ちょっと苦手。でもバックも好サポートで、オリジナル中心の中、こんなにしちゃうのって言いたいようなジミー・ロジャーズの「ザッツ・オールライト」のヘヴィーさは、只者じゃないなって感じはしました。



Mickey Baker ; In The '50s: Hit, Git & Split ; REV-OLA CR BAND 29 (2008. 1.14)

1952〜56年に録音された、ミッキー名義だけでなく、セッション参加作品も含めた文字通りの名演集です。以前中村とうようさんが「オーディオブック」というシリーズで見事なコンピを出していましたが、それより間口をさらに広くしたようなセレクトです。特に嬉しかったのが、タイタス・ターナーの「オール・アラウンド・ザ・ワールド」とか、ルイ・ジョーダンのMERCURY時代の「カレドニア」とか。前者はCOLLECTABLESの単独盤には入ってますが、なかなか聴く機会が少ないですし、後者の暴れ具合ったらもう。丁寧なデータも記載されており、なかなかいい仕事だと思います。



Mickey Baker ; The Wildest Guitar ; ATLANTIC/SEPIA TONE STONE 13 (2003. 5.13)

1959年リリースのインストアルバムのストレート・リイシュー。リヴァーブバリバリでステレオディレイをかけたようなサウンドで鳴り響く「第三の男」「枯葉」「落ち葉の子守歌」といったスタンダードナンバーの下世話で場末な雰囲気と、「ミッドナイト・ミッドナイト」「ミルク・トレイン」のような50年代ニューヨークのブルースやR&Bの屋台骨を支えたのがよく分かる、アグレッシヴでブルージーなプレイがゴテゴテっと詰め込まれたアルバムで、トム・ダウドの大袈裟なサウンドメイキングが妙にはまっているのが面白いです。ヴェンチャーズとかもこういう演奏から影響受けたのかしら?



McHouston "Mickey" Baker ; Take A Look Inside ; MAISON DE BLUES 983 211-7 (2006. 3.30)

1971年録音。ミッキー・ベイカーと言えば、ニューヨークのブルースシーンには欠かせないギタリストで、そのアグレッシヴなプレイには定評があるんですが、このクリス・スペディングなどとロンドンで録音したアルバムは、かなり意表を突くものでした。パーカッションを加え、ロック的なサウンド処理が行われていて、一瞬ローリング・ストーンズを彷彿させるような部分もあります。「アイル・ビ・ドゥーゴーン」なんてまるで「悪魔を哀れむ歌」のよう。「チェック・アウト・マイ・ガーデン」はスライドを交えたブルースでちょっとほっとしましたけど。フレディ・キングの「センセイション」もロック的な音処理です。面白いアプローチとは思いますが、いまひとつミッキーの魅力が活かされてないかな。ボーナス3曲はアコースティックなサウンドで、これはそこそこ面白かったです。



McHouston "Mickey" Baker ; The Real Folk Blues ; MAISON DE BLUES 983 154-0 (2006. 4. 4)

先に紹介した1973年のモントルー・ジャズ・フェスティヴァルのフルライヴ盤です。当然収録曲は重複してますけど、タイトルを微妙に変えてあったため気付きませんでした。CHESSのシリーズにあやかったわけじゃないでしょうが、本来フォーク・ブルースマンという位置付けで知られているわけではないミッキー・ベイカーが、アコースティックギターをかき鳴らし、時にスライドを唸らせてブルースを歌うのはなかなかサマになってます。やっぱり血が流れてるってことでしょうか。どこまで「リアル」かは聴く人の感性によるんでしょうが、随所に感じられるギターテクニックと合せ、興味深く聴くことができました。



Mickey Baker ; The Blues And Me ; BLACK & BLUE BB 456.2 (2002. 7.15)

1973〜76年フランス録音。ミッキーと言えば、ギュインギュインキュルキュルのアグレッシヴなギターを期待していたんですが、1曲目の「シーズ・ダイナマイト」のアコースティックでちょっと拍子抜けしました。しかしこのセッションの取り合わせはすごいなぁ。だってジミー・ロジャーズ&エイシズというシカゴブルースバリバリのバンドとやっているんです。ミッキーはエレキも弾き、所々で往年のアグレッシヴさを覗かせていますが、なんかしっくり来ていません。むしろ数曲あるロイド・グレン、タイニー・グライムズ、パナマ・フランシスといった面々との演奏の方が伸び伸びしているように思いました。



Mickey Baker ; Blues & Jazz Guitar ; STEFAN GROSSMAN'S GUITAR WORKSHOP SGGW107 (2008.10. 7)

1977年の盤のリイシューです。ミッキーといえばバリバリッとしたエレキのプレイで有名なニューヨークのセッション・ギタリスト、さらにはシルヴィアと組んでの大ヒット「ラヴ・イズ・ストレンジ」ですが、その一方でヨーロッパ公演ではアコースティック・ブルースも聴かせています。そんなミッキーがステファンと出会って作ったのがこのアルバムだそうで、ボトルネックも交え、そのスタイルを選ばないギターで、ブルースヤトラッディッショナルをやっています。「コリーナ・コリーナ」「スタック・オリー」といった古い歌からスキップ・ジェイムズの「スプーンフル」、多分フルソンの「シナーズ・プレア」をレイ・チャールズがカヴァーしたものがベースの「ロード・ハヴ・マーシー」、マイナーでちょっとフォーキーな「プリーズ・ドント・ゴー」、やけにストーンズな「ラヴ・イン・ヴェイン」などに混じり、カポをかませて高い音で美しく鳴らす「ハロー・ワールド」やフレーズが素敵な「ジューシー・ルーシー」あたりが面白かったです。




Mighty Lester ; We Are Mighty Lester ; MIGHTY LESTER PRODUCTIONS 8035 (2008. 7.19)

2006年リリース。いきなりまるっきりB.B,キングなギターがご機嫌なジャンプ・サウンドに乗って飛び出してきて、思わず耳を奪われました。アップナンバーは、リヴァーブにトレモロアームを効かせたギターに、スラッピング・ベースという、ちょっとブライアン・セッツァーを思わせるサウンドで、なかなか活きがいいです。「グリーン・バック」なんて曲が出てきたときには思わずニンマリ。ただ、スローバラードは力み過ぎで、聴いていてちょっと疲れました。




Mighty Mo Rodgers ; Red, White And Blues ; BLUE THUMB/UNIVERSAL 589 847-2 (2004.11.23)

2002年リリース。この人の名前はJ.J.ミルトゥのアルバムで名前を見たくらいで、全然知らなかったんですが、これ、かなりいいです。メンフィスソウルあたりからの影響を受けた、かなり聴かせる腰の座ったヴォーカルと、結構練り込まれた音処理がうまくマッチしています。表面的な新しさでなく、しっかり染みついたサウンドメイクが新鮮で、秘めやかなファンクネスを感じました。ある意味ロバート・クレイに通じる雰囲気もあるんですが、ぐっと泥臭い面もあり、またいにしえのブルースマンを歌い込んだりと、伝統をしっかり維持しようという姿勢も見られます。ところでこのアルバムって、マーティン・スコセッシのブルースと何か関係あるのかしら?



Mighty Mo Rodgers ; Redneck Blues ; DIXIEFROG DFGCD 8622 (2007.12.27)

2007年リリース。南北戦争を題材にした曲といえば、ザ・バンドの「オールド・ディキシー・ダウン」を思い出しますが、このアルバムもそうした香りを感じます。マイティ・モーのソウルフルで少しゴスペルの影を感じる歌声に、マンドリンやバンジョーも加えたアコースティックなサウンドが見事にマッチしています。語りを交えながら、奴隷解放を求めて反乱を起こしたジョン・ブラウンや、「嘘とともに死ぬな」「中流の死」「ブルースは悪魔の音楽なんかじゃない」「やつらがタジ・マハルを爆撃した!」「アメリカン・ドリームを見たことがあるか?」と、極めてメッセージ性の高い歌を並べています。歌詞も附属しているんですが、何かふつふつとたぎる怒りのようなものが伝わってくるアルバムです。



Mighty Mo Rodgers ; Dispatches From The Moon ; DIXIEFROG DFGCD 8672 (2010. 3.23)

2009年リリース。月と交信しているイラストのジャケットを見たとき一瞬購入をためらいましたが、聴いていくと面白いコンセプトのアルバムだなと思いました。粘りのあるヴォーカルでブルースに限らずレゲエ、アフリカンなどの要素を取り入れて、月から地球へブルースや愛というメッセージを送るといった感じで、途中交信を模した会話も挿入されています。丁寧な作りのブックレットにその辺のことを綴ってありました。フランスでも録音が行われたようで、JJミルトゥが参加してたりします。来るまで聴いているとその会話についつい耳が奪われたりしまして、けっこう楽しんで聴けました。




Mighty Sam ; Papa True Love ; AMY/SUNDAZED SC 11083 (2003. 2. 2)

1966〜68年にかけて、マッスル・ショールズやSUNスタジオなど南部で録音されたマイティ・サム・マクレインの比較的初期の作品集です。典型的なサザンソウルの香りがする演奏にのって、ボビー・ブランドやオーティス・レディングの影響を受けたタフな歌が全開です。感じで言うと同時期から70年代のリトル・ミルトンに肌合いが近いかな?でも曲はずっとサザン・フィーリングが強いです。「スウィート・ドリームズ」や「トーク・トゥ・ミー」のようなバラードに味わいがあるなって思いました。「ジャスト・ライク・オールド・タイムズ」あたりはジェイムズ・カーからの影響も。ズバッとした個性はまだ感じませんが、十分魅力的だと思いました、



Mighty Sam McClain ; Journey ; AUDIOQUEST AQ-CD1048 (2003. 3.13)

1998年リリース。歌がうまいっていうのは本当に素晴らしいことです。オリジナルを中心にブルーズン・ソウルをたっぷり歌っていますが、リトル・ミルトンがややもするとわざとらしく聞こえることがあるのに対し、マイティ・サムは派手さはないけれどあくまでも自然体です。ゆったりした曲が中心ですが、ファンキーな「アイム・ユアーズ」やタイトな「ミスター・ソー&ソー」などでうまく変化をつけています。サム・クックの「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」の落ち着いているけどちょっとラフさの漂うヴァージョンもいいですが、ラストの「サムバディ・ヘルプ・ミー」が心に染み入りました。



Mighty Sam McClain ; One More Bridge To Cross ; MIGHTY MUSIC 101 (2003. 5. 9)

2003年自らのレーベルからのリリースです。いきなりしっとりしたスローナンバーが、耳にぐっと訴えかけてきます。ややくぐもった、ボビー・ブランドなどに通じる落ち着いた声は、派手さはないですが説得力を持って響きます。「オープン・アップ・ヘヴンズ・ドア」の染み入るような歌、素敵です。アップ、スロー、ミディアムと、曲調を変えながら、時には力強く、時には優しげに歌うマイティ・サムから自身が満ち溢れているように感じました。バックのサウンドはMALACOなどに比べ手作り感が強く、それもヴォーカルを引き立てる要因かもしれません。特にクリス・トフィールドのギターが好サポート。佳作だと思いました。



Mighty Sparrow ; First Fright ; SMITHSONIAN FOLKWAYS SFW CD 40534 (2009.12. 1)

1957〜59年録音。どうやらトリニダード・トバゴの歌手のようです。アコースティックなイメージのサウンドにブラスが乗って来るサウンドをバックに、軽快な調子で歌います。ダンサブルなリズムなので腰が動いてきます。歌詞はラテンなまりの英語のようで、曲のタイトルを見ると「ロシアの衛星」だの「狂った爆撃手」なんて社会的なものもあり、何を歌っているのか興味がわいてきました。




Mike Bloomfield & Al Kooper ; The Live Adventures Of Mike Bloomfield And Al Kooper ; SONY MHCP 843-4 (2005.10. 5)

1968年リリース。フィルモア・ウエストでのセッションライヴの模様です。名盤(スーパー・セッション」をそのままライヴに持ち込んだような演奏で、アルの変化に富んだオルガンと、マイクの粘り気のあるブルースギターがたっぷり堪能できます。恐ろしくロックなバラードにアレンジされた「59番街橋の歌」からスタート。「ザ・ウェイト」をインストでこなしたり、セッションならではの曲が並んでいます。2枚目にいくとサンタナがゲストでギターを披露、さらにエルヴィン・ビショップが歌う「ディア・ミスター・ファンタジー」では中盤のソロで「へイ・ジュード」が飛び出したりと、自由な雰囲気でジャムが進んでいきます。最後のアルバート・キング・ナンバーまで息もつかせない演奏が並んでいます。ただ欲を言えば、特にマイクは歌がちょっと弱いですね。



Mike Bloomfield, Al Kooper, Steve Stills ; Super Session ; COLUMBIA/LEGACI CK 63406 (2005.12.19)

1968年リリース。LPで持っているものをCD化しましたが、ライヴや別ミックスなどのボーナスが加えられています。何といってもマイクのギターがよく歌っていて素晴らしいです。「アルバーツ・シャッフル」「ストップ」と続く冒頭2曲でのプレイは、粘りと艶のある見事なフレージングで、神がかっているとも言えますね。クラプトン・ファンには申し訳ありませんが、何というか「格の違い」のようなものを感じます。アル・クーパーのホーンアレンジもゴージャスですが過剰でなく、曲を盛り上げます。これはボーナスのホーン無しと聴き比べるとよく分かりますね。一方スティーヴン・スティルスがメインのサイドは、ちょっといまひとつかな。「ユー・ドント・ラヴ・ミー」なんて半端なポップ・ロックみたいです。アルバム全体として、ヴォーカルが弱いのが残念ですが、マイクのギターは未聴の人は是非ご賞味を。



Mike Dowling ; Swamp Dog Blues ; STRICTRY COUTRY SCR-39 (2008. 3. 5)

1995年リリース。まずタイトル曲になっているスライドのメロディが素晴らしいです。藤縄てつやさんが時々弾いていますが、なるほどと思う選曲。この他「ニットピッキン」の柔らかい感じとか、「ジョンソン・シティ・ラグ」の端正なフィンガー・ピッキングとか、オリジナル曲に魅力がありますね。それに対して「シー・シー・ライダー」や「ミーン・オールド・フリスコ」といった耳慣れた曲は、手慣れた感じで如才なくこなしているんですが、ちょっとインパクトに欠けるかな。でも歌に嫌みがないのは好感が持てます。とにかく上手い人です。



Mike Dowling ; Beats Workin' ; STRICTRY COUTRY SCR-46 (2008. 3. 4)

1996年リリース。いきなりの「ポリス・ドッグ・ブルース」の華麗な指さばきで、この人、ただ者じゃないなと思いました。ブルーグラスとかをやって来た人のようで、ヴァッサー・クレメンツのフィドルの入った曲ではいかにもカントリー系の歌を聞かせます。チェット・アトキンスの影響を強く感じるギターですが、リゾネイタを使ったスライドも上手く、多彩です。ちょっとヨーロッパ風味の漂う「ボトルネック・マーチ」もお洒落。でもラストに「ジャンプ・チルドレン」が来たときにはびっくりですね。幅の広い人です。



Mike Dawling & Randy Sabien ; Live At The Cafe Carpe ; WIND RIVER WRG-03 (2008. 6.13)

1996年のライヴです。マイクのスライドを交えたギターにランディのマンドリンやヴァイオリン、さらには8弦ギターが絡み、曲によってはマイクの素直なカントリー・シンギングが乗ってきます。何度も再録する「マイナー・シング」はステファン・グラッペリとジャンゴ・ラインハルトをちょこっと思わせる感じですね。ブルースを歌ってもカントリーになるあたりが彼の出自を表しているでしょう。面白いところではチャック・ベリーの「ジャガー&ムスタング」とかリトル・ウォルターの「デッド・プレジデンツ」なんてのもやってたり。マイクのオリジナル曲でのスライドの美しさは聴き惚れちゃいます。選曲の幅の広さと、でも結局自分のスタイルに持ち込んじゃうあたりがマイクの非凡な才能を感じさせます。



Mike Dowling ; String Crazy ; WIND RIVER GUITAR WRG-04 (2008. 4.14)

2000年リリース。マイクのいつも通りの丁寧なフィンガー・ピッキングをメインに据え、古いブルースから「リヴァーズ・インヴィテイション」のようなR&Bナンバー、スライドをたっぷり利かせるカントリー・タッチの曲、さらにはオールド・ジャズまで、自然体で好感の持てる歌声を聴かせます。「キャラヴァン」のアレンジなど秀逸ですね。そんな中、特に嬉しかったのがフォスターの「ハード・タイムズ・カム・アゲイン・ノー・モア」。美しい音色のリゾネイタで哀愁を感じるメロディをインストで弾き語ります。



Mike Dowling ; Blue Fandango ; WIND RIVER GUITAR WRG-05 (2008. 3. 7)

2005年リリース。リゾネイタをこんな綺麗な音色でフィンガー・ピッキングする人がいたとは!ブルースもカントリーもラグタイムも消化し、オスカル・アレマンもチェット・アトキンスも身につけたマイクのギターは縦横無尽。だけどいわゆるテクニック見せびらかし系じゃないんです。タイトル曲の穏やかで広がりのある音、ブルースも力まず歌い、スライドもバランス良く入ってきます。裏ジャケットにギターを抱えて笑っている写真が出ていますが、この人絶対楽しんで演奏していますね。上手さの向こう側にある音楽の素晴らしさを聴かせてくれています。いいアルバムに当たりました。



Mike Dowling ; Bottomlands ; SOLID AIR SACD2012 (2008. 3.11)

2005年リリース。実はマイクのCDで最初に聴いたのがこのアルバムなんです。借りて聴いて気に入って購入しました。これはインスト・アルバムなんですが、リゾネイタを丹念にフィンガー・ピッキングしています。テクニックはもちろん素晴らしいんですが、彼の代表曲と言ってもいい「ニットピッキン」や「ロザリー」、さらに美しい音色のスライドをかませた「スワンプ・ドッグ・ブルース」、シンプルな解釈の「アメイジング・グレイス」など、ひとつひとつの楽曲の仕上がりが素晴らしいアルバムです。敢えてインストにこだわったのが良く分かります。



Mike Dowling ; The Blues Ain't News ; WIND RIVER GUITAR WRG-06 (2009. 2. 4)

2008年リリース。ソロの弾き語りの他、曲によってはベースやハーモニカを入れて、オリジナリティ溢れるアレンジでミシシッピ・ジョン・ハートなどのブルースをやっています。全体に上品な音使いで、ロニー・ジョンソンの「トラブルズ・エイント・ナッシング・バット・ザ・ブルース」あたりになると、ハーモニカとの絡み方がブラウニー・マギーとサニー・テリーのコンビみたいな感じです。全体にイーストコースト系のサウンドで、ターヒール・スリムの「ナンバー9・トレイン」なんて嬉しい曲も。ロニーの「トゥモロー・ナイト」も柔らかくていい感じです。ギターのテクニックをひけらかすのではなく、歌をしっかり支えていて、しかもやさしげな歌がなかなか癒してくれます。




Mike & Paul Garner ; Steppin' Out To The Blues ; KINGFISHER STUDIO no number (2001. 8.21)

1999年リリース。ニュージーランドのブルース親子のアルバムです。とにかくブルースに対する深い愛情を感じます。演奏パターンはいろいろで、まるでロバート・クレイの「フォーン・ブース」のような「ワン・ルーム・カントリー・シャック」があると思えば、リゾネイタとマンドリンによるカントリーブルースありといった具合です。歌はちょっと弱いですが、丁寧に歌っていますし、ギターはなかなかのもの。ブルースって本当に国際的なんですね。



Mike Morgan & The Crawl ; Ain't Worried No More ; BLACK TOP CD BT 1102 (2008. 3.13)

1992〜93年にかけての録音です。碧眼のギタリスト、マイクの曲はインスト集で聴いたことがありましたが、BLACK TOPらしい丁寧な音作りで、切れのいいギターを上手く捉えています。ハーモニカのリー・マクビーの歌うヴォーカルは少し線が細いんですが、オリジナルを中心にした選曲は意欲的で、バンドの息もよく合っています。またゲストで歌うミッチ・カーシュマーのヴォーカルはなかなか端正で好感が持てました。派手さはないけれど聴き所の多いアルバムです。



Miles Davis ; Bitches Brew ; COLUMBIA/LEGACY C2K 65774 (2004. 2. 1)

1970年リリース。ボーナストラック入りです。ウェイン・ショーター、ジョー・ザヴィヌル、チック・コリアといった名うてのミュージシャンを従え、強烈なインスピレイションの元に作ったアルバムです。あまりに前衛的なインタープレイが続くので、何だか頭が痛くなってきたりもするんですが、マイルスのペットが鳴り響くと、突然空気がピリッと引き締まり、視界が一気に開けるように感じるのは錯覚でしょうか。何度か聴いたアルバムで、自分の好みの音楽じゃないなと思いながら、時々マイルスによるこの覚醒感を味わいたくなっちゃうんです。不思議なもんです。



Miles Davis ; On The Corner ; SONY SICP 845 (2007. 2.16)

1972年リリース。天才マイルスが生み出した、ジャズファンクの最高傑作と言っていいでしょう。ソプラノ・サックスがうなり、ジョン・マクラフリンのワウギターがうなり、隙間だらけのマイケル・ヘンダーソンのベースもうなり、ハービー・ハンコックにチック・コリアといういずれも才能溢れるキーボード・プレイヤーがローズを叩き、ドラム・パーカッションがアフリカ回帰のリズムを叩き、でもそうしたサウンドを切り裂くように、マイルスのトランペットが入ってくるとサウンドがガツンと締まるから凄いなぁ。理屈より肉体に直接響くサウンド、単純なリズムなのに自在に楽器を絡ませてグルーヴを紡ぎ出していくセンス、でっかい音で聴いてると次第にトランス状態に入っていきます。気持ち良すぎ。



Louis Armstrong & The Mills Brothers ; Greatest Hits ; 47 157652 (2008. 2.20)

1932〜1940年の、ミルズ・ブラザーズを中心にしたコンピで、前半はルイ・アームストロングとのコラボ作品集です。「スワニー・リヴァー」のような超有名曲も味があるんですが、スリム&スラムの「フラット・フット・フルージー」を洒落たコーラスワークでやるのが素敵です。こうした曲でもルイの存在感は抜群ですし。デューク・エリントンやキャブ・キャロウェイとの共演作を挟み、後半はミルズ単独作品集。「タイガー・ラグ」や「セントルイス・ブルース」などスタンダードも面白かったですが、歌詞の言葉遊びも楽しい「ナガサキ」や、口で管楽器を奏でるアンサンブルの「キャラバン」「スターダスト」あたりに、その名人芸を聴くことができます。



Milt Buckner ; 1946-1951 ; CLASSICS 5032 (2002.11.30)

バックナーは「ハンプス・ブギウギ」を初めとするライオネル・ハンプトン楽団の全盛期を支えたピアニストで、自己名義のコンボやオーケストラにより残された録音集です。非常に活きのいい、よく弾けるピアノと、ドライヴ感のあるバンドは、聴いていて身体が動き出しました。よく転がる右手が音に明るさを与え、楽しい印象です。バップ風味の曲もあるんですが、やはり基本はジャンプ。1949年の録音はビッグバンドでゴージャス。時代が下るにつれどんどんビートが強くなるのは時代の要請でしょうか。ラストの「スロー・ロック」なんてタイトル通り、確かにスローなんですが凄い躍動感があるんです。



Mississippi Heat ; Glad You're Mine ; CROSSCUT CCD 11085 (2005.12.10)

2005年リリース。先日DELMARKのライヴ盤も出ましたが、こちらはスタジオ作です。まず1曲目のギターに耳を奪われました。きらびやかで、エモーショナルなサウンド、これはと思ったらやはりカール・ウェザーズビーですね。見事なリードギターなので、彼のファンも必聴だと思います。サウンドはいつもの通りピエーレの重厚なハーモニカに、アイネッタの落ち着いたヴォーカルなんですが、ライヴに比べてサウンドが良く練り込まれており、いい意味でまとまりのある演奏が並んでいます。その分熱気は不足気味かもしれませんが、作品の完成度が高いんで、心地良く聴くことができます。タイトル曲は明るさのあるソウルナンバーで、なかなかポップな仕上がり。「アイム・ア・ウーマン」はもちろん「アイム・ア・マン」に対するリーバー/ストーラーの書いたアンサーソングですが、この重厚な歌はこのアルバムのハイライトでしょう。CROSSCUT、いい仕事しますねぇ。



Mississippi Heat ; One Eye Open ; DELMARK DE-783 (2005.11.24)

2005年7月18日、シカゴはローザズ・ラウンジで行われたライヴです。イスラエル生まれのハーピスト、ピエーレ・ラコッケをリーダーとするバンドは、シカゴスタイルに根差しながらも、冒頭のクロマチック・ハープのインストなどから、どこかヨーロッパ的な哀愁も感じさせます。メイン・ヴォーカルはアイネッタ・ヴァイサーという女性で、ビッグ・ママ・ソーントンをさらに低音にしたようなドスの効いた声の持ち主。なかなか堂に入った歌を聴かせます。アレサの「ロック・ステディ」なんてはまってますね。でもこのアルバムで一番光っているのはゲストのルリー・ベルかも知れません。抑制の効いた的確なギターでバンドをサポートしつつ、キラリと光るソロを聴かせます。2曲でヴォーカルを取りますが、落ち着いた渋い歌です。ピエーレのハーモニカは例えば「オネスト・アイ・ドゥー」では正統派のファースト・ポジションを響かせ、「ジューキン」では見事な技を聴かせますが、コンポーザー、あるいはバンドリーダーとして、がっちりサウンドをまとめあげているのが一番の魅力ですね。それが深みのある低音を多用したハーププレイに現れていると思います。気に入りました。しかしこの3日間で聴いたアルバムはすべてライヴですが、収録が見事に3連チャン!こんな偶然もあるんですね。



Mississippi John Hurt with Richard "Rabbit" Brown & Hambone Willie Newbern ; King Of The Blues 4 ; P-VINE PCD-2259 (2008.11. 3)

1927〜29年の録音です。久々に引っ張り出して聴きました。ミシシッピ・ジョン・ハートの戦前録音は多分これで全部のはずです。一時「癒し系」としてちょっとブームになりましたけど、確かに高音を使った軽やかなギターと、さらっとしたヴォーカルは、デルタ・ブルースマンなどに比べると聴きやすいです。曲もブルースの他伝承歌などもあり、ソングスタ的な存在だったのではと思います。でも必ずしも歌詞は「癒し系」じゃなくって、「キャンディ・マン」なんて結構もろなダブル・ミーニングだったりします。ラビット・ブラウンはニューオーリンズの人で、ブルースというよりはもっとポップな響きの曲が多く、歌い方もやや大仰な感じです。ギターの鳴らし方にもジャカジャカしててかなり特徴があります。そしてハンボーン・ウィリー・ニューバーン、「ロール&タンブル・ブルース」で有名ですが、曲によってはやっぱりプリ・ブルース的なバラッドが入っていて、メディシン・ショウなどでの芸歴が見えるようです。




The Mississippi Marvel ; The World Must Never Know! ; BROKE & HUNGRY BH13005 (2008. 9.22)

2007年秋の録音。このセントルイスのレーベルはあっと驚くようなブルースマンを発掘してくるんですけど、この人もそのひとり。冒頭の「ラウンドローマット・ブルース」のアコースティック弾き語りの、低音弦の響かせ方がまず強烈で、ボロンボロンと爪弾きながらディープ以外の表現の見つからない声で、ブルースを唸ります。続く「フォーティフォー・ブルース」ではエレキに持ち替えドラムを入れた演奏ですが、こちらは高音のうわずったような声で歌うのにゾクッとしました。「キャットフィッシュ・ブルース」のディープでダーティな雰囲気は、ちょっと他では聴けませんね。ミシシッピのスタイルですが、ライトニンの影響も感じられ、世代的にはそんなに上じゃないのかなとも思いましたが78にして初のデビュー作とのこと。顔も分からないジャケット、想像力だけがたくましくなります。




Mitch Karshmar ; Live At Labatt ; DELTA GROOVE DGPCD128 (2009. 1.25)

2007年カナダでのライヴです。ミッチはマニッシュ・ボーイズなどでその腕前を知られた人で、最近はウォーにも参加しているようです。その彼のライヴは実にウエストコーストなブルースに溢れています。個人的には現在のブルース・シーンはウエスト・コーストが一番こなれているんじゃないかと思っているんですが、ミッチを初め白人が多いせいかちょっと敬遠されてるかもしれません。でも50年代シカゴのダウンホームな雰囲気を、上手く今に蘇らせているのはむしろ西海岸のこうしたブルースマン達だと思うんです。「ダーティ・ディール」「シューガー・スウィート」「ユーア・ザ・ワン」など、往年のシカゴに通じるサウンドで心地良いです。一方「イーヴィル・マン・ブルース」のようなファンキーなものからロイ・ブラウンの「ロリポップ・ママ」、アル・シアーズの「キャッスル・ロック」と多彩。楽しめるライヴです。




Mitch Kashmar & The Pontiax ; 100 Miles To Go ; DELTA GROOVE DGPCD140 (2010. 9.13)

2010年リリースですがボーナストラック以外は1988年録音ようです。。オリジナルを主体としたブルース・アルバムです。タイトル曲のテキサス・マナーのシャープな演奏がまず耳を引きました。アンプリファイドなハーモニカも、奇をてらうようなテクニックはないですが、深い音作りで心地良いです。特に「ホーン・オヴ・プレンティ」ではウィリアム・クラークとのダブル・ハープを聴くことができますが、この楽器の持つ魅力を見事に引き出した名演だと思います。ボーナス・トラックの「ザ・ペトロリアム・ブルース」ではセカンドラインに乗った作りですが、ひょっとしたら原油流出事故を歌ってるのかもしれませんね。




Mitty Collier ; Shade Of Mitty Collier - The CHESS Singles 1961-1968 ; KENT CDKEND 301 (2008.10.10)

「シェアリング・ユー」やリトル・ジョニー・テイラーへのアンサー・ソング「アイム・ユア・パート・タイム・ラヴ」などのヒットを残したミッティの全盛期CHESSのシングル集です。ちょこっとハスキーな声で、バンドの演奏はちょうどリトル・ミルトンのCHESS時代に似た感じです。でもなんだかだんだんブルースっぽくなるなぁと思って聴いていたら、実はこのコンピ、新しい方から順に並べてあったんです。なんだか不思議な感じでした。レオナード・キャストン(ビッグ・スリー・トリオの人ですよね)の曲を多く取り上げるほか、レイ・チャールズの「アインと・ザット・ラヴ」やリトル・ウォルターの「マイ・ベイブ」など、初期にいくほどカヴァー曲をアレンジしてやってる印象が強いです。でもやや低めでハスキーだけど張りのあるこの声、なんだか癖になりそうです。




Mojo House ; Pork ; NIHONBARE JCUR-072 (2008. 8.21)

2001年リリース。先日北浦和で生を見たときはふたりでロケンロールしてましたけど、ここではぐっとフォークやジャグバンド的なサウンドです。「ドゥー・ドゥー・ドゥー」シンちゃんの結構インパクトのある声と、ユウちゃんのフィドルが実によくマッチしています。北海道やお酒など日常を歌うシンちゃんの詞は、ちょっと鬼頭つぐるに似た世界だなと思ったら、マッシーさんやムーニーさんとともにつぐるちゃんもゲストに入ってました。暖かさのあるサウンドが素敵なアルバムです。




Mongo Santamaria ; Greatest Hits ; SME SRCS 9614 (2004. 7. 5)

1964〜69年録音。FM番組の挿入歌で使われていた「ウォーターメロン・マン」を聴きたくて買ったんですが、なかなか楽しめました。キューバンな味付けが「コールド・スウェット」のファンクネスは、JBのものよりある種開放的な感じがしますし、全体にアタックの強く、ファンクの度合いが強いパーカッションとベースのコンビネーションが強力で、ハービー・マンあたりのアフロ・キューバン・ジャズをぐっと低重心にしたよう。それが適度なポップ感覚に繋がっていて時代にマッチしていたんじゃないでしょうか。結構スライ・ストーンあたりに影響を与えたのではと思います。



Big Chief Monk Boudreaux ; Mr. Stranger Man ; SHANACHIE SH 5749 (2003. 4.20)

モンク2003年の新作は、予想通りアンダース・オズボーンのプロデュースで、豪華絢爛なゲストを招いたヴァラエティ豊かな作品となりました。冒頭のチャントにドクター・ジョンのキーボードが絡むのをはじめ、タブ・べノア、ジョン・グロス、山岸潤史、シリル・ネヴィルからはてはトランペットにリロイ・ジョーンズまで参加してます。曲もレゲエを2曲やったりとチャントばかりでなく意欲的で、いろんな味付けのまさにガンボ状態となっています。そのため玉手箱のような面白さがあり、飽きずに聴き通しましたが、モンクの歌自体がちょっと弱く感じたのと、ボー・ドリスにある粘り気が少し足りないかななんて思っちゃいました。アンダースのアルバムの方がチャントの迫力があったような気がするんですが。もっとトリップ感のあるプリミティヴなごり押しリズム重視の曲が欲しいな。



Big Chief Monk Boudreaux feat. Reverend Goat Carson ; Rising Sun ; F.BOO MUSIC FBCD-10007 (2009. 8.25)

2009年リリース。モンク大酋長がジョン・リジと組んだらどんな音が出るのかと期待して聴きましたが、切れのいいギターをバックにしたチャントはやはり一味も二味も違うものになりました。ボー・ドリスと比べやや歌唱力に難がある感じなんですが、バンドのサウンドがシャープで、しかもそこここにポップな要素もちりばめてあるのでかなり聴きやすいです。「ダンス・ウィズ・ミー」はもろに「マルディ・グラ・イン・ニューオーリンズ」ですね。レゲエな「ライジング・サン」、ロック的なサウンドの「ワンバン・メディシン・マン」や「ヘイ・ママ」、アフロ・アコースティックな「ザ・プロミス」など、実験的な感じさえするサウンドが意外なほどはまっています。




The Monkees ; The Definitive Monkees ; WEA/EAST WEST JAPAN AMCY-6247 (2005.10.13)

1966〜1987年録音。モンキーズがアイドルバンドとして作られたものであることは知っていましたが、「テーマ」を初め初期のレパートリーがミッキー・ドレンツの歌を除くとジェリー・マギーのギターなど完全なゴーストだったって事は今回初めて知りました。メンバーが録音し出す1967年の作品になると音がとたんにシンプルになるのが笑えます。それでも「ワード」はディヴィー・ジョーンズを含め4人とも参加しています。これが「デイ・ドリーム・ビリーヴァー」あたりになるとアンサンブルをゴージャスにし、初期のビートルズもどきから音が変わっていますが、曲の良さで大ヒットになったわけですね。バンドはどんどんブラスロックの影響を受け、「リッスン・トゥ・ザ・バンド」などそれなりのカラーを出していきますが、この頃になるとモンキーズというバンドとしての必然性がなくなっていたわけです。しかし曲はキャロル・キングやニール・ダイアモンドなどいいところが提供してるんですよ。アメリカのショウビズの実像を照らし出してますね。耳触りの良い音楽をバックに読むライナーが面白かったです。



The Flamingos Meet The Moonglows ; On The Dusty Road Of Hits ; VEE-JAY/FUNHOUSE 30YD-1059 (2009. 2.22)

1953〜54年、両グループがCHANCEに残した録音をまとめたものです。まず印象としては、ドゥーワップとしてはぐっとR&B色が強いということ。コーラスもグルーヴ感の強いリズムが打ち出されています。もちろん「セプテンバー・ソング」などのバラッドでは甘さも出ていますが、もっとポップかなと思っていたので嬉しい誤算でした。どちらかというとムーングロウズの方がよりR&B的に感じましたが、バックのサウンドとヴォーカルの声質の違いからでしょうか。




Mooney & His Lucky Rhythm ; Hey Good Rockin' ; NIHONBARE JCUR 085 (2007. 6.17)

2007年リリース。ブルース、ジャンプ、ウエスタン・スウィング、ロカビリーなどを消化したムーニーさんらしい選曲のご機嫌なアルバムです。特に管野さんのドライヴ感たっぷりなベースと、ちょっとオールドタイミーな雰囲気のホーンが絡む曲などは、普段の弾き語りのムーニーさんと一味も二味も違うノリが出ていて楽しいです。ヤンシー作のマリアッチ風「その男」あたりはご愛敬かしら。続く「ガンバルンバ」もそうですけど、ラテン系をやってもなりきらないのが個性というか。ジャンルにとらわれないごった煮のような音楽をやるのが多分このアルバムのコンセプトなので、自分の気に入ったおいしいところをつまみ食いするんでいいのかもしれませんね。メニュー豊富な大衆食堂って感じです。ただ音作りはどうなのかな。低音の響きが今風と言うか無機質な感じで、暖かみが薄れているように感じられたのがちょっと残念でした。



Mooney & Keni with Lucky Rhythm ; Hoagy's Back ; AIRPLANE AP1037 (2009. 6.29)

2009年リリース。ムーニーのトリビュート3部作の最後は、ホーギー・カーマイケル集です。「レイジー・ボーンズ」「ジョージア・オン・マイ・マインド」などライヴでも取り上げる曲を、あの独特の投げやりな調子で歌うのは、彼のスタイルそのものである意味安心して聴くことが出来ました。でもラッキー・リズムがバックをつけてくると、どうもドラムを中心とした音作りのブライトで残響の強さに違和感を感じてしまうんです。ムーニーの枯れた味わいとマッチしてないように思うんですよね。もっとジャグっぽい曲ならいいかもしれませんが。それよりケニー井上のギター、そして「スターダスト」で聴かれる歌、これが素晴らしかった!




Moti-Bacorns ; もちべーこんず ; RENO RENO-M003 (2009.11. 9)

2009年リリース。このユニットは札幌で活動しているんですが、横浜でライヴをしたので聴きに行って買いました。エビさんのファンクネスを感じさせるアコースティック・ギターに、カナデさんが伸びやかに唄う日本語の歌が絶妙にマッチしています。曲によってはライヴもに来ていたイデタさんのカホンやドラムと、サッポロ・ファンク・オーガニゼイション等で活躍しているキーボードのファンキー・ハズさんとベースの卍さんも参加、サウンドに厚みが加わっています。曲もお洒落でソウルやジャズを消化した高い音楽性を感じました。ローカルシーンにはこうした素晴らしいアーティストがたくさんいるんですね。要注目です。




Motor City Josh ; Going To The Country ; NO COVER NCP009 (2003. 7.15)

1998年リリース。盤はCD-Rでしたが内容は最高級です。ジャーシュは本当に引き出しの多い人で、このアルバムでもフレディ、アルバート、B.B.の3大キングを巧妙に引用しながら、それを自分のブルースの中に上手く織り込んでいきます。わざと元が分かるようにしているのがミソで、思わずほくそ笑む部分がたくさんありました。カントリーやらヒルビリーやらも引用する多彩さもあり、まったく飽きさせません。お約束のバス釣りの歌もちゃんと入っているし、これは聴くしかないでしょう!



Motor City Josh ; Acousticly Sound 1995-2001 ; NO COVER NCP 021 (2003. 4. 6)

ジョッシュのアコースティック・ブルース集です。シカゴ・ブルースの有名曲を中心に、時にはスライドを織り交ぜながら、オリジナリティ溢れるプレイを聴かせます。すのギターテクニックも素晴らしいんですが、この人、歌がいいんです。ジャケを見ると気のいい白人青年て感じですが、結構ディープなフィーリングを湛えていて、表情も豊かです。終盤にはお得意の「ノー・フィッシュ」を楽しく決めるなど、全編心地好く聴くことのできる1枚。しかしこの人本当に釣りが好きなんですね。



Motor City Josh & The Big 3 ; Live In Atlanta ; NO COVER NCP015 (2003. 3.15)

2000年12月のライヴです。まずジョッシュのギターがすごいです。特に後半の「"バックル・アップ" イッツ・ザ・ロウ」というインスト、ちょっと「ジェフズ・ブギ」を思わせるロッキンナンバーですが、結構ファットな音作りなのに一音一音がしっかり粒立っているんです。こう言うのを本当に上手いギターって言うんじゃないかなって思いました。「リトル・フーチー・ママ」ではちゃっかり「ストローリン・ウィズ・ボーンズ」のイントロをパクってるし。また「サムワン・エルス・ビーン・ゲッティン・ザット・クール・サング」なんてファンクナンバーでも、きっちりしたギターがかえってファンクネスを感じます。スライドもいい感じでプレイしてますし、ギタリストにはお薦めのアルバムです。笑ってしまったのは「キャットフィッシュ・ブルース」でえらい長尺なんですが、いつのまにかファンクになっちゃうんです。それもP-ファンク!さすがデトロイト出身なんて妙な感心をしてしまいました。一方カントリーフレイヴァを感じるサザンロックナンバーでは、まるでディッキー・ベッツみたいなギターも聴かせます。さすがアトランタでのライヴです。とにかく全編面白すぎてたまりませんでした。



Motor City Josh & The big Three ; Let's Party Tonight ; NO COVER NCP025 (2003. 7. 9)

2002年3月デトロイトでのライヴに2曲アトランタでのライヴが加えてあります。とにかくジャーシュ(と発音するんだそうです)のギターは確かな腕前な上に、曲の構成が面白くてたまりません。1曲目のジャングルビートのタイトル曲、突然「テキーラ」のテーマが出たり、テッド・ニュージェントを思わせるフレーズからサザンロック風ツインギターにドゥービーかと思うカッティング!本当に何でもありです。気持ち良いたたみかけのギターはブルースともなると時としてアルバート・コリンズを引用してますし、「レガライズ・イット」なんてレゲエでは「ジェシカ」が出てきたかと思うと「ノルウェーの森」でエンディングだし。この下世話とも言えるアイディア、本当に退屈しません。歌も渋いジャーシュ他数人で歌い回していますが、どれもしっかりしていますし、全編退屈なしの1枚!



Motor City Josh & The Big 3 ; Live From The Road ; BULLETPROOF TELE MUSIC no number (2003.10. 7)

2003年リリース。ジョージアはコロンバスでのライヴです。ジャーシュのライヴは以前も紹介しましたが、曲目もかなり重複し、基本的なコンセプトは同じです。相変わらずの的確なテクニックとセンスの良い「引用」で、スタッフからビートルズまで何でもありですね。前のライヴより冗長な曲が減った分聴きやすいんですが、熱さはちょっと劣るかしら。でも相変わらずの選曲のセンスとか、一度虜になると抜けられないギターサウンドとか、とにかくこの人から目が離せません。これだけある意味かっちり弾いていて、しかもフィーリングを感じる人って、他に思い浮かばないんです。



Motor City Josh ; Blue Collar Blues Man ; NO COVER NCP052 (2004. 7.23)

2004年リリース。ジョージアからシカゴに移住したジョッシュの新作です。4人編成のタイトなバンドになり、「アイ・ワズ・ボーン・トゥ・プレイ・ザ・ブルース」では、キングとコリンズという彼が影響を受けた両アルバートに、オールマン・ブラザーズのテイストを加えたギタースタイルを存分に披露しています。かっこいいなぁ。ブルースだけでなくいつもの通りファンクあり、ジミ・ヘンドリクスのリックをちょこっとパクったりと味付けも格好良く、その構成力にはいつも脱帽です。「ブルー・カラー・ブルース・マン」はカントリータッチの曲で、達者なフィンガーピッキングも冴えてますし、「アイム・ゴーイング・アウェイ」などではスライドも披露、河岸を変えてもスタイルは変りません。ヴォーカルがちょっと渋すぎる感じがするのは気のせいかしらね。



Motor City Josh & The Big 3 ; Made In Detroit ; NO COVER NCP075 (2006. 5.22)

2005年リリースの新譜です。本人のサイトから購入。ジョッシュ、太りましたねぇ。そのせいか、ちょっと声の伸びが落ちたように思います。それとも飲みすぎて喉がつぶれたのかな。でもギターは相変わらず御機嫌で、いきなりの伸びやかなスライドによるハイテンポな「ローリン&タンブリン」から活きのいいプレイが飛び出します。ファンキーなチューンの合間に、T-ボーンの「コールド・コールド・フィーリング」では長尺のスローブルースをぐっと聴かせますし、アコースティックな曲も随所にちりばめられていて、変化に富んでます。「ATL・ファミリー」はアトランタ縁の歌の歌詞をつないでみたり、「ヴードゥー・チャイル・スライト・ヒルビリー」なんてタイトル通りで笑っちゃいます。お得意のアルバート・コリンズ節も出ますし、遊びのフレーズも随所にあり、並のギタープレイヤーじゃないことを嫌というほど思い知らされます。やっぱりこの人は生のショーを見たいですね。



Motor City Josh ; Forty For - A Tribute To Howlin' Wolf ; FORD MUSIC no number (2009. 2. 3)

クレジットはないけど多分2008年の新譜だと思います。ジョッシュの声は割合ダミ声で、ウルフのトリビュートにはうってつけかもしれません。ロック的な解釈を施した曲もありますけど、ウルフの原曲の良さをよく生かしながら、ジョッシュの巧みなギターの技も随所に織り込まれていて、聴き所の多いアルバムです。「44」から「ゴーイン・ダウン・スロー」まで、ウルフが愛した曲13曲をジョッシュが蘇らせています。入手しづらいアルバムですが探してみてください。




Motor City Josh & The Big 3 ; Covered Up ; COOK no number (2009. 1.31)

プロモーション専用の非売品なんて書いてありますが、しっかり売ってました。ジョッシュは何枚かライヴを出していますが、デトロイトを出てジョージアに移ってからの演奏だと思います。「ボーン・アンダー・ア・バッド・サイン」から始まり、途中「ジェシカ」の見事なカヴァーとか、軽快に乗る「ハニー・ハッシュ」を挟んで、出てきた曲は「ザ・リトル・ドラマー・ボーイ」。アナウンスなどからしてもクリスマス頃の演奏のようです。粘っこいジョッシュとよりさらっとしたサウンドのジョニー・ローズのギターのコントラスト、オールマン・ブラザーズを思わせました。来日して欲しい人です。




Mountain Mocha Kilimanjaro ; Mountain Mocha Kilimanjaro ; P-VINE PCD-22313 (2008. 6.16)

2008年リリース。僕の大好きなコーヒーの名前が並んでるバンドですが、最初聴いた瞬間、まあ見事なミーターズのカヴァー・バンドだと思いました。特にギターの音がレオ・ノセンテリそっくりなんですよ。でもすべての曲がミーターズ・マナーって訳じゃなく、ブラスの入った曲はもう少しテキサスとか西海岸の香りを感じました。ただそこまでB級になりきれていないのが、言ってみれば音楽エリートと思われる日本人トップ・ミュージシャンの宿命なんでしょうね。隈雑さがないんです。だから上手いなぁとは思うし、気持ちもいいんですけど、ぐっとは来ないんですよね。その辺が染みついたものとそうでないものの違いかもしれません。



Mr. Big ; Big, Bigger, Biggest: The Best Of Mr. Big ; ATLANTIC amcy 2020 (2010. 1.15)

1989〜1996年に発売された作品からのベストです。このロックバンドはハードでメタリックなんですけど、けっこうポップでメロディアスな面もあり、割合好きです。特にエリック・マーティンの抜けのいいハイトーンのヴォーカルは、意外と耳につかず心地良さがあります。またアコースティック・サウンドの使い方の上手さはボストンなんてバンドを思い出させました。そんな中でも特に魅力的な曲は、「ジャスト・テイク・マイ・ハンド」や「トゥ・ビ・ウィズ・ユー」といった、アコースティックとコーラスワークを生かしたポップ・チューンです。やっぱりオヤジ趣味なのかな。




Mr. Oh Yeah & Hooker ; Call Me Oh Yeah!! ; SIMONS SRCD 0103 (2008. 9. 5)

2008年リリース。あちこちのショップで大プッシュしていたので聴いてみました。ゲストにビリー・ブランチ、シャーリー・キング、菊田俊介、塩次伸二、石川二三夫、KOTEZなどそうそうたるメンバーが参加、また英語でオリジナルのブルースを歌うのが注目されているようです。で、聴いてみたわけですが、上手いなぁとは思いましたが、なんだかピンと来ないんですよね。ギターも弾くんですが特に存在感は感じませんでしたし、歌もややわざとらしく、変にがなりたてる感じで、もっと素直に歌ったほうがいいんじゃないかと思いました、またゲスト参加曲もシカゴの自宅録音などは音質が悪く、なんだかセッションの隠し録りみたい。もっときちんとプロデュースしたらずっと良いものガできるんじゃないでしょうか。




Muddy Waters ; Muddy Waters At Newport ; CHESS/MCA CHD-31269 Click Here!

Muddy Waters ; Folk Singer ; CHESS/MCA CHD-12027 (2001. 2.22)

第2期?フォークブームたけなわの1963年録音。LPで持っていたものをCD化しました。アコースティック・ギターを抱え、白人向けにいかにも演出した演奏をしています。プロデュースはウィリー・ディクソン。自身がベースも弾いていますが、「売ってやろう」という意図をはっきり感じます。マディの歌は大仰で、かなりわざとらしく感じます。でもバックでギター(アコースティック)をバディ・ガイが弾いているんですが、凄くオーソドックスかつ的確なプレイで、初めて聴いたときには凄く意外な感じがしました。先入観て恐ろしい。ボーナストラックに、1964年録音のシングル曲が5曲入っていますが、こちらは自然にマディ節を唸っています。J. T. ブラウンのクラリネットが野趣溢れていて面白い効果を上げていました。



Muddy Waters ; Electric Mud ; CHESS/MCA/UNIVERSAL UICY-3201 (2003. 9.24)

1968年リリースの問題作です。マーシャル・チェスがマディにサイケデリックな粉をまぶして揚げてみましたって作品で、当時の若者向けにマディを「リメイク」して売っていこうという意欲が思いっ切りあらわれていて、そうした意味で歴史的かつユニークな作品になっています。サウンド的には、ちょっとファンクネスを感じる瞬間のある、ザラッとしたロック調のリズムをバックに、ステレオで左右に飛び交うフィル・アップチャーチらの、ファズのたっぷりかかったギターの隙間を縫って、マディの野太い声が相変わらずの存在感を示してるといった感じで、当時にしては大変新鮮だったんでしょう。今聴くと、やはりマディのアルバムとしてはかなり「異色」ですが、ブルースの転換期を象徴する作品のように思えました。「フーチー・クーチー・マン」「マニッシュ・ボーイ」などの、ドロッとした3連系の曲をエイトビートに直すあたりが、その後のファンクブルースのアプローチに繋がっていったのかな?



Muddy Waters ; Live / Fillmore Auditorium San Francisco 11/04-06/1966 GEFFEN/CHESS B0012650-02 (2009. 4.28)

2009年リリースでおそらく発掘ものでしょう。ジョージ・スミスのハープ、ルーサー・ジョンソンにサミー・ロウホーンのギター、フランシス・クレイのドラムと当時のマディのツアーバンドによる演奏は、とても熱くて気合いを感じます。別の日のセットをそのまま収録しているようで、「40デイズ&40ナイツ」「フーチー・クーチー・マン」など重複する曲もありますが、それぞれ表情が微妙に異なっていて面白いです。しかしマディのギターの音がえぐいなぁ。さすが御大の存在感は抜群です。でも「公認のブートレグ」って何でしょね。




Muddy Waters ; After The Rain ; CHESS/UNIVERSAL UICY-93294 (2007. 9. 2)

1969年録音でオリジナル・アルバムはマーシャル・チェスのCADET CONCEPTからリリース。問題作「Electric Mud」の続編にあたり、メンバーもフィル・アップチャーチやチャールズ・ステップニーと同じような面々です。でもサウンド的にはこちらの方がずっとサイケデリック色が薄くブルース寄り。むしろファンクからの洗礼を強く受けていて、これが今の段階でCDになるのは自然の成り行きに思えます。お得意の「ローリン&タンブリン」など、FAT POSSUM一派のサウンドに通じるギトギト感があって、決して古びていないのが凄いなぁ。そしてマディの歌の存在感、改めて再確認です。



Muddy Waters ; Fathers And Sons ; CHESS/MCA 088 112 648-2 (2010. 1.10)

1969年録音で、同年のライヴ音源がボーナスでついています。タイトルの由来は参加ミュージシャンで、マイケル・ブルームフィールド、ポール・バターフィールド、ドナルド・ダック・ダンなど白人ミュージシャンが参加、マディの音楽に対する敬愛溢れるサポートをしているからです。比較的オーソドックスなブルース・フォーマットの、それもややモダンなタイプの曲が多く選ばれているのも、こうしたメンバーとの親和性からでしょうか。演奏はオーティス・スパンが要所を締めていることもあって、よく言えば落ち着いた、悪く言えば冒険のないものになっています。一方ライヴはかなり多くの観客がいた大きな会場のもののようで、伸びやかなマディのギターが前面に押し出されています。




Muddy Waters ; The London Muddy Waters Sessions ; MCA/CHESS CHD-9298 (2000. 3. 3)

1971年にロリー・ギャラガーなどと録音。中古で購入。僕、これは苦手です。特にホーンのアレンジとキーボードの絡みがついていけない世界になってます。マディの歌もいつになく軽い感じだし。ギターは結構えぐく弾いてますが。唯一の救いがキャリー・ベルのクロマティック・ハープかな。これはがんばってますよ。ロリーは魅力が全然出てないように思えます。


Muddy Waters ; Hard Again ; BLUE SKY ZK 34449 (2000. 4.11)

1977年リリースの、ジョニー・ウィンターがプロデュースした BLUE SKY 第1弾。3枚セットで安かったので購入。バックはジョニーの他、ジェームズ・コットン、ボブ・マーゴリン、パイントップ・パーキンスなど、達者なメンバーが務めています。マディの伝記ではこの録音は好意的に記されていました。マディに対するメンバーの愛情は感じます。でも CHESS 時代と比較するのはやはり酷です。肌合いが違います。新しい試みがあるわけでもないですし。その中で、ジョニー・ウィンターが自分らしさを出しているのがむしろ面白いです。「アイ・キャント・ビ・サティスファイド」のリゾネィターはジョニーだと思いますが、明らかにマディとは違うスタイルで、ジョニーらしさを感じました。


Muddy Waters ; I'm Ready ; BLUE SKY ZK 34928 (2000. 4.12)

1978年リリースの BLUE SKY 第2弾。プロデュースはジョニー・ウィンター。前作に比べてぎらついた感じが少なく、音に落ち着きが出ています。バックにジミー・ロジャーズが入ったのが大きいのかな。ウォルター・ホートンのハープも前作のコットンに比べていぶし銀の渋さを醸し出しています。ジェリー・ポートノイのツイン・ハープも面白いし。楽に聴けました。でもその分「売り」が少ないかな。ジャケットのイラストのマディはかわいい!


Muddy Waters ; Muddy "Mississippi" Waters Live ; BLUE SKY/SONY SRCS 6344 (2002. 7. 2)

1979年録音のライヴで、当時マディをサポートしていたジョニー・ウィンターの参加している曲もあります。バックはボブ・マーゴリン、ジェリー・ポートノイなど当時のマディ・バンドが主で、ジェィムズ・コットン参加曲もあります。これは出た当時に聴いたんですが、改めて聴くと、けっこうマディのスライドがえぐいんですよ。これだけアグレッシヴなギターを弾くマディも珍しい。マディのバックでのジョニー・ウィンターは控えめで、あまり弾きすぎません。とにかく御大の存在感の目立つアルバムで、なかなかの佳作だと思います。



Muddy Waters ; Muddy "Mississippi" Waters Live ; SONY MHCP 114-5 (2003.12.22)

以前紹介済みのアルバムですが、このたび同時期の未発表音源とセットで2枚組で再発されました。その未発表ライヴはオリジナルにも一部収録されていた1978年イリノイ州はケイリーでのもので、当時のレギュラーバンドをバックに、ゆったりとマイペースのライヴをやっている様子が伝わります。まずパイントップ・パーキンスの「アフター・アワーズ」から、語りの後おもむろに始まる「ストーミー・マンディ」が貴重です。他ではなかなか聴けない味のある歌です。その他「コリーナ・コリーナ」をやったり、パイントップが「カンザス・シティ」を歌い、「パイントップ・ブギウギ」を奏で、さらにルーサー・ジョンソンが「ギター・ジュニア!」と紹介されて「エヴリシングズ・ゴナ・ビ・オーライト」を歌ったりと、ふだんのステージを見事に捉えていて、僕は既発の1枚目より楽しめました。音質もいいし買って損なしですね。



Muddy Waters ; King Bee ; BLUE SKY ZK 37064 (2000. 4.14)

1981年リリースの BLUE SKY 第3弾。このプロデュースもジョニー・ウィンター。スリム・ハーポの曲から始まるのがちょっと意外でした。バックは当時のマディのレギュラー・バンド(来日メンバーとほぼ同じだったと思います)に、ジョニーが加わっています。この作品では再度ジョニーのギターが活躍していますが、音は落ち着いていますし、全体的に見て、一番リラックスした演奏です。ひょっとしてマディ最後のスタジオ録音だったかもしれません。


Muddy Waters Chicago Blues Band ; The Bluesmen Of The Muddy Waters Chicago Blues Band ; P-VINE PCD-93206 (2009. 1.21)

1966年ヴィクトリア・スピヴィのレーベルから出されたものに2曲加えたもの。メンバーは当時のマディ・バンドで、オーティス・スパン、サミー・ローホーン、ジョージ・スミス、ルーサー・スネークボーイ・ジョンソン、フランシス・クレイといったそうそうたる面々。スピヴィーの歌も交え、メンバーが交互に歌っているセッションといった感じです。若干ギターのチューニングが甘かったりしますが、スパンがオルガンを弾きながら歌う「ユー・ダーン・ロスト・ユア・グッド・シング・ナウ」などはエモーショナルでぐっと来ました。スピヴィの歌はさすがの貫禄。上手いですねぇ。




Muddy Waters Chicago Blues Band ; The Bluesmen Of The Muddy Waters Chicago Blues Band Vol.2 ; P-VINE PCD-93209 (2009. 2.21)

1968年のアルバムにボーナスを4曲加えたものです。前作と同様極めてセッション的なアルバムで、冒頭のインストからオーティス・スパン、サミー・ローホーン、ルーサー・ジョンソン、ピー・ウィー・マディソン等が交互にヴォーカルを取って演奏を続けていく様子を収録したんじゃないかなって感じです。計算された演奏というより、出たとこ勝負のサウンドだと思うんですが、流石当代一のブルースバンドだけあって、バッチリまとまっちゃうのが凄いですね。ピー・ウィー・マディソンの初ヴォーカル録音とされているリトル・ウォルターの「ラスト・ナイト」がぐっと来ました。びっくりなのは「ファンキー・ブロードウェイ」。ベースのリトル・サニー・ウィンブレイが歌うんですが、演奏がどことなくドタバタしているあたりがさすがブルースバンドでしょうか。




Mighty Joe Young ; Mighty Joe Young ; Ovation/Blind Pig BPCD 5073 (2002.10.22)

1974〜76年にリリースされた2枚のアルバムからの編集盤で、多分LPとしては1980年代初めに出たんじゃないかな?確かじゃないですけどこのある意味妙ちきりんなジャケットは見覚えがあります。マイティ・ジョー・ヤングはDELMARKのマジック・サムのサイドギタリストとして有名で、自身のリーダー作もありますが、彼自身の最高傑作は60年代にUSAから出た「ハード・タイムズ」だと思います。このアルバムは70年代中頃のファンク・ブルースの波の中で作られたもので、「ニード・ア・フレンド」あたりではアルバート・キングへの傾倒も感じられますが、元々声質の太さが似ているので違和感はありません。ボビー・ラッシュの名曲「チキン・ヘッド」もなかなか上手く消化していますし、オリジナル中心のファンク・ブルースは、21世紀の今聴くとやや陳腐さも感じますが、逆に時代の潮流を感じて興味深かったです。マジック・サムのような華がなく損をしていますが、実力者らしいしっかりしたアルバムだと思いました。



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