ブルースのCD(ヒストリカル=リイシュー)
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- Mojo Hand
- Coffee For Mama
- Awful Dream
- Black Mare Trot
- Have You Ever Loved A Woman
- Glory Bee
- Sometimes She Will
- Shine On, Moon!
- Santa
- How Long Has The Train Been Gone
- Bring Me My Shotgun
- Shake That Thing
- Last Night
- Walk A Long Time
- I'm Leaving With You Now
- Houston Bound
- Just Pickin'
- Baby I Don't Care
FIRE/P-VINE PCD-5749「ブルースについて」で触れた真っ赤なジャケットのライトニン・ホプキンスの再発盤。ジャケットはLPの迫力には到底かなわないが、当時の雰囲気を少しでも出そうという紙ジャケ仕様。図柄はLPと同じ。
(10)以降は原盤にないボーナス・トラック。
冒頭の2曲のブギ(なるべく大音量で聴こう)が凄い!生ギター+リズム・セクションでこれだけの乗りが出ちゃうんだから、脱帽するしかない。70年代後半の遠藤賢司って、けっこうライトニンの影響受けてるかもしれない。(7),(10)あたりも同系統といえる。
軽快な(4),(14),(17)はインストで、特に(14)は、こりゃ「ハイダウェイ」ですな。フレディ・キングの方がリリースが早く、かつ大ヒットしたので、パクッたか?でも、これは完全なライトニン節だ(タイム感がめちゃめちゃなあたりも)。
残りは濃厚なスロー・ブルース((5)もフレディ・キングに同名の曲があり、歌詞はまるで違うが、メロディには共通点も多い)で、特にオリジナル・リリースの(3),(6)は特に鬼気迫るものがある。(8)は8小節と12小節(ただしあちこち寸詰まったり伸びたりする)の混合だが、言いようのないムード。この曲がベストかな。続く(9)はクリスマス・ソング?!!!
この時代(いわゆる再発見後)のライトニンは、白人フォークソング・ファン向けのレーヴェル(BLUESVILLEなど)にも録音を残している(決して悪くはない)が、ボビー・ロビンソンという、ニューヨークの黒人レコード店主の下での録音は、やはり一味違うものがある。初めてブルースを聴く人で、アコースティックなものが好きな人には一押し!の名盤。
CHICAGO BOUND ; JIMMY ROGERS
- You're The One
- Money Marbles And Chalk
- Ludella
- Act Like You Love Me
- Back Door Friend
- Last Time
- I Used To Have A Woman
- Sloppy Drunk
- Blues Leave Me Alone
- Out On The Road
- Goin' Away Baby
- That's All Right
- Chicago Bound
- Walking By Myself
CHESS/MCA CHD-93000戦後シカゴ・ブルースで1枚推薦して欲しいと頼まれたら、僕は迷うことなくこのCDを選ぶ。名盤中の名盤だ。ジミー・ロジャーズは、マディ・バンドの大番頭とでも言うべきギタリストで、シカゴ・バンド・サウンド形成にとって、彼の果たした役割は大きい。推薦盤として、なぜ、マディを選ばないかというと、マディはその個人の存在感があまりに大きすぎて、バンド・サウンドとしてのシカゴ・ブルースの魅力が、目立たなくなる。その点、この作品は、当のマディを含んだ、見事なバンド・アンサンブルが展開されている。
まず聴くべきは(12)、シカゴ・クラシックとでも言うべきこの作品、リトル・ウォルターのダウンホームなハープと、ビッグ・クロフォードのベースに支えられて、この切ない歌を唄う。以前の自身のヴァージョンに比べても、完成度が高く、聞き惚れてしまう。同じリトル・ウォルターでも、(1)や(9)(クラプトンが演ってた)になると、アンプリファイドされ、ぐっとモダンになる。また、(2),(4),(11)などで聴くことができる、芯の太いマディのギターとのアンサンブルも見事だ。ジョン・リー・”サニー・ボーイ”ウィリアムソンのヴァージョンを発展させた(8)や、メンフィス・スリムの曲の改作で、アルバム・タイトルとなっている(13)では見事にロッキンしている。そして(14)、ここで聴けるウォルター・ホートンのハープは絶品だし、ウィリー・ディクスンらしいR&B色を全面に出したアレンジも、ジミーは上手く消化している。ジャケットのアップの顔写真も真っ黒で格好いい。チェスのシカゴ・ブルースで、何から手をつけていいか分からないあなた!これから始めよう。
BLUES LIVE! ; JOBERT JR. LOCKWOOD & THE ACES
- Sweet Home Chicago
- Going Down Slow
- Worried Life Blues
- Anna Lee
- One Home Country Shack
- Stormy Monday
- Feel All Right Again
- Honky Tonk -inst.
- Mean Black Spider
- Little And Low
- You Upset Me Baby
- Sweet Little Angel
- Just Like A Woman
- Juke
VIVID SOUND VSCD-011ブルースを聴き始めた大学生の頃、レコード屋でた棚を漁っていたときに目に付いたのがこのアルバムだった。当時ロックのライヴ盤に目がなかったので、有名曲が並ぶこの盤を、ロックウッドが誰かも知らずに買った。そして、それが大当たり!1974年、東京で録音されたこのレコードは、史上最高のブルース・ライヴ盤の1枚と言っても良いだろう。
まずは(1)、ロックウッドの「叔父」ロバート・ジョンソンの名曲が、フォームは踏襲しながら、スリリングなアンサンブルを聞かせる、シカゴ・バンド・ブルースに仕上がっている。このアルバム全編に言えるが、2本のギターの絡み合いが最高におもしろい。続く(2)や超有名曲(6)のスロー・ナンバーで聞かせるロックウッドのソロは、ブルースの域を軽々と越えた、変幻自在なもので、初めて聴いたときは本当に驚いた。これぞ正にロックウッド節だ。一方ルイス・マイヤーズが唄う(4)は、正統派シカゴブルースと言った感じで、深みがある。また、スピード感溢れるインストの(8)、軽快なフレッド・ビロウのシャッフルをバックに、ルイスが縦横無尽に弾きまくる。シカゴのクラブでは、連日こんな演奏が繰り広げられ、人々を踊らせていたんだろうな。そしてオリジナル・アルバムでは(10)の重々しいロックウッドの歌で幕を下ろす。CD化に際し、(11)〜(14)が追加され、さらに未発表だった録音で、「ブルース・ライヴ・II」が出されているが、やはりこのCDの10曲に勝るものはない。
なお、余談だが、ジャケットの右の方に写っているおじいさんは、この時一緒に来日して、憂歌団とも共演した、ハミー・ニクソンだ。
100% COTTON ; THE JAMES COTTON BAND
- Boogie Thing
- One More Mile
- All Walks Of Life
- Creeper Creeps Again
- Rockett 88
- How Long Can A Fool Go Wrong
- I Don't Know
- Burner
- Fatuation
- Fever
BUDDAH/ONE WAY OUT OW 27670BUDDAH という、ロック系のレーヴェルから1974年にこのアルバムがリリースされたとき、かなり物議を醸したようだ。これをブルースの未来形と捉えるか、ロックやファンクによろめいたと捉えるか、当時のリスナーは相当戸惑ったようだ。しかし、ジェームズ・コットンの選択は正しかったと、21世紀を眼前にしてきっぱり言いたい。
コットンはこれ以前にロック・サークルとの共演をおこなっており、1971年にはトッド・ラングレンとアルバムを制作している。この時もギターを弾いていたのがマット・マーフィで、けっこうタイトな演奏であったが、やや実験的で散漫な印象が拭えない。それに対し本アルバムは、メンバーを絞り、よりタイトにして成功した。特にドラムのケニー・ジョンソンは、伝統的なブルース・サークル出身者とは明らかに異なるビート感を持っていて、それが(1),(4),(5)のスピード溢れる演奏につながっている。また、このアルバムのアレンジで、重要な役割を果たしたのが、マット・マーフィである。例えば元々はスロウ・ブルースであった(2)を、見事なファンク・ブルースに仕立てている。さらにウィリー・メイボンの(7)をタイトに仕上げているが、のちにマットが参加したブルース・ブラザーズでも、同様のアレンジで演奏している。やはりこのアルバムは、「ジェームズ・コットン・バンド」の作品だ。その他(6)はコットン来日時にもラストで延々演っていたし、リトル・ウィリー・ジョンの(10)もかっこいい。必聴盤。ちなみにジャケットの「綿100%」のスタンプ調ロゴ、秀逸なアイデアだ。
TWO STEPS FROM THE BLUES & HERE'S THE MAN ; BOBBY BLAND
- 36-22-36
- You're The One (That I Adore)
- Turn On Your Love Light
- Who Will The Next Fool Be
- You're Worth It All
- Blues In The Night
- Your Friends
- Ain't That Loving You
- Jelly Jelly Jelly
- Twistin' Up The Road
- Stormy Monday Blues
- Two Steps From The Blues
- Cry Cry Cry
- I'm Not Ashamed
- Don't Cry No More
- Lead Me On
- I Pity The Fool
- I've Just Go To Forget You
- Little Boy Blue
- St.James Infirmary
- I'll Take Care Of You
- I Don't Want No Woman
- I've Been Wrong So Long
DUKE/P-VINE PCD-2006 [WPC-5]ボビー・ブランドが、DUKE 時代、最も脂の乗り切っていた時代の2in1がこのCDだ。ショウのスタートを思わせるMCから、女性のスリーサイズをタイトルにした(1)で幕を開ける。何曲かで聞かれるゴージャスなブラス・セクション、クラレンス・ハラマン、ウェイン・ベネットといった名うての職人ギタリストのサポートも素晴らしいが、なんといってもブランドのディープなブルース・ヴォイスがたまらない魅力だ。ダンサブルな(3)や(15)もあるが、メインはスロー・ブルースだ。スタンダードとなっている(6),(9),(10),(19),(20)などの重厚な味わいは見事と言うしかない。特に超有名曲(10)は、このアレンジとベネットのギターワークが、いわゆる「ストマン進行」として、他のミュージシャン(オールマン・ブラザーズ!など)に多大な影響を与えた。また、(17)では「うがい」と呼ばれるブランドのシャウトが満喫できる。このCDの中で最初期の録音が、ハラマンのギターが冴え渡る(22)で、「ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード」からの流れを感じることができる。また(12)に代表されるバラード・ナンバーでは、のちのABC、MALLACO 時代に引き継がれていく、ブランドの魅力が目一杯出ている。ちなみにジャケット写真は「Here's The Man」のもの。!が3つ並ぶのが格好いい。
FRENZY ; SCREAMIN' JAY HAWKINS
- I Put A Spell On You
- Little Demon
- Alligator Wine
- Frenzy
- I Love Paris
- Hong Kong
- Person To Person
- There's Something Wrong With You
- Orange Coloured Sky
- Temptation
- Yellow Coat
- If You Are But A Dream
- You Made Me Love You
- Deep Purple
DEMON/EDSEL ED CD 104先日70才で他界した(彼の場合はとても天に召されたとは言えない)偉大かつ異色のブラック・エンターティナー、スクリーミン・ジェイのコンピで、1982年に出た LP のストレート・リイシュー。彼の CBS 時代のベスト盤とでも言うべき内容で、まずジャケットから凄い!サレコウベのヘンリー君がアップで迫って、目をひんむいたスクリーミンのイラスト、ジャケット見ただけでLP買ってしまった。まずはC.C.R.のカヴァーで有名な(1)、こりゃストーカーの歌ですな。バリトン・サックスの音と混じり合ったおどろおどろしい歌い方(この人、声は素晴らしい)で、あちこちに奇声が挿入されている。こんなのに迫られたら、怖いなぁ。黙って追っかけるストーカーはもっと怖そうだけど。
この他、訳のわからん言葉と言うか擬音が多いのがこの人の特長で、(2)の「マムァムァ・・」とか、(3)のアマゾン風味とか、映画音楽のような(5)じゃドイツ・中国・アフリカと各国語?でなんか言ってるし、(6)の怪しい中国風?音楽??ワルツのリズムに意味不明の言葉が!彼の中国語?は中国語に聞こえない(スリム・ゲイラードの方がもっともらしい)のだが・・。(13)など、ちゃんと唄ったかと思うと、「マムマム」とか「ギェイ」とか出てくるし。さらに歌い方が大仰で、(7)はクリーンヘッド・ヴィンソンを十倍派手にした感じと言えばいいか。(10)は中近東風味が漂う演奏で、朗々と言うか、大袈裟に唄う。
ポップ・スタンダードのような曲を演ってもスクリーミンがやると異様な世界が出現する。(9)や(12)など何と例えればよいのか・・・どこまでまじめにやっているのだろうか?むしろ本人大まじめなのかもしれない。ラストの曲などスクリーミンとしては随分まともに唄っているんだが、やっぱり何か違うんだよね。
こう書くと、いかにもゲテモノのようだが(確かにゲテモノか)、不思議と癖になる。これだけ自分の世界を作られちゃうと、「参りました」という気分になって、ズッポリハマってしまう。ダマされたと思って一度聴いて欲しい。なお、"Voodoo Jive: The Best of Screamin' Jay Hawkins"(RHINO R2 70647)には、本盤の重要曲がほぼ網羅されている上に、「便秘のブルース」(真実の苦痛の歌だそうだ)という、スクリーミンの芸風を語る上で必聴の曲が収録されている。こちらもお薦め。しかし、死ぬ前に一度ライヴ見ておけば良かった。ちなみに1990年来日時のインタビューが、吾妻光良「ブルース飲むバカ歌うバカ」(BMR BOOKS 1993)に収録されている。一度お読みあれ!
T-BONE WALKER ; T-BONE WALKER
- Got A Break Baby
- Mean Old World
- No Worry Blues
- Don't Leave Me Baby
- I'm In An Awful Mood
- I Know Your Wig Is Gone
- T-Bone Jumps Again
- Call It Stormy Monday
- You're My Best Poker Hand
- First Love Blues
- She's My Old Time Used To Be
- T-Bone Shuffle
- That Old Feeling Is Gone
- Plain Old Down Home Blues
CAPITOL/TOSHIBA TOCP-6380非常にインパクトのあるジャケットのアルバムで、1942〜47年、T-ボーンにとっては初期の CAPITOL、BLACK & WHITE、COMET などの録音のベスト集。とにかくクールなブルースだ。超スタンダード(8)にしたって、冷静そのもの。バリバリ弾きまくることを期待すると、肩透かしを食うが、何度聴いても味のあるギターと歌だ。(2)もこれと双璧をなすジャジーなスローブルースで、スタンダード化している。一方アップでは(7)のインストやこれも代表曲の(12)など、格好いいアレンジとバンド・アンサンブルをバックに、華麗なギタープレイが満喫できる。都会の大人のブルースだ。さらにルイ・ジョーダンなどに通じるジャイヴィーな(6)や、ラテン・ビートとスペイン語を交えた(14)など、当時の彼のステージがどのようなものであったかを、ジャケットの「大股開き背中回しギター」とともに想像させてくれる。このT-ボーンとチャールズ・ブラウンがモダン・ブルースの発展に果たした役割はきわめて大きいと思う。これを聴かずしてブルースを語るなかれとでも言うべき1枚だ。この後 IMPERIAL ではよりゴージャスな演奏を聴かせるようになり、そちらもお薦めだ。
DRIVING WHEEL ; LITTLE JUNIOR PARKER
- Driving Wheel
- I Need Love So Bad
- Foxy Devil
- Someone Broke This Heart Of Mine
- How Long Can This Go On?
- Yonder's Wall
- Annie Get Your Yo-Yo
- Tin Pan Alley
- Someone Somewhere
- Seven Days
- The Tables Have Turned
- Sweet Talking Woman
- Sweet Home Chicago
- Five Long Years
- Next Time You See Me
- In The Dark
- Barefoot Rock
- Wondering
- Strange Things Happening
- These Kind Of Blues
DUKE/MCA MCD 32643DUKE と言えばボビー・ブランドが有名だが、ジュニア・パーカーはその先輩格に当たり、パーカーとブランドはともにチトリン・サーキットを廻っていた。このCDはパーカーのオリジナル・アルバムにボーナス・トラックを加えたヨーロッパ盤で、おおよそ1956年から63年の録音が収められている。
まずはタイトル曲の(1)、名曲だ。後に多くのカヴァーを生んだが、メンフィス・サウンドに乗って、ハイトーンの伸びやかなヴォーカルが素晴らしい。ブランドとは対照的なこの声のためか、日本ではあまり高く評価されていないように思えるが、きわめて魅力的であり、マジック・サムが好んで彼の曲を取り上げたのも頷ける。ブルース・クラシック(13)はその1曲で、ここでの歌詞がサムに取り上げられているし、ギタープレイもかなり影響を与えているように思える。ここで聴けるハープ、パーカーは何とサニーボーイIIのバックでハープを吹くことからプロの道をスタートしたそうで、テクニカルとは言えないが、良く歌う生音には捨てがたい魅力がある。大スタンダードとなった(15)では、バックのパット・ヘアのギターが結構エグいのに、パーカー自身はさらっと上品に唄い上げている。全体としては60年代に向けて、R&B色の強い曲やアレンジが目立ってくるし、ちょっとエッチな(7)や軽快な(17)など、ロックンロールとでも言うべき曲もあるが、アメリカ中を廻ったショウマンシップを感じることのできる1枚だ。現在は「Junior's Blues」(DUKE/MCA MCAD-10669)というベスト盤が手に入りやすく、代表曲を網羅しているが、ジャケットの良さ(でかい車でご満悦っていうのは、当時の黒人のあこがれだったろう)でこのCDを取り上げた。
21 BLUES GIANTS 1 ; OTIS RUSH
- I Can't Quit You, Baby
- Sit Down Baby
- Violent Love
- My Love Will Never Die
- Groaning The Blues
- If You Were Mine
- Love That Woman
- Jump Sister Jump
- Three Times A Fool
- She's A Good 'Un
- It Takes Time
- Checking On My Baby
- Double Trouble
- Keep On Loving Me Baby
- All Your Love (I Miss Loving)
- My Baby's A Good 'Un
COBRA/P-VINE PCD-3741オーティス・ラッシュはやはりこの COBRA 時代が一番だと思う。1956〜58年にウイリー・ディクソンのプロデュースの下録音、リリースされた作品を集めたアルバムは、過去たびたび出されてきたが、これもそのひとつで、ラッシュの COBRA に残された全シングルをリリース順に並べたもので必聴の一枚だ。ちょっとジャケットのデザインが画一的で、クールさに欠けると思うが。まず(1)、イントロをぶった切っていきなりラッシュの情感溢れる歌でスタートするこの曲は、その後たびたび再録され、多くのカヴァーも生んだが、やはり最高傑作と言ってよいだろう。ウェイン・ベネットのギターが歌に絡みつき、ウォルター・ホートンのハープがドロドロした感じを強調している。この他(4)(マジック・サムがカヴァー)、(5),(13)などのスローは、マイナー系のコードが多用されている。(4)などはディクソンらしい曲だ。その表面であった(3)は元々はディクソンのレパートリーで、洒落た小唄だが、僕は意外と好きだ。
一方アップでも魅力を発揮する。(9)や(11)はリフを強調したシャッフルの名曲で、非常に格好良い。また、リズムが跳ねる(8)、ミディアムで粘っこい(10)なども佳曲だが、ここにもディクソンの仕事を感じる。そしてクラプトンがブルース・ブレイカーズ時代に取り上げ(CHESS での再録をコピー)、フリートウッド・マック〜サンタナの「ブラック・マジック・ウーマン」の元歌となった(15)、ルンバ調のマイナーっぽいスローから一転アップになるところのギターのたたみかけなど、何度聴いてもしびれる。COBRA のラッシュを聴かずしてブルースを語るなかれだ。
AT THE GATE OF HORN ; MEMPHIS SLIM
- The Comeback
- Steppin' Out
- Blue And Lonesome
- Beer Drinkin' Woman (Rockin' The House)
- Slim's Blues
- Gotta Find My Baby
- Messin' Around
- Wish Me Well
- My Gal Keeps Me Crying
- Lend Me Your Love
- Sassy Mae
- Mother Earth
- What's The Matter
- This Time I'm Through
- Guitar Cha Cha
- Stroll On Little Girl
VEEーJAY/P-VINE PCD-5253「エヴリデイ・アイ・ハヴ・ザ・ブルース」のオリジネイターとされるメンフィス・スリムの1959年リリースのアルバムに、1958年録音を加えた本作は、ギタリスト、マット・マーフィーの代表作としても知られる。メンフィス・スリムは戦前から BLUEBIRD などに録音を残すシンガー・ピアニストで、朗々とした歌い口と、都会的なスタイル(ジャケットからもそうした雰囲気を感じる)が魅力なのだが、ディープなブルースを好むむきからは、やや敬遠される傾向があった。ピアノも、バンド演奏の中で真価を発揮するタイプで、派手なピアノソロなどが売りではない。このアルバムでは、三管を従え、シカゴ・ブルースとしてはゴージャスで都会的な演奏を聴かせる。「エヴリデイ」の元歌「ノーバディ・ラヴズ・ミー」に似たピアノのリフで始まる(8)などは、そうした曲の代表と言える。(1)も巧みなアレンジの施された佳曲で、スマートなブレークから後半のランニングに入るところなどはけっこうスリリングで心地よい。反面(3)や(7),(12)などのスローでは、落ち着いて洗練された都会的な歌を聞かせる。
このアルバムのもうひとりの主役が、ブルース・ブラザーズでもおなじみのマット・マーフィーだ。がんがん弾きまくるといった感じではなく、アクセントをつけるような的確なバッキングと、ぺらぺらな音だが、プレイシーなソロが随所にちりばめられている。(2)のインストはクラプトンがカヴァーしたので有名になったが、練りに練られたソロが印象的だ。(13)〜(16)は1958年録音の、オリジナルにはないボーナス・トラックだが、ギターの音がよりファットで、管が1本しかないせいか、よりギターが目立つ。(15)などはマット・マーフィーのためにあるような曲だ。
メンフィス・スリムはこの作品を最後に活動の舞台をヨーロッパに移した。
WAITING FOR LITTLE MILTON / BLUES 'N' SOUL ; LITTLE MILTON
- It's Amazing
- Who Can Handle Me Is You
- Woman, You Don't Have To Be So Cold
- The Thrill Is Gone
- Monologue 1
- That's How Strong My Love Is
- What It Is
- Little Bluebird
- Woman Across The River
- Behind Closed Doors
- Sweet Woman Of Mine
- Worried Dream
- How Cold You Do It To Me
- You're No Good
- Tain't Nobody's Biz-Ness If I Do
- Hard Luck Blues
STAX/ACE CDSXD 052リトル・ミルトンは、このCDのタイトルにもあるように、チトリン・サーキットでの黒人聴衆向けの演奏活動の中から、ブルースとソウルの融合を、理屈でなく正に体現してきたアーチストといえる。この姿勢は BOBBIN 時代からみられ、CHESS 時代に開花したが、STAX に入るとますます円熟していく。これは、レーベル自体が60年代後半から70年代前半にかけて、SOULの牽引役のひとつとなっていたこともあり、アルバート・キングもアプローチは異なるが同様の路線を歩んでいた中で、当然の方向性といえるし、ミルトン自身がこのレーベルと契約したのもそうしたことをよく理解してのことだと思われる。それだけにこの時代の彼の充実度は素晴らしいものがあり、シングル集「The Complete Stax Singles」(CDSXD 106)を聴くとその様子がよく分かる。
さて、このアルバムは1972年から74年の作品を集めた「Waiting For..」(STX 4117)と、1974年のアルバム「Blues 'N' Soul」(STX 8514)の 2in1 (ジャケットは両方のアルバムの写真を並べてあるので、ちょっと見にくい)で、この時代のミルトンの魅力を幅広く捉えた好盤だ。(4)はご存じB.B.キングがヒットさせた曲(オリジナルはロイ・ホーキンス)だが、ここでのミルトンの歌と演奏は、B.B.のそれを上回っていると思う。B.B.の場合、かなり冒険的にこうしたソウルやエイトビートに取り組んだ面を感じる(同曲を収録した[Complete Well」など、そうしたアルバムだ)のだが、ミルトンは自然体なのだ。だからかえってB.B.よりゆとりを感じる。(6)もゆったりした名唱だし、ジョニー・テイラーで有名なスローブルース(8)も、見事に自分のものにしている。一方で CHESS 時代の代表曲「ウィー・ゴナ・メイク・イット」に通じる軽快な(7)など、さらっとした佳曲だ。
しかしこのCDの聴きどころは、(9)以下の「Blues 'N' Soul」だろう。僕はこのアルバムを20年以上前に聴いたとき、一種の衝撃を覚えた。当時僕はかなりブルースとソウルを区別して考え、聴いていたのだが、それを合わせたタイトルのアルバムについて、正直半信半疑だったのだ。当時ミルトンを殆ど聴いたことがなかったし。そこで騙されたと思って聴いてみたが、僕のそれまでの固定観念を完膚無きまでにこの作品は打ち砕いたのだ。それは(9)に針を落とした瞬間から始まった。表情が豊かなヴォーカル、ゴージャスだが嫌味のないアレンジと演奏。(10)に進むと僕はさらに引き込まれた。楽曲が素晴らしいのだ。サビのメロディはすぐに覚えてしまった。とにかくこの曲だけでも聴いていただきたい。ブルースとソウルの融合がここにある。この他ボビー・ブランドに通じるマイナーの(11)さらに(14)はヴェティ・イヴレットのヒットのカヴァーだが、1975年にリンダ・ロンシュタットが大ヒットさせる。ひょっとしてこのミルトンのヴァージョンも大きな影響を与えているかもしれない。この他(12),(13)のスローブルースも魅力的だし、スタンダードの(15)(ジミー・ウィザースプーン)や(16)(ロイ・ブラウン)も見事な解釈で唄い上げている。この 2in1 は入手困難だと思われるが、「Blues 'N' Soul」単独盤だけでもぜひ聴いていただきたい。
BLUES IS KING ; B. B. KING
- Introduction
- Waitin' For You
- Introduction
- Gambler's Blues
- Tired Of Your Jive
- Night Life
- Buzz Me
- Don't Answer The Door
- Blind Love
- I Know What You're Puttin' Down
- Baby Get Lost
- Gonna Keep On Loving You
BLUESWAY/MCA MCAD-31368B. B. King の推薦盤といえば、「Live At The Regal」があげられる。ゴージャスで変化に富んだ、素晴らしいアルバムだ。しかし多くの人に推薦されているので、ここでは敢えて別のアルバムを紹介したい。ABCがブルース専門レーベルとして設立したBLUESWAY第1弾であるこのアルバムは、「Live At The Regal」のほぼ2年後、(8)のヒットの最中にシカゴで収録されている。音質はややオーヴァー気味で、ぶつぎりの編集など、不満もあるが、最も脂の乗り切った時期のライヴであり、「Regal」の陰に隠れているが、すばらしい演奏を捉えている。
イントロデュースに続いて、ミディアムなシャッフル・ナンバーからスタート。余裕を持った感じの「Regal」に比べ、ストレートにブルースを唄い上げていく感じだ。メンバー紹介の最後に愛器ルシールの紹介をつけるのがB.B.らしくていい。ジャケットのルシールを愛情を持って弾く姿とダブってほほえましい。そしてこのCDの目玉のひとつが(4)だ。オーティス・ラッシュのカヴァーも素晴らしいが、おそらくこの演奏に刺激されたのではなかろうか。情感のこもった歌が聴く者の胸を打つ。しかしそれにもましてこのアルバムの価値を決定づけているのが、ウィリー・ネルソンのカントリー・ナンバーを完全に消化しきった(6)だ。まさに熱唱と呼ぶしかないこの歌、後にルーサー・アリソン、ジミー・ウィザースプーンなどが取り上げることになるが、このヴァージョンに勝るものはない。ハウリング寸前に持ち上げたギター、ゆったりと入っていくが、気持ちが入るに従ってテンポを上げていくところが圧巻だ。この1曲を聴くためだけにこのアルバムを買っても損はない。ルイ・ジョーダン・ナンバー(オープニングに長らく「レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール」を使ったり、「カレドニア」もしばしば取り上げるなど、B.B.は本当にこの人が好きだ。最新作もルイ・ジョーダン集だし)に挟まれた当時のヒット曲(8)も、監修の熱い声援に乗って素晴らしいが、(6)の後ではやや影が薄い。シャッフルの(8)や(12)などでの丁寧なギタープレイは、ギター・フリーク必聴だ。音数や速弾きでなく、一音一音感情を込めて弾くプレイをぜひ味わって欲しい。まさに「ブルースは王様」だ!大音響で聴きたい。
MUDDY WATERS AT NEWPORT ; MUDDY WATERS
- I Got My Brand On You
- I'm Your Hoochie Koochie Man
- Baby, Please Don't Go
- Soon Forgotten
- Tiger In Your Tank
- I Feel So Good
- Got My Mojo Working
- Got My Mojo Working -pt. 2
- Goodbye Newport Blues
CHESS/MCA CHD-31269このライヴが収録された1960年は、ブルースにとっては「冬の時代」であった。1955年以降ロックンロールが市場を席巻し、CHESSの看板がチャック・ベリーに取って代わられた頃(そのチャックにCHESSを紹介したのは、他ならぬマディ自身だが)から、マディを初めとしたブルースマンのレコードに一種の「迷い」が感じられるようになる。そして一方ではフォーク・ブームに端を発した白人リスナーたちのブルースへの興味に迎合していく動きも感じられるようになる。この「ニューポート・ジャズ・フェスティヴァル」出演も、そうした流れの中で行われたのであろう。しかし、演奏はこの時代のマディ・バンドの充実ぶりを世に示すこととなった。
晴天の下、ギターを抱え(ジャケット写真のギターは、撮影用にジョン・リー・フッカーの楽器を借用したそうだ。当時のマディはテレキャスターを使用している)、さっそうと登場したマディは、あくまでも「男」を強調する。新曲の(1)、メンフィス直送のパット・ヘア(gtr)、ジェームズ・コットン(hrp)に、義弟オーティス・スパン(pno)、さらにフランシス・クレイという強力なバックに支えられ、ダウンホームなシカゴ・バンド・サウンドを展開する。代表曲(2)も、ややおとなし目とはいえ、かなりいたであろう白人聴衆に臆することなく唄い上げている。しかし客の反応が静かだ。ビッグ・ジョー・ウィリアムズのスタンダード(3)、得意のスライドで始まる(4)に続く軽快な(5)、観客から手拍子が起こるが、歌詞は大変な代物だ。なにしろ「お前のタンクにタイガー印(EXXON)のガスをぶち込んでやる」て言うんだから、男だねぇ。マディの後見人だったビッグ・ビル・ブルンジーの(6)は10年ほど前にナイキのコマーシャル・ソングに取り上げられている。黒人の足の動きのバックで流れたが、イメージ通りの軽快な名演だ。そしてこのアルバムの最大の聴き物は(7)だ。アンコールを含め、この演奏により会場を興奮とダンスのルツボと化したのがひしひしと伝わってくる。幾多のバンドがラスト、あるいはアンコールでこの曲を取り上げるようになったルーツがここにある。この興奮をクールダウンするのが、黒人詩人ラングストン・ヒューズが即興で作った詩を、オーティス・スパンがしっとりと唄う(9)だ。ここに素晴らしい知性の輝きを感じる。
マディの場合、まずはCHESSのヴィンテージ(例えば「Best Of Muddy Waters」)から聴くのが王道だと思う。でもこのアルバムもぜひ聴いて欲しい。スタジオとは違った何かを感じることが出来るはずだ。
HONKY TONK! - THE KING & FEDERAL R&B INSTRUMENTALS
- Honky Tonk -pt. 1 ; Bill Doggett
- Honky Tonk -pt. 2 ; Bill Doggett
- Hide Away ; Freddy King
- Blues For The Red Boy ; Todd Rhodes Orch.
- Flamingo ; Earl Bostic & His Orch.
- Long Gone -pt. 1 ; Sonny Thompson with The Sharps & Flats
- Long Gone -pt. 2 ; Sonny Thompson with The Sharps & Flats
- Pot Likker ; Washboard Bill with Mickey Baker & King Curtis
- The Big Push ; Cal Green & His Orch.
- After Hours ; Jimmy Nolen
- Slow Walk ; Bill Doggett
- San-Ho-Zay ; Freddy King
- Washboard Story ; Washboard Bill with Mickey Baker & King Curtis
- Early In The Morning Blues ; Johnny Otis with Johnny 'Guitar' Watson
- Green's Blues ; Cal Green & His Orch.
- Gainsville ; Roy Gaines
- Strollin' With Nolen ; Jimmy Nolen
- In The Morning ; Washboard Bill with Mickey Baker & King Curtis
- Space Guitar ; Young John Watson
- Louisiana Hop ; Pete 'Guitar' Lewis
- River Boat Dock ; Washboard Bill with Mickey Baker & King Curtis
- Let's Rock (Let's Surf Awhile) ; Johnny Otis with Johnny 'Guitar' Watson
- The Stumble ; Freddy King
- Hold It ; Bill Doggett
ACE CDCHD 761これはナイスな選曲のインスト集だ。まずはビル・ドゲット(ジャケット右端か?)の超有名曲「ホンキー・トンク」で始まる。ビルボードのポップ・チャートでトップ5ヒットとなったこのインストは、ビリー・バトラーのギターとクリフォード・スコットのテナー・サックスを大々的にフューチャーしたダンス・チューンで、多くのカヴァー(JBからロギンズ&メッシーナまで!)を生んでいる。ブルースバンドなら1度は演るという名曲だ。でも、ビル・ドゲットのKING時代のCDって見ないし、2パートとも収録したコンピってあったかな?というわけで、これだけでこのCDは価値があると思う。この他柳の下のドジョウ狙いのドゲット・ナンバーが収録されている。
フレディ・キングはFEDERAL時代に数多くのインスト・ヒットを飛ばしたが、ここにある3曲がマスト。完璧な選曲だ。アール・ボスティックは結構ポップな曲を演るムード派アルトのイメージがあるが、「フラミンゴ」ではかなりのホンカーぶりを発揮している。サニー・トンプソンはKING=FEDERALの録音でしばしば顔を出すピアニスト(フレディ・キングのバックでよく弾いてる)で、このレーベルのフィクサー的存在だったようだ。「ロング・ゴーン」はいかにもダンス・チューンといった曲であるが、軽妙なピアノを聴かせる。ジミー・ノーレンはELKOやMODERNなどでも吹き込んでいるウエストコースト出身のギタリストというよりは、JBの「コールド・スウェット」のギターだ。テキサス=ウエストコースト・マナーの、達者で結構トリッキーなギターを聴かせている。
さて、ウオッシュボード・ビルだが、これは実質的にミッキーベイカーとキング・カーティスのユニットと言っていいだろう。「イン・ザ・モーニング」はミッキーのコンピにもしばしば取り上げられた名演だ。とにかくミッキーはギターの音からしてワイルド!カーティスのサックスも切れ味が鋭い。この他、先日来日して吾妻光良との競演盤も好調のロイ・ゲインズの代表曲「ゲインズヴィル」は文句なしにかっこいいし、ロックンロールするカル・グリーンの「ザ・ビッグ・プッシュ」、「グリーンズ・ブルース」はローウェル・フルソンの「ロー・ソサエティ」をロッキンしたような演奏でいかしている。さらにウエストコースト・マナー丸出しのジョニー・オーティス・バンドのギタリスト、ピート・ルイスの「ルイジアナ・ホップ」など、まさにこれでもかの怒濤のインスト集だ。
最もユニークなのがヤング・ジョン・ワトソンの「スペース・ギター」だ。スペースは文字どおり宇宙のことで、リヴァーブを上げたり下げたりして表現しているのがおかしい。でもこの人って、ジョニー・ギター・ワトソンではないだろうか?だって、ペケペケの音質、下世話なフレーズ選び、得意のフレーズ、間違いないだろう。
こうして通して聴いてみると、はからずも、ニューヨークvsテキサス=ウエストコーストのインスト対決となっているのが分かる。カーティスのように両方にまたがっているものもいたり、フレディのようにシカゴのエッセンスが詰まっているものもあるが。とにかく大音量でこのブリブリバリバリを聴きながら、夏バテなんかぶっ飛ばせ!
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