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アーティストの名前順に並んでいます。「TODAY'S CD」で紹介したものは紹介文が付いています(日付)。紹介文のないものは「おすすめCD」か「お気に入りのミュージシャン」の中で紹介されているもので、「Click Here!」をクリックすると該当のページにジャンプします。

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Paco Shipp ; One In A Million ; EARWAVE EW 115 (2010. 3.29)

2008年リリースのナッシュヴィル録音です。パコはハーモニカ吹きとして知られていますが、ギターも達者で、ちょっとボブ・ディランを思わせるラフ・タッチの歌もけっこう味があります。何曲かドブロでロブ・アイクスがその腕前の片鱗を披露。でも面白かったのはカントリー系の曲ではなく、「ネヴァー・サティスファイド」「ライク・ユー」「ベター」といった、スワンプ・ロックに通じるような泥臭さのある曲です。「ダウン・ヒア」のちょっとファンキーな感じも悪くないですね。多才な人だなと思いました。




Palm Court Jazz All Stars ; Vol. 5 - Sweet, Hot & Lowdown ; GHB BCD-480 (2008. 5.20)

2005年リリース。ニューオーリンズ・スタイルのオールド・ジャズを今に引き継ぐバンドのシリーズ5作目のようです。ヴォーカルにロバート・ハリスやトプシー・チャップマン、バーバラ・ショーツを迎え、ゆったりとした演奏から軽快なナンバーまでやってます。嬉しかったのは大好きな「アイル・フライ・アウェイ」と「リル・ライザ・ジェイン」が入ってたこと。これだけで僕は満足しちゃいました。



Panorama Jazz Band ; Another Hot Night In February ; PANORAMA JAZZ BAND PR-9038 (2004. 1.11)

2003年リリース。このニューオーリンズのバンドはクラリネットとアコーディオンをメインに、トロンボーンやバンジョーが入っていて、バンド名からするとディキシーランド・ジャズ・バンドかなとも思えますが、ずっと幅広い音楽性を持っています。曲によってはカリブの香りがたっぷりですが、一番面白いのは、クレズマー・ミュージックです。哀愁のあるクラリネットの音色で、東ヨーロッパ由来と思われるユダヤ人のメロディが奏でられますが、こんな音楽が街角で流れていたら、思わず足を止めて聴き惚れてしまいそうです。大スタンダード「サニー・サイド・オヴ・ザ・ストリート」をやっても、その独特の雰囲気は他に例のないものです。彼の地の音楽が、ヨーロッパの庶民の音楽を雑多に吸収して生まれたんだなということを再認識させられました。



Papa Grows Funk ; Doin It PAPA GROWS FUNK ; no number (2001. 7. 3)

待望のアルバムが届きました。もちろん2001年リリースです。頭の2曲はJOSSIE時代のミーターズを緻密にしたような感じで、随所にミーターズからの引用がみられます。ジョン・グロスのB-3はさほど歪まない明る目のサウンドで要所を押さえます。ギターの山岸潤史のバッキングはツボを心得た完璧なもの。「ジャンカー・マン」あたりではちょっと弾きすぎとも思いますが、曲のタイトルからすれば納得です。もう少しディストーションを抑えたらもっと粒だったと思うんですが。ブラスが加わった曲のソロは抑制が適度に効いていて上手さが引き立っています。それからリズム隊はもう言うことがないです。スピードとグルーヴいずれも一級品。ファンクありフュージョンありっていう感じで、楽しめました。でも「このバンドの音って何?」って問うたときの答えは見つかりません。上手いけど自己主張がないという印象でした。



Papa Grows Funk ; Shakin' ; PAPA GROWS FUNK FYK-23 (2003. 4.17)

2003年リリースの新譜が届きました。前作がちょっと焦点のつかみにくい作品だったんですが、今作はジョン・ミングルドルフのサックスをかなり前に出し、ミーターズ色を引っ込めて成功したと思います。山岸のギターも出すぎずシャープにサウンドを押さえていますし、ラッセル・バティストのドラムもマーク・ペロのベースと上手く絡んでいつになくファンキー。技術の高さには定評がありましたが、バンドとしてのうねりが前作よりぐっと強く感じられます。「ヤキニク」なんて曲があると嬉しくなっちゃいますね。「ハウス・オヴ・ラヴ」はポップなミディアムでちょっとアートが後期のミーターズに歌ってたような曲調です。「ソウル・セカンド・ライン」ではブラスバンドをかぶせてワイワイパーティ気分ですが、背後にクールなセンスを感じます。「スリンキー・スネイク」でちょっとフュージョン入っちゃってますが、タイトル曲のクールなファンクネスでチャラ。歌ものも前作より印象的で、これは快作だぁ!



Papa Grows Funk ; Live At The Leaf ; FUNKY KREWE FYK 33(2006. 4.28)

2006年リリース。多分2005年春のライヴなんでしょう。ドラムがバティステからジェフリー・アレクサンダーに変わり、ややシンプルでタイトな感じになりました。これが良く動くマーク・ペロのベースとマッチしてますね。前作のスタジオ盤と同様、ミングルドルフのサックスを前に出したことによって、音に暖かみが出て、有機的なファンクネスとなっているように思います。技の見せあいに終始する感じではなく、ジャムバンド的な絡み合いが楽しめました。ちょっとフュージョンみたいなところもあるんですが、リズムがぐっと泥臭く、ファンクネスを感じさせていいです。でもどこか印象には残らないんです。曲にインパクトが足りないように思いました。



Papa Grows Funk ; Mr. Patterson's Hat ; FUNKY KREWE/BUFFALO LBCY-507 (2007. 4. 4)

2007年の新譜です。このバンドも結成されて7年、初期の作品に比べ、丸くなったというか、メンバー感のサウンドが融合されて来たように思います。どちらかというと少し軽めのファンクが中心で、サックスが軸になったリフに他の楽器が絡んでいく印象が強いんですが、個々のプレイヤーの技量が高いので方に力を入れずに聴くことができます。まあその分スリルはあまり感じませんが。歌ものの「ウォーキン・イン・アワ・オウン・シューズ」などキャッチーさがでて来ています。全体にジャズ寄りにシフトした感じなんですが、「ゴー!」などはなかなか低重心のファンクでいい感じ。ただアルバムの収録曲が多すぎるためか、個々の曲が印象に残りにくいのが残念。10曲くらいでいいじゃないでしょうか?



Papa John Creach ; Papa John Creach ; ACADIA ACA 8089 (2007. 9.12)

1971年リリース。パパ・ジョン・クリーチはこの時代よく知られたブルース系のフィドル・プレイヤーで、ロック・サークルとの交流も深い人でした。おそらくこのアルバムもそうした流れで生まれたんだと思います。冒頭のグレース・スリックの歌とか「パパ・ジョンズ・ダウン・ホーム・ブルース」でのカルロス・サンタナの結構オーソドックスなブルース・ギターとかもありますが、極め付けは「ソウル・フィーヴァー」のジェリー・ガルシアかな。ジャキジャキ切れる彼らしいバッキングとソロが印象的です。クリーチのプレイは結構アタックが強く、たたみかけるようなフレーズもあり、テキサス系のギターを聴いているように錯覚する瞬間もあります。「セント・ルイス・ブルース」「オーヴァー・ザ・レインボウ」「ダニー・ボーイ」とスタンダードを取り上げていますが、決してムードに流されない快演ですね。



Papa Lightfoot & Sammy Myers ; Blues Harmonica Wizards ; OFFICIAL 5254 (2004. 9.15)

パパ・ライトフットが絡んだ1949〜54年の録音と、サミー・マイヤーズの関連した1957〜60年録音のカプリングです。サミーの方はACEのコンピなどでたびたび出されていた「スリーピン・イン・ザ・グラウンド」などですが、エルモア・ジェイムズの「ヤンダー・ウォール」まで入っていました。サザン・ハープの気持ちいい演奏です。さてメインのライトフットですが、バンピングのしっかりした、切れ味のいい演奏で、「聖者の行進」のインストなど、相当なテクニックを聴かせます。スタイル的にはしっかり伝統を継承していると言えましょうか。トレインピースなどもあります。ヴォーカルはダミ声でこれまた荒っぽさが魅力的です。この他エドガー・ブランチャードやチャンピオン・ジャック・デュプリーのバックで吹く演奏も収められていますが、もっと活躍の場を与えられていてもよかったのではと思いました。



Papa George Lightfoot ; Goin' Back To The Natchez Trace ; ACE CDCHD 548 (2007.12.21)

1969年のVAULTのLP「Natchez Trace」に未発表を6曲加えたものです。MALACOスタジオで録音されたこのアルバムは、良くドライヴするアンプリファイド・ハープと、多分ハーモニカ・マイクを直接通して歌ってると思われる、ヴァリトン気味の渋いヴォーカルを上手く捉えており、トレイン・ピースの「ニュー・ミーン・オールド・トレイン」のゆったりしたノリなんかとても心地良いグルーヴです。オリジナル・アルバムが全曲自作曲だったのに対し、未発表には「ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー」なんてクラシックも入ってたりします。このアルバムを出してわずか2年後に他界するなんて、本当に惜しいなあ。



Papa Mali ; Do Your Thing ; FOG CITY FCCD 009 (2007. 2.24)

表示は見当たりませんが、新譜でしょう。このアルバム、何とも説明のしにくい音楽です。どこか呪術的で、ファジーなギターとかドブロ、スライド、ワウといった音の揺らぎをたっぷり効かせたサウンドが満載です。ジャジーな小唄「ハニービー」でもどこか抜けたような雰囲気がありますし、「アーリー・イン・ザ・モーニング」ではファンキーなサウンドをバックにモンク・ブードローやゴールデン・イーグルスが叫んでたりします。ゲストにはこの他カーク・ジョゼフ、ヘンリー・バトラーなんて名前も見えます。どこかニューウェイヴでちょっとジョニー・ラングやエルヴィス・コステロを思い出させる歌い方、ボコンボコン言うドラムの音と、なんとも摩訶不思議なんですけど、効いてるといつのまにか引き込まれるんですよね。



Paris Slim ; Bleedin' Heart ; GLOBE/MOUNTAIN TOP GLO-018 (2002. 1.22)

1996年リリース。まずこのパリス・スリムという(おそらく)白人、とっても歌がうまいです。変に力むことのない声で、若々しく、でもブルース・フィーリング溢れるヴォーカルは聴き手をどんどん引き込む魅力があります。またギターも大変達者で、エルモアばりのボトルネックから、初期のクラプトンを彷彿させる粘っこいサウンドの「泣き」のギター、切れ味あるフレージングと、音作りにも細心の注意がはかられ、実にしっかりしたアルバムになっています。ソニー・ローズ、ジョー・ルイス・ウォーカーも参加して彩りを添えています。曲もオリジナルが多く(ティム・カイハツ作が3曲あり、関係が深そう)意欲を感じます。欲を言えば、絶対の個性がないのが玉に傷かな。でもデューク・ロビラートほど「器用貧乏」な感じはしませんでした。



Frank Goldwasser ; Bluju ; CROSSCUT CCD 11077 (2003.11.14)

2003年リリース。この人誰かと思ったらパリス・スリムなんですね。ブルースにしっかり根差しているんですが、かなりモダンなギタープレイも聴かれます。ヴォーカルはちょっと線の細さを感じる瞬間もありますが、丁寧な歌い方だし、変にがなったりしないのがいいな。カーク・フレッチャーがギターを担当している曲があって、好プレイを聴かせます。選曲はオリジナルの他カヴァもありますが、たっぷりひねったアレンジで面白いですね。「アイ・キャント・スタンド・イット」なんてまるでロバート・クレイの曲みたい。インスト「プレイング・イン・ザ・パーク」ではフィリップ・ウォーカーののギターにJ.J.マローンのピアノも入ってます。こうした交流の広さもこの人の魅力になってますね。



Parliament ; Mothership Connection ; CASABLANCA 824 502-2 Click Here!

Pat Donohue & Mike Dowling ; Two Of A Kind ; SOLID AIR SACD 2028 (2008. 4. 5)

2001年リリース。フィンガーピッキングの名手ふたりが、リゾネイタとアコースティックという音色の違うギターで奏でるギター・デュオ・インスト集です。基本的にカントリーやオールド・ジャズの香りが強く、ブルースも泥臭さはありません。チェット・アトキンスに通じる雰囲気の曲、どこかジャンゴ・ラインハルトを意識したような曲など、ふたりとも名手ぶりをいかんなく発揮しています。ただ、歌がないとインパクトが弱いと感じるのは僕くらいなのかなぁ。



Pat Donohue ; Freeway Man ; BLUESKY BSR-929 (2008. 3. 6)

2008に出された新譜です。ソロギターのインスト集で、きらびやかなアコースティック・サウンドをルーム・エコーを効かせて録っています。華麗な指使いが目の前に見えるようなピッキングで、実に男性的な力強さも持っています。根っこはカントリーなんだと思いますけど、ブルースも達者で、オリジナルの中に聴き慣れたトラッドやスキップ・ジェイムズが出てくるとふっと耳を取られます。でもラスト2曲にこの人の多彩さが出ていると思いました。だってベニー・グッドマンの「サヴォイでストンプ」にタンパ・レッドの「ブギウギ・ダンス」ですから。勢いのあるフィンガー・ピッキングに好感を持ちました。



Pat Huggins & A Damn Good Band ; Swede Home Alabama ; FLYIN' WILLIE no number (2006.10.22)

2000年リリース。冒頭の「イージー・ストリート」、心地好いミディアムでC.C.R.の大好きな僕としては、すっと入っていけました。ヴォーカルはややかすれ気味だけど結構味があり、女性コーラスのあしらい方も素敵。上手く売れば流行るんじゃないかと思う曲なんです。ただアルバム全編を聴くとやっぱり粗密がありますね。典型的なルーツ系アメリカン・ロックと言えるんですが、際立つ個性がちょっと足りないかな。「これがパットの音楽だ!」といったものがあると面白くなりそうなんですが。アルバム全体としては良質だけどぐっとはきませんでした。



Pat Huggins & A Damn Good Band ; The Lost Chuseway ; FLYIN' WILLIE PH 0316 (2006.12.19)

2006年リリース。前作よりアコースティック色が強くなり、サウンドにまとまりが出ているように思いました。ちょっと語るようなヴォーカルとか、マイナー調の曲とかを聴いていて思い出したのがダイアー・ストレイツ。エレキとアコースティックのバランスもよく、ギタープレイも的確。スライドギターも達者です。ブルージーな「午前9時のブルース」、ファンクネスを感じさせる「エヴリディ」、アコースティック全開のジャジー名「レイジー・フォーエヴァー」、フォーク調の「ゴッド、ダム・イット、アイ・ラヴ・ユー」、エルモアばりのスライドが唸るけどどこかカントリーっぽい「アイ・ワンダー」など、変化にも富んでいて飽きさせません。でもさすがに17曲はちょっと多いなぁ。決定的なメロディラインの曲がないからだと思いますが。



The Paul Butterfield Blues Band ; The Paul Butterfield Blues Band ; ELEKTRA 7294-2 (2010. 2.16)

1965年リリースのデヴュー盤です。ブルースが大好きだったシカゴ在住の白人の若者たちが中心になって結成されたバンドで、メンバーはポール・バターフィールドの他ギターにマイク・ブルームフィールドとエルヴィン・ビショップ、オルガンはマーク・ナフタリンといずれものちのシーンで活躍した人たちです。リズム隊は黒人でドラムはサム・レイ。シカゴ・ブルースのスタンダードをメインにオリジナルもやっていますが、歌がやや弱いものの、同時代の例えばストーンズのようなイギリスのブルースのカヴァーに比べ、ぐっとシーンに近いサウンドを生み出していますね。特にマイクのギターは爆発的な破壊力を持っています。




The Butterfield Blues Band ; East-West ; ELEKTRA 7315-2 (2005.12.20)

1966年リリース。これもLPから買い直しの1枚です。タイトル曲と「ワーク・ソング」という意欲的な大物2曲の印象が強く、特に後者のテーマをハープでやっているのが初めて聴いた当時凄いなと思いましたが、実は一番気に入っているのは「ゲット・アウト・オヴ・マイ・ライフ・ウーマン」なんです。ラジオでこの曲がかかり、バンドを紹介してたんでLPを買ったんですけど、マーク・ナフタリンのピアノがアラン・トゥーサンの特徴的なピアノを上手く再現していて、良い出来だと思います。ここからオリジナルを聴きに走ったので、僕をニューオーリンズ漬けにした1曲といえるかもしれません。マイク・ブルームフィールド、エルヴィン・ビショップともまだギターの色気は完成されていませんが、ひたむきにブルースに向かう姿は良く捉えられています。ヤードバーズやストーンズ、アニマルズといった同世代のブリティッシュ勢に比べ、響きに独特の明るさがあるのは、さすがアメリカ育ちって感じでしょうか。



Paul Butterfierd's Better Days ; Paul Butterfierd's Better Days ; BEARSVILLE/RHINO R2 70877 (2000. 4. 9)

1973年リリース。「ミュージック・マガジン」誌の別冊「ウッドストック」の巻で紹介されていたのと、前からジャケットがお洒落で気になっていたので聴いてみました。上品でインテレクチャルなアルバムですね。サザンロックの「レイドバック」とはまた違う、余裕のあるサウンドです。とくにエイモス・ギャレットのギターは「大人」のサウンドです。さらっと聴くにはいいですし、名盤だとは思います。でも僕にはちょっと物足りない感じがしました。上手すぎるのかも知れません。


Paul Cebar ; Tommorow Now Yes People Sound For Music ; GROOVESBURG JOYS GJ07 (2007. 6. 9)

2007年リリース。いきなり田舎のサンタナかと思うようなラテンロックが登場してびっくりしましたが、クランチをたっぷり聴かせたギターでリフを奏でながら、ちょっとダミ声で歌っていく音楽、何か耳に残るんですよね。低重心でファンキーな感じでベン・ハーパーあたりを思わせる出だしの「ハウド・ユー・ゲット・ライク・ザット?」も歌が出てくるととたんに人のいい感じになっちゃいます。メンバーの過半数が黒人のようなんで、リズムなどから漆黒な雰囲気は伝わってくるんですが、ヴォーカルやギターが乗ってくるともっと猥雑になります。「フー・キャン・ラヴ・フー」なんてリトル・フィートの「スパニッシュ・ムーン」を泥臭いファンク鍋に突っ込んで煮込んだよう。タブ・ベノアに通じるムードもありますがもっとごった煮ですね。不思議なアルバムです。



Paul Jones ; Pucker Up Buttercup ; FAT POSSUM 80328-2 (2007. 8.24)

1999年リリース。ファズと言うしかないようなジャキジャキにディストーションのかかった自身のギターと、ドラムだけというシンプルこの上ない編成で、ぐいぐい押してきます。タイトル曲はジュニア・ウォーカーの歌が元かな。「リード・ミー・オン」なんてバックはドラムだけって凄さ。「ディー・ディー・ディー」はアーサー・クルーダップの「ザッツ・オール・ライト」の終わりだけを拡張したと言っていいかな。とにかくプリミティヴですが、昔ハウンドドッグ・テイラーを初めて聴いたときのような気分になりました。アコースティック・ギターのものも数曲あります。そんな中、リミックスされた「ゴーイン・バック・ホーム」は制作側の趣味でしょうが、浮いちゃってますね。



Paul Sanchez ; Live At Papa Roux ; THREADHEAD no number (2010. 3.26)

2008年秋にインディアナポリスの倶楽部で行われたライヴで、DVDもついています。ポールについてはジョン・ブッテとの活動で注目していたんですが、しっかりしたテクニックのアコースティック・ギターによる弾き語りは素晴らしいです。ちょっとジャジーだったり、フォーキーだったり、おそらく彼の出自からのラテン風味だったりと、いろんな顔を見せます。超絶的なギターを聴かせるわけじゃないんですが、その穏やかで味のあるヴォーカルを的確に支えています。全部で22曲、ジョン・ブッテなどとの共作もありますがオリジナルで押し通し、そして全く飽きさせないライヴ、見習いたいです。




Paul Sanchez / John Boutte ; Stew Called New Orleans ; THREADHEAD no number (2009. 5.17)

多分2009年リリースです。ジョン・ブッテとポール・サンチェスはここのところ一緒にアルバムを出すことが多いですが、これもその一枚。まずジョン・ブッテの歌はいつも通りの素晴らしさで、ゴスペル・テイストを感じさせるニュアンスの豊かさがたまりません。ポール・サイモンの「アメリカン・チューン」のディープな解釈などまさにお見事!一方サンチェスはタイトル通りのコード進行にジャジーなギターワークが冴える「トゥー・ファイヴ・ワン」がまずいかしてます。でもこのアルバムで一番気に入ったのは「アン・エンプティ・チェア」、分かれの時の切ない男心を、穏やかな中に深い悲しみを感じさせるように歌います。これはもう絶品ですね。




Paul Sanchez ; Exit To Mystery Street ; PAULSANCHEZ no number (2010. 1. 2)

書いてませんが多分2009年のリリースだと思います。ポールはジョン・ブッテとの仕事で知ったニューオーリンズのギタリスト/シンガーで、1曲目の「プア・ポッピン」はそのジョン作の軽快なロッキン・ナンバー。ブラス入りのドクター・ジョンなどにも通じるニューオーリンズらしい「エクジット・トゥ・ミステリー・ストリート」あり、もろスパニッシュな「アディオス・サン・ペドロ」ありと、非常に幅広い音楽性を感じさせます。根っこにあるのはアコースティックなサウンドを生かした歌心で、「アップ・トゥ・ミー」などファジーなギターが入っているんですが、全体としては柔らかく暖かいものを感じさせます。柔軟なアイディアが詰まった作品で楽しめました。




Paul Simon ; Greatest Hits - Shining Like A National Guitar ; WARNER BROS. WPCR-10722 (2006. 2.22)

1971〜97年にわたるポール・サイモンのソロ活動のベスト集です。サイモンとガーファンクル時代から、ゴスペルやフォルクローレといった様々な音楽の要素を取り入れるのにたけていたポールですが、ソロでは特にリズムに対するこだわりが強くなったように思います。まだレゲエやスカがそれほどポピュラーでない時代に「母と子の絆」のような曲をやったり、マーチングドラムを取り入れた「恋人と別れる50の方法」、ラテンフレイヴァーたっぷりの「僕とフリオと校庭で」など、様々なリズムを取り入れることによって、音楽に奥行きを与えていると思います。またゴスペルテイストが好きなのもポールの音楽の特徴で、僕の一押しがディクシー・ハミングバーズをフィーチュアした「母からの愛のように」、これが聴きたくて買ったようなもんです。全体に多彩な音楽を取り入れながらも、しっかりポール・サイモンを主張する、彼の才能が詰ったベストだと思いました。



Paul Simon ; Paul Simon ; WARNER BROS. R2 78899 (2009.10. 5)

1972年リリース。これはS&Gとは異なる、ポール本来の多彩な音楽性を開花させたまさに代表作です。レゲエの「母と子の絆」、フォルクローレの香りが高い「ダンカン」、カリブの香り高い「僕とフリオと校庭で」の3曲が大ヒットしましたが、それだけを聴いてもその幅の広さに驚きます。この他ブルース、オールド・ジャズなどを巧みに取り込んで、自身の柔らかい歌を上手く溶け込ませています。スライドギターを効果的に使った曲が多いのも気に入りました。




Paul Simon ; The Essential Paul Simon ; WAARNER BROS. 159292-2 (2009.10.25)

1972年のソロデビュー作から2006年のアルバムまでを網羅したベスト盤です。1枚目2曲目に大好きな「ラヴズ・ミー・ライク・ア・ロック」が入っているんですが、あのコーラス、ディクシー・ハミングバーズだったんですね。代表曲は網羅されていますが、改めてポールの多彩さと飽くなき探求心に脱帽です。ゴスペル、ラテンはもとよりアフリカ音楽に対しても踏み込んだアプローチをしています。さらにザディコにもチャレンジしていて、ロッキン・ドゥプシーやC.J.シェニエとの共演もあります。バックミュージシャンもマッスル・ショールズの面々を使ったりと、音に対するこだわりは相当なものがありますね。そんな中、「アメリカン・チューン」や「スティル・クレイジー・アフター・オール・ジーズ・イヤーズ」、ジョニー・エイスへの鎮魂歌などのバラードの美しさが素晴らしいです。1990年代以降はぐっとアフリカ音楽に近づき、ドラムを効果的に生かした曲が多くなりましたが、ポールの優しげな声が見事にマッチしていますね。やはり偉大なミュージシャンだと思います。




Paula Watson ; 1948-1953 ; CLASSICS 5104 (2004. 8.31)

ポーラは西海岸で活動した歌手で、ピアノも弾きます。なかなかチャーミングな声をしていて、ブルースも歌いますが、男性コーラスをしたがえたジャイヴな曲に魅力があります。SUPREMEから出してヒットした「ア・リトル・バード・トールド・ミー」などそうした代表ですが、小さめなバンドでちょっと色気を感じさせる、弾力のある歌を聴かせます。DECCAに移るとより豪華なバックとなり、エンターティナーぶりを発揮しています。歌詞も結構際どいように聞こえますがいかがでしょうか。クラブで生で見たら面白かったんでしょうね。



Pee Wee Crayton ; The Modern Legacy Vol. 1 ; MODERN/ACE CDCHD 632 (2000.12.26)

1947〜51年録音の、ピー・ウィーの MODERN 録音集の第1集。いきなり代表曲「テキサス・ホップ」の別テイクから始まりますが、「ブルース・アフター・アワーズ」のような代表曲に混じって未発表テイクが6曲もあります。意外な選曲はジョー・プラムの「ブラック・ギャル」で、出来は平凡なんですが、やっぱりやりたくなるんでしょうね。この他ブギありスローありで、バラエティに富んだ曲をえぐいギターとかわいいヴォーカルで演奏、ピー・ウィーの持ち味全開です。第3集はいつ出るんでしょうか。



Pee Wee Crayton ; Blues Guitar Magic ; MODERN/ACE CDCHD 767 (2000.10. 5)

1949〜51年録音のMODERN録音集第2弾。第1弾は買いそびれているうちに見かけなくなりました。未発表曲も4曲あり、ヒット曲「テキサス・ホップ」もP-VINE盤などとは比較にならない良音質です。ギターは時にT-ボーン丸出しですが、ずっと荒削りでワイルド。これにあのかわいい声が乗ってくると、もう独壇場です。ジョニー・オーティスと肌合いが似てると思うのは僕だけでしょうか。甘めのバラード、昔は苦手だったんですが、今聴くとこれはこれで味がありいいです。



Pee Wee Crayton ; The Essential Recordings ; PURPLE PYRAMID CLP 0960-2 (2001. 5. 3)

何のクレジットもないんですが、NETWORKのカタログによると、ジョニー・オーティスのBLUES SPECTRUM録音だということなので、おそらく70年代でしょう。演奏はちょっと厚みとかグルーヴ感に欠ける面はありますが、ピーウィー自体の演奏はけっこういいです。「テキサス・ホップ」では新機軸を見せたりしていますし、ヴォーカルも相変わらずかわいらしい声でちょっと頼りなげですが、「ニード・ユア・ラヴ・ソー・バッド」「イン・ジ・イヴニン」(自作というクレジットはちょっとねぇ)あたりはけっこう気持ちよく歌えていて良かったです。



Pee Wee Crayton ; Early Hour Blues ; BLIND PIG BPCD5052 (2001. 5. 4)

1983〜84年カリフォルニア録音。ということは来日した頃で、ラスト・レコーディングですね。最初の印象は、本当にピーウィーのギターなの?って感じです。音がかなり歪んでいる上、けっこう深いリヴァーブがかかっていて、何だかロックっぽいフレージングです。でも2曲目(セッションが違う)にいくと間違いないピーウィーのフレーズ。全体的には何だかB.B.キングを意識したようなギタープレイです。ロッド・ピアッツァのハープが絡む曲などもあり、あまり期待しないで買ったわりには楽しめました。



Pee Wee Ellis ; Live And Funky ; SKIP SKP 9021-2 (2001.12.11)

2001年リリース。大当たり!クリティカル・ヒット!いきなりの「チキン」ですよ。「ハウス・パーティ」ではP-FUNKも飛び出すし、とってもおしゃれな「チェリー・レッド」と、ぐっとテンポダウンしたファンクネス溢れる「アイ・ゴット・ユー(アイ・フィール・グッド)」のギャップも素敵です。フレッド・ウェズリーもブイブイいってるし、ヴォーカルのフレッド・ロスもなかなかチャーミング。もうこういったノリはたまりません。ライヴですがきっちりした録音で、とにかく完成度が高いです。流石罰金で鍛えられた演奏力。完全にベスト5です。



Peg Leg Sam ; Kickin' It! ; 32 BLUES 32211 (2002.10.11)

1970年と72年の録音。ペグ・レグ・サムはカロライナで活動していたようで、生ギター、あるいは自身のバンプするハーモニカをバックに、明るめのメロディを持つブルースを歌います。これもピードモントスタイルになるのかしら?かなりプリミティヴですが、いかにもジューク・ジョイントで踊らせたんじゃないかって乗りのいい演奏が多いです。「お約束」のトレイン・ピースや狐追いチューンもあるし、スウィッチングも巧みです。フーピンなども入りますが、サニー・テリーよりある意味わざとらしくない感じです。芸人魂を感じました。



Percy Mayfierd ; Poet Of The Blues ; SPECIALTY/ACE CDCHD 283 (2008. 6.19)

1950〜54年までの録音を年代順に並べたもの。大ヒット「プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラヴ」に始まり、「ストレンジ・シングス・ハプニング」、「ロスト・ラヴ」、「クライ・ベイビー」、「リヴァーズ・インヴィテイション」など、彼の初期の代表曲が集められています。ぐっと押さえた歌で歌うブルースは独特のものがあり、その詩情あふれる世界は、英語の良く分からない僕にでも伝わってきます。派手さはありませんが、都会的な渋み溢れるパーシーを聴くのなら、この辺からスタートするのがいいと思います。



Percy Mayfield ; His TANGERINE And ATLANTIC Years ; RHINO HANDMADE RHM2 7828 (2005. 2.14)

1962〜74年録音。パーシーは「ヒット・ザ・ロード・ジャック」をレイ・チャールズに提供するなど、ソングライターとして希有な才能を持っていますが、そのレイが興したTANGERINEレーベルでの録音を集めたものです。そのレイのピアノをバックに、ぶっきらぼうなバリトンヴォイスで歌いますが、ジャズっぽさの強いバックと不思議にマッチします。最初の3曲、ハンク・クロフォードを軸にしたブラスセクションの感じが妙にCHESS時代のローウェル・フルソンに近く感じました。名曲「リヴァーズ・インヴィテーション」のゆったりした感じ、味わい深いですね。「ストレンジャー・イン・マイ・オウン・ホーム・タウン」のようなブルースフォームの曲でも、余裕を感じる歌い回しが渋格好良いです。面白いのはラスト2曲のATLANTIC録音で、いかにもジョニー・ギター・ワトスンらしい、適度にチープさのあるファンキーなアレンジ。ちょっとやりすぎかなって気もしますが、こういうの結構好きです。



Percy Mayfield ; Walking On A Tightrope ; BRUNSWICK/ACADIA ACAM 8021 (2002. 5.17)

1968年のBRUNSWICK盤のCD化です。この時代は歌手としてより、コンポーザとしての活躍が中心だったようですが、DUKEのボビー・ブランドのバックに通じる感じの演奏に支えられて、やや声の艶が落ちたとはいえ、なかなかの好演を聴かせます。タイトル曲なんか、いかにもパーシーらしくていいです。大ヒット「プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラヴ」の再録もありますが、全編自作曲で、やはりソングライタとしての才能が非凡なことを感じさせます。かなり気に入りました。



Percy Mayfield ; Blues Laureate : The RCA Years ; RAVEN RVCD-219 (2006. 7. 6)

1970〜71年の3枚のアルバムをまとめたものです。SPECIALTYでの「プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラヴ」「リヴァーズ・インヴィテーション」、さらにレイ・チャールズの専属ライターとなり、「ヒット・ザ・ロード・ジャック」など、曲作りのセンスは元々抜群なんですが、事故で顔に大きな傷を負った後の作品は、最近ようやくCD化されてきた感じです。でもタイトなバックバンドに乗って、どちらかというと語るような歌で、キャッチーさはあるけれどどこかひねりの利いた、渋み溢れる曲をどんどんと生み出していく才能を感じます。ブルースを歌っても感情移入を抑えた歌い方なんですが、その背後にある情念が伝わってきます。派手さのある人ではないので、大ヒットというわけにはいかなかったんでしょうが、じっくり聴いていくと味わい深く、これで歌詞が分かったら言うことないんですけどね。



Percy Mayfield ; Live In San Francisco ; ACROBAT ACMCD 4044 (2005. 3.20)

 1980年代初頭のライヴのようです。わずか30分足らずの録音で、音質も良くないんですが、捉えられている演奏はパーシーの持ち味をしっかり伝えています。スローブルースのメドレーから始まり、ゆったりとした、やや語るような歌い口で曲を繋いでいくショーの様子がよく分かります。ハイライトは代表曲「プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラヴ」から「スリー・オクロック・イン・ザ・モーニング」と続くラストで、「偽マジック・サム」としても知られるロン・トンプソンがいい味のギターを披露してます。もうひとりのギターはピー・ウィー・クレイトンで、前半彼らしい叫び声と派手なトレモロフレーズが出てきます。そしてキーボードになんとマーク・ナフタリンの名前も見えます。でも演奏者不明のサックスがかなり泥臭くて格好いいです。一体誰でしょ?



Percy Strother ; It's My Time ; JSP JSPCD 295 (2006.12.11)

1997年リリース。プロデュースとホーンアレンジ、リズムギターをジョニー・ロウルズが担当しています。野太さと朴訥さが混じり合ったようなパーシーのヴォーカルに、ファジーで大股なギターソロというのが基本的なコンセプトで、曲はブルーズン・ソウルな雰囲気のオリジナルのみで固めてあります。パーシー、声質がちょっと大仰な感じで、また歌い回しもいまひとつこなれていない印象がありますが、意欲的にやっているのは感じられます。ローカルなミュージシャンががんばってみましたって印象のアルバムです。



Percy Strother ; Home At Last ; BLACK & TAN B&T002 (2001.12.17)

1998年録音。この人は初めて聴きました(と言うか、他にあるのかしら?)が、ハウリン・ウルフやマディ・ウォーターズの曲を、時にはアコースティックを交えながら自分の解釈を交えて歌っていきます。深みとかはほとんど感じませんでしたが、シカゴブルースに対する愛情というか、衝動は溢れんばかりでした。ハープもギターも決して上手いとは言えないんですが、味があります。何か妙に気になるんですよね。こういうのは。



Pete "Guitar" Lewis / Jimmy Nelen / Cal Green ; Scratchin' ; FEDERAL/CHARLY CD CARLY 268 (2001. 1.10)

1952年〜58年にFEDERALに残された録音のうち、3人のギタリストにスポットを当てたコンピ。中古で購入。ピート・ルイスはジョニー・オーティス・バンドのギタリストとして活躍しましたが、FEDERAL録音は以前LPでは聴いたことがありました。時にはハーモニカを持ち、癖のある音色のギターはテキサス・スタイルと言っていいでしょう。僕が嬉しかったのは、「オゥ・ミッドナイト」のCD化。悩ましい女性が「オゥ・イッツ・ミッドナイト」と囁くスローなんですが、昔聴いて耳に離れず、めでたく再会となりました。ジミー・ノーレンは後にJBのギタリストとなる人で、いくつかのコンピにも入っていますが、まとめて聴けて嬉しいです。2曲あるカル・グリーンもテキサス直系のギタリストで、エグいです。めっけ物の一枚。



Pete Mayes ; Crazy Woman ; P-VINE PCD-2332 (2001. 4. 5)

1969〜91年録音。頂き物です。ピートはテキサスのブルースマンで、録音はすべてヒューストン。邦題「ティーボーンへ捧ぐ」とあるように、ギタースタイルは共演したこともあるT-ボーン・ウォーカーからの影響が顕著にあらわれています。しかしヴォーカルはずっと泥臭い感じで、ローウェル・フルソンなどに通じるものも感じました。T-ボーンほど洗練されておらず、ローカルな香りがぷんぷんしますが、それがピートの持ち味のようにも思えます。



Pete Sears ; The Long Haul ; ALIEN MUSIC no number (2007. 6.25)

2000年リリース。ピート・シアーズはジェファーソン・スターシップやホット・ツナでの活動で知られるマルチプレイヤーで、ここではダヴェィ・パティソンの他フランシス・クレイヤマリア・マルダーをゲストヴォーカルに迎え、ピアノやアコーディオンを弾いています。ウエストコーストらしい、明るく、どこかちょっと屈折したサウンドで、1分余りの小品のインストもちりばめています。強烈なインパクトはないんですが、耳触りは悪くなく、すっと流れていく感じ。そんな中、「エリザベス」だけは耳に残りました。だってヴォーカルとギターがジョン・リー・フッカーなんだもの。突然出てきてびっくり。



Pete Seeger ; The Essential PeteSeeger ; SONY MUSIC DIRECT MHCP 755 (2007. 7.23)

1941年のアルマナック・シンガーズ時代から1966年までのベストです。平和や環境に対する明確なメッセージをもった、まさにプロテスト・ソングと呼ぶのにふさわしい歌をバンジョーやギターをかき鳴らしながら世界中で歌っていたこの人の集大成です。今までちゃんと聴いたことがなくても、「天使のハンマー」「漕げよマイケル」「勝利を我らに」など、ラジオで何度も耳にし、何かの機会で皆で歌った歌の数々は、もちろんブラザーズ・フォーだったりもするんですが、歌がその歌い手を越えて、人の心の中に入っていることを思わせます。でもそれを届けたのが例えばこのピート・シーガーなんだなって、改めて感じさせる1枚でした。



Phantom Blues Band ; Out Of The Shadows ; DELTA GROOVE DGPCD111 (2006.12.28)

2006年リリース。ジャケットからはまさに得体が知れない感じだったんですが、ミーターズの「ドゥー・ザ・ダート」、フルソンの「マイ・エイキング・バック」と曲を並べられたら興味が出ないわけがなく、買ってしまいました。聴き進んで耳をとらえたのが、シル・ジョンソンのHI時代の傑作「アイ・オンリー・ハヴ・ラヴ」、歌の雰囲気とかそっくりで、ハーモニカも気分が出てるなと思ってクレジットを見ると、ありゃりゃ、歌ってキーボードを弾いているのは、ディヴ・メイスンのバンドにいたマイク・フィニガンじゃありませんか。上手いわけです。そしてハーモニカはタジ・マハル。この他ジョン・クリアリーなども参加しており、ハヴァナ・ムーンなどのラテン調、フィニガンの歌が冴える「パートタイム・ラヴ」、ジミー・マクラックリンの「シンク」にボビー・ブランドの「イェールド・ノット・トゥ・テンプテイション」など、ほとんどカヴァー曲ですが、オリジナルの味わいを残しながら巧みにバンドの個性を出していて、上手く作られたアルバムですね。とプロデューサーを見ればジョン・ポーター。なるほど。ボーナスにはレイ・チャールズの「メアリー・アン」まで登場して、ニヤニヤしっぱなしでした。



Phantom Blues Band ; Footprints ; DELTA GROOVE DGPCD119 (2007.12.12)

2007年リリース。いきなりハワード・テイトの「ルック・アット・グラニー・ラン」のご機嫌なサウンドが飛び出してきて、これ一発でノックアウトです。こういう歌って難しいと思うんですが、マイク・フィニガンが見事に歌いこなしています。さすがだなぁ。ジョニー・リー・シェルはちょっとスティーヴィー・レイ・ヴォーンを思わせる粘っこい歌でブルースを唸りますし、ラリー・ファルシャーはHI時代のシル・ジョンソンを思わせる「リーヴ・ホーム・ガール」やスライドたっぷりのアコースティックな「ホウェン・メイリンディ・シングズ」、軽快なレゲエの「ホウェン・ザ・ミュージック・チェンジズ」と、多彩なオリジナルを抜けのいいはいトーンで歌います。オリジナルといえばジョニーの「ア・ヴェリー・ブルー・ディ」もめちゃめちゃクール。さすがタジ・マハールのバックバンドです。でもそんな中レイ・チャールズの「ア・フール・フォー・ユー」を熱く歌うマイクの歌声に僕は参っちゃいます。好盤です。



Phil Guy ; Another Guy ; BLUES SPECIAL BSCD9504 (2001.10.25)

1997年アルゼンチンはブエノスアイレスでのライヴ。タイトルにあるように、バディ・ガイの弟でいつも陰に隠れた印象の人ですが、このライヴでもそうしたキャラクターはあまり変わりません。ジミー・リードなどシカゴ・クラシックといえる曲をそつなくこなしていますが、一体どこにフィルの存在感があるか分かりませんでした。地元のバックはけっこう達者な演奏をしているし、ライヴそのものに破綻はないんですが、「売り」を感じないアルバムです。



Phil Guy ; Say What You Mean ; JSP JSPCD2135 (2000.12.13)

1999年リリース。バディ・ガイの弟会心の一作と言っていいでしょう。見事な指弾きから繰り出されるいい意味でのごり押しのフレーズ、まさに直球勝負です。ヴォーカルも気合いたっぷり(ただ、この声質は僕ちょっと苦手ですが)で、やる気を感じます。サイドギターでジョニー・ロウルズがサポート。トータル感のあるいいアルバムだと思います。オリジナル曲(ジュニア・ウェルズやルーサー・アリソンを慕んだ曲もあり)で固めてるのも好感がもてました。ギター・フリーク必聴でしょう。



Phil Parnell ; Closer Than You Think ; VILLAGE STUDIO VSR001cd (2007.10. 6)

2007年リリース。ニューオーリンズ直送ですが、う〜ん、こういうのは何といえばいいんでしょうか。演奏を聴き進んでいけば、おそらくジャズをきっちり学んだ人たちが、その枠組みを取り払う音楽をやってるんだろうなというのは感じられるんです。ベースの響きはクラブ・ミュージック的ですし、女性ヴォーカルはあっさり系のジャズ・テイスト。でも歯医者で聴かれるような高周波のシンセサイザ・サウンドがちりばめられていて、なんだか屈折した、ちょっとうねりの少なめのファンク・ミュージックって感じかなぁ。不思議な音楽です。



Phil Phillips ; Sea Of Love ; BEAR FAMILY BCD 16981 AR (2008.11.23)

1959〜60年録音。タイトル曲のワン・ヒット・ワンダーといっていいフィルですが、透明感のある伸びやかな声は甘めのバラードが似合うということで、当時未発表だった「アンチェインド・メロディ」など、おそらくデモ録音と思われるもまで入っています。この他「ストーミー・ウェザー」など、次から次へと続くバラードは、魅力的なんですけどちょっと飽きるなぁ。ミディアムもあるんですが、結構リズム・ナンバー歌わせたら格好良かったんじゃないのかななんて、勝手な想像をしてしまいます。




Philip Sayce ; Peace Machine ; WED IECP-10050 (2007. 5.17)

2005年録音。現在進行形のロック界にはとんと疎いんですが、なぜかショップのブルースコーナーに置いてあったんで、ものは試しと聴いてみました。まず、ギターが上手いです。これは半端じゃありませんね。ジミ・ヘンドリックスからの影響が色濃いですが、バラードでは伸びやかなブルース系のソロを聴かせます。そのチョーキングの巧みさは本当に心地良いです。サウンドもストラトキャスターの特性をよく生かしたクランチサウンドで、スティーヴィー・レイ・ヴォーンを思わせるところもあります。ヴォーカルは優しげですがちょっと線が細く、そのため多重録音で厚みを出してますけど。アコースティックな曲も取り入れていて、自作中心で攻めるあたりも自身の現れでしょうか。バンドも上手いし、これってそこそこ売れるんでしょうかね。でもどこか「これが俺だ!」といったアピールには欠ける気がしました。



The Phillip Walker Big Band ; Live At Biscuits & Blues ; M.C. MC-0047 (2002.11.19)

2002年夏、サン・フランシスコでのライヴです。4管入りのバンドを従えたウォーカー、トップはやはり自身の代表曲「ハロー・マイ・ダーリン」で来ました。この曲にはスマートなウエストコースト・ブルースマンとはまた別の、いかにもルイジアナ出身の味わいが感じられて好きです。ややラフですが熱い演奏と歌でいいスタート。でも続く「ドント・ビ・アフレイド・オヴ・ザ・ダーク」はライヴ向きじゃないかな?ロバート・クレイをすぐにカヴァーしたスタジオ作はかっちり作られていて結構気に入っていたんですが、このヴァージョンは今ひとつに思いました。全体にはジミー・マクラックリン、フルソンなど西海岸系の人の曲が多く、特に「リコンシダー・ベイビー」のギターはフルソンの再現のよう。でも他のスローではアルバート・キングの影も見えたりして。ニューオーリンズを感じるレイ・チャールズの「メアリ・アン」など、オリジナルを含め変化に富んで楽しいショウです。バックバンド(特にブラスセクション)はちょっと粗いですけど。



Phillip Walker ; Going Back Home ; DELTA GROOVE DGPCD115 (2007. 3.21)

2007年リリース。フィリップの新作は、味のあるブルースアルバムになりました。冒頭からいい感じだなと思って聴いていたんですが、2曲目にきてぐっと身を乗り出しました。タイトルを見れば「ママ・ブリング・ユア・クロージズ・バック・ホーム」、そうだよね。こんな渋いフルソン・ナンバーを、オリジナルの武骨さと都会的洗練の混じり合った雰囲気をたっぷり残しながら、ベテランらしい枯れ味を加えてやっています。この1曲が聴けただけで大満足。ライトニン・ナンバーはライトニンの雰囲気を生かし、T-ボーン、ナンバーはしっかり師匠の音を意識したサウンドなんですが、でもフィリップはフィリップなんですよ。いい味出してます。ファンキーな曲もゆるゆるの曲も見事に自分の世界に持ってきちゃうのはやっぱりすごいです。これだけ元気ならまた来日してもらえないでしょうか。



Phillipp Fankhauser ; Watching From The Safe Side ; FUNK HOUSE BLUES 92106000002 (2008. 7.18)

2006年リリース。フィリップは達者なギターとちょっとハスキーな歌を聴かせる白人で、ブルースやソウル、ロックにまたがるような曲調です。デニス・ウォーカーがプロデュースでベースにリチャード・カズンズが入ってますから、いわゆるかつてのHITONNEのサウンドの印象があります。全体には伸びやかなギターも聴けるブルース系の曲のほうが安心して聴いていられました。「イフ・ユー・エイント・ビーン・トゥ・ヒューストン」ではロンサム・サンダウン・スタイルを披露。そういえばHITONEで彼のアルバム出してましたねぇ。歌は下手なわけではないのですが、特にソウル・ナンバーだと表現力が足らない感じで、どうも落ち着かないんです。




Phoebe Snow ; Phoebe Snow ; SHELTER 7243-8-31972-2-4 Click Here!

Piano Bob's 88s with Lou Abbott ; Big Beat Blues ; PIANO BOB no number (2007.11.19)

多分新譜でしょう。ルー・アボットをヴォーカルとドラムに迎え、全編ロッキン・ブルースの洪水です。良く転がるピアノをバックに、ルーもしっかり歌います。ドライヴ感の強い「ロック・ディス・ハウス」や「チキン・シャック・ブギ」、シャッフルが気持ちいい「ヘイ・ロウディ・ママ」、後半の「スロッピー・ドランク・ブルース」「シー・クルーズ」「レッツ・ロック・アワイル」あたりになると、ピアノの向こうにフェスの楽しげな表情が見えてくるから不思議です。それだけ彼の影響力が強いってことでしょう。なんだかウキウキしてくる作品です。



Piano "C" Red ; Piano "C" Red ; NEW ROSE FED 105 (2007. 9. 6)

1992年リリース。割合オーソドックスでシンプルなバンドを従え、エレクトリック・ピアノを叩きながらちょっとがなるように歌うブルースがメインです。「フラット・フット・ブギ」など軽快なナンバーはドラムの音などがかなりチープ。全曲オリジナルなんて書いてありますが、「ウィッシュ・ミー・ウェル」はメンフィス・スリムじゃないのかなぁ。「ピアノ・C・レッド・イズ・イン・タウン」はルイ・ジョーダンの「レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール」だし。ラストの「ブルース・アンド・ジャズ」、このテーマはジミー・スミスの「バック・アット・ザ・チキン・シャック」ですね。何ともB級な1枚です。



Piano Red a.k.a. Dr. Feelgood ; The Doctor's In! ; BEAR FAMILY BCD 15685-1〜4 DI (2000.12.18)

ピアノ・レッド、またの名をドクター・フィールグッド(アレサ・フランクリンが唄ったのはこの人のことだそうです)と呼ばれるエンターティナー、ウィリー・ペリマンの1954年〜66年にかけての録音を集めた4枚組。中古で購入。これ見つけたときは嬉しかったです。初期の録音を聴くと、クリップル・クラーレンス・ロフトンに通じるノヴェルティな味を持つピアノとヴォーカルで、エンターティナーとして相当な人気が出たことは容易に想像できます。けっこうボーディな歌「ライト・ストリング・バト・ザ・ロング・ヨーヨー」が初期の代表作のひとつで、重さとかとは無縁ですが、ピアノの腕前は確かですし、ハイトーンのヴォーカルは抜けが良く気持ちがいいです。3枚目はライヴ録音が多く集められており、人気ぶりが伝わってきます。そして4枚目に収録されているのが、おそらく彼の曲(作曲はギタリストのロイ・リー・ジョンソン・ジュニア)で一番有名な「ミスター・ムーンライト」。このころになるとかなりポップですが、ステージ(バックコーラスの女性が看護婦のコスプレだったり)で客を楽しませていたんだろうなと思います。ファッツ・ドミノからの影響もけっこうあるように思いました。でも4枚組はちと重たいです。初期の録音のベストくらいがあればいいんですが。



Piano Red ; Dr. Feelgood ; DELMARK 740 (2000. 4.25)

ドクター・フィールグッド(アレサ・フランクリンもお気に入りだったとか)の1976年録音の弾き語り。新譜で購入。力強いピアノと、小唄っぽさを感じさせる味のある歌がよくマッチしています。あまり期待せずに買ったんですが、結構気に入りました。でも、この人のヴィンテージって、ベアファミリのボックスしかないんですかねぇ。昔から聴いてみたいのに、なかなか手に入りません。ナッピー・ブラウンとかもそうですが、重要どころが結構漏れてますよね。


Pinetop Perkins ; Ladies Man ; M.C. MC-0053 (2004. 9.29)

2003年スタジオ録音に2004年のライヴを交えたものです。大ベテランのパイントップが、タイトル通りデボラ・コールマン、ルース・ブラウン、オデッタなどの女性をヴォーカルに迎え、かくしゃくとした演奏を聴かせています。ボブ・ストロジャーとビッグ・アイズ・スミスがバックを固めるセッションでは、タイトなリズムの隙間を絶妙に埋めるピアノで、見事に歌を引き立てます。マーシャ・ボールとはピアノ連弾でブギウギを格好良く決めていて、これが気に入りました。他にもリズム隊の異なるセッションがありますが、それぞれ表情が違うのがアルバムを豊かなものにしています。ライヴではボブ・ストロジャーとケニー・スミスのリズム隊にビッグ・アイズのハーモニカ、ピアノはリサ・オティに任せてヴォーカルに専念、とても90過ぎとは思えないしっかりとした歌を披露しています。このライブがアルバムにちりばめられていることで、パイントップのカラーがより強く出ています。気に入りました。



Pinetop Perkins ; Pinetop Perkins & Friends ; TELARC CD-83680 (2008. 9.11)

2008年リリース。御歳90才を超えているとはとても思えない溌剌としたピアノと歌が素晴らしいアルバムです。ゲストも多彩でジミー・ボーン、エリック・サーディナスにクラプトン、さらにB.B.キングまで登場。でもバンドの音を支えているのはボブ・ストロージャーとウィリー・スミスの現シカゴでも最高峰のリズム隊だと思いました。曲は「モジョ・ワーキン」と「スウィート・ホーム・シカゴ」が入っているなど、有名曲のカヴァーが中心です。印象に残ったのがB.B.とやった「ダウン・イン・ミシシッピ」と、ウィリー・ケントが参加(ということは少し前の録音)した「ベアフッティン」で、この曲をこんなに普通のブルースにしちゃったのは初めて。でもこれはこれで格好いいです。




Pinetop Perkins & Willie 'Big Eyes' Smith ; Joined At The Hip ; TELARC TEL-31850-02 (2010. 8.30)

2010年リリース。パイントップ御歳97才とは思えない元気さです。歌はもっぱらビッグ・アイズで、本作ではドラムは息子に任せてハーモニカをプレイしています。40年来の付き合いのある二人ですから、呼吸はバッチリ。いぶし銀のプレイが超ベテランならではの味わいになっています。でもその中でも感動的なのがスローブルース仕立てにしたゴスペル・ナンバー「テイク・マイ・ハンド・プレシャス・ロード」で、これはもはやパイントップにしか歌えない世界。この1曲には本当に感動しました。




Pistol Pete ; 21st Century Bluesman ; P-VINE PCD-25016 (2003.12.10)

2003年は本日発売のピカピカの新譜です。さてこの盤、一切の情報を知らせずに人に聴かせて、「これってどんな音楽?」って訊ねたら、おそらく皆さん「ロック」と答えるでしょう。ディストーションをたっぷりとかけたジミ・ヘンドリックスからの影響を強く感じるギターサウンドの、スピーディな曲が多く、部分を切り取って聴けばこりゃロックです。でもよく聴くと、アルバート・キングのフレーズが出てきたり、ヒップホップのスクラッチノイズをギターで再現したり、さらにはブルースフォームの曲やフュージョンというべきインストでは、ジャズギターの素養があったり、そしてスライドプレイにはどこかデルタが遠い彼方に見えたりと、「ロック」で括るにははみ出した部分がたくさんあるんです。元々ロックはブルースを母体にして生まれたもの、ならばブルースがロックに似ても何の不思議もないのかな?ヴォーカルは思ったよりストレートで素直。ギターの音色にもう少し「芯」が出たらもっと面白くなると思いました。



Pistol Pete ; Evolution Blues ; P-VINE PCD-25077 (2008. 6.15)

2008年リリース。かなりの意欲作です。オリジナルはジャジーな「パス・ミート・ウェス」(って、ジョー・パスがウェス・モンゴメリーに出会ったってこと?)やヒップホップを意識した「ビッグ・バット・ガール」、しっとりとした「アイ・ラヴ・ユー」などかなり多彩な曲調で面白いです。でもジミ・ヘンドリクスの2曲に限らず、「ティン・パン・アリー」や「ボーン・アンダー・ア・バッド・サイン」、さらには「フーチー・クーチー・マン」のようなスタンダード・ブルースを、ピート流というよりジミ風にアレンジしてやるのは、彼がジミ好きなのは分かるけど、どうなのかなぁ。多分ジミが生きてたらもっと突き抜けた演奏をしてたんじゃないかな。そう思うと時が35年も止まってしまったのかななんて考えてしまいました。これじゃ進化形とは言えないなぁ。このハードルをピートが越えたとき、本当に新しいブルースが生まれるような気がします。



Plas Johnson ; The Best Of Plas Johnson ; WOLF WBJ 021 CD (2004. 1. 9)

多分1956〜57年にかけてL.A.で録音されたものです。プラス・ジョンソンはヘンリー・マンシーニ楽団で「ピンク・パンサーのテーマ」を吹いたことで有名ですが、ここに残されたカルテットでの演奏は、ハード・バップなジャズが中心です。でもどことなく肉体派的なフレーズは、やはりR&Bシーンで活躍してきたからでしょう。豪快な「キャラバン」や、2ヴァージョン入っているムーディな「ラスト・コール」などでのブロウはやはりモダン・ジャズの人達とは味わいが異なります。それからドラムソロをフューチャーした曲が多く、ジョージ・ジェンキンズの強烈なソロをたっぷり聴くことができます。



The Poe-Kats feat. Big Al Downing ; Rockin' Down The Farm Vol. 2 ; EAGLE EA-R 90125 (2007.10. 3)

詳しいデータは何もありませんが、おそらく1950年代後半の録音でしょう。ビッグ・アル・ダウニングは黒人のピアニストで、白人ロカビリアンのボビー・ポー率いるポー・キャッツでヴォーカルを取っています。思いっ切りローカルで、それこそリトル・リチャード、ファッツ・ドミノ、ジェリー・リー・ルイス、ラリー・ウィリアムズ等をまるごとカヴァー。でもなかなか歌は味があり、そこそこ聴けます。オリジナルの「ミス・ルーシー」も思いっ切りリトル・リチャードですけどね。後半はおそらくラジオ用の録音テープでしょう。ダウニングはその後の活動の方が有名なようです。



Pointer Sisters ; Yes We Can Can - The Best Of BLUE THUMB Recordings ; HIP-O HIPD-40052 (2006. 6. 3)

1973〜77年録音。僕にとってのポインター・シスターズの印象は、「ソルト・ピーナツ」のようなジャズコーラス・グループでした。アラン・トゥーサンのタイトル曲はちゃんと意識して聴いたことがなかったんです。でもこのアルバムを聴くと、かなりファンキーな演奏をバックに、しっかりしたコーラスワークと同時にグルーヴィーでヒップな歌をやってるんだなって再認識しました。タイトル曲から「ワン・ダン・ドゥードル」にかけてのリズムの跳ね具合と、それを相乗効果をなすようなコーラス、気持ちいいです。R&Bやファンクを、特にリードシンガーを立てずにこうしたコーラスで彩ってしまうというのが当時としては斬新だったと思います。西海岸ならではの明るさも感じました。



Popa Chubby ; One Million Broken Guitars ; DIXIEFROG DFGCD 8466 (2002. 2.11)

1997年リリース。中古で購入。1曲目に「ノーバディ・ノウズ・ホウェン・ユーア・ダウン・アンド・アウト」を結構ハードだけどオーソドックスにやっている他は、オリジナルのロック・アルバムです。適度なディストーションのかかったハードエッジなギターと、パパのダミ声気味のヴォーカルが妙にマッチしていて、初めに予想していたほどブルース色は感じないんですが、割と聴きやすかったです。ただファンキーな曲もやっているんですが、深みのあるグルーヴはあまり感じられませんでした。かなり若者向けの音楽って感じ。1曲リゾネイタでスライドをかました曲が唯一の変化球かな。



Popa Chubby ; Electric Chubbyland ; DIXIEFROG DFGCD 8615 (2006.12.16)

2006年リリースの3枚組で、1,2枚目は10月ニューヨークでのライヴ、3枚目はスタジオ盤です。タイトルから分かるように全編ジミ・ヘンドリクス大会で、パパ・チャビーがジミの大変なフォロアーであることが分かります。なにしろギターだけ聴いてるとジミと聴き間違えそうになるくらいですから。歌が出てくると歌い方とか声とかがまるで違うんで区別がつきますけど。1枚目の出来が特にいいように思いました。2枚目の「カモン」あたりはスピード感不足かな。3枚目のスタジオ盤はより丁寧な音づくりで、結構マイナーな選曲で面白かったです。そんな中「ボールド・アズ・ラヴ」は既出音源。またラストの16分に及ぶ「サン・キャトリ」はパパのオリジナルで、出だしはちょっと「リトル・ウィング」を思わせるインストナンバー。途中からアップテンポになって自在なインプロヴィゼイションを展開、サブタイトルに「ジミへ」とあるように、ジミに対する強力な讃歌になっています。



Precious Bryant ; My Name Is Precious ; MUSIC MAKER MMCD57 (2006. 7.14)

1995〜99年のライヴも含む録音です。シンプルな弾き語りですが、「ジョセフィーン」などを聴くと、ギターのスタイルはまるで違うんですがどこかスヌークス・イーグリンに通じるものを感じます。ギター・スリムからジミー・リード、ジョー・ターナーからゴスペルまでと幅広い選曲もスヌークスみたい。リトル・ウィリー・ジョンの歌だと自ら紹介して歌う「フィーヴァー」の、肩の力の絶妙に抜けた歌とか、どこかロック的な香りすら感じさせる「スージーQ」など、幅広い選曲にはただただ驚くばかりです。



Precious Bryant ; The Truth ; TERMINUS 0407-2 (2006. 7.11)

2004年リリース。プレシャスはジョージアのブルース・ウーマンで、ギターをかき鳴らしながら朴とした味わいのある歌を歌います。ここでは弾き語りの他ドラム、ベースを入れたバンド形式での演奏を披露していますが、何というか、暖かい人柄を感じさせる演奏で心が和みますね。オリジナルが多いんですけど、ひょっこりリトル・ウォルターの「マイ・ベイブ」が出てきたり。でも元歌の「ディス・トレイン」に近い感覚を感じちゃったりします。何だか癖になりますね。



Preservation Hall Jazz Band ; The Best Of Preservation Hall Jazz Band ; MAMBITO MR 021 (2009. 3. 4)

ジャケットに記載がありませんが、比較的新しい録音集だと思います。幾多の名手を輩出したバンドの現在進行形を捉えたもので、古いスタイルに依拠しながら、リラックスした演奏を聴かせます。特にヴォーカルの緩さが抜群で、聴いていてほっとします。曲も「バーボン・ストリート・パレード」や「ゴー・トゥ・マルディ・グラ」、さらには「セント・ジェイムズ病院」などお馴染みの曲が多く、ブラスバンドにも通じるサウンドは楽しいです。欲を言えば詳しいクレジットとかは欲しかったな。




Preservation Hall Jazz Band ; New Orleans Preservation Vol. 1 ; PRESERVATION HALL VPS-20084 (2009. 6.17)

2009年リリース。ニューオーリンズはプリザヴェーション・ホールに集まって演奏されるオールド・ジャズを集めたもので、マーク・ブラウド、チャーリー・ガブリエル、フレディ・ロンゾらが実に懐かしいサウンドで演奏しています。中にはラテン風味あり、「チョコ・モ・フィール・ノー・ヘイ」のようなブラック・インディアン・チャントにヒントを得た曲あり、ジミー・ロジャーズの「ブルー・ヨーデル#9」からご機嫌なノリの「タイガー・ラグ」までかなり幅広い選曲で楽しめました。




Preston Shannon ; All In Time ; BULLSEYE BLUES & JAZZ 11661-9595-2 (2000. 3.23)

1999年にリリースされた新譜。結構ディープでややスモーキーなヴォーカルと、時にアルバート・キング、時にラッキー・ピーターソンかドナルド・キンゼィを思わせるロック的なギターの組み合わせが不思議です。アップよりスローな曲の方が良かったです。でも、笑福亭鶴瓶のような顔のおっさんが、プリンスの「パープル・レイン」をほぼあのまんまやっちゃうのは、なかなか想像しにくい世界ではあります。


Prince ; Musicology ; NPG/COLUMBIA CK 92560 (2004. 6. 3)

2004年リリース。タイトルからして「音楽学」ですけど、そのタイトル曲が思いっ切りファンクなんです。チープなキーボードがP-ファンクを思わせ、隙間で満たされた中に、ヒップホップの手法を絡めながら、殿下のセクシーな歌声が絶妙の呼吸で入ってくると、女性ファンなどそれだけで「イッちゃう」かもしれません。ファンク基調が強いんですが、バラードもひねりがあり、うまくロックの要素を取り入れた曲もあります。またドラムにしてもキーボードにしても、ちょっと聴くとどうってことないようですが、その音色は練り込まれていてまさに絶妙。ゴスペルやジャズの要素も感じられ、まさに黒人音楽の集大成といったサウンドが全編に満ち溢れています。タイトルに偽りなしです。



Prince ; Planet Earth ; NPG 88697 12970 2 (2007. 8.27)

2007年リリース。ジャケットにはタイトルも曲名も書いていないんですが、ネットで検索してジャケットの絵柄から予想できるタイトルと知りました。今回のプリンスはファンク度薄め、ロック度とポップ度が高めって感じでしょうか。インパクトのある曲はあんまりないんですが、全体的に丁寧な仕上がりで、かなりキャッチーな演奏。1曲目のコーラスをバックにした歌とかは彼ならでは。ギターも派手は出じゃないけどツボを心得た演奏をしています。ラップも出てきますが優しさすら感じますね。ちょっとつかみ所がない気もしますが、良くできたアルバムです。



Professor Longhair ; House Party New Orleans Style ; ROUNDER CD 2057 (2000. 5. 8)

1971年バトン・ルージュ録音と1972年メンフィス録音。「Mardi Gras In Baton Rouge」の姉妹盤。フェスのユルユルの歌と変幻自在なピアノはいつも通り。この盤がずば抜けていいというわけではありません。しかしギターのスヌークスが結構いいんですよ。70年代前半ですでに BLACK TOP 時代を思わせるフレーズが飛び出してます。「"G" ジャム」という曲では、「サンホセ」のテーマからスヌークス弾きまくりで、この1曲で僕は「買い」です。メンフィス録音ではジガブーがドラム叩いてるし。「ジャンコ・パートナー」も入っていて、これは探してたCDなので発見して嬉しかったです。スリーブの中にアフロ・ヘア?のスヌークスの写真が!


Professor Longhair ; The London Concert ; JSP JSP8811 (2008. 5.17)

1978年のライヴ音源が出てきました。バックにはウガンダ・ロバーツのコンガだけを従え、「メス・アラウンド」からお得意のナンバーを連発。「ゴー・トゥ・マルディ・グラ」「ボールドヘッド」「ティピティーナ」「ビッグ・チーフ」と並べられたらそりゃたまりません。ピアノの音はちょっとキンキンしてますけど、もちろん演奏は一級品。歌も好調で場内の盛り上がり方も凄いですね。こんな音源、まだまだ出てくるんでしょうか。



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