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アーティストの名前順に並んでいます。「TODAY'S CD」で紹介したものは紹介文が付いています(日付)。紹介文のないものは「おすすめCD」か「お気に入りのミュージシャン」の中で紹介されているもので、「Click Here!」をクリックすると該当のページにジャンプします。

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Saffire-The Applty Blues Women ; Ain't Gonna Hush! ; ALLIGATOR ALCD 4880 (2001. 6.21)

2001年リリースの新譜。この人たち、7枚目のアルバムのようですが、初めて聴きました。人種混合の女性3人組です。経歴とかは僕はさっぱり分かりませんが、お歳を召した風貌などから考えて、フォークソング方面からブルースにアプローチした人かなと思いました。皆さん歌が達者な上に、楽器はマルチで、大変上品です。安心して聴ける音楽ですね。プロデュースも持ち味を上手く引き出していると思いました。でも裏返せばスリルは殆ど感じませんでした。でもこんな人達もアメリカにいるんだって、改めてその奥行きに驚愕しています。



Salif Keita ; Moffou ; UNIVERSAL UCCM-1035 (2006. 9.26)

2002年リリース。サハラ砂漠の南西部に位置するマリ出身のサリフは、その宗主国であったフランス語と現地語を交えた音楽をやっています。面白いのはアフリカらしい打楽器だけでなく、アコーディオンやギターを巧みに取り入れていることです。例えば「イニャジジェ」で聴かれるギターのサウンドは、ヨーロッパテイストを感じさせながら独創的なもので、彼がアフリカに根差しながらワールドワイドな新しい音楽を生み出そうとしているのを感じます。ややかすれたハイトーンのヴォーカルは憂いを帯び、サウンドはクールな中に熱い情熱を秘めているように思いました。大きな音で部屋いっぱいを満たして聴きたいですね。



Salif Keita ; M'Bemba ; UNIVERSAL UCCM-1081 (2006.10.17)

2005年リリース。前作「Moffou」の路線を踏襲しながら、よりポリリズミックなグルーヴを増した作品だと思います。アコースティックな楽器を中心に、西アフリカらしいスタイルのサウンドとコーラスを加えているんですが、サリフの声のせいもあるんでしょうか、どこかジプシー・キングスに通じるものを感じました。マリあたりは当然イスラーム文化圏なわけで、スペイン〜イタリアのラテン音楽との接触はあったんじゃないでしょうか。と言うか、特にスペインはイスラーム王朝が立っていて、その文化の影響を色濃く残しているわけですけど、その辺とのつながりを感じちゃうんですよね。興味深いところです。力強さはあるけれど、どこか癒されるアルバムです。



Sam & The Soul Machine ; Po'k Bones & Rice ; FUNKY DELICACIES DEL CD 0039 (2002. 8.13)

1969年と70年代中頃の録音。1969年の音を聴くと、まるでミーターズのようなアンサンブルですが、それもそのはず、リーダーのサム・ヘンリー他のメンバーの多くがネヴィル兄弟とのセッションやバックバンドをやった経験があるようです。しかも録音はコズィモ・マタッサがおこなっています。ちょっと軽めのドラムとレオ・ノセンテリほどフレーズにインパクトのないギターですが、良質のセカンドライン・ファンクを聴かせていて、かなり気に入りました。一方ヴォーカル入りの70年代の録音の方は、スライ・ストーンやP-ファンクの影響を感じるもので、こちらは流石にB級といった感じが強くなります。ニューオーリンズらしさが薄れてしまったのが残念。



Sam Brothers 5 ; Sam (Get Down) ; ARHOOLIE 9044 (2004.10.11)

1979年リリースのアルバムがCDになりました。でもアコーディオンやラブボードを持った少年たちがなぜかアフロヘアーなんで、不思議だなと思いましたが、1曲目のタイトル曲を聴いて納得です。だって、シックの「おしゃれフリーク」のもろパクリなんですもの。ジャこれで全編行くかっていうと、その後はしっかりザディコしています。この子供たちはハーバート・グッド・ロッキン・サムの息子たちのようで、その父親も1曲参加しています。鍵盤アコーディオンでやはりクリフトン・シェニエからの影響を強く感じ、実際シェニエの曲もやっていますが、どこか若さ故の青さを感じさせる演奏です。この時代にもっと冒険していたら、面白いものが出来たかもと思うと、ちょっと惜しい気もしますが、実際ルイジアナのクラブではガンガンやってたのかもしれません。録音されたものの向こう側に何があったのかを想像する楽しみが生まれました。



Sam Carr's Delta Jukes ; Let The Good Times Roll ; SPV 49972 CD (2008. 7. 8)

ライナーを読む限りだと2000〜2004年位の録音になるのでしょうか。多分すでにリリースされたアルバムに収録されなかった作品を集めたものだと思います。ジェリー・ロール・キングスを支えるサム・カーのドラムは、流麗とは対極を行くつっかかりのあるリズムで、これがサザンビートを刻むギターと組み合わさると絶妙のノリになります。ジミー・リードを初めとしたブルースマンの曲のカヴァーの他、主にリードを取るディヴ・ライリーやハーモニカでヴォーカルも取るジョン・ウェストンのオリジナルを交え、なかなかの水準の演奏が集められています。サムも2曲ギターと歌を披露。プロデューサーのフレッド・ジェイムズの愛情を感じる作品。ちなみにフレッドはギターも弾いていますが、センスのいいバッキングが光ります。



Sam Carr's Delta Jukes ; Down In The Delta ; R.O.A.D. RDBL-42 (2004. 7.20)

2004年リリース。サム・カーはジェリーロール・キングズでのあの独特のサザンビートを刻むドラマーですが、今回はその時代から付き合いのあるフレッド・ジェイムズのプロデュースで、ギターのアンドリュー"シャイン"ターナーとベースのディヴ・ライリーをフロントに迎え、タイトル通りのミシシッピあたりのジュークジョイントで夜な夜な演奏されていそうな、ダウンホームなブルースをやっています。カーの適度にバタバタした演奏は健在で、フロントふたりのヴォーカルは線は細めなんですが、どことなくいなたい雰囲気が結構はまっています。オリジナルが主ですが、フランク・フロストのかっこいい「ベター・テイク・イット・スロウ」あたりのノリの良さはさすがですね。因みにフレッドもギター弾いてます。



Sam Cooke ; The Two Sides Of Sam Cooke ; SPECIALTY/P-VINE PCD-1908 (2001. 3.26)

1952〜58年録音。買い逃していたものを中古で購入。嬉しかったです。ソウル・スターラーズ時代のサムは殆ど聴いたことがないんですが、やはり張りのあるすばらしい声で、ぐんぐん引き込まれました。一方ポップ・サイドは甘いラヴソングが中心ですが、RCA時代に比べてまだ荒削りというか、曲がポップに成りきっていない分、瑞々しさを感じます。僕はRCAの「大甘」なサムも大好きなんですが。このアルバムを聴くと、ハーレム・スクエア・クラブでのライヴのサムがちっとも意外じゃないことが分かります。あれほどはソウルフルって感じじゃないんですが、唄い回しとか、どこか共通点を感じました



Sam Cooke ; Live At The Harlem Square Club, 1963 ; RCA PCD1-5181 Click Here!


Sam Cooke ; At The Copa ; ABKCO 29702 (2002.11.20)

1964年夏のコパカバーナ録音。これ、久々にまともに聴きました。ポップスターとして地位を確立したサムの極上のライヴです。もちろんハーレム・スクエア・クラブのライヴと比べると、選曲や演奏はぐっと上品ですが、こちらも躍動感は十分に感じられます。クラシカルな「ノーバディ・ノウズ・ホウェン・ヨー・ダウン・アンド・アウト」の斬新な解釈、「トライ・ア・リトル・テンダネス」のスマートさ、そして「風に吹かれて」から「テネシー・ワルツ」へのもって行き方など、やはり一級のエンターティナーです。ハーレム・スクエアでもやっていた「ツイストで踊り明かそう」を聴くと、お客のおとなしさにやや控えめながら、場内を盛り上げていく様子がよく伝わってきます。フォークソングが多いのはやはり白人客相手ということなんでしょうか?ボビー・ウォマックらの華麗なコードワークにも耳がいきました。



Sam Kininger ; Sam Kininger ; VELOUR/P-VINE NON STOP PVCP-8233 (2004.11. 2)

2004年リリース。これは1曲目から来ました!「NY-No.1」はクールなテーマを持ったファンクナンバーで、洗練しているけれど、その奥底にドロドロとしたマグマが渦巻いているようです。「32-84-31 ST.」あたりのギターのカッティングは70年代のスライ&ファミリーストーンあたりのサウンドの正当な後継者のようで、リフにはちらっとミーターズの影も。そこにフレッド・ウェズリーのトロンボーンが絡んでくるんですからこれはたまりません。「ノー・ウォー・フォー・オイル」の落ち着いているようで、その実とってもグルーヴィーなノリのサウンドなど、はまりまくりです。キニンジャーのサックスはメイシオ・パーカー直系といった感じで、ふっくらとしたサウンドのアルトですが、タングコントロールの切れで決して甘くなりません。この辺がブラックエンターテインメント直系の音より洗練したものを醸し出しているようです。それでも僕が気に入るのは、奥が熱いんですよ。油断してしゃぶりつくと、舌、火傷しまっせ!



The Sam Lay Blues Band ; Feelin' Good ; SPV 49772 CD (2007. 9. 9)

1994年、ナッシュヴィルでのライヴです。仕掛人はフレッド・ジェイムズ。シカゴ・ブルースのドラマーはのヴェルティ・サイド担当だって話をしたのは確かオディ・ぺインでしたが、サムもお約束通りウィリー・メイボンの「ポイズン・アイヴィー」でスタート。途中メドレーを挟みながら、いろんな歌を歌っていきますが、面白かったのはライトニン・ホプキンスの曲を2曲、それも「ショート・ヘアード・ウーマン」をやってることですね。意外でした。「モジョ・ハンド」もゆったりしたシカゴ・スタイルが仲々はまってました。終盤にロックンロール・メドレーを持ってくるあたり、ショウマンとしての気合いを感じました。演奏はちょっとバタバタしたところもありますが、なまで見てたら面白かったろうな。



Sam Lay Blues Band ; Stone Blues ; EVIDENCE 26081-2 (2010. 2.17)

1994年録音。最近も精力的にブルースマンの音源を発掘したり、往年のブルースマンをサポートしているフレッド・ジェイムズがプロデュースとギターを務めています。サムのヴォーカルは野太く、マディの「ウォーキン・スルー・ザ・パーク」などは仲々はまっています。でもライトニンの「ショート・ヘアード・ウーマン」あたりになると、毒気が抜けちゃっててちょっとつまらないですね。やっぱりリズムの跳ねるアップテンポの方が歌もドラムも生き生きしてていいと思います。そういう意味では自信たっぷりの「シャッフル・マスター」なんて曲がありますが、もっと速い曲がいいなぁ。




Sam Lay ; I Get Evil ; RANDOM CHANCE RCD-8 (2003. 4. 3)

2002年リリース。サムはポール・バターフィールド・ブルース・バンドやマジック・サムのアン・アーバーのライヴで素晴らしいシャッフルを叩いていたドラマーですが、ナッシュヴィルのフレッド・ジェイムズが作ったこのアルバムではそのドラミングの他、ちょっとひなびた味のあるヴォーカル、さらには弾き語りスタイルのギターも聴くことができます。フレッドはいつものようにちょっとファットなギターでも参加。おなじみのブルースナンバーを披露しています。シカゴものが中心ですがフルソンの「ブラック・ナイト」、バスター・ブラウンの「ファニー・メイ」などもやっています。弾き語りの方はディープなものが主ですが、ジョン・リーの「ブギ・チレン」までやっているのには恐れ入りました。ギターの方は特段上手いと言うほどではないですが、雰囲気がありこれもなかなかいけます。



Sam Moore ; Plenty Good Lovin' ; SWING CAFE SWING 001 (2002. 3.21)

1970年キング・カーティスのキングピンズ(後にスタッフを結成することになる面々)に、アレサ・フランクリン、ダニー・ハザウェイをキーボードに加えたサム&デイヴのサム・ムーアの録音が、32年ぶりに日の目を見ました。サムは「ブルース・ブラザーズ2000」でも元気な姿を見せていましたが、これは現役バリバリの頃の録音です。クールなバックに対し、ややエモーショナル度が強めのサムで、やはりSTAXの面々との相性がいいかなとも思いますが、迫力のある歌は聴きごたえがあります。スモーキー・ロビンソンの「ショップ・アラウンド」、アレン・トゥーサンの「ゲット・アウト・オヴ・マイ・ライフ・ウーマン」を独自のアレンジでやっていたり、リトル・ジョニー・テイラーの「パート・タイム・ラヴ」を熱唱したりと、選曲も面白いです。決して「残りかす」ではないこうした発掘は有意義だと思いました。



Sam Myers ; Coming From The Old School ; ELECTRO-FI E-FI 3383 (2004. 7. 8)

2004年リリース。タイトル通りベテランのサムが、やや年齢を感じますけど渋いブルースヴォイスと、深みのあるハーモニカを披露しています。また、メル・ブラウンが全面的にサポートしていて、丁寧なバックサウンドがとても好感がもてます。サニーボーイの「99」の他はほぼオリジナルで、ファンキーな「ヴードゥー・ウーマン」などもいいんですが、スローブルースでのメルのギターとサムの歌の絡み合いが、なかなかいい感じで気に入りました。結構スローが多いんですが飽きずに聴き通せたのは、そのバックバンドのバランスの良さと、歌の味わいだと思います。滋味あふれる1枚。



Sam Taylor ; Biggest Dream ; BACK ALLEY WBB-001(2005. 4.17)

2004年リリース。この人はあのサキソフォニスト、サム・ザ・マン・テイラーの息子だそうで、結構長いキャリアを持っているようです。そのせいか歌がかなり素晴らしく、ちょっと絞り出すような声はボビー・ブランドやシル・ジョンソンからの影響を強く感じます。特にスローナンバーの「スタンド・バイ・ミー」などシルを彷彿させる歌い方です。また面白いのはバックにフィドルが入っていることで、バンド自体は結構ファンキーなんですが、これが全体のサウンドを柔らかくしています。曲によってはペダルスチールも入っており、カントリーフィーリングを感じさせますね。でも実はこのアルバムは、ゴスペルアルバムとして聴いた方がいいのかもしれません。「プレシャス・メモリーズ」「ジーザス・メット・ザ・ウーマン」「ニュー・キッド・イン・タウン」「ディス・リトル・ライト・オヴ・マイン」「サンキュー・ロード」そして「君の友達」と、ゴスペルナンバーが半分以上を占めています。やはりこの歌は教会で鍛えられたものかもしれません。好盤です。



Sam Taylor ; Bluesman Back Home ; SAM TAYLOR no number (2005. 5.25)

2004年リヴァーへッド・ブルース・フェスティヴァルでのライヴ録音です。これも息子の「ブルースマン」の方ですが、かなり多くのお客さんを前に、ゆったりとした大きなフレーズのギターと、ゴスペルで鍛えたストロングヴォイスを披露、堂々たる歌いっぷりです。ただサックスは1本入っているんですが、シンセサイザーのチープなブラスサウンドがちょっと残念。せっかくだからしっかりしたホーンセクションを入れたらもっとずっと良くなったんじゃないかと思います。「ドリンキング・ストレート・テキーラ」なんて楽しいですし、ラストの「トライ・ア・リトル・テンダネス」はオーティス・レディングを意識しつつも、ぐっと抑制された歌い方で好感がもてます。もっと評価されていい人だと思うんですけどね。



Sam Taylor ; Portrait: The Funky Side Of Sam ; BLUZMAN no number (2008. 8.14)

2006年リリースのようです。例によって息子のギタリストの方ですが、今回はアレンジが全体にファンキーで、なかなかモダンな感じに仕上がっています。かなりソウルフルな感じの曲もあり、元々ゴスペル・テイストの強いこの人にはよく合った曲調だと思いました。印象としてはヴォーカルはちょっと元気がない感じかな。でも絞り出すような声はなかなか魅力的で、まとまったバックともマッチしています。「リトル・ヘッド・シンキング」はラテン調のピアノが絡んでユニーク。全曲オリジナルでなかなかの意欲作です。




Sam "The Man" Taylor ; Swingsation ; VERVE 314 547 877-2 (2003. 2. 8)

1954〜56年、アラン・フリードのプロデュースによるMGM録音を集めたもの。サム・テイラーと聞いて「魅惑のムード・テナー」とくる方はお年が知れるというものですが、戦前はクーティ・ウィリアムズ、ラッキー・ミリンダー、キャブ・キャロウェイらと仕事をし、戦後はATLANTIC録音等ニューヨークの名うてのセッションマンとして知られ、キング・カーティス以前のテナー第一人者でした。このアルバムで聴くことの出来るサムはまさに「名人芸」で、テクニックは完璧!こういうのを「上手い」って言うんでしょうね。でもややポップな香りがして、いわゆるホンカーの野趣溢れるフィーリングはやや欠けます。アルトのアール・ボスティックなんかに通じる雰囲気も感じました。サックスのフレーズ自体はしっかりホンクしたりしているんで、これはプロデューサーの意向のせいかな?



Same Ol' 2 Step ; Something For The Young And Old ; RJS ENTERTAINMENT no number (2007. 3.12)

多分2006年の新譜です。最近ザディコ界の若手の中でがぜん注目を集めている彼らのアルバムをようやく聴くことができましたが、まさにタイトル通り、伝統的なトゥーステップやザディコの流儀に乗っ取りながらも、タイトなリズム、ヒップホップの要素を取り入れたヴォーカル、そしてファンクネスのある曲調と、若者にも十分受ける内容を持っています。ドライなアコーディオンから出てくるビートは、ステップ・リドゥあたりに通じる感じでしょうか。また実に歌詞がシンプル。明朗快活な「ナッシン・バット・ア・ファイン」といい、実に分かりやすいテーマですし、「ワン・フォー・ザ・ロード」に至っては、勢いのあるリズムに乗って、ひたすら「今夜は他のビール、サン・ミゲルが欲しい」てな歌詞を繰り返すんですから、こりゃ呑んで踊れですね。確かな演奏力があるので非常に乗りやすく楽しめるアルバムです。ことしのベスト10に入ると思います。



Same Ol' 2 Step ; Who want It! ; SHRIMPO MUSIC no number (2007. 5. 4)

多分2006年のアルバムです。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いとはこのことでしょう。オーソドックスなザディコの伝統をしっかり踏まえながら、最近の新しい動きにもしっかり対応している感じで、そのソリッドなビートは強烈です。割合シンプルな歌詞で、縦に跳ねるリズムから繰り出されるビート感覚は、椅子に座ってじっとして聴くことを許しません。ずっと同じキーで同じようなリズムが並んでいるんですが、飽きずに聴き通せるのはバンドのノリがいいからでしょう。全編オリジナル、やっぱりこれはライヴを見たらもっと強烈なんでしょうね。



Sammy Price ; Barrelhouse And Blues ; BLACK LION BLCD760159 (2004.12.20)

1969年ロンドンで録音。いきなり自分の出生地を歌ったインスト「ハニー・グローヴ・ブルース」でスタート。ディキシーランドスタイルのバンドをバックにした軽快なジャズスタイルが中心ですが、味わいある歌を聴くことが出来る「セント・ジェイムズ病院」などの弾き語りも交え、また力強いブギウギも聴くことが出来ます。曲調もバラエティに富んでいますが、ビックリしたのはブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」を取り上げていること。懐が深いのがよく分かりました。中古だとこういうのが安いんでどんどん買うんですが、これは当たりの1枚ですね。



Sansone, Krown & Fohl ; Sansone, Krown & Fohl ; SHORTSTACK 1005 (2004. 7. 1)

2004年リリース。ニューオーリンズで活躍する3人のミュージシャンが、お互いをサポートしあいながらアコースティックに決めた1枚です。ジョニー・サンソンはダウンホームなハーモニカと渋めの歌が持ち味で、ジョン・リー・サニーボーイ・ウィリアムソンあたりをアイドルにしているようです。バックのアコースティックなサポートが上手く効いていていい感じですね。ジョン・フォールはいつもはしっかり仕事するギタリストとして聴いていましたが、リゾネイタを含むアコースティックギターを、スライドも交えてこれまたアーシーに弾きながら、芯の通った声で歌うのは、サンソンとはまた持ち味が違っていていいです。おなじみジョー・クラウンは歌っていませんが、「ピンク・シャンペーン」「パイントップス・ブギ・ウギ」などをいつも通り有名曲を上手くアレンジして楽しく聴かせます。それぞれオリジナルもあり、3人のコンビネーションも良く、いかにも楽しんで作ったアルバムって雰囲気が素敵です。



Sant & Johnny ; Santo & Johnny / Around The World ; CANADIAN AMERICAN SCACD 1002 (2006. 8.27)

1959〜64年録音。サント&ジョニーはペダルスチールとエレキのコンビで、なんといってもサントの伸びやかなスライドワークが魅力です。ハワイアンとかカントリーとかの要素もありますが、ベンチャーズがモズライトのトレモロアームで出したかったのはこういった音じゃないかと思わせるベンドの利いたサウンドが、夏っぽくていいです。その最高傑作が「スリープウォーク」な訳ですが、この他「キャラヴァン」「サマータイム」などそのちょっと浮遊感のあるサウンドははまるとこたえられません。「80日間世界一周」は日本のテレヴィ番組でやはりペダルスティールを使った録音が日本航空か何かのCMに使われていたような記憶がありますが、ここで聴かれるものはそんなハワイアン一色の甘ったるいものではありませんね。それに続く各国をテーマにした曲が楽しいです。「レディ・オヴ・スペイン」とか「モスクワの夜は更けて」とか、オーケストラをバックに演奏してます。しかしボーナスが11曲で「シェリー」とか「ジングル・ベル」まであり、全35曲はちょっと飽きましたけどね。



Sarah McLawler ; 1950-1953 CLASSICS 5111 (2004.12.14)

ピアニスト&オルガン弾きでヴォーカリストのサラは、やや小唄的な品のいいバラードをメインにして歌っていたようです。1951年ニューヨーク録音のKING盤は、ぐっとバンドがこなれて歌の良さが出ていますが、これはバックのサニー・トンプソンの仕事が大きいですね。BRANSWICKに移るとオルガンを弾きながら歌い始めますが、リズムの強いちょっとゴスペルがかった曲調の曲も出てきます。でも彼女の歌はどちらかというとジャズ〜ポピュラーサイドで、軽妙な感じ。時代に合わせてサウンドが変化しているように思いました。インストのブルースではなかなかかっこいいオルガンを聴かせます。



Sarah Vaughan ; A Lover's Concerto - Sarah Vaughan Best ; MERCURY/UNIVERSAL UCCM-4020 (2008.11.30)

1954〜66年録音。MAERCURYの膨大な録音の中からスタンダード・ナンバーを集めたものですけれど、ストリング入りの録音などは、ジャズというよりはムード音楽ですね。もちろんサラの低音の豊かなヴォーカルは素晴らしく、いい意味での重厚さを感じるんですけど、スリルは全然ないです。むしろライヴ録音の「月へ飛ぶ思い」「オール・オヴ・ミー」「バードランドの子守歌」などの方が、ジャズらしく、自由で聴いていて面白かったです。この辺り、歌の上手い人をどうやってレーベルが売って儲けようかという意図と、サラ自身の音楽へのこだわりがぶつかっていたんではないか、というような事情を想像させられます。




Saunders King ; Cool Blues, Jumps & Shuffles ; ACE CDCHD 865 (2002.12.16)

1942〜54年録音。「最初のブルース王」なんて呼ばれることもあるサンダースですが、やはり代表曲「S.K.ブルース」の、ラッパの物憂げな響きに続いてクールに歌い出す瞬間は何度聴いても痺れます。この人の歌はハイテナーで、そのクラシカルな歌い方は戦前のクラシック・ブルースの流れを感じます。また「S.K.ジャンプ」などではジャイヴ感覚も見せ、時折披露するギタープレイはジャズからの影響を強く感じます。とにかくクールでおしゃれ。「ダニーボーイ」「サマータイム」などは、ブルースというよりはミュージカルを聴くようで、すごくポップな感覚を持っています。この品の良さがいまひとつ日本で人気の出ない理由かもしれませんが、僕は大好きです。とにかくこんなに歌のうまい人はめったにいません。こういう歌をバックにブランデーでも飲むといいムードに浸れそうです。



Saunders King ; 1942-1948 ; CLASSICS 5064 (2008. 7.11)

この人のイメージって言うとやっぱり「S.K.ブルース」になっちゃうんですが、この初期録音集を聴くと、西海岸のエンターティナーだったことが分かります。元々サウンドはぐっとジャジーだし、ジャイヴもやるし、「サマータイム」なんていかにもスタンダードな歌い方。おそらく白人の出入りするクラブで歌って稼いでいたんじゃないカナなんて想像をしてしまいます。それは彼のマドラス風の写真からも想像できるわけで、日本の初期の歌謡曲と結構近い線を行ってるのかもしれません。



Savannah Churchill & Her Groups ; The Queen Of R&B ; DIPPER 214 (2004. 2.28)

1940年代後半の録音だと思います。サヴァンナ・チャーチルは「アイ・ウォント・トゥ・ビ・ラヴド」が大ヒットしたことで名前は知っていたんですが、音が手に入らず諦めかけていたところに、HOT DISKのカタログで名前を見つけて即購入しました。アルバムタイトルについて、ライナーに説明があり、ビリー・ホリデイのようなジャズ畑でない、そして、ラヴァーン・ベイカーなどより古い、R&Bの女王ということらしいです。曲は「オール・オヴ・ミー」のようなスタンダードもありますが、いろいろな男性コーラスをバックに、深みのある声で、スムーズな歌い方をします。曲調はどれもゆったりしていて、いかにも40年代の黒人メインストリームといったものです。これがおそらくどんどんビートが強くなった後の時代に、この人が生き残れなかった理由でもあるんでしょう。魅力的な歌の上手い人なんですがね。



"Scatman" Crothers ; I Want To Rock & Roll ; HYDRA BCK 27126 (2005.10.22)

1953〜73年にかけての、スキャットマンのコンピですが、流石ヨーロッパのコレクターは徹底しています。詳細なディスコグラフィーに加え、フィルムのリストまでブックレットに載ってるんです。さて、スキャットマンはまさにエンターティナーで、独特のスキャットを交えながら「ブルーベリー・ヒル」などファッツ・ドミノ・ナンバーを歌ったり、このCD収録曲としては最初期の「ウッドチョッパーズ・ボール」では御機嫌なジャイヴを披露、声質も吾妻さんに似てるんで、スウィンギン・バッパーズで聴いてみたいですね。強烈なスキャットでジャズする「アイ・ゴット・リズム」、各所にちりばめられたロックンロール、歌詞には時折スリム・ゲイラード調の言葉も織り交ぜ、とにかく全編楽しい1枚です。だって西部劇の主題歌「ゴースト・ライダー」なんて曲まで出てきちゃうんだもの。でも何といっても僕にとって嬉しかったのが、ラストの「カンザス・シティ」。この辺のいきさつはジャケット写真とともにblogの方をご覧ください。



The Schatzy Band ; Nocturnal Wild Life Journal ; HOT SPAZZ no number (2007.12.29)

2007年リリース。アメリカにもオリーヴァーズみたいなバンドがあったんだというのが第1印象です。アコーディオンでマイナーのちょっとクレズマーのようなメロディを奏でるバックで、結構ドンシャリなリズム隊がガツンとかましてます。ボサノヴァっぽい曲やマンドリンやリゾネイタを入れたフォーク調の曲があったり、さらにはザディコっぽい曲まで出てくるといった具合で、ヴァラエティにも富んでいます。メインヴォーカルで曲も書いているグレン・シャッツはボブ・ディランを軟弱にしたような歌い方ですが、バックのサウンドのユニークさとうまい具合にはまっていて、投げやりな感じが嫌味に聞こえませんね。何度も聴いてるうちに味わいが出てくるアルバムです。



Schoolboy Cleve ; South To West - Iron And Gold ; CHERRIE CR-CDA20-2 (2008. 1. 5)

1954〜98年のマテリアルのようです。この人全然知りませんでした。ジャケットのバーボン・ストリートと金門橋からして、ニューオーリンズとサンフランシスコあたりを地盤にしてたんでしょうね。西海岸でのアルバムとルイジアナでのヴィンテージ録音集らしいってことは、BSR79号の和田昇師匠の解説で分かりました。確かにアルバム音源らしい音はギターの切れも良く、スタイルが固まってる感じ。でもそれよりボワッとつぶれたサウンドが聞こえるヴィンテージらしいサウンドが、ひなびていい感じです。「ビューティフル・ビューティフル・ラヴ」なんて何とも雰囲気のある歌とハーモニカで、ルイジアナの香りをたっぷり感じさせます。録音データとか、もう少しちゃんと載ってると嬉しいんですけどね。ちなみに余談ですが、ライナーとかインレイの写真、ほとんど裏焼きだと思います。ギタリストはおろかドラムもぎっちょで、しかもスクールボーイは腕時計を右手にしてるって写真はねぇ。



Scott Perry ; 8 Miles To Perryville ; OH PAPA MUSIC OPM-000030CD (2007. 7. 8)

リリース年は不明ですが最近でしょう。多分白人のペリーは華麗なフィンガーピッキングでブルースやカントリーを奏でます。スライドも用いますが、サウンドはかなり上品。例えばブッカ・ホワイトの「ニュー・ジターバグ・スウィング」も軽やかで、ガツンとしたインパクトはありません。タイトル曲はフィドルも入ったカントリーナンバーで、実はこの辺が本線なんじゃないかという気もします。オリジナルもやりますが、スキップ・ジェイムズの「アイム・ソー・グラッド」やらスタンダードの「ロック・ミー・ママ」なども取り上げていますが、後者にスケベったらしさを感じさせないのが物足りなくもあります。



 Scotty Anderson ; Triple Stop ; J CURVE ROOTS & BLUES JCR8001 (2001.7.22)

2000年春の録音。といってもブルースというよりはカントリー系のギターで、タイトルどおりテクニックは超絶ものです。ギャロッピング・ギターからラテンまで、結構ヴァラエティに富んでいて、テレキャス特有の硬質なサウンドをうまく生かしています。でもフレーズが耳に残るといった感じではありません。ちょっと音数が多い気もします。



Screamin' Jay Hawkins ; Screamin' The Blues ; RED LIGHTNIN RLCD0075 (2001. 9. 7)

1953〜70年録音。中古で購入。タイニー・グライムズやレッド・プライソックとやっていた初期録音は、かなりオーソドックスなブルースを素晴らしい歌唱力でやっていますが、まだ「上品」です。ところが54年の「シー・プット・ザ・ワミー・オン・ミー」ではすでにスクリーミンらしさを出し始め、その後はもう化け物屋敷の中にいるような盛り上がりです。有名曲はあまり収録されていませんが、彼のキャリアをつかむには好適な一枚だと思いました。



Screamin Jay Hawkins ; Portrait Of A Man ; EDSEL EDCD 414(2002. 7. 4)

1954年のTIMELYから1994年のDEMONまで、スクリーミンのほぼ全期間に及ぶキャリアから選ばれたベスト盤です。もちろんOKEH時代の「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」やROULETTE時代の「ザ・ワミー」、そしてHOT LINE時代のタイトル曲と代表曲が含まれています。まあいつもならではのドロドロしたムードにスクリーミンの奇声と朗々とした歌声が満載で、このワン・&・オンリーの個性をたっぷりと味わえます。「アイ・プット...」は1979年録音のキース・リチャーズ参加のヴァージョンも入っていますが、これまた鐘の音から始まるホラー仕立てですごいです。キースのギターもしっかり分かります。惜しむらくは「便秘」が入っていないことかな?



Screamin' Jay Hawkins ; Frenzy ; DEMON/EDSEL ED CD 104 Click Here!

Screamin' Jay Hawkins ; Feast Of The Mau Mau ; PHILLIPS/EDSEL ED CD 252(P-VINE UPCD-54)(2000. 8.16)

1969年に録音されたアルバムの2on1、P-VINEの帯付き(ライナー入り)を中古で購入。最近この人のものを見つけると必ず手を出します。相変わらずの変態ぶりで、これにオリジナル「便秘のブルース」が収録されています。前半はライヴとのことですが、多分スタジオ録音だと思います。タイトル曲ではジャングルの中に迷い込んだ感じです。後半の方がちょっとおとなし目なんですが、アップのロックンロール調の曲のバックで、女声が「イヤ〜」と日本語のような嬌声?を張り上げているものもあったりして、相変わらずです。


Screamin' Jay Hawkins ; Move Me ; YEAAH! YEAAH30 (2002. 7.30)

何だかよく分からないリイシューものですが、サウンドの感じからして70年代終盤か80年代初頭くらいではと思います。リズムがややディスコがかったファンクっぽい感じです。まあスクリーミンは相も変わらずといった感じですね。ちょっとおとなしめですが。「アイ・ゴット・ア・スペル・オン・ユー」は「アイ・プット...」のリメイクですがかなり凝ったアレンジです。ラストの「スウィート・ジニー」はジャムセッション風のインストブルースで、おそらくスクリーミンがピアノを弾いていますが、この曲だけサウンドの感じが違います。やっぱりブルースが基礎にあるんだなって思いました。



Screamin' Jay Hawkins ; Live And Crazy ; EVIDENCE ECD 26003-2 (2000. 3.26)

1988年、パリのホテルでのライヴ。5人のバンドでこじんまり..いえいえとんでもない!盛り上がってます。お客さんの反応が凄くって、特に「便秘のブルース」の時には、初めの口上をまねる客に、スクリーミンもあきれて?「クレイジーなのがいる」と言ってるし、終わりの部分で客が奇声を上げると「本当にやばいのがいる」ですから!でも、これってディナー・ショウか何かかしら?だとすると便秘でブリブリやってていいのかい?あと、「アイ・ラヴ・パリス」は聴きたかったな!痛快な1枚です。


Screamin' Jay Hawkins ; Black Music For White People ; DEMON FIENCD 211 (2000. 2.25)

「Stone Crazy」と同じ日に中古で購入。1990年録音。「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」のダンス・ヴァージョンがヒップホップ仕立てで面白いんですが、なんといっても驚きは「ヴードゥー・プリーステス(Voodoo Priestess)」、歌の背後で女性が、素人臭いけど流暢な日本語で、「おまじないをかけてあげる。あなたは私のものよ、スクリーミン・ジェイ」などど囁き続けてるんです。初めの語りではスクリーミン・ジェイが「お化け」なんて日本語で言ってるし。きっとアメリカ人には何言ってるか分からないから、おまじない(Voodoo)なんでしょうね。さすが奇才!


Screamin' Jay Hawkins ; I Shake My Stick At You ; AIM 1031 (2004. 1. 8)

1991年オーストラリアで録音されたものです。来日ヴィデオとはギターが違っていて、ボ・ディドリー・ジュニアが担当。全体にシャッフルやスローなどブルース色が強く、スクリーミン・ジェイのアルバムとしてはややおとなしい印象を受けますが、それでも「ブッシュマン・タッカー」や「ロック・オーストラリア・ロック」では十分鬼才ぶりを発揮。歌詞が分かったらもっと面白いんでしょうね。でもこうやって聴くと、すごくキャブ・キャロウェイからの影響を感じます。そういう意味ではエンターティナーの王道を行っていると言えるのではないでしょうか。



Screamin' Jay Hawkins ; Stone Crazy ; DEMON FIENCD 728 (2000. 2.24)

スクリーミンの訃報に接した日に、中古で購入。1993リリース。バックは今風、時にアバンギャルド、少女合唱団のようなコーラス、で、スクリーミンは相変わらず下世話!朗々堂々たる悶絶のヴォーカルで、特にウィリー・メイボンの「アイ・ドント・ノウ」なんて、笑いを押さえるのに必死でした。こういうの、僕、大好き!


Screamin' Jay Hawkins ; Somethin' Funny Goin' On ; DEMON FIENCD 750 (2001.10. 7)

1994年録音。中古で購入。この盤のバックはかなりロックっぽい演奏で、ディストーションの効いたギターとかちょっと聴くと「あれ?」って感じでしたが、さすがはスクリーミン・ジェイ、一吠えで自分の世界にもってっちゃいます。途中つなぎのインストを挟みながら、結局はいつも通りのおどろおどろしさ満載のエンターティンメントで、僕は奈落の底に引きずりこまれていました。でも後遺症があまり重くないのはちょっと妖気が足りないからかな。



Screamin' Jay Hawkins ; At Last ; LAST CALL/ROCK RCCY-1006 (2000. 8.31)

1997年メンフィス録音。新譜で購入。ドラムズにロジャー・ホーキンスが参加するなど、タイトな演奏をバックに、相変わらずスクリーミンは吠え、叫び、擬音と奇声を発します。でも唄うところは朗々と唄う、エンターティナーぶりを存分に発揮しています。フランク・アッシュのギターがタイトな中にアグレッシヴな勢いのあるソロを聴かせていていいです。敷かし「アイ・ショット・ザ・シェリフ」にはびっくり!ラストの「クールな会話」は18分に及びます。英語の苦手な僕が聴いても、ある種とんでもない「会話」が繰り広げられています。やはりこの人は奇才です。


Screamin' Jay Hawkins ; Live At The Olimpia, Paris 1998 ; LAST CALL 3052562 (2001. 6.28)

スクリーミンの晩年、パリに移住してからのライヴ。しかしこの人は衰えませんね。相変わらず一級のエンタティナーです。「メルシー」を連発しながら、何か背後で「ケケケケ」と笑い声を出すおもちゃか何かを鳴らしながら進められるライヴの様子が手に取るように分かります。達者な自身のピアノもですが、ディーデー・マーティのサックスがなかなか盛り上げてくれます。スクリーミン自身も「ディーデー」を連発してます。ギターはちょっと弱いかな?曲は「便秘」を含め、代表作はほぼ網羅。この他「スタンド・バイ・ミー」「アイ・ドント・ノウ」とスタンダードになった曲も取り上げますが、すべてスクリーミン・カラーにどぎつく塗られた感じです。でもかなり太ったようです。



Sean Ardoin & Zydekool ; Pullin' ; TOMORROW RECORDINGS TMR 70005-2 (2002.10.23)

2001年リリース。ショーンはクリスの兄で、彼のバンドでもドラムを叩いていましたが、こちらは自身のリーダー作。"Kool"と言う割には明るいパーティサウンドです。ずっしりとしたキックが心地好いドラムに、ショーンの張りのあるヴォーカルを軸にみんなでワイワイやっている感じがダンサブルで楽しい感じ。「ザディクール・ローリン」の途中ではアイク&ティナのヴァージョンの「プラウド・メアリー」の一節がさりげなく引用してあったりして、くすぐりますねぇ。弟同様レゲエからの影響もかなり感じましたが、とにかく明るさが印象的です。ショーンはアコーディオンの腕もなかなかのもの。しかしこの人がアコーディオンを持つととっても小さく見えます。



Sean Ardoin & Zydekool ; Home Brew ; TOMORROW RECORDINGS TMR 70007-2 (2003. 5. 2)

2003年リリースの新譜です。弟クリス来日も決まり、日本でもザディコが盛り上がるかというタイミングで出てきたのは、メンバー3人が楽器を持ち替えながら、スタジオワークでじっくり作った作品です。1曲目「イフ・ユー・ウォント・ミー」の重厚なブギはショーンならではのノリです。全体にソウル、ファンクからブルースを意識した作品が多く、タイトル曲は何と「ロック・ミー・ベイビー」からの引用が飛び出します。「ラヴ、オール・フォー・ユー」や「ザ・コール」のような打ち込みっぽいソウルナンバーは、ショーンの歌の上手さがあるので許せるけど、どうなのかしら?もっとごり押しのファンキー・ザディコを期待してた分ちょっと肩透かし。ラストの「キモ・サベ」のようなクールな曲をもっと聴きたかったな。



Sean Ardoin & Zydekool ; Final Chapter... New Beginning ; ZYDEKOOL no number

2006年リリース。サンプラーと銘打ってありますが、アルバムとして十分聴くに耐える内容になっています。レゲエやヒップホップの要素をたっぷりと盛り込んだスタイルはショーンお得意のもので、まさに「クールなザディコ」。歌のうまいショーンですからこの路線は大正解だと思います。「メイク・ラヴ・イン」「グロウン・フォークス」はアコーディオン抜きで打ち込みをバックにしたR&Bナンバー。どことなく野暮ったさを感じさせる面もありますが、歌唱力があるのでサマになってます。面白いのはラストのボーナストラック。「バック・トゥー・ザ・サンド」というアコースティック・ギターだけをバックにしてフォーク調に歌う曲なんですが、なかなか雰囲気があるんです。まあこれ聴いてザディコだと思う人はいませんけどね。ザディコという殻から飛び出そうとするショーンらしい試みといえるでしょうか。



Sean Ardoin + R.O.C.K. ; How Great Is Your Love ; ZYDEKOOL no number (2010. 6. 7)

2009年リリース。弟のクリスと共にヌーヴォー・ザディコ路線を突っ走ってきたショーンの新作は、前作よりはザディコ色が強くなった気がします。でも「ファーザー・トゥ・サン」や「アイ・アム・トゥ・ワーシップ・ウィズ・ユー」は今風のR&Bですし、続く「ファインド・ミー」や「エックスマン」はヒップホップです。ふたつの要素を強引に混ぜ合わせるのではなく、併置することで、自分の世界を表現しようという姿勢かな。ショーンは歌が上手いので、こうしたアプローチは当たりのような気がします。




Sean Vidrin & Swamp Fyre ; Sean Vidrine And Swamp Fyre ; J&S JS-6103 (2002.12.30)

2002年リリース。店頭でかかっていて元気な感じで気に入って買ってきました。ジャケで見る限りまだ若そうなショーンが、ボタン式の「ルイジアナ・アコーディオン」を弾きながら歌うんですが、1曲目の「ケイジャン・クウィーン」からして、かなりポップでライトな感覚です。ケイジャン・ポップスと読んでも差し支えないのではと思いました。ご当地ソング的な曲が並ぶ中、ディランの「ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドア」がすごく雰囲気があっていいんです。ルイジアナ特有?の切なさを感じました。セカンドラインした「ジャンバラヤ」もいい感じ。しかしペパーミント・ハリスの「アイ・ゴット・ローデド」、ルイジアナじゃ人気曲なんでしょうか?



Sex Pistols ; Never Mind The Bollocks ; VERGIN/TOSHIBA EMI TOCP-53098 (2004.11.30)

1977年リリース。これが現役で流れている頃の僕は、アメリカンロックやブルースが好きだったので、FMで流れたのを何度か聴いただけです。今回とある事情で聴き直しましたが、思ったよりサウンドが整理され、結構計算された音作りだなと思いました。もっとハチャメチャかと思ってましたが。ジョニー・ロットンにはちょっとボブ・ディランの影を感じました。まあ発音は凄いコックニーですね。「アナーキー・イン・ザ・UK」、確かに良くできた曲です。好き嫌いで言われたら好きじゃないですが、名盤と呼ばれる理由はよく分かりました。



Shalacy ; Shalacy ; J&S JS-6107 (2002.10.17)

2002年リリース。ルイジアナの歌姫といっていいのかな?録音はナッシュヴィルで、「バートン・ルージュ」なんてタイトルとはイメージの違う典型的なカントリーソングになっています。この他大甘ではないですが、カントリー・フレイヴァが全編に漂っていて、実にさわやかな感じ。でもこのシャラシー(シャレイシー?)、歌に力があります。芯が通っていて、ぐぐっと入ってくるんですよ。「ワット・ゴーズ・アラウンド」みたいなハードエッジの曲もなかなか表情豊かでいいんですが、一番気に入ったのは「フロム・ザ・ハート」というバラードです。これと次の「ウイザウト・ユー」(ニールソンで有名な曲とは同名異曲)あたりがこのアルバムで一番の聴き所だと思いました。かなりの美貌だし、当地では人気あるんでしょうね。



2010. 8. 9 Shamarr Allen & Paul Sanchez ; Bridging The Gap ; THREADHEAD no number (2010. 8. 9)

2010年リリース。片や金管楽器からキーボード、ベースにドラムまでこなすマルチプレイヤー、片や今ニューオーリンズで旬のシンガー・ソングライター、この二つの異なる才能をつなごうというのがアルバムタイトルによく現れています。オリジナルはシャマーの曲の方が多いくらいで、イニシアティヴもシャマーが握ってるように思いましたが、ポールの味も随所に出ています。何より歌の肌合いが二人であまり違わないので、独特の暖かみのある音になっています。ジョン・レノンの「インスタント・カーマ」なんてのもやってますが、面白かったのはレゲエ仕立てのウィリー・ネルソン・ナンバー「スティル・イズ・スティル・ムーヴィング・トゥ・ミー」。全体に古いジャズの味わいを感じさせるサウンドで、気に入りました。




Shane Theriot ; Highway 90 ; SHOSE 1970-65 (2004. 3.27)

2000年リリース。シェインはニューオーリンズベースの若手ギタリストで、前半はセカンドラインに乗った御機嫌なギターワークをたっぷり聴くことができます。トリッキーなプレイもリズムに上手く絡みついて心地好いです。タイトル曲ではジョエル・ソニエーのアコーディオンがのどかな感じを演出しますし、「パンチ」という曲にはアート・ネヴィルも参加してます。でもアルバム後半は思いっ切りフュージョンしてます。ギターのテクニックは相当なものなんですが、グルーヴ感が薄れた分僕はいまひとつ魅力を感じませんでした。ところで「ストリート・ビーター(サンフォードと息子のテーマ)」の主旋律、ザディコ・フォースの「フレッド・G・ザディコ」と同じなんです。何かの引用なんでしょうか。



Shane Theriot ; The Grease Factor ; SHOSE 1970-66 (2003.10.16)

リリース年が書いてありませんが、新譜でしょう。いきなりヴィダコヴィッチのロールたっぷりのドラミングが気持ち良く鳴り響きます。やや歪んだギターのフレーズはかなり自由で、曲によっては昔ならフュージョンの一言で片付けられそうなものもありますが、そのユニークなギターのためどこか予定調和とならない強力な緊張感が漂い、それがこのアルバムを面白くしています。ギャラクティックの新譜同様、かなり音が作り込んであります。そんな中、カーク・ジョゼフ、ダグ・べローテとのトリオで演奏される「シュリンプ・ブート」など、すごいスピード感で気に入りました。スティーヴ・コンがアコーディオンを弾く「ザディフォー」は、さしずめフュージョンザディコってところでしょうか。全編オリジナルの意欲作!



Shane Theriot's Dirty Fingers ; E.P. ; SHOSE no number (2009. 5.12)

2009年リリースのミニアルバムですが、これ、豪華です。全編ファンクネスあふれるギター・インストなんですけど、ドラムがなんとジガブーにジム・ケルトナーにダグ・ベローテを使い分けてるんです。それぞれの味わいが出ていますが、ジガブーは昔より普通のドラマーになってますね。さらにキーボードのディヴィッド・トカノフスキーが素晴らしいサポートを聴かせますし、ホーンもいい味出してます。このテンションでフルアルバム出さないかなぁ。




Shane Theriot ; Dirty Power ; SHOSE CD-1970-67 (2009. 9.20)

2009年リリース。これ、掛け値なしにめちゃめちゃ格好いいです。ギター・インストアルバムって、そんなに好きじゃないんですけど、これは別格!まずドラムが凄いんですよ。ジガブー、ジョン・ヴィダコヴィッチといったニューオーリンズで泣く子も黙るふたりに加え、ダグ・ベローテ、ジム・ケルトナー、リッチー・ヘイワードと来れば、もうどんなビートが出てくるのか思いっ切り楽しみになります。それぞれのドラマーの味わいを生かしながら、シェインがフレーズを紡いでいくのがとにかくカッコ良く、トータルな音のグルーヴ感が抜群です。特にジガブーは自己名義作がちょっと今ひとつだったんですが、ここではミーターズ時代を思い出させる揺れのあるリズムが心地いいです。オルガンやブラスの音もたくみに交え、ギタリストのアルバムなのにギター以外の音が耳に残る、まさに総合的なサウンドで勝負しているのがよく分かる作品。さらにここにサニー・ランドレスの聴き間違うことのないあのスペイシーなスライドが絡んで来た日といったら!超お薦めの1枚です。ベスト5入り間違いなし!




Sharrie Williams ; Hard Drivin' Woman ; CROSSCUT CCD 11080 (2004. 7.30)

2004年リリース。この人のルーツは一聴すれば明らかなようにゴスペルにあり、「トラヴェリン」なんてもろにゴスペルしてますが、ジャズ・ヴォーカルのとレイニングも受けているようで、あっさりとしたジャジーな曲も上手くこなします。どうやら五大湖周辺で活動していて、バディ・ガイの店などにも出ていた人のようですが、このヴォーカルはかなりの手応えを感じました。ココ・テイラーやアリサ・フランクリンなどの影響を受けたそうですが、強い喉とヴォイスコントロールが素晴らしく、「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」の解釈などオリジナリティに溢れています。ブルースは情感より上手く歌ってるなって印象ですけど。しかし残念なのはバックバンド。ディストーションのかかったロックっぽいギターも気になりますが、何と言ってもファンク系の曲でのうねりのなさにはがっくりです。完全に歌に負けてますね。さらっとしたジャズ系の曲ならまあ聴けるんですが。もっといいバックを付けたら相当いけると思いました。



Shemekia Copeland ; Turn The Heat Up ; ALLIGATOR ALCD 4857 (2001. 4.10)

1998年リリースのファースト・アルバム。シュミーカはテキサスのブルーズン・ソウル・マン、ジョニー・コープランドの娘ですが、親の七光りとは言えない逸材だと思いました。ストレートに突き抜けたヴォーカルは心地よく、ホーンの入ったファンキーな曲では弾けるパワーを感じます。ただ、曲によってはブルース・ロックのようなギターに煽られてか、単調な歌になることも。ドン・コヴェイの「マーシー・マーシー」あたりは消化不良に感じました。もう少しじっくりしたプロデュースをしたらいい面がいっぱい出ると思いますが。ジョー・ルイス・ウォーカーの参加曲(「モージョ・ワーキン」みたい)もあります。



Shemekia Copeland ; Wicked ; ALLIGATOR ALCD 4875 (2001. 4.12)

2000年リリースのシュミーカ最新作。歌は前作より確実に上手くなっています。ストレートな持ち味を殺すことなく艶が増したって感じです。一方バンドの方はメンバーは前作と同じですが、この音はもろアメリカン・ロックですね。シュミーカの歌は素直とは言え適度なメリスマがかかっていますから、ぎりぎり枠内でやっているという感じで、ちょっとミスマッチに思えます。もっとファンキーな演奏の方が合うんじゃないかな?ゲストにルース・ブラウンが入っていたり、1曲目ではなぜかクレジットがないんですが、明らかにシュガー・ブルーって分かるハープが入っていたり、意欲作ですが、もっとシュミーカにマッチしたプロデュースがあると思うんですが。



Shemekia Copeland ; Talking To Strangers ; ALLIGATOR ALCD 4887 (2002. 9.17)

2002年リリース。ドクター・ジョンがプロデュースしたというので、大いなる期待を持って聴いたんですが、来ました来ました!1曲目のイントロからガツンと来たんです。ドラムの音、クレジットを見るまでもなくハーマン・アーネストの音です。少しくぐもったチューニングのスネアと、実にタイトなのに膨らみをもって響くキックの跳ね具合が最高です。彼が全部参加しているため、リズムに張りと潤いが出て、前作までのようなともすると平べったいロックのようなサウンドから一線を画すことになりました。またベースにもドクター・ジョンの腹心ディヴィッド・バラードが参加していて、ボトムをしっかり押さえた落ち着いたサウンドになっています。ギターには前作にも参加していたアーサー・ニールソンがメインになり、渋めのプレイからギンギンのロックまで活躍。そしてシュミーカ自身はその歌唱力にますます磨きをかけた感じです。ゴスペルフィール溢れるパンチのある歌は以前からありましたが、ファンク、ロックからソウルまで、バックにうねりがあるため歌が生きているんです。それにジャジーなバラード「ハッピー・ヴァレンタインズ・デイ」をしっとりと歌うなど、新境地も切り開いています、スリーブの裏写真でドクターにシュミーカが抱きついていますが、謝辞に「感謝のしようがないくらい」と書いているのも頷けます。前2作が肌に合わなかった人も是非聴いてみてください。水を得た魚とはまさにこの事です。



Shemekia Copeland ; The Soul Truth ; ALLIGATOR/P-VINE PCD-23687 (2005. 8.23)

2005年リリース。いやはやこれは素晴らしいです。スティーヴ・クロッパーをプロデューサーに迎え、そのギターサウンドとホーンの感じ、あの往年のSTAXサウンドの香りがしっかり漂っているんです。でもサウンド自体はモダンで、このコラボレーション、すごく成功していると思います。そしてそこにめちゃめちゃ歌が上手くなったシュミーカが縦横無尽に歌うんですよ。まあ冒頭のゴスペルテイスト溢れる「ブレイキン・アウト」で軽くノックダウンを奪われましたが、続く「フー・ストール・マイ・ラジオ」が最高のお気に入りですね。2ラウンドTKO負けって感じです。なにしろリフレインを一発で覚えて口ずさんじゃったんですから。名曲だと思います。この他適度にファンクネスの効いた曲が心地良いですが、ドビー・ゲイリーとのデュエットではちょっとブラコンしてみたり、「ユー・キャント・ハヴ・ザット」ではロックしたりと目先もいろいろ変えています。でも特にロック調の曲は以前の彼女の看板みたいなもので、それが好き嫌いの分かれるところにもなっていたように思いますが、今回のものはその歌の良さで全然違和感無しです。とにかく歌が主役にでんと座っているから、どんな演奏でも上手く合うんですよ。極めつけはラストの「サムシング・ヘヴィー」。スティーヴのちょっとフォーク調のアコースティックギター1本をバックに、エモーショナルな歌を聴かせます。とにかくことし最高の1枚ですね。まいりました!



Shemekia Copeland ; Never Going Back ; TELARC CD-83692 (2009. 5. 2)

2009年リリース。レーベルを移って、サウンドは少ししっとり気味になりました。でもサウンドはスティーヴ・クロッパーがプロデュースした前作よりまたロック路線に近づいた感じ。アコースティックな色合いを出したり、ジョニ・ミッチェルの「ブラック・クロウ」をジャジーにアレンジしたりと変化を出してはいますが、伸び伸び歌う「ボーン・ア・ペニー」みたいな曲が僕は好きですね。ちょっとファンキーな「リヴァーズ・インヴィティション」も悪くないけど、もっと抜いた歌い方が似合う曲だと思います。ラストの父親作「サーカムスタンシズ」、アコースティックなサウンドに乗ってじっくり歌ってますが、こうしたソウルフルな歌の上手さをアルバムとしてもっと生かせないのかなって思いました。




下間 哲 ; Stardust ; YPM YPM-024 (2010. 5.27)

2009年晩秋の録音です。ピアノに名手小林創をしたがえて、深みのあるトランペットを響かせています。トランペットというと、攻撃的で突き抜けるような音という印象がありますが、この人の音はまろやかで暖かく、熟成したワインのような味わいがあります。またユニークなのは、ジャズのスタンダードの他、日本のメロディ、特に彼の出身地秋田の「草刈り唄」「長持唄」を取り上げているところです。「秋田県民歌」には驚きました。そうした曲のメロディが、決してかび臭くなく聞こえてくるところが、この人の確かな力量の現れだと思います。




The Shirelles ; 25 All Time Greatest Hits ; VARESE SARABANDE VSD-6029 (2002.11.26)

1958〜64年録音。シレルズといえば「ベィビー・イッツ・ユー」「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ」で有名なガール・グループで、ポスト・ロックンロール、プリ・ビートルズ/モータウンという狭間の時代を彩る華です。いかにもこの時代といったサウンドで、ちょっとフィル・スペクターに通じる雰囲気や、ラテンの香りが漂う曲もあり、ニューヨークらしさを感じます。で、実は一番聴きたかった曲は「エヴリバディ・ラヴズ・ア・ラヴァー」で、これはドリス・デイのヒットなんだそうですが、ミーターズが取り上げていたんで興味がありました。で、聴いてびっくり!途中のサックスソロ、バーバラ・ジョージの「アイ・ノウ」のペットのソロを完璧にパクってるんです。ひょっとしてキング・カーティスの仕業かしら?「ワッド・アイ・セイ」を意識した「ママ・セッド」のサックス・ソロも九分通りカーティスだと思います。ちなみにこの曲のギターはひょっとするとミッキー・ベイカーかも。



The Shirells ; Swing The Most / Hear & Now ; ACE CDCHD 1239 (2009.12. 7)

1961〜64年録音。PRICEWISEの2枚のアルバムをベースにしたもので、大ブレイクした後の作品が集められています。手慣れたサウンドという感じで、外れのない安心感があるわけですが、ブラック・チャートでヒットを記録したのは「フーリッシュ・リトル・ガール」位。押しも押されぬ人気グループならではのアルバムなんですが、ポップシーンではビートルズとMOTOWNの出現で押されていく時期ともいえます。そう考えるとサウンド面での革新ができていないのが分かる面もありますね。




Shuggie Otis ; Shuggie's Boogie: Shuggie Otis Play The Blues ; EPIC/LEGACY EK 57903 (2002. 9.10)

1969〜71年録音。なんとシュギーが15〜17才の時の録音ですが、流石天才ブルースギター少年と呼ばれただけのことはあります。「12:15 スロー・ゴーンバッシュ・ブルース」ではまるで「Super Session」のようですが、それもそのはず、キーボードにアル・クーパーが入っています。ここでのシュギーのプレイは、マイク・ブルームフィールドにも似た流麗なものです。「ザ・ホークス」はフレディ・キング」の「ハイダウェイ」のスタイルを拝借してアレンジしたもの、またリトル・ジョー・ブルーのファンキーな「ミー&マイ・ウーマン」では、まるでB.B.キングのようなプレイを聴かせます。自己紹介的な語りの入った「シュギーズ・ブギ」では自分のお気に入りのギタリストのプレイを真似ていたり、その他スライドを披露した曲もあり、本当に多彩で上手いです。まあ味わいが足りないっていえばそうなんですが、ブルースに対する愛情を感じるアルバムです。



Shuggie Otis ; Inspiration Information ; SONY/LUAKA BOP 72438-50473-2-9 (2001. 8.25)

1974年リリースの作品に1971年の3曲をボーナスで付けてあります。10代半ばごろから父親の影響もあり「天才ギター少年」の名を欲しいままにしていたシュギーが、10代後半〜20才そこそこで作り上げた音楽です。ジミ・ヘンドリックスやフランク・ザッパといったギタリストからの影響を受けつつ、スライ・ストーンのファンク(「ファミリー・アフェア」あたりとの共通点を感じます)やスティヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイといったニュー・ソウル、さらにジャズの要素を取り入れた、独特の浮遊感のある、ナイーヴな作品です。シュギーの優しさがにじみ出ているように感じました。ただし弾きまくりのギターを期待すると外れです。「早すぎた天才」というのも分かる気がします。



Shuggie Otis ; In Session - Great Rhythm & Blues ; BLUES SPECTRUM/GOLDENLANE CLP 1222-2 (2002.12. 7)

1973〜77年、シュギーはその父ジョニー・オーティスが仕組んだBLUES SPECTRUMの、かつての巨人たちを蘇らせようというセッションに全面的に参加していました。これはそれらのセッションのベスト盤という感じで、シュギーの華麗なギタープレイを期待すると、ちょっと肩透かしを食います。でもメインが豪華なんです。ルイ・ジョーダン(サックスが凄い!)、ジョー・ターナー、チャールズ・ブラウンからエイモス・ミルバーン、クリーンヘッド・ヴィンスン、ピー・ウィー・クレイトン、ロイ・ミルトンまで、いわゆるジョニー・オーティス・ショウのメンバーの単独盤からのセレクトで、いいとこ取りです。でもこの中で気に入ったのは冒頭を飾るリチャード・ベリーです。他の人のものが全盛期を再現しようという作りなのに対し、ベリーのそれは60年代末のファンク路線という感じで、なかなかタフなものを感じました。このBLUES SPECTRUMのアルバムは僕がブルースを聴き始めた70年代末にはよく見かけたんですが、フルアルバムでCDにならないかしら?ブックレットのジャケ写見ててそう思いました。



Shun Kikuta feat. J. W. Williams ; Me And My Guitar ; BLUESOX BS-001 (2000. 5.29)

1995年にキングから出された「ゼイ・コール・ミー・シュン」にボーナスを2曲加えたものです。1曲目「ミスター・エア」がかっこいいインストで、この1曲だけで買って得したというアルバムです。J.W.ウィリアムズは渋めのヴォーカルで、悪くはないのですが、ゲストのジュニア・ウェルズの歌の後に聴くとちょっとかわいそうかな。オーティス・ラッシュとのギター・バトル(というか、ふたりで共演を楽しんでいるという様子)はほほえましいです。ラストに再びかっこいいインストを配し、ギタリストとしてのシュン・菊田を前面に押し出したアルバムです。一部オーヴァー・アレンジと思われる曲もありましたが。


Shun Kikuta with Nellie "Tiger" Travis ; Heart And Soul ; M&I MYCP-30043 (2000. 5.23)

2000年録音のフーチー菊田のピカピカの新作。ヴォーカルにネリー・トラヴィスを迎え、ギターを弾きまくっています。ネリーは中堅シンガーという感じで、圧倒的な魅力は感じませんでしたが、フーチーのツボを得たギターとアレンジでぐっと引き立っています。前半はおとなしめで、途中アコギのボトルネックなども披露しますが、「モージョ・ワーキン」のアレンジが秀逸!フーチー自らが唄う「シカゴ・ミッドナイト」では、一所懸命のヴォーカルをもり立てるように、思いのこもったギターが炸裂しています。何度か聴くとさらに味が出そう。ことし上半期新譜のベストになりそうです。  詳しくはClick Here!


Shun Kikuta ; Rising Shun ; YOTSUBA BCSKS-1 (2007. 6.20)

2007年リリース。7年ぶりという菊田俊介のソロアルバムが出ました。今回はシカゴで名うてのメンバーを集めたほか、彼の出身地である栃木のバンド、ジャムズビーとの共演も入っています。ビリー・ブランチのハープとか、現在彼がサポートしているココ・テイラーのヴォーカルなど、豪華なゲストが入っても、埋もれることのない、まさに流暢なシュンのギターは、多彩なフレーズと正確なテクニックで響き渡ります。途中三味線のバックでドブロをスライドで弾くという余興も聞かせますが、基本的にはギター名人ぶりをたっぷり堪能できます。これからブルースギターを始めようという人にとって、その引き出しの多さは参考になるでしょう。でも、後に残らないんですよね。どうも「これがシュン・キクタの音だ」というものが足らないように思います。その辺が出てきたらすごいことになると、期待を込めて思っています。がんばれ!



Shy Guy Douglas ; Stone Doin' Alright ; BLACK MAGIC BM 9205 (2005. 4.24)

1950〜69年の、EXCELLO録音を除くシャイ・ガイの、別テイクも含むほぼコンプリートな作品集です。このBLACK MAGICというレーベルは、熱心にナッシュヴィルのブルースやソウルをリリースしていますが、いろいろなコンピで聴くことのできたシャイ・ガイをこうしてまとめて聴いてみると、実にユニークな人だってことが分かります。EXCELLO録音などから、いわゆるサザン系のハーモニカを中心にした、ルイジアナ〜テネシーのブルースマンだと思ってたんですけど、思ったより幅広い音楽性を持っていて、ロックンロールに対応しようとしたり、ポップなバラードを歌ったりしてます。「ワーク・ウィズ・ハー」ではホンキートンクなピアノをバックにジャズっぽい曲を軽く決めてたりしますし、「レイド・オン・シダー・ストリート」なんてまるでルイ・ジョーダン。オルガンみたいなエフェクタをかけたハーモニカで吹く「ミッドナイト・ソウル」なんて本当に思いっ切りファンキーなのもあったりして、これは面白すぎです。



Sidney Maiden ; Trouble An' Blues ; PRESTIGE/BLUESVILLE OBCCD-574-2 (2004. 3. 1)

1961年録音。シドニー・メイデンはウエストコーストを代表するダウンホーム・ブルースマンと呼んで差し支えないでしょう。彼がこれまた西海岸のダウンホーマーとして名高いK.C.ダグラスのギターのサポートを得て録音したものですが、これってやっぱりフォークブームの中で作られたものなんでしょうね。歌も演奏も悪くないんですが、何だかこじんまりとしていて、よそ行きの感は否めません。同じ時代でもジュークジョイントのようなところでのライヴを聴いてみたいと思いました。



The Siegel-Schwall Band ; Flash Forward ; ALLIGATOR ALCD 4906 (2005. 8.17)

2005年リリース。うーん、この摩訶不思議な雰囲気はなんていったらいいんでしょうか。ドラムにサム・レイを擁したヴェテランたちの生み出すサウンドは、生ハープとスライドも交えたややアコースティックなギターやらマンドリンやら、さらに芝居がかったヴォーカルと、いわゆるブルースの狭い枠には全く収まりきりません。ハーモニカのフレーズからはブルーグラスに通じるものも感じますし、劇中曲なんかに使えそうな曲もあり、アメリカのルーツ音楽を集大成して楽しんでいるように思えます。部分的に聴き取れる歌詞もかなりひねりが効いた感じですね。ティン・メンとはまた違った、でもどこか底の方で通じているようなイメージです。ラストの「ストーミー・ウォザー・ラヴ」で思いっ切りライトニン・ホプキンスしているのがサム・レイの趣味なのかしら。何度か聴いてますが楽しめますね。



Sil Austin ; Swingsation ; VERVE 314 547 876-2 (2004.12. 7)

1956〜61年MERCURYヘの録音からのベストです。シルはロイ・エルドリッジ、クーティ・ウィリアムズ、タイニー・ブラッドショウなどと活動していたテナー・サキソフォニストですが、この時代ともなるとかなりポップな味付けの曲調の中でサックスを聴かせます。R&B3位でポップチャートでも20位まで上がった大ヒット「スロウ・ウォーク」にしても、「ホンキー・トンク」にちょっと「ナイト・トレイン」を足したようなヒットの方程式を行ってる曲ですし、「ワイルドウッド」は「ディーコンズ・ホップ」、「ピンク・シェイド・オヴ・ブルー」は「フライング・ホーム」と下敷きがはっきり。他にも聴いたようなメロディはあちこちで出ます。でもブリブリのサックスに軽めの音のオルガン、そしてミッキー・ベイカー弾きまくりと、この時代のニューヨークらしいサウンドはダンスには最高だったんでしょうね。



Sista Monica ; Get Out My Way ; THUNDERBIRD TBE5005-2 (2006. 1.26)

1995年リリースの、これがデビュー作なんじゃないでしょうか。本人の手元にもないということで、ほぼ入手を断念していたらひょんな弾みで手に入りました。これは嬉しいです。シカゴに火をつけ、あたしゃカリフォルニア・ブルースよと歌うシスタは、まだまだ歌には若さを感じ、ちょっと真っすぐで深みが足りないかななんて思いますけど、勢いは十分あります。また多分自身のツアーバンドでの録音の他、ディヴィッド・トカノフスキーやハーマン・アーネスト3世といった名手をバックにしたものもあり、作品のまとまりはなかなかのものです。このあとどんどん勢いを増していくスタート地点として、やはり重要なアルバムだと思いました。そしてラストにはゴスペルのアカペラ、やはり彼女のルーツはそこにあるんですね。



Sista Monica ; People Love The Blues ; MO MUSCLE MMRE-688 (2000. 5.30)

2000年録音の新譜。これはいい!ことし上半期のベストでしょう。躍動感溢れるモニカの歌と、それをしっかりと支えるバックのコンビが抜群です。歌はゴスペル的な要素が多いソウルフルな感じなんですが、演奏はファンキーというよりはかなりロック的、でもこれがぴったりはまってるんです。スローはしっとりと味があって、大ヴォリュームで聴いても疲れません。自作曲がほとんどですが、佳曲ぞろいで捨て曲がないし。ラストの「ウォーク・アラウンド・ヘヴン・オール・デイ」のア・カペラ、自分のリスペクトも唄い込んで、感動的です。近々「おすすめCD」にアップします。  詳しくはClick Here!


Sista Monica ; Live In Europe ; MO MUSCLE MMRE-716 (2001. 7.31)

モニカ待望の新作は、2000年ベルギーでのブルース・フェスからのライヴ盤です。いつものようにパワーみなぎるモニカのヴォーカルが、ショウをぐいぐい引っ張っていきます。スローナンバーとアップを上手く組み合わせながら、張りのある声で観衆を魅了している様子がよく伝わってきます。オリジナル中心でありながら、リトル・ミルトンの「ブルーズ・イズ・オールライト」で客をコーラスに引きずり込んだり、アイク&ティナ・ヴァージョンの「プラウド・メアリー」の一節が飛び出したりと遊び心も一杯です。バンドは手堅くサポートしていますが、ファンク系の曲はちょっと重荷だったかな?ともかくことしのベスト10入りは確定です。



Sista Monica Parker ; Gimme That Old Time Religion ; MO MUSCLE MMRE-704 (2001. 8. 3)

モニカはスタジオ盤のラストにゴスペルのア・カペラを入れるのが常でしたが、ここについにフル・ゴスペル・アルバムを出してきました。「ダウン・バイ・ザ・リヴァーサイド」「聖者が町にやって来る」などと超ポピュラーな選曲もあり、非常に親しみやすいです。また、「アメイジング・グレイス〜マザーレス・チャイルド」の得意のア・カペラも入っています。全体に落ち着いた堂々たる歌いっぷりで、僕のようなゴスペル初心者にも聴きやすい作品です。バックも的確なサポートで聴きやすかったです。



Sista Monica Parker ; Love, Soul & Spilit Vol. 1 ; MO MUSCLE MMRE-8856 (2004.12.10)

2004年リリース。ガンと闘っていたシスタ・モニカ復活作は落ち着いたスタンダード集です。結構ジャジーな演奏をバックに、バカラックの「恋の面影」をしっとりと歌い、「ジョージア・オン・マイ・マインド」での落ち着いた歌唱は、彼女の歌のうまさを見事に引き出していると思いますが、反面激しい曲がないのは、やはりまだ体力が戻っていないのでしょうか。すべてが新録ではないようで、すでに故人のケン・ベイカーがインストでやっている「エイント・ノー・サンシャイン」が入っているほか、ダグ・ロウァンのサックスの絡む曲は、やや声の感じが元気なので、ひょっとすると過去の録音かもしれません。いずれにしてもモニカの歌唱力、声の素晴らしさが堪能できますが、もうひとつの魅力である弾けるようなパンチのある歌が聴けなかったのがちょっと残念。自作に期待しましょう。



Sista Monica Parker ; Can't Keep A Good Woman Down! ; MO MUSCLE MMRE-8888 (2006. 1.17)

2005年リリース。シスタ・モニカが帰ってきました!脳腫瘍に冒され闘病生活をしていたんですが、とっても元気になっています。ギターにラリー・マックレイらを迎え、明るめのファンクナンバーからブルース、そして「ファニー・ハウ・タイム・スリップ・アウェイ」や「ア・チェンジ・ゴナ・カム」といったバラードの名曲までを、とにかく歌うのが楽しくってしょうがないっていう感じでやってます。バンドは西海岸らしい明るさときらびやかさがあり、ギターサウンドなどややロックっぽさもありますが、ブラスも加えた丁寧な音作りで、特にファンキーな曲は上手くまとまっています。そしてラストの「イッツ・グッド・トゥ・ビ・アライヴ」、まさにモニカの今の心境を歌ったような曲で、ゴスペルテイストたっぷりなバックコーラスとの息もバッチリです。今から次作に期待しちゃいますね。



Sister Rosetta Tharpe ; Never Alone ; OMEGA/ACROBAT FABCD254 (2008.11.25)

1958年リリース。ロゼッタと言えば見事なギターを弾き語りながら力強く歌う印象が強いのですが、ここではオルガンやギターなどのバンドをバックに、コーラス隊を従えた典型的なゴスペルを聴かせます。音質がややくぐもっているんですが、タフなロゼッタの歌にリードされ、勢いのあるレスポンスをつけるコーラスを聴いていると、ホーリネス教会でこんな感じで歌われてるのかななんて想像しちゃいます。




Skeeter Davis ; Wanted ; WG WANT014 (2005. 9.18)

録音年は分かりませんが、曲からするとおそらく1970年代中頃に吹き込まれたアルバムのCD化だと思います。代表曲「ジ・エンド・オヴ・ザ・ワールド」の他、「デスペラード」「アイ・オネスティ・ラヴ・ユー」と、ポップチャートのヒット曲を取り上げています。でもこの人のキャラクターらしく、本当にノーギミックの、ひたすら真っすぐな歌を、実にカントリーなバックにのせて歌ってるんです。毒気ゼロです。「ミー&ボビー・マギー」や「愛さずにいられない」なんていやはや物足りないこと。まあ好みの問題でしょう。



Sleepy John Estes ; The Man Who Cried Teh Blues 1929-1941 ; BLUES COLLECTION 159402 2005. 9. 1

スリーピー・ジョンの戦前録音を俯瞰しているコンピレーションです。1929年の有名なデビュー曲「ザ・ガール・アイ・ラヴ、シー・ゴット・ロング・カーリー・ヘア」は、当時ともに行動をしていたと言われるハンボーン・ウィリー・ニューバーンの「ロール&タンブル・ブルース」と同系の曲ですが、ヤンク・ラッチェルのマンドリンと、それに負けないエスティスの泣き叫ぶような声が絡み合い、やはりインパクトの強い作品になっています。初期のラッチェルとのコンビは、そうしたハイトーンのヴォーカルが魅力になっていますが、時代が経つにつれて声が落ち着きをもちまろやかになっていくのが分かります。ハミー・ニクソンと組んだ「ストップ・ザット・シング」は、「イッツ・タイト・ライク・ザット」に通じるホウカムソングで、やはり彼らがローカルダンスシーンで大きな役割を果たしていたことを感じさせます。最後の方にはBLUE BIRDに吹き込んだザ・デルタ・ボーイズ名義のものや、サン・ボンズがヴォーカルを取ったものもありますが、この頃になると初期の灰汁が抜けてしまい、やや物足りないかな。



Sleepy John Estes ; On 80 Highway ; ADELMARK/P-VINE PCD-93195 (2009. 1. 1)

1974年来日直前の未発表録音が発掘されました。ハミー・ニクソンがハーモニカやカズーで彩りを添え、コーラスをつけ、「ポテト・ディギン・マン」などでは自らヴォーカルもとっています。エステスは例の「泣き節」で切々とブルースを歌いますが、そこにはある種の美しさすら感じます。中には「聖者が街にやってくる」「コリーヌ・コリーナ」などのトラッドもあったり、「サムディ・ベイビー」風のケネディ大統領を歌ったブルースも2テイク入っています。セッション中のほのぼのした語りも入っていますし、ラストの「ブラウンズヴィル・ブルース」、染みますねぇ。正月早々ぐっと来ました。




Slim & Slam ; The Groove Juice Special ; COLUMBIA/LEGACY CK 64898 (2000.10. 2)

スリム・ゲイラードとスラム・スチュワートのコンビによる1938〜42年録音集。中古で購入。まずスリーヴのイラストがいかしてます。これだけで「買い」でした。内容は切れ味のいいスリムのギター、ときおり弓弾きも交えたスラムのベース、ドラムにはチコ・ハミルトン、サックスにベン・ウェブスターの名前も見える演奏に、軽妙なジャイヴが絡んでいきます。「チャイナタウン・マイ・チャイナタウン」で聴かれる怪しげな中国語、18番チキン・リズムの鳥の鳴き真似など、いくつかは他のもので聴いてるはずですが、いつ聴いても新鮮です。ブックレットも充実していて、お買い得のアルバムでした。



Slim Gaillard ; Cement Mixer Putti Putti ; PRESIDENT PLCD 558 (2000. 7.15)

1945〜46年録音。中古で購入。「セメント・ミキサー・パチパチ」とタイトル通りに唄うゲイラードはいつ聴いても楽しいです。彼の代表曲「トゥッティ・フルッティ」「チキン・リズム」も収録(でもこれらの曲、いったいいくつのヴァージョンがあるのか?)されています。ベースのバム・ブラウンのスキャット奏法も聴けますが、ゲイラードがバックに回ったときの演奏、彼のギターが生み出すリズムが演奏全体を「これはスリム・ゲイラード」といった感じにするのが凄いです。やはりただものではない!


Slim Harpo & His King Bees ; Sting It Then! ; ACE CDCHD 658 (2007.10. 4)

1961年7月、アラバマでのライヴです。録音状態は余り良くないんですけど、自身のヒット曲に加え、ジミー・リードはもちろん、ジョン・リー・フッカーまで次々と演奏していきます。リトル・ウォルターの「エヴリバディ・ニーズ・サムバディ」では達者なハーモニカを聴かせますし、「ブギ・チレン」の解釈もいかにもルイジアナ的で面白いです。ラストの「リトル・ライザ・ジェイン」から「聖者が街にやってくる」の「童謡」からアンコールの「レイニン・イン・マイ・ハート」に行くあたりに、エンターティナーとしてのハーポの魅力が詰まっています。



Slim Harpo ; Tip On In ; EXCELLO/ACE CDCHD 606 (2009.11. 2)

1967〜70年録音。「ベイビー・スクラッチ・マイ・バック」の大ヒットを受けた形での作品集で、2部構成のタイトル曲は完全にその続編と言っていいでしょう。「マッチボックス・ブルース」ではまるでアルバート・キングのようなギタープレイを聴くことができますが、ギターは誰でしょうか。曲調は「ティ・ニ・ニー・ニ・ヌ」等のようにどんどんファンキーになっていきます。「フォルソム・プリズン・ブルース」あたりからはファジーなギターも入るようになり、いよいよ時代が進んで来たのが分かります。極めつけは「アイヴ・ゴット・マイ・フィンガー・オン・ユア・トリガー」や「ダイナマイト」で、これはもうファンキー・ブルース・クラシックスと呼んでいいでしょう。格好いいです。




Slim Richey's Dream Band ; Sweet Georgia Brown ; BUFFALO BUF-126 (2005. 9.27)

2000年に結成されたバンドの4枚の自主制作盤から、ジャズのスタンダードを集めたコンピで、ボーナスに70年代の古い曲も収録されてます。カントリーとかブルーグラスのコーナーにあったんで、もっとカントリーテイストが強いかなと思ったんですが、いや、このギターはジャズギターそのものですね。でも音を甘くせず、しゃきっとしたアコースティックギターのテイストを、あるいはエレキも使ってますけど、これもロカビリーに通じるような「鳴る」ギターなんで、いわゆるまろやかなジャズギターとは肌合いが違い、これが面白いんです。「ルート66」から「バードランドの子守歌」まで、好きなタイプの曲が並んでるってのもいいなぁ。ただ、ギターに比べ各女性ヴォーカルの歌の味がついていけてないのがちょっと惜しいか。ボーナスの曲では、無理やりジャズギターとバンジョーが絡んでるようなのもあったけど、新しい方の録音に魅力を感じました。



Smilin' Bobby & Hidden Carms ; Big Legged Woman ; WOLF 120.821 CD (2009.12.23)

2006年録音。WOLFはオーストリアのレーベルなのに、シカゴのこういったローカルなブルースマンを発掘するのが得意です。当たり外れもあるんですが、これはあたりの部類に入ると思います。スマイリンはアーカンソーはヘレナの出身で、若い頃からシカゴのウエストサイドで腕を磨いたんだそうです。曲はブルースの有名曲が主ですが、スローの「コールド・コールド・フィーリング」を聴くと叩き上げてきた人だなってのがよく分かります。得意なのはおそらくタイトル曲や「リトル・バイ・リトル」「ユー・アーザ・ワン」のようなちょっとファンキーなタッチのもののようで、ギターも歌も派手さはないですが上手くこなしています。決定的な個性はないですが、まだまだこんな人が出てくるんですね。




Smilin' Myron ; What About The People ; SMILIN' MYRON no number Click Here!

Smoky Greenwell ; Blow-Out ; GREENWELL GR-0032 (2006. 1.19)

1998年リリース。これは格好いいインストアルバムです。スモーキーのアンプリファイド・ハープはJ.J.ミルトゥのような技巧的な感じはなく、タイトル通り真っすぐ吹き抜いたって感じで気持ちいいです。でもよく聴くとテクニックは相当なもの。それを感じさせないフレージングが魅力ですね。「ウォーターメロン・マン」などスライドギターも入れてイカしたアレンジです。ジャジーな「ウェイク・アップ・コール」の軽めな吹き方も味わいがありますし、「ルーティン&トゥーティン」などはソウルジャズの雰囲気があって相当ファンキー。ラストに10分を超えるスローブルースを配するあたり、やはり自分のフレージングに自信があるからだと思いますが、期待に十分応える出来栄えです。



Smoky Greenwell ; Premium Smoke ; GREENWELL GR-0042 (2006. 1.23)

2001年リリース。いきなりZZトップを意識したというハードなブギを決めたかと思うと、キング・カーティスの「ソウル・セレナーデ」と、結構多彩な曲を聴かせます。ラグっぽい曲、ジャジーな曲と、クロマチックや複音ハーモニカも使いながら演奏してますけど、この人は凄いテクニックをさりげなく出すんですよね。「俺は上手いんだ」という感じはないんですけど、実はめちゃめちゃ上手いんですよ。またフレーズが明るめなのは、やはりニューオーリンズをベースにしているからでしょうか。例によってラストにスローの長尺ものを持ってきています。この人気に入りました。



Smoky Greenwell ; Smokin' Classics ; GREENWELL GR-0062 (2005.10.29)

2005年リリース。このアルバムはハーモニカのインストゥルメンタル集で、タイトル通り名曲の数々をプレイしているんですが、高度なテクニックを駆使するのではなく、実に見事にハーモニカを歌わせています。キャンド・ヒートの「オン・ザ・ロード・アゲイン」では自らも歌い、他にもヴォーカルを交えた曲もありますが、あくまで主役はハーモニカ。「スモーキー」の名の通り、少し燻んだようなトーンのアンプリファイド・ハーモニカで、ゆったりとしたフレーズでバラードからファンクまで演奏していきます。これが下手な歌手の歌よりよっぽど歌心があって、心地良いんです。特に中盤の「ブルース・イン・ザ・ナイト」「ビリー・ジョーの歌」「オールド・マン・リヴァー」のゆったり目3連発は効きますね。「イッツ・ユア・シング」当たりのリズム処理はいかにもニューオーリンズで、この土地の音楽の豊かさを改めて感じることができました。



Smoky Greenwell & The Blues Gnus ; Between Iraq And A Hard Place ; SOUTHLAND SCD-41 (2008. 7.17)

2008年リリース。スモーキーはニューオーリンズの白人ハーモニカ奏者で、ジャケットはおそらくカトリーナの被害を受けた家屋の前での写真です。前半はオリジナルやインストを交えた選曲、タイトル曲はジミー・リード・スタイルで、アメリカの抱える問題(多分ハード・プレイスというのはニューオーリンズのことでしょうね)を歌っています。後半はリトル・ウォルターの曲もセレクト、またエッタ・ジェイムズの「テル・ママ」はオリジナルそっくりの演奏をバックにマージー・ペレスが歌います。彼女はドン・ニックスの「ゴーイング・ダウン」も歌いますが、ちょっと力不足かなぁ。アルバムとしてはちょっと散漫な印象を受けました。




Smokey Johnson ; It Ain't My Fault ; NIGHT TRAIN NTI CD 7104 (2001. 3.28)

1960年代録音。例によってNIGHT TRAINなので、詳しいクレジットは不明です。ニューオーリンズを代表するドラマーのコンピです。NOLAというレーベルから出たタイトル曲はどうやらローカル・ヒットしたようで、同様の両面インスト曲が中心です。スモーキーはディヴ・バーソロミューのバンドやアール・キング&プロフェッサ・ロングヘアの「ビッグ・チーフ」のファットバックなどラマーとして有名ですが、ここで聴かれる作品も、ラフな印象はありますが、とんでもないドラミングを聴くことができます。ある意味ミーターズの原型ともいえるような曲などでも、ジガブーよりはるかに線の太いドラミングで圧倒されます。その分バンドとしてのまとまりには欠けますが。



Smokey Smothers ; Sings The Backporch Blues ; FEDERAL/OFFICIAL 779 (2002. 8. 1)

1960〜62年の録音。スモーキー・スマザーズはシカゴの中堅ブルースマンで、このFEDERALのものもコンピで何曲か聴いたことがあるんですが、こうしてまとめて聴くと、実にジミー・リードしています。ゆるさとかビート感覚は影響がもろで、一瞬聴き間違えるくらいです。やはりこれがこの時代のシカゴブルースのひとつのトレンドだったのでしょうか。でもアンサンブルは良質で、かなり気持ちいいです。



Smokey Wilson ; Blowin' Smoke ; BIG TOWN/P-VINE PCD-3022 (2007. 8.17)

1977年リリースのアルバムのCD化です。数年前にバーボンかタバコか忘れましたが、何かの宣伝でテレヴィにその姿が写っていたスモーキーの、ファンキーなアルバムです。このMODERN〜KENTの流れを汲むBIG TOWNはローウェル・フルソンのファンキーなアルバムも出しているように、いわゆるファンキー・ブルース路線を推し進めていて、このどこかいなたいスモーキーも、そのプロデュースにしっかり乗ったわけです。これがなかなかはまっています。自身のそれこそシンプルなスライドギターは脇役で、軽めのダミ声に絡みつくようなギターはリック・ロテンピオ。ややロックがかってますけど、それがファンキーなサウンドに上手くマッチしています。こういうのやっぱり好きです。



Smokey Wilson ; Round An Apple - The BIG TOWN Recordings 1977-1978 ; ACE CDCHD 1123 (2006. 9.28)

70年代後半に西海岸のBIG TOWNから出された2枚のアルバムからのセレクトに5曲の未発表を加えたアルバムです。スモーキーはB.B.キング、ハウリン・ウルフからジミー・リード、果てはエルモア・ジェイムズといったビッグネイムに影響を受けていて、曲ごとにカラーの違うスタイルになるのが如何にもローカルなんですが、そんな中にフルソンの「トランプ」から思いっ切り影響を受けた「ロウ・ライダー」や、いかしたエイトビートの「アイム・ゴナ・リーヴ・ユー・ベイビー」あたりに彼の魅力を感じます。セッションの中にはかなりロックっぽい音も入っていますが、ハーモニカのロッド・ピアッツァ周辺のメンバーでしょうか。LP時代に買い逃していたの面白かったです。



Smokey Wilson ; Push ; P-VINE PCD-5491 (2000. 2. 8)

1977〜78年、L.A.録音。新譜購入。トータルなアルバムとして作られたものではないようで、曲によって趣が違ってるけど、けっこうファンキー。オート・ワウ?を使ったりする一方、エルモア系のスライドも聴けて、おもしろいけど、インパクトはあまりないなぁ。後味が軽いって言ったらいいかな?


Smokey Wilson ; Smokeystack Lightnin' ; VIVID SOUND VSCD-031 (2004. 8.21)

1992年リリース。タバコの宣伝でもおなじみになったスモーキーが、日本で録音したアルバムです。バックミュージシャンは内田勘太郎との活動で知られる金城浩樹や、平井堅との活動で知られる中野雅仁など、当時20代の若手ミュージシャンが中心で、非常にファンキーな仕上がりになっています。スモーキーは西海岸で活動しているんですが、曲はシカゴ系の曲が割合多く、ハウリン・ウルフを意識したようなヴォーカルと、結構アグレッシヴなギターを聴かせます。でもビッグ・ムースの「コール・マイ・ジョブ」を自作にクレジットしちゃうのはちゃっかりですが。日本録音ながらいわゆるブルースサークルの人でなく、ファンクネスを感じさせるメンバーがサポートしたのは吉と出ていると思います。



Smokey Wilson ; Smoke N' Fire ; BLULSEYE BLUES CD BB 9534 (2001.11.16)

1993年リリース。中古で購入。曲によってはラリー・ディヴィスやジミー・マクラックリンも参加してます。いやいやこの人のギターはいつ聴いても脂ぎっていてじっとりした感じですね。じゅわっと歪んだ音色もなんですが、うねうねと続くフレージングが強烈です。体調がいいときに聴くとはまりそうです。声もややしゃがれ声で、時折アルバート・キングににた「ホゥ〜」というシャウト?が出てきますが、これも体温を上昇させます。曲はオリジナル中心で、ファンキーな曲が気に入りました。あとハウリン・ウルフの曲を2曲やってますが、「キリン・フロア」なんてかなりアレンジされていて、一瞬原曲が分かりませんでした。



Smokey Wilson & The Andy T Band ; Ready To Roll ; MARBLE 1001 (2004.10. 3)

2003年リリース。アンディ・Tのサイトから直で買いました。注文してひと月位来なかったんでちょっと諦めモードでしたが、届いた音が良かったんで喜びもひとしおです。ロサンゼルス録音で、適度にファンキーなバックに合せ、スモーキーはちょっとアルバート・キング風のフレーズも織り交ぜながら、切れのいいギターと持ち前の渋い歌声を聴かせます。特にギターのフレージングは、ど派手なスクウィーズというより、隙間を活かしながらツボを押さえた展開で、かなり僕のお気に入りです。アンディも「マイ・ホーム・イズ・ア・プリズン」でヴォーカルをとっていて、こちらは素直な歌い方が好感がもてました。漆黒のファンクネスというわけにはいきませんが、タイトにこなれた演奏をバックに、スモーキーが伸び伸びやっているのが伝わってくる好盤です。現在闘病中のスモーキー、復活を祈ります。



Smokin' Joe Kubek & Bnois King ; My Heart's In Texas ; BLIND PIG BPCD 5102 (2006. 6.22)

2005年12月、フォート・ワースでのライヴです。スモーキン・ジョーはスティーヴィー・レイ・ヴォーンに通じるややトウァンギーなサウンドのストラト弾きで、ソロになるとかなりさすティーンの効いた大きなフレーズを弾きます。ロック畑からブルースに行った人という感じですけど、けれん味のないプレイはなかなか好感がもてます。ビノイスは黒人で、割合ストレートな張りのある声のヴォーカルは、スモーキンのギターと相性がいいですね。また自身もギターを弾きますが、大きなフレーズで時折ゴツゴツした感じのソロがテキサスらしいかな。ロッキン・ナンバーもありましたが、「ザッツ・オールライト」が一番ぐっと来ました。



Smoky Babe ; The Blues Of Smoky Babe - Hottest Brand Goin' ; PRESTIGE/BLUESVILLE OBCCD-595-2 (2004.10. 2)

1961年ハリー・オスターがバートン・ルージュで収録し、彼のライナーがついています。いわゆる「再発見もの」なんでしょうが、今聴くとこれはこれでなかなか勢いのある演奏です。スモーキー・ベイブはデルタブルースの影響下にあり、1曲目の「ナウ・ユア・マン・ダーン・ゴーン」などもろにビッグ・ジョー・ウィリアムズの「プリーズ・ドント・ゴー」です。ジャケットを見る限り12弦ギターを奏でていますが。ザックザックとリズムを刻みながら、張りのある声で歌うブルースは、ぐいぐい弾き込む力を持っています。いい感じにキーをずらしたクライド・コーシーのハーモニカが雰囲気を出すトレイン・ピース「ロコモーティヴ・ブルース」のドライヴ感はかなりのもの。「再発見もの」は苦手だったんですが、食わず嫌いはいけませんね。気に入りました。



Snooks Eaglin ; Country Boy Down In New Orleans ; ARHOOLIE CD-348 Click Here!

Snooks Eaglin ; New Orleans Street Singer ; STORYVILLE STCD 8023 Click Here!

Snooks Eaglin ; That's All Right ; BLUESVILLE/P-VINE PCD-1046 Click Here!

Snooks Eaglin ; The Complete Imperial Recordings ; CAPITOL CDP 7243 8 33918 2 0 Click Here!

Snooks Eaglin ; The Regacy Of The Blues Vol.4 ; SONET/KING KICP 2207 Click Here!

Snooks Eaglin ; Down Yonder ; GNP/CRESENDO GNPS 10023 [LP] Click Here!

Snooks Eaglin ; Baby, You Can Get Your Gun! ; BLACK TOP/P-VINE PCD-3774 Click Here!

Snooks Eaglin ; Out Of Nowhere ; BLACK TOP/P-VINE PCD-3775 Click Here!

Snooks Eaglin ; Teasin' You ; BLACK TOP/P-VINE PCD-3776 Click Here!

Snooks Eaglin ; Soul's Edge ; BLACK TOP/P-VINE PCD-3777 Click Here!

Snooks Eaglin ; Soul Train From Nawlins ; P-VINE PCD-4789 Click Here!

Snooks Eaglin ; Live In Japan ; BLACK TOP CD BT-1137 Click Here!

Snooks Eaglin ; The Way It Is ; MONEY PIT MPR-1111(2002. 6.14)

2000年ニューオーリンズはおなじみウルトラソニック・スタジオで録音され、2002年リリースされたスヌークス待望の新譜です。プロデューサーは今は無きBLACK TOPのハモンド・スコットで、バックにはこれも先日新譜を紹介したばかりのジョン・クリアリーとアブソリュート・モンスター・ジェントルメンも参加。敦子さんがラップに包んで新鮮なのを届けてくださいました。ジョン・クリアリーのファンクネス溢れるバンドに全く負けることなく快調なファンクでスタート。「ブギ・ランブラー」を軽く決めるなどブルース系の曲でもいつものスヌークスです。途中アコースティックで愉快な語りの入るカリプソを挟んだり、ジャジーな曲を入れたり、アール・キングの「マザーズ・ラヴ」を軽快にやったかと思うとサックスがメインのインストが出たり、玉手箱みたい。ジョー・サイモンの「チョーキン・カインド」もブルック・ベントンの「ルッキング・バック」も完全にスヌークス節。「人間ジュークボックス」は健在です。かれこれ7年待たされた甲斐がありました! Click Here!



Snooky Pryor ; Too Cool To Move ; ANTONE'S/P-VINE PCD-1819 (2003. 6.29)

1991年リリース。中古で購入しましたが、これは掘り出し物です。まず冒頭のミディアム・ブギがカッコ良い!高音域のハープをトレモロで思いっ切りブロウしながら、掛け声で盛り上げていく得意技が、最初から炸裂しています。デューク・ロビラートなどの手堅いバックも安心して聴けます。この他「ブギ・ツイスト」なんて代表曲も再演してますが、一番インパクトのあったのが「チーティン&ライン」、なにしろアイク・ターナーかと思うような、えぐいアーミングを交えたルーサー・タッカーのギターがスヌーキーに絡みつくんです。このアグレッシヴなパワーをきちんと捉えているのはANTONE'Sならではかもしれません。好盤。



Snooky Pryor ; Shake My Hand ; BLIND PIG BPCD 5050 (2006.11.12)

1999年リリース。これもワゴンセールものです。いきなりフェイ・アダムズの名曲「シェイク・マイ・ハンド」を吹き語りでやっちゃうあたりに気合いを感じます。ハーモニカの音色は多彩で深みがあり、ヴォーカルもピーク時の迫力はなくなっていますが、ギタリストをあおるときの「ブロウ!ブロウ!ブロウ!」という掛け声は往年の勢いを感じさせました。ハンク・バラード&ミッドナイターズの「ワーク・ウィズ・ミー・アニー」が完全にシカゴブルースに化けちゃってるのがすごいなぁ。ベースにはボブ・ストロージャーが起用されていて落ち着いたプレイを聴かせます。「ヘッデド・サウス」というオリジナルのマイナーブルースではどこかサニーボーイ・ウィリアムソン(ライス・ミラーの方ね)に通じるヴィブラートの効いたヴォーカルと、シンプルだけど坪を押さえたサードポジションのハーモニカがマッチしていてぐっと引き込まれました。



Snooky Pryor ; And His Mississippi Wrecking Crew ; ELECTRO-FI 3373 (2002.11.21)

2001年秋に録音された新譜です。スヌーキーがパイントップ・パーキンス、メル・ブラウン、ボブ・ストロージャー、ビッグアイズ・スミスら手練のミュージシャンを伴って、実に熱い演奏を聴かせます。ハーモニカの一音一音が深く、少しサニーボーイIIを思わせるそのヴォーカルの存在感も抜群です。ミディアムからスローのナンバーが特に深みがあり、セッション的な味わいがありますが、各プレイヤーの絡み合いにゾクッとする瞬間もあります。両サニーボーイの曲を仲良く1曲ずつと、「コリーナ」以外は自分の曲を取り上げるなど、意欲も充分伝わってきます。途中パイントップがメンフィス・スリムの「グラインダー・マン・ブルース」を唸るのが、あんた何歳になったのと思わず思ってしまいました。3曲で参加しているジェフ・ヒーリーも、野太いサウンドでしっかり溶け込んでいました。これは相当気に入りましたね。ライヴなサウンドも魅力をアップさせていると思います。大当たりの1枚。



Solomon Burke ; This Is It ; SHOUT! 46 (2008. 9. 3)

1956〜57年にAPOLLOに残された、若かりし日のバークの録音集です。声はまだ若さがあり、歌の技巧には青さも残りますが、力強く朗々とした声はやはりこの人が只者でないことを感じさせます。曲調はロッキン・ブルースありバラードありで、どちらもかなりいいんですが、「トゥー・ティー」やタイトル曲のようなゆったりと甘めのバラードが真骨頂ですね。ポップさを感じさせる「マイ・ハート・イズ・ア・チャペル」などでの低音から高音まで伸びやかに歌いきるスタイルは、後のATLANTIC時代を彷彿させます。




Solomon Burke ; Proud Mary ; BELL/REV-ORA CR REV 187 (2007. 3. 1)

1969年にマッスル・ショールズで録音されたアルバムのストレート・リイシューです。リヴァーボートを描いたジャケットは当時のものでしょうか。ロジャー・ホウキンス、エディ・ヒントンらをバックに従え、ロックやカントリーのテイストを加えたサウンドはゴスペルの色合いが強いながらも、以前からポップソングもこなしてきたバークにはよく合っていると思います。「ハウ・ビッグ・ア・フール」のポップでロックなサウンドは非黒人にも受ける要素がたっぷりだと思いますし、「ラッキー・オールド・サン」のソウルフルなアレンジ、「プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラヴ」の落ち着いた歌と、ATLANTIC時代とはまた違ったバークの魅力を上手く引き出した好盤だと思います。



Solomom Burke ; Soul Alive! ; ROUNDER CD 11521 (2003.11.19)

1981年ワシントンDC録音。いやいやこのライヴは凄いです。メドレーの連発でぐいぐい押していくんですが、往年の自身の名曲にソウルのスタンダードやゴスペルを絡めてあり、途中モノローグで繋ぎながらのステージ進行は、どんどん高揚感が高まっていきます。ATLANTICのスタジオ盤などよりもずっとラフでハイテンションなのは、サム・クックのハーレム・スクエアでのライヴを聴いたときと共通のものを感じました。でもこの人は特にスローの曲のあおりが見事です。ソウルのライヴ盤としては出色の出来だと思いました。



Solomon Burke ; Soul Of The Blues ; BLACK TOP CD BT-1095 (2007. 4.13)

1993年リリース。バークはとにかくとても歌のうまい人ですが、BLACK TOPはブルース寄りの曲を題材にしてその魅力を引き出しています。余裕綽々の「マイ・ベイブ」から始まり、ゆったり目の「グッド・ロッキン・トゥナイト」、ムーディな「キャンディ」、落ち着いた「プレッジング・マイ・ラヴ」と、有名曲のカヴァーは見事にこなしていますし、「サファリン・マインド」の表情豊かな歌、語りを交えた「レター・フロム・マイ・ダーリン」など充実した歌声が響きます。また支えるバンドの安定感がすごいんですが、それもそのはず、ドラムはハーマン・アーネスト、ベースはジョージ・ポーター・ジュニアです。そこにクラレンス・ホリモンのギターが絡んでるんですから言うことなし。BLACK TOPらしいすばらしい仕事だと思います。



Solomon Burke ; Don't Give Up On Me ; FAT POSSUM 80358-2 (2002.10.18)

2002年リリース。大ヴェテランの新譜ですが、なんとFAT POSSUMからってのがまず驚きでした。しかも曲提供者がヴァン・モリソン、ブライアン・ウィルソン、エルヴィス・コステロ、トム・ウェイツ、ニック・ロウ、そして何とボブ・ディラン!何だかレーベルのしたたかな商魂を感じてしまって、一瞬「どんなんだろう?」って思いました。でもさすが現地で活躍するタケゾーさんご推薦だけあります。意図的にトーンを抑えてもっこりしたサウンドをバックに、ソロモンのバリトン・ヴォイスだけをくっきりと浮き立たせるプロデュースも心憎いんですが、そんな必要も感じないくらいの、円熟と艶とハートとソウルを感じるソロモンの歌に痺れました。全体にゆったりした歌を、かみしめるように表情豊かに歌い紡いでいきます。曲提供者のソロモンに対するリスペクトに見事に応えた傑作ですね。まさに手入れの行き届いたいぶし銀とでもいうべき作品です。



Solomon Burke ; Make Do With What You Got ; SHOUT DK 34357 (2005. 4. 9)

2005年リリースの新譜です。いきなりカウントからドシャンとしたロックっぽいサウンドが飛び出してきたのにはちょっと戸惑いましたが、バークのタフな声がちっとも負けていないので一安心です。レイ・パーカー・ジュニアとレジー・ヤングのギターにジェイムズ・ギャドソンのドラムと、バックのサウンドなど前作よりドンシャリ感がさらに強まっていて、歌もそれに呼応している感じがしますが、やっぱりバラード系の曲の味わいは素晴らしいものがあります。でももう少し穏やかなバックでじっとりと歌う曲もあって良かったかな。ザ・バンドの「イット・メイクス・ノー・ディファレンス」なんて結構はまってましたけどね。またミディアムのタイトル曲はこのリズム隊の良さがしっかり出たファンキーなナンバーに仕上がっています。バークの気合いをたっぷりと感じる1枚です。



Solomon Burke ; Nashville ; SHOUT! 826663-10179 (2006.12.30)

2006年リリース。タイトル通りソロモン・バークがカントリー・アルバムを出したってところなんですけど、冒頭のバディ・ミラーのギターとウッドベースをバックにした弾き語り、独特の箱鳴りのするサウンドは商業カラーたっぷりのカントリーサウンドとは一線を画します。どこかロック的、ブルーグラス的な味わいを残したサウンドに、バークの歌は見事にマッチします。バークはソウル歌手として名を成しているわけですが、僕が最初に聴いた「The Best Of...」に「知りたくないの」なんてポップチューンが入っていましたから、彼に対してはあんまりどす黒いイメージを持ってなかったんです。だからこのアルバムを聴いても違和感は全くなし。数年前に出たFAT POSSUMのアルバムなどと比べても、バーク自身の味わいは大きく変わったとは思いません。ゲストにエミルー・ハリス、ドリー・バートンなどを迎え、ワルツやバラードをしっとりと歌う声が実に馴染んでいること!僕は大甘なカントリーは全く駄目なんですが、これならいくらでもいけますね。改めてバークの歌の味わいに感動を覚えました。



Solomon Burke ; Like A Fire ; P-VINE PCD-93126 (2008. 7.12)

2008年リリース。最初に聴いたとき、思わず「やるなぁ」って唸ってしまいました。バークさんのことだから、もっとぐっとソウルフルな演奏をバックにするかと思いきや、スティーヴ・ジョーダンはアコースティックなサウンドを全面に出しました。それもケブ・モとかベン・ハーパーとかの雰囲気に近いものを。何しろケブもベンも曲を提供し、演奏にも参加してるんです。それにクラプトンが2曲提供していますが、これも実にアンプラグドな曲で、特に「サンキュー」はバンジョーも入ってカントリー・テイスト溢れるもの。もちろんバークは若い頃からカントリー・ナンバーをレパートリーにしてますからお手のものです。この他ジョーダン自身も曲を提供していますが、彼の跳ねるドラムがアコースティック・サウンドに見事にマッチするんですよね。ダニー・コーチマーの名人芸的ギターも控え目ながら味わいを増しています。かくして実に現代的なアルバムになりました。もちろんどんなバックでもバークのソウル溢れる歌は健在。むしろこうした音作りの中に置くと、彼の歌の良さがひときわ引き立つように思います。そしてラストのジャジーなスタンダード。「やられたぁ」って感じ。快作ですよ、これは!



2010. 8. 5 Solomon Burke ; Nothing's Impossible ; E1 E1E-CD-2086 (2010. 8. 5)

2010年リリース。僕は忙しくて見逃してしまったんですが、先頃来日して素晴らしいライヴを展開した大王ソロモン・バークの新譜です。プロデューサはメンフィスの大御所ウィリー・ミッチェル。でも彼は1月に心臓マヒで亡くなっていますから、これが遺作ってことになるのでしょうか。とにかく素晴らしい出来栄えです。ソウル・サウンドを愛し続けたウィリーが、希代の歌唱力を持つソロモンと組んだわけですから、最高のサウンドでサポートしています。特にスローナンバーの味わい深さは、ソロモンの丁寧な歌い回しもあって心を揺さぶります。またミディアムの、例えばタイトル曲では、往年のHIサウンドを彷彿させる、心地良く跳ねたリズムに柔らかくストリングが絡み、ホーンがアクセントを加えるといった最高のフィーリングで、あの時代の大好きな僕は涙が出てきました。ある種最強のコラボレイトといってもいいのではないでしょうか。




Son Seals ; Living In The Danger Zone ; ALLIGATOR ALCD 4798 (2002. 2.26)

1991年リリース。中古で購入。この人、明らかにアルバート・キングの影響下にあると思うんですが、ほとんどチョーキングに頼らないギターのフレージングは独特です。ファンキーな曲を交えながら渋いヴォーカルを聴かせていくスタイルは魅力があるんですが、ギターのフレージング(これは趣味が分かれるでしょう)以外に強い印象は残りませんでした。ラストの長尺の自伝的ナンバーが優しさに溢れていて結構良かったかな。



Son Seals ; Live - Spontaneous Combustion ; ALLIGATOR ALCD 4846 (2002. 2. 6)

1996年リリースのライヴ盤です。バディ・ガイズ・レジェンズでの演奏のようで、大きな会場とは違った空間で、観客との距離感の近い雰囲気を感じました。サンのタフな声と、チョーキングをほとんど使わない独特のギタープレイが全編溢れています。スローありファンクありと、典型的な今どきのライヴっていう感じで、安心して聴けるんですが、その分スリルを感じませんでした。何かひとつ物足りなさを感じるんです。



Sonny & Cher ; Collection ; WEA WPCR-10302 (2006. 2.20)

1965〜81年のベスト集です。シェールのソロ作品、ソニー・ボノのソロ作品も収録。冒頭から「悲しきジプシー」「悲しき恋占い」とシェールのヒットが並び、これに「ハーフ・ブリード」まで並べてみると、シェールという歌手をどう売ろうとしたのかがよく分かります。歌の主題がマイノリティーで、メロディはマイナー系の少しヨーロピアンテイストのあるものが多く、シェールの大仰さを感じさせる声が実にマッチしてます。一方ソニー・ボノとの作品では「バン・バン」が入っていないのが残念ですが、ソニー、実にボブ・ディランを意識したような歌い方です。こうした音楽がどんどん流行った70年代初めって、やっぱり面白いです。



Sonny Boy Williamson ; Sonny Boy Williamson Sings Down And Out Blues ; CESS/MCA/UNIVERSAL UICY-3207 (2009. 1.12)

1955〜57年録音。乞食のジャケットが有名で、サニーボーイの代表的な作品が集められたアルバムです。まずはトップの「ドント・スタート・ミー・トゥー・トーキン」、サニーボーイ最大のヒット曲で、バックのマディ・ウォーターズのギターも印象的です。「99」「レット・ミー・エクスプレイン」のようなノリのいい曲もいいんですが、このアルバムの中の最高傑作は「クロス・マイ・ハート」でしょう。ロックウッドの職人技ギターに支えられ、むせぶようなハーモニカとヴォーカルが絡み合うスローブルース。こんな演奏はサニーボーイ以外にはできません。




Sonny Landreth ; The Crazy Cajun Recordings ; EDSEL/CRAZY CAJUN EDCD 585 (2000. 3. 7)

1972年と77年の録音。新譜で購入。いやぁ、凄いギターですな!スライドはテクニックはもちろん、リゾネイターの音も抜群です。あれってやってみるとなかなかいい音でないんですよ。曲はアメリカン・ミュージックの王道といった感じで、サニーの実直そうな歌声と明るいサウンドで楽しめました。天気のいい日のドライヴのお供かな。深みにはまりそうで怖いですね。


Sonny Landreth ; Down In Louisiana ; SONY/ACADIA ACA 8009 (2001. 7.30)

1985年の盤の再発です。サニー・ランドレストいえばスライドの名手として有名で、トリッキーなスライドを期待したんですが、意外なほど少ないのには驚きました。でもちっとも期待外れではなく、指で押弦するフレーズも非凡で、この人のギタリストとしてのセンスのよさを再認識しました。ブルースを弾いても型に捕らわれず自由なフレージングです。曲はブルースフォーマットが多い感じですが、トップの「アイ・アイ・アイ」や名曲「コンゴ・スクエア」などはセカンドラインを意識したようなパーカッシヴなリズムで、後者をネヴィル・ブラザーズが取り上げたのも頷けます。全編で聴くことができるメル・メルトンのハーモニカは、特に複音の楽器を使ったとき、まるでアコーディオンのような響きで、タイトル通りルイジアナの伝統を強く感じることができます。



Sonny Landreth ; South Of I-10 ; ZOO 61422-31070-2 (2000. 4.17)

1995年ごろリリース。前から聴いてみたかったんですが、ようやく購入。これ、好きです。もっと生音に近いのかと思っていましたが、ZZ-トップの初期作やローウェル・ジョージに通じるファットなスライドが全編に溢れています。一方歌はジェームズ・テイラーのような瑞々しい声で、上品で知性的な響きを感じました。「コンゴ・スクェア」はネヴィル・ブラザーズのライヴで聴いて、大変気に入っていた曲ですが、この人の曲です。録音の順序(ネヴィルズが先)からすると、曲を提供したのかもしれません。また、「ケイジャン・ワルツ」なんていうそのものの曲もあります。面白かったのはJ.B.ルノアの「モージョ・ブギ」。シカゴ・クラシックのこの曲をアコースティックで明るくルイジアナ風に料理していますが、まったく違和感がありません。買って良かった。Sonnyまんにサニー・ランドレスについての詳しい情報がありますのでどうぞ。


Sonny Landreth ; Levee Town ; SUGAR HILL SUG-CD-3925 Click Here!

Sonny Landreth ; The Road We're On ; SUGAR HILL SUG-CD-3964 (2003. 1.27)

サニーの出来立てほやほやの新譜です。冒頭からアコギのスライドでブルージーなスタート。本人も「ブルースアルバム」と言っていたようで、前作の南西ルイジアナ密着音楽から、ぐっとブルースやロックに近いスタンスの作品です。エレキとアコギのコントラストをうまく使いながら御機嫌なスライドプレイの連続!でも歌のバックを支える意識はしっかりあり、自身の結構さわやかなヴォーカルを見事に引き立てています。ヘヴィーな「オール・アバウト・ユー」、まるでオルガンのようなスライドを聴かせる「ワールド・アウェイ」と息もつかせぬ展開です。ラブボードの入った「ゴーン・ペカン」は楽しげなダンスナンバーですが、「ジェミニ・ブルース」の方は結構ゴリッとしたブギでヴァリエーションも豊富。クールさを感じさせる「ザ・ロード・ウィア・オン」からアコースティックな「ジューク・ボックス・ママ」へと、前作の延長線上にあるジャケットなどのデザインと同様、よく練られたアルバムです。ギターに耳が行きがちですが、曲、サウンドなどトータルに楽しめる1枚。とりあえずことしの暫定1位ですね。



Sonny Landreth ; Grant Street ; SUGAR HILL SUG-CD-3994 (2005. 1.27)

2005年リリース。サニー待望のライヴ盤は、ディヴィッド・ランソンのベース、ケネス・ブレヴィンズのドラムのトリオで、サニーのギターの妙技を引き出す最高の形態です。サニーらしく周到に用意されたライヴ録音のようで、臨場感はもちろんあるんですが、彼の持ち味である緻密なプレイがしっかり捉えられています。でもお得意のインスト「ネイティヴ・ステプソン」の、あの厚みのあるスライドとタッピングから、ぐぐっと身を乗り出したくなるうねりが溢れていて、この1曲でアルバムの素晴らしさが伝わってきました。ブルース系の曲とケイジャンやザディコなどの味わいを取り入れた、サニーならではのルイジアナサウンドが程良くブレンドされ、あっと言う間の1時間でした。アンコールを要求する、CDの向こう側の人達と一緒に、思わずフットストンプしてしまいました。そしてセカンドラインなドラムに導かれ、僕の大好きな「コンゴ・スクエア」、スタジオ盤よりはるかにグルーヴィーな演奏が最高に気持ちいいです。サニーのスタジオでの緻密な作業が好きなんですが、これだけ熱いライヴは是非生で見たいですね。やはりこの3人での来日を切望します。



Sonny Landreth ; From The Reach ; LANDFALL LF-0001 (2008. 6.26)

2008年リリース。マーク・ノップラー、エリック・クラプトン、ロベン・フォードなどそうそうたるギタリストをゲストに招いた新譜は、でも決して軸のぶれることのないサニーのアルバムに仕上がりました。ゲストの味わいを上手く生かしながら、でも主役は俺だとばかり、スライドを響かせ、いつものややハイトーンの抜けのいいヴォーカルで歌います。ゲストたちもそうしたサニーと共演するのを楽しむような演奏で、出しゃばらず、主役を良く引き立てていると思います。この辺りに多くのミュージシャンから尊敬を集めるサニーの人柄が良く出ていると思いました。ギターバトルとして面白かったのは、エリック・ジョンスンとのインスト「ザ・ミルキー・ウェイ・ホーム」で、両者のスペイシーなギターが見事に絡んでいます。音楽的にはドクター・ジョンやスティーヴ・コンが加わった「ハウリン・ムーン」が好きです。毎回丁寧なアルバム作りを続けるサニー、目が離せませんね。



Sonny Parker ; The Complete 1948-1953 ; BLUE MOON BMCD 6003 (2001. 9. 4)

「トッシン&ターニン」という曲名は良く聞くんですが、これがオリジナルでしょうか。31才でこの世を去ってしまったシャウターの録音集で、ほとんど聴いたことがなかった人だけに、非常に新鮮なものを感じました。歌はワイノニー・ハリスの力強さとロイ・ブラウンの艶やかさを折衷したような感じで、20代での歌とは思えないほど完成されています。後半はライオネル・ハンプトン楽団のメイン・ヴォーカリストとしての録音で、ギターにはウェス・モンゴメリの名前も見えます。もっと注目されていい人だと思いました。



Sonny Rhodes & The Texas Twisters ; Just Blues ; EVIDENCE ECD 26060-2 (2002. 8.17)

1985年録音。当初は自主制作されたもののようですが、1995年にCD化再発されました。ローズはラップスティールの名手といった印象が強いのですが、このアルバムでは思いのほか押弦によるプレイが中心です。しかしこれがなかなかいいんです。ギター・スリムの代表曲「ザ・シングス・アイ・ユースト・トゥ・ドゥ」を取り上げていますが、オリジナルを上手く消化し、すっきりしたギターとヴォーカルなんですが、安易に物まねに走らなかった分、かえっていい感じ。しっかりオリジナルの良さも活きていますし。またエルモア・ジェィムズで有名な「イット・ハーツ・ミー・トゥー」はラップスティールでやっていますが、これもオリジナルの良さを活かしながら、ローズ節になっています。自作曲を含め、全体に西海岸特有のさっぱりしたブルースで、この手が好きな僕には面白かったです。



Sonny Rhodes ; Blue Diamond ; STONY PLAIN SPCD 1257

1999年リリース。ターバン姿でラップ・スティールを奏でるサニー・ローズ、ネット上で話題になっていたんで初めて聴きましたが、思ったよりずっと端整なギタープレイと、暖かみのあるヴォーカルで、すごく聴きやすいアルバムです。音作りもしっかりしていますし、何よりサニーの人柄がすごくにじみ出ている印象ですね。アップテンポの曲ではちょっとアルバート・コリンズを思わせるフレーズが登場したり、この人のギターの個性は他にないもので、存在感があります。ちょっとスリム・ハーポの「ベイビー・スクラッチ・マイ・バック」に似たファンキーな「ビサイド・マイセルフ」(途中でシャッフルにリズムチェンジ)というインストが気持ちいいです。「スリープウォーク」の向こうを張ったような「ブルース・ウォーク」も面白いし、追悼の意を込めたジョニー・コープランドの「ライフズ・レイボウ」も泣かせます。



Sonny Terry & Brownie McGhee ; Hometown Blues - The SITTIN' IN WITH / JAX Recordings ; MAINSTREAM/P-VINE PCD-93002
(2007.10.10)

1952年の録音を中心に、49年のものも加えた、SITTIN' IN WITH録音の決定盤です。早くからフォーク・サークルで活動したため、ブルース・ピュアリストから敬遠がちのブラウニーですが、この時代の録音はいろんな表情を見せて面白いです。確かにフォーク調の曲もありますが、こびた感じはなく、エレキを弾きピアノを入れた「ミート・ユー・イン・ザ・モーニング」など、ブラウニー以外ないといったスタイルが、この頃完全に完成されているのが分かります。さらに何と「チェリー・レッド」まで歌っていて、ジャンプ・ブルースとの垣根の低さも感じます。一方のサニー・テリー、その強烈なフーピン・ハーモニカが随所に入り、また歌も力強いです。お約束のトレイン・ピースもあるし。ラスト2曲はボブ・ギャディのバックでサニーが活躍するテイクで、R&B感覚がたまりません。



Sonny Terry & Brownie McGhee ; Sporting Life Blues ; JSP/P-VINE PCD-23892 (2007. 3.25)

1959年、フォークブームが始まった頃、渡英したこのふたりがスコットランドはグラスゴーのプライヴェート・パーティに招かれて演奏した時のライヴ録音です。ですから音質は決してよくありませんが、フォークブルースブームに乗って多作を重ねた頃のものより生々しく味わいを感じます。テリー、マギーそれぞれのソロを交えながら、コンビの演奏では息のあったところを聴かせます。少し酒でも入っているかのようなテリーの歌と巧みなスウィッチングのハーモニカは彼の真骨頂で、得意の狐狩りなどを披露しています。一方マギーは達者なピードモントスタイルのギターに、語りっぽさのある歌と、のちの大仰な感じとは違う自然体の演奏でこれもなかなかナイス。テリーのバックの職人芸も聴きどころです。うれしいリイシューですね。



Sonny Terry & Brownie McGhee ; Sun's Gonna Shine ; TOMATO TMT-2016 (2008. 5.12)

1960年5月、ロサンゼルスでの録音のリイシューです。他のアルバムでも聴いたことのある音なんですが、久々に聴くといいですね。特に大好きな「ウォーク・オン」はヴォーカルのチェイスの代わりにハーモニカが追っかけを入れています。ブラウニーの歌ものと、サニーのハーモニカものがほぼ半々といった感じですが、「ライト・オン・ザット・ショア」などはふたりのコーラスをメインに据えたドライヴ感のある曲です。いわゆるフォーク・ブームの中のアルバムですが、悪くないなと思いました。



Sonny Terry & Brownie McGhee ; But Not Together ; TOMATO TMT-2106 (2008. 5.14)

タイトル通り、1974年のサニー・テリーと、1975年のブラウニー・マギーのそれぞれのソロアルバムからの選曲です。共演は全くなし。ブラウニーの方は僕がブルースを本格的に聴き始めた頃に買った「Blues Is Truth」からの選曲で、マディとの共作「ブルース・ハッド・ア・ベイビー」等が収録されています。モダンなリズム隊がミスマッチかな。シュガー・ブルーも独特の存在感を出しています。サニーの方はピアノとギターをバックにした演奏で、トレイン・チューンなどもあり結構持ち味が良く出ています。ギターのボブ・マレンキーのプレイがどことなくブラウニーに似て聞こえるのがご愛敬。



Sonny Thompsaon ; Volume 1 - 1946-1948 ; BLUE MOON BMCD 6024 (2003. 2.14)

シカゴをベースにするピアニストで、後のKING時代にフレディ・キングを支えた男、サニー・トンプソンのSULTAN、MIRACLEへの初期録音集。最初のソロ2曲はブギウギですが、同時代のウエストコーストの、例えばエイモス・ミルバーンやセシル・ギャントのブギに比べ、いくぶんごつごつした感じです。「サニーズ・ブギ」にはクラシックの一節も登場したりして、教養を感じました。残りは自己のバンド、シャープス&フラッツの演奏で、小粋なジャイヴからジャジーなインストナンバーまでをこなしています。やっぱりかなりウエストコーストのシーン(ナット・キング・コールとかチャールズ・ブラウンとか)を意識しているように感じました。こんな中大ヒット「ロング・ゴーン」は燦然と光ります。ギターのリフが印象的で、「ハックルバック」やのちの「ホンキー・トンク」に通じる名曲。アルヴィン・ギャレットのギターも名演です。何曲かではエディ・シャンブリーのテナーも聴くことが出来、渋い仕事集って感じの嬉しいリイシューです。



Sonny Thompson ; Vol. 5 (1954〜1955) ; BLUE MOON 6058 (2008. 4.22)

ピアノストでKINGのサウンドの要が主にルーラ・リードと組んで録音した作品集です。冒頭4曲がゴスペルというのがちょっとびっくり。コーラス隊をつけて歌うルーラ、なかなか堂に入っています。続くジュニア・デンビーは思いっ切りチャールズ・ブラウンな歌い方で、サニーもそれを意識したようなピアノを弾きます。サニーのオーケストラ名義では両面にわたるインスト「コットン・ボール」に「キャット・オン・ザ・キーズ」「ビハインド・ザ・サン」など相変わらずセンスのいいところを聴かせています。ルーラも世俗的な歌のほうが伸び伸びと個性を出して歌っているように思います。時代に呼応してコーラスの入れ方などどんどんポップさを増していきます。



The Soul Rabels ; Urban Legend ; BURN BURNER MUSIC no number (2006. 5.31)

2006年リリース。このバンドはニューオーリンズのブラスバンドと言っていいんでしょうが、ぐっとヒップホップよりのセンスを感じます。カーク・ジョゼフのスーザホーンとか聴き慣れていると、ここで聴くことの出来る低音のホーンはかなり物足りないんですが、曲全体は結構跳ね回り、合いの手、掛け声はかなりモダンに思えます。リバースほど強烈な印象はないんですけど、若者には人気があるように思います。こうした文化的な融合と世代交代を感じさせるアーティストがどんどん出てくるのがニューオーリンズの凄いところですね。パーティをテーマにしたものが多く、まさに踊らせるためのブラスバンドだと思いました。



Soul Toronados ; The Complete Recordings ; JAZZMAN JMANCD 009 (2005. 4.26)

1969年デトロイト録音のスタジオ作全6曲にボーナスのライヴを加えたわずか20分余りのアルバムですが、そのB級ファンク度は最高です。オハイオ州はアクロン出身のヘラー兄弟(オルガンとドラム)にブーツ・スミスのギターが絡むサウンドは、ソウルジャズの影響も垣間見えるB-3サウンドに、JBからの影響がもろに出たファンクなんですけど、ギターの乾いた音はどこかレオ・ノセンテリにも通じますし、スライドなど持ち出してくるとなんともスカスカな感じで、その猥雑さがたまらない魅力になってます。ヴォーカルも入った音質最悪のライヴトラックは、でもその現場での熱さが全開で、アバンギャルドなギターソロも入ったこれはこれで貴重なもの。丁寧なライナーもついていて、この手の好きな人にはお薦めです。



Southern Comfort ; Sothern Comfort ; SUNBEAM SBRCD5014 (2006. 6. 7)

1969年リリース。ウォルター・ホートンのハーモニカをメインに据えてはいますが、実際はロンドンの学生だったマーティン・ストーンが、フェスティヴァルでイギリスにやってきたホートンに、バターフィールド・ブルースバンドのジェローム・アーノルド、オーティス・ラッシュのバンドのドラマーだったジェシー・ルイスを迎えて1968年に録音したアルバムです。ホートンは確かにお得意の「イージー」や「ニード・マイ・ベイビー」を演奏し、「ウォーキン・バイ・マイ・セルフ」などもやっているんですが、ギターはやっぱりロックサークルの感じを否めません。まああんまり弾きまくりでないんで好感はもてるんですが。でもこのバンド、歌はかなり御粗末ですね。ホートン自身の歌もあまり調子良さそうじゃないし。またラストナンバーはホートン抜きの、さほど魅力を感じないサイケデリック・ロックで、当時の雰囲気は伝わりますが、アルバムとしてはちょっと散漫な感じでした。



Spencer Bohren ; Carry The Word ; LAST CALL 3056152 (2007. 6. 7)

2000年リリース。これはボーレンのゴスペル・アルバムと言っていいと思います。「アイ・アム・ア・ピルグリム」「バウンド・フォー・グローリー」(=「ディス・トレイン」)「サムソン&デリラ」とトラッドなゴスペル三連発で「リヴァー・ヨルダン」「アメイジング・グレイス」と来れば、その心は神に向かってるんだなということが分かります。スライドギターはもちろん、バンジョーまで登場する多彩なサウンドに、落ち着いた女性コーラスが絡み、内省的な雰囲気がたっぷりです。この辺りの路線は現在のチューリンゲン録音に通じるものがあります。厳かな気持ちが伝わって来ました。



Spencer Bohren ; Dirt Roads ; ZEPHYR CD1442A (2003. 7.16)

2000年リリース。冒頭の「海原」のインスト、スライドによる浮遊感のある解釈からかなり引き込まれました。続くリロイ・カーの「ハウ・ロング・ブルース」も、原作をなぞるのではない大人のアレンジで、かなりのセンスの良さを感じます。アコースティックギターのサウンドの魅力をよく知ったプレイで、ミュートの効いたリズミカルなバッキングと時折混じるスライドプレイのコンビもなかなかのものです。「カウ・カウ・ブルース」に歌詞をつけた「ヤズー・ボトム・メスアラウンド」をオリジナルとしちゃうのはどうかと思いますが、洒落た演奏だから許しましょう。エレキを使用した曲もひなびた感じで好感がもてます。なかなかの好盤。



Spencer Bohren ; Solitaire ; VALVE #2082 (2003.12. 3)

2002年リリース。タイトル通りのひとりでやってるアルバムで、オリジナルのブルージーなアコースティック・ギターの曲にブルースのカヴァを交えた作品集ですが、変にわざとらしくない歌い回しと、達者なギターで素晴らしい作品になってます。スライドも効果的に使っていますし、スキップ・ジェイムズの「ハード・タイム・キリング・フロア」などはクリス・トーマス・キングのものより「寒さ」を感じる演奏でいいです。また、シャラシャラいう鳴り物だけでやるマルディグラ・インディアン・チャント「クモン・ダウン」もなかなかいい感じ。続くオリジナル「ウィッチ・ドクター」が、ちょっと不思議なエレキのスライドプレイが面白く、僕の一番のお気に入りです。



Spencer Bohren ; Southern Cross ; VALVE #3084 (2004. 5. 7)

2004年リリースの新譜です。2003年晩秋、ドイツはチューリンゲンのチューブ・テンプルでの録音で、独特のエコーはこのロケーションのせいでしょうか。前作に続きスペンサーの弾き語りといえますが、「ウェイク・ミー・シェイク・ミー」等でノット・ブラザーズの見事なゴスペルコーラスが彩りを添えています。とにかく冒頭の粘っこいエレキスライドから始まる「ピープル・ゲット・レディ」からぐうっと引き込まれ、前作よりさらに内省的なサウンドが耳をとらえます。ハンク・ウィリアムズ・ナンバーもどっしりゆったりしたアレンジで、これがかえって新鮮な感じに聞こえました。ギターのサウンドも歌も大切にしているスペンサーらしい素晴らしい作品。録音場所にこだわったのが大正解だと思います。



Spencer Bohren ; The Long Black Line ; VALVE #6086 (2006.10.25)

2006年リリース。前作に続いてゾーリンゲンのチューブ・テンプルでの録音です。この独特の残響感を生かした深いサウンドに乗って、カトリーナについて歌った「ロング・ブラック・ライン」が重々しく響きます。その深い悲しみは、あの悲劇を歌ったものの中でも出色の出来だと思いました。トミー・ジョンソンの「キャンド・ヒート」、ヘンリー・タウンゼントの「カイロ・ブルース」と渋い選曲もありますが、カヴァーの中では何といっても「ビリー・ジョーの歌」でしょう。スライドをたっぷり利かせた演奏で、何とも重苦しく、オリジナルの持つ蒸し暑さとはまた違った、虚無感のようなものを感じさせる歌は、彼が素晴らしい歌い手であることを改めて感じさせられました。前作や前々作はどこか透明感のある、色で例えれば「蒼い」サウンドだったのに対し、今作はやはり漆黒の闇の中にかすかに漏れ出す光のような印象で、故郷に対する深い悲しみを表してるのかななんて思ってしまいました。



Spencer Bohren ; Live At The Tube Temple ; VALVE #9087 (2009. 3. 6)

2007年、いつもレコーディングしているゾーリンゲンの寺院でのライヴです。ボーレンは相当ここの響きが気に入っているようで、彼のスライドとのマッチングも抜群ですね。曲はいつになくブルージーで、スライドだけでなく、フォーク調のブルースやラグタイムも披露しています。またエレキ・スライドも使い、独特の響きが場内に拡がる様子がよく分かります。パーカッシヴな「ダークネス」なんて格好いいですね。最近になく「動」なボーレンだと思います。




Spencer Bohren ; The Blues According To Hank Williams ; VALVE #2987 (2010.12. 1)

2010年リリース。タイトル通りハンク・ウィリアムズのカヴァー集になっています。歌もハンクを意識してかいつもに比べカントリー風になってます。マンドリンやスライドが入り、いつも通りとっても丁寧な音作りで、味わい深いものはあるんですが、いつになく後ろ向きな印象を受けるのは、ハンクの音楽から先を見る意識が見えてこないからでしょうか。ノスタルジーを大切にするのもいいとは思いますが、そこから新しい何かが見えるような音楽が僕は好きです。




Spencer Wiggins ; The GOLDWAX Years ; KENT CDKEND 262 (2006. 4.22)

1965〜69年の録音に未発表などを加えたものです。冒頭の未発表ヴァージョンの「ワンス・イン・ア・ホワイル」の第一声を聴いたところから電撃が走りました。張りのあるハイトーンの声で伸びやかに歌うバラード、どうしてこれが未発表だったのと耳を疑う出来です。アップナンバーでのタフさ具合、軽やかに歌ってもどこかディープなフィーリングが漂うその歌い回しは、さすがGOLDWAXと唸るばかりです。またバラードのゴスペルフィーリング溢れる歌は染みますねぇ。聴けば聴くほど味わいのある歌です。「アイ・ネヴァー・ラヴド・ア・ウーマン」はアリサの歌を凌ぐ出来栄え。なんで今までちゃんと聴いたことがなかったんだろう。



The Spiders ; Best Of The Spiders - I DIdn't Want To Do It ; GOLD DUST GD-CD 973 (2008.11.20)

1953〜56年ニューオーリンズ録音。チャック・カーボの在籍してタヴォーカル・グループで、バックはもちろんディヴ・バーソロミュー楽団。ですから演奏のノリはバッチリ。ヒット曲「アイ・ディドント・ウォント・ドゥー・イット」「ユーア・ザ・ワン」「21」「ウィッチクラフト」などをすべて網羅しています。ゆったりしたバラード系の曲もありますが、やはりジャンプナンバーに魅力がありますね。ポップな味付けがニューヨークやシカゴあたりのドゥー・ワップ・バンドとはまた違った味があります。




Spirit Of Memphis ; Happy In The Service Of The Lord ; ACROBAT ADDCD 3007 (2009.11.17)

1949〜54年にかけて主にKINGとPEACOCKに残された音源を集めたものです。このグループは7人編成で、いろんな人がリードを取って歌いますが、強烈なのはサイラス・スティールの轟き渡るバリトン・ヴォイスです。「ザ・ディ・イズ・パスト・アンド・ゴーン」などその代表例で、プリーチングと言ってもいいでしょう。ア・カペラのコーラスは緻密で、派手な動きはありませんが、どっしりとした低音に支えられ、時にテナーは伸びやかに、バリトンは厳かに歌います。PEACOCK時代になるとバックにバンド演奏を入れて、よりリズムを強調したものになっていきます。ベースもしっかり跳ねて「ヒーズ・ア・フレンド・オヴ・マイン」など心地良いノリです。多彩なスタイルをもつこのカルテット、聴き飽きませんね。




Spirit Of New Orleans ; Mahogany Hall Stomp ; SPIRIT OF NEW ORLEANS PRODUCTIONS SONOP 1650 (2009.12.17)

2009年リリース。多人種混合のジャズ系ブラスバンドで、トランペットはリロイ・ジョーンズ、ピアノは日本人のワタナベマリさんです。選曲は「セント・ルイス・ブルース」「セント・ジェイムズ病院」などニューオーリンズのスタンダードになったジャズ・ナンバーに、「ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ジー」「アメイジング・グレイス」など。曲によってはヴォーカルが入っています。「オン・ザ・サニーサイド・オヴ・ザ・ストリート」はピアノソロと手練のメンバーそれぞれを上手く引き立てたアルバム構成、ラストの「ザッツ・ア・プレンティ」で盛り上がりましょう!




The Spirits Of Ryhthm ; 1933-1945 ; CLASSICS 1028 (2008. 3.10)

まずは彼らを代表する「アイ・ガット・リズム」からスタート。テディ・バンのギターが冴え渡りますが、バンド名に偽りなしで、コーラスのリズム感が本当に凄いです。テディのギターをバックに見事なコーラスを乗せる曲が満載で、中には泥棒のテーまで始まる「ドクター・ワトソン&ヌsyター・ホームズ」なんて面白いタイトルの曲も。ジャイヴ感覚満載の「フロム・マンディ・オン」や「ハニーサックル・ローズ」など、エンターティナーとして一流の演奏を聴かせています。こういうの、生で見たら凄いんでしょうね。



Squeezebox Boogaloo ; Take You Everywhere ; AWUEEZEBOX BOOGALOO no number (2004. 1.24)

1999年からオーストラリアはシドニーで活動しているザディコバンドのアルバムです。リーダーのジェフ・トフラーがボストン留学中にジノ・デラフォースを見て感激し、早速ルイジアナからボタンアコを取り寄せ、帰国後メンバーを集めて始めたとのことですが、リズム隊やギターがそれほどどっぷりザディコに使っていないようで、結果的にユニークな音になっています。例えば「ザディコ・パーティ・ダウン」なんてリズムはセカンドラインですね。ロックンロール調のリズムになると勢いが良くなったりします。かえってキース・フランクの「ハヴ・マーシー」のカヴァーあたりは、元がドライなためうまくこなしてる感じ。でもこうして世界にザディコが広がっていくのは面白いです。



Squeezebox Boogaloo ; Map To Your Heart ; MAMBITO MR004 (2010.12.14 )

2010年リリース。白人たちが主体のバンドですが、サウンドはどちらかというとザディコです。全体にポップさがあり軽めで聴きやすいですね。「ディギ・リギ・ロー」なんて古い歌も取り上げていたり、「ミスティカル・ナイト」のようなクレズマーの香りがする曲もやってます。「シャローム・サラーム」という歌をやっているところからすると、ユダヤ系の人たちなのかもしれません。いろいろな音楽の要素が混じり合っているようで、つかみどころがないんですが、けっこう楽しめました。




Stan Mosley ; Steppin' Out ; STAN MOSLEY SM01240 (2008. 1.22)

2006年リリース。ブラコンぽかったらどうしようなんて思って買ったCDでしたが、これはディープです。サウンドは21世紀らしい、ちょっと打ち込みっぽさも感じるサウンドなんですが、そこそこ上手くまとまっていて、その上に乗るスタンの歌の表情の豊かなこと!ハスキー・ヴォイスですぅっと抜いて歌ったり、語りからソフトに入ったり、力強くシャウト気味に歌ったりと、極上のテクニックを駆使して歌うスタイルは、スタンダップ・ヴォーカルが輝いていた60年代後半〜70年代初めの、サザン・ソウルを思い出してしまいました。でも強引な感じはなく、ファルセットを絡めて甘く歌うとこれまた極上のスウィートネスで、これでやられちゃう女性ファンて多いんだろうなって勝手に納得。この手のソウルアルバムでは久々の大当たりの1枚です。



Stanley Turrentine with The 3 Sounds ; Blue Hour ; BLUE NOTE/TOSHIBA EMI TOCJ-9040 (2004. 2.19)

1960年録音。タレンタインも昔飲み屋でよく聴いた口ですが、このアルバムは初物でした。ライナーによるとフルソンのバンドにも在籍していたよう(時期的にはCHESS時代で、録音は残っていない模様)で、落ち着いたスリー・サウンズのバックに支えられ、低重心のどっしりとしたテナーを聴かせます。フレーズはとってもブルージーで、スローナンバーではとっても色気を感じました。「アイ・ウォント・ア・リトル・ガール」「シンス・アイ・フェル・フォー・ユー」などのブルースフレイヴァの強い曲は完全にはまってます。この後どんどんポップさや明るさが増していったんだと思いますが、この初期録音は気に入りました。



Stanton Moore ; All Knocked Out! ; FOG CITY/P-VINE PCD-5569 (2002. 3.20)

1998年ライヴ録音。スタントン・ムーアはギャラクティックの要となるドラマーで、そのファンキーさは折り紙付きですが、ここではよりジャズよりの演奏が展開されます。ギャラクティックよりやや軽めの演奏ですが、芯にしっかりしたグルーヴを持っているので、セカンドライン色はやや薄いものの、充分にうねります。特にトロンボーンが絡んだ曲はブラスバンド的な響きとなって、やはりニューオーリンズの伝統を感じさせます。とにかく聴いているとドラムを叩きたくなる1枚です。



Stanton Moore ; III ; TELARC CD-83648 (2006. 9.24)

2006年リリース。相変わらずのビッグなドラムにロバート・ウォルターのファンキーなオルガンがよく似合う「ポイゾン・プシー」のご機嫌なサウンドにまずは一撃でやられました。編成はオルガントリオにゲストを入れた形なんですけど、ミーターズとギャラクティックを合わせたようなサウンドあり、ジャジーな演奏ありと変化に富んでいるんですが、とにかくアタックのはっきりした、でもひょいひょいとリズムをずらしたり止めちゃったりするスタントンのセンスの良いドラムが輝きまくりです。「ウォーター・フロム・アン・アンシェント・ウェル」は、どこかキング・カーティスの「ソウル・セレナーデ」とクルセイダーズをミックスしたような雰囲気。面白かったのが「ホウェン・ザ・レヴィー・ブレイクス」で、曲はもちろんメンフィス・ミニーなんですけど、演奏は思いっ切りレッド・ツェッペリンしてます。スタントンはやっぱりボンゾが好きなんでしょうね。ウィル・バーナードのスライドギターがジミー・ページよりもぐっと泥臭いのがさすがって感じです。



Stanton Moore Trio ; Emphasis (On Parenthesis) ; TELARC CD-83681 (2008. 6.12)

2008年リリース。いやいやスタントン・ムーアにロバート・ウォルターのオルガンでトリオですか。これで悪い訳がないですね。オルガントリオの伝統に乗っ取ったスタイルを取りながら、ロックっぽい「ギャンダー」や「ラヴァー・ケーキ」、ミーターズ風セカンドラインが効いた「オーヴァー」、ちょっとアヴァンギャルドな「スーパー・ストレングス」など、曲調は多彩でギターのウィル・バーナードも存在感のある音を出しています。ジャムバンドがオルガントリオをやるとこうなるって感じでしょうか?でもどこかレッド・ツェッペリンに通じるものを感じる瞬間もあったりして。ちなみに全曲スタントン作なんですけど、すべてサブタイトル付き。これもこだわりかな。



Stanton Moore ; Take It To The Street (The Music) BUFFALO BUF-511 (2009. 3. 9)

2008年リリース。元々はドラムの教則音源なんだそうですが、ニューオーリンズを代表する曲、例えば「アイル・フライ・アウェイ」「ハンダ・ワンダ」「ジャンコ・パートナー」「ジャスト・ア・クローザー・ウォーク・ウィズ・ジー」などを、ダズンズの面々やカーク・ジョゼフ、さらにはジョージ・ポーター・ジュニアやアイヴァン・ネヴィルなどとやっているんですから、内容が悪かろうはずはありません。多様なリズムを見事な手数でこなすんですが、それがちっとも耳につかず、音楽として溶け込んでいるのがこの人の凄いところ。こうしたトラディッショナルなスタイルでも抜群の腕前を持っていることが分かる1枚です。




Stanton Moore ; Groove Alchemy ; TELARC TEL-31890-02 (2010. 4.30)

2010年リリース。スタントン名義になっていますが、実際はほぼロバート・ウォルターのオルガントリオ演奏といっていいと思います。ギターはウィル・バーナード。とは言え、これだけ歌うドラムも珍しいですね。オルガンの奏でるメロディにぴったり寄り添って、めりはりをきっちりつけていますから演奏が生えること生えること。ミーターズ的なシンコペーションたっぷりの曲や「ポット・リッカー」「ルート・セラー」のようなジャズ・ファンク系の曲でもスタントンのファットバックなドラムが炸裂しています。キープ・オン・グウィン」ではロバートはピアノを弾き、ウィルはスライドをプレイしていますが、こうしたオールドスタイルも難なくこなしちゃうのがすごいです。そんな中に「アレッタ」や「ヒー・ストプト・ラヴィング・ハー・トゥディ」なんて古い感じのギター曲が入ってたりしますから油断なりません。




Staple Singers ; A Family Affair - The Ultimate Staple Singers ; KENT CDKEN2 240 (2004.10.21)

1953年のUNITED録音から、VEE-JAY、STAX、WARNERなどを経て、1984年のPRIVATEまでの、彼らというか彼女らの全キャリアにまたがる文字通り究極の2枚組ベスト盤です。ざっと録音順に並んだ感じですが、多少前後があります。初期の作品はゴスペルコーラスを決めるファミリーバンドって感じが強いんですが、ポップスのギターがとにかくユニーク。トレモロのエフェクトをかけ、カントリーフレイヴァーを感じるこのギターワーク、どこかで聴いた感じだと思ったら、C.C.R.が良く似ているんです。おそらくジョン・フォガティは相当影響を受けたんではないでしょうか。1枚目終盤にはSTAX録音が入ってますが、ラストが「ソーラン節」っていうのが憎いです。2枚目になると主役はますますメイヴィスになっていきます。もちろんSTAXでの大ヒット「リスペクト・ユアセルフ」や「アイル・テイク・ユー・ゼア」も収録。メイヴィスのあのハムや、太い声をちょっと絞り出すような歌い方、やっぱり素晴らしいですね。この持ち味があったんで、声の衰えた現在でも素晴らしい歌を聴かせ続けられるんでしょう。



The Staple Singers ; Will The Circle Be Unbroken? ; VEE-JAY/P-VINE PCD-4322 (2006. 5. 2)

1955〜60年録音。オリジナルアルバムに6曲ボーナスを収録してあります。まずは冒頭のタイトル曲。「永遠の絆」として、後に幾多のカヴァーを生んだ元歌になったものです。思わず一緒に歌いたくなるような適度なリズムと明確なメロディラインが素晴らしく、ギター1本の伴奏でこれだけの厚みを出してしまうステイプルズの凄さを感じました。続く「トゥー・クローズ」はブルージーナローバックのギター弾き語りが中心で、テーマがゴスペルでなければブルースと聴き間違うような雰囲気。この他メイヴィスの存在感溢れる歌が随所に聴かれ、またローバックのギターはやっぱりジョン・フォガティに影響を与えたんだなぁなんて勝手な想像をしながら聴いてました。「レット・ミー・ライド」は「スウィング・ダウン・チャリオット」なんですけど、トゥービートのリズムが「ミステリー・トレイン」に通じたり、あるいはカントリーみたいに聞こえたりと、佐々木健一さんも言っていたように、音楽をもっと横断的に聴く必要があるかななんて思いました。



Staple Singers ; Be What You Are ; STAX/UNIVERSAL UCCO-4021 (2007.11.25)

1973年に出されたSTAX通算5枚目のアルバムのストレート・リイシューです。すでに「リスペクト・ユアセルフ」「アイル・テイク・ユー・ゼア」という大ヒットを出した後で、このアルバムも全米13位まで上りました。「イフ・ユーア・レディ」「タッチ・ア・ハンド・メイク・ア・フレンド」といったヒット曲を聴けば、ホーマー・バンクスらの巧みな曲作りを活かしながら、メイヴィスの味のあるヴォーカルを姉妹のコーラスが支え、メッセージを打ち出していくというこのグループのスタイルが揺るぎないことがよく分かります。「グランドマズ・ハンズ」ではリゾネイタのスライドが不思議な雰囲気を醸し出しますが、ビル・ウィザーズらしいゆったりしたメロディがメイヴィスにぴったりはまってます。ラストの「ヘヴン」、まさに静寂な天国を思わずにはいられません。名作です。



Steamheat ; Austin Funk ; FABLE F-203 (2008.10.16)

1975年録音。ディスコ前夜のローカル・ファンクって感じですが、かなり軽快なリズム。根っこにはジャズがあったりボサノヴァがあったりしますけど、ロックからの影響も感じられます。「ラディエター」はかなり低重心でイカしてますね。「ファンクン・ロール」なんてまんまなタイトルの曲もありますけど、これは結構軽め。むしろリフの格好いい「ゲットー・ツール」なんてのが気に入りました。前衛的な感じの「フローズン・ツンドラ・レディ」も面白いです。今聴いてもあんまり古くさく感じないのは、ジャズ・テイストが強いからかしら。




Step Rideau & The Zydeco Outlaws ; Here Comes... ; BRIDGE ENTERTAINMENT BEZ2001-1 (2006. 9. 4)

1995年リリース。多分ステップのデビュー作だと思います。いきなり「ダンス天国」やら「アイ・フィール・グッド」のフレーズをちりばめた自己紹介曲が飛び出し、ファンキー路線かなと思いましたが、曲はダンサブルでシンプルなものが多いです。アコーディオンはリズムの切れがシャープで気持ちいいんですが、それほどメロディアスな感じはありません。途中列車の音を模した曲などもあり、どこかローカルな空気を感じます。素朴なファンクネスって言ったら感じが伝わるでしょうか。すごく目立つところのある作品ではないけれど、原石の中にキラリと光るものがあるって感じです。



Step Rideau & The Zydeco Outlaws ; From Step 2 U ; BRIDGE ENTERTAINMENT BES 2006-2 (2003. 7.10)

2003年リリース。テキサスは敦子さんが現地直送してくださいました。感謝!ステップは1966年ルイジアナ生まれで農業をやっていたようですが、20才の頃にヒューストンに移動してそこを拠点にザディコをやっています。ロッキン・シドニーやブーズー・シェイヴィスの影響を受けたというリドーは、3ボタンのアコーディオンを駆使し、クールで適度なファンクネスを感じさせるサウンドと、ちょっとしゃがれたヴォーカルに、クリス・アルドワンなどにも通じるコーラスワークは、都会的な側面とザディコ特有のローカルさが絶妙にミックスされたサウンドで、新しさと懐かしさの両方を味わえる絶品です。バンドもイカしていて、ギターのコードワークは演奏にしっかり彩りを与えていますし、リズムの切れ味も心地好いです。まだ日本には実質的に上陸していないようですが、来襲が楽しみな無法者達です。



Step Rideau ; A Step Ahead ; BRIDGE ENTERTAINMENT BEZ 2007-2 (2005. 7.24)

2005年リリース。ステップは若手の注目株で、ロックやレゲエの影響を受けたザディコを3ローのボタンアコで展開するんですが、どこかほわっとしてるんですよね。それはまず歌にあるようです。コーラスは洒落ていますが、ステップのちょっとぶっきらぼうにも思えるリラックスした歌が、どこかほのぼのとした味わいを醸し出すんです。バンドは充分にタイトですし、曲も格好いいんですが、柔らかいアコーディオンとこのヴォーカルが、どこか人の良さを出していて、聴いていてほっとします。この雰囲気、好きだなぁ。若者から年配の人にまで受け入れられるスタイルに思えます。



Step Rideau & The Zydeco Outlaws ; Like Never Before ; BRIDGE TO ENTERTAINMENT BEZ 82010 (2010.12.22)

2010年リリース。イントロなどにサウンドエフェクトを多用していて、ずいぶんモダン化を図ってるなと思いますが、でも曲が始まると、基本はステップのしっかりしたアコーディオンが全面に出ているので、実にザディコらしさの強いアルバムになっています。「カモン・オーヴァー」は何か笛のような音が入っていて面白いし、ヴォーカルを野太くする音処理も上手くはまっているように思います。ワルツの後に出てくる「ドント・ストップ・ザディコ・ミュージック」、かっこいい!アコーディオンで勝負できているステップのザディコはこれからも期待しちゃいます。




Stephen Bruton ; Right On Time ; DOS 7013/P-VINE PCD-4108 (2001.12.21)

1995年リリース。P-VINE@楽天のバーゲンで購入しました。全く予備知識がなく、聴いたらいきなりブルース・スプリングスティーンばりのややしゃがれた声と、ストレートなロックサウンドが飛び出してきました。乗りがよくて気持ちがいいです。パーシー・メイフィールドの「プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラヴ」を独自の解釈で歌うなど、一筋縄でいかない面もありました。テキサスをベースとしながら、ウッドストックからの影響もあるようです。



Steppin' Out ; Live At The Lone Star ; no number (2001. 8.29)

2001年イースターのライヴ。前に紹介したニュージーランドのブルース親子、マイク&ポール・ガーナーのライヴです。父がヴォーカルとサイドギター、時折ハープも入れ、息子がブルージーなギターを弾くというバンド構成で、特にギターはなかなか渋めのフレーズを連発します。安易な弾きまくりでなく、つぼを心得た演奏です。しかし、PAが悪いのか、ヴォーカルの録音はかなりひどく、また、ライヴとしての構成が平板でいまひとつ盛り上がりません。僕はスタジオ盤の方が好きだな。



Steve Conn ; River Of Madness ; NO REALLY/TAXIM TX 2018-2 TA (2004.7.21)

1994年の作品です。多くの曲でサニー・ランドレスが一聴してそれと分かるギターを弾いています。コンのヴォーカルはちょっと線は細いですが、繊細で優しい響きがあり、リトル・フィートをソフトにしたような曲から、ぐっとルイジアナ風味の強い曲、カントリータッチの曲など、良く練り込まれたアレンジで聴かせます。強烈なインパクトがあるわけではなく、少しつかみ所のない面もありますが、繰り返し聴いているとじわじわと染みてきます。穏やかな雰囲気の好盤だと思いました。



Steve Conn ; Steve Conn ; NOT REALLY NRR 9701 (2003.11. 6)

2003年リリース。スティーヴ・コンはサニー・ランドレスの最近の作品でキーボードを担当しているんでその存在を知ったんですが、ソロアルバムは初めて聴きました。しかしこれ、実にいいです。ニューオーリンズのフレイヴァを感じるピアノや、落ち着いているけど素晴らしいオルガンに、自身のルーツを感じさせるアコーディオンなど、鍵盤の素晴らしさはいうまでもないんですが、何に感動したかっていうとそのヴォーカルです。誰かの声に似ているんですが、とってもいい声で、しかもめちゃめちゃ丁寧に歌い込んでいます。音楽に対する真摯な思いがビンビン伝わってきます。全体に落ち着いた楽曲が多いんですが、歌声が顔に似合わず瑞々しく、むしろ若さを感じたくらい。とにかく聴いてくださいというしかないです。サニー・ランドレスが何曲かギターで参加していますが、どことなくローウェル・ジョージを彷彿させるプレイです。これがまた絶妙にマッチしてたりします。ことしのベスト入り確定の1枚。



Steve Gardner, Washboard Chaz & The Jake Leg Stompers & Friends ; Walkin' The Dog ; BUFFALO/HOO-DOO no number (2009. 3. 5)

2008年夏の録音です。日本在住のブルースマンで写真家でもあるスティーヴ・ガードナーがアメリカに里帰りしたときに作ったアルバムだと思いますが、何とびっくりなのがウォッシュボード・チャズが参加してることです。ガードナーさんはプリミティヴなブルースのスタイルを好み、メタルボディのリゾネイタをスライダーでかき鳴らしながら歌いますが、バックの面々のサウンドが見事にマッチしています。冒頭の「ウォーキン・ザ・ドッグ」からガードナー節は全開で、ジミー・リードやリトル・ウォルターの曲も自分の世界に持ってっちゃいます。ルンバ調の「ミッドナイト・スペシャル」も楽しいし。チャズも3曲歌っていますが、「フレイト・トレイン」でのひなびた感じが抜群です。ラストの「グローリー・グローリー・ハレルヤ」、メロディは「ウィル・ザ・サークル・ビ・アンブロークン」で、最後を締めるのになかなか素敵な計らいです。




Steve Riley & The Mamou Playboys ; Bon Reve ; ROUNDER 116 616 084-2 (2003.10. 6)

2003年リリース。この人は初めて聴きました。まずバンドが思いのほかタイトでシャープだなって思いました。スティーヴはアコーディオンとフィドル担当なんですが、割とすっきりしたアコーディオンに上手くマッチしたリズム隊で、かなりかっちりした印象。でもケイジャン・カントリーならではのあったかさはたっぷり感じます。往年のカントリー・ロック・ファンに受けるんじゃないかな。で、ロックンロールからワルツ、アカペラまで変化に富んだ選曲なんですが、通奏低音のように音を締めているのがギターです。スライドプレイでまるでスティールギターみたいな音を出したり、ちょっとクランチのかかったサウンドで、カントリーリックをしっかり決めてたり、でも全然出しゃばらないんです。とにかくしっかりしたサウンドで、気持ち良く楽しめました。あっと言う間に2順目でした。



Stevie Franco a.k.a. Mister Boogieman ; New Orleans Boogie ; SOUND OF NEW ORLEANS SONO 1043 (2003. 7. 1)

1997年リリース。SOUND OF NEW ORLEANSというレーベル、DISK UNIONでよく見かけるレーベルで、結構ジャズっぽかったり、パッとしないものもあるんですが、やっぱり気になっちゃいます。で、このブギーマン、チェンバロみたいな音のピアノにこれも打鍵楽器系のサウンドのシンセ、それに自分で踏んでいると思われるハイハット入りの弾き語りが中心のアルバムなんですが、何というか、有名曲が中心で、ちょっと聴くとなんの変哲もないんです。でもリズムとか、「テキーラ」のアレンジとか、やっぱりどこかニューオーリンズの風味があって、気付いたら2回目聴いてたんです。とにかく「枯葉」から「見張り塔からずっと」まで、選曲の節操のなさも凄く、ライナーに紹介されているお友達にロッキン・ドゥプシー・ジュニア、マーヴァ・ライト、ダヴェル・クロフォードなんて名前があったり、気になりますね。不思議なアルバムです。



Stevie Ray Vaughan & Double Trouble ; Live Alive ; EPIC/SONY ESCA 7635 (2005. 2. 3)

1985〜86年のライヴです。スティーヴィー特有の、ビヤビヤだけど芯のあるストラトサウンドに、どこかほわっとした味わいのあるヴォーカルはライヴでも全開です。初期の代表曲を中心にヒット中心で収録されているんで、僕のような彼をあんまり聴いたことのない人間の入門用にはいいかも。しっかりテキサスの伝統に根差したギターを満喫できます。ただ、ロックのライヴ名盤といわれるものが持つ、ガツンというインパクトがこの作品からは感じられませんでした。なんでなのかな?ちょっと平板なのかもしれませんね。



Stevie Wonder ; Original Musiquarium I ; MOTOWN 012 159 741-2 (2001. 2.10)

熱帯魚のジャケットで有名なスティーヴィー1972〜82年のベスト。ジェフ・ベックに贈った「迷信」から始まるこのアルバムは、ファンク、ジャズ、レゲエなどの要素を取り入れ、どんどん円熟味を増していく時代の代表作を集めたもので、理想的なベスト盤です。いわゆるニュー・ソウルといわれる内省的なものも感じられなくはないですが、それよりも研ぎ澄まされた音に対する感性と、ポップな、でも決して軽くならないメロディメイキングがすばらしいです。「サンシャイン」などはおそらくドリカムに大いなる影響を与えたんでしょうね。愛情がにじみ出る「アイシャ」、おそらく沐浴するサウンドをとらえたのでしょうが、光を失っている者にしか産み出すことのできない音空間がそこにはあります。



Stevie Wonder ; A Time To Love ; MOTOWN 602498621882
(2006. 1. 9)

2005年リリース、なんでも9年ぶりの新作とかですが、力作です。2曲ほど娘の愛車をヴォーカルでフューチャー、さらにキム・バレルやインディア・アリーといったゲストシンガーとのデュオもありますが、全編で衰えることのないスティーヴィー節を聴かせています。またパーカッションなどのリズム楽器が幾重にも重ねられ、ポリリズムの洪水のようなサウンド作りは、他の人にはなし得ない境地に達しており、そこから溢れるファンクネスがぐいぐい迫ってきます。とにかくものすごく丁寧な仕上げの作品で、じっくりスタジオで腰を据えて、スティーヴィーの世界を構築したなと思いました。年末にプロモーションで来日した時の演奏を聴きましたが、やっぱりライヴではスカスカで、声も不安定だったものが、こうしたスタジオワークでは見事な完成品になってるのが、彼の凄いところだと思います。やはり天才だなと思いました。



Sticks McGhee ; 1947-1951 ; CLASSICS 5012 (2001.10. 6)

ニューヨークのスティックス・マギーはブラウニー・マギーの弟で、「ドリンキン・ワイン・スポーディ・オディ」のオリジネイタートして有名ですが、これはそのATLANTICからのヒットと元歌を含めた初期のコンピです。兄のブラウニーと組んだ初期の作品は、イーストコーストの伝統を踏まえた軽快なリズムと独特のいなたさが持ち味ですが、兄よりもより軽妙で、エンターティナーとしての要素が強いです。後半になると、管を加えたけっこうジャンピーなバンドが加わり、ニューヨークのもうひとつの面と上手く折り合いをつけていた様子が分かります。兄がカントリー風味で押していったのとは好対照。でも決して洗練されきらないのがスティックスらしいです。



Stomp Gordon ; 1952-1956 ; CLASSICS 5185 (2009.10.16)

オハイオ出身のピアニストでヴォーカリストのゴードンがDECCA、MERCURY、CHESS、SAVOY等に残した録音集です。文字通り叩きつけるようなピアノと、ちょっとハスキーでハイトーンな声で精一杯歌ってる感じのヴォーカルはなかなかインパクトが強いです。小さなコンボでの演奏が中心ですが、ブルースというよりはジャンプ系に近く、「スロッピー・ダディ・ブルース」では気合いの入ったシャウトを聴かせます。CHESSの「ザ・グラインド」はちょっと「アイ・ドント・ノウ」を意識したような作り。SAVOYではよりゴージャスな演奏を繰り広げていますが、「ライド・スーパーマン・ライド」は例の「弾よりも速く」から始まる笑える曲ですね。




Stoned Soul Picnic ; The Erotic Cakes Of Stoned Soul Picnic ; P-VINE PCD-22296 (2007.12.30)

2007年リリースです。このバンド、イギリスのファンク・バンドのようなんですが、思いっ切りミーターズからの影響を受けています。サウンドとかアンサンブルを聴いてると、なんだか微笑ましくなっちゃうくらい。でも、リズムはセカンドラインというよりは少しライトなファンクって感じで、ジャズからの影響も強く感じました。ソウルフルな歌ものにエッチな女性の声の入る曲など、パーティのダンスのバックには最高かもしれませんね。インタープレイにもう少しスリルがあったらもっと良かったのにと思ってます。



Stooges ; It's About Time ; THE GRUVE GR1006 (2004.10.12)

2003年リリース。いやいやこれは御機嫌なブラスバンドです。トロイ・アンドリュースが参加しているどうやら若手のバンドらしいんですが、セカンドラインを強烈に感じさせるフォンキーなリズムに乗って、トランペットとトロンボーンというまさに金管楽器が洪水のように響き渡ります。ワイワイとヒップホップの影響を感じるヴォイスが随所に聴かれ、時にはラテンの香りもぷーんと漂いますが、何といってもドライヴ感のあるリフでぐいぐい押してくる感じがたまりません。グルーヴィーとはこうしたバンドにこそ似合う言葉ですね。いやぁ、これはヘヴィーローテーションになりそうです。



Stuff Smith ; Time And Again ; PROPER PVCD118 (2005. 7. 5)

1936〜1945年の録音を集めた2枚組です。スタッフ・スミスはヴァイオリンで強烈にスウィングし、ジャイヴしています。特に1936年ごろのものはスキャットの利いた軽妙な歌声から、キャブ・キャロウェイに通じるエンターティナー性を感じます。ヴァイオリンのテクニックは素晴らしく、ステファン・グラッペリのようなロマ・ミュージックの味わいもあり、またヴァッサー・クレメンツのブルーグラスにも通じていくような軽快なプレイも随所に聴かれます。でもその魅力は何といってもそのスウィング感とブルージーなフィーリングにあると思います。さらに「ユーモレスク」を初めクラシックも小粋に料理、その芸の幅広さにはびっくり!1945年になるとスモールコンボでのプレイが多くなり、しっかりモダン化していこうという姿勢も感じられます。もう少しじっくり聴いてみたい人です。



Suemarr ; Winter Song SUEMARR no number (2009. 4.27)

2008年リリース。たった2曲ですが、それだけで心が満たされる作品です。タイトル曲、数々のアコースティック弦楽器で複雑に織りなされるサウンドが、実に「冬」そのものなんです。外の寒さの中の暖かさとか、雪模様とかを感じるんです。そしてユキさんの描くブックレットの絵がまた素晴らしく、暖かい気持ちになるんですよ。音楽と絵のコラボ、不思議だけど素晴らしい作品だと思いました。




Suemarr ; Songs Of Hopeless Hope ; SUEMARR no number (2009. 4.26)

2009年の作品です。ライヴを見に来てくださったご本人が、「ロー・クウォリティだけど」と言ってくださったものなんですけど、いやいやどうして、聴き所の多い作品です。多分自宅での録音だと思うんですが、楽器の息遣いが聞えるようなサウンドは、やはり弾き手の技量の高さならでは。またゆったりとレイドバックした歌からは、どこか高田渡に通じる雰囲気すら感じました。




The Subdudes ; Behind The Levee ; BACK PORCH 72438-73412-2-7 (2006. 4. 7)

2006年リリース。ケブ・モがプロデュースを担当。アコースティックな肌合いを残しながらも、かなりファンクネスを感じさせる練り込まれたサウンドに乗って、トミー・マローンのちょっと憂いをたたえたようなヴォーカルが映えます。曲によっては良質なR&B仕立てで、派手な感じは受けませんが、聴き続けていくと心地好さがひろがってきます。ひとつはジョン・マグニーのややヨーロッパテイストなアコーディオンが、サウンドに彩りを与えているからかななんて思いました。局によってはダーティ・ダズンのホーンが参加したり、ロージー・レデットがコーラスで参加したりと、ゲストもいい味を出しており、またリトル・フィートとセイクリッド・スティールをミックスしたようなスライドが軸の曲もあり、僕の好きなサウンドがいっぱい。なかなかの快作だと思います。



The Subdudes ; Street Symphony ; BACK PORCH 0946 3 88708 2 1 (2007. 9.21)

2007年リリース。まるでいろんな種類の野菜をじっくり煮込んだような、濃厚だけど後味のすっきりしたスープのような味わいです。広がりのあるコーラスと、緻密に練り尽くされたアコースティック楽器のアンサンブルは、1曲1曲には強いインパクトがあるわけじゃないんですけど、ジワッと染みてきて、いつしか耳が奪われます。トミー・マローンのちょっと憂いを感じるヴォーカルは秘めた力強さがありますが、それをアコーディオンの優しい音色がオブラートに包んでいて、耳に届く音はソフトです。でも甘ったるさは微塵もないのよね。「ノー・マン」を聴いていて、最近のエルヴィス・コステロを思い出しました。一方ジョン・マローンの方はよりスモーキー。「ブラザー・マン」のゴスペルタッチのコーラスに支えられた歌など、ズンと心に響きます。聴けば聴くほど味わいの増すアルバムです。



Sugar Blue ; Code Blue ; BEEBLE BB801 (2007. 6.18)

2007年リリース。のっけからシュガー・ブルーらしいテクニカルで細かいフレーズのオンパレード、ファンキーな曲調にはこうしたプレイは結構似合いますね。以前のアルバムに比べ、ジャジーな演奏が増えたり、ヴォーカルが落ち着きを増したりと、聴いていて安心できる感じが増えました。「ブルースマン」は思いっ切りロックっぽくてこれはこれでいいかな。ちょっとヨーロッパ風味を感じる「ノラ」、アコーディオンとハーモニカの絡みが結構味わいがあり、フランスにいた頃こんな音出してたのかななんて想像しちゃいました。歌もかなりいい感じ。アコースティックなブルース「アイ・ドント・ノウ・ホワイ」の歌も、シュガーらしい味わいが出てて気に入りました。でも曲によってはヴォーカルが頼りなかったりするので、もう少し絞り込んでいったらいいのかなぁ。何かあと一息あればなぁという印象のアルバムです。



Sugar Blue ; Threshold ; BEEBLE BB802 (2010. 4.15)

2009年リリース。この人はある意味才能を持て余しているのかもしれません。誰もが認める超絶級のハーモニカのテクニックを持っているんですが、どうも自分の目指す音楽性が良く見えないようなんです。超ファンキーな「メッシン・ウィズ・ザ・キッド」とKING / ALLIGATOR時代のサウンドに行くかと思うと、「コットン・トゥリー」のようなジャズテイストを求めたり、「トゥナイト」のようにAORっぽくなったりと定まりません。ひとつは歌がいまひとつ上手くないんですね。「ドント・コール・ミー」など危なっかしくて。そんな中、「ストップ・ザ・ウォー」はシュガーらしさが出ていてぐっと来るものがありました。いいプロデューサーをつけたらもっと面白くなると思います。




Sugar Chile Robinson ; 1949-1952 ; CLASSICS 5052 (2003. 2.26)

世には「天才」と呼ばれる子供は結構いるもんですが、この若干9才のブギウギ・ピアノには参りました。リズムの切れがとってもいいんです。それにヴォーカルも声は子供なのに歌い回しはかなり色艶を感じさせます。R&Bチャートをにぎあわせただけのことはあります。歌詞は割合年相応で、「アフター・スクール・ブルース」なんて可愛らしいんですが、妙な息遣いの出てくる「ドンキー・ソング」とか不思議な感じ。後半にいくにしたがって変声期を迎えたようで、最後はインストとスキャットになってしまいますが、その後どうなったのか興味深いです。



Sugar Pie De Santo ; Go Go Power - The Complete CHESS Singles 1961-1966; KENT CDKEND 317 (2009. 8. 2)

これは嬉しいコンピです。トミー・タッカーの大ヒット「ハイ・ヒール・スニーカー」へのアンサーソング「スリッピ・イン・ミュールズ」を初めとして、同系統の「ソウルフル・ドレス」など、ノリのいいリズムをバックにパンチの効いたヴォーカルが炸裂しています。タイトル曲の強烈さは特筆もの。仲の良かったエッタ・ジェイムズとのデュエットも息がぴったりで、MOTOWN全盛期にありながら、このダイナマイトなスタイルを貫いているのが凄いですね。どこかJBに通じるところがあるのは、彼のレビューに参加していたからでしょうか。「ユーズ・ホワット・ユー・ゴット」では「ナイト・トレイン」のリフを拝借しながら、ブルージーに決めています。初期は少しポップに流れるところもありましたが、この堂々たるブルーズン・ソウルはある意味リトル・ミルトンと同じ方向を見ていたのかもしれません。




Sugar Pie Desanto ; Refined Sugar ; JASMAN 10006 (2006. 6.16)

2005年リリース。これは久しぶりのリーダー作じゃないでしょうか。西海岸の歌姫もすでにかなりのお歳を召されたようで、声はだいぶしゃがれてしまいました。でも気持ちは若いですね。モダンでファンキーなバンドをバックに気のしっかり入った歌を披露しています。自作の歌を中心に、ジミー・マクラックリンなどの歌にも取り組んでいます。「ライフ・ゴーズ・オン」しっとりしたスローナンヴァーの表現力はさすがというほかはありません。エッタ・ジェイムズの活躍に刺激されたのかなぁ。若い頃の歌も聴きたくなりました。



Sugar Ray's Flying Fortress ; Bim Bam Baby ; ACE CDCH 627 (2008. 1.15)

1996年リリース。中古で購入。ジャケットのB-17をあしらったデザインとか、ありゃ、僕の知らないジャンプ・バンドのコンピか何かと思いましたが、どうやらイギリスのバンドのようです。でもいい感じの選曲だなぁ。ワイノニー・ハリスの「ミスター・ブルース・イズ・カミング・トゥ・タウン」とかロイ・ミルトンの「ユー・ガット・ミー・リーリン・アンド・ロッキン」とかは、ちょっと軽めの声のシュガー・レイの元気な歌をゴリゴリブリブリのバンドが煽り立てる感じで格好いいし、列車の汽笛を模したブラスから始まる「A列車で行こう」はミス・ボラーレのちょびっと色気を感じる歌でこれもなかなかです。イギリスのスウィンギン・バッパーズみたいなものでしょうか?



Sugarcane Harris ; Sugarcane ; EPIC/ACADIA ACA 8024/P-VINE PCD-3262 (2002. 6.26)

1970年リリース。ドン&デューイのドンことシュガーケインはジョニー・オーティスとの関係が深いようで、DIGなどに録音があったんですが、これはその息子シュギーも絡んだアルバムで、スライ&ファミリー・ストーンの全盛期の西海岸だけあって、実にファンキーなアルバムです。曲はブルージーなスロウでマイナー調のヴァイオリンが分かりやすいブルース・フレージングを決めるものから、初期ファンク、さらにはストリングを加えたものもあって、特にシュガーケインのアンプリファイド・ヴァイオリンと清々しいストリングのコントラストはユニークでした。まるでワーグナーの曲のようなストリングもあって、この辺のセンスはザッパとの共演で磨いたのかしら。いい意味で型破りな面と、どこかトラディッショナルな面が不思議に混じり合ったアルバムです。



Sugarman Three ; Sugar's Boogaloo ; DESCO/DAPTONE DAP-006 (2006. 6.30)

1998年リリース。R&Bのオムニバスコーナーを何の気なしに眺めていたら、実にチープな雰囲気のジャケットに「ブーガルー」ですから、こりゃ60年代半ば過ぎのB級プレ・ファンクかななんて思って買ってみたんです。「パパのニューバッグ」何てまさにそんな感じ。御機嫌だなと思ってたら「スージーQ」。これもイカしてるんですけど、途中のアレンジがどうもC.C.R.ぽいのよね。そうなると1968年以降の録音か、さてはC.C.R.がこっちを参考にしたのかとむくむくと興味がわき、素性を調べたら、なんと10年足らず前のバンドがレトロにやってたってことが判明。だってどこにも録音年が書いてなかったんだもん。危うく騙されるところでした。でもいかにも60年代ソウル・ジャズ〜ファンキー路線といったサウンドは、恐らくジャズサークルで鍛えた演奏力をバックに、気持ちのいい音を出そうって趣向かな。ハービー・マンみたいなフルートの「サンシャイン・スーパーマン」なんてクールだし。こういうの大好きです。



Sunnyland Slim ; Patriarch Of The Blues ; OPAL OCD 110 (2000. 3.29)

1947年〜52年の録音集。ややハイトーンで、J.B.ルノアなどにも通じる歌は、マディやジミー・ロジャーズのイメージでくくれないムードを持っています。ピアノも印象的な音がたくさん出てきますが、ロニー・ジョンソン、ロバート・ロックウッドといった職人ギタリストとの絡みが素敵です。こうしてヴィンテージがまとめて聴けるようになったのはうれしい限りです。この人についての詳しい情報も、BlueSlimをご覧ください。


Sunnyland Slim ; The Walking Cycloon ; ZIRCON BLEU BLEU 516 (2001. 5.29)

1947〜49年録音をまとめたもの。未発表曲はありませんが、おそらく初CD化となる「ジャイヴィン・ブギ」「ブラウン・スキン・ウーマン」を含む、この時代としてはほぼコンプリートな内容といえます。これまでいくつものコンピレーションに分散されて収録されていたものが一度に聞けるのは嬉しいですね。内容はタイトル通り、まさに嵐のようなピアノプレイを随所に聴くことができます。また、ヴォーカルも張りのあるトーンで、さすが「ドクター・クレイトンズ・バディ」を名乗っていただけのことはあります。ファルセットの「フー」という声が印象的です。さらにフロイド・ジョーンズ、リトル・ウォルター(歌もハープもかわいい感じ)をフロントに立てたものも収録されており、シカゴ・ブルース・ファンにはたまらない内容です。なおサニーランドについては、江戸川スリムさんのBlueSlimの中のSunnyland Slimご是非御覧ください。



Sunnyland Slim ; Smile On My Face ; DELMARK DD-735 (2000.11.14)

1977年シカゴ録音。サニーランド・スリムは戦後シカゴ・ブルースの黎明期に重要な役割を果たしたピアニストで、多くのミュージシャンのバックでそのピアノを聴くことができます。このアルバムでも、特徴的な右手の高音でのトレモロ風イントロや合いの手が、その頃の録音を思い出させます。自身のややハイ・テナーなヴォーカルは、声の艶こそ全盛期に比べ衰えを感じますが、十分に魅力的。「フィッシン・イン・マイ・ポンド」で有名なリー・ジャクソンや、レィシー・ギブソンも渋い唄を聞かせますが、その裏での的確なサポートもすばらしいです。地味ながらいぶし銀の様な味のあるアルバム。



Sunnyland Slim ; Be Careful Hou You Love ; AIRWAY/EARWIG/BLUE STING STING CD 019 (2001. 2.25)

1981〜83年、サニーランド自身のレーベルであるAIRWAY録音。ギターにエディ・テイラー、ヒューバート・サムリン、マジック・スリムらを迎え、はつらつとしたアルバムです。サニーランド自身の唄も元気で、ライヴな印象の録音(1曲目でサムリンが思いっ切り間違えるご愛敬もあります)もあり、勢いを感じますし、それぞれのギタリストが持ち味を発揮したプレイを聴かせ、楽しめました。「ジョンソン・マシーン・ガン」の再録などを聴くと、この人のソングライティングの良さも感じます。ちなみにこの曲のギターは若き日のルリー・ベルです。あの特徴あるピアノも随所で聴くことができます。



Sunpie ; Loup Garou ; RECORD CHEBASCO AVL94198 (2002.10.14)

1994年にリリースされたサンパイのおそらくデビュー作です。いきなりラブボードのシャカシャカが御機嫌に響く演奏をバックに、スクリーミン・ジェイばりの張りのある中低音で歌い出すタイトル曲がインパクト抜群!「ウハハハ!」の笑い声まで飛び出しご愛敬です。この他ジャケットにあるような鍵盤式アコーディオンによるザディコ・チューンやブルース、はてはハービー・マンの「メンフィス・アンダーグラウンド」をルイジアナのパーティ・ソングに仕立てたりしたものまで、全編飽きさせません。ラストにはクリスマスソングまで出ちゃいます。紹介してくれたsumoriさんに感謝!



Sunpie & The Louisiana Sunspots ; Lick A Hot Skillet RECORD CHEBASCO RC4199 (2003. 5. 4)

1997年リリース。いきなりブラック・インディアン・チャント風のザディコ?ナンバーで始まるなど、ファンキーな味付けと、タイトル曲のような緩めのブルースが混在した、いかにもサンパイらしいアルバムです。彼の声は太く印象的で、それに都会的なテイストの加わったザディコの解釈が上手く溶け合っていて、適度にポップで聴きやすい音楽になっています。これがハーモニカを持つととたんにブルースしちゃうのがサンパイの多面的なところで、そうした魅力を実に良く捉えた好盤です。音楽的な方向性は異なりますが、タジ・マハルにある意味通じるものを感じました。



Sunpie ; Legends Of The Swamp ; BFR 022802 (2002. 9.14)

2002年リリース。sumoriさんが紹介してくれたアルバム。サンパイはコロコロスタイルを変える人のようなんですが、この作品ではギター(!)にレイジー・レスター、ピアノにヘンリー・グレイという超ベテランのふたりを迎え、落ち着いた、でもどことなくゆったりしたヴォーカルと、結構達者なハープを聴かせています。特にハープはテクニック重視というよりは、複音を用いたバンピーなスタイルが多く、時折加わるラブボードとともにルイジアナ風味を増しています。ちょっとジェリー・マッケインを思わせるものもありました。でもバックは思ったよりユルユルじゃないんです。適度にタイトで非常に気持ちのいいノリです。サニーボーイの「ボーン・ブラインド」なんて曲も、しっかり自分のスタイルに消化していたのが印象的。ラストのトレインピースで、まさに「伝説」を体現したって感じです。インパクトが強いというより、回を増すごとに味が出てくるアルバム。



Sunpie And The Louisiana Sunspots ; Zydeco's Got Soul ; BFR 010105 (2005. 3.10)

2005年の新譜です。サンパイはザディコといっても、リズムの処理などはずっと多様で、ラテンやファンクをよりストレートに吸収している感じです。むしろそうした音楽にザディコの要素を付け加えているといった方が近いかもしれません。「フィール・ライク・ゴーイング・ホーム」なんてまるでスカです。「ジャメイカ・ジャメイカ」って歌ってますし。ちょうどタジ・マハルのブルースに対するアプローチに似てるなと思いました。野太いけどどこか優しみを感じるヴォーカルもますます健在。今回はゲストになんとゲイトマウス・ブラウンが参加し、右チャンネルから一聴して分かる独特のギターサウンドが聞こえてきます。それほどトリッキーなプレイは聴かれませんが、「オールド・ダン・タッカー」では達者なフィドルも披露。これはケイジャンそのものといってもいいでしょう。とにかくルイジアナ音楽の見本市みたいなアルバムで面白いです。



Sunset Travelers ; For The Shake Of It ; BLACK & TAN B&T011 (2002. 8.25)

2002年リリースの新譜。彼らはオランダのバンドで、アメリカ南部臭のたっぷりつまった曲を、実に楽しそうに演奏しています。力が適度に抜けたヴォーカルは、実はかなり上手く、70年代のサザンロックやザ・バンド、さらにはリトル・フィートの味まで加えたようなフィーリングの演奏に乗って心地好く響きます。一瞬マッスル・ショールズを思わせる音もあったりして、そのリズムの跳ね具合の良さも含め、何だかいい意味でタイムスリップしたみたい。こういう生演奏を聴きながら、バーボンでも飲めると最高ですね。



Susan Tedeschi ; Wait For Me ; TONE COOL/ARTEMIS 751146-2 (2005. 4.22)

2002年リリース。ライヴの方を先に聴いたんですが、CDショップで大プッシュしていたのをつい買いそびれていたものを中古で購入しました。この人、やっぱり歌がいいですね。腰が据わっているっていうか、顔に似合わない(?)重心の低いヴォーカルで、特にミディアムからスローをじっくり歌っているのが好感がもてます。どこかで聴いたようなメロディのオリジナルナンですが、それがかえって親しみを感じさせます。2曲ほど夫のデレク・トラックスのギターを聴くことができますが、「ザ・フィーリング・ミュージック・ブリングス」での粘りのあるスライドプレイはやはり聴きものです。スーザンの大股なギターも僕の好みですが。こりゃ顔に騙されずに早く買っておけば良かったです。



Susan Tedeschi ; Live From Austin Tx ; NEW WEST NW6065 (2005. 3. 1)

2004年リリース。デレク・トラックスの愛妻として知られるスーザンのライヴですが、あまり期待をせずに聴いてみたんですけどこれはものすごくいいです。まずそのヴォーカルがタフです。ルックスから想像するよりずっとソウルフルで、少し枯れ味のある芯の太い声で歌うブルース系バラードなど、思わず唸ってしまいました。ジャニスやアリサを消化しきっている感じで、多分影響を受けていると思われるボニー・レイットなどよりはずっとソウルフルです。またテレキャスターを爪弾くギターソロも、決してテクニカルではないですが、大股で、ゴツンとした手応えを感じるものです。フレーズよりも音で勝負するタイプで、この手のギターには僕は弱いんですよ。曲が終わる度に発せられる「サンキュー」の声が、歌に比べてキュートで、その落差がまた何とも言えません。こりゃスタジオ盤も聴いてみなければ!



Susan Tedeschi ; Hope And Desire ; VERVE FORCAST/UNIVERSAL UCCB-1016 (2005.10.21)

2005年リリース。レーベルを移したスーザンが全曲カヴァーで作ったソウルフルなヴォーカルアルバムです。アコースティックサウンドで静かに始まりながら、デレク・トラックスのスライドで盛り上げるストーンズの「ユー・ガット・ザ・シルヴァー」から、その選曲の渋さと、歌に対する意気込みを感じます。ややかすれ気味の高音もがならずに魅力に変えて、フォンテラ・バス、キャンディ・ステイトンなどの女性ソウルシンガーの曲に加え、フォーク、カントリー、そしてオーティス・レディングの「セキュリティ」と、バラードを中心に貪欲に歌っていきます。ポップなレイ・チャールズの「タイアード・オヴ・マイ・ティアーズ」もいい感じ。まだ味が出きっているとはいえませんが、これから円熟味を増していくとどんなになるんでしょうか?でもオリジナルもやってほしかったと思うのは贅沢なのかな。



Susan Tedeschi ; Back To The River ; VERVE FORCAST 0602517755772 (2009. 2. 9)

2008年リリース。この人、歌が凄く上手くなりましたね。冒頭の「トーキング・アバウト」、まるでジャニスの「ムーヴ・オーヴァー」みたいなイントロですが、歌もジャニスばり。タイトル曲もタフな歌い方で、ガツンと来ました。一方アコースティックな曲ではやや甘い感じでも歌ってますし、抑えて歌ってもしっかり気持ちが届いてきます。一方ギターはちょっと「普通」になっちゃったかな。あの大股具合が好きだったんですが。もちろんデレク・トラックスもスライドで参加、無駄に長い曲がないのでアッという間に聴き終わったなって印象です。今後も楽しみですね。




Super Chikan ; Sum 'Mo' Chikan ; VIZZ TONE CH001 (2008.10.26)

2007年リリースのようです。日本じゃそのまま紹介するのがはばかられるこの名前、ローマ字で書くと僕の名字から"o"を取り除いただけなんですけど、ダブルやトリプルネックのユニークなギターや、自動車の擬音などいろんなしかけを交えたなんだかおかしなサウンドとイメージがぴったり来ちゃってます。多分メキシコ系なんでしょうね。でもそうしたユニークさの背後にあるギターのテクニック、これは相当なものです。歌声はどこかリトル・ジョー・ワシントンを思わせる瞬間もあったりして、でも「フッキン・アップ」というジョン・リー風ブギでは突然ヨーデルかませたりと、まあ何が出るんだかって感じです。とにかくぐちゃぐちゃ考えず聞こえてくる音に身を任せていると、これがなかなか気持ちがいいんですよね。気に入りました!




Sven Zetterberg And The Chicago Express ; The Blue Soulution ; AMIGO AMCD 2020 (2002. 1.11)

1990年リリースのスヴェンのデビュー盤です。タイトル通りブルースとソウルが程よく混じった盤で、スヴェンのヴォーカルにやや青臭さを感じるものの、瑞々しくて素敵です。ジャンのハープもディープな音で、2曲で聴けるヴォーカルも非力ですが素直でいい感じ。全体に現在のような完成度は望めませんが、その分「好きな音楽をやるんだ」といった意気込みがビシビシ伝わってきます。



Sven Zetterberg And The Chicago Express ; Whatch Your Step! AMIGO 2026 (2002.10. 6)

1991年リリース。スウェーデンのブルースマン、スヴェンのバンドの比較的初期のアルバムになると思います。アルバート・キングから始まって、リトル・ウォルター、ジョンリー・フッカーなど好きなブルースマンの曲を片っ端からやっている感じですが、なかなか選曲がマニアックです。バンドとしてもまとまりがあり、好感がもてるんですが、ジョー・サイモンの「ナイン・パウンド・スティール」など、一所懸命歌っているのはよく伝わりますが、やはりまだ艶が足りないですね。この後の作品を聴くとスヴェンはどんどん歌が上手くなるのが分かります。ハープのジャンの歌、素直なんで結構好きなんですが。



Sven Zetterberg / Chicago Express ; Permanently Blue ; AMIGO AMCD 2030 (2002. 3. 4)

1995年リリース。こうやって聴くと、この人、歌いたい人なんだなって思います。ギターももちろんいいんですが、素直なヴォーカルに拍手を贈りたいです。声とか唄い回しとかにほとんどディープさは感じられないんですが、それはアフリカン・アメリカンでないのだからある意味当然です。でもその限界を超えて、なお一所懸命に歌っているのが伝わってきました。ジミー・ドーキンズの「オール・フォー・ビジネス」、うちにLPあるんですが、こんないい曲だったっけ?



Sven Zetterberg ; Blues From Within ; AMIGO AMCD 2035 (2001.10.24)

1999年録音。スウェーデンのブルース第一人者です。コンピでは聴いていたんですが、今回単独盤を聴きました。この人、上手いです。ギターは流暢でかつ味があり、ヴォーカルも曲によってはオーティス・ラッシュを彷彿させるディープさがあります。でも物足りなかったのはちょっと一貫性がないところかな?「これがスヴェンだ」というものを残念ながら感じられませんでした。良質なブルースアルバムではありますが。



Sven Zetterberg ; Let Me Get Over It ; LAST BUZZ BUZZ-8019 (2001.11.30)

2001年録音の新譜です。スヴェンてこんなに歌がうまかったっけ?ソウルナンバーを多く取り上げているんですが、しっかりしたヴォーカルがなかなか魅力的です。女声コーラスも絡み、時にはロバート・クレイを彷彿させるようなモダンな曲調のものも、自分の歌としてよく消化しています。ギターも健在ですが、ブルース・ナンバー以外ではあまり披露していません。とにかく丁寧な作りのアルバムで、スヴェンのこだわりを感じた1枚です。



The Swan Silvertones ; 1946-1951 ; ACROBAT ADDCD 3004 (2009.10.26)

クロード・ジーター率いるスワン・シルヴァートーンズのKING録音を全曲収録したアルバムです。ウィリアム・ジョンスンのギターだけを伴奏にして、あるいは完全なアカペラでの演奏です。さらりとしたリズミカルなコーラスワークの上に乗って、柔らかく歌うジーターに、ソロモン・ウォマックがハードなシャウトで絡んで来るのが、このグループのパターンで、この時期の代表曲「アイ・クライド・ホリー」、有名曲「ウィル・ザ・サークル・ビ・アンブロークン」など、どちらかというとカントリー・タッチの曲が多いのも特徴です。この辺は日本のデューク・エイセズに影響を与えたのではと思うのですが。「ウォーキン・オン・ア・ビルディング」はジョン・フォガティが取り上げていました。後半になるとゆったりした曲が増えてきますが、日本への原爆投下の話から始まる「ジーザス・イズ・ゴッズ・アトミック・ボム」はどんなもんなんでしょうかねぇ。また「ユーズ・ミー・ロード」や「アイ・ゴット・ア・ウィットネス」など、ウォーマックの熱唱をメインに据えた曲が多くなり、ハード・ゴスペルに近い印象を受ける曲が後半に増えてきます。




The Swan Silvertones ; The Swan Silvertones ; VEE-JAY/P-VINE PCD-4326 (2006. 5. 9)

1959年リリースのアルバムに4曲加えたものです。僕はあまり熱心なゴスペルのファンではないんですが、このシリーズには思わず手を出してしまいました。VEE-JAYのゴスペルはなぜか聴きやすいというイメージがあったんです。で、この作品、他のメンバーがリードを取ることもありますが、クロード・ジーターの素晴らしいテナーとファルセットが軸で、ギターの他はコーラスがバックを付けていて、そのコーラスワークも見事です。ドゥーワップにも通じる感覚があるんですけど、「マイ・ロック」アップテンポでのリズムの切れ、「ザ・ローヅ・プレア」などで聴かれる、スローでの完璧なヴォイスコントロールによる美しい歌い上げ、やはりゴスペルならではですね。心が洗われる気分です。



Sy Klopps ; Berkley Soul ; BULLSEYE BLUES & JAZZ 11661-9634-2 (2000.10.28)

2000年リリース。サイ・クロップスは繊細な声の持ち主で、スムースなハイ・テナーで優しく唄います。発声の仕方にジャズ・ヴォーカルの影響を感じました。バンドはホーン、コーラス付きのゴージャスなもので、サイの力みのないヴォーカルを見事にもり立てます。ある面昔のビッグバンドをバックにした、日本のジャズ系歌謡曲歌手に通じるのかもしれません。リトル・ウィリー・ジョンで有名な「トーク・トゥ・ミー」なんて、その優しさにまいってしまいそうです。久々にしっかりした個性を持ったヴォーカルを聴くことができました。ただし、スリリングな演奏ではないです。



Syl Johnson ; Is It Because I'm Black? ; TWINIGHT 0048 (2007. 2.28)

1969〜71年のシルがHIに行く前のTWINIGHT時代の録音を中心に、「イズ・イット・ビコーズ・アイム・ブラック」の2006年リミックス、さらに80年代初頭の名曲「ミス・ファイン・ブラウン・フレイム」などが収録されているコンピです。TWINIGHT時代のシルはいかにもシカゴといったサウンドなんですが、なかなかファンキー。あの絞り出すような声は色気もあり魅力たっぷりですし、ギターも結構聴かせます。ビートルズの「カム・トゥゲザー」など声がよくマッチしてますし、テンプスノ「ゲット・レディ」のファンキーなカヴァーはさすがですね。一方ヒットを狙ったと思われる「ワン・ウェイ・チケット」「キス・バイ・キス」あたりのストリングの甘さも、シルには似合ってるように思いました。後はかなり録音の悪いものも入ってますが、リリースされなかったもののようです。最近はまたブルース回帰してるみたいですが、こうしたソウルなシルも好きです。



Syl Johnson ; Straight Up ; P-VINE PCD-25004 (2003.10.12)

1969年〜98年録音。と言ってもこれは単なるベスト盤ではなく、シルがいろいろな形で録りためていた音源からピックアップしたもので、未発表曲も多数です。「ミズ・ファイン・ブラウン・フレイム」は僕の大好きなファンクチューンで、ショートヴァージョンが収録、「グッディ・グッディ・グッド・タイムズ」なんて有名曲も入っていますが、ビックリしたのはダニー・ハザウェイと共同制作した3曲。キーボードの使い方にダニーの味が隠れていますが、シルはまったく負けていません。この他愛娘シリーナとのデュエットナンバーや、打ち込みドラムの曲など結構いろいろ入っているんですが、通して聴いていくと、とってもトータルな感じなんです。もちろん声質がかなり個性的なのもあるんですが、それ以上にアレンジなどにもシルの肌合いがいつもしっかり入っていて、「ぶれ」が少ないんですね。やはりこの個性は大したものです。



Syl Johnson ; Back In The Game ; DELMARK/P-VINE PCD-1992 (2003.11.16)

1994年リリース。中古で購入。シル・ジョンスンはHIの「Total Explosion」を聴いて以来のファンなんで、このアルバムは嬉しいです。ジャケに"with Hi Rhythm"とあるように、ホッジズ兄弟とハワード・グライムズをバックに、往年のサウンドを復活させるような音作りなんです。前述のアルバム収録曲も3曲ほどリメイクしてますし。でもちっとも懐古趣味じゃないですね。むしろシルの肌合いが変っていないことの方がすごいです。それだけ自分のスタイルを確立してるってことでしょう。ラストの「マブダチ」マジック・サムの「オール・オヴ・ユア・ラヴ」の熱演も泣けます。



Syl Johnson ; Hands Of Time ; HEP' ME H0082CD (2000. 5. 1)

1999年リリース。シルはここんところ活発にやっているようで嬉しいです。ドラムズは打ち込みなんですが、あんまり無機質な音ではありません。ときおり入るシル自身の生ハープのせいでしょうか。「これが俺のソウルだ!」という歌は健在です。でも、思ったほど印象に残りませんでした。インパクトのある楽曲が欲しいです。ところでジャケットのピンボケの写真、京都かどっかをバックにしてるようです。どこだろ?


Sylvester Cotton / Andrew Dunham ; Blues Sensation ; ACE CDCHD 869 (2004. 1. 1)

シルヴェスター・コットンは1948年、アンドリュー・ダナムは1949〜50年録音で、未発表8曲を含む決定盤がACEから出ました。といってもコットンのKRAZY KAT盤は聴いたことがなかったんで初体験です。ふたりともデトロイトの人で、バーニー・ベスマンの録音ですが、コットンはなんとなくライトニンに似たギターなんですよね。リズムの取り方とかはもっとザクザクしてますけど、ミシシッピ直系とはかなり違っているのが面白いです。やっぱりラジオやレコードから影響を受けたんでしょうか。スタイル自体はほぼワンパターンです。面白いのは「アイ・トライド」で、MODERNからLPでリリースされたときはなんとジョン・リー名義だったとか。ライトニンがジョン・リーのサウンドの影響を受けたのは有名ですが、ここで聴くコットンはライトニンの陰がちらちら。一方ダナムの方はよりジョン・リーの影響を強く感じるシンプルなブギやスローナンバーが中心で、改めてその存在感の強さを感じました。



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