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アコースティック・ユニット「美女と野獣」のあゆみ その5
15,再構築
結成以来1年半、それこそ馬車馬のようにどんどんレパートリーを増やし、ライヴをやってきた。幸いにもいろんな場所での演奏機会に恵まれていたので、場数を踏むこともできた。でも、ライヴに追いまくられるように練習をしていく中で、大切なものをどこかに置き忘れていたのだ。それは演奏する自分たちが「音を楽しむ」ことだったのではないのか。自分たちにとって「気持ちのいい音」を出すことだったのではないのか。そう考えた二人は、膨れ上がったレパートリーから曲を厳選し、1曲1曲の「音の絡み」を再構築するという作業を始めた。とりあえずは目の前に予定されている「アコースティック・フェスタ」*1に向けて、古くからのレパートリーを、細部にわたってチェックしながら音づくりをしてみたのだ。すると、今まで実にアバウトに演奏していたことに気付いた。コードの食い違い、リズムの食い違いなどが随所にあるのだ。これらをひとつひとつ直し、演奏を合わせていくと、音自体は見違えるほど良くなっていった。でも今度は演奏に固さが出てしまう。アバウトならではの柔らかさがなくなってしまうのだ。これは今までサボってきたことのツケだろうか。「産みの苦しみ」と思い、そのまま続けていくことにした。幸い今回の「アコースティック・フェスタ」では、あっとぺっぷ*2のマキさん*3が「A Song For You」にピアノをつけてくださることになった。彼女の自由奔放なスタイルが、どうしてもかっちりしがちな演奏を柔らかく、楽しいものへと変えてくださった。また一度事前にお店にうかがって音を合わせたときにも、貴重なアドバイスをいただいた。あっとぺっぷで「美女と野獣」の原点を思い出すことができたのだ。こうした出会いに感謝したい。
2006. 4. 1. SAT あっとぺっぷ「アコースティック・フェスタ」
16,音創りを楽しむ
スカンクがこのユニットで一番やりたいことは「歌う」ことだ。そしてサチコにとっては「ギターを弾く」ことだ。この単純明解なことを再確認し、今までのレパートリーを見直していくことにした。サチコが求めるのは、単なる歌の伴奏ではない、フィンガーピッキングを生かした広がりのあるサウンドだ。歌とギターが調和していくような、でも決して歌のバックで埋没しない、存在感のある音。一つひとつの音やコードを見直しながら、フレーズや和音を練り込んでいく。一方スカンクは、アルペジオやスライドの特性を生かしたフレーズで変化をつけ、サチコのギターとのコンビネーションを考えていく。歌、コーラス、性格の異なる2本のギターという四つの音要素を、有機的に結びつける作業を始めたのだ。もちろんサチコの歌も健在だ。「歌う」という表現は、言わば自分をさらけ出すこと。そこには何ものにも代えられない「強さ」がある。サチコの歌はサチコにしか歌えない。そして歌から自由になったスカンクは、ギターにより工夫を凝らすことができる。
1曲の練習に1時間以上があっと言う間に過ぎていく。豊かな音を紡ぎあげていく作業には、ライヴとは違う面白さがあるのだ。
こうして4ヶ月音づくりに専念し、それまでのレパートリーから7曲を厳選して、7月にあっとぺっぷでリニューアルライヴに臨んだ。風丸*4、SALTYヒロシ*5というすばらしい共演者に恵まれ、マキさんから「過去最高の演奏」とお褒めをいただいた。演奏した側からすると、特に熟成が足りないオリジナル曲には反省点も多かったけど、確かな手ごたえを感じたし、程よい緊張感の中、音を楽しみながら演奏し、それを聞き手が楽しんでくださるといった、ライヴ冥利に尽きるプレイができたのが何よりの喜びだった。続く「アコースティック・フェスタ」では、サチコはスチール弦、スカンクはメタルボディと楽器を持ち替え、それぞれ弾き語り、ソロギターを1曲ずつ披露、そして二人で演奏した「君の友達」に、ユニットとしての気持ちを込めてみた。これからも1曲1曲を大切にした音創りを楽しみ、その成果をライヴで確かめていくというスタンスでやっていきたい。「いつ聴いてもあの曲はいいなぁ」なんて感想がいただけるようになったら、それは最高だ。そんな音楽を目指したい。2006. 7.22. SAT あっとぺっぷ
2006. 8. 5. SAT あっとぺっぷ「アコースティック・フェスタ」
17,ゆっくりと、一歩ずつ
8月のアコースティック・フェスタの後、再びしばらくライヴ活動を控えることにした。ライヴに追われていると、どうしても「目先の音」にとらわれ、新しいサウンドを組み上げていくことができない。聴いてきた音楽も指向も全く異なるふたりが、ふたりで出したいと思える音、このふたりだからこそ出せる音、というのを、手探りで探す時間が欲しかったのだ。
最初のレパートリーだった「キャンディ・マン」のスライドに手を入れたり、「Killing Me Softly With His Song」のアレンジを大幅に変えたり。オリジナル曲も、「歌詞が生きるアレンジ」を心がけて見直しを図った。弾きながら、時には飲みながら。時間制限なしに取り組めるのはアマチュアならではの贅沢かな。二人分の好みと技術との折り合いをつけるのは、思った以上に大変な作業だったけれど、だんだん出来上がっていく達成感や、音創りの楽しさを存分に味わうことができた数ヶ月だった。
11月、2周年を迎えた美女と野獣は、デビューしたときと同じあっとぺっぷで、yukoさん*6という素晴らしい共演者とライヴをすることができた。拙さはあっても、進化しつつある音を披露できたと思う。また、12月にライヴハウス風鈴で行われたイベントでも、暖かい仲間に囲まれて、何とか演奏を全うすることができた。音楽を通して広がっていく人間関係、これも音楽活動の財産だな、と、いまさらのように思う。
2007年、またしばらくライヴはお休み。焦らずゆっくりやっていこうと思う。(つづく)2006.11.18. SAT あっとぺっぷ
2006.11.25. SAT あっとぺっぷ「アコースティック・フェスタ」
2006.12.17. SUN 風鈴「大桟橋 beat'n harmony」<その1>・<その2>・<その3>・・・<その4へ戻る>
*1 あっとぺっぷで年3回ほど行われているライヴイヴェント。弾き語りからグループまで、様々な楽器を持ち寄って、
いろんなジャンルの演奏を楽しむ。実はエレキでも良かったりする。
*2 しまった!今までちゃんと紹介してなかった。六角橋に30年以上続くジャズ・カフェ。スカンクも25年くらいのつきあいがある。
かつては洋ものカラオケの充実もすごかった。土曜日にライヴが行われることが多い。
*3 そのあっとぺっぷの美人ママ。いつまでも若くて素敵な人。出演者に愛情ある批評をくださるのも嬉しい。
*4 かつてはフォークグループ「たっぴ」、ロックバンド「ルードボーイ」のヴォーカルとして活躍、
今は六角橋に風丸工房(通称「猫屋」)というクラフトショップをやりながら、弾き語りで素敵な歌を歌う。白楽のMidtown閉店前日に大暴れしたとか。
*5 野毛界隈を中心に30年以上歌い続けている辻シンガー。アルバム2枚発表。その華麗なフィンガーピッキングと味わい深い歌で、
場をあっと言う間に彼ならではの世界に塗り替える。最近はサックスの白庄司さんと共演することが多い。
*6 ウクレレを爪弾きながら、ジャズのスタンダードからポップスまでを可憐に歌う女性歌手。
ジャズの基礎トレーニングと英国仕込みの英語の素晴らしさで、思わず聞き惚れてしまう。共演はただで演奏を楽しめるので嬉しい。
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