LOWELL FULSON の CD -part 1 SWING TIME 時代*
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注 ここに紹介するCDは僕の保有するものであり、決してすべてを網羅しているわけではありません。
* 一応便宜的にSWING TIME時代としてあるが、フルソンは1946年6月にボブ・ゲディンズの元で弟のマーティンのギターのみをバックに初録音、これらは当初はおそらくゲディンズ自身のCAVA TONEから数枚出された(これらは後にALADDINからリリース)が、後にDOWN BEATとその後身のSWING TIMEからリリースされたようだ。またゲディンズはスモールコンボでも録音、これらはゲディンズ自身のBIG TOWNから出されているが、これらもGILT EDGEから出されたりととにかく複雑怪奇。1948年にTRILON、DOWN BEATなどに録音した後、ようやく1950年にDOWN BEATがSWING TIMEにレーベル名を変更している。しかもその間ELKOで変名で出したり、RPMに初期録音が売られたりとややこしい。このような状態であるので、とりあえずゲディンズから音源を引き取ったDOWN BEAT〜SWING TIME時代ということにしておいた。
[01]: LOWELL FULSON (ARHOOLIE/P-VINE PCD-2105)
- Western Union Blues
- Lazy Woman Blues
- River Blues -Pt. 1
- River Blues -Pt. 2
- I Walked All Night
- Midnight And Day
- Three O'Clock Blues
- The Blues Is Killing Me
- Did You Ever Feel Lucky
- I'm Wild About You
- Blues With A Feeling
- Why Can't You Cry For Me
- There Is A Time For Everything
- Lowell Jumps One
ARHOOLIE 原盤。初期のフルソンを集めたもので、日本盤で手に入りやすく、日暮氏のライナーも素敵だ。右肩にストラップをかけるフルソンの姿を写したジャケットも、笑顔が素敵だ。しかし今は次の決定版が登場した。
[02]: MY FIRST RECORDINGS (ARHOOLIE CD 443)
- Western Union Blues
- Lazy Woman Blues
- River Blues -Pt. 1
- River Blues -Pt. 2
- I Walked All Night
- Between Midnight And Day
- The Blues Is Killing Me
- Did You Ever Feel Lucky
- I'm Wild About You
- Three O'Clock Blues
- Crying Blues (Street Walking Woman)
- You're Gonna Miss Me
- Miss Katy Lee Blues
- Rambling Blues
- Fulson Blues
- San Francisco Blues
- I Want To See My Baby
- Trouble Blues
- Don't Be So Evil
- Black Widow Spider Blues
- I'm Prison Bound
- My Baby Left Me
- Blues With A Feeling
- Why Can't You Cry For Me
- There Is A Time For Everything
- Lowell Jumps One
[01]に12曲を加えたもの。ジャケットも[01]の色違い。ボブ・ゲディンズは SWING TIME、DOWN BEAT、SWING BEAT、DOWN TOWN と色々な名称のレーベルでリリースしていてややこしい。(1)〜(10)までと(21),(22)は、1946年6月録音*1。弟マーティン・フルソンのバックギターだけが加わっている。テキサス・アレクサンダーの流れを汲む(3)と(4)は、初期の代表曲にふさわしい、ディープなブルースだ。(2)なども含め、哀愁のある、情感豊か(しかし決して大げさではない)なヴォーカルに絡みつく、手癖のようなギターのトリルが、緊張感を高める。そのムードはある面ライトニン・ホプキンスに通じるものがある。ライトニン同様、タイム感はけっこうでたらめ(そこがいいんだよね)。(1)は比較的おとなしいギターをバックに、哀愁はあるけどどこか溌剌としたものも感じるヴォーカルが素晴らしい。(5)や(8)など、イントロからライトニンを彷彿させる。(6)や(7)のごつごつしたマーティンのバックギターもビート感を高めていて効果的。また、バックギターがいるため比較的自由に弾けるようで、倍テンポの譜割のソロも多く、特に(21)などはエディ・テイラーとの共通点を感じる(後述)し、(22)の倍テンを絡めたイントロもかっこいい。(9)ではかなり細かいフレーズのイントロも弾いているし、歌い回しも完全に完成していることが分かる。(10)はB.B.キングの出世作のオリジナルで、B.B.はわざわざ本人の許可を得てレコーディングしたんだそうだ。B.B.がしびれるのも当然といえる名演。
(11)〜(20)はスモールコンボでの演奏(BIG TOWN 原盤)で、(11)〜(16)は1946年末のサンフランシスコ録音*2。他も同じ時期であろう。ドラムが抜けているものも多く、あまりビートのきつくない演奏で、1949年以降のかなりコマーシャルな演奏とは趣が異なる。ギターにはT-ボーンの影響が見え隠れする。(11),(13),(16),(19)など DOWN BEAT で再録したものとはヴァージョンが異なり、はるかにいなたくルーズである。(12)もDOWN BEATで再演しているが、後にKENTで再録したときと少々構成が異なる。でもギターソロの出だしなど、来日時のライヴと同じフレーズが出てきて思わずニヤッとしてしまう。マーシー・ディーとの共通点を感じる(14)、この時代お得意のイントロで始まる(15)、フルソンのヴォーカルの良さがつまった(18)など、まさに駄作なし。(20)を聴くとマーティンとのデュオにバンドを乗せた感じがよく分かる。(17)や(19)はブギウギであるが、どことなく田舎くさいのがフルソンならでは。(17)はコーラスがかわいい。(23),(24)は1951年録音で、前者は初期録音に通じるゴリっとしたギターインストだが、後者はアール・ブラウンのアルト・サックス、ロイド・グレンのピアノと、黄金期を支えるメンバーを含むスモール・コンボの演奏。(25),(26)は1953年録音。ビートもかなり強調され、(25)のようにゴージャスなブラスやオルガンまで入ったものもある。(26)のインストはゴージャスでダンサブル。
大ヒット曲はないが、フルソン・ファン必聴の1枚。マーク・ハンプリーのライナーも大作で参考になる。
*1 「Blues Records 1943-70」によると、1948年録音ということになっている。しかしこのCDのライナーでは、1946年に弟を呼び寄せてゲディンズの下で録音しているとある。また、ローウェルが「フル・コンボ」を結成したとき、弟は去ったとあるので、1949年以前の録音ということは間違いない。さらに、KO-1さんから見せていただいたLP「Baby Won't You Jump With Me」(CROWN PRINCE IG-407/408)と「Lowell Fulson 1946-57」(BLUES BOY BB-302)におけるフルソン自身の発言でも、最初の録音はマーティンとのものだとしている(後にこの2セットのLPは、故NETWORKの佐藤さんが自身のコレクションを放出したときに入手しました。フルソンの大ファンとおっしゃっていた佐藤さんのご冥福をお祈りし、このアルバムは「形見」として大切にしていきたいと思っています。)。「Blues Records」は録音時期について、かなり混乱した把握をしているようだ。ゲディンズは自分の店でレコードをセルフ・プレスしており、ピアノを加えた最初のレコード「クライング・ブルース」録音の前に、ローウェルとマーティンのデュオを録音した。フルソンの初期録音は声のトーンの高さが特徴的だが、ここでもそれを聴くことができる。CROWN PRINCE 盤によれば、録音はサンフランシスコで行われたようだ。これらをすぐリリースしたかは不明であるが、後に SWING TIME でリリースした。「Blues Records」の方は、SWING TIME でのリリースの時期から録音時期を判断したので、1948年録音としたのではなかろうか。この件については2002年にリリースされたCLASSICS盤で、明解に1946年6月の初録音という扱いとなっており、またリリースも当初DOWN BEAT、DOWN TOWNからリリースされたことが明記されている。よってそれに従った。
*2 「Blues Records」では1946年オークランド録音となっているが、CLASSICS盤のディスコグラフィと、フルソン自身の「オークランドではあまり活動していない」といった発言からこのように判断した。
[03] SAN FRANCISCO BLUES (BLACK LION BLCD 760176)
- Miss Little Brown
- Country Boy Blues
- Fillmore Mess Around
- Midnight Shower
- So Long, So Long
- Wee Hours In The Morning [One More Drink]
- Come Back, Baby
- Don't Be So Evil
- Poor Boy Blues
- Market Street Blues
- Let Me Ride Your Little Automobile
- San Francisco Blues
- Television Blues
- Angel Smile
- Jennie Lee
- Baby, Don't You Hear Me Calling?
DOWN BEAT〜SWING TIME 時代の曲を集めたもので、モノクロの穏やかなフルソンの顔のジャケットが購入欲をそそる。マイク・レッドビターが1967年に書いたライナーがついている。[02]よりやや後の時代の作品が中心で、全体的にはこちらの方がモダンな感じの曲が多い。タイトル曲の(12)は1946年録音とされているが、[02]のもののDOWN BEATでの再録で、ドラムズが入っており、1948年の録音。これはティン・パン・アレーの原曲ではないだろうか。これぞオークランド・スタイル(フルソン自身はオークランドでは暮らしていないそうだが)。(8)も[02]の再録、ジャジーなバックにのって軽快にスウィングしている。しかし、タイム感がずれるのにバックが合わせるのはさぞかし大変だろうなと思う。フルソンは初期ほどずれが多いような気がする。(4)〜(6),(9),(13)〜(16)はDOWN BEAT原盤で多分1948年録音。ピアノとベースが活躍するスモールコンボ仕立てだが、ゆったりした(4),(6),(9)ではフルソンのヴォーカルが良く生きている。またややアップの(4)ではかなりモダンさも出ている。ちなみに(6)は曲目違いで、[ ]内は盤に記載された曲名。一方(13)〜(16)ではどっしりしたキング・ソロモンのピアノに支えられ、ジャカジャカしたフルソンのローダウンなギターと比較的ハイトーンなヴォーカルが映える。なお(16)は原盤が針跳びを起こしている。
残りはSWING TIME録音。(1),(2),(7)は1950年のもので、ピアノはロイド・グレン。この人のピアノはよく転がる。軽快な(1)、ゆったりした(2)とも音がシャープになっているのが分かる。(7)はR&Bチャート14位までいった曲で、8小節のウォリード・ライフ調のディープな曲。残る(3),(11)は1951年、(10)はその翌年にかけての録音で、(10)のロッキン・インストはテキサス・ホップのテーマが登場。このころからピー・ウィー・クレイトンのアドヴァイスによってか、ジャンプするギター・インストの録音が増えている。(3)のインストではT-ボーン風のギターに、スリー・ブレイザーズやナット・キング・コールに通じる決めが入る。これがこの時代のトレンドだったのだろう。(11)は後にトゥー・メニー・ドライヴァーのタイトルで再録しているが、名曲だ。「君のかわいい車に乗りたいけど、運転手が多すぎる」とは・・・。アルト・サックスは柔らかくてムーディなアール・ブラウン。
[04]: BACK HOME BLUES (NIGHT TRAIN NTI CD 7001)
- Cold Harted Mama
- I Love My Baby
- Let's Live Right
- Fulson Boogie
- Mama Bring Your Clothes Back Home
- Don't Be So Evil
- My Baby Can't Be Found
- Sinner's Prayer -alt.
- Upstairs
- Want To See My Baby
- Guitar Shuffle [The Day Is Passing On]
- Back Home Blues
- Trying To Find My Baby
- Rock This House
NIGHT TRAIN がSWING TIME の権利を獲得して出した最初のCDだが、曲は[05]と[06]にすべて再録されたため、現在は廃盤のようだ。地味なフルソンのイラストで、一瞬買うのをためらった。
[05]: EVERY DAY I HAVE THE BLUES (NIGHT TRAIN NTI CD 7007)
- Everyday I Have The Blues
- Crying Blues (Street Walking Woman)
- Night Owl -alt.
- Lonesome Christmas
- Highway 99
- Hear Me Calling You (Angel Smile)
- Television Blues
- Black Cat Blues
- Cold Hearted Mama -alt.
- San Francisco Blues
- Fulson Boogie -inst.
- It's Hard To Believe (Mean Old Lonesome Day) [I've Been Mistreated]
- Let Me Ride In Your Automobile
- Rambling Blues
- Blue Shadows -alt.
- Cold Hearted Mama
- Don't Be So Evil
- Trouble Blues
- Let's Live Right
- Rock This House
タイトル曲をはじめ、(3),(4),(15)と SWING TIME 時代のヒット曲がずらりと収録された盤。しかし、問題点が多い。それは第一に、音質がきわめて悪いことだ。ぼくの持っているものだけかもしれないが、左側にひどいノイズが入っている。[04]もあまりよくないが、この盤よりはましだ。さらに、レコーディング・データなどがまったく分からない。(3),(15)は別テイクと記されているが、下の[A]に収録されているものと同じで、[A]ではいずれも正規のイシュード・テイクとされている。どっちが正しいのやら・・・。究めつけは(12)で、完全な曲目違い(リストの[ ]内は盤に記載された曲名)。だが、この曲の本当の名前はと言われると、これがまた大きな難問に突き当たる。該当するイシュード・テイクが見当たらないのだ。また、(20)は「Blues Records」では"Rockin' After Midnight"となっている。録音時期は「Blues Records」では(2),(10),(14),(17),(18)が1946年とされているが、いずれも[02]収録の別テイクで、CLASSICS盤のディスコグラフィでは1948年DOWN BEAT録音となっており、それが正しいと思う。いずれも演奏が[02]のものよりドラムが強調され、ヴォーカルは少し軽くややモダンな感じだ。(5)〜(8),(11)が1948年、(1),(9),(16),(20)が1949年、(15)が1950年、(3),(4),(13)が1951年、(12),(19)がその翌年にかけてで、1949年にロイド・グレン(ピアノ)、アール・ブラウン(アルト・サックス)が加わってから、音がぐっとモダンになったことが分かる。フルソンの声も低く抑えが効いてくる。ちなみに(6),(7),(10),(13),(17)は[03]と同じものだ。第二に、ジャケットのイラストが良くない。あれで購入する気をなくした人を僕は知っている。
しかし、曲そのものが悪かろうはずはない。(1)の落ち着いた演奏(アール・ブラウンとロイド・グレンの絡みつく様子がすばらしい)は、この曲のスタンダード化に大きな役割を果たしたと言えよう。(3)もこの時代のウエスト・コーストの売れ線狙いの曲調だが、フルソンは本当に歌が上手いと思わせる1曲だ。(4)をひとりぼっちのクリスマスに聴いたら、どんな気分になるだろう(「ベルが鳴ってる」の唄に合わせてピアノの代わりにベルの音が入っているのはご愛敬)。ジャジーな演奏をバックにした(5)はTRILON録音の再録。(8)のこすり付けるようなギターはキング・ソロモンとのセッションの特徴だ。ピー・ウィー・クレイトンやT-ボーンからの影響を強く感じるシャッフル(9)(16)やインスト(11)は時流をつかもうというフルソンの姿勢が見える。(15)もモダンな2-5進行をバックに、渋い歌を聞かせる。これも名曲で、多くのカヴァーを生んだ。B.B.キングが師匠と仰ぐのがよく分かる。すばらしいソングメーカーだ。(19)は「グッド・モーニング・リトル・スクールガール」からメロディを拝借したようなイントロと、エイモス・ミルバーンの酒ものに近いリズムがモダン。(20)のギターによるリフはCHESS時代に開花することになる。[06]: SINNER'S PRAYER (NIGHT TRAIN NTI CD 7011)
- Sinner's Prayer
- Low Society -inst.
- Highway Is My Home [Why Can't You Cry For Me]
- Day Is Slowly Passing On
- Miss Kathy Lee
- Mean Woman Blues
- Black Widow Spider Blues
- I've Been Mistreated [You're Gonna Miss Me When I'm Gone]
- I Love My Baby
- Mama Bring Your Clothes Back Home
- Good Times Back Home -inst. ; Lloyd Glenn
- My Baby Can't Be Found
- Upstairs
- Want To See My Baby
- Guitar Shuffle [Day Is Passing On -inst.]
- Back Home Blues
- Trying To Find My Baby
- Fulson's Guitar Boogie
- Fulson's Blues
- Sinner's Prayer -alt.
シナーズ・プレアのオリジナル・ヴァージョンを売りにした NIGHT TRAIN 第3弾は、[05]と色違いのジャケットを初め、相変わらず雑な仕事ぶり((3),(8),(15)は曲目違い、[ ]内は盤に記載された曲名。また、(11)はロイド・グレンの曲)だが、内容は申し分無しだ。一応録音時期をチェックしておくと、(5)〜(7),(12),(14),(17),(19)は1948年録音((5),(7)といった曲は[02]の別ヴァージョン、よく言えば洗練、悪く言えば少し売れ線にこびたような音になっている)、(10)が1949年、(1),(2),(16),(20)が1951年、(3),(8),(9),(13)がその翌年にかけてのものだ。
まずタイトル曲。従来([04],[A])には別テイクが収録されていたが、こちらがオリジナル。原盤の状態が悪いため別テイクが利用されたのだろうか。甲乙つけがたい。(2)のインストは CHESS 時代にも再録したインストで、ムーディな曲だ。これぞ真にロープ・ギター。真夜中のブルースですな。(3)や(8)もアール・ブラウンのアルトサックスがムードたっぷりで歌を盛り立てる。軽快な(9)はフルソンのタフな歌が魅力になっている。イントロのギターが強力な(13)は同じアップでも歌は少し控えめ。(16)ではロイド・グレンのピアノも堪能できる。このアルバムの魅力はこうしたSWING TIME後期の録音がたっぷり入っていることだ。おもしろいのは(10)で、ソロの後タイムを間違えたかフルソンが早く歌に突入、「失礼」とやり直すが、またソロの後早く歌に突入する。一体どうしたかったんだろうか。
比較的古い録音では(6)や(19)といったスローでは歌がハイトーンでディープなのに対し、ピアノが大活躍の(12)(14)(17)といったシャッフルでは、かなり都会的な音になっていて、この辺のギャップにフルソンの試行錯誤が伺える。(12)の歌に入るタイム感はやっぱり泥臭いけど。さて「Blues Records」に載っていないのが2曲あり、うち(18)のインストは1948年の曲で別名"Filmore Mess Around"。ジャズっぽいピアノとのユニゾンが出てきて格好いい。また、(4)はサックスが入っており、おそらく1949年以降のものだ。さて問題は(15)のインスト。この曲、どっかで聴いたことがあるぞ(後述)!
[07]: 3 O'CLOCK BLUES (ZIRCON BLEU 510)
- Three O'Clock Blues
- I'm Prison Bound
- My Baby Left Me
- Night And Day
- Double Trouble Blues
- Stormin' And Rain
- Good Woman Blues
- Crying Blues
- You're Gonna Miss Me (When I'm Gone)
- Miss Katie Lee Blues
- Rambling Blues
- Fulson Blues
- San Francisco Blues
- Jelly, Jelly
- Trouble Blues
- I Want To See My Baby
- Black Widow Spider Blues
- Don't Be So Evil
- Scotty's Blues
- The Train Is Leaving
- Fulson Boogie
- Highway '99'
- Television Blues
- Tears At Sunshine
- Jam That Boogie
比較的初期の作品を集めたイギリス盤で、(1)〜(3),(8)〜(13),(15)〜(18)は[02]に、(21),(22)は[05]に、(23)は[03][05]に収録されているものと同じだ。ジャケットは平凡。ただし[05]に比べて格段に音が良い。また、ほぼ録音時期ごとにまとまっているので、時代による音の違いを把握しやすい。その他の曲について、まず(4)〜(7)はマーティン・フルソンのバックで、1946年のCAVA TONE録音(「Blues Records」では1948年録音とされているが、フルソンのインタビューに「スモールコンボを組んだ頃マーティンは去った」という発言からもその線はないと判断)。いずれもミディアムの見事なテキサス・ダウンホーム・ブルースだ。録音のせいか、声がややスモーキーだ。(6)は女性の「合いの手」が挿入されている。(14)は1947年にTRILONというレーベルに残されたもので、ビリー・エクスタインの曲をピアノ、ベース、ドラムズをバックに結構スムースに唄っている。(19),(20)は SCOTTY'S RADIO というレーベル?に残されたもので、「Blues Records」では1947年以前の録音とされているが、(15)〜(18)と同時期の1947年初頭のもの。ゆったりした演奏で、ギターはトレモロ奏法を多用している。(20)はドラムレスか?残る(24),(25)は1948年の録音で、[03]に収録されている曲のいくつかと同様、ピアノ、ベース、ドラムズをバックに、ベチャットした生ギターに近い音でギターをかき鳴らしながら唄っているのが印象的だ。全体に[02]とのダブりは痛いが、珍しい曲もあり、悪くない内容だと思う。
[08]: BLACK WIDOW SPIDER BLUES (CATFISH KATCD 137)
- 9.30 Shuffle
- Thinking Blues
- Wee Hours In The Morning
- My Baby
- Demon Woman ("Angel Smile"?)
- Blues And Misery
- Ain't Nobody's Business
- Black Widow Spider Blues
- Three O'Clock Blues
- Midnight Showers Of Rain
- So Long, So Long
- Just A Poor Boy
- (Sweet) Jenny Lee
- Black Cat Blues
- Everyday I Have The Blues
- Cold Hearted Mama
- Want To See My Baby
- Mean Woman Blues
- My Baby Left Me
- My Baby Can't Be Found
- My Gal At Eight
- Rocking After Midnight
- I Walked All Night
- Mama Bring Your Clothes Back Home
- Trying To Find My Baby
これは2000年にリリースされたイギリス盤で、クモのジャケットが何だか不気味だ。NIGHT TRAIN 盤と同様収録順がてんでばらばらだが、一応レコーディング・データが記されているのは親切だ。ただしジャケット裏の曲目がにじんだような印刷になっていて読みづらい。曲の重複については、[02]に(8),(9),(19),(23)、[03]に(3),(5),(10)〜(13)、[05]に(5),(14)〜(16)、[06]に(17),(18),(20),(24),(25)、[07]に(8),(9),(19)が収録されている。このうち(5)は、他のアルバムでは「エンジェル・スマイル」となっているのだが、ここでは「デーモン・ウーマン」となっている。歌詞で判断すると「エンジェル..」と思うのだが、「Blues Records」によると、「デーモン..」は DB/ST 134 としてリリースされているようだが、「エンジェル..」はレコード番号が表記されていない。ひょっとすると同じ曲がタイトル違いでリリースされた可能性もある。
この盤だけの収録曲についてみよう。(1),(2)がこのCDの「目玉」で、1947年8月、TRILON からリリースされたものだ。(1)はT-ボーンに通じる軽快なシャッフル・ナンバーだが、フルソン特有のいなたさがあるのが面白い。(2)もこの時代の他の曲と同様の歌と演奏で、フルソンお得意のテーマとパターンだ。(4)は1948年録音で、(2)とよく似たサウンドだ。(21)は(4)と同時期だがセッションが異なり軽快なシャッフル・ナンバーを聴かせる。この1947〜48年がフルソンの音楽的な過渡期に当たっていることがよく分かる。(6)は1948年、(5)と同じセッションの録音で、ここでは再び生っぽいギター・ストロークが多用されている。目玉その2が(7)で、何とジェイ・マクシャンのバンド(マックスウェル・ディヴィスを含む)をバックに、マクシャン専属のジミー・ウィザースプーンの名曲をやっている。ギターは弾いておらず、なんとなくやる気のなさそうな歌が、「これは俺のスタイルではない」と主張しているように聞こえる。(22)は「エヴリデイ」のB面の曲。[05]に収録されている「ロック・ディス・ハウス」の別ヴァージョンだが、どちらが正規ヴァージョンなのだろうか。
[09]: MEAN OLD LONESOME BLUES (NIGHT TRAIN NTI CD 7110)
- Guitar Shuffle
- Blues And Misery
- Baby Won't You Jump With Me
- My Daily Prayer
- Bad Luck And Trouble a.k.a. Fulson Blues
- It's Hard To Bilieve (prob. "Mean Old Lonesome Day")
- Angel Smile a.k.a. Damon Woman [I Had A Little Woman]
- Juke Box Shuffle [9:30 Shuffle]
- Let Me Love You Baby
- Wee Hours In The Morning
- Tears At Sunshine
- Best Wishes
- Thinkin' Blues
- Just A Poor Boy
- Jam That Boogie
- Ain't Nobody's Business
- Ride Until The Sun Goes Down
- I've Got A Mind To Ramble a.k.a. Jimmy's Blues
- Is Your Friend Really Your Friend?
- The Day Is Slowly Passing On -alt.
- Rocking After Midnight
- Blues With A Feeling
- Rainy Day (Blues)
- Mama Bring Your Clothes Back Home -false take
- Good-Bye, Good-Bye
NIGHT TRAINの第4弾は、主に後期の未発表・初CD曲を満載した好編集盤。もちろん重複はあり、タイトル等もいい加減で、曲データはなしという相変わらずの作りだが、レアな写真にレーベルをあしらったジャケットは、以前の品のないイラストに比べれば随分進歩したと思う。
まずは既発盤との重複だが、(1)は[04][06]に収録された重要曲をようやく正しいタイトルで収録。また(2),(16),(21)は[08]で聴ける。(5)は[02][07]に収録されているが、イントロが短い。(7)は[03][05][08]に収録された曲のタイトル違い。(10),(14)も[03][08]で聴けるし、フェードインしているが(11)と、(15)も[07]に入っている。(22)は[01][02]に収録。(24)は[04][06]の没テイク部分だ。
さて問題はマーティンとのギター・デュオとなるダウンホームな(25)で、これは[02]-(21)と同じ曲、ただしこちらの方がイントロが長い完全盤であったため、別の曲と思われていたようだ。「Blues Records」では同じDOWN TOWN 2021の裏面について、"My Baby Left Me (Some Old Lonesome Day / Good Bye, Good Bye)"という表記があるが、これは誤植であり、正しくは"I'm Prison Bound (Good Bye, Good Bye)"、"My Baby Left Me (Some Old Lonesome Day)"となるべき。おそらくこれらの曲がいくつかのレーベルにまたがって再発を繰り返したための混乱だと思われる。なお同じ「Blues Record」には1951年に"Good Bye"(SWING TIME 315)があるが再発か?2003年に改訂版が出るそうなので、この辺りがどうなっているか興味深い。
さてこの盤には初CD化の曲が多数含まれている。まず(23)は「Blues Records」では1949〜50年とされているが、アール・ブラウンの加わる前の、おそらく1948年以前の録音の曲で、極めてダウンホームだ。(13)もこのテイクは僕にとって初物。[08]に収録されている曲の別テイクだが、前後の曲の配置および[13]のディスコグラフィからそちらは TRION 186 と思われ、ピアノをクローズアップしたこちらが DOWN BEAT 117ということのようだ。
(3)はかつてCROWN PRINCEの2枚組LPのタイトルになった1950年の曲。軽快なスモールコンボの良さが出ている。またよく鳴くアール・ブラウンのサックスが印象的なアップ・ナンバー(17)はフルソンのギターも切れ味がいい。これらとほぼ同時期の録音と思われる(6)は、"Mean Old Lonesome Day"の別テイクで、この曲のタイトルは[05]でも違っていたし、けっこうミステリアス。一方ドライヴ感が心地よいインスト(8)は明らかなタイトル違い("9:30 Shuffle"は歌入り)。[03]に収録されている"Market Street Blues"とは同曲別ヴァージョンだ。さらに(20)も[06]収録の別ヴァージョン。CROWN PRINCE のアルバムでは"Mean Old Lonesome Song"となっているが、一体この辺のリリース状況はどうなっているんだろう?現物の78RPMに当たらないと何とも言えないが、ひとつの推理として、[06]で"Guitar Shuffle"が"Day Is Passing On"と誤記されていたこと、それから"Mean Old Lonesome Train"と"Guitar Shuffle"がSWING TIME 295の両面だったことを考えると、"The Day Is Slowly Passing On"は本来"Mean Old Lonesome Song (またはTrain)"としてリリースされていた可能性がある。
SWING TIME時代再末期の1953年録音からは、ゴージャスなブラスにオルガンまで入った(4)や、色っぽいテナーから始まるスロー(19)は、歌い回しなどからもCHESS時代につながっている。この時期のもので珍しいのは(12)で、フルソン名義だが歌はアール・ブラウン。バンドもオルガンとテナーがメインのフルソンとは縁遠いスタイル。ギターソロもフルソンではないと思われる。渋いバラードで、落ち着いたヴォーカルが魅力的。
残る(9)と(18)はいずれも「Blues Records」に記載がない曲だが、(18)は1949年の"Jimmy's Blues"のことと判明。ゴージャスなブラスセクションが絡むシティ・ブルースっぽい都会的なスローだ。(9)はブラスセクションの入った洒落たポップ・ナンバーで、いずれもCHESS時代に通じる曲だ。
[10]: THE ORIGINAL WEST COAST BLUES (TKO MAGNUM CBCD 025)
- Crying Blues
- You're Gonna Miss Me
- Miss Katy Lee Blues
- Rambling Blues
- Fulson Blues
- San Francisco Blues
- Trouble Blues
- I Want To See My Baby
- Black Widow Spider Blues
- Don't Be So Evil
- Scotty's Blues
- The Train Is Leaving
- Jelly, Jelly
- Mean Woman Blues
- 9:30 Shuffle
- Thinkin' Blues
- Trying To Find My Baby
- Highway 99
21世紀になって、こんな盤も出た。ジャケットは[02]の一部を拡大コピーした粗製乱造で、曲も(1)-(13),(18)は[07]など、(15)-(17)は[08]などに収録されているが、唯一(14)は初物だ。この時期にしては少し軽めのミディアム。当初はTRILONレーベルへのものと思っていたが、CLASSICS盤ではDOWN BEAT113となっていた。ピアノの雰囲気などからしてもDOWN BEAT録音のものと考えられる。この1曲のために僕は買ったんだが...。
[11]: 1946-1947 (CLASSICS 5044)
- Three O'Clock Blues
- Wild About You
- Prison Bound
- My Baby Left Me (Same Old Lonesome Day)(Goodbye, Goodbye)
- Western Union Man
- Lazy Woman Blues (I Worked So Hard)
- River Blues-Part 1 (Texas Blues-Part 1)
- River Blues-Part 2 (Texas Blues-Part 2)
- I Walked All Night
- Between Midnight And Day
- The Blues Is Killing Me
- Did You Ever Feel Lucky
- Crying Blues (Street Walking Woman)
- You're Gonna Miss Me
- Katie Lee Blues
- Rambling Blues (Crying Won't Make Me Stay)
- Fulson Blues (Bad Luck And Trouble)
- San Francisco Blues
- Trouble Blues
- I Want To See My Baby
- Black Widow Spider Blues
- Don't Be So Evil
戦前〜戦後のジャズやジャンプから、最近は5000番台で戦後ブルースの録音順リリースをしているフランスCLASSICSから、いよいよフルソンの第1弾が出された。音源はDOWN TOWN、DOWN BEAT、BIG TOWNの各レーベルで、収録曲は微妙にタイトルが異なるものもあるがほぼ[02]と同じ。ただし[02]ではDOWN BEATのものを先に収録しているのに対し、こちらはDOWN TOWNの4曲を前に出してある。このアルバムに記されたレコーディング・データを見ると、これらは1946年6月録音とされており、音を聴いてもおそらく同一セッションだと思われる。なお(4)のサブタイトルがふたつあるが、これは[09]のところにも記したように、「Blues Records」のリストと同じ誤りで、歌を聴けば明らかなように(Goodbye, Goodbye)は(3)の別タイトルが正しい。(13)以降はBIG TOWNのもので録音は1946年末期〜1947年初期とされている。
さて(17)は[02]のものより短い、[09]収録のものと同じイントロがカットされたもの。また(21)だけは[02]に収録されたものとはヴァージョンが異なる[06]収録のものだ。音質は全体にふっくらした印象で、スクラッチノイズが目立たないマスタリングのようだ。またジャケットに使われている写真、DOWN BEATの宣伝用のもののようだ。初めて見るものだが若々しいフルソンがイカしてる。
[12]: JUKE BOX BLUES - 1946-1948 (ACROBAT ACRCD 147)
- Crying Blues
- Miss Katie Lee Blues
- Rambling Blues
- Trouble Blues
- I Want To See My Baby
- Black Widow Spider Blues
- Don't Be So Evil
- Fluson's Boogie
- Mean Woman Blues
- Highway 99
- Trying To Find My Baby
- Midnight Showers Of Rain
- So Long, So Long
- Black Cat Blues
- Just A Poor Boy
- My Baby
- Television Blues
- Angel Smile
最近渋めのリイシューを連発しているレーベルから出たもの。結構若々しいフルソンの顔をあしらったイラストのジャケットは割と気に入っている。ただ内容は(1),(3),(4),(7),(8),(10),(14),(17),(18)は[05]など、(2),(5),(6),(9),(11),(16)は[06]など、(12),(13),(15)は[03]などにすでに収録済み。ちなみに(16)のタイトルは正しくは「My Baby Can't Be Found」だ。CLASSICS盤のリイシューが続いている現在、やはりそちらに期待してしまうが、録音データもマトリクス、シリアルなどはないものの、NIGHT TRAIN盤よりはしっかりしており、ライナーも付いているので、この時期の録音のダイジェスト盤としては悪くない内容と思う。
[13]: 1947-1948 (CLASSICS 5071)
- Night And Day
- Double Trouble Blues
- Stormin' And Rainin'
- Good Woman Blues
- Jelly, Jelly
- Mean Woman Blues
- 9:30 Shuffle
- Thinkin' Blues
- Tell Me Baby
- Fulson Boogie
- Tryin' To Find My Baby
- Let's Throw A Boogie Woogie
- Highway 99
- Whiskey Blues
- Scotty's Blues
- The Train Is Leavin'
- Crying Blues
- You Gonna Miss Me When I'm Gone
- Miss Kathie Lee Blues
- Rambling Blues
- Fulson's Blues
- San Francisco Blues
- Fulson Boogie
- Mean Woman Blues
CLASSICSのフルソン第2弾は、まさに待望のリイシューだ。TRILON録音のうち未CD化(うち4曲は多分未LP化)の6曲(9)〜(14)と、再三タイトル違いで名前だけは出ていたが、実際の音は初めてCDとなったDOWN BEAT盤の(18)が収録されているのだ。(9),(10)は(5)〜(8)と同じ47年8月のセッションからで、ちょっと調子っぱずれのギターながらリラックスした(9)、(23)よりもったりした演奏だが、ギターがよく活躍しているインスト(10)は、BLUES BOYのLPに収録されていたものだ。一方同じTRILONのセッションでも、(11)〜(14)にはクェデリス・マーシンという人のごつっとしたテナーサックスが入っている、フルソンの録音で初めてサックスが入ったセッションで、(11)と(13)はDOWN BEATでも再録している。いかにもフルソンらしい字余りを含むミディアムが中心だが、(12)はT-ボーン風のギターが聴けるアップのブギウギで、大股なフルソンのギターソロが嬉しい。
さてようやく聴くことができたのがBIG TOWN録音の再録(18)だ。この時期のDOWN BEATらしくかなり都会的になり、落ち着いた演奏。この曲は形を変えながら歌い続けられて来たフルソンの代表曲のひとつだ。この他の曲は(1)〜(5)と(15),(16)が[07]など、(6)〜(8)が[08]など、(17),(19),(20),(23)が[12]など、(21)が[06]、(22)が[03]など、(24)が[10]に収録されている。なおジャケットの写真はこの時期よりもっと後のものだと思われる。
[14]: JUKE BOX SHUFFLE (PROPER INTRO CD 2042)
- Three O'Clock Blues
- River Blues -pt. 1
- River Blues -pt. 2
- Crying Blues
- Crying Won't Make Me Stay
- Trouble Blues
- I Want To See My Baby
- Black Widow Spider Blues
- Don't Be So Evil
- Night And Day
- Double Trouble Blues
- Ain't Nobody's Business
- Everyday I Have The Blues
- Cold Hearted Woman
- Mama Bring Your Clothes Back Home
- Back Home Blues
- Baby Won't You Jump With Me
- Blue Shadows
- Rainy Day
- Sinner's Prayer
- Let's Live Right
- Guitar Shuffle
- Upstairs
- Juke Box Shuffle
- Blues Never Fail
- You've Gotta Reap
PROPERといえば箱もの廉価盤で有名なレーベルで、デジパック仕様の[11]と同じ写真を使ったジャケットを見たときは、珍しいタイトルもなく、今まで出たものと同じような内容のコンピだろうとたかをくくっていた。事実(1)〜(9)は[11]、(10),(11),(25),(26)は[D]、(12),(17),(19),(22),(24)(こちらが正しいタイトル)は[09]、(13),(14)は[05]、(15)(間違い以降の後半の部分のみ),(16),(20)(サックスの入った別ヴァージョンの方),(23)は[06]等ですでに聴くことができる。選曲はまんべんなく、重要曲も網羅されているのでこの時代のものとしてはかなりお薦めではあるが。
ところが詳しく聴いていくと新しい発見がいろいろあった。まず(21)は[05]に収録されているものとは別ヴァージョンで、かつてBLUES BOY(BB 302)というLPに収録されていたものの初CD化だと思われる。1951年過ぎのバンドなのでアール・ブラウン、ロイド・グレンなどが安定したサポートをしているため、両者に大きな差はない。
それより驚きだったのが(18)が初めて聴くヴァージョンだったことだ。[05]や[A]に収録されているヴァージョンがエンディングで止まってしまい、「もう1回」というフルソンの声が聞こえること、[05]で未発表テイクと表記されているところから、今回こちらに収録されたものが正真正銘の本テイクだと思われる(その後文屋章さんに本テイクのSP盤を聴かせていただき、正真正銘の本テイクと確認した)。エンディングまでまとまった演奏でさすが名作だ。しかし全米R&Bチャートで見事に第1位に輝いたこの曲の本テイクが、今までCDはおろか、僕の知る限りおそらくLPにすら収録されていなかったというあたりが、フルソンの面白さであり、奥深さだと思う。
あと笑ってしまったのが(11)で、随分長いテイクだなと思ったら、後半に"Fulson's Blues"が潜んでいた。ああびっくりした!
[A]: THE SWING TIME RECORDS STORY (CAPRICORN 9 42024-2) その他の録音
DISK 1
- Crying Blues (Street Walking Woman)
- I've Been Mistreated [You're Gonna Miss Me When I'm Gone]
- Everyday I Have The Blues
- Blue Shadows
- Low Society Blues
DISK 2
[B]: TEXAS BLUES -ANTHOLOGY OF THE BLUES (P-VINE PCD-3039)
- Sinner's Prayer -alt.
- I'm A Night Owl -pt.1
- Let Me Ride Your Little Automobile
- 18 I Love My Baby
- Prison Bound
- Some Old Lonesome Day
[C]: ELKO BLUES VOL.3 (WOLF 120.616 CD)
- Tryin' To Find My Baby
- Wicked Old World
[D]: TEXAS GUITAR KILLERS (CAPITOL 7243 8 33915 2 3)
DISK 1
- Night And Day
- Double Trouble Blues
- Stormin' And Rainin'
- Good Woman Blues
DISK 2
- Blues Don't Leave Me
- Blues Never Fail
- Chuck With The Boys
- You Gotta Reap
[E]: SWING TIME CHRISTMAS (NIGHT TRAIN NTI CD 7005)
- Lonesome Christmas -pt.1
- Lonesome Christmas -pt.2
- Christmas Party Shuffle
[A]は SWING TIME のベスト盤。ジャケットにはレーベルマークをあしらってある。(DISK1-2)では [06]と同じタイトル間違いを犯している。ひょっとすると、原盤にタイトルミスがあったのかもしれない。さらに、(DISK1-1)などの作者がロイド・グレンになっていたり、[02]に収録されたものとは異なるテイクに、同じシリアルがつけられたりと、これも怪しい部分がある。この盤の良さは、収録作が代表作ばかりで、録音が NIGHT TRAIN 盤よりはるかに良好なこと、ロイド・グレンやレイ・チャールズ(フルソンのツアー・ピアニストだったそうだ)の録音が聴けることだ。おすすめ!
[B](それにしてもこのシリーズのジャケットの子供の写真は印象的だ)の2曲は[02]の(21),(22)と同じ。(ただし[B]-(17)は[02]-(21)よりイントロが短くしか収録されておらず、[B]-(18)も特に頭の部分の録音が悪い。
[C]の2曲のうち、(1)は[06]-(17)とまったく同じものだ。また、(2)はおそらくCHESS時代に入ってからの録音だろう。3管のバンドがついており、ムードも似ている。ちなみにジャケット情報の家のイラストは、エルコのレーベルに使われていたマークだ。
[D]は ALADDIN でリリースされた作品集。 ジャケットの真ん中にフルソンが描かれているのが嬉しい。DISK 1 の4曲は[07]に収録されているものと同じ。一方 DISK 2 の4曲は1953年、ニューオーリンズ録音で、(9)などはもろにN.O.ロッキン・ブルースになっている。バックは不明だが、リズムの跳ね方からすると、デイヴ・バーソロミュー・バンドのような気がする(鈴木啓志氏は、自己バンドとしているが)。これらのうち(9)と(11)は The Essential Blues Of Aladdin & Imperial (東芝EMI TOCP-8180) というコンピレーション・アルバムで聴くことができる(先の鈴木氏の発言は、このCDのライナーによる)。
[E]には[05]-(4)が両パート収められている他、(16)はフルバンドのゴージャスなシャッフルで、CDではここでしか聴けない貴重なもの。ジャケットのいかにもクリスマスっていうのがステキだ。他のアーティストも含め、なかなかの好盤。
番外編: エディ・テイラーとローウェル・フルソン エディ・テイラーといえば、ジミー・リードの職人的バック・ギタリストとして有名であり、自己名義でも、VEE-JAY からリリースした、ダウンホームな「バッド・ボーイ」「ビッグ・タウン・プレイボーイ」(ジョニー・ジョーンズ作)が知られている。 「South Side Blues」 (P-VINE PCD-1410)-右写真-に収録されているが、このエディ・テイラー、実はかなりフルソンの影響を受けているようなのだ。ちなみにこのジャケット写真のメインはエルモア・ジェームズ。
まずは「ビッグ・タウン・プレイボーイ」。小出斉氏はレコードコレクター98年3月号の「ブルースギター西東」でテイラーを取り上げており、その中でこの曲にはテイラー節がたっぷり詰まった好サンプルとしている。「歌の合間に、クィーカラコロコロと突き放してからたたみこむフレーズ」「随所で出てくるめっぽう速いトリル」などが、そのテイラー節なのだそうだが、これがフルソンの[01]や[02]に収録されている初期の曲に出てくるギターに似ているのだ。トリルはテイラー程速くはないが、フルソンも手癖のように弾いているし、倍テンポのフレーズや畳み込むフレーズも見せる。その上前述の[02]-(21)のギターソロはそっくりの音使いとなっている。聴き比べてみていただきたい。
さて、決定打は「ドント・ノック・アット・マイ・ドア」というインスト・ナンバー。これって[06]-(15)、つまり「ギター・シャッフル」だ。フレーズの出てくる順は異なるが、全9コーラス中5コーラスはほぼコピーしている(ちなみにテイラーの最終コーラスはピー・ウィー・クレイトンの「テキサス・ホップ」)。テイラーはこのフルソンの曲を習作にしていたんだろうと思う。なお、この曲はスヌークス・イーグリンも取り上げているが、それについてはBLACK TOP 時代のCDを見ていただきたい。
マジック・サムがフルソンから多大な影響を受けたことはよく知られている。しかし50年代半ばのエディ・テイラーにフルソンの影が見られるのはやや意外かもしれない。ひょっとするとフルソンは、シカゴ・ブルースのモダン化に一役買っていたのかもしれない。う〜ん、ブルースは深い。
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