CD INDEX(R)
 

アーティストの名前順に並んでいます。「TODAY'S CD」で紹介したものは紹介文が付いています(日付)。紹介文のないものは「おすすめCD」か「お気に入りのミュージシャン」の中で紹介されているもので、「Click Here!」をクリックすると該当のページにジャンプします。

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R.J. Mischo ; West Wind Blowin ; MOUNTAIN TOP no number (2003.11.27)

1999年リリース。ミッショはウエストコーストのハーピストで、かなりのテクニシャン。ラスティ・ジンとスティーヴ・フルーンド(でいいのかしら)のギターもとってもクリーンかつ味わいのあるサウンドで、オリジナルにカヴァーを織り交ぜてやっています。そのアンプリファイドハープの音の素晴らしさは、このレーベルらしく、ハモニカ好きにはたまらないですね。歌もなかなかいけて、特にハウンド・ドッグ・テイラーの「ワッチ・アウト」なんて選曲にはガツンとやられました。シカゴの人たちに通じるものもあるんですが、どこか肌合いが異なるのはやはりサウンド全体の持つ雰囲気かしら。



R.J. Mischo ; He Came To Play ; CROSSCUT CCD 11087 (2006. 6.23)

2006年リリースですが、録音は2004年オークランド。西海岸で活躍するミッショの作り出すサウンドは、一言で言えば「深い」です。気持ちいい音作りのアンプリファイド・ハープと、チューブアンプの良さをたっぷり出したギターのサウンドを、トータルなエコーで包んだサウンドは、50年代シカゴのヴィンテージものにも通じる感じですが、ギターの弾け具合とかがやっぱりウエストコーストだなって思わせます。J.B.ハットーの「20%アルコール」なんて曲を、完全に自分のものにしちゃってますし、交通事故の模様から始まる「テレフォン・ドライヴァー」なんか交通安全ものかしら。一方ディープに決めた「ブルーバード・ブルース」なんてのもあります。とにかく音が気持ちいいので、ドライヴのお供には最適ですね。



R.L. Burnside ; Mississippi Hill Country Blues ; SWINGMASTER/FAT POSSUM 80341-2 (2001.11.10)

1967〜82年にかけて録音。アコースティックでほぼ弾き語りです。いわゆるデルタよりはさっぱりした部分があり、明らかにジョン・リーなどの影響を感じますが、その分現在進行的な演奏で好感がもてます。非常に真摯なプレイで、地味だけど「来る」ものがありました。曲によってはスピード感があり、後のバーンサイドのブレイクがなぜ起こったかを象徴しているようです。



R.L. Burnside ; A Ass Pocket Of Whiskey ; MATADOR OLE 214-2 (2001.11. 7)

1996年録音。中古で購入。これはジョン・スペンサーというガレージ・ロック?ミュージシャンが参加して当時大変な話題盤だったんですが、どうもいまひとつ触手が伸びず、今回ようやく聴きました。曲はミシシッピ・デルタを代表するようものが中心なんですが、あちこちでノイズや叫び声が入ってきます。この辺りが完全に好みの分かれるところでしょう。僕は「突然叫ぶんじゃないよ」と何度か思いました。しかしバーンサイド自身の歌と演奏は結構いけてます。タイトル通り、実にヒップな爺さんて感じでした。



R.L. Burnside ; A Bothered Mind ; FAT POSSUM FP1013-2 (2004. 9. 8)

2004年の新譜は久々のスタジオ作です。FAT POSSUMらしくいろいろ仕掛けを凝らしていて、頭とラストの「デトロイト・ブギ」はどことなくジミ・ヘンドリクスを彷彿させるサウンドコラージュがなされていたり、かなりロックよりの音で包めてあります。個人的にはバーンサイドの真っすぐなブギをノーギミックで聴きたいんですが、でも、ふと油断すると、まるでちょっとサウンドをすっきりさせたZZ トップみたいに聞こえる瞬間があって、やっぱりこのオッサン、只者じゃないです。結局プロデュースに負けないだけの自力があり、その存在感でぐいぐい引っ張れるんです。それが適度なドライヴ感になって気持ち良かったです。



The Radiators ; Wilp & Free ; RADZ 1111 (2008. 8.23)

1978〜2006年までの、ライヴ音源を交えた作品集で、ニューオーリンズで息の長い活動を続けてきたバンドの軌跡を捉えた作品のようです。でも選曲は必ずしも代表曲ばかりというわけでもないようです。ニューオーリンズらしいというよりは、サザン・テイストを感じさせるロックバンドで、曲は割合ポップでキャッチー。時折ラテン・テイストが忍び込むのが彼の地らしいですね。ジャズ・フェスでは必ず登場して喝采を浴びているようですから、もう少しちゃんと聴いてみなきゃいけませんね。




Raful Neal ; Louisiana Legend ; ALLIGATOR ALCD 4783 (2007. 1.11)

1987年リリース。例によって息子のケニーのサポートを得て、ALLIGATORらしい割合かっちりした音をバックに、実にゆるゆるのヴォーカルとハープを聴かせます。演奏がファンキーでも何かのどかなんですよね。ジミー・ヒューズの「スティール・アウェイ」などを歌っても、スナックのカラオケで酔っ払ったオヤジが気持ちよさそうに歌ってるって感じで、微笑ましくさえ感じます。ハーモニカはテクニカルな感じはしませんが、なかなか深みのある音で、さすがのキャリアだと思いました。ルイジアナっぽいスロー「ダウン・アンド・アウト」や、ちょっと跳ねた感じの「レイト・イン・ジ・イヴニング」あたりが僕は気に入りました。ラストに「オネスト・アイ・ドゥ」「レッツ・ワーク・トゥゲザー」と、はまり歌のカヴァーを持ってきたのも正解かな。ヘタウマと言ったら失礼ですけど、何かその言葉がしっくり来るのがこの人の味だと思いました。



Ralph Willis, Lonnie Johnson etc ; Blues Complete ; WESTSIDE WESM 531 (2000. 4.24)

これは何て表現したらいいのかなぁ。ラルフ・ウィリスの JUBILEE 録音(1950〜51)、ロニー・ジョンソンの RAMA 録音(1953)、それにビッグ・ムースの唄うジャンプ・ジャクソン・コンボのレコーディング風景(1960)という、摩訶不思議な組み合わせです。ラルフはシンプルなギター・スタイルで、ジョン・リー・ウィリアムソンの曲を含み、結構デッドな音質で息遣いが聞こえそうでした。ロニーは「トゥモロウ・ナイト」のヒットの後で、その続編「ウィル・ユー・リメンバー」など、KING 録音に近い肌合いです。イントロがどれも同じなのが笑えます。最後のビッグ・ムースの歌、この人シカゴで活躍する人ですが、結構ニューオーリンズしてます。セッションの様子はよく分かりますが、こんなもんリリースしていいのかなぁ。マニア向けの1枚です。


Randy Newman ; Little Criminals ; WARNER BROS. 3079-2 (2006. 1. 8)

1977年リリース。1曲目の「ショート・ピープル」が小さい人間を悪く言っていると、発売当時随分物議を醸したものですが、ここに来てようやく聴くことができました。ランディは劇中音楽などを得意とするピアニストで、現在も活躍中。一度テレヴィで特集を見ましたが、オーケストレーションなども手がける職業作曲家のイメージもあります。でもこの時代は、70年代後半の、西海岸の退廃的な雰囲気を感じさせるロックサウンドで音をまとめています。ゆったりした曲が多いんですが、ドラムにジム・ケルトナーの名前があり、ギターにはグレン・フライやジョー・ウォルシュといった、当時のイーグルスの面々も参加。これがどこか気だるい雰囲気につながってるのかもしれません。で、歌詞がスリーヴに載っていたんでみてみましたが、皮肉に満ち溢れていても、一方的な感じではないですね。「ショート・ピープル」にしても小さい人間を揶揄しながら、「君や僕も同じ」としているんですから。



Rawls & Luckett ; Can't Sleep At Night ; ROOSTER BLUES CD R2630 (2002. 7. 8)

1994年リリース。ジョニー・ロウルズが気に入ったので、以前評判になっていたロウルズ&ラケットも聴いてみました。清々しさを感じる、でも思いっ切りサザンソウルしているデュオっていうのが第一印象です。なんて言うか、角が当たると言ったらいいか、ガツンというインパクトはないんです。曲も全曲オリジナルなんですが、ベースはサム・クックだったり、先頃惜しくもなくなったリトル・ジョニー・テイラーだったり、サム&デイヴだったりするんですが、でもやさしさが溢れているんですよね。ほわっとした気分で聴くことが出来ました。良質な現代版サザンソウルアルバムです。



Ray Agee ; West Coast Blues Vol.1 ; FAMOUS GROOVE FG-CD 972 060 (2003. 2.19)

1952〜57年録音。レイ・エイジーと言えば「ATLANTIC BLUES SPECIAL」に収録されていた「ティン・パン・アレイ」が思い出されるんですが、これはそれ以前のQUEEN、MODERN、ELKOなどの録音を集めたものです。前半は歌い方からして思いっ切りチャールズ・ブラウンで、曲も「ノー・モア・ブルー・シャドウ・イズ・フォーリング」「ディープ・トラブル」「ブラック・ナイト・イズ・ゴーン」という具合にアンサーソング風のタイトルが目白押しです。それが1955年あたりを境に、だんだんポップなR&B路線に変ったかなという印象を受けました。特にエリー・ジョンスンという女性ヴォーカルとのデュオあたりは、一瞬ミッキー&シルヴィアとかに通じるものを感じました。



Ray Agee ; West Coast Blues Vol.2 ; FAMOUS GROOVE FG CD 972 061 (2003.10. 2)

1952〜57年録音となっていますが、実際は1960年頃の録音だと思います。レイの曲で有名なのは、「ATLANTIC Blues Special」というLPに収録されていた「ティン・パン・アリー」ですが、ジョニー・ハーツマンのギターも素晴らしいSHIRLEY原盤のこの曲が、このアルバムのハイライトと言えるでしょう。しかし全体を通すと、実にボビー・ブランドの影響が色濃く出ています。「うがい」シャウトこそないですが、歌い回し、バックの演奏、女声コーラスの使い方など、完全にフォロアーと言ってもいいくらい。因みに1曲目の「ジーズ・シングス・アー・トゥルー」という曲、ブルース・レコーズによればシカゴ録音ですが、ギターはひょっとしてウェイン・ベネットではないかと思います。



Ray Charles ; Let's Have A Ball ; CATFISH KATCD 147 (2000. 8. 3)

レイ・チャールズのデビュー・セッション全曲を含む、DOWN BEAT / SWING TIME での1949〜50年録音集。よく言われていることですが、このころのレイはチャールズ・ブラウンやナット・キング・コールのようなピアノとギターを軸にしたトリオ・サウンドを目指していて、特に歌はもろにチャールズ・ブラウンの影響を感じます。しかしずっと青臭いのが若きレイらしいところです。「トップ・オヴ・ザ・ワールド」「C.C. ライダー」やリロイ・カー・ナンバーのようなスタンダードも多く取り上げていますが、「ゴーイン・ダウン・スロウ」を軽快にやってしまうのはおやおやと言った感じです。しかしブラス・セクションが入り、レイもシャウトする50年録音のジャンプ・ナンバーになると、のちの ATLANTIC 時代での発展を予感させます。


Ray Charles ; 1949-1950 ; CLASSICS 5000 (2004. 5.23)

CLASSICSの5000番シリーズの記念すべき第1枚目。レイ・チャールズは西海岸のDOWN BEAT〜SWING TIMEから初期の録音を出していますが、テイストとしては、初めはナット・キング・コールの影響を感じる、ちょっとジャジーな演奏で、だんだん当時のヒットメイカーであった、チャールズ・ブラウンの影響が色濃く出てきます。全体に洒落ているんですが、後のゴスペルテイストは殆ど感じず、あっさりしています。「ハウ・ロング・ブルース」「アイヴ・ハッド・マイ・ファン」(「ゴーイン・ダウン・スロウ」です)など古いブルースもやっていますが、濃厚さはなく、むしろ都会的な上品さを感じます。



Ray Charles ; Sittin' On Top Of The World ; BLUE MOON 3033 (2004.12. 2)

1949〜53年録音。一部DOWN BEAT録音が入っていますが、ほぼATLANTICの初期録音集といえます。でもこれは嬉しいアルバムでした。何といってもなかなかCDではお目にかかれなかった、僕の大好きな「ファニー」が収録されているんですもの。この他「ザ・サンズ・ゴナ・シャイン・アゲイン」「ルージング・ハンド」「ドント・ユー・ノウ」「シナーズ・プレア」「フィーリン・サッド」といった、シンプルなサウンドで渋めに決めるレイの名曲がずらりです。後のゴージャスなオーケストレーションより、レイのピアノのうまさが引き出されているものが多いですね。「メス・アラウンド」は何度聴いても名演です。



Ray Charles ; 1950-1952 ; CLASSICS 5050 (2004. 6.14)

先日惜しくもこの世を去ったレイの、SWING TIME後期からSITTIN' IN WITHを経てATLANTICに移籍するまでの、ある意味過渡期の曲を集めたものです。1950年の録音はまだナット・キング・コールやチャールズ・ブラウンの影響が色濃いですが、ジャック・マクヴィーやチャールズ・ウォーカー、ビリー・ハドノットといった豪勢なバックに固められた酒悦な「エゴ・ソング」や、オスカー・ムーアのギターが冴える「ベイビー・レット・ミー・ホールド・ユア・ハンド」など聴きものも多いです。これが51年になると、ロイ・ブラウンの影響を受けたようなゴスペルフィーる溢れるブルース「へイ・ナウ」など、徐々にATLANTIC時代に近付いたサウンドになります。1952年にはSITTIN' IN WITHに移籍、でもこの「ギター・ブルース」のギター、どこかで聴いた音なんですが誰でしょうか?ラファィエット・トーマスかな?そしてATLANTICの第1弾「ザ・サンズ・ゴナ・シャイン・アゲイン」、何度聴いても素晴らしい曲です。大好き。



Ray Charles ; 1953-1954 ; CLASSICS 5134 (2005. 6.21)

ATLANTIC時代の比較的初期の作品集です。CDでなかなか聴くことができなかった「サムディ・ベイビー」(「ウォリード・ライフ・ブルース」)の弾き語りからスタートですが、続く「ロー・ソサエティ」は初めて聴きました。ロイド・グレンの曲でもちろんフルソンの演奏で有名な曲ですけど、さすがフルソン・バンドにいただけあって、見事にこなれた、しかもジャズテイストを感じさせるインストナンバーです。この他「シナーズ・プレア」などかなりブルースよりの曲が多いのがこの時代の特徴でしょうか。御機嫌な「メス・アラウンド」、ウィリー・メイボンの「アイ・ドント・ノウ」を思い出させる「イット・シュッド・はヴ・ビーン・ミー」や「グリーンバックス」も入っています。でも何と言っても「アイヴ・ガット・ア・ウーマン」でしょう。抜けてきますね。こういう風に録音順に聴いていくと、なんだか先日読了した彼の自伝をもう一度読み返したくなります。



The Ray Ellington Quartet ; The Three Bears ; AVID AMSC697 (2008. 2.26)

1948〜49年の録音です。ジャイヴ感覚たっぷりの歌に、動物の鳴き真似、ギターや弓弾きベースの擬音など、様々な音の工夫をして愉快な演奏を展開しています。超高速の「ファイヴ・ガイズ・ネイムド・モー」、例のドコドコしたドラムが印象的な「チャイナ・ボップ」、何ともすっとぼけた「ザ・マラハジャ・オヴ・マネージャー」、フィドルが大活躍の「アイ・ドント・ノウ・ザ・ガン・ワズ・ローデド」なんて面白音楽に耳を取られますが、ギターをメインにすえた「サヴォイでストンプ」、勢いのある「スウィート・ジョージア・ブラウン」なんて演奏もあり、バンドの実力の高さを見せつけています。面白い!



The Ray Ellington Quartet ; That's Nice ; CASTLE PULSE PLS CD 482 (2004. 4. 4)

1959年の録音のようです。これはお洒落です。二枚目のレイ・エリントンが小粋なバンドをバックに軽妙なジャイヴを決めるんですが、クラブで繰り広げられるショウが目に浮かぶような演奏で、ウキウキしてきます。スタンダードの「サテン・ドール」やエリントンはエリントンでもデュークの「シングス・エイント・ワット・ゼイ・ユースト・トゥ・ビー」を軽々と決めたり、スリム・ゲイラードの「フラット・フット・フルージー」もさらっと流すなど、格好良すぎ!ファッツ・ウォーラーのメドレーでは「嘘は罪」もやってるんですが、こちらはライヴ乗りの雰囲気でどんどん行ってる感じです。未発表も入って3桁で買えるなんて、とってもお得な一枚でした。



Ray Ellington ; The Best Of Ray Ellington ; ACROBAT ACMCD 4297 (2009.10.21)

1960〜64年のEMBER録音に1949〜55年の録音をボーナスとして加えたものです。EMBERセッションはムーディでポップな印象で、もはやジャンプ時代は過ぎ去ってるって感じです。でもどこか愉快な雰囲気があるのがこの人の魅力でしょうか。一方ボーナスはルイ・ジョーダンのカヴァーなどをぐっとジャジーでジャイヴィーにやってます。ちょっとくぐもった声が吾妻光良に似てますね。「アース・エンジェル」などもぐっとテンポを上げて洒落た感じに仕上げています。やっぱりこっちの時代の方がいいなぁ。




Ray Reed ; Lookin' For The Blues ; DIALTONE/P-VINE PCD-25068 (2007.11.24)

2007年リリース。こんな人がまだいたんだ!という驚きを感じさせる新譜です。いきなりご機嫌なブギをバックに、ダウンホームで、でも存在感たっぷりのヴォーカルとギターを聴かせる例の格好いいことっていったら!カヴァー曲だろうとオリジナルだろうとすべて自分の方に引っ張り込むだけの力量がこの人にはあります。おそらく夜な夜なジューク・ジョイントでライヴを張ってきたんでしょうね。これをDIALTONEの闊達なバックが支えれば悪いものができるはずがありません。「ネヴァー・メイク・ユア・ムーヴ・トゥー・スーン」の重厚なノリからぐちゃぐちゃっとしたイントロで始まる「ルーシー・メイ・ブルース」、鳥肌ものです。フレディ・キングものをやってもぐっといなたく、それだけ存在感を感じるギターと歌、とにかくどの曲も外れなし。アコースティックな「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」も凡百のカヴァーを完全に凌駕する味わいがあります。そしてシャッフルする「ツイスト」!ことしのベストはこれで決まり!



Rebirth Jazz Band ; Here To Stay ; ARHOOLIE CD 9002 (2004. 3.29)

1984年ニューオーリンズでのライヴ録音です。この頃はちょうど日本でもダーティ・ダズン・ブラス・バンドが知られるようになった頃だと記憶していますが、バンド名通りダズンズよりジャズ色が強い印象があります。フィリップ・フレイザーのチューバを軸に、名手カーミット・ラフィンのペットなど金管と太鼓の典型的なブラスバンド構成で、いかにもマルディ・グラといった長尺メドレーから始まります。「リトル・ライザ・ジェーン」は一緒に歌ってしまいました。でつづいてハービー・ハンコックの「カメレオン」と来るあたりがいかにもリバースらしいところです。ゴージャスな「ブルー・モンク」から、ちょっとチャント風ですけどヒップと言うか猥雑な「シェイク・ユア・ブーティ」(KC&サンシャイン・バンドの曲とは違う曲で、多分オリジナル)まで、実に幅広く、でもダズンズよりポップさが薄くファンク度が高い印象の演奏が満載です。



Rebirth Brass Band ; Feel Like Funkin' It Up ; ROUNDER CD 2093 (2007. 6.21)

1989年リリース。いきなりリバースのテーマソングと言ってもいい「ドゥ・ワッチャ・ワナ」からスタート。セカンドラインたっぷりのリズムにコーラスとブラスを絡めるストリート感覚たっぷりの曲が、このバンドがどこを土俵にしているかを良く表しています。「アイル・ビ・グラッド・ホゥエン・ユーア・デッド」は「ユー・ラスカル・ユー」の別タイトルで、カーミットのサッチモ譲りのヴォーカルがよく生きています。この他「ビッグ・チーフ」「アイム・ウォーキン」といったニューオーリンズ・クラシックのノリの良さ、ファンクネス溢れる「シェイク・ユア・ボディ・ダウン・トゥ・ザ・グラウンド」と、適度にラフで躍動感いっぱいの演奏は腰に来ますね。



Rebirth Brass Band ; The Main Event: Live At The Maple Leaf ; MARDI GRAS MG1090 (2005. 3. 9)

1998年のライヴ(ルイジアナ・レッド・ホットから既発)に2004年のスタジオ録音3曲をボーナスでつけたものですが、これらも昨年リリースされた「Ultimate Rebirth Brass Band」ですでに日の目を見ています。ですがライヴは全部聴くのが初めてなんでとても楽しめました。リバースはダーティ・ダズンより何か土着のエネルギーにあふれた感じの演奏に聞こえます。適度にばらけたサウンドがぐいぐいグルーヴを持って迫ってくる感じがたまりません。ボビー・ウォマック&ヴァレンティノズのヒット「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」(ローリング・ストーンズやロッド・スチュワートのカヴァーが有名か)のワイワイした感じとか、ビル・ウィザーズの「ジャスト・トゥー・オヴ・アス」の、原曲のクールさを取り除いちゃった感じとか、ライヴならではです。すごいのは30分余りに渡って展開されるタイトル曲のメドレー。圧巻です。



Rebirth Brass Band ; Hot Venom ; MARDI GRAS MG 1053 (2004.10.20)

2001年リリース。ニューオーリンズのブラスバンドの中でも、このバンドのヒップさと活きの良さは一歩抜きん出ていると思います。このアルバムも例に漏れず、ガヤガヤとした雰囲気の中、2本のトランペットと3本のトロンボーンの分厚いブラスの嵐のようなアンサンブルを、実にセカンドラインしたリズムで聴かせます。この躍動感は本当に癖になります。フィリップ・フレイザーのチューバも要所で象の鳴き声を決めてますし、スージャ・スリムの入ったヒップホップ感覚の強い「ユー・ドント・ウォント・トゥ・ゴー・トゥ・ウォー」やユーモラスなチーキー・ブラックのラップが楽しい「ポップ・ザット・プッシー」など、ストリート感覚にあふれています。



Rebirth Brass Band ; Rebirth For Life ; TIPITINAS 1533 (2004. 5.17)

2004年リリース。このバンドは現在も正しい意味でのブラスバンドで、ゲストにルドルフ・ウェーバーのサックスを入れていますが、文字通り金管とベースドラムにスネアで、切れ味のいい演奏を披露しています。セカンドラインビートがバックボーンにありながら、演奏はストレート。チューバに導かれ、印象的なリフをペットとボーンが奏でれば、あっと言う間にその世界に引き込まれます。長いジャム的な演奏が続きますが、飽きません。面白さの秘密に、どこかラテン風味が潜んでいることがあるように感じました。ラストに亡きチューバ・ファッツに捧げる曲と、バンドの20周年記念のライヴが入っています。とにかくストレートで最高です。



Rebirth Brass Band ; We Come To Party ; SHANACHIE 6018 (2007. 7. 3)

1997年録音。スネアの音が響き渡り、フィル・フレイザーのチューバがうなりを上げる中、ラフな雰囲気のトランペットとトロンボーンのアンサンブルがぐいぐい押してくる、まさにリバースらしい強烈にファンキーなサウンドが詰まっています。5分を超える長尺の曲でも、そのドライヴ感の素晴らしさが飽きさせません。チューバのイントロに笑い声が絡み、ジャジーなサックスと雄叫びが場を盛り上げる「リベリアン・ガール」から、ガツンと始まるタイトル曲のあたりが特に強烈。チャント的なコーラスも格好いいです。



Red Hot Chili Peppers ; What Hits!? ; EMI 0777 7 94762 2 0 (2006. 2. 7)

 1985〜91年のベストです。このバンドは昔ラジオでちょっと聴いたくらいで、後は「タモリ倶楽部」の「空耳アワー」のネタによくされてるなといった印象しかなかったんですが、ロックをベースにパンクとファンクを織り交ぜたサウンドはなかなか刺激的です。ラップをやっていても、基調になっているリズムに力があるので、あまり違和感なく聴くことが出来ました。あと、かなりP-ファンクからの影響を強く感じました。それもそのはず、よく見たらプロデューサにジョージ・クリントンの名が。納得。面白かったのはミーターズの「ハリウッド」で、オリジナルのセカンドラインを消化しながら、コーラスになんとルイ・ジョーダンの「ラン・ジョー」をパクッてるところ。これはもっと聴いてみたいです。



Respect ; 141144115411 ; P-VINE PCD-3977 (2009. 9.17)

2009年リリース。初夏ともみじの大久保姉妹をフロントにした「現役女子高生」バンドのデビュー・ミニ・アルバムです。ふたりとも10年くらい前から知っていますけど、本当に成長しました。初夏のギターは師匠のTAD三浦から吸収したことを、発展的に生かしていますし、子供の頃から天性のリズム感のあったもみじのヴォーカルやハーモニカは、大人の艶を加えています。ブルースやソウルの有名曲を英語でやっていますが、たくさん踏んだ場数を感じさせる、ある意味成熟すら感じさせる演奏で、安心して聴くことが出来ます。ただ問題は、「現役女子高生」の看板が取れたとき、どれだけ聴き手にインパクトを与えられるかですね。どの様にオリジナリティを高めていくのか、期待しています。




Rev. Gary Davis ; The Complete Early Recordings Of ; YAZOO 2011 (2000. 5.12)

1935年の録音に1941年の録音を加えたもの。他のHPで話題になっていたので久々に聴いてみましたが、イースト・コースト・スタイルのフィンガーピッキングは完璧を通り越しています。上手すぎます。ブラインド・ボーイ・フラーの先生だったってのも納得です。歌は典型的な伝道師らしく、がなるように訴えます。高揚感がすごいんですが、そのバックで正確に刻まれるギター。本当にひとりで両方やってるの?って感じです。


Rev. Gary Davis ; Blues & Ragtime ; SHANACHIE 97024 (2004.11.10)

1962〜66年にいろんなところで録音されたものを集めています。タイトル通りスピリチュアルは少なく主にブルースとラグタイムがほとんどで、その華麗なギター・テクニックをたっぷり堪能することが出来ます。ハイテンポな「バック・ラグ」やゆったりした「C-ラグ」の確かなギターワークは本当に素晴らしいですし、11分に及ぶ「へジテイション・ブルース」では聴衆を笑わせながらかたるように歌い継いでいきます。「キャンディマン」はハスキーな声で「キャンディマン」と叫んでいる裏のギターが素晴らしく滑らか。時折スライドを交えたり、12弦ギターを使ったりとサウンドも多彩です。さらにブックレットにはタブ譜がついてますので、彼の曲を弾いてみようという人には特にお薦めです。



Reverend Raven & The Chain Smokin Altar Boys ; Slow Burn ; NEVERMORE NRCD-001 (2000. 8. 7)

1998年の作品。かつて三沢基地にいて、怪しい日本語を操る(江戸川スリムさんによる)白人ギタリスト。ハープにキャデラック・ピート・ローンを迎えています。二人ともかなりのテクニシャンで、リヴァーブの効いたロッキン系のシャッフルは、ボトムがどっしりしていてなかなかのものです。ギターはときおりトリッキーなプレイを聴かせます。ただ、楽曲と歌に僕にとってのインパクトが足りませんでした。「ルイーズ」や「ステッピン・アウト」などの有名曲の解釈にもちょっと首をかしげてしまいました。上手いのに惜しいなぁ。もうちょいファンキーにやったらいいのでは?


Reverend Raven feat. Madison Slim ; Live At Blues On Ground ; NEVERMORE no number (2004.12. 8)

2002年3月22日インディアナでの5時間半に及ぶライヴからのセレクト。録音音質は良くないんですが、タイトにまとまったバンドと、レイヴンのかっちりして隙のないギター、それにマディソン・スリムのやや生っぽさのあるハープが縦横無尽に絡むバンド演奏は、ライヴの現場にいたら盛り上がっただろうことを想像させます。選曲はシカゴ・クラシックにスリム・ハーポやフランク・フロストと行ったサザン系のブルースを織り交ぜた感じで、とにかく演奏がタフです。ただ、2人とも決して歌が上手い方ではないので、どうしても耳はギターとハープにいきますが、ギターは上手いんですがあまりに破綻がないためスリルに欠ける気もしました。やっぱりこういうのは生で見たいですね。



Rhythm & Groove Club ; Groove Approved ASEND MUSIC 706-268-2138 (2006. 4.27)

2006年リリース。このバンド、何だろうと思って買ったんですが、メンバーを見ればアラン・トゥーサンを中心としたバンドですね。ギターにティンゼイ・エリス、ベースにディヴィッド・ベアード、そしてニコラス・ペイトンのトランペットと、なじみのあるメンバーも入っており、トゥーサンのオリジナルに「ジャスト・ア・リトル・ビット」やら「ボーン・アンダー・ア・バッド・サイン」を割とオリジナルに忠実にやってたりします。ヴォーカルのジェフ・クックはちょっとスワンプ・ポップよりの声に聞こえますが、明るい感じの歌い方でまあまあってところでしょうか。時折聞こえるトゥーサン節のピアノが良いアクセントになってます。



Richard Berry ; Baby, Please Come Home ; NILE 101 (2003.12. 8)

いかにもブートっぽい作りのCDで、録音データなど何もありませんが、おそらく50年代後半〜60年代初めくらいのものではと思います。リチャードは主にウエストコーストで活躍したシンガーで、R&Bとしてはかなりポップでティーンエイジャー向けのイメージです。有名なのは「ルイ・ルイ」で、1曲目に入っていますが、パーティソングといった雑然さがその後の様々なカヴァーと比べ印象に残ります。曲によってはいかにもウエストコーストといったギタープレイが入っていたりしますが、多くはキャッチーなコーラスワークの入ったコマーシャルな曲。中には「べサメ・ムーチョ」なんてのまで入っています。でもよく聴くと歌は甘そうでいて結構タフなんですよね。こういう「隙間」音楽は面白いです。



Rick Holmstrom ; Late In The Night ; MC MC0057 (2007. 5.15)

2007年リリース。少しファジーなギターサウンドでいきなりリズミカルなインストをかませます。わざとドラムの音を引っ込め、ベースはスタンダップを使い、ギターを前に出したかのような録音で、アール・フッカー初期のインストナンバーからのパクリをバッチリ決めてます。エイトビートやファンキーなリズムの曲では、かなりざらついた音でロック的なアプローチを聞かせます。「ワン・ラスト・チャンス」など結構いい歌も歌ってますね。一方「ベター・ウェイ」なんてブルースになると、さすがいいリズムでシャッフルを刻みます。「レイニー・デイ・ウィメン#12 & 35」あたりになると結構アバンギャルドな感じも受けますね。こうやって聴き進んでいくと、ロニー・マックあたりをアイドルにしてたんじゃないかなって思いました。ギタリストらしいアルバムです。



The Righteous Brothers ; The Best Of The Righteous Brothers ; POLYDOR UICY-1521 (2004. 2.29)

1965年前後の録音でしょう。ライチャス・ブラザーズといえばブルー・アイド・ソウルの代表格で、「アンチェインド・メロディ」「ふられた気持ち」とソウルフルながら、甘酸っぱさを感じる歌に魅力がありますが、こうしてまとめて聴くと、やっぱりフィル・スペクターの分厚いエコーサウンドが独特の雰囲気を出しているのがよく分かります。選曲は思いっ切りソウルなピケットの「ミッドナイト・アワー」やテンプスの「マイ・ガール」さらにはサム&デイヴの「ホールド・オン」までやっていますが、何とか自分たちのものにしようと賢明に取り組んでいる感じが伝わり、結構気に入りました。スタンダード曲になるとフィルのカラーがぐっと前に出るかな。



Rick Tobey ; Chickenhead Blues ; LOUISIANA RED HOTO no number (2004.11.21)

2004年リリース。リゾネイタをスライドバーでかき鳴らすっていうのは最近自分自身がはまっているスタイルなので、大いに参考にしようと思って聴きましたが、テクニックが違いすぎて降参しました。ブルースのスタンダードのオリジナルな解釈もあり、「ステイツボロ・ブルース」や「トラヴェリング・リヴァーサイド・ブルース」などなかなか新鮮。「セントジェイムズ病院」なんてかなりユニーク。右手のフィンガーピッキングが華麗で、曲によってはリゾネイターとは思えないほど綺麗な響きだったり、バンジョーのサウンドを彷彿させるものもありました。渋めのヴォーカルが良くマッチしてます。パーカッションの聴き具合もいいなぁ。エレキを使った曲がありますが、ちょっと凡庸で蛇足に感じました。



Ricky Allen ; Remember The Time ; OFFICIAL CD60102 (2006.12.10)

1961〜67年にAGE、USA、BRIGHT STAR等に残した録音のうち、数枚を除き集めたもので、リッキーの全盛期を完全にとらえています。ただしレーベル名に反して、このレーベルは海賊盤と言えるもので、この作品もきちんとした権利は取っていないでしょう。まあ発売件を持つ会社がちゃんとしたものを出せない中、貴重なんですけどね。リッキーの場合、「カット・ユー・ア・ルース」「アウチ!」といったR&Bカラーの強い曲に魅力がありますが、こうして通して聴いていくと、よりポップで甘めの曲が多いことに気がつきます。この辺りがなかなか再評価されなかった理由でしょうが、彼の柔らかくメロウな声と歌い方には、ごついブルースは似合わないと思うので、「売ろう」とする側からすると当然のサウンドのように思えますし、ゴスペル色のある声はシカゴ・ソウル的なアレンジが似合う気もします。マイナーレーベルの悲しさでサウンドが野暮ったいのと、ちょっと線が細すぎたのが売れなかった理由かな。ただ、もう少しサウンドをファンキーにしたらもっと面白かったんじゃないかななんて思いますが。



Ricky Allen ; Live ; JEFFERSON SBACD 12657 (2002. 1.21)

2001年スウェーデンはモンステラス(と読むのかな?)・ブルース・フェスでのライヴ録音。リッキーは60年代にシカゴで優にアルバム1枚は出せるほどの録音を残した人ですが、なかなか日の当たらないブルースマンで、この人が単独盤でリリースされたことは大変喜ばしいです。地元のバンドをバックに、リッキーはちょっと線の細くなった声ですが、スムーズな唄い回しでブルースのスタンダードと自己のヒット曲を唄いつないでいきます。バックの演奏は堅実なんですが、録音レベルが全体に低いセイもあり、ちょっとめりはりに欠けます。また明らかにリハーサル不足で、特にアンコールの「アウチ」では特有のノリが全く出ず、リッキーも唄いにくそう。もっといい環境を整えたらまだまだやれるように思いました。



Riko McFarland ; Tired Of Being Alone ; EVIDENCE 26113-2 (2001. 8.17)

昨年ラッキー・ピーターソンとともにパークタワーにやってきたリコの出来立ての新譜です。まず耳をひいたのは、そのシャープでタイトなバッキング。おそらくリコ自身がリズムギターを担当していると思われますが、ドラム、ベース、オルガン、ホーンと一体となって、シンコペーションの聴いたファンキーで現代的なアレンジが心地よいです。リコの歌はすっきりしたクリアな感じで、かなり好感がもてました。オーティス・クレイ、シル・ジョンソンなど豪華なゲストヴォーカルが加わり、それはそれでいいんですが、もう少しリコの歌を前に出してもいいんではと思ったくらいです。ギターはかなりロックっぽい、次世代のソロといった感じです。好みは分かれると思いますが、僕は随所に才能のきらめきを感じました。ギターにカール・ウェザーズビー、チコ・バンクス、ハープにはシュガー・ブルーにビリー・ブランチ、ピアノにアリヨと現役バリバリのシカゴ・ブルース・ミュージシャンを加え、豪華な作品となっています。これもベスト10入りは確実。その「新しさ」にどっぷりと浸ると快感です。



Ringo Starr ; Ringo ; APPLE/TOSHIBA EMI TOCP-3167 (2005. 9.13)

1973年リリース。嘘のような豪華キャストが集まってますが、作品もそれ相応で、「想い出のフォトグラフ」「ユーア・シックスティーン」といった大ヒットも生んでいます。改めてビックリしたのが、「ハヴ・ユー・シー・マイ・ベイビー」のピアノが何とジェイムズ・ブッカーだったってこと。こんなところに出てくるとは。ちなみにギターはマーク・ボラン。この他「ユーア・シックスティーン」のコーラスがニールソンだったり、ちょっとアイリッシュが入ってる「サンシャイン・ライフ・フォー・ミー」にザ・バンドの面々が参加してたりとか。でも何と言ってもこのアルバムのいいところは、ポップ・アルバムとして極めて良質だってことです。トム・スコットのシャープなサックスソロの利いた「オー・マイ・マイ」なんて佳曲もあるし、名盤ですよ。通して聴いても飽きないもん。



Rising Sons ; Rising Sons Featuring Taj Mahal And Ry Cooder ; COLUMBIA/LEGACY CK 52828 (2001.10.29)

1964年に、後にいずれも大成するタジ・マハルとライ・クーダーというふたりの若者がかかわっていたバンドが録音した、幻のレコーディングのCD化です。タジがデビュー作で再び取り上げる「ステイツボロ・ブルース」は軽快で、よりオリジナルのブラインド・ウィリー・マクテルに近いなど、全体にカヴァーはオリジナルにかなり近い解釈の若々しい演奏です。ライももろエルモアだったりしてまだまだ青さを感じる一方、ビートルズあたりからの影響も見え隠れするのが時代を感じます。作品としての完成度はまだまだだと思いますが、後の成功が分かっている現在聴くと、なんとなく片鱗を感じてしまうから後付けって恐ろしいですね。



Rita Coolidge ; Delta Lady - The Anthology ; A&M/HIP-O B0001568-02 (2005.10.23)

1969〜98年の、リタの30年の軌跡をたどったベスト盤です。そのうちに熱いソウルを秘めながら、ストレートに歌うリタは、例えばアリサ・フランクリンのようなメリスマたっぷりの歌唱とは対照的ですが、逆にそこが大きな魅力になっていると思います。初期はSTAXナンバーなどを結構歌っていましたが、カントリーフレイヴァーのある曲もこなし、また夫となるクリス・クリストファーソンとの息のあったデュエットも魅力的です。歳を重ねる毎に、さすがに円熟味は増していきますが、でも初期の持ち味であるこのストレートさが失われないのが、まさにリタの真骨頂ではないでしょうか。その歌をベースにして楽曲を聴いていくと、意外なほど変化していないことに気付きます。変わったのはバックのサウンドの方で、このAOR/ブラコン的な手法が苦手な僕は、やっぱり食わず嫌いだったのかな。いろいろ感じるところの多いアンソロジーでした。



RJ's Rhythm Rockers ; Live At The Menu ; NO COVER NCP 026 (2003.11. 9)

2003年2月デトロイトでのライヴ。このバンドはおそらくデトロイトの白人ブルースバンドで、しっかりした演奏力を持っています。ノリのいいリズム隊にワームなギターとピアノ、サックスが絡み、割合ファットなヴォーカルが絡んできます。ヴォーカルはメンバーが交代で歌っています。サックスで最も多く歌っているピッコロの結構シャレの効いたオリジナルに、「ゼア・イズ・サムシング・オン・ユア・マインド」「ノック・ミー・ア・キス」など粋な曲を中心にやっていて、かなり楽しめました。とにかくライヴ盤でこれだけしっかりした演奏ができるっていうのは、バンドとしての力はかなりなものですね。その分スリルはないんですが。



Rob Ickes ; Hard Times ; ROUNDER CD 0402 (2001.10.12)

1997年リリース。bbさんから「ドブロの名手」と聞いてお願いした盤です。ブルーグラスを中心としたアルバムで、とっても達者なドブロを聴くことができ、アカンパニストのフィドル、バンジョーなども的確。それはそれで面白かったんですが、一番驚いたのは、ミーターズの「ロッカ・パイパイ」をジャジーに決めていることです。オリジナル曲の味わいを残しながらも、まったく別の曲と言ってもいいくらいイメージを変えていて、僕はこの一曲で大変満足しました。



Rob Ickes ; Slide City ; ROUNDER CD 0452 (2001.10.17)

1998年録音です。前作(かな?)がかなりブルーグラス寄りのアルバムだとすれば、こちらはジャズ寄りといえます。ハービー・ハンコック、マイルス・ディヴィス、ラリー・カールトンまで取り上げていますし、バックの演奏自体もジャジーです。とにかくタイトル通り都会的なサウンドでドブロの泥臭さを感じさせません。そんな中、「ビ・ソウ・マイ・ヴィジョン」という曲がなかなか浮遊感があり、気に入りました。なんだか沖縄の音楽のようなスケールでのプレイでエキゾチックです。とにかくおしゃれなアルバムで、いかしたバーのBGMなんかに使うとぴったりって感じです。



Rob Ickes ; What It Is ; ROUNDER 11661-0492-2 (2005. 1. 6)

2002年リリース。バックの演奏は完全なジャズと言っても良く、アルバム自体もジャズ指向があると思うんですが、そこにスライドを含めたリゾネイターサウンドが絡みついていくのが実にユニーク。普通とっても泥臭く聞こえるスライドプレイが、不思議と都会的な雰囲気になってしまっています。曲によってはフュージョンそのもののサウンドとフレーズを持っています。つまりとても器用で引き出しの多いサウドなんですが、面白さは感じるんですが、やっぱり僕にはスマートすぎる気がしました。むしろジャズファンに聴いてもらいたいな。



Rob Murat ; So Much To Say ; ROB MURAT no number (2008.11.18)

2008年リリース。ロブ・ミューラは現役バリバリのR&Bシンガーなんですが、どこか懐かしい雰囲気があるんです。ヒップホップ的な手法や今風のサウンドの割には、しっくり馴染んで聴けちゃうのは、多分歌に力があるからだと思います。素直で真っすぐな歌い方で、どこかゴスペルで鍛えたような印象もあります。曲も変にひねくり回さずストレートでポップな感じがいいですね。特にミディアムの「セレブレイト」とかいい意味で軽くて気持ちいいですし、続く「サムシング・マジカル」はじっくり聴かせるバラード。新しい録音でこんなのもあったんだって感じです。気に入りました。




Robert Belfour ; Pushin My Luck ; FAT POSSUM 80369-2 (2003. 5.19)

2003年リリース。この人もヒル・カントリー系のようですが、主な活動場所はメンフィスなのかもしれません。生ギターにドラムという組み合わせで、何曲かはドラムレスの弾き語りですが、ギターは相当のものです。ビート感がしっかりしていて、曲調としてはジョン・リーのブギをもう少しさっぱりしたようなプレイが、なかなかいけます。ヴォーカルはディープですが、ギターはずっとシャープで、どさくさに紛れた感覚はないです。その分やや地味な印象もありますが、一時のバーンサイドのように妙に音をいじったりするよりはいいな。ゆったり目の曲ではちょっとライトニンを彷彿させるところもありました。聴いていて疲れないです。



Robert "Bilbo" Walker ; Rompin' & Stompin' ; FEDORA FCD 5005 (2004. 9. 3)

1998年リリース。この人、実にミシシッピのローカルな味わいの出た人です。ギターはヒューバート・サムリンのような音作りで、手なりのようなソロを弾きますが、結構味がありますし、ヴォーカルもストレート。選曲はハウリン・ウルフから「カット・ユー・ア・ルース」「ムスタング・サリー」と、シカゴのクラブなどで人気のあるナンバーが目白押しですが、タイム感がめちゃめちゃだったりと、洗練のかけらもありません。でもバックバンドは結構タイトで、きちんと合わせているあたり、レコーディングに向けて結構リハーサルしたのかしら。ご当地のジューク・ジョイントに飛び込んでいったらこんな音が溢れてるんでしょうね。



 Robert Convington ; Blues In The Night ; ECD 26074-2 (2002.11. 4)

1987年シカゴ録音。ロバート・コヴィントンはサニーランド・スリムのバンドのドラマーだったそうですが、このリーダー作、なかなかどうしていい歌を聴かせます。ふっくらとした暖かみのあるブルースヴォイスで、タイトル曲や「ミーン・ミストリーター」などスローナンバーを歌われるとうっとりしてしまいます。ちょっとアルバート・キングに似た肌合いを感じますが、そういえばアルバートも元はドラマーだったっけ(関係ないか?)。一方マディ・ウォーターズのヒット「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・メイク・ラヴ・トゥ・ユー」は、なかなかイカしたファンキーなアレンジで決めてます。オリジナルもしっかりした曲揃い。バックにはピアノにアリヨ、ギターはカール・ウェザーズビーが担当。アリヨの的確なバッキングも渋いし、何よりカールのギターがよく歌っています。



Robert Cray ; Live / Outdoor Concert, Austin, Texas 05/25/87 ; MERCURY B0013999-02 (2010. 7. 8)

「公認された海賊盤」と銘打たれたシリーズです。1987年といえば「スモーキング・ガン」が大ヒットした直後で、クレイが最も油に乗っていた頃。演奏にもその辺の充実ぶりが良く出ています。ジョン・リー・フッカーとの初来日でも披露していたジョニー・ギター・ワトソンの「ドント・タッチ・ミー」もかなりこなれた歌い方になっていますし、途中にジミー・スミスの曲というか、バンドライヴの定番インストと言ってもいい「バック・アット・ザ・キッチン・シャック」をゆったり目にやったりと、こんなこともやってたのねって感じ。ライヴはその後の「ニュー・ブラッド」あたりから佳境に入り、彼の才能を見せつけた「フォーン・ブース」、ブルースナンバーの「プレイン・イン・ザ・ダート」、そして「スモーキング・ガン」へとなだれ込みます。ラストは「ライト・ネクスト・ドア」。かなりいい状態のライヴで楽しめました。




Robert Cray ; Live At The BBC ; MERCURY 530 3338 (2008. 2. 7)

1988年と1991年と言えば、クレイが一番油の乗りきっていた頃の、BBCラジオ番組用にハマースミス・オデオンで録音されたライヴです。これが悪いわけないじゃないですか。もしかするとどちらかの音源はテープであるような気もするので探してみようと思いますが、「アイ・ゲス・アイ・ショウド・ハー」から「スモーキン・ガン」まで、代表曲のオンパレード。とりわけ「ライト・ネクスト・ドア」はぐっと来ますね。「フォーン・ブース」はオリジナルより低音強調で、ちょっと切れが落ちた気もしますけど、他の曲とのバランスを考えれば、クラプトンとツアーしたりしてたわけですから、こんな感じなんでしょう。先日出た新しいライヴとはまた味わいの違う、いい意味でのベストライヴだと思います。



The Robert Cray Band ; Time Will Tell ; SANCTUARY 06076-84613-2 (2003. 7.11)

2003年の新譜です。1曲目、ちょっとどこかできいたことのあるような印象的なメロディの「サヴァイヴァー」で、いつものピュアなヴォーカルとギターが飛び出してきたのを聴いて、ロバート・クレイは健在だって安心しました。曲は自作5曲の他、キーボードのジム・プーが3曲担当するなど、すべてバンドのオリジナル。ジムの曲がちょっと凝りすぎかなって思う面も感じられますが、ちょっと聴いただけでロバート・クレイと分かるサウンドメイキングは並大抵のものじゃありません。この人はせまっくるしい意味でのブルースとかソウルとかで括られることを鼻で笑うような、まさにワン&オンリーの音楽を生み出していると言えます。徹頭徹尾クレイ節、僕はやっぱりこの人が好きです。ある意味しっかり吹っ切れた一作といっていいんじゃないでしょうか。



The Robert Cray Band ; Twenty ; SANCTUARY SANCD368 (2005. 6. 7)

2005年リリース。元々内省的で哲学を感じる歌の多いクレイが、今のイラクでの戦争に黙っているわけはないと思っていましたが、ジャケットの砂漠で苦悩する兵士(と僕には見える)のジャケット、そしてタイトル曲の歌詞の中に出てくる「砂漠」「戦争」「兵士」といった言葉から、歌詞の内容を正確に知ることはできませんが、メッセージを発していることは確かです。前作のような凝った音作りではなく、無駄をそぎ落としたようなアレンジと、一聴してクレイと分かるメロディ、そして全体に抑えた歌い方が、そうしたメッセージ性をより感じさせます。冒頭から曇りのある声で、ギターもいつもより控えめに感じましたが、秘めたエネルギーのようなものを感じたのは気のせいとは思えません。歌詞が分からないのが本当に歯がゆいです。最近の作品では統一感もあり、僕はかなり気に入りました。



The Robert Cray Band ; Live From Across The Pond ; NOZZLE 79815-2 (2006.12.23)

2006年リリースの新譜はライヴ盤です。ショウのスタートを飾るのは彼の出世作「フォーン・ブース」で、多分得意のパターンではないでしょうか。ジョン・リーとの初来日の時を思い出しました。以降比較的新しいアルバムからの曲に、HIGHTONE時代の曲を織り交ぜながらのステージのようで、「スモーキング・ガン」「ドント・ビー・アフレイド・オヴ・ザ・ダーク」といったヒット曲は敢えて外してあるようです。そのストラトの音色といい、円熟味を増したヴォーカルといい、どこを切ってもロバート・クレイで、この人の才能のすごさを改めて感じることができました。ただ2枚組のアルバムなんですが、2枚目に行ってもミディアム〜スローが中心で、ショウが盛り上がっていかないんです。彼の個性がそうだと言ってしまえば身もふたもないんですけど、聴いている方からすると、これを2枚組通しで聴くのはちょっと辛いなぁ。実際の公演がこの調子じゃ眠気を催すかもしれません。ラストの「アイム・ウォーキン」、気合いは十分なんですが、曲のインパクトが弱いんですよ。生真面目すぎる気がしました。



The Robert Cray Band ; This Time ; NOZZLE 79960-2 (2009. 9.16)

2009年リリース。バックメンバーはジム・ピュー、リチャード・カズンズといった昔からの仲間で、安心したように伸び伸びと歌うクレイ節が染みてきます。それにこの人のストラト・サウンドは本当に美しいですね。楽器の特性を上手く生かしながら、ヴィブラートやベンドのテクニックを上手く交え、エモーショナルにプレイしています。「ザッツ・ホワット・キープス・ミー・ロッキン」、久々に聴くクレイらしいブルース・チューンですし、ラストの「トゥルーセ」、落ち着いたソウルナンバーで、これまたクレイの持ち味を存分に生かしています。これはことしのベスト5に入りますね。




The Robert Cray Band ; Cookin' In Mobile ; VANGUARD 78073-2 (2010.10.18)

2010年リリース。おそらく最近のライヴで、ボーナスにDVDがついています。最近のロバート・クレイ・バンドはメンバーが90年代から一緒にやっているジム・ピューのキーボードに、旧友のリチャード・カズンズのベースが戻って、とても安定したなって印象があります。このライヴもそうで、落ち着いたバックの演奏に乗って、ロバート・クレイが伸びやかに歌い、ギターを奏でています。そのサウンドは唯一無二で、ワンパターンとも言えるんですが、そこにクレイの魅力が詰まっているわけですから、僕はこの姿勢でいいと思うんです。古い「ライト・ネクスト・ドア」から新しい「チキン・イン・マイ・キッチン」と繋がるところでも全く違和感がない、この変わらないクレイが僕は好きですね。丁寧に作られたいいライヴ盤だと思います。




Robert Ealey ; I Like Music When I Party ; BLACK TOP CD BT-1138 (2007. 4. 8)

1997年リリース。ロバート・アーレイは北テキサスで活動してきたベテランですが、余りレコーディングには恵まれていなかったようで、ようやく80年代にレコードが出されるようになりました。ルー・アン・バートンのアナウンスで始まるんでライヴかと思いましたが、きっちり作られたスタジオ盤です。ギタリストのトーン・ソマーにハッシュ・ブラウンなどが加わったバンドはけっこうタイトで、アーレイの魅力をうまく引き出していると思います。まあもっとドロッとしたバンドをバックにしたらさらに強烈かもしれませんが、トーンのギターがけっこうテキサスしていて悪くないですね。やっぱりBLACK TOPに外れなしです。



Robert McCoy ; Bye Bye Baby ; DELMARK DE-759 (2003. 2.21)

1958年〜60年代中頃の録音。昨年BSR誌や某掲示板で評判だったので購入しましたが、これはいいですね!タイトル曲のゴリっとしたブギと味わいのあるボーカルがまず染みました。ピアノが力強く、特に左手がインパクトのある音です。華麗なテクニックて感じではなく、ぐうっとこちらの中に入ってくるような演奏で、歌も上手く歌うというよりは、染みついたブルースを振りまいている感じで気に入りました。ラストに何とレイ・チャールズの「レッツ・ゴー・ゲット・ストーンド」とは恐れ入りました!これがバレルハウス・ピアニストなんですね。お薦め!



Robert Jr. Lockwood & Johnny Shines ; Sweet Home Chicago - The JOB Sessions 1951-1955 ; P-VINE PCD-24051 (2001. 4. 4)

ふたりの共演盤もありますが、これはそれぞれのJOB録音を集めたコンピです。ロックウッドは単独盤も出ていましたが、音質が向上しています。以前のP-VINEのCD化の時漏れていた「ダスト・マイ・ブルーム」の別ヴァージョンも今回しっかりCD化されました。ロックウッドは非常に懐が深く、デルタ風からジャジーなジャンプ系まで平然とこなし、しかもロックウッドの音になるのがすごいです。サニーランド・スリムとのコンビネーションも最高。アカンパニストとしての力量は折り紙つきです。ジョニー・シャインズの方もいくつかのコンピで聴いたことのあるものが中心ですが、張りのあるヴォーカルとディープなギターがすばらしいです。「イヴニング・サン」のウォルター・ホートンのハープは最高で、別テイクも甲乙付けがたいです。シカゴブルース・ファンは必携でしょう。



Robert Lockwood Jr. ; The Complete TRIX Recordings ; 32JAZZ 32109 (2006.11.24)

1973年と75年、TRIXに残された2枚のアルバムヘの録音を収録した2枚組です。1枚目は「Contrasts」と題されたもので、この前作に当たるDELMARKの「Steady Rollin' Man」にあったような弾き語りと、サックスを絡めたジャジーな演奏の組み合わせという、まさにロックウッドらしいアルバムと言えます。結局ロバート・ジョンソンの義理の息子という「看板」と、彼自身のモダンなセンスの両方が自分自身なんだと言っているようですね。「アイ・アム・ブレイム」なんてもろにT-ボーンマナーで入っていて、コード弾きのヴィブラートやソロのフレーズなど、この直後の初来日の際のスローブルースのまんまですね。2枚目は「Does 12」と題された、文字通り12弦ギターを用いた演奏で、ここでもロバート・ジョンソン・ナンバーに「ジャスト・ア・リトル・ビット」などのモダンな曲が交えてあります。彼、この複弦の広がりのある響きが好きなんですね。それに弾き語りでも何だかゴージャスな感じもしますし。天国でも12弦ギターをつま弾いているんでしょうか。R.I.P.



Robert Jr. Lockwood & The Aces ; Blues Live! ; VIVID SOUND VSCD-011 Click Here!

Robert Lockwood Jr. & Boogie Bill Webb ; The Blues Of Robert Lockwood Jr. & Boogie Bill Webb ; STORYVILLE STCD 8055 (2007. 1. 7)

ロックウッドが1984、ビル・ウェッブが1985年、いずれもニューオーリンズでのライヴです。ロックウッドはエレキの12弦の弾き語りで、「イン・ジ・イヴニング」「テイク・ア・ウォーク・ウィズ・ミー」「リトル&ロウ」と、お得意のナンバーを、いつも通りの職人芸と言っていい達者なギターを爪弾きながら渋く歌います。「エグザクトリー・ライク・ユー」ではジャズテイスト溢れるギターを披露、一方「ドライヴィング・ホウィール」はデルタ寄りのスタイルでこなしています。「ロックウッド・ブギ」、ひとりでこれだけ弾けちゃうってのがさすがです。一方ビル・ウェッブはハーモニカ・スリムとのコンビで、かなりシンプルでローダウンなスタイルのギターとハーモニカです。歌はハーモニカ・スリムの方が迫力があるかな。「ワン・ルーム・カントリー・シャック」から「フーチー・クーチー・マン」と、有名曲を何ともいなたく演奏していますが、上手いとかそんなことより、何とも言えないムードが漂っています。本当に田舎の丸太小屋のステップに二人腰掛けて演奏してるって感じ。ギターはエレキですけどね。



Robert Jr. Lockwood ; What's The Score? ; P-VINE PCD-2290 (2007. 3.27)

1990年秋録音。クリーヴランドの自身のバンドで録音したもので、クリーヴランド・ファッツことマーク・ハーンを初めとしたメンバーは息もバッチリ合っていて、ロックウッドをもりたてます。ジャジーなインスト「サムシング・トゥ・ドゥ」から邦盤タイトルの「ブルース・ウィズ・ア・グルーヴ」、原盤タイトル曲、「ファンキー・ママ」とロックッドのヴォーカルと12弦ギターをモダンなバンド演奏がうまくサポート、決して過去にすがらないロックウッドらしさが出ています。ラスト2曲はハーンの歌と彼が主役のインストで、ギターは完全にロックウッド譲り。こうした選曲、弟子を大切にする師匠って感じがいいですね。



Robert Jr. Lockwood ; Swings In Thokyo Live At The Park tower Blues Festival '95 ; P-VINE PCD-93083 (2008. 5.13)

このライヴは目の前で見ていましたが、改めて音を聴き直すと、衰えたとはいえロックッドの凄さを再認識します。いきなりのジャジーな「サムシング・トゥ・ドゥ」でスタート。複弦の張ってあるギターで独特のサウンドを鳴らしながら、味のあるフレーズを繰り出してきます。ロバート・ジョンソン・スタイルの「ステディ・ローリン・マン」や「カインド・ハーテド・ウーマン」ではその実直な性格がにじみ出たヴォーカルがジンと来ます。小出さんのサポートも控え目ながら的確で、ロックウッドのベストとはとても言えないんですが、味わい深いアルバムになっています。



Robert Lockwood Jr. ; The Legend Live ; P-VINE PCD-24149 (2004. 3.25)

2003年録音のバリバリの新譜です。まもなく米寿を迎えようというロックウッド翁の12弦ギターによる弾き語りライヴで、もちろん若い頃のようなキレはちょっと影をひそめていますが、その達者な指さばきと、枯れた味わいの中に年齢を感じさせない力強さを秘めたヴォーカルから、「俺はまだまだ現役よ」という翁の気概が伝わってきます。かつて共演してDELMARKに録音したルーズベルト・サイクスの「フィール・ライク・ブロウイン・マイ・ホーン」、僕の大好きな歌なんですが、これを楽しそうに歌う姿が目に浮かびます。また「スウィート・ホーム・シカゴ」はもはやロックウッドでしかできない深みのある表現で、もう少し長尺でやってもらいたかったくらい。ロバート・ジョンソン・ナンバーや古いスタンダードブルース中心の選曲ですが、まったく飽きずに聴くことができました。



Robert Parker ; The Wardell Quezerque Sessions ; NIGHT TRAIN NTI CD 7107 (2002. 7.31)

詳しいレコーディング・データがないんですが、おそらく1960年代後半でしょう。ロバートの代表曲「ベアフッティン」で始まるケゼルクのプロデュースした作品集ですが、思ったよりもオーソドクスでした。結構カヴァが多いんですが、全然ドラマティックにならない「アイヴ・ビー・ラヴィング・ユー・トゥ・ロング」とか拍子抜けしてしまいました。この他チャック・ウィリスをベースにした「C.C.ライダー」、ウィルソン・ピケットの「ミッドナイト・アワー」、リトル・リチャードの「フロム・マイ・ハート」からはてはフォー・トップスの「アイ・キャント・ヘルプ・マイセルフ」まで、独特のやや情けない声で歌っています。オリジナルは「ベアフッティン」の影を感じる曲が多いですね。



Robert Palmer ; Snakin' Sally Through The Alley ; ISLAND/POLYSTAR P25D-25108 (2005.12.15)

1974年のデビューアルバムのストレートリイシュー。バックにミーターズのリズムセクション、そしてギターにハローウェル・ジョージを迎えたこのアルバム、インターネットのコミュニティサイトで話題になっていたんですが、めでたく中古でゲットできました。いきなり「セイリン・シューズ」でスタートしますが、サウンド的にはコーラスの使い方などこの当時のリトル・フィートを思わせる出来。ロバートの歌はまだ真っすぐですが、こっちの方が僕は好きですね。またタイトル曲などのアラン・トゥーサンの曲もやっていますが、ジグとジョージの隙間たっぷりのリズムにローウェルの個性溢れるスライドが絡むサウンドは、ちょっと粘るロバートの歌もあって、やっぱりリトル・フィートに通じますね。ラストの「ゾー・イット・オール・ゼアーズ・ユー」だけはニューヨークでスタッフの面々とやったものだそうですが、このコントラストも面白い作品だと思います。



Robert Randolph & The Family Band ; Live At The Wetlands ; DARE DR001 (2002. 7.19)

2001年ニューヨークでのライヴです。ランドルフはザ・ワードに参加していてちょっと興味があったんですが、このアルバムは評判がいいんで聴いてみました。これ、いいです。適度なスピード感と新しさが魅力的ですが、何といってもランドルフのスティールが凄い!ギュインギュインというよりは、押弦ギター的な正確なフレージングとスライド特有の自由奔放さが絶妙にミックスしています。演奏はまさにジャムバンドで、ある種グレイトフル・デッドに通じるトリップ感を感じますが、もう少しエネルギッシュかな。ラップもあるし、ゴスペルのルーツを感じるコーラスワークもあるし、飽きのこないライヴでした。好盤です。



Robert Randlph & The Family Band ; Colorblind ; WARNER BROS. 44393-2 (2006.11.26)

2006年リリース。セイクリッド・スティールの若き雄、ロバートの新譜は、前作に続き洪水のように音が溢れるハードな曲でスタート。大音量で聴いていたら眠くなりましたが、ギュルギュルと動くスライドの彼方から、スラッピン・ベースのビンビンいう金属音が聞こえてくるのが何とも刺激的です。前作は万華鏡のような印象を受けて、ちょっと入り込みにくかったんですが、こちらはずっと整理されて来たような気もします。あの「ジーザス・イズ・ジャスト・オールライト」にはクラプトンも参加。でもなかなかマッチしてますね。今デレク・トラックスとツアーしているクラプトン、こうしたスライドの音と彼のギターは馴染むような気がします。気に入ったのはバラードの「ストロンガー」とか隙間のある「ブレスド」「ラヴ・イズ・オンリー・ウェイ」など。「ブレスド」はアコースティックな楽器の音を生かしていて、ちょっとベン・ハーパーのサウンドを思い出しました。歌詞のテーマは確かにゴスペル、でもサウンドはロックとかファンクとかの要素がたっぷりで、その中で歌やコーラスが漆黒の輝きを放っています。意欲作ですね。



Robert Randlph & The Family Band ; We Walk The Road ; WARNER BROS 9362-49855-8 (2010. 9. 9)

2010年リリース。イントロダクションのように古いスピリチュアルを入れた後に、そのモダンなカヴァーをやるといったユニークなスタイルで、コンセプト・アルバムに仕立てています。「トラヴェリン・シューズ」の斬新なコーラスワークとか、ロックなボブ・ディランの「ショット・オヴ・ラヴ」とか、全方向を向いたようなスタイルで、さすがメジャーって感じですか。ブラインド・ウィリー・ジョンスンの「イフ・アイ・八ド・ウェイ」のちょっとカントリー・タッチを取り入れたアレンジなど、センスの良さを感じます。取り上げている楽曲はジョン・レノンからプリンスに及び、守備範囲も広いです。全体にきちんと練り上げた楽曲が多く、弾きまくりのランドルフを期待するとちょっとおとなしめですが、完成度は高いです。欲を言えば、セイクリッド・スティールらしい思いっ切り高揚感のあるゴスペルで締めくくってくれたら嬉しかったですが。




Robert Richard ; Banty Rooster Blues ; BARRELHOUSE/P-VINE PCD-5205 (2004. 9.27)

1977年リリースのアルバムをCDにしたものです。ロバート・リチャードはJVBからウォルター・ミッチェルとのツインハープでやった数曲がP-VINEから3年くらい前にリリースされたのを聴いて名前を覚えたんですが、ここではラビット・ジョンスンのギターをバックにし、時にはホルダーを使った吹き語りで、まるで場末のクラブでの生録りといった雰囲気です。ひなびた感じのヴォーカルに、結構表情豊かなハーモニカがなかなかマッチしていて、ジワッと来ます。また曲によってはフットストンプが聞こえ、さすがデトロイトですね。「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」からジミー・リードを拝借した曲まで、ある意味王道の選曲で、本当にこんな演奏が日々繰り広げられていたのではと想像してしまいました。



Robert Pete Williams ; Broken-Hearted Man ; SOUTHLAND SCD-4 (2009.10.14)

1971年録音。ロバートはルイジアナのバートンルージュで活動していましたが、拳銃で人を撃ち殺して刑務所に入れられているときにハリー・オスターによって「再発見」、1960年代のフォークブームの中でフレッド・マクドゥエルなどとともに各地のコンサートに出るようになりました。このアルバムはそんな中の1枚で、ニューオーリンズで録られました。スライドを交えた弾き語りスタイルは、割合フリーなギターと、喉から絞り上げるようなヴォーカルが印象的です。あまり形式にとらわれず、自由にギターをつま弾き歌っているように感じました。その非定型な感じがプリミティヴで、特に「シック&ロンサム」など、どんどん底無し沼に引きずり込まれそうな魅力を持っています。




Robert Walter ; There Does The Neighborhood ; PREMONITION 66917 90755 2 5 (2001.12. 6)

2001年リリース。ロバートは若手のキーボード奏者のようですが、サウンドは70年代のプレ・クロスオーヴァーとでも言うべきファンキーなものです。何しろメンバーが凄いです。ベースはチャック・レイニー、ギターはフィル・アップチャーチ、サックスはレッド・ホロウェイで、1曲ブルースを唸っています。しかし何より凄いのがドラムのハーヴィー・メイソン。このサウンドを一瞬聴いただけで昇天してしまいました。グルーヴィーでファットバック。全体にオールドファッションですが、良質なインスト・アルバムに出会いました。



Robert Walter ; Super Heavy Organ ; MAGNATUDE MA-2309-2 (2005. 9.12)

2005年リリース。ロバート・ウォルターのキーボードは自由奔放で、ファンキーでユニークなオルガンが全編を貫いています。しかしこのアルバムの聴き所は、何といってもふたりのドラマーの競演でしょう。スタントン・ムーアが大きめのフレーズで叩くとあたりにファンクネスが漂い、ジョン・ヴィダコヴィッチが叩くとスムースでジャジーと、こうまでサウンドが変わるのかという出来栄え。ギター抜きでサックスのソロが中心なのも、そうした雰囲気に拍車をかけています。ドラム好きの人に特におすすめするアルバムです。



Robert Walter ; Cure All ; PALMETTO PM 2132 (2008. 8. 6)

2008年リリース。これはある意味究極のオルガントリオです。普通オルガントリオは、ベースはおらずギターが入ることが多いんですが、ここではジェイムズ・シングルトンがベースで参加、そしてドラムはジョン・ヴィダコヴィッチですからそのグルーヴ感は最高です。ロバートはオルガンだけでなくピアノやクラヴィネットも演奏しています。低重心なタイトル曲を始め、オルガンものはどちらかというとファンクネスが強く、ピアノものは軽快な感じ。マイナーにアレンジした「リヴァー・オヴ・バビロン」なんて面白いですね。「ヒラリー・ストリート」など、ところどころロバートががっちりジャズをやったということの分かるフレーズが登場しますが、彼の顔はジャズとは違う方向を向いていると思います。ジョー・クラウンとはまた違ったセンスを感じます。




Robert Ward ; Fear No Evil ; BLACK TOP/P-VINE PCD-93049 (2007.12.17)

1991年リリース。ファルコンズのバックバンドとして知られるオハイオ・アンタッチャブルズ時代からのトレードマークのビヤビヤのトレモロがいっぱいに効いたギターサウンドがやっぱり強烈です。10年以上もブランクがあったとは思えないそのサウンドを支えるのは、BLACK TOPの録音ではお馴染みの面々。ベースはジョージ・ポーター・ジュニアでキーボードにはサミー・バーフェクトと来ていますから完璧な布陣でしょう。歌はちょっと力不足な感じもしますが、あの個性的なギターとなんだか妙にマッチしてるんです。「ユア・ラヴ・イズ・リアル」はギターも歌も張り切ってる感じで格好いいし。スロー・ブルースでも味わい深いギターに引き込まれます。後半はインストが多く、ギターの妙技がたっぷり味わえます。特に「ドライ・スペル」が面白い。でもこれってミーターズの「イーズ・バック」だよね。



Robert Ward ; New Role Soul ; DELMARK/P-VINE PCD-23700 (2007. 1.20)

2000年リリース。ロバート・ウォードはBLACK TOPにご機嫌なアルバムを3枚残していますが、その延長線上にある作品と言えます。例のビヤビヤトレモロギターは健在で、DELMARKらしく幾分おとなし目になったとは言え、ファンキーでソウルフルなヴォーカルもたっぷり聴くことができます。特にタイトル曲はオハイオ・アンタッチャブルズ時代を思わせるシカゴソウル仕立てで良い感じ。「ピース・オヴ・マインド」の勢いのいい演奏もなかなか格好いいです。一番印象に残ったのがケニー・バレルの「チトリン・コン・カーン」、オリジナルよりぐっとコテコテに仕上げてあって、よりソウルフードらしいイメージに溢れています。



Rockin' Dopsie & The Zydeco Twisters ; Louisiana Music ; ATLANTIC/MMG AMCY-343 (2003. 6.21)

1991年リリース。超メジャーATLANTICからの作品は、いきなり「アイム・イン・ザ・ムード」なんてブルースナンバーで、この他後に息子もドゥウェインも取り上げる「ザッツ・オールライト」、さらに「ザ・シングス・アイ・ユースト・ドゥ」や「キープ・ア・ノッキン」なんてニューオーリンズ色のある有名曲もやっていますが、そうした中に織り込まれるトゥーステップが実に気持ちいいです。全体にしっかり作り込まれた音になっているため、かえって品が良すぎるきらいもありますが、一般受けを狙うにはこうなるのかな。



Rockin' Dopsie Jr. & The Zydeco Twisters ; Everybody Scream ; AIM A6 CD (2006.11. 9)

1997年リリース。ラブボードをかき鳴らす息子が引き継いだザディコ・トゥイスターズですが、ご機嫌なロッキンナンバーを中心にフロアを踊らせるサウンドです。ザディコ版「ブギ・チレン」の「ブギ・チャイルド」、また「アイヴ・ガット・ア・ウーマン」「C.C.ライダー」「ホール・ロッタ・シェイキン」と勢いのあるロックンロール系のカヴァーや、ジョニー・オーティスの「ハンド・ジャイヴ」、そしてリトル・ウォルターの「マイ・ベイブ」となんでもザディコにぶち込んでしまうのがいかにもジュニアらしいですね。アコーディオンのアンソニー、ドラムのタイガーと家族でバックを固めているのでチームワークも抜群。時折聞こえてくるリル・バック・シネガルの職人芸ギターも聴き所です。でも一番面白かったのはラストナンバー。ドゥエインのアコーディオン・インストなんですが、若さが弾けるような演奏が格好いいです。ひょっとしたらこれがデビュー録音かもしれません。



Rockin' Dopsie, Jr. & The Zydeco Twisters ; ZYdeco Gone Wild ; MARDI GRASS MG1118 (2009. 6.24)

2009年リリース。ロッキン・ドゥプシー・ジュニアの新譜は副題にもあるように、毎度お馴染みのザディコ・パーティ・アルバムで、オリジナルの他ダズンズで知られた「フィーツ・ドント・フェイル・ミー・ナウ」、サム・クックの「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥ・ミー」、ヴァン・モリソンの「ブラウン・アイド・ガール」、ペパーミント・ハリスの「アイ・ガット・ローデド」、ウェット・ウィリーの「キープ・オン・スマイリン」など、およそザディコにして格好良さそうな曲を次から次へとやってるって感じです。それにとどまらず、JBの「セックス・マシーン」やらストーンズの「ミス・ユー」までオリジナルの味わいを残しながらやってしまう節操のなさ!恐れ入りました!




Rockin' Jake Band ; Let's Go Get 'Em ; RABADASH RAB-013 (2002. 4.17)

1996年の作品で、アンプリファイド・ハープによるリトル・ウォルターばりのシャッフル・インストから、クロマチックを使ったメロディアスなナンバーまで、多彩なハーモニカを聴かせます。中には「ワークソング」のフレーズが飛び出し、ポール・バターフィールドを思い浮かべました。ゲストも多彩で、特にニューオーリンズものではミーターズの「ソフィスティケィテッド・シシー」で当の本人のジョージ・ポーター、リー・ドーシーの「エヴリシング・アイ・ドゥ・ゴン・ビ・ファンキー」ではヴォーカルにトミー・リッジリーが起用されています。でもこれらの曲がこのバンドに合っているかというと、少々疑問。うねりがなかなか出ないんです。芸名のようにもっとロッキンした感じを軸にした方がいいと思いました。



Rockin' Jake ; Badmouth ; ZULUZU ZLZ3002 (2002. 5.18)

1999年リリースです。いきなり「田舎のJ.ガイルズ・バンド」と言った感じのややゆったりしたロッキン・ナンバーから始まったとき、バックをジョン・グロスやファンキー・ミーターズのブライアン・ストルツが固めていることに気がつきませんでした。全体にストレートな曲が多く、ロッキン・ジェイクの持ち味を出そうとプロデュースも担当しているグロスは考えたようで、すっきりした印象のアルバムになっています。ジェィクの多彩なハーモニカが変化をつけています。こうした中にひょいと「ドゥ・ワッチャ・ゴッタ・ドゥ」のようなもろセカンドライン・ファンクが混じっているあたりが面白い。「世界はゲットーだ」と続くあたりが一番面白かったかな。



Rockin' Jake ; Full-Time Work ; ZULUZU ZLZ-072 (2003. 1.21)

2002年リリース。まず冒頭のファンクナンバーが御機嫌です。ラップ調のヴォーカルにマイナーフレーズのハープが絡みますが、演奏はダグ・べローテのタイトなドラムにジョン・グロスのオルガン、さらにプロデュースも務めるファンキー・ミーターズのブライアン・ストルツのギターといったニューオーリンズの実力派が支えていますから気持ちいいのなんのって!続くタイトル曲は「ホット・ン・コールド」に通じるニューオーリンズ丸出しの軽めのフォンクナンバー。この他シャッフルありロックンロールありブルースありといつものロッキン・ジェイクのスタイルなんですが、音が整理されていてどの曲もとっても粒立ちがいいんです。「クリスマス・モーニング・ブルース」でのブライアンのギター、まるでロックンロールしてた頃のジョニー・ウインターみたい!ラストのハーモニカによる「アメイジング・グレイス」まで一気でした。去年聴いてたら確実にベスト10入りでした。



The Rockin' Jake Band ; 5PM Breakfast ; ZULUZU ZLZ1003 (2004. 6. 9)

2003年の大晦日から翌年の正月にかけて、フロリダのグリーン・ポイント・バーで行われたライヴからの録音です。「シェイク・ユア・ヒップス」「ワン・ウェイ・アウト」「ベイビー・ワット・ユー・ウォント・ミー・トゥ・ドゥ」から「オネスト・アイ・ドゥ」と、ブルースをベースにしたロッキンナンバーが中心で、アンプリファイドハープ吹きまくりの熱演です。中には「ザディコ・ブーガルー」やクリフトン・シェニエの「ホット・タマル・ベイビー」なんてルイジアナ風味もあったり、ウォーの「ザ・ワールド・イズ・ザ・ゲットー」など多彩な選曲をオリジナリティ溢れるアレンジで聴かせます。ドライヴ感も十分ですが、続けて聴いているとちょっと疲れます。音質など少し変化球が欲しかったかな。



Rod Bernard ; Swamp Rock 'N' Roller ; ACE CDCHD 488 (2009. 5.23)

1968年から76年の録音に未発表を加えたコンピです。初期のヒット「パードン・ミスター・ゴードン」に始まって、チャック・ベリーの「メンフィス」、ヒューイ・スミスを思わせる「フーズ・ゴナ・ロック・マイ・ベイビー」、ブルースっぽい「ボスマンズ・サン」、ルイジアナならではの「フェイ・ドゥ・ドゥ」、「ディギ・リギ・ロー」、「ビッグ・マモー」など、軽快なリズムによくマッチした、ハイトーンの明るい声で歌います。未発表はブルースの有名曲から「メイベリーン」、さらには「ジャンバラヤ」まで。1976年の「シェイク・ラトル&ロール」でもそのスタイルは変わることがなく、むしろアコーディオンが入ってよりケイジャン的な雰囲気になってます。こりゃ気持ちがいいですね。




Rod Piazza & The Mighty Flyers ; Keepin' It Real ; BLIND PIG BPCD 5088 (2004. 5.30)

2004年リリース。これが現在進行形のカリフォルニアのブルースだと言わんばかりの、深く歪ませたハーモニカを、テキサス経由の、これまたシングルコイルをアンプでファットに歪ませたサザンビート系ギターが支えると言ったお得意のスタイルです。全体に伸びやかで大きなフレーズのロッドのハープですが、ジュニア・ウェルズ版の「グッド・モーニング・リトル・スクール・ガール」や、ロックサークルの影響を感じさせる「ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー」などは、いい意味で分かりやすくキャッチーな演奏。「チクタク」あたりはファビュラス・サンダーバーズに通じるロッキンサウンドで御機嫌です。このスタイル、ひとつの完成形なのかもしれません。



Rod Piazza & The Mighty Flyers Blues Quartet ; Thrill Ville ; DELTA GROOVE DGPCD118 (2007. 9.18)

2007年リリース。ロッド2年ぶりの新作は、ベーシストが抜け、代わりにカミサンのピアノとひょっとしたらフッとペダルが担当するようになったため、少しサウンドが軽くなりました。でも元々ロッドの歌が軽めなので、余り違和感はありません。軽妙なギターに絡みつくアンプリファイド・ハープは名人芸と言ってもいい格好良さ。「フードゥ・マン・ブルース」や「サッド・アワーズ」といったシカゴ・ブルースの古典たちも、重心の高い軽やかなタッチでこなしていて、これがかえって新鮮だったりします。ドロッとしたブルースを期待すると肩透かしにあいますけど、ステレオタイプでない解釈は結構気に入りました。



Rod Piazza & The Mighty Flyers ; Blues In The Night ; HEP CAT HEP 2744-2 (2010. 3. 18 )

2008年リリース。西海岸で精力的に活動するハーピストの代表はやはりロッドでしょう。ワンパターンに陥らないよういろいろなタイプのブルースを取り混ぜていますが、ピアノの奥方ハニー・ピアッザを初めとした実力派のミュージシャンが生み出すバンドサウンドも特筆ものです。サウンドがしっかりしているので、ロッドのちょっと線の細い歌でも味わいを感じることができるように思いました。中に強烈な1曲があるといいんですけどね。一番気に入った曲はサード・ポジションで複音を吹く「ロー・ダウン・ドッグ」かな。




Rod Piazza & The Mighty Flyers Blues Quartet ; Soul Monster ; DELTA GROOVE DGPCD134 (2010. 2.24)

2009年リリース。ディープな音色のサード・ポジション・ハーモニカで始まるタイトル曲から、ロッドらしさが押し出されています。「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」「ユー・ベター・ワッチ・ユアセルフ」といったハープ定番曲だけでなく、リトル・ウィリー・ジョンの「トーク・トゥ・ミー」やジミー・リギンズのジャンプ・ナンバーを取り上げ、変化をつけています。その中にオリジナルが混じってるって感じです。ハーモニカの深みある音はさすがのベテランですが、軽めでやや情けないヴォーカルもけっこう味があります。




Rod Stewart ; Every Picture Tells A Story ; MERCURY/PORIGRAM 822 385-2 M-1 (2005.11.10)

1971年のアルバムです。アコースティック・ギターにマンドリンなど、アーシーな雰囲気のバックにロッドのしゃがれ声がぴったりマッチしています。大ヒット「マギー・メイ」はもちろん、スケールの大きなタイトル曲など、じっくり取り組んだ曲が多い割に、方がこらないのはこのサウンドのせいでしょう。ワンコードでスライドギターが印象的な「アメイジング・グレイス」は、やっぱりこの曲のルーツがスコットランドとかアイルランドの方にあるんではと勝手な想像をさせてくれます。このアルバムはグッピーで酔っぱらいながらさんざん聴いたわけですけど、改めてロッドの歌唱力の素晴らしさを感じました。たまに聴くといいもんですわ。



Rod Stewart ; Atlantic Crossing ; WARNER BROS 9 47729-2 (2007. 4.27)

1975年リリース。非常にインパクトのあるタイトルとジャケットのアルバムだったんですけど、ちゃんと聴いたのは初めてです。ちょっと「イッツ・ノット・ザ・スポットライト」という曲に興味があったから買ってみたんですが、ちょっとアイリッシュ・トラッドみたいなサウンドに仕立ててあるこのバラード、確かにいい曲です。でもこのアルバムからの大ヒット「セイリング」と比べちゃうとやっぱり僕は後者ですね。全体にミディアムのロックンロールがロッドらしいんですが、この後のアルバムでジム・クリーガンが入ってからの方がサウンド的には好きです。



Rod Stewart ; Foot Loose & Fancy Free ; WARNER BROS. 9 47731-2 (2005.12.18)

1977年リリース。これまた中古盤です。高校時代に友達から借りて聴いたアルバムで、結構気に入っていたので、今回買ってしまいました。何といっても「ホット・レッグス」の格好良さが際立ちますね。ジム・クリーガンのタイトなギターと、カーマイン・アピスのラウドなどラムの組み合わせに、円熟したロッドの歌が乗れば、これは1970年代最高のロックンロールの1曲といえます。一方でアコースティックなバラードの名作「ユーア・イン・マイ・ハート」では、しゃがれ声の美しさを感じます。シュープリームズの「ユー・キープ・ミー・ハンギング・オン」はきっとカーマインの趣味なんでしょう、ヴァニラ・ファッジ以上の大仰なアレンジが施されていますが、ロッドなら歌いこなせちゃうって感じ。改めて聴いて、良くできたアルバムだと想います。



 Roderick Paulin ; R P M ; LOUISIANA RED HOT LRHR 1117 (2001. 4.15)

これも1999年ニューオーリンズ録音。いやぁ、気持ちいいですね。ギャラクティックに通じるタイトなバックに支えられて、ブライトなロデリックのサックスが気持ちよくうなります。ファンク系の曲では思いっ切りホンクするかと思えば、「マーシー・マーシー・マーシー」や「ワッツ・ゴーイン・オン」ではジャズ・フレイヴァーを感じさせる繊細なプレイを聴かせます。ちょっと80年代初頭のフュージョンにイメージが近いかな?でもときおりいかにもニューオーリンズってフレーズが出たりして、一筋縄ではいきません。ラストの「ジョージア・オン・マイ・マインド」など、キング・カーティスの「ソウル・セレナーデ」に通じるムードでとにかく気持ちがいいです。



Rodney Jones ; Soul Manifesto Live! ; SAVANT SCD 2054

2003年5月末、ニューヨークでのライヴです。ロドニーは正統派ともいうべきジャズ・ギタリストで、ファンキーなリズム隊をバックに、ウィル・ボウルウェアのB-3が絡むと往年のソウル・ジャズの熱さがほどばしって来る感じです。でもリズムははるかにモダンで、ラップ風のヴォーカルが絡む曲まであります。「サマータイム」の他「ハートに火をつけて」「黒いオルフェのテーマ」とカヴァ曲の選曲が渋くて、しかもなかなか面白いです。「クール・ストラッティン」を思い出させるリフが印象的なラストナンバーまで、フュージョン系が苦手な僕でもけっこうすらっと聴き通せました。



Roiki ; Delta Boy ; SOUTHSIDE SSBC-008
(2008.12. 7)

2001年録音。最近ライヴでご一緒するロイキさんのデビュー盤です。ライヴでもお馴染みのレパートリーが8曲詰まっています。メタルボディのリゾネイタを独特の味のあるスライドプレイでかき鳴らしながら、ちょっとかん高いタフな声でブルースを唸ります。英語で歌う歌も表情があり、誰かの物真似では決してないロイキさんならではのサウンドになっているのが流石ですね。ウィリー・ウェインの「ジャンコ・パートナー」を下敷きに全然違う歌詞で日本語化した「ジュンコの亭主」、エッチなエッチな「ゼイ・アー・レッド・ホット」、そしてアカペラで歌う「ホワット・アイ・ウォント・ドゥ・サムシング・フォー・ユー」、この後半がすごく好きです。




Roland Kirk ; Volunteered Slavery ; ATLANTIC/COLLECTABLES COL-CD-6346 (2004. 2.25)

1968年ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルでのライヴ盤です。ざわざわした、アフリカのジャングルの中を想像させるような暑苦しさを感じるタイトル曲から、一瞬何故だかT-レックスを想像してしまった「スピリット・アップ・アバヴ」の大コーラスと、プリミティヴな音楽のエネルギーをたっぷり詰め込んだサウンドです。スティーヴィー・ワンダーの「マイ・シェリー・アモール」もオリジナルより熱を帯び、バカラックの「小さな願い」もモワッとした雰囲気。とにかく熱帯夜のような汗ばむアルバムです。コルトレーンへのトリビュート曲も、何だか粘っこく、ちっともクールじゃないんですが、それが癖になりそうです。偶然聴いたようなもんですが、面白いなぁ。



Roland Stone ; Just A Moment - Something Special From... ; ACE/WESTSIDE WESM 577 (2000. 7.11)

1961年録音を中心とした、ニューオーリンズのポップな演奏集。ローランド・ストーンはマック・ルベナックのバンドのヴォーカルを務めていた人で、若々しい声と軽妙な唄い口が魅力です。バックは十分跳ねているんですが、ヴォーカルは甘口でやや「お子様向け」なものを感じました。「ジャンコ・パートナー」も彼にかかると軽快なポップになります。でもご本人、ヤクでムショ行きしたんだそうです。


Rollee McGill ; Rhythm' Rockin' Blues ; BEAR FAMILY BCD 15926 AH (2007. 5. 8)

1954〜65年録音で、当時未発表だったものもたくさん入れてあります。ロリーは東海岸で活躍したヴォーカル兼テナーサックス奏者で、スヌークス・イーグリンもカヴァーしている冒頭の「ジーズ・ゴーズ・ザット・トレイン」が唯一のヒットとなる、決して有名でない人なんですが、鈴木啓志さんが「初めてのブルース」なんて本で紹介しちゃってるんで、何とか聴こうと入手しました。ブルースとしては軽快でモダンな感じ、MERCURYに移籍した1955年には早くもブルース色が薄まり、R&Bの王道を行くようなサウンドになっていきます。もちろんスローに自身のサックスを絡ませたものはブルージーなんですが、いわゆる重厚な感じではないですね。したがってリズムナンバーの方がいい感じで、「ピープル・アー・トーキング」あたりは格好いいです。1958年のニューヨーク録音、ギターはジミー・スプルーイルみたいですね。これ以降は実にニューヨークらしいギタリストがついていて、ヴォーカルにも張りが増し、結構聴きものになってます。これで売れないっていうんですから恐ろしい国です。



Roller Coaster feat. Mituyoshi Azuma ; Boogie Discounter ; VIVID SOUND VSCD-3110 (2008. 6.20)

1990年録音。ローラー・コースターのアルバムですが、実際は吾妻光良のブルース・アルバムと言っていいでしょう。妹尾隆一郎、小出斉ら腕達者なメンバーをバックに、エルモア・ジェイムズの「ノッキン・アット・ユア・ドア」からルーファス・トーマスの「アイル・ビ・ア・グッド・ボーイ」まで、まあ実に渋い選曲。もちろんお得意のゲイトマウス・ブラウンは「ブギー・ランブラー」を収録。テキサス・スタイルの切れ味鋭いギターと、スモーキーなヴォーカルが良い味を出しています。でも本当に楽しそうなのはやっぱりバッパーズだと思います。よくゲストではやっていたようですけれど、このバンドのパーマネントに吾妻さんがならなかった理由も垣間見れるような気がしました。



The Rolling Stones ; A Bigger Bang ; VIRGIN 0946 3 30067 2 0 (2005.10.19)

2005年リリース。ようやくCCCDでないアメリカ盤が店頭に出てたんで買ってきました。前半の数曲の感触、なんだか昔に戻ったような、懐かしい、まさにストーンズそのものって音がぐっと来ました。キースも歌ってますし、チャーリーもひょっとしたら歌ってるんでしょうか?ちょっと分かりませんがミック以外の声が入ってます。こちらは枯れた感じです。ところがミックは全然変わらないんですよね。あの歌い回し、声、ストーンズなんですよ、これが。後半ちょっと派手目のサウンドのものもありましたが、ロン・ウッドとキースのギター(どっちがボトルネックでしょ?)に、ミックのハープがが見事に絡むブルース「バック・オヴ・マイ・ハンド」などを聴くと、本質的にこの人達はデビュー当時からいい意味で変わってないんだなって思いました。これは気に入りましたね。



Romane ; Swing For Ninine ; IRIS/OMAGATOKI OMCX-1073 (2004.11.15)

1992年リリース。マヌーシュ・ジャズというジャンゴ・ラインハルトの流れを汲むロマの音楽の、若手ミュージシャンのデビュー作です。巧みな指さばきによる、広がりのあるギターに、落ち着いた音のクラリネットなどが絡み合う、いかにもヨーロッパな響きを持つ音楽です。ギターのサウンドは一瞬スパニッシュに通じるように聞こえたりしますし、シャンソンを思わせるメロディラインも出てきます。何本かのギターが絡み合う曲もあり、思ったよりずっと多彩な音で面白かったです。ただ、全体としてちょっと優等生に感じました。破綻がないんです。その分スリルには欠けるかな。



Ron Davies ; Where Does The Time Go ; MEESHDES MUSIC LC-RD-1 (2009. 9.13)

2003年リリース。いかにもアメリカなカントリーとスワンピーなテイストのシンガー・ソングライターで、ちょっとボブ・ディランを思わせるような、でももう少し暴れ方の少ないヴォーカルがまず耳に残ります。コ−ラスによるリフレインが印象的な「ホエア・ダズ・ザ・タイム・ゴー」、マンドリンやスライドギターをバックに女性とデュエットする「ビヨンド・ザ・レルム」と最初の2曲で結構ぐっと来ちゃいました。ファンキーな曲あり、穏やかでゆったりした曲ありで、こういうのわりと好きなんですよ。歌詞が分かるともっといいんですけどね。




Ron Levy's Wild Kingdom ; Zim Zam Zoom ; BULLSEYE BLUES CD BB 9570 (2004. 8.26)

1996年リリース。B-3といえばやはりソウル・ジャズを思い出します。ロン・リーヴィもそうした香りが強い人ですが、B.B.キングなどブルースのバックを付けてきただけあって、ぐっとブルージー。さらにコンガやエレキベースが入っているため、オルガントリオに比べぐっと低重心な上にリズムもメリハリがあって、よりファンキーな感じです。このアルバムでもそうした持ち味がよく出ていて、スローブルースの解釈などはジャズ畑の人とは一線を画します。要するに泥臭くて「芸術」の香りがより希薄なのが僕には嬉しいです。



Ron Levy ; Organ Colossus - The Very Best Of Ron Levy's Wild Kingdom : LEVTRON/P-VINE PCD-23507 (2004. 5. 9)

2001年〜2003年、LEVTRONからリリースされた3枚のアルバムからのベストです。ロン・リーヴィーと言えば、僕にとってはかつてB.B.キングのバンドに在籍し、スヌークスなどのバックで渋いキーボードを担当し、フルソンの晩年のアルバムのプロデュースを手がける人といったイメージでしたが、このアルバムを聴くと、まるで60年代のソウル・ジャズのコテコテぶりを、よりシンプルに分厚く仕上げたサウンドって感じで、100マイルのストレートがど真ん中にビシッと決まったようなインパクトでした。ブルース畑での仕事が長かった人ですから、ジャズ系のオルガンより小手先に走らず肉体的なサウンド、さらにジョン・トゥラマ、メルヴィン・スパークス、ウァレン・グラントといったギタリストの粘り気のあるソロがイカしています。「Finding My Way」ではサックスにロン自身のヴァイブが入ったりと、どのアルバムもカラーに違いがあって面白そうですが、やっぱり2001年のライヴからのセレクトが熱くて一番気に入りました。



Ronnie Baker Brooks ; Take Me Witcha ; WATCHDOG 337-02 (2002. 6.20)

2001年リリースの新譜です。ロニー・ベイカーはロニー(Lonnie)・ブルックス(ルイジアナのギター・ジュニア)の息子だそうですが、ジャケットに写るギターに写真が貼ってある通り、大のジミ・ヘンドリックス・フリークのようで、冒頭のギターサウンドから思いっ切りディストーションをかけて、ちょっとしたフレーズまでジミの影響がにじみ出ています。しかしブルースの伝統も一方には感じられ、特にヴォーカルからはフレディ・キング、ブルース曲のギターからはオーティス・ラッシュやアルバート・キングのリックも登場しています。とにかくこのアルバムを聴くと、少なくともハートはブルースにあることは間違いないんですが、様式として、ブルース、ロック、ファンクといった色分けにいかほどの意味があるのか、ということを思いっ切り感じさせられました。むしろロックギター(例えば「Presence」あたりのツェッペリンとか)の好きな人にこそ聴いてもらいたいですね。キンゼイ・レポートなどから綿々と続く、まさにブルース現在形です。



Ronnie Barron ; The Smile Of Life ; VIVID SOUND CSCD 3341 (2007. 8.31)

1978年リリース。ドクター・ジョンと共に活動していたロニー・バロンを、細野晴臣がプロデュース、はっぴぃえんどの面々などと録音したアルバムと聞いていて、ようやく手にしたんですが、聴いてみてびっくり!クレジットを見ると、ワーデル・ケゼルクがプロデュースして、ミーターズがバックをつけた音源が混在してるじゃないですか。しかも「プレリュード」〜「ムーン・シャイン・ブライト」のメドレー、日米別録音ときています。「ホーム・トゥ・ロージー」の乗りはまごうことなきミーターズですが、全体にニューオーリンズ・セッションはスローが多いです。これに対し「悪魔の戯れ」はいかにも細野サウンドで、思いっ切りチャンキーです。でも時代が時代で、ロニーのファルセット気味の歌がいくら似合うからといっても、「シー・ダズ・イット・グッド」のようなポップ・ディスコは苦手です。この辺が半端な印象を与えるように思うんですが。



Ronnie Earl And Friends ; Ronnie Earl And Friends ; TELARC CD-83537 (2002. 1. 6)

2001年リリースの新譜です。まあ凄いメンバーです。ジェームズ・コットン(ハープのみ)、ルーサー・ジョンソン、キム・ウィルソン、そしてアーマ・トーマスをフロントにそろえ、ドラムにはなんとレヴォン・ヘルム!ごめんなさい。このクレジットで売ろうとしたんじゃないかって勘ぐっちゃいました。ロニーはいたって控えめで、フロントを立てようっていう心遣いが感じられますが、いまひとつインパクトがないなぁ。その中ではキムの瑞々しい歌声がけっこう気に入りました。アーマのニューオーリンズ風味は今ひとつかな?でも「オール・ユア・ラヴ」(メインはルーサー・ジョンソン)で始めて、「ルッキン・グッド」で締めるあたり、ロニーはかなりのマジック・サム・フリークと見ました。



Ronnie Earl & The Broadcasters ; Hope Radio ; STONY PLAIN SPCD 1324 (2007.12. 2)

2007年4月のライヴです。インスト・ナンバー、ギターの弾き倒しでこれだけ聞かせることのできるプレイヤーは、ブルース・ギタリスト多くても余りいないのではないでしょうか。マジック・サムのスタイルを借りた「ブルース・フォー・ザ・ウェスト・サイド」ではオーティス・ラッシュのフレーズも顔を出しますし、その名もズバリの「ブルース・フォー・オーティス・ラッシュ」なんて強烈なスローもあります。また「カトリーナ・ブルース」ではロックウッド譲りのアコースティック・ギターの弾き語りも披露。歌がないのにブルースをたっぷり感じさせます。特にスロー・ブルースでの豊かな表現力は、それこそエリック・クラプトンが好きだなんて人にこそ是非聴いてもらいたいものです。頭と終わりをゴスペル・テイストの曲で固めているのもロニーの魅力を際立たせることになったと思います。



Roosevelt Sykes ; Boot That Thing 1929-1941 ; ACROBAT ADDCD3019 (2009. 2.18)

2枚組で、2ヴァージョン収められている代表曲の「44ブルース」からこれまた2ヴァージョン入っている「ザ・ナイト・タイム・イズ・ザ・ライト・タイム」、「リトル&ロウ」、ジャイヴィな「ダーティ・マザー・フォー・ユー」、テーマ曲と言っても良い「ザ・ハニー・ドリッパー」など、ゆったりしたブルースからブギウギまで、達者なピアノとタフでちょっと投げやりな感じのブルース・ヴォーカルといったサイクスの魅力が満載です。こうして戦前ものを通して聴いていくと、サイクスの演奏力の高さはもちろんですが、ソングライターとしての才能が素晴らしいことをいやというほど感じました。毎夜のようにクラブでピアノの前に座って、大声でブルースを産み出していたのかななんて想像がたくましくなります。




Roosevelt Sykes ; Rainning In My Heart ; UNITED/DELMARK DE-642 (2000.11.25)

1951〜53年録音。かつてP-VINEからLPで出ていたものに数曲加えてCD化されたものです。この時代のサイクスは、シティ風というより、ジャンプ寄りな感じです。シカゴで活躍した人ですが、この洒落た感覚は、ともすると中途半端になってしまうのでしょうか。特に戦後作品はあまり話題になりませんが、僕は好きです。フィドルの登場する曲、セレステを弾く曲もあり、ユニーク!でもこの人、本当に顔は吉田茂にそっくりですね。



Roosevelt Sykes ; Sings The Blues ; CROWN/ACE CDCHM 1132 (2006.12. 7)

1962年CROWNに吹き込んだアルバムのストレート・リイシューです。バックをリー・ジャクソンのギターとウィリーディクソンのベースが固めていますから悪いわけがありません。ちょっとホンキートンクなピアノをゆったりと操り、根は太い声を高く張り上げて歌うサイクスならではのスタイルは、ここでも全開です。彼のブルースはどこかポップな要素があり、何か聴いていて楽しいんですよね。また都会的な洒落た雰囲気もあり、サックスの入った「ハニー・チャイルド」などR&B的な要素も加わって心地良いです。こういうのって、パブ・ミュージックに近い線じゃないかな。当時のシカゴのバーにふらりと入り込んだ気分になれます。行ったことないけどね。



Roosevelt Sykes ; Gold Mine ; DELMARK DD-616 (2005. 5. 1)

1966年録音の弾き語り集です。中古で購入。味わいのあるヴォーカルとゆったりとしたピアノで、落ち着いた気分になります。高音域に張り上げる声がミシシッピのばれるハウスあたりで鍛えた彼のキャリアを感じさせます。また「ブート・ザット・シング」あたりの軽妙さが彼の持ち味のひとつで、こうした幅広さが長年第一線で活躍できた理由のように思いました。お得意の「44ブルース」も、リトル・ブラザー・モンゴメリーと共通の根っこを持ちながら、より洗練されたセンスを感じさせます。こんなのをBGMにするのもおつなもんですね。



Root Doctor ; Change our Ways ; BIG O 2407 (2008. 7.22)

2007年リリース。オルガンが重要な役割を担っている、タイトで手堅いバンドをバックに、オリジナルにカヴァーを交えた多彩な選曲で飽きさせません。「キープ・アワ・ビジネス・オフ・ザ・ストリーツ」はロバート・クレイを思わせるサウンド。「ビッグ・ブルー・キャデラック」の、ちょっとロックっぽい演奏もいい感じ。ただ、ミーターズの「ピープル・セイ」になると、さすがに本家のうねりには及びませんが。ラストの「アイ・ウィッシュ・イット・ウッド・レイン」のピアノ弾き語り、胸にしみました。




Rory Block ; I'm In Love ; BLUE GOOSE/AIR MAIL AIRAC-1345 (2009.10.23)

1976年リリース。ロリーのデビュー作といわれるアルバムです。美形のブルース・ウーマンとして現在も活動を続けるロリーですが、このころはシンガー・ソングライター的な音楽を模索していたようで、ポップなタイトル曲を始め、前半はちょっとニューソウルやローラ・ニーロあたりに通じる曲をやっています。でも後半の「ノーバディ・ノウズ・ユー・ホエン・ユーア・ダウン・アンド・アウト」当たりから本領を発揮し始め、ピアノを交えた酒悦なブルースに美しいギターの音色が魅力的な「パウダー・ラグ」と、彼女が愛して止まない戦前ブルースのテイストたっぷりの曲を入れています。結局こっちの路線に行くわけですが、正解だったと思います。




Rory Block ; I'm Every Woman ; ROUNDER 11661-3174-2 (2002. 2.16)

2002年リリースのバリバリの新譜。ロリーって言うとスライドを弾くブルース・レディというイメージがあり、冒頭のプレイはまさにその通りだったんですが、中身はまるで違いました。ゴスペル、ソウルを中心にして、ちょっとカントリーで味付けを整えたような曲が中心で、特にゴスペルはア・カペラ・コーラスに挑戦しています。ジャケットの端整な美貌のイメージからは想像しにくいソウルフルなヴォーカルで、歌いたいという衝動がビンビン伝わってきてとっても心地好いです。特に「アイ・フィール・ライク・ブレイキング・アップ・サムバディズ・ホーム」の熱さはぞくぞくするくらいです。ラストに冒頭のスライドプレイのパート2があり、リピートさせると完全に無限ループ状態。これは好盤です。



Rory Block ; Last Fair Deal ; TELARC CD-83593 (2003.10.28)

2003年リリース。今作は自身のマーチンだけをバックにしたアルバムで、タイトルから想像できるように、ロバート・ジョンソンの曲を2曲やるなど、スライドを絡めたブルース中心の作品です。シャランとしたアコギのサウンドに、半端な優しさを排したロリーのヴォーカルがのってくると、結構ストイックなものも感じます。スライドインスト盤の「アメイジング・グレイス」や、ア・カペラの多重録音コーラスの「ハレルー・ハレルー」などゴスペルナンバーも取り上げていますが、前作よりあえて幅を狭めて狙いを絞った作品と言えます。僕は前作の方がしっくり来ましたけど。



Rory Block ; From The Dust ; TELARC CD-83614 (2005.10.12)

2005年リリース。妖艶なジャケットで男心をくすぐるロリー姐の新作です。いつものようにマーチンのギターをスライドでかき鳴らし、結構ドスの効いた声でブルースを唸ってるんですが、今回はけっこう古い曲もやってるんですよね。ロバート・ジョンソンの「ストーンズ・イン・マイ・パスウェイ」やサン・ハウスの「ドライ・スペル・ブルース」とデルタブルースを取り上げているんですが、チャーリー・パットンの「はイ・ウォーター・エヴリホウェア」には余りのタイミングにちょっとびっくり。まさか予知能力があるわけじゃないですよね。



Rory Block ; The Lady And Mr. Johnson ; RYKODISC RCD 10872 (2006. 9.30)

2006年リリース。ひょっとしたらクラプトンの向こうを張ったのかもしれません。ロリー姉さんがロバート・ジョンソン曲集を出しました。いきなりゴスペルタッチのイントロで始まる「クロスロード・ブルース」にはびっくりしましたけど、演奏はオリジナルにかなり忠実。「テラプレイン・ブルース」「カモン・イン・マイ・キッチン」となかなか色気のある選曲もやるなぁて感じです。ギターは原曲の味わいをしっかり残しながら、時折ロリーらしいモダンな技もちりばめ、そのスライドさばきはさすがと言うしかありません。一方歌はやっぱりあまりにまっすぐかな。僕はロバートの魅力は何より歌にあると思っているんで、ここはクラプトンも同様ですが、ハードルが高いのかな。ラストの「カインド・ハーテド・ウーマン」を「...マン」に置き換えるのは、アメリカの女性歌手がよくやるんですが、いかがなもんでしょうか。ニュアンスが変わっちゃうと思うんですけどね。



Rory Block ; Blues Walkin' Like A Man ; STONY PLAIN SPCD1329 (2008.10.24)

2008年リリース。ロリー姐さん、前回のロバート・ジョンソンに続いて今度はサン・ハウスのトリビュート・アルバムを作っちゃいました。でも前作がどこかエリック・クラプトンに対するライヴァル意識をむき出しにしたようなところがあったのに対し、今回は本当にサン・ハウスへの敬愛を感じます。「マイ・ブラック・ママ」「プリーチン・ブルース」「ドライ・スペル・ブルース」「デス・レター」「ロウ・ダウン・ダーティ・ドッグ・ブルース」と、ギターをボンボン叩くようなサンの奏法を意識し、かなり強いタッチでギターを弾き、声を絞り出しています。でも彼女の声とマーティンのギターでサンのサウンドを出そうっていうのはやっぱりかなり無理もあるかな。気持ちは十分伝わりましたけどね。




Roscoe Chenier ; Roscoe Style ; BLACK & TAN CD BT001 (2001.12.31)

1997年オランダ録音。いかにもルイジアナ丸出しのロスコー、声はちょっとハウリン・ウルフを思わせる低めのダミ声で、スリム・ハーポの「レイニ・イン・マイ・ハート」を唸ったり、ジュニア・パーカーの「ネクスト・タイム・ユー・シー・ミー」、さらにはフルソンの「ブラック・ナイツ」(これは嬉しかったです。でもバックインレイの表記が"Black Night"ではチャールズ・ブラウンかと思っちゃいますよね)などの曲をロスコー節にしてやっちゃうのがいいです。オランダ人と思われるバックはそつはないんですが全体に演奏が軽めで、うねりがありません。でも弾き語りの曲はさすがでした。



Roscoe Chenier ; Waiting For My Tommorrow ; BLACK & TAN B&T027 (2006. 4.12)

2006年リリース。全体にアコースティックなゆったりとした演奏に乗って、ルイジアナ風味たっぷりのロスコーの歌が響きます。スライドやマンドリン、アコーディオンを交えた隙間のあるサウンドはなかなかいい感じで雰囲気を出していて、冒頭の「シェイク・ア・ハンド」から「エイント・ガット・ノー・ホーム」あたりは緩さが気持ちいいですね。アコースティックなブルースもなかなかで、マンドリンの利いたタイトル曲やザディコ仕立ての「ルースター・ブルース」も面白いです。でももっといい感じだったのはバラードナンバーで、アカペラの「永遠の絆」から「ユー・ドント・ミス・ユア・ウォーター」に行くあたり、この人の人間味溢れる暖かい歌の良さが上手く捉えられていると思います。



Roscoe Robinson ; Why Must It End ; SOULSCAPE SSCD 7015 (2009. 3.19)

1965〜69年の録音集です。伸びやかなテナーを生かした歌声はすばらしいものがあり、ヒットしたジャンプ・ナンバーの「ザッツ・イナフ」やぐっとファンキーなヒット曲「オー・ウィー・ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」を収録。「フォックス・ハンティング・オン・ア・ウィークエンド」なんて意味深な曲はどうやら「ストーミー・マンディ」をちょっとモチーフに使ってるみたいです。新しい録音になるにつれてファンキーな曲が増えていきますが、根っこのゴスペル・テイストがずっと生き続けているのが彼の魅力だと思います。「ホワイ・マスト・イット・エンド」なんてバラッドはぐっと来ますね。




Roscoe Robinson ; Hevenly Soul Music - The JEWEL/PAULA Recordings ; P-VINE PCD-24176 (2006. 9. 9)

多分1965〜73年の録音です。ゴスペル・カルテット出身のロスコーは、伸びやかで力強いテナーヴォイスが何と言っても魅力です。そしてふっと力を抜いたようなときに見せる優しさに、思わずぐっと来てしまいます。キャッシュ・マッコールがプロデュースしたという「レット・ミー・ビ・マイセルフ」の、MOTOWNをさらにモダンにしたような響きと、「イエスタディズ・ゴーン」の柔らかくポップさも感じさせるバラードあたりが特に気に入りました。一方「ウィア・ルージング・イット・ベイビー」はなかなかのB級ファンクで面白いです。後半はゴスペルで、やはり伸びやかな声がよく似合います。そして気の入り方が違うようなシャウトを聴くと、サム・クックのハーレム・スクエア・クラブのライヴの謎が解けたような気がしました。



Roscoe Shelton ; Roscoe Shelton Sings ; EXCELLO/P-VINE PCD-2781 (2005. 2.23)

1958〜60年録音。ロスコー・シェルトンと言えばラリー・バードソングと並ぶナッシュヴィルR&Bの代表歌手で、その瑞々しいハイトーンヴォイスと、ゴスペルフィーリング溢れるブルースナンバーは、同じテネシーでもメンフィスのサウンドよりどこか明るさと柔らかさがあり、結構癖になります。中古で買ったこのアルバムは彼のEXCELLO時代の録音を網羅したもので、伸びやかに歌う「プリーディン・フォー・ラヴ」や、ぐっとゴスペル臭が漂う「イッツ・オール・マイ・フォルト」など、彼の魅力が全開です。ボビー・ブランドにちょっと似たところもありますが、もっと爽快で、その分ディープに聞こえないかもしれませんが、よく聴けばその深さが染みてきます。



Rosie Ledet ; Sweet Brown Sugar ; MAISON DE SOUL MDS-1052 (2002.12.24)

1994年、ロージー23才の時の多分デビューCD(実際はこの前にカセットがひとつ出てます)です。タイトルといい、ジャケット写真といい、いやいやそそられますねぇ。中身は若々しくチャーミングな声で、しかしほぼ完成されたロージー節を聴かせます。サウンド的にはリズム処理など新しい感じがしっかり出ていますが、現在よりはオーソドックスな感じでしょうか。初々しさが良い方に出ていて、気持ちのよいアルバムです。「モ・ビア」なんて僕のテーマソングにしようかしら。



Rosie Ledet ; Zesty zydeco ; MAISON DE SOUL MDS-1056 (2002.10.12)

1995年リリースです。まずロージーの声が若い!最近のようなある意味ドスの効いた色気を感じる声とはやや異なり、少し軽めですが、若々しさを感じました。演奏もそれにあった感じで、かなりライトな感覚。でもマイナーっぽいちょっと憂いを帯びた歌い回しとかすでにロージー節が完成しているのが分かります。ギターなどロックの色合いもありますが、カントリーフレイヴァを感じました。腰にはきませんが、割合さらっとしていて聴きやすい感じです。



Rosie Ledet ; Zydeco Sensation ; MAISON DE SOUL MDS 1064 (2002.10. 7)

1997年リリース。彼女のMAISON DE SOUL3枚目のアルバムだと思います。ちょっとマイナーで憂いのあるメロディラインと、ドライヴ感のある演奏といったロージーのスタイルは完全に出来上がっています。やや同系統の曲が多いんですが、その後のアルバムを聴いた感じでも、これが彼女のトレードマークなんでしょうね。麻薬のように引き込まれます。ただ録音のせいもあるのか、ヴォーカルの声質がいまひとつな感じです。もっと艶やかな声が魅力なんですが、ちょっとせっぱ詰まったように聞こえました。まあ新作から遡って聴いていくとそういう風に聞こえることはままありますね。これがリリースされた頃は、それこそタイトル通りセンセーショナルだったんでしょうね。



Rosie Ledet ; I'm A Woman ; MAISON DE SOUL MDS-1071 (2002. 9.20)

1999年リリース。ちょっとボビー・ブランドの「ターン・オン・ユア・ラヴ・ライト」に似たメルディをもつ「アイ・キャント・ファインド・ラヴ」、ディッキー・ベッツを思わせるサザンフィーリング溢れるギターが実にマッチしています。そして次のタイトル曲、歌い出しのソウルフルな声とタイトなブギ調の演奏に乗って歌うロージーのドスの効いた歌にノックダウンです。さらに色気丸出しの「ユー・キャン・イート・マイ・プシア」、たまりません。ブギっぽいリズムとレゲエの影響を感じるソウルフルな曲がバランス良く入っていて、何度聴いても聴き飽きません。「アイ・ノウ・ワット・アイ・ウォント」のロックギターにも負けないど迫力のロージー、これは本当にすごいアルバムです。



Rosie Ledet ; It's A Groove Thing! ; MAISON DE SOUL MDS-1075 (2002. 9.18)

2000年リリース。ザディコ・クウィーン、ロージーの前作です。こちらは新作より幾分ブルージーな感じがします。曲がマイナーなものが多いからでしょうか。でもそれが魅力的です。「サムシング・ウィックド」の切なさを感じるヴォーカルとか、ダンスミュージックのノリなのにぐっと来ました。アコーディオンの録音にかけるエコーの具合を細かくコントロールして、曲の雰囲気を変えているのもこだわりを感じました。バックはタイトなのにアルバム全体から哀愁を感じるのは、アコーディオンという楽器の特性と、ロージーの潤いのある声と独特の節回しのせいでしょうね。新作よりサウンドにまとまりを感じました。



Rosie Ledet ; Show Me Something ; MAISON DE SOUL MDS-1077 (2002. 8.22)

2001年リリース。この人もザディコの新しい風を吹かせるひとりですね。タイトなドラムと良く動くベースをバックに、比較的シンプルだけどツボを押さえたボタン式アコーディオンと、ややドスの効いた躍動感のあるロージーのヴォーカルが、時としてソウルフルに、あるいはスカのような小気味よさを感じさせながら響き渡ります。ラベルの「レディ・マーマレイド」なんて曲も、すっきりしたアレンジでこなしています。クリス・アルドワンが新しい音楽を完全に消化して自分のものにしているのに対し、ロージーはソウルやロックのスタイルを上手く拝借しながらザディコの新境地を模索しているように感じました。



Rosie Ledet ; Now's The Time ; MAISON DE SOUL MDS-1080 (2003. 8.13)

2003年リリースの新譜です。前作からベースがチャック・ブッシュ、ドラムがケヴィン・ステリーに代わりましたが、それが定着、サウンドがタイトにしまった感じがします。曲調も「ソー・ザット・シング」「テイク・ア・チャンス」「バイカー・ボーイズ」などいつものロージー節も聴けますが、ブギやレゲエといったリズムの変化、軽快なノリの曲などかなり変化に富んでいて、聴き飽きません。面白かったのは、ボビー・ヴィーの1961年の小ヒットで、レオ・セイヤーがリメイクして1980年に大ヒットさせた「モア・ザン・アイ・キャン・セイ」、ちょっと不安定なヴォーカルもロージーらしく、こんなのもやるんだと思いました。アコーディオンは低音の響くものが多く使われており、時折鳴り響くギターソロはいつにも増してロック色が強いなど、かなり個性化を狙った音作りに思えました。とにかく意欲満点の好盤!



Rosie Ledet ; Pick It Up ; MAISON DE SOUL 1085 (2005. 7.23)

2005年リリース。ルーキー・レデットのタイトなドラムとチャック・ブッシュの低重心なベースがどっしりとリズムを刻み、ケント・オーガストのギターが切れ味良く食い込んでいる素晴らしいサウンドをバックに、今までよりぐっとドライになったロージーのアコーディオンとクールな歌が響きます。かなりファンク度を増したトゥーステップが中心ですが、クリスのようにドライになりきらないのが彼女の魅力ですね。それはやっぱりあの憂いをたたえた、そしてちょっと色っぽい歌声があるからでしょう。結構歳いってきたのに、ジャケットも歌も未だに若い女性の色香を感じさせるのはさすがです。



Roy Ayers Ubiquity ; He's Coming ; VERVE 602517966307 (2009. 7.12)

1972年リリース。ロイ・エアーズはハービー・マンとの活動で知られるヴィブラホン奏者で、早くからファンクに目を向けていたわけですが、このリーダー作はそうした傾向がはっきり出ています。冒頭の「ヒーズ・ア・スーパースター」は当時映画化されて大ブレイクしていたロック・オペラ「ジーザス・クライスト・スーパースター」のテーマに触発された作品で、そのロック的なアプローチがユニークです。また、タイトル曲はラテン風味も加味された軽めのファンク・ナンバー。この他演奏全体はこの後にブレイクしていくフュージョンに近い路線だと思うんですが、コーラスの入れ方あたりはぐっとヴァンクネスを感じます。そんな中、まるでクラシックの独唱のようにサンディ・ヒューイットが歌う「スウィート・バタフライ・オヴ・ラヴ」の向こう側に、なぜかアフリカの大地が見えるんですよね。




Roy Buchanan ; The Project - The Unreleased First POLYDOR Album ; HIP-O SELECT B0003618-02 (2005. 2.25)

1971年録音。時代はロックだったんでしょうか?チャーリー・ダニエルズをヴォーカルに迎えた「幻のアルバム」では、ジミ・ヘンドリックスやビートルズなどを意識したようなロックナンバーが並んでいますが、ロイの味であるブルースとカントリーが融合したサウンドは前面になく、はっきり言ってちっとも面白くないです。チャーリー・ダニエルズが歌う「ストーミー・マンディ」もなんだかわざとらしいし、ロイのギターもちょっとサイケデリックで性急な感じです。でもこのCDの価値はこの後にありました。4曲セッションの模様が入っているんですが、ここにはまさに、テレキャスターのきらびやかな音を生かしながら、あの粘り腰のチョーキングで押してくるロイがいます。スローブルースはやっぱり痺れますね。これだけでこのCDの価値は決まりです。



Roy Buchanan ; Live Stock/A Street Called Straight ; BGO BGOCD682 (2006.10. 2)

1975年のライヴ盤と翌年のスタジオ盤の2on1です。ライヴの方はそのスカッとした抜けるような青空のジャケットにやられて、発売後あまり間を置かずに買っていますが、当時クラプトンもよくやっていたボビー・ブランドの「ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード」が、原曲にかなり忠実だったのが気に入っていました。そのほかジュニア・ウォーカーの「ホット・チャ」で聞かれるきらびやかなテレキャスター・サウンドが、ロイの魅力をよく出していると思いましたし、「ロイズ・ブルーズ」の多彩なフレーズは当時としては驚きでした。続くスタジオ盤の方は、エレキの曲についてはかなりフュージョンを意識したような作りで、改めて聴き直しても僕の好みじゃないんですけど、アコースティックを生かしたスワンプロっク的な「グッド・ゴッド・ハヴ・マーシー」や「マイ・フレンド・ジェフ」、スライドが格好いい「オーケイ」などはややヘタウマな歌も含め、味が出ていて気に入りました。



Roy Carrier & The Night Rockers ; Living Legend ; SEVERN CD-0031 (2004.11.14)

2004年リリース。ロイはチャビーやディッキ・ドゥの父親で、ベテランのザディコプレイヤーですが、その新譜がなかなかエネルギッシュです。全体にブルース寄りの曲調と、多分ラブボードのフィリップ・キャリエルの合いの手が、伝統的なザディコの雰囲気に近い感じを出しているんですが、ビートの切れ味はとてもダンサブルで、思わず体を揺すりたくなります。ボー・ジョックに通じる勢いがあり、「ブリング・ミー・コーヒー・イン・ザ・モーニング」なんて「ギヴ・ヒム・コーンブレッド」みたい。録音が結構ローファイで燻んだ感じなんですが、それがかえって音の厚みを際立たせているように思いました。



Roy Carrier ; Zydeco Soul ; MARDI GRAS MG1108 (2006.11.27)

2006年リリース。ベテラン・ザディコ・プレイヤーのロイは、10才からプレイを始めたそうですが、生業は油田労働者だそうで、いかにも生活に密着したザディコの世界らしいです。ブルースがベースになっている曲が多いんですが、「レッツ・ゴー・ダウン」「オー・バイ・バイ」「レット・ザ・ミートボール・ロール」「ザディコ・ローテル」などダンサブルな曲に魅力を感じました。スローな曲ではロイの実にほんわかしたヴォーカルとアコーディオンがよくマッチしてます。しかし「バード・ウィズアウト・ヒス・フェザーズ」で、ロンサム・サンダウンばりのギターを弾いてるのって誰でしょう?メンバーくらい書いてくれぃ!



Roy Gaines ; Rock -A- Billy - Boogie Woogie Blues Man ; BLACK GOLD no number (2005. 5.20)

1955〜58年にDELUXEやGROOVEなどに残したヴィンテージ録音集です。ジャケットのりりしい姿も格好いいんですが、いやいやこの頃から実にアグレッシヴなギターを弾きます。「ゲインズヴィル」なんてスローのインストナンバーでのギターの格好良さと言ったら!またヴォーカルも若々しく、ソロプレイヤーとしても十分魅力的です。またニューヨーク録音が主で、曲によってはキング・カーティスのサックスやミッキー・ベイカーがサイドギターをつとめている曲もあったりして、聴き所満載ですね。全体にスマートなんですが、どこかにテキサス譲りのワイルドさが残っているのがたまりません。



Roy Gaines ; Superman ; BLACK & BLUE BB 451.2 (<2002. 8. 4)

1975年パリでの録音です。割合長尺なセッション的な曲が多いアルバムです。メンバーはジーン・コナーズのトロンボーン、ミルト・バックナーのオルガン、そしてドラムはパナマ・フランシスです。まるで「ホンキー・トンク」のような「ハッピー・バースデイ・ブルース」、T-ボーンに敬意を表したプレイが見事な「ストーミー・マンデイ」、「ウンス・アイ・ワズ・ア・ギャンブラー」(原曲はライトニン、原題は失念)など、結構味わいのある歌と職人的なギターが楽しめます。4ビート系のドラムではパナマのオンビートのキックが印象的で、手数は決して多くないけれど、存在感のあるフィルインやブレークを聴くことが出来ます。これでもう少し「熱さ」が出ていればいいのに。ちょっとさっぱりしすぎの印象でした。



Roy Gaines ; Lucille Work For Me! ; BLACK GOLD BG1166-2 (2002. 2.12)

1996年リリース。これも中古です。チャック・ウィリスを「ボス」と仰ぐギタリスト、ゲインズが、ジョー・サンプル、ウィルトン・フェルダー、ヒューバート・ロウズなど、フュージョン系ミュージシャンと組んで作ったアルバムで、ブルースあり、ソウル・バラードあり、ファンキーな曲ありと、かなり上品なサウンドでヴァラエティに富んだ内容になっています。ゲインズのギターはさすがにいい音を出していますが、もう少し弾いて欲しかったな。ヴォーカルはご本人のようですが、やや渋めの少々いなたさを感じる歌い口で、ちょっとミスマッチにも思えますが、なんだか許せてしまう雰囲気です。こんなのもあったんだという印象でした。



Roy Gaines ; Bluesman For Life ; JSP CD2110 (2002. 3.16)

1998年リリース。このゲインズはものすごくブルースしていていいです。ジミー・モレロのプロデュースで、ファンキーありスローありシャッフルありの全曲オリジナル。2管を含むバンドの音は適度にタイトで、のっけの「トランプ」スタイルからぐいぐい引き込まれました。ヴォーカルもしっかり歌い込まれた感じで、きちんと時間をかけて作られたアルバムという印象です。しかし何といっても聴き所はそのギタープレイ。多彩な技を繰り出しながら、しっかり歌っています。どんなスタイルでも自分の個性を取り込みながら、きっちり仕上げるのはまさにギター・マエストロです。



Roy Gaines ; I Got The T-Bone Walker Blues ; GROOVE NOTE GRV1002-2(2003. 2.20)

1998年録音。ロイ・ゲインズが師匠と仰ぐT-ボーンの名曲の数々を取り上げたアルバムです。まず「ストーミー・マンデイ」、いわゆる「ストマン進行」ではなく、オリジナルに忠実なコード進行に、ウィル・ミラーのトランペットまでがいにしえの名曲を彷彿とさせます。ギターは見事と言うほかはなく、ヴォーカルも丁寧ですが、この曲などを聴くとかえってT-ボーンの歌の上手さが再確認できるのも事実。この他「T-ボーン・シャッフル」「ウエストサイド・ベイビー」など代表曲が続出です。全体に落ち着きのある演奏で聴きやすいなぁ。途中2曲ほどペダル・スティールやフィドルが入る曲があって変化球になってます。そしてラストにアコースティック版の「ストーミー・マンディ」。丁寧に歌い込んでます。でもハンク・ウィリアムズの「ホンキー・トンク・ブルース」って、T-ボーンやってましたっけ?



Roy Gaines & Mitsuyoshi Azuma ; Guitar Clashers From Gainseville, Tokyo ; P-VINE PCD-5583 (2000. 4. 7)

1999年、パークタワー・ブルース・フェスの際に来日したゲインズを共演した吾妻光良が迎え撃ったアルバム。出来立てのほやほや。ライヴ後スタジオにこもった「やっつけ仕事」と聞いていたので、あまり期待してなかったんですが、これは面白いです。最初の「オーキー・ドーキー・ストンプ」はちょっと冗長かと思いましたが、聴き進むうち、印象が変わりました。ゲインズのツボを心得たギターワークと、吾妻のスヌークスとゲイトマウスとコリンズに敬意を払ってジャズ・ジャンプばしった、トリッキーなギターのコントラストが楽しいです。それより感心したのがバックで、ふたりを立てた心地よい演奏です。この控えめで要所を押さえたバックがこのアルバムを締めたと思います。で、勝負の判定は、僕はゲインズですね!安心して聴けます。といっても、吾妻のギターも大好きですから横綱相撲ですよ。ちなみに「A列車で行こう」は吾妻の快勝です。お薦め。ことしのベスト10に入るかも。


Roy Gaines ; New Frontier Lover ; SEVERN CD-0008 (2003. 4.26)

2000年リリース。いきなりファンキーなタイトル曲から始まりますが、ギターがいいのは当然として、このアルバムではロイのヴォーカルがいけるんです。すごく丁寧に歌っていて、むしろギターよりそちらに耳がいく位です。6本の管に支えられたゴージャスなバックなんですが、抑制が効いていてロイのヴォーカルを見事に引き立てています。全曲オリジナルでバラードありスローありシャッフルありと変化も十分。ちょっとディストーションの効いたギターもたっぷり弾いていて、「テキサス・ミリオネア」あたりではロイらしいアグレッシヴで熱いフレーズが飛び出します。インスト「ロイのテーマ」もギターが良く歌っています。これはお得な1枚でした。



Roy Gaines ; The First TB Album ; BLACK GOLD no number (2004. 3.24)

2003年リリース。ロイ・ゲインズといえばテキサス系のアグレッシヴなギターを思い出しますが、ここではどちらかというとジョン・リー・フッカーを思わせる、ざらついたややルーラルなサウンドで、少し弾き語りっぽくやっています。実際ジョン・リーの曲を2曲やっていますし、エイモス・ミルバーンの「チキン・シャック・ブギ」や大スタンダードの「C・C・ライダー」等も、誰かの元歌をカヴァしたというよりは、自分のスタイルの中でそれらの歌を歌いましたという感じですね、そんな中、リトル・ジョニー・テイラーの「オープン・ハウス・アット・マイ・ハウス」が印象に残りました。でも「TB」って何でしょうか?



Roy Hamilton ; Anthology ; SONY/COLLECTABLES COL-CD-8823 (2004. 3.11)

おそらく1953〜59年にかけての録音だと思います。いきなりプレスリーかと思う深いエコーのかかった「ドント・レット・ゴー」でビックリでした。ニューヨークからニュージャージーで活躍したこの人は主にブロードウェイのミュージカル曲や、R&Bバラードのヒット曲のカヴァーを得意とする歌手で、ゴージャスなバックに乗って、ちょっとスモーキーな、でもたっぷりと響く声で朗々と歌い上げます。最大のヒットはロジャーズ&ハマースタインのミュージカル「カルーセル」からの「ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン」で、この他「アンチェインド・メロディ」「ストーミー・ウェザー」「モナ・リザ」などのスタンダード曲を好んで取り上げます。一方R&B畑からは「プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラヴ」「シンス・アイ・フェル・フォー・ユー」などを、ゆったりと歌います。スリルとかはまったく感じませんが、歌声の素晴らしさから、もっと聴かれてもいい人だと思いました。



Roy Lee Johnson ; When A Guitar Plays The Blues ; BEAR FAMILY BCD 16321 AR (2009.12.27)

1960〜67年録音。ロイ・リーはピアノ・レッド率いるドクター・フィールグッド&ジ・インターンズのメンバーで、冒頭に収められている「ミスター・ムーンライト」の歌い手として知られています。BEAR FAMILYはこのグループの4枚組ボックスを出してますから、この辺りのコンピはお手のもので、例によって極めて丁寧なブックレット付きのアルバムになっています。びっくりしたのが「ラヴ・イズ・アメイジング」で、この人、完全にサム・クック・マナーのソウル・シンガーなんですね。伸びのある声だけでなく、「ブッシーボディ」でのロッキンぶりも見事ですし、独立してからの「マイ・ベスト・ジャスト・エイント・グッド・イナフ」のソウルフルなこと。タイトル曲では素晴らしいブルースを聴かせます。「スロウリー・アイム・フォーリング・ラヴ・ウィズ・ユー」あたりのギターは相棒のカーティス・スミスでしょうか。まるでロバート・ワードのようなトレモロ・サウンドになってます。これらの録音はナッシュヴィルですが、1967年以降はマッスル・ショールズのフェイム・スタジオ録音もあり、これがめちゃめちゃ格好いいんです。「ソー・アナ・ジャスト・ラヴ・ミー」のハード・ドライヴィングな感じとか、「ギター・マン」や「シー・プット・ア・ワミー・トゥ・ミー」のタイトな感じとか、サザンソウル全開ですし、「テイク・ミー・バック・アンド・トライ・ミー」の美しいバラードなど、上手くプロモートしたらもっと売れてて不思議がないと思うんですが。ラスト4曲はカーティス・スミス名義の未発表で、彼も結構張りのあるいい声しています。いやはや驚きのリイシューです。




Roy Milton & His Solid Senders ; Roy Milton & His Solid Senders ; SPECIALTY SPCD 7004 (2000.11.13)

1945〜51年録音。一時出回っていたのは知っていたんですが、買いそびれていたのをNetworkで見つけて買いました。VIVID SOUNDがSPECIALTYをリイシューしていたときに、LPが出ていて、一時愛聴盤だったんですが、これで車でも聴くことができます。ドラムのロイ・ミルトンがリーダーのせいか、バンドとしてのリズムの切れがよく、適度に上品です。カミール・ハワードの明るいブギウギ・ピアノがいろどりを添えています。ブギ、ゆったりしたジャンプ、中にはジャイヴも混じっていて飽きません。このシリーズのロイ・ミルトンはあと2枚あったと思うんで、集めようかな。



Roy Milton ; Instant Groove ; BLACK & BLUE BB 459.2 (2006.11.15)

1977年フランス録音。このレーベルらしい作品で、実に小ぎれいでおとなしい録音となっています。ロイも前世紀は過ぎていますから、SPECIALTY時代のような躍動感を望むのは無理ってもんですね。でも作りは決して悪くはありません。それより注目すべきはギタリストのふたりですね。なんとビリー・バトラーにロイ・ゲインズです。時折耳を奪われるような職人芸のフレーズとかが飛び出してきます。むしろこの手のギターが好きな人にはお奨めです。



Roy Roberts & Johnny Rawls ; Partners And Friends ; ROCK HOUSE RH 00020 (2005. 7.30)

2004年リリース。ジョニー・ロウルズが新たなパートナーとして組んだのがカロライナのロイ・ロバーツですが、これはなかなかはまっています。ジョニーの抜けるようなハイテナーと、ちょっとハスキーなロイの声は見事にマッチングしていますし、ロイはギタリストとしても味があり、穏やかで暖かく、でも芯の部分にディープなソウルを感じさせるアルバムとなっています。サウンドはいい意味でローカルな南部指向、歌も気張らず肩の力がうまい具合に抜けた感じで、すうっと楽に聴けるんですが、1順するともう1度聴きたくなりますね。特に終盤の「テル・ミー」風の「ワッツ・ビーン・ゴーイング・オン」〜シカゴソウルみたいな「シャギン・ダウン・イン・カロライナ」ときて、モダンなアレンジから始まる素晴らしいバラード「メイキング・ア・フール・オヴ・ミー」と続くあたりは本当に染み渡りますね。最後に優しく軽やかに「ビーチに行って楽しもう」って言われちゃうと、この夏、メロメロッとしちゃうのは僕だけ?



Roy Rogers ; Slideways ; EVIDENCE ECD 26121-2 (2007. 9.11)

2002年リリース。1曲目の頭でアンプにプラグをぶち込むノイズで始まり、ラストにそれを引っこ抜くノイズで終わるという、ロイの姿勢を見事に表した隠し味が、実によくこのアルバムの中身を表しています。ロイの変幻自在のスライド・プレイは、オーソドックスなブルースやカントリー、さらにロックのスタイルをみんなミキサーに突っ込んで、ロイ流のスパイスを利かせながら絞り出したスペシャル・ドリンクのよう。サニー・ランドレスのような計算された緻密なプレイというより、思いつくままスライドを走らせてみましたってプレイが、勢いもあり面白いです。どこか粘っこい南部テイストを感じさせる佳作です。



Ruddy Thomas ; Sweet Lovers Rock ; TEK TWO/P-VINE PCD-2354 (2003. 4. 8)

1980〜91年録音。頂きものです。この手のレゲエはラジオで聴いたことがあるくらいですが、この人の声、素敵です。タイトル通り甘くとろけそうなファルセットで、ちょっと聴くとマイルドなんですが、ボブ・マーリーの曲などはその背後に硬質な男らしさを感じます。バックの演奏もとっても洗練されていて、さわやか。でもどことなく哀愁を感じます。ジミー・クリフもそうですが、レゲエはこのポップさが「売らんかな」路線とは異なるもっと本質的なところから出ているように思いました。だんだんはまっていきそうな自分が怖いです。



Rufus Thomas ; His R&B Recordings 1949-1956 ; BEAR FAMILY BCD 16695 AH (2008.11.27)

1950〜56年の、主にSUN録音を中心にしたコンピで、関連曲に未発表、さらにショウの様子まで収録された、BEAR FAMILYらしいかゆい所に手の届く好編集盤です。おまけに60ページを超えるブックレット付きと資料的価値も高いです。初期の録音はぐっとブルース色の強い曲が多いです。印象としてはロスコ・ゴードンに近い感じかな。彼の未発表だった「デコレイト・ザ・カウンター」なんて曲(録音風景)も入っていて、その直後にルーファウのヴァージョンが入ってたりします。曲としては「ブーテド」に近いです。この他ビッグ・ママ・ソーントンの「ハウンド・ドッグ」のオリジナルの後に「ベア・キャット」が入れてあったり、「タイガー・マン」もジョー・ヒル・ルイスのヴァージョンも入れてあったりと、曲の由来とかが分かる工夫が素晴らしいですね。さすがドイツ人の仕事です。




Rufus Thomas ; Can't Away From This Dog ; STAX CDSXD 038 (2004. 1. 2)

1960年代後半の録音だと思います。ルーファスの代表作「ウォーキン・ザ・ドッグ」のプロモ・テイクと別テイクを含むコンピですが、選曲がいいです。割と気楽に歌った感じの「チェリー・レッド」、いい雰囲気の「ベアフッティン」、CHESSの曲からは共感を感じるリトル・ミルトンの「ウィー・ゴナ・メイク・イット」に、フォンテラ・バス&ボビー・マクルーアの「ドント・メス・アップ・ア・グッド・シング」、さらにはフルソンの「リコンシダー・ベイビー」などカーラとの親子デュオを聴かせていて微笑ましいです。その上「ワン・ダン・ドゥードゥル」まであり、カヴァ集としてもかなり楽しめました。



Rufus Thomas ; Funkiest Man Alive ; STAX SCD-8611-2 (2006.11.13)

1967〜75年録音です。元祖ファンキー親父ルーファス節が全開のアルバムですね。タイトル曲からして大変で、朝から晩まで何時になってもファンキーで、そのことはお父っちゃんもおっ母つぁんも爺ちゃんも婆ちゃんも知ってるんだそうです。流石だなぁ。この他「ドゥー・ザ・ファンキー・ペンギン」「ドゥー・ザ・プッシュ&プル」などルーファス親父の大得意のナンバーも入っていて、大音量バリバリで聴くともうご機嫌を通り越して腰が揺れっぱなしになります。それと改めて感じたのはバンドの音が格好いいこと。ラストの「ロック・ミー・バック」、ちょっとミーターズ風の隙間のあるサウンドなんですけど、途中からホーンが絡んで来るともう怒涛の勢いに包まれていくんですよ。このあたりSTAXの底力を感じました。



Rufus Thomas ; Rufus Thomas Live! ; STAX CDSXE 121 Click Here!

Russell Batiste Jr. & Orkestra From Da Hood ; The Clinic ; RUSSELL BATISTE JR RBJ71944 (2003.10.20)

2003年リリース。メンバーや家族?のニックネイムを曲名にしたパーティ・アルバムといっていい作品で、ゲストにレオ・ノセンテリやアイヴァン・ネヴィル、さらにお父さんまで入っています。メンバーに日本人が多いのも目を引きました。冒頭のブラスバンド仕立ての「セカンド・ライン」ではラッセルが何とペットを吹いてます。この他「ダ・ボーイズ・フロム・セント・オーグ」では、ドラムだけのアンサンブルでブラック・インディアン・チャントに通じる乗り。この他子供がワイワイやってたり、あの有名な(スティーヴィー・ワンダーの方でない)「ハッピー・バースデイ」があったりと楽しめますが、バンド演奏自体はとってもフュージョン的。特にギターのフクダ、ベースのナラオカ両氏のプレイがもろにそういった感じです。ちょっとかっちりしすぎかな?



Russell Batiste & Friends ; Follow Your Dreams ; RUFF PUP no number (2010.10. 6)

2010年リリース。日本人をふたり含むバンド編成で、セカンドラインからファンクから取り混ぜながら、パーティノリでやってる感じです。バティステのドラムは以前に比べるとずいぶん柔らかく懐が深くなったように思います。ただ、ちょっと油断するとフュージョンぽくなっちゃうのが僕には今ひとつでしたね。歌ものもあり、リード・ヴォーカルはジェイスン・ネヴィルとのこと。あの一家なのかな。後半にドラムの音をわざとチープに録ったようなものもあって、不思議な感じを受けました。




Rusty Zinn ; Sittin' & Waitin' ; BLACK TOP CD BT-1134 (2005. 7.26)

1996年録音。ラスティの名前はいろいろなアルバムのギタリストとして見ていたんですが、自己名義は初めて聴きました。ホーンを入れたモダンなスタイルをバックに、ちょっとクランチの効いたギターをすウィンギーに鳴らしながら、ハイトーンで軽めのヴォーカルを粋に利かせるかと思うと、ハウリン・ウルフやエディ・テイラーを意識したり、キム・ウィルソン(1曲歌ってます)のアンプリファイドハープをバックにシカゴっぽい仕立て方にしたりと、ヴァラエティに富んでいますが、この人の歌、僕は気に入りました。変な力みがなく軽妙な、表情のある歌なんです。パワーはないですけどね。



Ruth Brown 1949-1950 ; CLASSICS 5003 (2006.11.19)

全曲ATLANTIC録音です。追悼の意を込めて聴いています。最初の雨テーマ2曲から初ヒットの「ソー・ロング」まで、ルースがこの時点ですでにかなり多彩なテクニックを持った歌手だということが分かります。いろんな声の出し方をしますし、とにかく上手い。面白かったのは「ヘイ・プリティ・ベイビー」、こりゃ「カレドニア」のパクリですよ。この時代はジャズっぽい演奏が多く、スタンダード曲も多く取り上げています。ジョン・コリンズのギターとコーラス隊が格好いい「センチメンタル・ジャーニー」なんて、さすが看板スターの貫禄が20代前半のこの時代から漂ってます。彼女最大のヒット「ティアドロップス・フロム・マイ・アイズ」のポップな肌合い、そして自身のイニシャルをタイトルにした「R.B.ブルース」、円熟とは違うけど、味のある歌です。



Ruth Brown ; 1951-1953 ; CLASSICS 5084 (2006.11.20)

昨夜に続いてルースを忍んでいます。この時代になると堂々とした味わいが増してきます。でもそれより聞いていて面白かったのは、バンドのサウンドがどんどんR&B化していくことです。特にヒット曲「ママ、ヒー・トリーツ・ユア・ドーター・ミーン」以降、その傾向がはっきりしてきますね。バンドがタイトになっていくのと、ミッキー・ベイカーのギターが隠し味のように効いてくるんです。「ワイルド・ワイルド・ヤング・マン」の勢いなんてロックンロールそのものですし、どこかワイノニー・ハリスあたりからの影響も感じます。これがまさにATLANTICの音の変化なんでしょうし、この辺りの時代に即応した音づくりが、このレーベルを大きく飛躍させた要素のようにも思います。



Ruthie Foster ; Crossover ; BLUE CORN BCM 0203 (2003. 4.10)

1999年リリース。「さわやかだけどソウルフル」っていうのが第一印象です。ルーシーはテキサスの黒人女性シンガー・ソングライターで、生ギターに最小限のパーカッションで弾き語ると書くと、フォークソングのイメージで受け取られると思いますが、透明感のあるサウンドなんですけど、歌の芯にゴスペルルーツの太さを感じます。とってもいい声です。ちょうどサム・クックがギター弾き語りで歌ったデモテープがあるんですけど、そのサウンドを思い出しました。あるいは「もう一度会いたい」「きみだけを」といったウルフルズのアコースティックなミディアムナンバーに通じるものを感じました。ジャケットは実にローカルでルーラルな感じですが、出てくる音は洗練されていて、でもどことなく「濃い」ものがあります。これは癖になります。収録時間が30分余りというのがとっても物足りなく感じました。もっと聴きたい!



Ruthie Foster ; Runaway Soul ; BLUE CORN BCM0202 (2003. 4.12)

多分2002年のリリースだと思います。こちらのルーシーはリズム隊が入りオルガン・ハーモニカを加えた編成で、よりブルースやゴスペルの色合いが強く、最初の何曲かを聴いた段階では、ちょっと普通になっちゃったかなって思いました。でもフォーク風味たっぷりの「ホーム」、このアルバムにもスペシャル・ゲストで参加しているテリ・ヘンドリックスの名曲「ホール・イン・マイ・ポケット」あたりの中盤からぐっと透明感が出てきて、ルーシーの良さが満開!弾き語り風に始まるブラウニー・マギーの「ウォーク・オン」のサウンド処理も巧みで、何より歌がいいです。この歌は25年以上前の僕のレパートリーだっただけに思い入れのある曲なんですけど、この解釈にはウキウキしました。そしてラストのスライドで始まるゴスペルフィーリング溢れる「ジョイ」!ちょっとデラニー&ボニーの「Motel Shot」を思い出しました。元気の出る歌です。これまたことしのベスト10入りです。



Ruthie Foster ; Stages ; BLUE CORN BCM 0403 (2004. 8.30)

タイトル通り2003〜4年にかけてのライヴ録音をまとめたものですが、これは素晴らしいアルバムです。ルーシーはおそらくゴスペルに育てられたのでは思われるんですが、このアルバムでは前作などでもはっきり感じられたブルースやR&B、特にサム・クックの影響だけでなく、ジャズやクラシックの要素も上手く消化し、もうひとつのベースとなっているフォークソングと見事に融合しています。相棒のパーカッションとヴォーカルを担当するシド・カッソーネ(と読むのかしら?)の、カントリー系の真っすぐな声のコーラスが上手くマッチし、幅の広い、でも個性の粒だったサウンドになっています。個人的な好みでいえば、あまり力まずに歌った曲の方が魅力的で、その点では力唱する「トラヴェリン・シューズ」より、フォスターの名作を見事にアレンジした「おおスザンナ」の、透明感あふれる解釈にぐっと惹かれました。



Ruthie Foster ; The Phenomenal Ruthie Foster ; BLUE CORN MUSIC BCM0602 (2007. 4.29)

2006年リリース。冒頭の2曲を聴いて、その完成度の高さに驚きました。風格のあるソウルシンガーって感じ。アリサ・フランクリンのパッションと、ロバータ・フラックの知性を併せ持ったといったら誉めすぎかもしれませんけど、そのくらいのインパクトはありました。でも、聴いているうちになぜか僕の心の中で「木綿のハンカチーフ」が流れてくるんです。僕にとってルーシーの魅力は、どこか田舎臭い、素朴な味わいなんですよね。ですから聴き進んで「ビーヴァー・クリーク・ブルース」や「ママ・セッド」のようなアーシーな曲が出てくるとほっとするんです。歌の上手さにますます磨きのかかったルーシーのどの魅力をどう生かしていくか、これから先が正念場かもしれませんね。



Ruthie Foster ; Truth ; BUFFALO BUF-142 (2009. 2.10)

2009年リリース。前作あたりから歌の上手さに磨きがかかってきたんですが、それを見事に生かした作品になりました。以前のちょっと田舎っぽいフォーキーな感じは影を潜め、ぐっとソウルフルでファンクネスを感じるバックに支えられ、ルーシーは伸びやかに歌います。もちろん持ち前のゴスペル・テイストはしっかり生きていますし、洗練されたといっても、ヒップホップなどとは一線を画す、「南部の地方都市のちょっと懐かしいソウル」って感じでしょうか。でもこれがストライクゾーンのど真ん中といっていいと思います。クリス・ゴールドスミスのプロデュースがはまったわけですね。「ジョイ・オン・ジ・アザー・サイド」ではリゾネイタをバックにアコースティックな面もしっかり出してますし。早くもことしのBEST10入りかな。快作です。春に来日するそうで、ライヴも楽しみですね。




Ruthie Foster ; "The Truth" Japan Tour 2009 March 26 / Thumbs Up, Yokohama ; HOI-HOI D10042 (2010. 4. 1)

最近流行のライヴ会場一発撮り現地販売のスタイルで録られた2枚組のライヴです。実はこのライヴ、見に行きたかったんですが行けずじまいだったんで、特に嬉しいです。メンバー全員が女性で、ベースはルーシーの従姉妹だそうですが、パワフルなサウンドと素晴らしいコーラスワークを聴かせます。ルーシーはゴスペルとブルース、それにフォークを根っこに持っていて、最近のアルバムではソウル・テイストを濃くして来ていますが、このライヴではかなりブルージーなサウンド。ピアノとギターを持ち替えながらけっこうゴリゴリと音を紡いでいきます。で、何よりヴォーカルの迫力がありますね。伝統を感じさせるバラード「フルーツ・オヴ・マイ・レイバー」のソウルフルなこと!2枚目に突入するとしっとりと聴かせる「ラヴ・イン・ザ・ミドル」からスタート。「ウォークアップ・ディス・モーニン」のゴスペル溢れる歌に続く新作のタイトル曲「トゥルース!」あたりがライヴのハイライト。ぐいぐい引きつけます。ラストはこれまた得意なゴスペル「トラヴェリン・シューズ」。場内が盛り上がった後のアンコールは「ノー・ウーマン・ノー・クライ」から始まるメドレー、大ラスはロッキンでファンキーな「ヒール・ユアセルフ」と、素晴らしいライヴです。見に行きたかったなぁ。




Ruthie Foster ; "The Truth" Japan Tour 2009 March 28 / TAKUTAKU, kYOTO ; HOI-HOI D10043 (2010. 4. 4)

こちらは京都でのライヴで同じく2枚組。曲順を組み替えながらの演奏ですが、テンションは変わりません。ただレーベルが録音慣れしている成果、サムズ・アップでの録音の方が迫力を感じました。しかし演奏のグレードはこちらの方がさらにいいように思いました。前半のブルース中心の構成は京都のお客さんにはより好まれたようで盛り上がっていくのも早い気がします。そしてライヴの終盤、「スモール・タウン・ブルース」「トゥルース!」「トラヴェリン・シューズ」という構成がやっぱりなんと言っても素晴らしく、場内は完全にヒートアップしてます。アンコールもゴスペルで始まり、彼女のライヴ盤でもやっていた「フル・サークル」という素晴らしい曲で大団円!これを生で見た人は本当に得をした感じがしたと思います。




Ry Cooder ; Paradise & Lunch ; WARNER BROS./REPRISE 2179-2(2000. 8.22)

1974年リリース。中古で購入。lyleさんのホームページのタイトルにもなっているアルバムですが、今回初めて聴きました。ライ・クーダーは何枚も聴いているし、昔(ニュー)ミュージック・マガジンによく取り上げられていたんですが、このアルバムはちょっと印象が違いました。ライといえば硬質なフェンダー系のスライドのイメージが強いんですが、これはとってもアコースティックなサウンドです。ボビー・ウーマック=ヴァレンティノズの「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」のカリブ的解釈なんて、まさに天国!全編いい意味でのライトな感覚が貫いています。もう少しじっくり聴き込みたいアルバムです。


Ry Cooder ; Show Time ; WARNER BROS. 7599-27319-2 (2007. 8. 8)

1976年のライヴです。僕がライをまともに聴いたのはこのアルバムです。FMでまるごとやっているのをエアチェックしてよく聴きました。テックスメックス、ゴスペルの入り口になったアルバムでもあります。「ジーザス・オン・ザ・メインライン」「ザ・ダーク・エンド・オヴ・ザ・ストリート」等はこのアルバムで知った曲です。こうして聴き直すと、ボビー・キング、テリー・エヴァンズといった歌い手が実に生き生きしていますね。そしてライの腰の強いギターの音が音楽全体をしっかり締めています。



Ry Cooder ; Chavez Ravine ; NONESUCH/PERRO VERDE 7559-79877-2 (2008. 7.13)

2005年リリース。ロサンゼルスの一角にあったチャヴェス・ラヴィーンというメキシコ系アメリカ人の居住区をテーマにしたコンセプト・アルバムです。UFOを見つけたり、暴動や様々な騒乱、ドジャー・スタジアム建設のための取り壊しと、この街で起こった様々な出来事を、ラテン、ジャズ、コンフント、ロックなど様々な音楽をミックスしてライが語り部として歌っています。ジュリエット&カーラ・コマヘーレ、ラロ・ゲレーロなどの歌手をフィーチャーし、チカーノ社会の空気をたっぷり送り込んだこの作品は、ある意味ライの音楽的集大成と言えるのではないでしょうか。




Ry Cooder ; My Name Is Buddy ; NONESUCH/WARNER MUSIC JAPAN WPCR 12590 (2007. 5.11)

2007年リリース。バディという名の赤毛の猫の物語りに仕立てられたアルバムは、分厚いブックレットのついたさながら絵本のような作りです。出てくるサウンドはどこか懐かしいもので、日本でもフォークシンガーとして著名なピート・シーガーとその兄弟のマイクの入った曲は、さながらカントリーのテイストをたっぷり染み込ませたオールドタイミーなフォークソングで、初期のなぎら健壱や武蔵野たんぽぽ団を思い出させます。特にマイクはバンジョーの他フィドルにハーモニカにと大活躍。またフラーコ・ヒメネスの入ったテックス・メックス調はライお得意のタイプですね。この他ジム・ケルトナーが入った「スリー・コーヅ&ザ・トゥルース」はちょっと低重心でファンクネスを感じますし、「ワン・キャット・ワン・ヴォート・ワン・ビア」(タイトルのひねりも最高)はまるでマイルス・ディヴィスを思わせるトランペットをバックにした語りもの、続く「カードボード・アヴェニュー」はアパラチアの向こうに沖縄の白い砂浜が見えてきます。いろんな音楽を吸収したライならではのコンセプト・アルバム、これを「生気が無い」なんて酷評はできませんねぇ。



Ry Cooder ; I, Flathead ; NONESUCH/WARNER MUSIC JAPAN WPCR-12997 (2008. 8. 8)

2008年リリース。ライのカリフォルニア3部作の最後を締めくくるのは、まあ何ともある意味下世話なアルバムです。なにしろライナーの口上でその下世話さをライ自身がはっきり書いているわけですから。また言い換えれば、素直なロックアルバムだということもいえます。「ライディン・ウィズ・ザ・ブルース」や「ピンク・オー・ブギ」を聴けば、そのウキウキするような、本来のロックンロールのもつ肌合いをしっかり出していることが分かります。もちろんそこにはひと刺しのアイロニーも込めて。巧みなフィンガーピッキングにのる「スペイド・キューリー」、ラテンテイスト溢れる「フィリピーノ・ダンスホール・ガール」など、今まで溜め込んだライの音楽的素養をさりげなく詰め込んだこの作品、僕はここのところの3枚で一番素直に楽しめました。




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