LOWELL FULSON の CD -part 3 KENT 時代
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*注 ここに紹介するCDは僕の保有するものであり、決してすべてを網羅しているわけではありません。
[31]:TRAMP & SOUL (P-VINE PCD-3006)
- Tramp
- I'm Shinkin'
- Get Your Game Up Tight
- Back Door Key
- Two Way Wishing
- Lonely Day
- Black Nights
- Years Of 29
- No Hard Feelings
- Hustlers Game
- Goin' Home
- Pico
- Talkin' Woman
- Shattered Dreams
- Sittin' Here Thinkin'
- Little Angel
- Change Your Ways
- Blues Around Midnight
- Everytime It Rains
- Just One More Time
- Ask At Any Door In Town
- Too Many Drivers
- My Aching Back
- Too Many Drivers -alt. take
1964年から69年まで在籍していた KENT 時代、フルソンは3枚のオリジナル・アルバムをリリースしているが、これは「Tramp」と「Soul」というその時代の代表作の 2on1 という決定的なもので、この時代のフルソンを聴くならまずはこの1枚だ。もともと(7)は両方に重複して収録されており、(22)の別テイク(24)が追加されている。
1966年にリリースされた「Soul」は1964〜65年にシングルとしてリリースされたものを集めたもので、本アルバムでは(7)と(13)〜(23)に当たる。ジャケットをご覧になるとおわかりだと思うが、すました顔でポーズを決めるポートレイトは、「おれはブルースマンだぞ」と自己主張しているようであり、内容も100%コテコテのフルソン節だ。まずは7、R&B チャートで11位まで上昇したこの曲、マクスウェル・ディヴィスのアレンジによるゴージャスなブラスに続き、フルソンにしか弾きようのないギター、"It used to be"(「昔なら」)と始まり"Black night"(「漆黒の夜」)で終わる憂いのこもったヴォーカル、このアルバムを初めて手にし、この曲を聴いたときの感動が、今こうして聴いていてよみがえる。名曲だ。2000年にリリースされたウィリー・コブズの「Jukin'」で取り上げられたのが記憶に新しい。(15)も同様のどっしりしたブルースであり、また(16)やイギリス ACE のコンピのタイトル曲になった(18)も、ややアップであるが落ち着いた曲だ。ただしこのヴァージョンはシングル(KENT 443)とは異なり、イントロと間奏部にギターソロがオーヴァーダブされている。。
KENTでの初セッションはブラス抜きでマクスウェル・デヴィスのピアノを軸にしたバンドでおこなわれた。(22)は SWING TIME 時代の「レット・ミー・ライド・ユア・オートモビル」のリメイクで、よりリズムを強調したタイトな演奏が心地よい。頭にセッション風景も収録されている(24)は、ギターソロのバックのドラムがブレーク気味なのが大きな違いで、甲乙つけがたい演奏だ。なお、このテイクは[37]収録の別テイクとも異なるもので、この盤でしか聴けない貴重なもの。(19)、(20)もこの時の録音で、(7)と同じ唄い回しが登場する(19)、ツービート的なリフを強調した(20)とも、フルソンのすばらしいソロがフューチャーされたシンプルで力強い快演だ。
残りの曲はすべてブラスが効果的に入っている。ディヴィスのピアノで始まるバラード(14)は、偶数拍に入るギターのコードカッティングが印象的。こうしたアクセントを強調したアレンジがこの時代の KENT におけるマクスウェル・デヴィスの大きな特徴のようだ。(17)はBメロ付きのバラードだが、ここにも(7)の唄い回しが登場する。
ブルース界きってのソングライターのひとりであるフルソンは、キャッチーな曲作りもお手のものだ。POINTBLANK 時代のアルバート・コリンズが「ハニー・ハッシュ」のタイトルで取り上げた(13)は、歯切れのいいギター・リフから始まるタイトなナンバーで、途中の「決め」もかっこいい。80年の来日時、この曲がひときわ印象的だったのを覚えている。スローの(21)、リズミカルな(23)にもいかしたブレークが入っており、DUKE時代後期のボビー・ブランドを思わせる、時代を意識した音作りになっている。
一方「Tramp」は表題曲のヒットを受けて1967年にリリースされたアルバムで、1965〜66年にかけて録音されている。本アルバムでは(1)〜(12)が該当する。まずはタイトル曲、ジミー・マクラクリンとの共作で、フルソンが「ロック」と呼んでいたエイトビートの特徴的なリズム(吾妻光良氏はこのリズムを「裸のヨガヨガ」と名付けている)に乗せて、唄うというよりはしゃべるような歌で始まるこの曲は、R&B チャートで5位、1967年オーティス・レディングとカーラ・トーマスのデュオでカヴァされたものはR&B2位、ポップチャートで26位という大ヒットとなった。浮浪者が"Love"(愛というかナニというか)で成り上がるという歌詞は、オリジナルアルバムのジャケットに見事?に表現されている。(12)はこのシングルのB面だったインストだが、バックトラックは(1)と全く同じ!これにフルソンのギターをかぶせただけというお手軽なつくりだ。耳を凝らすと(1)のギターソロがかすかに聞こえるのがご愛敬。とにかくこの時代にこれだけのファンキーな曲を作っちゃうのがフルソンの非凡なところだ。B.B.キングが「Complete Well」あたりで「脱ブルース」を模索するのとは違い、軽々と対岸に渡っちゃうのが凄い。しかも行きっぱなしではなく、片足はしっかりブルースに突っ込んでいる。
この他「Tramp」収録曲でシングル盤としてリリースされたのは(2)と(9)の2曲。(2)は(7)と同様のドッシリしたブルース。セッション・データにクレジットがないので、ひょっとしたらブラスは後からオーヴァーダブされたものかもしれない。一方(9)は(1)と同系統のファンキーな曲だが、シンコペーションの効いたリズムが特徴となっている。後の曲はこのアルバム用に収録されたものだ。ブラスレスの曲は4曲。(3)は明らかに(7)の二番煎じを狙ったやや軽めの曲だが、ギターのストロークなどに工夫は感じる。(8)もスロー、この曲のターンアラウンドはかなり特徴的。ピアノが軸なので、おそらくディヴィスのアイディアだろう。(11)は(1)の延長線上にあるが、Bメロもあり、ピアノなどニューオーリンズを感じさせる曲だ。
(4),(6),(10)はいずれもスローブルース。それぞれブラスの絡め方などに特徴を出そうとしているが、全曲ビートが強調((6)は珍しく奇数拍にアクセントが来る)され、(8)と同じターンアラウンドが用いられるなど、曲作りに練りがなく、アルバムをリリースするためのやっつけ仕事のように思える。聴いた印象からすると、(1),(7),(12)以外の「Tramp」収録曲は同一のセッション(日はまたがるかもしれないが)で録られ、ブラスはオーヴァーダブされたように思えるのだがいかがだろうか。このためか、「Tramp」は初めて聴いたときワンパターンに感じた。今もその印象がぬぐえないので、僕は「Soul」が好きだ。これに「トランプ」が入っていれば申し分なしだ。
[32]:NOW! (P-VINE PCD-3877)
- I'm A Drifter
- Funky Broadway
- Let's Go Get Stoned
- Push Me
- The Letter
- I Cried
- Feel So Bad
- Everyday I Have The Blues
- Mellow Together
- Going To Chicago
- Confessin' The Blues
- Tomorrow
- Blues Pain
- I Wanna Spend Chrismas With You
1969年にリリースされたアルバムで、まずはジャケットを「Tramp」と比較してほしい。「トランプ」の3番でフルソンは、「今(now!)自分は成り上がり、3台もキャデラックを持っている」と唄っているが、まさにその通りのデザインだ。ボロを着ていたフルソンがピカピカのスーツを着てキャデラックの前に立つ。これは「トランプ」で当てたフルソンの「今」をも象徴しているようだ。アナログでは「Let's Go Get Stoned」で再発されており、僕が初めて聴いたのもそのタイトルのものであった。
「トランプ」の後だけあって、柳の下の土壌を狙った曲から始まる。(1)だが、オルガンまで入りよりゴージャスになっている。非常にファンキー。でも「浮浪者」が「放浪者」になっちゃうのは笑える。(9)も同様の路線で、派手に動くオルガンをバックにいなたいフルソンの歌とギターという組み合わせがなんとも言えない魅力を醸し出している。
このアルバムではカヴァがいつになく多いのが特徴だ。フルソンはあまり人の曲をやらなかった({エヴリデイ・アイ・ハヴ・ザ・ブルース」は例外といえる)が、このアルバムでは半分以上が他人の曲だ。まず(2)、ダイク&ブレイザーズのヒットで、ウィルソン・ピケットのヴァージョン(フルソンはおそらくこちらを下敷きにしている)でも知られるダンス・ナンバー。この時代のフルソンのファンキー路線にはぴったりの選曲だが、どこかしら洗練されきらないのはフルソンの持ち味か。ロックっぽいアーサー・アダムズのギターがかっこいい。続く(3)は言うまでもなくABC 時代のレイ・チャールズの曲で、作はアシュフォード=シンプソン。レイは SWING TIME 時代フルソンのレーベル・メイトであり、フルソンのツアー・ピアニストだった。歌唱法にはフルソンも影響も与えていたようで、ATLANTIC 時代「シナーズ・プレア」をカヴァしたりしている。そのレイのヒット曲を今度はフルソンがカヴァしたわけだが、聴き比べるとさすがこのころのレイは貫禄たっぷりだが、フルソンの歌からは、むしろ若いころのレイとの共通点を感じる。(5)は一応自作だが、もろにレイの「ワッド・アイ・セイ」を頂戴していておもしろい。フルソンとアダムズのギターの違いも聴きもの。
(7)はチャック・ウィリスの1953ヒット曲だが、フルソンはリトル・ミルトンの CHECKER 時代のヴァージョンをベースにしているようだ。アダムズのギターが炸裂する。しかしこれだけ人のギターをフューチャーしたのもこのアルバムが初めてだと思う。ブルースのカヴァもある。(10)はジミー・ラッシングがカウント・ベイシー楽団でうたった曲で、フルソンは余裕をもって唄う。この曲も80年来日時見事な唄いっぷりに感動した覚えがある。しかしこのアダムズのソロはちょっとねぇ。(11)はスタンダードとも言えるジェイ・マクシャン楽団でのウォルター・ブラウンの大ヒット曲。リトル・ウォルターがカヴァし、それをストーンズがカヴァしているので、ロック・ファンにもおなじみの曲だ。ここでフルソンは完全に自分の歌に消化しきっている。(8)はカヴァというよりはリメイクと言った方が適切だろう。ゴージャスなアレンジにしてあり、アダムズと思われるギターの絡み(オーヴァーダブっぽい)も悪くない。
残りは自作のブルースで、(4)は軽快なシャッフルで、女性コーラスを配したりブレークをかませたりとキャッチーな作りだ。6はアダムズのギターと絡めながら、最初はワンコードで唄っていくブルース。フルソン、ちょっと気張りすぎかな?(12)は「ブラック・ナイト」を彷彿させるバラード。これがオリジナルアルバムのラストナンバーなんだが、いまいちのできだ。
(13)と(14)はボーナストラック。(13)は(9)とのカップリングでリリースされた曲(ただし[37]のものと異なる長尺ヴァージョン)で、STAX を思わせるシンプルでタイトなバックに乗って、フルソンが熱唱するブルース。フルソンが STAX と仕事をしていたら、おもしろいものができたのではと思うがいかがだろうか。(14)は「44・ブルース」の香りがする3連系のリフを持ったクリスマス・ブルースで、いかにもフルソンといった曲と歌だ。本来は2部構成なのだがこのCDでは1トラックにまとめられており、かつステレオ。明らかに別のトラックなんだからちゃんと分けて欲しかった。
以上通して聴いてみると、このアルバムがフルソンにとっての大きな転換点になっていることがわかる。その特徴は2点で、ひとつは他人の曲が急速に増えていること。フルソン自身のソングライティング能力に衰えがきたというよりは、ブルースのフォーマットから脱却しなければ売れないという時代の要請に対する、ひとつの回答のように思える。もうひとつは他人のギターをかなり前に押し出したということ。これもスタイルの変化に対応しようとするプロデューサーのもがきのように思える。このあとフルソンはさまざまなレーベルを渡り歩くことになるが、ここで明らかになってきた問題点をずっと引きずり続けることになる。見方を変えれば「トランプ」というブルースを越えた、ある意味ブルースマンとしては革新的なヒットを出したフルソンだが、自分自身がその変化に乗り切れていかなかったということになるだろうか。
[33]:THE 'TRAMP' YEARS (ACE CDCHD 755)
- Tramp
- I'm Sinking
- No Hard Feeling
- Get Your Game Up Tight
- Goin' Home
- Two Way Wishing
- Back Door Key
- Make A Little Love
- I Wanna Spend Christmas With You -pt. 1
- I Wanna Spend Christmas With You -pt. 2
- The Thing
- Everything That I Took Away
- Lost Lover
- It Takes Money
- Don't Bother Me
- Little Girl
- Hobo Meetin' (Tramp Meetin')
- Blues Pain
- What The Heck
- The Sweetest Thing
- Lovin' Touch
- Price For Love
- Blues Soul
- Pico
世紀末になってとんでもないコンピがリリースされた。「Tramp」をベースにしながら、未発表6曲、シングルのみでリリースされた10曲を含む画期的なコンピだ。[31]とのダブりは(1)〜(7),(24)、[32]のボーナストラック(9),(10)(ちゃんと2パートに分けて収録),(18)で、残りは一部いくつかのCDに分散されて収録されたもの(後述)を除けばおそらく初CD化である。ジャケットは「Tramp」のものをベースにしている。
まずは「Tramp」に収録された曲のうち、シングルでリリースされたものの裏面の曲から。(8)は「トランプ」のアンサー・ソングと言っていい曲で、本当に「ロック」と呼ぶべきアレンジだ。女性コーラスも入っている。(11),(17)はいずれもインストで、(11)はスピード感のあるエイトビート、(17)は「トランプ」タイプ。(19)はロックっぽいエイト、けっこうかっこいい(なお[37]に収録されているのはこれよりやや短いヴァージョン)。(20)は「ブラック・ナイト」タイプのスロー・ブルースでけっこうタイトな演奏。
KENT505というシングルは1969年にリリースされているようだが、「Blues Records 1943-1970 A-K」のリストには記載されていない。21はツイン・ギターから入る「トランプ」タイプの曲。柳の下を何度も狙うフルソンだが、出来は悪くない。(22)は落ち着いたスローブルースで、フルソンの作品には珍しくバックにハープが入っている。これは長尺ヴァージョンで収録。
残りは未発表曲で、(12)はエイモス・ミルバーンの「バッド・バッド・ウィスキー」を軽快にしたようなポップなナンバー、ブラスがゴージャスだ。(13)は「トーリン・ベル」などに通じるスローブルースだが、アレンジのせいか結構明るいイメージに聞こえる。(14)はこの時代ならではのファンキーなエイトビート。印象的なギターリフと、シンプルでタイトな演奏、なんでお蔵入りしたのだろうか。(15)はボビー・ブランドの曲のようなゴージャスなブラスと決めのついたシャッフル。Bメロもありかなりキャッチーだがフルソンの歌が軽くちょっとインパクトに欠けるかな。(16)はジミー・リード・スタイルとでも言ったらよいか。頭のコーラスと跳ねるシャッフルのリズムが特徴的。でもフルソンぽくないな。(23)はファンキーでスピーディなエイトビート。「ブルース・ソウル」といいながら、リトル・ミルトンとは随分アプローチが異なる。
先ほども書いた「Blues Records 1943-1970 A-K」のリストを見ても、この時代の曲でまだCD化されていないものがかなりある。イギリス ACE はあと2枚のコンピを予定していると聞く。早くリリースしてくれないかなぁ。
[34]:21 BLUES GIANTS 17 (P-VINE PCD-3757)
- Tramp
- Black Nights
- Too Many Drivers
- Shatterd Dreams
- Talkin' Woman
- No Hard Feelings
- Little Angel
- Make A Little Love
- Year Of 29
- Everyday I Have The Blues
- I Wanna Spend Chrismas With You
- I'm A Drifter
- Let's Go Get Stoned
- Feel So Sad
- Blues Pain
- What The Heck
1995年にリリースされたベスト盤。(1)〜(7),(9)は[31]、(10)〜(15)は[32]に収録。ただし(12)と(13)はヴォーカルが片チャンネルに寄っており、[32]のものとはミックスが異なる。また当時初CD化だった(8)は現在[33]に収録されており、さらに(16)も[33]に収録されているものと同じ録音だが、収録時間が短い。高地明氏の丁寧なライナーが付いており、バランスのいい選曲だ。ジャケットの写真は「Now!」の一部を利用。
[35]:BEST BLUES MASTERS (P-VINE NONSTOP PVCP-8126)
- Black Nights
- Talkin' Woman
- Too Many Drivers
- Shatterd Dreams
- Ask At Any Door In Town
- Goin' Home
- The Letter
- Tramp
- Two Way Wishing
- Everyday I Have The Blues
- My Aching Back
- Push Me
- Blues Around Midnight
- Goin' To Chicago
- Love Her With A Feeling
- When THings Go Wrong
- Lovemaker
- I'm A Drifter
こちらは1997年リリースのベスト。(1)〜(6),(8),(9),(11),(13)は[31]、(7),(10),(12),(14),(18)は[32]に収録。ただし(10)はモノラルでミックスが異なり、(18)は[34]のものと同じミックスとなっている。(15)〜(17)は1978年にKENT傍系のBIG TOWNからのアルバム「LOVEMAKER」(ジャケットもこのアルバムのフルソンの顔を拡大)からの選曲で、これらについてはまた後ほど。
[36]:BLACK NIGHTS (ACE CDCHD 804)
- Black Nights
- Just One More Time
- Every Time It Rains
- My Heart Belong To You
- Too Many Drivers
- Key To My Heart
- Strange Feeling
- What's Gonna Be
- No More -pt. 1
- No More -pt. 2
- Little Angel
- Sittin' Here Thinkin'
- Shattered Dreams
- Blues Around Midnight
- Talkin' Woman
- Change Your Ways
- My Aching Back
- Trouble I'm In
- Ask At Any Door In Town
- Lonely Day
- Lonely Lonely Man (aka My Story)
- I Won't Care Anymore
- Hustlers Game
- Years Of 29
副題に"The Early KENT Sessions"とあり、1964年から67年までのセッションの曲が集められている。このうち(1)〜(3),(5),(11)〜(13),(15)〜(17),(19)は「Soul」収録曲であり、[31]に収録(ただし(17)は終りが5秒ほど長い)されている((14)も「Soul」収録曲だが、これはLPヴァージョンと異なり、ギターソロのないシングル・ヴァージョン。)。このためかジャケットには「Soul」で使われていたポートレイト写真がアップで用いられている。また(20),(23),(24)は「Tramp」収録曲で、これも[31]に入っているが、[31]はステレオであったのに対し、こちらはモノラルで、(24)は終りが5秒ほど長い。
KENTでフルソンが最初に出したシングル(2)の裏面が(4)で、アービー・スティッダムのヒット曲。重厚な8小節のスロー。ごつごつしたヴォーカルとギターがフルソンらしい。また(5)の裏面が(6)で、ブレイクが印象的な変則的なシャッフル・ナンバー。「リコンシダー・ベイビー」をさらにごつくしたようなギターソロだ。
マックスウェル・ディヴィスが録音に絡むようになると、ブラスが加わり演奏がゴージャスになる。スロー・ブルース7はその典型で、CHECKER時代に通じる気張った歌い方。途中に入る派手なブレイクがインパクトたっぷり。(8)も後の「Soul」に収録された曲に近いかなり派手なシャッフル。これもブラスが大暴れし、ブレイクで変化をつけている。ギターソロはかなり柔らかい。(18)もゴージャスなホーンセクション、伸びのある歌と、いかにもこの時代らしいサウンドで隠れた名曲。ギターも実に「大股」でフルソンの魅力たっぷり。
これに対し比較的地味な(9)と(10)は同一曲だが、いわゆる2パートではなく、(9)が「トゥー・メニー・ドライヴァ」に通じる曲調の、ピアノが効いたシャッフルなのに対し、(10)は全くリズムの異なる2ビート系のアップ・ナンバーだ。終盤はややどさくさっぽい。
残りは未発表曲。(21)はブラスが効いたシャッフルで、メロディは「コンフェッシン・ザ・ブルース」から拝借している。ピアノ主体の演奏をバックに、低音で歌うソウル・バラード(22)、途中の「ヘヘッ」という笑い?がこの時代のフルソンらしい。かなり渋いナンバー。途中ヴォーカルを一部オーヴァーダブしている。エンディングやかなりどさくさ紛れだが。
最後に、このアルバムの収録曲はすべて[37]に納められている。
[37]:THE COMPLETE KENT RECORDINGS 1964-1968 (P-VINE PCD-3066〜9)
DISK 1
- Black Nights
- Little Angel
- Everytime It Rains
- Just One More Time
- My Heart Belongs To You
- Too Many Drivers
- Key To My Heart
- Strange Feeling
- What's Gonna Be
- No More -pt. 1
- No More -pt. 2
- Shattered Dreams
- Sittin' Here Thinkin'
- Talkin' Woman
- Blues Around Midnight
- Change Your Ways
- My Aching Back
- Trouble I'm In
- Ask At Any Door In Town
- Lonely Day
- Hustler's Game
- Get Your Game Uptight
- Years Of 29
- Two Way Wishing
- Back Door Key
- Confessin' The Blues
DISK 2
- Tramp
- Make A Little Love
- I'm Shinkin'
- Goin' Home
- Pico
- No Hard Feeling
- Everyday I Have The Blues
- I Cried
- The Thing
- I'm A Drifter
- Hobo Meeting
- I Wanna Spend Chrismas With You -pt. 1 & 2
- Tomorrow
- Push Me
- Let's Go Get Stoned
- The Letter
- Blues Pain
- Mellow Together
- Funky Broadway
- Feel So Bad
- Going To Chicago
- What The Heck
- The Sweetest Thing
- Lovin' Touch
- Price For Love
DISK 3
- Blue Shadows
- New Worried Life Blues
- My Story (Lonely Lonely Man) -take 6 & 7
- I Won't Care Anymore
- Don't Bother Me
- Lost Lover
- Little Girl
- Unknown Instrumental #2
- Worried Life Blues
- Let's Talk It Over
- Everything That I Took Away
- Welcome Home -take 13
- Welcome Home -take 14
- The Drifter / You're Gonna Miss Me
- Blues Soul
- It Takes Money
- Chocolate Walk / Lonesome Train (The Thing)
- I'm Shinkin'
- What The Heck
- Blues Pain
- Price For Love
- My Aching Back
- Black Nights
DISK 4
- Radio Ad, WOKJ, Jackson< Mississippi (Too Many Drivers)
- Too Many Drivers -take 5
- My Hearts Belongs To You
- What's Gonna Be -take 15
- Strange Feeling -in a session
- Strange Feeling -take 8
- Get Your Game Up Tight -take 8
- Blues Around Midnight
- Year Of 29
- Talkin' Woman -take 5
- Talkin' Woman -take 17
- Ask At Any Door In Town -take 1
- Tramp -take 1
- Let's Go Get Stoned -take 1
- Let's Go Get Stoned
- I Cried -take 2
- Feel So Bad -take 2
- Blues Pain -take 3
- What The Heck -take 5
- Funky Broadway -take 1
- The Sweetest Thing -take 2
- Everyday I Have The Blues -take 4
21世紀になり、まさに快挙というか、あえて暴挙と言うべきかといった決定的ボックスセットが出た。フルソンのKENT時代の全シングル・アルバム収録曲に、未発表、別テイクをてんこ盛りにした4枚組で、赤いジャケットが強烈。帯の裏側によると、「DISK 1」=ディープ・ブルース集、「DISK 2」=ファンキー・ブルース集、「DISK 3」=未発表曲中心、「DISK 4」別テイク、セッション集となっている。ブックレットも充実しており、ジャケットとはまた異なるフルソンの横顔、さらに裏表紙は代表作のジャケット写真があり楽しめる。
「DISK 1」「DISK 2」は[31][32][33][36]ですべて聴くことができる。また3-(3),(4)は[36]、3-(5)〜(7),(11),(15),(16)は[33]に収録されている。さらに4-(8)はアルバム・ヴァージョンで[31]に収録されているもの(1-(15)は[36]に収録)である。
では残りの曲について、3-(1)はSWING TIME、CHESSに続く得意曲の再録でホーンがゴージャスだがタイトさに欠ける。3-(10)もSWING TIME時代にやっていた「カム・バック・ベイビー」(元々はウォルター・ディヴィスの曲)のリメイク。結構饒舌なソロで、曲は8小節なのにソロが12小節、その結果3番の歌も12小節になっていて、歌を適当にごまかしているのが面白い。また3-(14)はアップテンポの「ユー・ゴナ・ミス・ミー」で、80年来日の時の演奏を思い出させる。シャカシャカした演奏で、やや単調か?
3-(2),(9)はビッグ・メイシオの名曲のリメイクで。(2)の方は5〜6小節のコード進行がモダンでフルソンらしいごつごつしたギターが堪能できる。他方(9)はまったく別のヴァージョンで、女性コーラスが入り、ピアノが良く転がっている。大股のギターソロがフルソンらしい。
3-(8)は「トーキン・ウーマン」風のボトムリフから入るインストで、ミディアムのゴリっとした感じがフルソンらしい。ちょっとCHESS時代の「ローリン・ブルース」を思い出させる。また3-(12),(13)はファンキーな8ビートで、ベースがよく唸っている。バックはギター2本で、とくに(13)の方のソロが実にフルソンらしい。好演だがボツになったのは曲に「売り」がないからか?
[DISK 4]はまさにマニア向け。まずトップの4-(1)が編集者の小出さんの趣味がよく出ていて面白い。これはコマーシャル・テープでDJが「2ドルで20曲のブルースを」「ミシシッピ、ジャクソン」などの言葉が。曲はエルモアの「ダスト・マイ・ブルース」、B.B.キングの「スリー・オクロック・ブルース」そしてフルソンの「トゥー・メニー・ドライヴァ」と続く。まだ続くようだがフェイドアウト。こんなのがラジオから流れてきたら僕もウキウキしてしまいそうだ。
演奏の完成度が高いものは4-(2),(4),(6),(7),(11),(17),(20)〜(22)で、(2)は[31]収録の別テイクとも異なるもの。タイトないい演奏で、途中から右チャンネルにドラムが入ってくる。ややテンポが速いか。(4)は歌詞が若干異なっている。(21)は最初に失敗テイクが入っていて、歌詞も少し異なる。(22)はヴォーカルが右チャンネルに寄っている。
一方本テイクと全く異なるのは4-(9)で、低くうなるようなヴォーカルが珍しい。また4-(14),(15)は同じ曲で、(14)は女声コーラスがなく、その分ギターのオブリが派手になっている。一方(15)は本テイクに女声が絡んだもので、ちょっと派手すぎか。この他ギターがおとなしい4-(3)、ちょっともたった感じの4-(10),(13)で、特に代表曲(13)ではドラムをレズリー・スピーカーに突っ込んだような音のいじり方をしている。また4-(16)はギターが派手、4-(18)はピッチが高めで歌詞が少し違っている。4-(19)の方はかなりピッチとテンポが遅く、ブラスは派手目。4-(12)はバック、歌ともにこなれていない。4-(5)はテイク1からのセッション風景。イントロのリズムを決め込んでいくあたりが面白い。フルソンがバンドにいろいろ注文をつけている。
この一箱があればKENT時代のフルソンはほぼ完全に押さえられると言ってもいい。我が家の家宝のひとつが増えた感じだ。全部通して聴くと、満腹すぎてちょっともたれるかもしれないが。
[38]:THE FINAL KENT YEARS (ACE CDCHD 831)
- I'm A Drifter
- Funky Broadway
- Let's Go Get Stoned
- Push Me
- The Letter
- I Cried a.k.a. I Cried Like A Baby
- Feel So Bad
- Everyday I Have The Blues
- Mellow Together
- Going To Chicago
- Confessin' The Blues
- Tomorrow
- Blue Shadows
- Let's Talk It Over a.k.a. Come Back Baby
- Worried Life
- Welcome Home
- All I Want Is You To Love Me
- When Things Go Wrong a.k.a. It Hurts Me Too
- Love Her With A Feeling
- Your One Success Is On Me
- I Am Not Worried a.k.a. Sittin' On Top Of The World
- Lovemaker
- Bending Like A Willow Tree
- Get The Cash And Let The Credit Go
- My Mind Is Trying To Leave Me Too
2002年になって出されたもので、「Now!」([32]のボーナス以外)の全曲と「Lovemaker」([47]のボーナス以外)の全曲、それにシングル曲、未発表が収録されている。このうち1972年のシングルとされる(14)と(15)(録音はそれぞれ68、67年)は[37]に収録されているし、「未発表」とされているもののうち、(13),(16)も[37]に収録済み。クレジットの(2002)という年号表記はちょっとおかしいと思う。もしかするとP-VINE盤は権利の関係でヨーロッパでは売られていないのかもしれないが。 唯一正真正銘の未発表テイクは(17)で、[47]にも収録されているが、テイクが異なる。1968年録音のようで、ゴリっとしたボトムリフに、フルソンにしては珍しくアンプリファイド・ハープが絡んでいる、シンプルなブルース。
なお、ジャケットは「Now!」のキャデラックの前に立つ写真を使用しているが、オリジナルのものから文字を消したため、後のビルの形が変わっているのが御愛敬だ。
[F]:FUNKY BLUES 1960'S - 1970'S (P-VINE PCD-3061)
- Mellow Together
- Funky Broadway
- The Thing
- The Drifter
- Hobo Meeting
表題の通りMODERN/KENTのファンキー・ブルース集。リリースされたときはいずれもレアだったが、(1),(2),(4)は[32]に、(3),(5)は[33](ただしミックスが異なり、こちらはギターなどがそれぞれ片チャンネルに寄ったステレオ)に収録されている。ジャケット右上のフルソンの表情がすばらしい。
この他「MO' FUNKY BLUES; NEW STANDARDS」(P-VINE PCD-3887)の4曲目に"Blues N Soul"が収録されているが、これは[33]-(23)と同じもの(ただし20秒ほど収録時間が長い)だ。
CHESS と KENT の間に当たる1964年、フルソンはMOVIN'/PROWLIN'/RIDE といったウエストコーストのレーベルに録音を残している。「Blues Records 1943-1970 A-K」に従って以下にリストする。
- Stop And Think (MOVIN' 128 PROWLIN' 128)
- Stop And Think -alt.
- Baby (MOVIN' 128,131 PROWLIN' 128)
- You Gonna Miss Me (MOVIN' 131,RIDE 139)
- Tomorrow (RIDE 139)
- Henpecked
これらの作品のうち、(3),(4)は近ごろ「I'VE GOT THE BLUES」(FUEL 2000 302 061 082 2)、これらに加え(1)((2)?),(6)も「I've Got The Blues (...And Then Some!)」(WESTSIDE WESD 234)でCD化された。ただし(6)は音を聴く限り70年代に入ってからの録音と思われ、「Blues Records」のリストに誤りがあると思われる。(2),(5)は以下のLPに収録されているようだが、現物すら見たことがない。
Man Of Motion (CHARLY LP 1018)
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