CD INDEX(T)
 

アーティストの名前順に並んでいます。「TODAY'S CD」で紹介したものは紹介文が付いています(日付)。紹介文のないものは「おすすめCD」か「お気に入りのミュージシャン」の中で紹介されているもので、「Click Here!」をクリックすると該当のページにジャンプします。

BACK ・ NEXT ・ HOME ・ 音楽の部屋


 

T-Bone Walker ; I Want A Little Girl ; DELMARK DD-633 (2002. 8. 7)

1968年録音です。「コーン・ブレッド」で有名なハル・シンガーのサックスに、なんとシカゴのブルース・ドラマー、S.P.レィリーを加えた異色のセッションで、全体にジャジーな雰囲気なのに、ドラムだけちょっと違うっていうのが結構面白かったです。T-ボーンは少々声が荒れた感じですが、力強く、ギターもシャープな音を出しています。全体に曲調がフルソンに近い曲が多い感じですね。「アイ・ヘイト・トゥ・シー・ユー・ゴー」は明らかに「リコンシダー・ベイビー」の改作だし、「オール・ユア・フォルト」的な曲もあり、何だかCHESS時代のフルソンを意識しているように思いました。かなり楽しめました。



T-Bone Walker ; T-Bone Walker ; CAPITOL/TOSHIBA TOCP-6380 Click Here!

T-Bone Walker ; Very Rare ; WOUNDED BIRD WOU 6483 (2000.11. 9)

1973年に原盤リリース。未発表も加わっているようです。しかし豪華だなぁ。レイバー&ストーラーがプロデュースしたり、ディジー・ガレスピー、ズート・シムズ、ハービー・マン、ディヴィッド・ウォーカーから、ジム・ゴードン、チャールズ・ブラウン、ジェームズ・ブッカーまで、凄いです。曲は自分の曲より「フィーヴァー」とか「ジャスト・ア・リトル・ビット」など、ブルース系のスタンダードが中心。ギターもほとんど弾いていません。ご隠居様が弟子たちに囲まれて、ちょいと歌でもって感じで、リラックスしていてのどかなムードはいいです。アレンジには?の曲もありますが。まあ、こういうのもたまにはいいかな。



T-Broussard & The Zydeco Steppers ; Git It On - Git It On ; SOULWOOD no number (2003.11. 8)

2003年リリース。ザディコ・ウォーリアーズでフロントを務めていたブルッサーの自己名義録音が出ました。この人はジャケ写で見る限り3ローのアコーディオンを使っているようですが、かなりシャープな音を出します。曲調は割合シンプルなトゥーステップが続きますが、少しずつ変化をつけながら、ノンストップで踊らせようという指向はクリス・アルドワン(遠い親戚筋に当たるようです)に通じますが、ブルッサーの方がよりクレオール・ケイジャンの香りを感じさせます。それだけ冒険が少ないとも言えますが、でもリズムはしっかりとタイトで、ベースも重心が低く、やはり新世代ザディコの本流を行っていると言えるでしょう。ヴォーカルがちょいと弱いけど、ノリの気持ち良さで問題なくカヴァしてます。因みにギターはキース・フランクだったりします。



T-Broussard & The Zydeco Steppers ; Knock Knock ; SOULWOOD no number (2006. 4. 6)

2005年リリース。キース・フランクのSOULWOODからのアルバムらしく、キースがギター参加しています。しかしザディコはライヴで聴かなきゃ分からないという言葉は、こうしたアルバムを聴くと特に強く感じますね。タイトなリズムだしアコーディオンも切れ味良く、歌もそこそこ歌えていて、なかなかいけるとは思うんですが、スピーカーの前で聴いていても、ガツンと来るインパクトが少ないんです。ダイナミックレンジが足りないと言うか。特にこうしたダンサブルなザディコの場合、サウンドの弱さは歴然で、かなり大音量で鳴らさないと良さが引き出されないように思いました。ボタン、鍵盤両方のアコ−ディオンを弾き分け、割合クールに歌うんですが、上に書いたようなインパクトの弱さと、もうひとつ歌や曲に個性がないんで、ちょっと埋没しちゃいそうです。



T-Broussard & The Zydeco Steppers ; Super T ; TBROUSSARD no number (2009. 1. 7)

2008年リリース。これまた明るいノリのザディコ・アルバムです。T・ブルッサーは特に歌が上手いって訳でもないんですけど、軽快なノリと明るめのキーボードの音で、何ともB級的下世話さのある軽やかなサウンドがすごく魅力的。タイトル曲も今風なたたずまいだけどどこか微笑ましい感じなんです。スティーヴィー・ワンダーの「イズント・シー・ラヴリー」やらケニー・ロギンズの「フットルース」、さらにはマーヴィン・ゲイの「レッツ・ゲット・イット・オン」をパクってみたり、「ノック・ノック」だってボブ・ディランからもらってますねぇ。このどこか脳天気な明るさ、楽しくていいです。変にこねくり回してない分ストレートなダンス・ミュージックとして身体が揺れてきました。




T.J. Fowler ; 1948-1953 ; CLASSICS 5103 (2004. 8.28)

NATIONAL、SAVOYなどへの録音集です。ファウラーはデトロイトのピアニスト兼バンドリーダーで、ジョニー・オーティスとかカンザス・シティ・スタイルの亜流のような、いわゆるB級な雰囲気なんですが、「ミッドナイト・クリーパー」ではぐっとR&B色が出ていて、これは美味しい曲です。アラビックなイントロから始まる強烈な「レッド・ホット・ブルース」も、ちょっと弱い歌を除けば充分グルーヴィーですし、1952年のカルヴィン・フレイザーのギターがなかなか格好良く、ローカルシーンの生き生きとした様を感じることができます。



T-Model Ford ; Bad Man ; FAT POSSUM 80363-2 (2003. 1.18)

2002年リリース。最近のFAT POSSUMは音を作りすぎの感じがあったんでちょっと苦手なんですが、このアルバムはロバート・パーマー健在の頃の、現場感覚を感じさせるストレートな録音で、すんなり聴くことができました。T-モデルは狭い店でのライヴがすごそうだと思っていますが、これはそのイメージを描くことのできるアルバムで、スパムの存在感たっぷりのドラムと、ビヤビヤのギター、そしてジョン・リー亡きあとおそらく最もディープなブルースヴォーカルと思える声で、スタンダードを織り交ぜながらぐいぐい押してきます。あっと言う間に1枚聴き終えました。何だか初期のFAT POSSUMの良さが蘇ったようにも思えますが、当時ほどインパクトを感じなくなったのは、こちらの耳が慣れてしまったせいなんでしょうね。でもこのT-モデルはいいです!



T-Model Ford ; Jack Daniel Time ; MUDPUPPY MPR-LLC-001 (2008.10. 2)

2008年リリース。ローカルなジューク・ジョイントに足を踏み入れたかのような雰囲気の録音です。変に音を作らず、フォードの自然体な姿が捉えられていると思います。ひょっとしたら本当にライヴ録音なのかも。アコースティックの弾き語りとバンドものがバランス良く入っていますが、どちらも肌合いがほとんど変わらないのがこの人の魅力ですね。「ロック・ミー・ベイビー」のあとにクルーダップの「ザッツ・オールライト・ママ」を「フォーティ・フォー」スタイルでやっちゃったり、ミディアムなノリが絶妙な「ハイ・ヒール・スニーカー」とか、リズミカルな弾き語りの「キリング・フロア」とか、とにかくリアル。こういう人をちっちゃなハコで見られたら最高でしょうね。




The T.S.U. Toronados ; One Flight Too Many ; FUNKY DELICACIES ; DEL CD 0018 (2003. 5.23)

1960年代後半から70年代初頭の録音のようです。「フロム・ヒューストン、テキサス!」というイントロに続き、印象的なブラスのテーマから始まるファンキーなテーマ・インストを聴いて、只者ではないなと思いました。ドラムのタイトさが強烈で、それにホッとなブラスとちょっとゆるいオルガンが乗ってくると、あれ、どっかで聴いた感じだな。「ゲッティング・ザ・コーナーズ」は、こりゃ「タイトゥン・アップ」ですよ。それもそのはず、このバンドはアーチー・ベルの録音のバックバンドだったんだそうです。J.B.ばりのヴォーカルも出てくるし、スピーディな「イン・ザ・ミッドナイト・アワー」にアレンジのかっこいい「イッツ・ユア・シング」とカヴァーもイカしています。テキサスのローカルシーンをにぎあわせた、こうしたファンクバンドは聴き飽きません。掘り出し物でした。



T.V. Slim ; Flatfoot Sam ; OFFICIAL #5660 (2003.11.26)

1957〜68年にまたがる、T.V.スリムことオスカー・ウィルスのキャリアにまたがったコンピです。まあ何と言ってもこの人はタイトル曲ですね。「フラットフット」って扁平足のことかしらなんて考えながら、このルイジアナならではの緩さのあるナンバーに浸ると、何だか世知辛いものがどこか行きそうです。T.V.はカリフォルニアに出て活動しますが、時にジョン・リー・フッカーを思わせたりするギターが出たり、時にバスター・ブラウンのような投げやりっぽい歌い方が、ある種ポップさを醸し出したりと、いなたさの中にこの人ならではの魅力を感じました。



Tab Benoit ; Nice And Warm ; VANGUARD 79542-2 (2002.11. 5)

おそらく1992年以前の録音です。そもそもタブ・べノアに興味を持ったのはYAHOOの掲示板での「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」からなんですが、このアルバムに収録されています。ベースになっているアレンジは、ターンアラウンドのコード進行を除くとC.C.R.のものですが、歌い回しはタブなりのものに変えてあり、割合うまくいっていると思いました。この他トリオの演奏は、ジミ・ヘンドリックスからの影響を強く感じました。ワウワウこそ使っていませんが、ギターとヴォーカルのユニゾンとか、後期のジミを思わせるファンクネス溢れる曲調とか。またブルース系のギターの音色とかフレーズにはクリーム時代のクラプトンの影を感じました。まだルイジアナ色が少ない印象ですが、それなりに楽しめました。



Tab Benoit ; What I Live For ; VANGUARD 79543-2 (2002.12. 5)

1994年リリース。このアルバムでは、余分な音を排したギター・カッティングをバックにした、シンプルなロックが印象的でした。ジミ・ヘンドリックスの影は姿をひそめ、むしろルーツ回帰といった趣で、C.C.R.に通じるものも感じます。またブルースも取り上げていますが、「フーズ・ビーン・トーキン」などを聴くと、ロバート・クレイの影響を感じるのですが気のせいでしょうか。ギターも歌もしっかりしており、「ナイト・ライフ」の歌い回しなど新鮮でいいのですが、もうひとつ「売り」に欠ける感じもします。ライヴが僕には良すぎたのかもしれません。



Tab Benoit ; Live: Swampland Jam ; VANGUARD 79545-2 (2002.11. 9)

1997年初春、ルイジアナでのライヴです。これはタイトルに偽りなし!タブのファットな粘っこいギターと歌が、ユルユルとまではいきませんが実に雰囲気を出しています。それを盛り立てるようなご当地のゲストたちがまた豪華です。ヘンリー・グレイの職人芸的なピアノ、掛け声にも気合いが入るレイフル・ニールの深いトーンのハープ、ジャンピン・ジョニー、チャビー・キャリアらのアコーディオンが加わるとそこはまさに湖沼地帯!そしてタビー・トーマスの渋い歌声!それぞれ1〜2曲ずつですが、アルバムに彩りを添えています。しかし主役は何といってもタブ。どのゲストを迎えても、その男気を感じさせるヴォーカルと野太く響くギターはそれに負けることなく響き渡ります。いい人に出会えました。



Tab Benoit ; These Blues Are All Mine ; VANGUARD 79546-2 (2002.10.28)

1999年リリース。タブはYAHOOの掲示板で話題になっていて興味を持ちました。いかにもスワンプミュージックと言ったジャケットで、フレーズはオーソドックスですが粘りのあるギタープレイはかなり好感を持ちました。ヴォーカルもそれほど癖はないですがしっかり骨格を感じるものです。アコースティックで奏でるメンフィス・スリムの「マザー・アース」にセンスの良さを感じましたが、ブルースより「クロウフィッシン」などの泥臭いスワンプロックが魅力的です。他の作品も聴いてみることにしましょう。



Tab Benoit ; Fever For The Bayou ; TELARC BLUES CD-83622 (2005. 4. 1)

2005年リリースの新譜です。いつものようにルイジアナ・テイストを感じさせる粘っこいギターとヴォーカルで、エルモアの「アイ・キャント・ホールド・アウト」=「トーク・トゥ・ミー・ベイビー」をスライドを使わないでやるなど、ブルースを多くやっていますが、タイトル曲ではぐっと軽やかなスワンプポップよりのアプローチも聴かせます。「ゴールデン・クラウン」はブラック・インディアン・チャントで、モンク・ブードローが歌ってます。一方ブルース讃歌の「ザ・ブルース・イズ・ヒア・トゥ・ステイ」にはなんとシリル・ネヴィルがパーカッションとヴォーカルで参加。でもすべての曲で僕の一番のお気に入りは、C.C.R.の「ボーン・オン・ザ・バイユー」を彷彿させる「ブルース・ソー・バッド」ですね。タブとジョン・フォガティは昔から共通点を感じていましたが、ここでははっきりその姿勢を出しているように思いました。



Tab Benoit Et Al ; Voice Of The Wetlands ; RYCODISC RCD 10829 (2005.12.29)

2005年リリース。タイトルを見たとき、そしてボビー・チャールズの「クリーン・ウォーター」が入っているのを見て、カトリーナの後の作品かと思いましたが、これは1月には録音されていたものです。タブ得意のグリッティなギタープレイを軸に、ブルースやウェイロン・シボドーのフィドルをフューチャーしたケイジャン風のサウンドも聴かれますが、ゲストが豪華ですね。コーラスでまず耳に飛び込んで来たのがシリル・ネヴィルの粘っこい声。またインディアン・チャント風の曲ではモンク・ブードルーの声とタンバリンが冴えます。でも何と言ってもドクター・ジョンがピアノの他ヴォーカルで参加しているのがインパクト強いです。しかもアール・キングの「ウェアリー ・サイレント・ナイト」まで歌ってるんです。嬉しいなぁ。そしてこれを支えるリズム隊がまたこれ以上ないというほど強力です。山岸潤史とジャムアルバムを出した、ジョージ・ポーター・ジュニアとジョニー・ヴィダコヴィッチなんです。彼らがきっちりスタジオワークに徹しているため、そのグルーヴ感はさすがですね。



Tab Benoit ; Brother To The Blues ; TELARC CD-83639 (2006. 5. 1)

2006年リリースの新譜です。今回はルイジアナズ・リラックスというバンドを従え、文字通り伸び伸びと演奏しています。冒頭のファンキーな「パック・イット・アップ」からしてどこか余裕を感じる演奏。続くサム・クックの「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥー・ミー」のゆったり感、タイトル曲のカントリーテイスト、ロッキンナンバーにしてもどこか抜けた感じが心地良いです。いつものグリグリのタブを期待すると肩透かしを喰らいますけど、こうしたルイジアナならではのゆるさ、僕は大好きですから大満足。でもハンク・ウィリアムズの「ロンサム・ホウィッスル」、こりゃかまやつの「どうにかなるさ」の元歌だったのね。続くリトル・ジョニー・テイラーの「イフ・ユー・ラヴ・ミー・ライク・ユー・セイ」はどちらかというとアルバート・コリンズを意識した感じかな。全般に漂うリラックス感が魅力のアルバムです。



Tab Benoit With Louisiana's Leroux ; Power Of The Pontchartrain ; TELARC CD-83654 (2007. 9.29)

2007年リリース。タブは徐々にブルースからロックにシフトしてきたように思います。元々はジミ・ヘンドリクスからの影響も強い人でしたけど、一時結構ブルース色が強く、カヴァーも多かったんですが、今回はロニー・ジョンソンの1曲だけ。オリジナルが中心で、古びたシンラインから奏でられるギターの音色は秀逸です。またややハイトーンで張りのある声はさらに磨きがかかったみたい。ケイジャン風味のオリジナル「サクレイ・フィッシング」などを聴いてると、やっぱりジョン・フォガティに近いものを感じます。



Tab Benoit with Louisiana's Leroux ; Night Train To Nashville ; TELARC CD-83764 (2008. 6. 8)

2008年リリース。冒頭の「ナイト・トレイン」、声を聴いた瞬間にジョン・フォガティかと思っちゃいました。まあ昔から影響を強く受けていることははっきりしているんですが、ギターの雰囲気も含め凄く似ています。もちろんタブの方がぐっとブルース寄りで、アーシーですけど。またハーモニカ吹きのゲストもたくさんで、特に嬉しかったのがウェット・ウィリーのジミー・ホール。「ランデヴー・ウィズ・ザ・ブルース」と「マディ・ボトム・ブルース」ではヴォーカルもとってます。この他ジョニー・サンソンにキム・ウィルソンが参加。この結果アルバム全体としてブルース色がぐっと強くなりました。



Tab Smith ; Jump Time ; UNITED/DELMARK/P-VINE PCD-4709 (2003. 4. 2)

1951〜52年の録音。カウント・ベイシー楽団から全盛期のラッキー・ミリンダー楽団で活躍したサックス奏者の作品集です。まずは大ヒットした「ビコーズ・オヴ・ユー」が甘く切ないサウンドとメロディで素晴らしいです。いわゆるブロウものとは異なり、柔らかく素晴らしくなるアルトサックスの音色は、ちょっと甘すぎると感じる場面もありますが、その見事なテクニックに裏打ちされたサウンドは、何度も聴くと癖になってきます。おそらくアール・ボスティックにも多大な影響を与えたのではないでしょうか。テナーを吹くともう少し落ち着いた大人のムード。全体にムーディな曲が多いですが、「ダウン・ビート」「ブギー・ジュギー」等のジャンプナンバーではタイトな演奏も聴くことができます。自身も3曲で甘いヴォーカルを取るほか、ルイス・ブラックウェルも2曲歌っていますが、こちらはなかなかブルージーで聴きものです。



Tab Smith ; Crazy Walk ; UNITED/DELMARK DE-555 (2004.11. 5)

1955〜57年録音。ラッキー・ミリンダー楽団にいたタブのソロ集です。バックはオルガン、ベース、ドラムスで、割合軽めの、ちょっとチープさの漂う録音ですが、結構それが良かったりもします。アルトを吹いても、同じようにポップな選曲をしていたアール・ボスティックのような、強烈な感じはなく、どちらかというと軽妙なサックスを聴かせますが、しっかりしたテクニックに裏打ちされています。オルガン中心のコンボはビル・ドゲットを意識したんでしょうか。「プリテンド」「スターダスト」など甘めのスタンダードも取り上げていますが、やっぱりブルースナンバーの方が魅力的に聞こえました。とにかくあっさり味が持ち味って感じ。数曲でレイ・キングという人が歌っていますが、あんまり印象には残らなかったな。



Rockin' Tabby Thomas ; His Greatest Hits Volume II ; BLUE BEAT 0128 (2007. 6.22)

おそらく1960年代中期のものでしょう。ちょこっとしか書いていないライナーによれば、どうやらL.A.のHOLLYWOODレーベルから出された音のようです。でも「ブルース・レコーズ」を見ても1曲それらしい曲が当たるだけで、詳細は不明です。レーベル別のディスコグラフィを引っ張り出してみないと分からないようです。さて内容は、サブタイトルに「ルイジアナ・スワンプ・ポップを歌う」となってますけど、結構ブルースが多くてご機嫌です。圧ッ苦しい感じがたまりませんね。格好いいのが「ミスター・バザード」で、ギターがえぐくてたまりません。これだけはディスコに載ってまして、ルドルフ・リチャードと書いてあります。同じ録音かどうかは確かめようがないんですが。で、この人がギターで暴れてる「ガット・マイ・モジョ・ワーキン」、ゆったり目のシャッフルにアレンジされていて、これがまた気持ちいいんです。こういうの、好きです。



Tail Dragger ; American People ; DELMARK DE-728 (2004. 8.19)

1999年リリース。テイル・ドラッガーはシカゴのヴォーカリストで、芸名から分かるようにハウリン・ウルフの影響を強く感じさせます。バックをジョニー・B.ムーア、ビリー・ブランチ、アーロン・バートンなど名うてのミュージシャンが固め、ワイルドさを振りまきながらうなり、歌っています。前半はオロジナル中心、後半はウルフの他マディ、サニーボーイなどの名曲にチャレンジしていますが、ややひなびた感じもある歌は褒め言葉としてのB級で、実にリアルです。ギターのサウンドもどこかヒューバート・サムリンを彷彿させます。でもこれはスタジオなどにとどめておくより、生で見た方が面白いんでしょうね。強烈に臭いそうです。



Tail Dragger ; My Head Is Bald ; DELMARK/P-VINE PCD-23723 (2005.11.22)

2005年7月16日、シカゴはウエストサイドのヴァーンズ・フレンドリー・ラウンジでのライヴです。バックを固めるのは初期のS.O.B.の核をなしていたビリー・ブランチとルリー・ベル、さらにボブ・ストロジャーにケニー・スミスという、現在のシカゴで脂の乗り切った素晴らしい仕事をするメンバーですから、演奏が悪かろうはずはありません。でもそんなの関係ないとすべてもってっちゃうのが主役のテイル・ドラッガー。ハウリン・ウルフの影響を強く受けていると言いますが、もっと生々しさのある、まさにリアル・ブルースマンといってよいそのヴォーカルの迫力がビシビシ突き刺さってきます。ウルフ譲りのモーニンを聴かせる「マイ・ウーマン・イズ・ゴーン」もいいですが、やはり人生の深みを感じさせるスローブルースが絶品で、どれも7分を超える熱演ですが、全く飽きることがないです。タイトル曲ではジミー・ドウキンスが乱入して、彼らしいトリッキーなギターを披露していますが、タフなヴォーカルの前ではやや霞んでしまいますね。そしてやはりバックの素晴らしさ。とくに抑えに抑えたビリー・ブランチのハーモニカと、かっちりとバッキングしつつも、粘っこいオブリガートでヴォーカルをもり立てるルリー・ベルの素晴らしさは、このアルバムの価値をぐっと高めています。DVDも出るということ、これは是非映像も見たいですね。



Taj Mahal ; Taj Mahal ; COLUMBIA/LEGACY CK 65858 (2000. 9.21)

1967年録音のタジデビュー作のリイシュー。リミックスがすばらしく、とっても新鮮な音で心地よいです。ギターにジェシ・エド・ディヴィス、サイドとマンドリンにライ・クーダーが参加。タジは黒人ですが、いわゆるブルースの伝統に乗った人ではない(カリビアン)ためか、このブルース中心のアルバムもブルース畑ではほとんど評価されていません。でもロック界でのタジの評価は高いようです。「ステイツボロ・ブルース」はオールマンのヴァージョンの原型かな?「ダイヴィン・ダック」は後にジョニー・ウィンターが取り上げています。いずれも戦前ブルースマンの曲を斬新なアイディアでリニューアルしています。時代を突き抜けた音だと再確認できます。



Taj Mahal ; Natch'l Blues ; COLUMBIA/LEGACY CK 65857 (2000.11. 8)

1968年録音。最近リマスターされたTajの2nd.。1st.よりも全体にこなれた演奏で、曲もソウル・ナンバーを取り入れるなど、幅が広がっています。リマスターにより音質が向上しており、とても30年以上前の音とは思えません。20年前ならこれをブルースの範疇に加えるのに眉をしかめた人も多かったかもしれませんが、Keb Moなどが市民権を得た現在、あるいはオールド・スクールのブルースマン達のかなりの部分がコンテンポラリな音になってきた現在聴くと、ほとんど違和感がありません。ある意味時代を先取りしていたのかもしれませんね。



Taj Mahal ; The Real Thing ; COLUMBIA/LEGACY CK 65859 (2000.10.14)

1971年2月13日、フィルモア・イーストのライヴ。初CD化のようです。lyleさんが、ピーター・バラカンさんが絶賛していたというので聴いてみましたが、これはいいです。ホルンを主体としたバンドのグルーヴが、ちょっとニューオーリンズのブラスバンドっぽく、パーカッションも効いて、カリブ海の風を感じます。時にはリゾネイタをかき鳴らし、ハーモニカをブロウするタジ。曲はブルースにとらわれず、さまざまなパターンが交差していて、いかにもタジらしいです。初リリースのアップテンポの「シー・コート・ザ・ケイティ」に続くラスト18分のジャム風ナンバーが圧巻です。グッピーのマスターも気に入っていました。ことしのベスト・リイシューかもしれません。



Taj Mahal & The Phantom Blues Band Live ; Shoutin' In Key ; KAN-DU/HANNIBAL HNCD 1452 Click Here!

Taj Mahal ; Maestro ; HEADS UP HUCD3164 (2008.10.23)

2008年リリース。ゴージャスなサウンドの「スクラッチ・マイ・バック」からスタートし、次にバックにロス・ロボスを迎えたレゲエな「ネヴァー・レット・ユー・ゴー」を配するあたり、さすが幅広い音楽性を誇るタジらしいです。自身の古いナンバー「ファーザー・オン・ダウン・ザ・ロード」をファントム・ブルース・バンドのバックでリメイクしたり、アフリカテイストたっぷりの「ザンジバル」の次にロス・ロボスらしい少しロック調のブルームダスターしてる「TVママ」を持ってくるなど、つかみどころのなさが面白いです。バンジョーを聴かせる「スロウ・ドラッグ」、ファッツ・ドミノの「ハロー・ジョセフィーン」のバックは何とニューオーリンズ・ソシアル・クラブ!アイヴァン・ネヴィルにジョージ・ポーター・ジュニア、レオ・ノセンテリにヘンリー・バトラーと来れば出る音はおよそ想像できますね。素晴らしい!ラストの「ディディ・ワー・ディディ」はウィリー・ディクソンの方。ファントム・ブルース・バンドらしい重厚なサウンドで締めくくっています。「マエストロ」ってタイトル、伊達じゃない!




Talking Heads ; The Best Of Talking Heads ; SIRE / WARNER 8122-76488-2 (2010. 1.21)

1977〜88年に渡るベストです。このバンドは名前は知ってましたがまともに音を聴いたことがなかったんですが、先日グッピーで映像を見て興味を持ちました。いわゆるテクノ・サウンドかと思っていたんですが、思ったより黒っぽいなと。「テイク・ミー・トゥ・ザ・リヴァー」のカヴァーの縦ノリの処理など、改めて聴くとブラック・ミュージックから相当インスパイアされてるんだってことを感じました。後期になるほど音処理に手がかけられているようですが、ディヴィッド・ボウイに通じるヴォーカルと、ファンクネスを内側に取り込んだようなグルーヴはユニークですね。




Tampa Red ; Don't Tampa With The Blues ; PRESTIGE BLUESVILLE OBCCD-516-2 (2008. 9.24)

1960年録音。エレキの弾き語りアルバムです。「レット・ミー・プレイ・ウィズ・ユア・プードル」「イッツ・タイト・ライク・ザット」のようなダンス・チューンからゆったりしたブルース、リル・グリーンの名曲へのアンサー・ソング「ユー・ベター・ドゥ・ライト」、さらにはジム・ジャクソンの代表曲「カンザス・シティ・ブルース」までを、全体にゆったりと、落ち着いた感じでやっています。スライドを使わないのであの魔術のような単弦奏法は聴かれませんけれど、さすがベテランといった演奏。線の細めのハイトーンなヴォーカルも味わいがあります。




Tarheel Slim & Little Ann ; The RED ROBIN & FIRE Years ; COLLECTABLES COL 5159 (2005.12. 2)

1958〜62年録音。ターヒール・スリムことアレン・バンを初めて聴いたのはP-VINEのFIREもののLPで、先日のワイルド・ジミー・スプルーイルなどと一緒だったと思いますが、それにも収録されていた「ナンバー・ナイン・トレイン」が何といっても格好いいです。彼のギターは実か結構泥臭いフィンガーピッキングで、「マイ・カインダ・ウーマン」など、ギターだけ聴いているとなかなかダウンホームなんですよ。ところがリトル・アント組んじゃうととたんにカントリー風の甘々になっちゃうから面白いです。多分ヒット狙いなんでしょうが、ターヒール・スリムの魅力が半減してしまってると感じました。でもこの時代、ミッキー&シルヴィアといい、ニューヨークではデュオが人気だったんでしょうかね。



Ted Hawkins ; The Unstoppable ; CATFISH KATCD176FP (2001. 7.16)

1988年ロンドンでのライヴ。ゴスペルをベースにした弾き語りソウル・シンガーとでも言いましょうか。当時はイギリスに住んでいたようですが、殆どコードをかき鳴らすだけのギターをバックにした弾き語りで、とりたてたインパクトがあるわけじゃないんですが、滋味というか、そこはかとない雰囲気がこの人の歌にはあります。サム・クック・ナンバーからジョン・デンバーの「カントリー・ロード」まで、節操がないと言えばそうなんですが、自分の歌に消化しているところはやはりただ者ではないと言った感じです。



Ted Hawkins ; The Next Hundred Years ; DAVID GEFFEN COMPANY DGCD-24627 (2006. 2.16)

1994年リリース。実はこのアルバムはただ1曲、ラストナンバーの「光りある限り」が聴きたくて買いました。もちろんC.C.R.の名バラードです。でもアルバムを頭から聴いていくと、アコースティックギターをかき鳴らしながら、丁寧に自身の歌を歌っていくテッドがそこにいて、ついつい引き込まれてしまいました。ちょっとハスキーで、情を控えめにですが込めながら歌われる曲の数々、いわゆるブルースとしての味わいうんぬんでいったらそりゃスリルは足らないかもしれませんが、そこにはテッドの真実があるように感じました。というか、これはブルースアルバムじゃないんでしょうね。力を感じる歌で結構気に入りました。



Ted Taylor ; Taylor Made ; PAULA PCD-337 (2000. 6.30)

レコーディング・データがまったく記されていないんですが、サウンドから判断して、おそらく60年代末〜70年代初めのものでしょう。中古で購入。多分LPのストレート・リイシューです。ゴスペル・フレィヴァー溢れるハイトーンなテッドのヴォーカルは、リズム・ナンバーよりバラードで魅力が出ると思いました。ミディアムならHIサウンドのバックで聴いてみたいです。ファズ・トーンのギターがうねる曲があったりして、この時代のJEWEL/PAULAらしさを感じますが、やっぱりこのバックはねぇ。


Teedy & Paul David ; Just You, Just Me ; THREE LITTLE PIGGIES no number (2007.12.20)

2007年リリース。ポール・ディヴィッドのピアノをバックに、トリシア・ブッテがジャズを歌うアルバムです。品のいいピアノサウンドに乗って、まずはガーシュイン・ナンバーを2曲。トリシアの七色の声が何とも個性的で、まるで二人で掛け合いをしているように聞こえるときもあります。ジャズは疎いので元曲を知らないのがほとんどですが、ゆったりしたナンバーで特にゆとりを感じました。ただ、僕はトリシアにはもっとパンチのある歌を歌ってもらいたいと思いますけど。



Teenie Hodges & HI Ryhthm ; Collection 2000 ; MY RHYTHM RECORDS MRR01 (2000. 3.15)

出来立てのほやほや!音温度の高い(こんな表現あり?でも僕としては納得なんです)ビート、こりゃファンクですよ。でも、歌がユルいんですよね。気持ちいいユルさです。さらにユルユルのハーモニカが出てきて、誰かと思えばウィリー”ユー・ドント・ラヴ・ミー”コブズさんでした。ジョン・リー・サニーボーイの曲も気持ちいいファンク仕立てでいいですね。ちなみにこのCDは店で探してもありません。下のURLへどうぞ!
BlueSlim


Tenry Johns The King Kong Rocker ; TANRY MUSIC TM5042 (2006. 3. 3)

多分2005年のリリースです。テンリーはシカゴの人でベースも弾くようですが、ソウルフルなヴォーカルが売りです。いわゆるシカゴブルースのスタイルではなく、どちらかというとMALACOに通じるブルーズン・ソウルな感じですね。ややサウンドがチープな印象もありますが、躍動感はあり、歌も上手いので聴いていて安心です。レゲエタッチの曲やR&Bマナーの曲もあり、新しい世代へのアピールを考えているように思いますが、ちょっと中途半端な感じもしますね。もっとドロドロのブルーズンソウルでいいような気がするんですけど。



Terence Higgins ; In The Bywater ; GRIS GRIS BAG GGB001 (2004.11.11)

2004年リリース。ルイジアナ・ミュージック・ファクトリーのカタログの中で、ドラムセットを前に座った若者のジャケットだけで買ってしまいました。期待はもう少しセカンドラインがかったフォンクなサウンドだったんですが、どちらかというとフュージョン風味の強いファンクです。タイトル曲などスライドギターでテーマを弾いてて結構面白いんですが、サウンド全体がどうもすっきり整理されすぎてる感じです。さすがにドラムは手数も十分でかっこいいんですが、いまひとつうねりに欠けるかな。整理されたかっちりしたサウンドが単に僕に合わないだけかもしれませんが。



Teresa Lynne ; Mistress Of The Blues ; SUGAR DOG PRODUCTIONS no number (2007. 7.12)

2006年リリース。女性ヴォーカルでハーモニカ吹きという、結構珍しいタイプの人です。オーソドックスなエレクトリック・ブルースと、リゾネイタのスライドをバックにした少しアコースティックなバンドをバックに、前半はオリジナルのブルースを演奏しています。ハーモニカはすごく上手いといった感じじゃないですが、歌は割と聴けます。後半洒落たアレンジの「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・メイク・ラヴ・トゥ・ユー」なんてのがあったり、グラディス・ナイト&ピップスの「ゴット・トゥ・ユーズ・マイ・イマジネイション」なんてのもやってますが、後者はちょっと消化不良かな。ライヴで見ると少し印象が違うかも。



Terrance Simien & The Zydeco Experience ; Across The Parish Line ; AIM 5014 (2006.10.29)

2006年リリースですが、1985年以来の様々な録音も入っています。テレンスはザディコ・ミュージシャンの中ではかなり幅広い音楽性と高い知性を感じさせますが、このアルバムも例に漏れません。クリフトン・シェニエの「ユー・ユースト・トゥ・コール・ミー」はポール・サイモンも参加した1985年の録音で、シングル盤から起こしたためスクラッチのイズが入ってます。またタジ・マハルの「コリーナ」は1990年録音で、スタイルはレゲエ、見事なカリブ風味になってますし、リック・ダンコとガース・ハドソンが参加した1999年の「トワイライト」、う〜ん、懐かしいこの感じ。ザ・バンドのテイストが漂います。この他ディランの「ミシシッピ」とランディ・ニューマンの「ルイジアナ 1927」はカトリーナに被災したニューオーリンズの人々への思いが込められています。新録の「ティ・パ・ゴン・アベカ」や「ノーバディ・バット・ユー」、それに「ダンス・エヴリディ」などの曲は、ザディコというよりはロックやファンクの影響が強く、僕はどこかネヴィル・ブラザーズに通じるものを感じました。この間口の広さは、ザディコという音楽のイメージから少し遠い面もあるんですけど、練り込まれたサウンドが気持ちよく、僕は好きです。



Terrance Simien ; There's Room For Us All ; BLACK TOP CD BT-1096 (2007. 4.12)

1993年リリース。テレンスはザディコ・ミュージシャンの中でもダントツの歌唱力を持っていますが、このアルバムではその魅力が全開です。伝統的なザディコよりかなりファンキーなリズムを取り入れていて、例えば「トゥート・クェルン・アン」ではP-ファンクを思わせるラップから入ってますし、「カム・バック・ホーム」「ウィル・アイ・エヴァー・ラーン?」あたりはレゲエ風味がたっぷり。バラードの「シンス・アイル・オーヴァー」「アイ・シャル・ビー・リリースト」でじっくりと聴かせる歌のすばらしさは格別です。また「グルーヴ・ミー」「ラヴ・ランド」はバックがミーターズ(ただしドラムはラッセル・バティステ)!最高のグルーヴをバックに最高の歌を聴かせます。こうした曲の合間に配置してあるトゥーステップが、テレンスの味ですね。好盤です。



Terrance Simien ; Jam The Jazzfest ; TONE-COOL CD TC 1171 (2003. 7.30)

1998年リリース。フェスティヴァル向けに出したもののようです。テレンスの割合柔らかいアコーディオンに、優しげで端正なヴォーカルが、ニューオーリンズ風味の強いセカンドライン・フォンクに上手くマッチしています。ボブ・ディランの「ベイビー・ストップ・クライング」になるとアート・ネヴィルにダリル・ジョンソンまで入り、ニューオーリンズ・ポップですね。全体にパーカッションの使い方など、都会的なサウンドでまとめられていて、ラフィエの野趣溢れるザディコとはまた一味違った味わいです。



Terrance Simien & The Zydeco Experience ; Live! Worldwide ; AIM 5016 CD (2007.11. 7)

2007年リリース。テレンスの各地で行ったライヴからの集成のようです。彼の音楽はザディコをベースにしながらも様々な要素を取り入れているのが特徴で、ハイランダー・ギターのような響きがアフリカンな「ダンス・エヴリバディ」、お洒落なバラード「ミシシッピ」、タジ・マハルも取り上げている「ジョニー・トゥー・バッド」や「ピアニスト」などのレゲエと多彩なサウンドが楽しいです。またテレンスの歌い方はシリル・ネヴィルに通じるなと思っていたら、なんと後期ミーターズのメドレーも飛び出しますし、「アイコ・アイコ」から始まるニューオーリンズ・メドレーもミーターズ的かつブラック・インディアン・ちゃんと的でもあります。最後にアメリカ国家なんてのも出てきますが、多彩で楽しいサウンドの魅力たっぷりのライヴ盤です。



Terri Hendrix ; Wilory Farm ; TYCOON COWGIRL CSCCD 1007 (2002. 7.21)

1998年リリース。このテキサス産のカントリー・フレイヴァ溢れるアルバムは凄く心地好いです。車でうちのカミサンが聴いていて「これ、いいわね」なんて言うのも珍しい。フォーク、カントリー、ロックなど様々な音楽の要素を見事にミックスして、自分の身近な世界を確かなタッチのサウンドに乗せて表現しています。「シスターズ・アパートメント」なんてクールなブルーグラスとロカビリーをミックスしたようなの演奏に、ちょっと囁くようなヴォーカルを乗せ、一瞬ロックの名曲(ああタイトルが出てこない)のリフを交えたり、実に心憎くて大のお気に入りです。一方で「ホール・イン・マイ・ポケット」のような心に染み入る歌声も聴かせます。丁寧な作りのインレイなど、大当たりの1枚でした。



Terri Hendrix ; Live ; CONTINENTAL SONG CITY CSCCD 1015 (2003. 2.10)

1999年3月、テキサスはシボロ・クリーク・カントリー・クラブでのライヴ。ジャケットにあるイラストから想像するに、ブルース・ブラザーズに登場するカントリー・クラブみたいなところのようです。冒頭からスティール・ギターが入ってくるんで、かなりカントリータッチの強い印象ですが、ブルーグラス風のラグ「トゥー・ダラー・シューズ」とかはやっぱりテリならではの世界。フィンガー・ピッキングがかっこいい「ダナ・ブルース」では「ケーキが怖い」なんて歌ってますし、後半に進むにしたがってフォークやロック、ジャズなどをしっかり吸収したテリの幅の広さがどんどん出てきます。とにかくこの人の明るくすっきりした、でも一筋縄でいかない歌の世界は、底無し沼のような恐ろしさすら感じます。こんな女に惚れたら大変なことになりそう!でも惚れちゃいそうです!



Terri Hendrix ; Live In San Marcos ; WILORY WR30004 (2003. 2. 7)

2001年のまさにまるごとそのまんまを記録したライヴ盤。これがまたいいんです。暖かくって、明るくって、テリをはじめメンバーが本当に音楽を楽しんでいるのがスピーカーの向こうからバンバン伝わってくるんです。スタジオ盤のテリの歌が造り物じゃないってのがよく分かります。うまいんですよ、この人は本当に!1曲1曲の表情が本当に豊かで、全く飽きることなく一気に聴き通しました。ラストのモノローグでヘンリー・トーマスの「フィッシング・ブルース」をタジ・マハルの演奏で気に入って取り上げたことなど全曲にわたる自己解説を、飼い犬の話などを交えながら入れているあたりがファンサーヴィス。そしてボーナストラックはなんとカントリー盤「ワイルドでいこう」!これがはまってるんです。



Terri Hendrix ; The Ring ; WILORY WR30005 (2003. 2. 4)

2002年リリース。この人の前々作「Wilory Farm」は大のお気に入りだったんですが、これはそれを凌ぐ出来かも!よく練られたアコースティック・サウンドで、カントリー・フレイヴァーをふんだんに盛り込みながら、抑制の効いたヴォーカルや脳天気にならないメロディライン等、全体にクールさが漂っています。特に「アイ・ファウンド・ザ・ライオンズ」やロックするジャジーな「フロム・アナザー・プラネット」、夜の情景たっぷりな「ナイト・ウルヴズ」など、テリの真骨頂です。「トゥルース・イズ・ストレンジ」や「ロング・タイム・カミング」のサウンドの美しさ、語りかけるようなタイトル曲は染みてきますねぇ。とにかくテリはチャーミングなんですが軽くならない、存在感のある音楽を作る人です。大推薦ですね。



Terri Hendrix ; Celebrate The Difference ; WILOBY WR30007 (2006. 8. 8)

2005年リリース。「お子様向け」と銘打たれたアルバムで、中にある歌詞を読んでも英語力のない僕でも分かるような作品が並んでいるんですが、これがすごくいいんです。「個性」を大切にすること、「違い」のすばらしさをたたえることを動物を例に歌った曲が多く、「羊の中に山羊がいたっていいじゃない」的なセンスは、なんだか「セサミ・ストリート」に通じるものを感じますが、ぐっと身近で、わざとらしさを感じさせません。カントリー音楽の軽快なタッチの魅力を、女性ならではの包容力のある暖かい優しさで包みながら、しっかりメッセージを伝えるこの音楽は、やっぱりテリらしい作品なんだなって思いました。聴くと何だか心が洗われるアルバムです。



Terri Hendrix ; The Spiritual Kind ; WILORY WR30008 (2007.10. 2)

2007年リリース。誤解を恐れずに、女性と男性は感性が違うというのが僕の考えなんですけれど、このテリの音楽から感じられるものは、まさに女性ならではの魅力です。これはいわゆる色香とは違う、もっと魂の奥底にある女性らしさが、ふつふつと沸き上がるように音楽に溶け込んでいるんです。もちろんカントリーをベースにしながらも、確かな演奏力を持ちながらも、そんなものはすべて手段に過ぎず、結局彼女の女性としての魅力を表現するのにうまく使われているだけ、そのくらい彼女の内面が見事に表現されていると思います。ジャズのテイストをうまく用いた「ミード・スウィング」にしても、歌われる音楽への愛情が、女性ならではの包容力を感じさせるものなんです。聴いていて一瞬ジョーン・バエズを思わせる「強い」声もあったりしますが、ローラ・ニーロ、ジョニ・ミッチェルら、素晴らしい女性シンガー・ソングライター達のもつ表現力に匹敵する、しかもテリならではのどこかほわっとした、土と毛糸の香りのするフィーリングが溢れています。一昨ごとにどんどん豊かさを増すテリ、一体どこまで行くのか今後も楽しみです。



Terry And The Zydeco Bad Boys ; Terry And The Zydeco Bad Boys ; MTE MTE-5076-2 (2003.11. 3)

2003年リリース。若いテリー・ドミング(ドマングかも)のアルバムでまず印象に残るのは思いっ切り高くチューニングしたスネアの叩き出す乾いたリズムです。それに乗ってタイトなリズムで始まる「ウェイク・アップ・オールド・マン」は一瞬クリス・アルドワンの曲を思い出させました。ケイジャン・アコの音もクリスほどパーカッシヴじゃないですが、明らかに影響を受けていると思います。またバックにケント・オーガストがギターで参加していて、結構弾きまくっています。ボブ・マーリーの「ワン・ラヴ」なんて曲をやっているのもいかにも若手らしくいいなぁ。そんな中しっかりワルツやトゥーステップで伝統も感じさせたりして。この先が楽しみですね。



Terry And The Zydeco Bad Boys ; Creoke To The Core ; MTE MTE-5086 (2006. 6.15)

2006年リリース。クリス・アルドワンに通じる、シャープなボタンアコによるタイトなトゥーステップに、ちょっと今風のワルツと、ザディコ新世代の王道を行くようなサウンドが中心です。クリスに通じる感じかなと思ってクレジットを見ると、何と当の本人がベース弾いてます(しかし写真見ると兄のショーン並みに太ってますね)。アコーディオンはかなり弾けていますが、ヴォーカルが弱いのがちょっと残念。それにコーラスワークもない分、モダンさに欠けます。より伝統的といっていいかな。変化球はブルースナンバーの「カントリー・ガール」をギターのボビー・ブルッサードが歌って弾くのと、モダンなアレンジの「アイ・ヒア・ユー・ノッキン」のソウルっぽさかな。多分この人はライヴの方がいい演奏するように思いました。



Terry Evans ; Blues For Thought ; ACADIA ACA 8097 (2006. 1.13)

1994年リリース。テリーはボビー・キングとともにライ・クーダーのバンドのヴォーカルを務めていましたが、これがどうやら初ソロ作です。タイトルにブルースってありますけど、ギターはライが全面的に参加、しかもドラムはジム・ケルトナーですからやはりかなりロック色が強くなります。ピアノにはスプーナー・オールダムやフランキー・フォードの名前も。まず冒頭の「トゥー・メニー・クックス」、ジェシー・フォーチューンの代表曲を影も形もないようにファンキーなアレンジにしてて格好いいです。全体にスライドギターをスパイスのように利かせ、ゴスペル色の強いテリーのストロングヴォイスを活かしながら、ダイナミックレンジの広いサウンドメイクをしています。曲によってはテリー自身のアコースティックギターも入りますが、アルバムタイトルほどブルースのカラーは強くないですね。西海岸録音ですが、音は南部の香りがします。最近の作品より面白く聴くことができました。



Terry Evans ; Puttin' It Down ; AUDIO QUEST AQ-CD1038 (2007. 9. 1)

1995年リリース。ジム・ケルトナーやフィル・ボッシュのしまったドラムに支えられ、ライ・クーダーの野太いスライドが彩りを与えるという、テリーにとっては理想的なバックに乗って、ゴスペル・テイスト溢れる歌を聴かせます。といってもいわゆるシャウト系ではなく、どちらかというとホワイト・ゴスペルにも通じる感じで、テリーの声はタフですが、サウンドは結構軽妙、この辺のバランスが面白いです。「イン・ディス・ディ・アンド・タイム」のトロンボーンのリフが、妙に憂歌団の「パチンコ」を彷彿させたりして、思わずにやけちゃいました。ある意味最近のベン・ハーパー等の音楽を先取りしているような印象すらあります。



Terry Evans ; Mississippi Magic ; AUDIOQUEST AQ 1057 (2002.11.24)

2000年リリース。中古で購入しました。テリーはライ・クーダーと一緒に活動していた、ゴスペルフィール溢れる人という印象しかなかったんですが、こうしてリーダー作を聴いてみるとやはりそのストロングヴォイスや、バックのコーラスの配し方など、そのルーツがはっきり分かります。また「ホエア・ザ・サザン・クロッセズ・ザ・ドッグ」は、タジ・マハルの「シー・コート・ザ・ケィティ」のリメイクのような感じで、いわゆるドロドロしたブルースとは明らかに感じが違います。歌がとても丁寧で、スローブルースでも破綻がないんですが、その分スリルにも欠ける感じはしました。むしろウィルソン・ピケットで有名な「ドント・レット・ザ・グリーン・グラス・フール・ユー」のようなゴスペル系の曲の方がしっくり来ます。「レット・ラヴ・ビギン」のような自作のクールなファンクネスを感じる曲がもっと前面に出てくると、かなり面白いかなって思いました。



Terry Evans ; Live Like A Hurricane ; AUDIOQUEST MUSIC AQM 1058 (2003. 2.11)

2003年リリースのライヴです。録音時期、場所等は不明ですが、新しいものだと思います。ギター、キーボード、ベース、ドラムのおそらくパーマネントなバンドをバックに、ストロングなヴォーカルが全開です。ミディアムの「ルーフトップ・トムキャット」あたりのドスの効いたヴォーカルを聴くと、新しいセンスとミシシッピの伝統の両方を巧みに混ぜ合わせている感じで、テリーの真骨頂ではないでしょうか。ライ・クーダーの「Show Time」でのボビー・キングとの熱唱でも有名な「アット・ザ・ダーク・エンド・オヴ・ザ・ストリート」も、その時の演奏を彷彿させるようなアレンジで、ディープヴォイスが映えてます。「ナッチャ・ボーン・ラヴァー」であおり、「ジャスト・ア・リトル・ビット」で乗せていくあたりのショウマンシップもイカしていて、来日しないかななんて思いました。ソウルフルな「ワン・ウェイ・チケット・トゥ・メンフィス」から「プット・ザ・マネー・イン・ユア・ポケット」といった終盤も、演奏のロックっぽさが邪魔にならず、上手くマッチしてます。いかにもロードの音をまんま捉えたリアルな雰囲気がいいですね。



Terry Evans ; Fire In The Feeling ; VALLEY ENTERTAINMENT VLT-15200 (2005. 8.18)

2005年リリース。いきなり耳に飛び込んで来たのは、粘っこいギターの絡みつく隙間のあるバンドサウンドに乗ったディープなテリーの歌声。自分で重ねたゴスペルフィールたっぷりのコーラスも雰囲気たっぷり。全体に音作りがアコースティックになっていますが、この辺りが最近の流行かもしれませんね。全体に前作で聴かれたドファンク路線は息を潜め、リゾネイタによるスライドなどザラッとしたバックに柔らかい歌といった組み合わせですが、これなかなかいい感じでマッチしていると思います。もともとライ・クーダーとやってた人だから当然とも言えるんですが、その頃よりサウンドがざらつきがあるのが面白いところ。パーカッションの利いたアコースティックなファンクといえる「ターン・オン・ユア・ラヴライト」を聴いていたら、アイズレーズがカヴァーした「ラヴ・ザ・ワン・ユア・ウィズ」当たりを思い出しました。歌の良さは言うまでもなく、よくサウンドの練り込まれた佳作だと思います。



Terry Timmons ; 1950-1953 ; CLASSICS 5092 (2004. 5.27)

この人はメンフィス・スリムのデュオしか聴いたことがなく、ここにもそれが収録されていますが、こうして作品を通して聴いてみると、結構この時代の王道を行く歌い手だったのかなと思いました。ダイナ・ワシントンに似たしっかりとしたブルースシンギングが持ち味で、スリムと別れた52年のニューヨーク録音では、R&Bをしっかりとした張りのある声で歌っています。53年になると、レーベルの意向もあるのか、ブロードウェイのミュージカルに通じるようなポップな歌を、持ち前の歌唱力で歌っており、ちょっとスリルに欠けますが、これはある意味彼女には良かったのかなとも思いました。しかしその後の活動が殆どないとのこと。どうしちゃったんでしょうね。



Terry "Big T" Williams & Wesley "Junebug" Jefferson ; Meet Me In The Cotton Field ; BROKE & HUNGRY BH13003 (2007.12. 6)

2005年と2007年に録音された新譜です。綿花畑に古びた蓄音機といった、戦前南部を思わせるジャケットやディスクから、古いブルースのスタイルを目指していることははっきりしていて、実際「シー・シー・ライダー」とか「キャットフィッシュ・ブルース」もやってるんですが、アコースティックの曲はそうした古さを上手く再現していますが、エレキの曲は意外と現代的なんです。「キャットフィッシュ・ブルース」なんてジミ・ヘンドリックスを一瞬彷彿と刺せる部分もあったりします。「キャント・ビー・サティスファイド」はもちろんマディの名曲ですが、スライドではなくアコースティックのコードプレイに乗って飄々とうたう感じがなかなかいいですね。冒頭のワークソング風の「ミート・ミー・イン・ザ・ボトム」とラストの「ブルース・イズ・ライク・ザ・リヴァー」をアカペラで歌っていますが、こういうのを聴くとブルースの血が脈々と流れているのを感じます。



Texas Eastside Kings ; Texas Eastside Kings ; DIALTONE DT0005 (2001. 9.26)

2001年リリースの新譜が届きました。テキサス・トランペッツのバックを務めたイースト・サイド・バンド系列のバンドですが、これがいいんですよ。凄く目立つ曲があるわけじゃないんですが、なんだか次の曲を聴きたいとわくわくしちゃう感じです。曲はオーソドックスなブルースにローカル色を感じるファンクといった取り合わせで、メンバーが取っ替え引っ替え唄ってます。録音はライヴに限りなく近いほぼ一発録りですが、程よいグルーヴと適度にルーズな感じが絶妙で、思わず2ラウンド目にいってしまいました。バンド演奏をいかにも楽しんでいるのが、聴き手に伝わる好盤。演奏は派手ならいいってものじゃないです。この人達、本当に癖になります。



Texas Johnny Brown ; The Blues Defender ; CHOCTAW CREEK CCR 10002 (2002. 5.30)

2000年録音。テキサス・ジョニー・ブラウンはDUKEでボビー・ブランドやジュニア・パーカーなどと仕事をしていたギタリスト・コンポーザで、このアルバムもほぼ自作曲で固めています。B.B.キング・マナーの、クリアーでマイルドなトーンのギターは安定した感じで、時折ゲイトマウスを思わせる指さばきが聞こえるあたり、やはり只者でないなといった感じがしました。それに比べると歌はやや弱い印象でしたが、決して悪いわけではありません。滋味のある穏やかな歌です。タイトル曲がニューオーリンズ風味(「メス・アラウンド」のリフが出たりします)のが「ブルースを守る者」というタイトルと合せると何だか微笑ましかったりします。ラスト2曲は聴き応えがありました。



Texas Northside Kings ; Texas Northside Kings ; DIALTONE/P-VINE PCD-25053 (2007. 3. 5)

2007年リリース、DIALTONEはとうとう東西南北完全制覇してしまいましたが、このアルバムはバンドではなく、6人の若手白人ギタリストのオムニバス形式になっています。バックはウィリー・サンプソンのドラムにアール・ギリアムのキーボード、さらにスポット・バーネットがサックスと、DIALTONEらしいベテランが固め、独特のルーズなノリを出してます。フロントの面々は紅一点のイヴ・モンシーズを初めとして、ジャキンジャキンのテキサスギターというよりは、例えばジミー・ヴォーン当たりのいぶし銀的プレイの方が多いですね。妙に落ち着いた歌のショーン・ピットマンやセス・ウォーカーあたりになると、歌も含めて東テキサスからルイジアナ的な素朴さもあり、ジョニー・モーラーはインストじゃロニー・マック、歌が入るとセカンドラインしてたりします。このガルフ・コースト的なノリは大好きなのではまります。現在ファビュラス・サンダーバーズでも活躍しているというニック・カランがバリバリに歌う「スリッピン&スライディン」、気合い入ってますね。とにかくSRVを期待すると完全に肩透かしですけど、実に実にテキサスらしい、そしてDIALTONEらしい素敵なアルバムです。



Texas Southside Kings ; Texas Southside Kings ; DIALTONE/P-VINE PCD-25045 (2006. 7.21)

2006年リリース。ビッグ・ウォルター・プライス以外はほとんど無名の人たちという、実にDIALTONEらしい作品なんですが、これといった目立った曲はないものの、その独特のノリといい、聴き込むにつけ味わいが増していきます。この作品についてはbsr70号に詳しいレビューを書いたんですが、その時ピアノのジーン・テイラーについて、すごく力強くていいピアノを弾くと感じました。当時素性を知らなかったんですが、booneyさんやライナーノートで、ファビュラス・サンダーバーズなどで弾いていたと知り納得。全体にガツンとしたインパクトを期待しちゃだめです。するめを噛みしめるように聴くのがこのアルバムの正しい楽しみ方だと思います。



The Texas Trumpets ; The Texas Trumpets ; DIALTONE DT0002 (2000.10.27)

1999年録音。これがもうご機嫌です。フロントは4本のトランペットで、オースティンあたりのバックバンドがついているんですが、グルーヴ感が絶妙です。ファンク系の曲は、音は粒立っているんですが、クールにうなりすぎていない、というよりはホットです。あえて言えば古臭い感じがするんですが、それが魅力なんです。一発ではまりました、ペットは4者4様で面白いですし、歌ものも楽しいです。JB風ファンク、「トランプ」風のファンキーナンバー、リトル・ウォルターの「ラスト・ナイト」、はたまたジョー・ターナーの「シェイク・ラトル・アンド・ロール」と多彩ですが、目玉は後半のテキサス臭丸出しのシャッフルナンバーでしょう。なんにも考えず、車で聴き続けていられるアルバムでした。



Thelma Jones ; Second Chance ; KENT CDKEND 277 (2008. 4.16)

前半が1967〜68年のBARRY録音、後半は1978年のCOLUMBIA録音です。60年代はパンチの効いた声を生かし、弾けるようなアップナンバーと、若さは感じますが伸びやかに歌うバラードは、いずれもアリサ・フランクリンの影を強く感じます。ちょっと声は軽めなんですが、けれんみのない歌が魅力だと思いました。タイトル曲の柔らかめな歌い方に個性を感じます。一方70年代の録音はアルバムにシングルの音を足したもののようで、ぐっと成熟した歌声を聴かせます。時代が時代なのでディスコ・ナンバーもあり、それがシングル曲。ただ若い頃のような溌剌とした感じが失われているのは仕方がないのかな。60年代の歌の方に軍配を上げたいと思います。



Thelonious Monk ; The Unique Thelonious Monk ; RIVERSIDE/ORIGINAL JAZZ OJCCD-064-2 (2008. 1.16)

1956年録音。切手を模したモノトーンのジャケットのイカしてることと、タイトルの「ユニーク」に惹かれました。セロニアス・モンクというピアニストはあまり聴いたことがないんですけど、面白いコード使いですね。「ハニーサックル・ローズ」がこんなにモダンになっちゃうなんて。ちょっとメランコリックな感じもありますが、うまい具合に着地しちゃうセンスが何とも引き込まれます。まさにユニーク!同じことは「二人でお茶を」でも感じました。アート・ブレイキーのピアノは控え目だけど出るとこは出るって感じだし。この人、もう少し聴いてみたいな。



Theresa Anderson ; Vibes ; RABADASH RAB-010 (2002. 4.21)

1994年リリース。テレサはジャズ畑の人のようです。いきなりかなり現代的なアレンジの「サマータイム」ですが、これがビビッときました。声はキュートですがすごくこなれた歌い方で、かわいらしさとムードの奥底にほのかな色香を感じます。この他「ジー・ベイビー..」とか「ラウンド・ミッドナイト」など、演奏もしっかりジャズで、歌もジャジーなんですが、へんに泥臭くなく、聴きやすいんです。一方「スウィング・ロウ」ではゴスペルというよりはフォークソングのような肌合いのアレンジと歌い方を聴かせ、一筋縄ではいかないところを感じさせます。適度に透明感があってテクニックも充分。雨の中で聴いていて、なんとなくすうっとした気分になれました。



Theryl "Houseman" DeClouet ; The Truth Iz Out ; THERYL "HOUSEMAN" DeCLOUET no number (2007. 7.10)

2007年リリース。ハウスマンはギャラクティックのヴォーカルとしてパークタワーに出たときに見たんですが、なんだか大仰で気に入らなかったんです。ですから前作は耳にしたけど購入せず。ところが今作を聴いてちょっと見方が変わりました。マーク・ペロのベースに山岸潤史のギターといえばパパ・グロウズ・ファンクと同じですが、キーボードにはアイヴァン・ネヴィルの名前も。ファンキー・ナンバーでも変にがなることなく落ち着いた歌を聴かせていますが、スローナンバーはかなり聴かせます。モダンなソウルとして自然に聴くことができました。「ハッピーリー・エヴァー・アフター」なんてかなりポップな作りだし、「アイム・ブルー」に至っては洒落たジャズ・ヴォーカルになってます。器用な人なんですね。



Thomas "Big Hat" Fields ; Big Hat Zydeco Mix ; MAISON DE SOUL 1081 (2004. 6.29)

2004年リリース。ビッグハットの新譜は、クレオール色の強い王道を行くサウンドです。彼の太い声と、ソフトだけどビートの出てるアコーディオンがメインで、リズム隊もサックスも、さらにはハーモニカもローカルな感じ。ヴォーカルにはジェネヴァ・ムートンも入っていて、ファルコンズの「アイ・ファウンド・ア・ラヴ」や「マチルダ」などバラード系でいい味を出してます。何だか野外のパーティでみんなを踊らせている光景が目に浮かんで来ました。こうした土着な感じも大好きです。



Tin Men ; Super Great Music For Modern Lovers ; CORRUGATED TM8940 (2005. 2. 6)

2003年リリース。来日中のワッシュボード・チャズの別ユニットです。この大仰なタイトルが人を食ってていいんですが、ワッシュボード、ギター、スーザホンという構成から、ジャグバンドなんだけど小粋でモダンな音が飛び出してくるのがタイトルに偽りなしです。ファッツ・ウォーラーの「ルルズ・バック・イン・タウン」もジャキジャキしたリズムが効いていますし、ギターのアレックスの歌が結構ヒップで新しいんです。途中女性がシャワー浴びるサウンドかなんか入れちゃうのも、インレイで男女が抱き合うのも、全部コンセプトなんでしょうね。こういった新しい感覚を持っているため、古臭さを微塵も感じさせません。むしろ格好いいと思いました。もちろんチャズも歌ってますよ。



Tin Men ; Freaks For Industry! ; VELVETY POD MUSIC no number (2005. 5.16)

2005年の新譜です。いやいや、相変わらずなんでもありの楽しい演奏です。ワッシュボードにギターにスーザホンという実に変則的なトリオなんですが、得意のジャグバンドナンバーやオールド・ジャズにとどまらず、幅広い音楽性に溢れてます。酒悦で適度にポップな曲がてんこ盛り!ディヴ・バーソロミューあたりまでは驚かないんですけど、スーザホン吹いてるからやったのかと勘ぐっちゃう「ワシントン・ポスト行進曲」でぶっ飛び、挙げ句の果てにどっかで聴いたようなギターリフから飛び出してきたのはなんと「移民の歌」ですよ。これには腰を抜かしました。ジミー・ペイジもまさかこんなカヴァーのされ方は想像してないでしょう。本当に楽しい1枚です。



Tinsley Ellis ; Moment Of Truth ; ASLLIGATOR ALCD 4916 (2007. 7. 7)

2007年の新譜です。レスポールから繰り出されるファットなブルース・ロック・サウンドは嫌みがないし、「ゲット・トゥ・ザ・ボトム」のようなミディアムのノリはなかなか心地良いです。いろんなブルースマンから演奏を吸収しているのも分かります。でもピンと来ないんですよね。多分ヴォーカルじゃないかな。まっすぐで上手いけど味を感じないんです。そんな中サム&デイヴの「アイ・テイク・ワット・アイ・ウォント」はスピーディで格好いいな。必ず光る曲はあるってことでしょうか。



Tiny Bradshaw ; 1934-1947 ; CLASSICS 5011 (2001.11.26)

タイニーと言えば、KING時代の「トレイン・ケプト・ア・ローリン」というジャンピーなナンバーの印象が強いんですが、34年録音はほとんどキャブ・キャロウェイです。声が軽いんですが、初期ジャズ的なサウンドをバックに元気一杯にスキャットしてます。「アラビアの酋長」(ところでこれのオリジナルって誰でしょう?)もポップに決めてます。ところが40年代に入るとしっとりとしたバラード中心になっているあたりが実に流行に敏感て感じです。軽快なジャンプを期待すると肩透かしですが、エンターティナーとしてはとっても魅力的です。



Tiny Topsy & Lula Reed ; Just A Liitle Bit - FEDERAL's Queens Of New Breed R&B ; ACE CDLUX 003 (2010. 2.23)

1957〜1962年録音。ルラ・リードはフレディ・キングのデュオで知られていますが、時流に乗った「ドゥ・ザ・プレジデント・トゥイスト」など4曲もすべて収録されています。まずはタイニー・トゥプシーですが、ビッグ・ママ・ソーントンに通じるようなパンチのある歌が持ち味で、「ジャスト・ア・リトル・ビット」はロスコ・ゴードンの曲と歌詞は多分共通ですが、マイナーで雰囲気はずいぶん異なります。「ウェスタン・ロックン・ロール」は「ザ・ウォーク」風のリフに乗ったノヴェルティ・タッチの曲で笑えます。一方のルラ・リードの方が時代が遅いせいもありますが、幾分軽めです。特にトゥイスト時代に入ってくると、その手の軽快なリズムが増えてきますが、バラードでもけっこういい味出してますね。




Tish Hinojosa ; Aquella Noche ; WATERMELON/MUNICH MRCD 156 (2003. 4.18)

1991年、テキサスはオースティンでのライヴです。ティッシュはBBSで話題になっていて、興味があったんですが、ようやく聴きました。いやいや、素晴らしい歌声です。透明感があって、繊細なようで、内に秘めた情熱が感じられます。曲はポルカやサンバ、ワルツといったリズムの、おそらくメキシコの歌が中心のようで、「ある恋の物語」などは聴いたことがありました。曲によってはシャンソンに通じるものもありますが、もっと真っすぐで、ハートに直接響いてくる感じです。車で聴くのではなく、家でゆっくり聴きたい音楽です。心が洗われる思いでした。



Tish Hinojosa ; The Best Of Tish Hinojosa Live ; ROUNDER 116 613 221-2 (2003. 6.25)

2002年テキサスはオースティンでのライヴです。ティッシュならではの清涼感溢れるヴォーカルがたっぷりですが、哀愁感の強いメキシコやスペイン語の歌と、明るく歌うカントリーソングのコントラストが絶妙に混じり合っています。バックも腕達者で、マンドリン、フィドル、そしてアコーディオンと柔らかい音を出す楽器がティッシュの歌とよくマッチしています。僕としてはやっぱりスペイン語系の歌により魅力を感じました。カミサンに薦めたい1枚です。



Tish Hinojosa ; A Heart Wide Open ; VALLEY ENTERTAINMENT ; VLT-15196 (2006. 8.30)

2005年リリースですが、録音は1998,2002,2004とまたがっており、プロデューサにも3名名前が見えます。1曲ごとの詳しいクレジットはありませんが、確かに曲によって肌合いが異なる気がします。まず聴いて思ったよりポップロックな印象が強いってことです。テックスメックスやカントリーのテイストも確かにありますが、バンドサウンドのものはかなりポップな印象です。一方アコースティック弾き語りに近いスタイルの曲では、極めて上質なフォークの香りが漂い、引き込まれます。英語で歌った曲が多いのもそうした印象につながるんでしょうか。しかしこの人の声の透明感は本当に素晴らしいです。僕より年上なんですが、無垢な少女が歌っているようで胸きゅんになりそうですね。



The TnT Band ; Sex Symbols + Misshon Accomplished ; P-VINE PCD-2709 (2004. 7. 4)

1969〜70年のアルバムの2オン1。ティト・ラモスとトニー・ロハスというラテン・ソウル歌手のコンビが出したアルバムは、ブーガルーの代表とされる「ザ・メディテーション」は、アーチー・ベルの「タイトゥン・アップ」にラテン風味を振りかけたような作品でとってもグルーヴィー。同様の作品もありますが、よりサルサに通じるような曲があったり、ソウル・バラードがあったりと、ニューヨークのブラック・ラティーノ社会の音楽環境を反映しているように思いました。このある種どっちつかずの感じが、彼らの魅力になっていて面白かったです。



Todd Rhodes ; 1947-1949 ; CLASSICS 5019 (2001.10.27)

トッド・ローズはピアニストで、7人編成のジャンプ=ジャズを演奏するバンドリーダーです。比較的高音でよく歌うローズのピアノに、ハル・ディスミュークスの艶やかなアルトが絡み、ボトムをジョージ・フェイヴァースのバリトンが引き締めるスタイルで、かなり達者な演奏を聴かせます。突然ポパイのテーマが出たりと、おそらくホールではお客をブイブイ言わせていたことが想像できます。でもインパクトの強い曲がないかな?



Todd Rhodes ; 1950-1951 ; CLASSICS 5040 (2002.12.13)

ビックリしたのはいきなりガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」から始まったことです。ビッグバンドならではですが、さすがというかやっぱりというか、ずっとラフで、原曲のイメージを残すというよりは、よりプリミティヴなところに戻ったような演奏で面白かったです。他の曲でもこの曲のフレーズを再利用したりしていました。で、KINGに移籍する直前の「ビューラー」あたりから明らかに音が変わるんです。ロイ・ブラウンやワイノニー・ハリスを思わせる、タイトでトントンと跳ねるリズム、ジルバを踊ってといわんばかりのノリを感じました。ちょうど1950年から51年にかけて、巷ではロックンロールの声を聞く頃じゃないでしょうか?KINGにいってからも、コニー・アレンやキティ・ステヴェンソンをヴォーカルに迎えたしっとりした歌も多いんですが、アップの曲の音の変遷が時代の流れを感じました。バンマスのピアノ、軽快に転がり気持ちいいです。



Tom Archia ; 1947-1948 ; ARISTOCRAT/CLASSICS 5006 (2001. 6.18)

シカゴのサックス奏者でバンドリーダーの録音集。ヴォーカル入りのジャンプ・ブルースなんですが、けっこう細やかな面があって、例えばビッグ・ジェイ・マクニーリーの様にアンサンブルとアレンジ勝負というより、けっこうインプロヴィゼィションを重視しているように思いました。そういう意味ではジャズです。でも明らかにハンプトン楽団の「フライング・ホーム」に影響された曲が数曲入っていますから、やっぱりジャンプ系なのかなって思います。ガーシュインを引用したり、ジングル・ベルをやったりと、面白い面はありましたが、ちょっと中途半端なものも感じました。僕が単純なものが好きなせいかもしれません。



Tom "Blues Man" Hunter ; Expressions Of A Blues Man ; Great Blues Recordings GR2025-2 (2007. 3. 7)

2005年リリース。田舎の掘っ建て小屋の前でセミホロウのギターを弾くといったジャケットからすると、実際のサウンドはぐっとすっきりしたサウンドです。まあまあタイトなオルガン入りのバンドに、シンプルなパッカリングのハープが乗り、そこにハンターのちょっと渋めのヴォーカルがかぶってくるんですが、何か軽いんです。そしてギターはとってもスムースなフレージングで、聴きやすいんですがインパクトにはかけるなぁ。何曲かで入るグレン・ジョゼフのサックスはなかなかツボを押さえた演奏で良い感じなんですが。もちろん実力は十分あると思うんですが、それを引き出しきれていないのかな。プロデュース次第でもっと魅力的になる人だと思いました。



Tommy Bankhead ; I Please Accept My Love ; FEDORA FCD 5024 (2002.11.28)

2000年録音のバンクヘッドの遺作です。この人はエルモア・ジェイムズの従弟に当たるそうで、セントルイスを中心に活動していました。ギター2本の弾き語り風ブルースではデルタ出身の味わいを感じることが出来る一方、ギタースタイルからはローウェル・フルソンの香りを感じます。実はこのアルバム、半年以上前に聴いたのが最初で、その時の印象が「フルソンみたい」だったんですが、今回改めて聴くと、よりいなたくダウンホームな印象を受けました。死因は不明ですが、病気だったんでしょうか?やや歌が生気に欠けるのが気になりました。



Tommy Castro ; Head Believer ; ALLIGATOR ALCD 4931 (2009. 9.19)

2009年リリース。レーベルがALLIGATORで、ストラトを持った白人が写ったジャケットだったんで、ギター弾きまくり系のアルバムかと思ったら、全然違いました。少ししゃがれた声の歌が実にソウルフル。もちろんギターも弾きますが、弾きまくるというよりはグリッティなサウンドで大股なフレーズをかまします。「ハード・ビリーヴァー」はまるでロバート・クレイの曲のよう。ギターはスティーヴ・クロッパーお得意のバッキング・スタイルですし。「99.5」、曲に負けていないソウルフルなヴォーカルが格好いい!「メイク・イット・バック・トゥ・メンフィス」はドライヴ感溢れるロケンロールでこれもいいです。ラストのジャジーなテイストがお洒落な「ザ・トラブル・ウィズ・ソウル」まで、多彩なサウンドで飽きませんでした。




Tommy Emmanuel ; Only ; EMI 7243 5 26715 2 6 (2001.12.23)

2000年リリース。オーストラリアのギタリスト、トミーが全編スチール弦のアコースティックギターで奏でたインスト集です。もっとカントリー然としたものかと思いましたが、はるかに奥行きが広く、ウィンダム・ヒル・サウンドを彷彿とさせるサウンドです。テクニックはそれこそ超絶物ですが、それに走るのではなく、サウンドを重視した姿勢は、チェット・アトキンスに通じますが、チェットのポップさとはやや異なる現代性を併せ持っているようです。ギャロッピングなども披露していますが、けっしてカントリーになりきらないのがこの人の持ち味かな?非常に気持ちのいいアルバムでした。なお、この作品はMusic Parkのいちむらさんご推薦です。



Tommy Emmanuel ; The Very Best Of Tommy Emmanuel Cgp ; COLUMBIA 5033112000 (2001. 9. 5)

2001年リリース。いちむらさんが一押しするオーストラリアのギタリストのベストが入ってきました。2枚組で1枚はエレキ、1枚はアコです。とにかく上手い!ただ速いとかいうのではなく、フレーズが自由奔放で変幻自在。ベースはカントリーにあるんですが、ジャンルにとらわれずよく歌うギターを弾きます。オーストラリアでは大人気ですが日本では全く無名というのが信じられません。アルバムとしては僕の苦手なフュージョン系(といっても演奏は高水準だと思います)が多いのがちょっと残念でしたが、ブルース系のアーティストでは絶対にできないだろうご機嫌なブルース・インストや、カントリー・フレイヴァ溢れる硬質なブギ、芸術的なサウンド・コラボレーションなど、とにかく多彩です。アコースティックサイドでもしっかりバンドの入ったものが多いのですが、「ブルー・ムーン」の弾き語りの見事な歌心はチェット・アトキンスも認めたというのが頷けます。ギタリストな皆さんにぜひ聴いていただきたいアルバムです。



Tommy Emmanuel ; Endless Road ; CPR no number (2004. 3. 3)

2004年リリースのピカピカの新譜です。ほぼ完全なアコギ弾き語りですが、オリジナルに混じって「モナ・リザ」とか「虹を越えて」のようなスタンダードもやってます。もちろんめちゃくちゃ上手いんですが、とっても人間味を感じるギターですね。ゆったりきれいに響かせていたかと思うと、いきなり素敵なフレーズでたたみかけたり、ミュートの効いた低音弦のコンスタントな響きに耳を取られたり、ほっとするような歌声も最後の方で聴くことができます。この人、心底音楽が好きなんですね。ミュージシャンなら誰でもそうだと言えそうですが、なんだか別格のような気がしました。



Tommy Emmanuel with Jim Nichols ; Happy Hour ; ORIGINAL WORKS 0206OW6 (2007. 4.24)

2006年リリース。とにかく名手二人が汲んでアコースティックを弾くとどうなるかという見本みたいなアルバムです。トミーのタイトなギャロッピングをバックに、割合弦を響かせた感じのジムのギターが乗ってくるあたりがスリリングですが、テクニカルなトミーのギターはもちろん素晴らしいです。歌もなかなか気持ちよさそうで、ジャジーなナンバーではジャンゴ・ラインハルトのようなソロも飛び出してます。僕の好みとしては「ブルースの誕生」や「サヴォイでストンプ」のようなジャズのスタンダードをアコースティックギター全開でアレンジしたものが良かったです。とにかく演奏者が楽しそうなのが一番でした。



Tommy Emmanuel Cgp ; The Mystery ; FAVORED NATIONS ACOUSTIC FNA5130-2 (2006.10.26)

2006年リリース。いきなりスピード感溢れるギターサウンドが飛び出してきますが、トミーの音楽はどこか暖かいんです。テクニックに優れたフィンガーピッカーの中には、そのテクニックばかりが前に出て、音楽としての美しさがどこかへ行っちゃうような人もいるんですが、トミーの場合はそんなことはありません。如何にも楽しげに演奏する「ゲームショウ・ラグ/キャノンボール・ラグ」も、超絶テクニックなんですけど、メロディがくっきり際立っていますし、タイトル曲の真に幻想的な美しさは、「どうやって弾いてるの」なんて疑問もどこかに行ってしまいます。ラストの「キープ・イット・シンプル」、ちょっと「世界にひとつだけの花」に似たメロディですけど、心が洗われますね。珍しく「ウォール」という歌ものが入っていますが、そこで聴くことのトミーの声、やはりこの人の優しさがにじみ出ています。僕にとってのベストトラックは「カウボーイズ・ドリーム」。久々にブルースから離れたところで心地好さを感じる音に出会いました。



Tommy Emanuel C.G.P. ; Center Stage ; FAVORED NATIONS FNA5140-2 (2008. 6. 9)

2008年リリースの2枚組で、カリフォルニアでのライヴのようです。1枚目はソロで、オリジナル曲に「上を向いて歩こう」やビートルズ・ナンバーのメドレーなどを洒落たアレンジでインストにしたものが中心で、「ナイン・パウンド・スティール」だけは歌ってます。まあとにかく上手いですね。でも熱烈なトミー・ファンでない僕からすると、彼の魅力は実は「静」にあるのではと思ってしまうのです。派手なテクニックに興味がないからかもしれませんが、「モンバサ」やビリー・ジョエルの「アンド・ソー・イット・ゴーズ」のような曲が好きだなぁ。そしてスタジオ盤の方が魅力が出ていると思っちゃうんですよね。2枚目に入るとハーモニカにボブ・ライテルを迎え、前半は「我が心のジョージア」や「アメイジング・グレイス」といったスタンダードをハーモニカを全面に出し、また「ワーキング・マン・ブルース」や「朝日の当たる家」は歌ものにしてやってます。ボブのハーモニカは特段良いとは思いませんけど、楽しんでやってる感じがいいな。後半は再度オリジナルのインストもので、これは1枚目と同じ感想になっちゃいます。ラストの「クエスチョンズ」は染み入る演奏でぐっと来ましたけどね。



Tommy Ridgeley ; King Of The Stroll ; ACROBAT ADDCD 3031 (2009.11.20)

1949〜59年にかけてのIMPERIAL、DECCA、KING、ATLANTIC、HERALDに残された2枚組録音集です。実はACROBATからは全く同じジャケット、タイトルでHERALD音源だけを集めたAC-5139-2というのがあってややこしいことになっています。初期のトミーのサウンドはニューオーリンズ・フレイヴァーよりもオーソドックスなジャンプ・ブルースに近い感じで、ディヴ・バーソロミューもその辺りを意識していたかもしれません。「ブーテド」のカヴァーなどもやっていますし。でも「ラヴィニア」や「オー・ロウディ・マイ・ベイビー」あたりはニューオーリンズ・クラシックと言ってもいいですね。2枚目に入っているHERALD録音は、リー・アレン、レッド・テイラーのサックスからしてニューオーリンズ色全開です。ただ音はちょっと軽めですけど。




Tommy Ridgeley & His Orchestra ; Mardi Gras Jam ; BLUE CITY 1307 (2005.12.11)

クレジットなどない実にブートなアルバムですが、1950年代初期のIMPERIAL、ATLANTICなどに残されたトミーの初期作品集です。これはものすごく嬉しい盤ですね。あの時代ならではのニューオーリンズサウンドに乗って、トミーの独特のこぶしの効いた歌い回し、「ブーテド」などロスコ・ゴードンのものよりインパクトが強いかもしれません。それより嬉しかったのは、スヌークス・イーグリンが取り上げている「ラヴィニア」や「オウ・ロウディ・マイ・ベイビー」のオリジナルが収録されていること。ようやく聴くことができましたがいずれもトミーらしいネットリ感のある歌がたまりませんね。ニューオーリンズR&Bの良質なところがぎっしりつまった1枚、もっとちゃんとしたリリースをして欲しいですね。



Tommy Ridgely ; The HERALD Recordings ; COLLECTABLES ; COL-CD-5182 (2003.10. 4)

1957〜59年ニューオーリンズ録音で、バックにディヴィッド・ラスティー、リー・アレン、レッド・タイラーといった名うてのホーンセクションを従えています。当然サウンドは御機嫌なんですが、50年代初期のデイヴ・バーソロミューの野太さと、60年代アレン・トゥーサンの軽妙さの中間くらいで、ロックンロール時代の洗礼を受けたサウンドは、特にポップチューンなど少し焦点が定まっていないようにも思えました。トミーの歌は味があり、いいアレンジと楽曲に恵まれたらもっとヒットしたんじゃないかなって思いました。



Tommy Ridgley ; The New Orleans King Of Stroll ; ROUNDER CD 2079 (2000. 3.13)

1960〜64年録音。ニューオーリンズ・ミュージックがポップスの世界で大活躍していた時代です。サウンドはいかにもコジモ・マタッサという音で、セカンド・ラインの効いたビートと、トランペットが印象的。曲はアップよりスロー気味の曲が多いです。でも、「ダブル・アイド・ワミー」がやはり1番ですね。踊れそうです。


Tommy Ridgley ; She Turns Me On ; MODERN BLUES MBCD-1203 (2000. 5.13)

1992年ルイジアナ録音。ニューオーリンズの重鎮のひとり、トミー・リッジリーはこの時66才ですが、十分元気です。実力のあるミュージシャン達とのワン・デイ・セッションのようで、そつのないバックのもと、伸び伸びと唄っていて好感が持てました。もう少しバンドにグルーヴ感が出るといいのですが。でもブラス・セクションはテクニカルなソロを楽々とこなしており、ただ者ではない感じです。しかし何より、IMPERIAL 時代の作品をまとめてリリースして欲しいです。TOSHIBA さん、お願いしますよ。


Tommy Ridgley ; Since The Blues Began ; BLACK TOP CD BT-1115 (2003. 7. 3)

1995年リリース。BLACK TOPは潰れてしまっているんで、なかなか手に入らないんですが、これはアマゾンで売ってたんで発注したんです。で、何の気なしに聴き始めて、ギターの音に耳が釘付けに!思わずクレジットを確認しちゃいました。なんとスヌークス・イーグリンなんです。このアルバムのことは全然気付いてませんでした(BSR誌のスヌークス特集号を読み返したら、文屋さんがしっかり「主役を食う勢い」って紹介してました)。それにベースにアーヴィン・チャールズとジョージ・ポーターが入ってます。こりゃ悪かろうはずがありません。カズ・カザノフのサックスも入り、いかにもBLACK TOPらしいサウンドで、タイトなファンクから緩さのある曲まで、トミーのハイトーンなヴォーカルを上手く引き立てています。いやいや、買って良かった!



The Tommy Shreve Band ; Bon Ton Boogie ; BAYOU BLUE/HERMAN'S HE 014-2 (2002.11. 7)

1996年リリース。このバンドは3人のメンバーですが、スタジオ盤のこのCDではトリオ演奏はありません。1曲目のタイトル曲からなかなかドライヴィーなロッキンナンバーでのせてきます。テレキャスらしい乾いたトーンのギターのボトムリフが気持ち良く、その上にかぶるソロも弦の鳴りを感じるものですし、ヴォーカルもはじけています。ブルースあり、ファンキーなロックナンバーあり、ちゃんと子守歌になっている「サマータイム」ありで変化に富んでいます。「ハイダウェイ」はフレディ・キングとブルース・ブレイカーズを折衷したようなフレージングで面白かったです。最大の聴きものはゲストにサニー・ランドレスが加わった「リトル・エヴァ」で、ザ・バンドの「シェイプ・アイム・イン」に似たメロディに伸びやかなサニーのスライドが絡んで心地好く響き、期待を裏切りませんでした。



Tommy Tate ; I'm So Satisfied - The Complete KO KO Recordingus And More ; KENT CDKEND 289 (2008. 8.18)

1971〜76年のKO KO録音にSTAXなどの未発表作品を加えたコンピです。フロリダ出身のトミーは、オリー&ザ・ナイチンゲールズなどと行動をともにしていたようですが、ソロとしてはアルバム冒頭を飾る「スクール・オヴ・ライフ」がヒットしました。いかにもゴスペル出身の、少し明るくて伸びやかな声で歌うナンバーは、サザン・フィーリングたっぷりですが、あんまりこってりしておらず、70年代らしい練り込まれたバックのサウンドがよく似合う端正な曲が多いです。「アイ・エイント・ゴナ・ウォリー」や「ハンドタイムズ・SOS」はかなりファンクネスを感じさせますし、「オールウェイズ」は適度な甘さが心地良いです。ナイチンゲールズ名義の曲も何曲か収録されていますが、こちらはかなりディープな印象です。




Tommy Tucker ; Hi-Heel Sneakers ; CHECKER/MCA MCD 32644 (2003. 7.31)

1960年代中頃の、トミー・タッカーの代表作にボーナストラックを加えてCD化したものです。タイトル曲や「ロング・トール・ショーティ」のような、ジミー・リードのスタイルをややファンキーにした作品が代表作となっていますが、アルバムではかなりゴスペルのルーツを感じさせる曲をやったり、ブルースやR&Bの有名曲をカヴァーしています。未発表曲はオリジナルが多いんですが、彼がもうひとつブレイクしなかったのは、曲作りが上手くいっていないんだなっていう印象を受けました。ヒットを生んだジミー・リード・スタイルから決別できないため、当時のよりハードなソウルや、台頭してきたファンクに乗りきれていないように思います。



Tomoya Hara & Mark Tourian ; Window ; PANORMO PN-001 (2005. 9.20)

2004年リリース。原とも也はジャズ・ギタリストだけど、このアルバムはジャズという言葉からイメージされるインタープレイではなく、ふたりのミュージシャンが気の赴くままに、でも緻密に計算して作り上げた、まさに窓から吹き込む気まぐれな風、あるいは雲の合間から漏れ込む日の光のような作品だと思います。原はフルホロウのエレキギターと、ロウデンのナイロン弦を使い分け、ゆったりと大きなフレーズを基本にしてメロディを紡いでいきます。時に歪ませたり、若い頃彼が好きだったロックの味を出したりしますが、全体としては印象派の作品のような、空間を感じさせるサウンドです。それに奥行きを与えているのがマークのベースです。的確なフレーズで支え、時には弓でメロディを生み出していきますが、このふたりの音がまるで生き物のように絡み合いながら、静かな高原の夕方、ロッジのロッキンチェアに揺られながらまどろみに誘いこまれるようなサウンド、心地良いですね。「グリーシー」、こんなにシンプルで、本当にシンプルで、でも清涼感のあるブルースもできるんだなって、何度も聴いてしまいました。



Tony Coleman ; Bonjour Mr. Coleman ; STATION ROCK STR001/01 (2008.10.18)

2007年リリースのどうやらフランス盤です。詳しいことは分かりませんが、トニーはフランスで活動するドラマー・ヴォーカリストのようで、いきなりアルバート・キングばりのギターが炸裂するファンキー・ブルースからスタート。歌はかなり歌えていい感じです。バンドもモダンで、ルーサー・アリソンのフランス時代をさらにファンキーにしたようなサウンド。良質なモダン・ブルースになっています。もろフレディ・キングをカヴァーした「パック・イット・アップ」とか、タイトル通りの「レゲエ・ブルース」、さらに「ワン・ダン・ドゥードゥル・アット・BB・キングズ」なんてのもあり、歌がいいので結構はまって聴いてしまいました。」の




Tony Cook & The GA's ; Brothers In The Groove ; SOUL JUNCTION SJCD 6002 (2006. 1.14)

2005年リリース。ジェイムズ・ブラウンのバンドのドラマーのリーダー作は、さすが大将に鍛えられただけあるファンクネス溢れる作品です。バンド名のGAからしてJBの故郷ジョージアのことですから。ちなみに録音もオーガスタで行われています。どっしりとしたトニーのドラムに、良く動くけど隙間たっぷりのベースが絡み、ジャジーなサックスが花を添えるスタイルはJB'sそのものですね。「キャノンボール」なんてヴォーカルまでJBそっくりでまんまです。ていうか、ひょっとしたら本人かも。何しろメインヴォーカルのクレジットがないもので。インストものだと「スリップ・ザ・ドラマー・サム」のドラムが格好良くってはまりました。大音量で聴くと気持ちよさそうですね。



Tony Delafose ; Zydeco Two-Step ; MARDI GRAS MG 5017 (2006. 6.19)

1999年リリース。トニーはベースやギターを弾くザディコ・ミュージシャンですが、ここではプロデューサーとしても重要な役割を担っています。メインのアッコーディオンはドウェイン・ドゥプシーで、主にブルースやブギの曲で鍵盤アコをかき鳴らしています。ソロ作ほどロックっぽくはないけれど、時折ザディコとはちょっと異質の音を出したりしているのが彼らしいかな。一方何曲かでボタンアコを弾いているのがクリス・アルドワン。伝統的な、でも確かな技術を感じさせるプレイで、トゥーステップ系の曲を盛り上げてます。でもこのアルバム、歌がお粗末なのよね。誰が歌っているんだか分からないんですけど、なんかシャキッとしないなぁ。そこが残念でした。



Tony Joe White ; Live In Europe 1971 ; DELTA #1 23 114 (2005. 1.11)

2002年にリリースされたものですが、1972年のアルバムのストレートリイシューです。ジャケット写真は比較的最近のもののようで、ちょっと老けてますが、出てくる歌声も、完全に完成されたもので、意外と違和感がありませんでした。全曲自作で、弾き語りとエレキバンドがほぼ半々、「レイニー・ナイト・イン・ジョージア」の、心のこもった弾き語りバラードも素晴らしいんですが、ビックリしたのは「ア・ナイト・イン・ザ・ライフ・オヴ・ア・スワンプ・フォクス」で飛び出してきた、そのバンドサウンドの格好良さ!魂のこもったロックサウンドです。なんで若い頃に聴かなかったんでしょうか。絶対好きになってましたね。というわけで大当り。ラスト2曲「バック・トゥ・ザ・カントリー」から「ポーク・サラダ・アニー」へとなだれ込むあたりはもうたまりませんでした。



Tony Joe White ; In Concert ; BRILLIANT BT 33053 (2001.10. 5)

2000年リリース。頂きものです。トニー・ジョー・ホワイトはプレスリーが取り上げて有名になった「ポーク・サラダ・アニー」のオリジネイターですが、今回初めて聴きました。自身のエレキギターとハープの他はドラムだけというユニークな編成ですが、Eの曲を中心に実にドライヴ感のある泥臭い演奏を聴かせます。ブルースからロック、ソウルまでシンプルで力強い演奏は音質の悪さを気になせないほどでした。ラストのボーナストラックに「ポーク・サラダ・アニー」のスタジオテイク(オリジナルか?)が収録されています。後は録音データがちゃんとしてたら嬉しかったんですが。



Tony Joe White ; Live From Austin Tx ; NEW WEST NW6092 (2006. 4.24)

1980年冬のライヴ録音です。スワンプロックの雄トニーの勢いあるライヴの様子をよく捉えています。この人は歌からギターから、そしてハーモニカまで本当に泥臭さ溢れているんですが、C.C.R.にも通じる曲調のロッキンナンバーがとにかく心地良いです。「ディスコ・ブルース」なんてブギもいい感じですし、イーヴン・トロールズ・ラヴ・ロックンロール」なんて曲の重心の低さはさすがですね。こんな中「レイニー・ナイト・イン・ジョージア」が上手くはまってくるわけです。途中からアコースティックに持ち替え、弾き語り風に歌う「ビリー」のフォーキーな感じも捨てがたいです。ファンキーな「スワンプ・ラップ」、そしてハイライトは何といっても「ポーク・サラダ・アニー」。格好いいなぁ。ラストの「ゲット・オフ・オン・イット」まで一気に聴き通しました。



Tony Joe White ; The Hiroines ; SANCTUARY 06076-86366-2 (2005. 1.18)

2004年リリースの新譜です。エミルー・ハリス、ルシンダ・ウィリアムズなど6人の女性歌手とのデュエットが中心で、アルバムタイトルとジャケットのイラストがそれを象徴しています。初期のJ.J.ケイルを思わせる、ゆったりとうねるレイドバックした演奏をバックに、ゲストの女性たちに言い寄るような低音でつぶやくように歌うのが、60才を過ぎても、というか過ぎた男ならではの「色気」を漂わせていて、実に渋いです。こりゃ大人の音楽ですな。当然のように全曲自作で、練り込まれた演奏も格好良く、何度か聴いてるとじわじわ染みてきます。ひとりで歌う「リッチ・ウーマン・ブルース」なんて渋すぎて気絶しそうです。好盤!こんな風に歳を重ねたいものです。



Tony Joe White ; Uncovered ; SWAMP 7707243-2 (2006.11. 2)

2006年の新譜はマーク・ノップラー、クラプトン、J.J.ケイル、ウェイロン・ジェニングス、そして何とマイケル・マクドナルドと豪華なゲストを迎えたアルバムです。半分は自分だけの歌ですが、残りはそれぞれのゲストと共演。でもトニー・ジョーの低音のヴォーカルは存在感抜群で、ゲストに食われるという感じはありません。「レイニー・ナイト・イン・ジョージア」のリメイクも含め、全体としてはゆったり目の曲が多く、落ち着いたオヤジの音楽って感じですけど、ラストの「キーパー・オヴ・ザ・ファイア」でかますスワンプ・ロックのノリはさすがですね。渋めですけどかっこよさを感じさせるアルバムです。



Tony Joe White ; Deep Cuts ; SWAMP 7708343-2 (2008. 7.27)

多分新譜でしょう。打ち込みも交えた低重心のリズムに、歪んだギター、低音でぼそぼそと歌うヴォーカル。でもそこにいるのは紛いもないトニーなんです。曲はほぼミディアムで、うごめくような雰囲気は、なんだか夜中のバイユーに潜むワニの息遣いを想像してしまいました。これがスワンプ・ロックの現在形だとしたら、まだまだしっかり生きた音楽ですね。「アスペン、コロラド」でストリングを入れて少しソフトな雰囲気にした曲が出てくると、ふっと一息つける感じ。ファットなドラムの「スワンプ・ウォーター」は格好いい!トニーの計り知れない才能を感じさせるアルバムだと思いました。




Tonny Joe White ; The Shine ; SWAMP 8572202 (2010.11.10)

2010年リリース。いつも通りドロ〜ンとしたギターサウンドに、ぼそぼそっとしたヴォーカルを乗せてやっています。最初聴いているとあんまり感じないんですが、しばらくしてくると身体がゆったり揺れてきます。この人にはそういう独特のグルーヴがあるんです。派手な感じは全くないんですが、存在感があり、他の誰にも代え難い音楽を作るこうした人には、長く続けてもらいたいものです。「ストレンジ・ナイト」はけっこう勢いのあるバックなんですが、それにこのぼそっとした歌が、妙にはまるんですよね。「シーズン・ムーン」「ロール・トレイン・ロール」のアコースティックなサウンドが気に入りました。




Tony Owens ; I Got Soul ; GRAPEVINE GVCD 3022 (2009. 2.14)

1966〜1990録音。GRAPEVINEらしい素晴らしいコンピです。トニーはニューオーリンズ・ベースのソウル・シンガーで、文屋さんがDJ会で回したのを聴いて興味を持ちました。まずは冒頭のタイトル曲。ゆったりとしたソウル・ナンバーで、ハイトーンだけどタフなヴォーカルが魅力的です。やや跳ねるリズムの曲にニューオーリンズらしさを感じる一方で、歌はむしろディープでサザン・ソウルといった趣。ベースにゴスペルとブルースがあるのがしっかり感じられます。「ウィッシング・ウェイティング・ホーピング」なんてぐっと来るバラードです。時代を追うごとにファンク度が増していき、「アイ・キャン・ヒア・ミュージック」になると70年代の香りがくっきり。これが1976年のISLANDあたりになると随分ソフトになりますね。1990年のものになるとちょっと作りすぎだよなって感じ。やっぱりストレートに歌うだけじゃダメってことなんでしょうかね。もったいない気がしました。




Tony Vegas ; Cajun Ladies ; TONY BEGAS no number (2008. 1.23)

リリース年は不明ですが新譜でしょう。この人、ニューオーリンズの人なんですが、あんまりらしくありません。「フレディ・ライヅ・アゲイン」ではフレディ・キングの「スタンブルズ」をかなり達者に弾いていますが、味わいはどちらかというとロック〜フュージョンですね。サザンロック風味付けの演奏に、ビートルズのメロディがちらほらって感じ。ヴォーカルも少々弱く、僕にはあんまり響きませんでした。



Tou Plus Tou ; 2 Plus 2 ; SOUTHERN NIGHT PUBLISHING SNP7000 (2005. 3.31)

2004年リリース。アレン・トゥーサンが弟のヴィンセントのギターをフィーチュアして作ったインストアルバムです。いわゆるフュージョンサウンドに近い感じで、ヴィンセントはフロントピックアップのコロンとしたややまろやかな音で、ゆったりとしたフレーズを弾いています。でも音楽的にはアレンのサウンドですね。適度なラテンフレイヴァを感じさせる曲がおしゃれです。イージーリスニング的に聴き流す感じなんですけど、「トリック・バッグ」のアレンジには思わず耳を奪われました。ただバックが打ち込みっぽい感じでちょっとチープなのが残念。



Tower Of Power ; Back To Oakland ; WARNER MUSIC JAPAN WPCR-12910(2010. 1. 5)

1974年リリース。ベイエリアを代表するファンク・バンドの代表作です。白人主体のバンドですからどす黒さは少ないんですが、グルーヴ感は抜群。当時人気のあったシカゴのような妙な理屈っぽさは感じさせず、良質なソウルを体現しているレニー・ウィリアムズの歌を、隙のないアンサンブルで支えています。リズム・ナンバーはもちろん、「今からが最高」などのバラードの美しさは、他のゴリゴリ・ファンク・バンドとは異質なものを感じますね。カリフォルニアならではの明るさが心地よく、車のお供に最高です。




Tower Of Power : Live ; 550MUSIC/LEGACY BK 69829 (2005. 1.30)

1998年の彼らの代表曲がてんこ盛りのライヴ盤です。ベイエリアで活動しているせいか、彼らのファンクはどす黒さが少なく、明るくポップな感じが強いです。途中「ディギン・オン・ジェイムズ・ブラウン」なんてJB讃歌があり、客席とコーラスまでしていますが、どんなにJBズを意識しても根の明るさがにじみ出ちゃってるのがご愛敬でしょう。でも完璧なホーンセクションが素晴らしいリフを重ねる中で、ゆったりと歌う感じはディスコ時代にありながらそれとは一線を画していたバンドカラーがよく出ています。しかしライヴでこの一糸乱れない分厚いホーンを聴かされたら気持ちいいでしょうね。



Travis Matte & The Zydeco Kingpins ; Zydeco Train ; MHAT PRODUCTIONS MP-04002(2005.10.31)

2005年リリース。チャーチポイント出身でケイジャン・ミュージックにに囲まれて育ったトラヴィスが、ザディコの要素をたっぷり詰め込んで作ったポップアルバムです。ファルコンのボタンアコーディオンで奏でられるメロディは明るく、ミュートを全くしていないボンボンと響くバスドラムと、カンカンと抜けるスネアの音と相まって、良くも悪くも真っ白なサウンドです。オリジナルのダンスチューンの他、ハンク・バラードの「ザ・ツウィスト」やらファッツ・ドミノの「ブルー・マンディ」、さらには「ラ・バンバ」やリトル・リチャードの「ジェニ・ジェニ」と、コマーシャルな曲をスワンプ・ポップに通じるアレンジでやっています。極めつけはC.C.R.の「バッド・ムーン・ライジング」。掛け声にもC.C.R.の名がたっぷり。気楽に聴くことができました。



Travis Matte & The Zydeco Kingpins ; Booty Zydeco ; MHAT PRODUCTIONS MP-04004 (2007. 2.13)

2006年リリース。まあタイトルと言いジャケットのイラストと言い、猥の匂いがプンプンで、いきなりファンキーな「ビッグ・ダディ・ピンピン」ですからねぇ。調べてないけど「ピンピン」ですよ。この他「スラップ・ザット・アス」だの「パンティ・アンクル」だの「フーティ」まあ何ともそれっぽいタイトルの曲が並んでること。でも歌と演奏はスワンプ・ポップに近い感じの明るくシャープなザディコで、力みなくすっきり歌うヴォーカルも、シンプルなアコーディオンもなかなか軽快で気持ちがいいです。「アイヴ・ガット・ア・ウーマン」のカヴァーもファンキーでユニークなアレンジが格好いいし、「ティンクル・マイ・フィドル」では結構達者なフィドルも披露。。選曲でびっくりしたのはレイナード・スキナードの「チューズでイズ・ゴーン」が入ってたこと。こんな曲もやっちゃうのね。



Travis Matte & The Kingpins ; Hip-Hop Zyderock ; MHAT PRODUCTIONS MP-04005 (2008. 4.25)

2008年リリース。この人は写真を見る限り白人のようで、バンドも白人で固めているようです。でもサウンドはロックがかってはいますがザディコの伝統をしっかり踏襲していて、新しいことをいろいろやっても大きな逸脱はありません。ただファズがかったリズムギター、ドライヴするベースとドラムはパンクフルに強化されていて、若者を踊らせるにはいいかもしれませんけど、爺さん婆さんにはちとしんどいかも。「シンキング・アンド・ドリンキング」ではフィドルも披露していますが、結構達者です。



Travis Matte & The Kingpins ; Pop It ; MHAT MP-04006 (2009.12.13)

2009年リリース。ザディコのアーランビー化は「新世代ザディコ」では当たり前のようになって来ましたが、トラヴィスの場合はザディコのロック化、それもハードロック化を目指しているようです。低重心のベースにドカドカ言うドラム、ディストーションの効いたギターがパワーコードでごりごりリフを刻めば、そりゃロックです。「アイム・オール・ザット」なんてアコーディオンがいなければメタルかと思うサウンド。でもそこにアコーディオンとどこかのどかなトラヴィスのヴォーカルが乗ると、何だかチープ・トリックとかを思い出しちゃいました。




The Treme Brass Band ; The Treme Brass Band ; MARDI GRAS MG 1115 (2008. 8.11)

2008年リリース。軽快な「グレイジング・イン・ザ・グラス」でスタートするトレメ・ブラス・バンドのアルバムは、彼の地のベテラン・ブラス・バンドらしい味わいに溢れています。「カレドニア」や「キャバレー」「マック・ザ・ナイフ」で聴かれるユルユルの歌声がまず素晴らしいです。クラリネットも入ったオールド・スタイルの演奏なんですけど、マーチング・バンドとしてのノリはしっかりあります。でも何といっても良かったのがラスト3曲。ブラスバンドらしい「ユー・アー・マイ・サンシャイン」からまるで棺を収めるかのような「アメイジング・グレイス」、そして追悼の「アイル・フライ・アウェイ」は、僕のイメージ通りのアレンジで嬉しかった!しかもその後ストリート・ライヴの演奏がかぶっていくんです。まさにこの3曲を聴いていると、彼の地での葬送の様子が目に浮かぶようです。




The Treniers ; This Is It! ; REV-OLA CR CEV 248 (2008. 9.26)

1950〜57年録音。これは楽しいアルバムです。このバンドは西海岸からニューヨーク、さらにはシカゴとあちこちを飛び回っていた様子ですが、ちょっとノヴェルティの利いた小粋なジャンプ・ナンバーを得意としています。トレニアー兄弟のデュエット・ヴォーカルをコンボがバックをつけるスタイルで、ルイ・ジョーダンなどに通じるヒット曲「ゴー!・ゴー!・ゴー!」のほか、ロイ・ブラウンなども歌ってる「ハイ・ヨー・シルヴァー」や「グッド・ロッキン・トゥナイト」、さらには「ドリンキン・ワイン・スポーディ・オディ」までを、軽妙なタッチの演奏と見事なコーラスを絡めてやっています。こんな面白いバンドがあったのを今まで知らなかったなんて!




The Tri Saxual Soul Champs ; Go Girl ; BLACK TOP CD BT 1059 (2007. 4.19)

1990年リリース。BLACK TOPゆかりのシル・オースティン、カズ・カザノフ、グレイディ・ゲインズの3人のユニットです。さらにギターにはクラーレンス・ホリモンが加わっていますから、シャープなバッキングも楽しめます。ジャンプ系からブルースまで幅広く演奏していますが、分厚いサックスのサウンドはなかなかの快感。歌はグレイディが歌ってますけど、やや線が細めながら、これも味があります。またゲストでスヌークス・イーグリンの参加した曲があり、ゆったりとした「ミザルー」など、自己名義よりも控え目とはいえ、あの独特のリズムのギターが聴けるのはうれしいです。さらに「キャント・キープ・アップ・ウィズ・ユー」ではキャロル・フランがヴォーカルを取っていますが、ぎゅっと引き締まります。比較的地味ですが楽しめるアルバムです。



Trio Los Panchos ; Wonderful Merodies ; EPIC SONY ESCA 5064 (2007. 3.13)

正確なデータはありませんが、おそらく1950年代後半から70年代初めくらいまでの録音の集大成でしょう。この人たちの歌を聴くと、子供時代を思い出します。親父が自作のステレオをこしらえて、NHK-FMを一日中流していたのが1960年代の後半ですが、その中でも印象に残っていたのが、ナット・キング・コールの甘いバラードと、杜氏は中南米音楽と呼ばれていたラテン音楽です。その中でもぺれス・プラード楽団の一連のマンボと並んで記憶に残るのがこの人たちの哀愁あふれるコーラス。「ベサメ・ムーチョ」、ザ・ピーナッツのカヴァーでも知られる「情熱の花」(メロディは「エリーゼのために」ですね)、「ラ・マラゲーニャ」「キサス・キサス・キサス」「キエンセラ」と、美しいコーラスとギターの調べは、今聴いても心に染みます。センティメンタルな中に秘めたる情熱を感じさせる音楽、いいですねぇ。



Trouble Funk ; Droppin' Bombs - The Definitive Trouble Funk ; HARMLESS HURTCD 014 (2002. 3. 1)

1981〜86年録音の、トラブル・ファンクの大ファンク大会アルバムです。シンセが駆け巡り、ムソルグスキーあたりをパクったメロディをかませながら、ラップするヴォーカルを、超弩級のファンク・リズムが支えるのがこのバンドの持ち味のようです。ジャズの隠し味も感じますが、あくまで力業といった感じは、まさに「体育会系」ファンク・バンドです。ヒップホップにつながっていく面もあるのかなとも思いますが、あまりクールな感じではなく、もっとパーティっぽい雰囲気です。大音量で聴くと快感ですが、もうちょっと洒落が利いてるといいなって思いました。



The Troy Andrews Quintet ; The End Of The Beginning ; TREME no number (2005. 6.30)

2005年リリース。お兄さんと違って端正なジャズアルバムを作りました。「朝日のように爽やかに」「サマータイム」「ひばり」ですからねぇ。しかしゲストが凄いです。エリス・マルサリス、アイヴァン・メイフィールド、そしてヴォーカルにはカーミット・ラフィンにジョン・ブッテ!カーミットは「サニーサイド・ストリート」で得意のサッチモ仕込みの歌い回しを披露しますが、自身のアルバムよりはよそ行きな感じ。それに対しジョン・ブッテの存在感の凄いこと!彼の声が響くと空気が変わりますね。これを聴いただけで良かったって思いました。



Troy "Trombone Shorty" Andrews & Orleans Avenue ; Orleans & Claiborne ; TREME TR02 (2005.11. 4)

2005年リリース。トロイを始めとする5人のメンバーの若いこと!トロイが今19才くらいですから、みんなそんなところなんでしょうね。でも生み出される音楽の熱さとヒップ差は只者じゃありません。ヒップホップの手法を取り入れたファンクナンバーから、ラテンジャズのスタンダード風あり、ブラスバンド仕立てありと、トロイの幅広い音楽性を反映し、ある種万華鏡のようなニューオーリンズ風景を見せてくれます。バックで切れのいいギターを聴かせるのは山岸潤史。「ダイナマイト」なんて思いっ切り格好いいファンクナンバーで、完璧なコーラスワークといい、完全にはまり込みました。ラストにはブラック・インディアン・チャントを入れてその出自を強烈にアピール。こんな若者達がいれば、ニューオーリンズのシーンの復活はあっと言う間ではないでしょうか。



Trombone Shorty ; Backtown : VERVE FORCAST B0014194-02 (2010. 5.20)

2010年リリース。いやぁ、格好良すぎでしょう。冒頭の「ハリケーン・シーズン」の分厚いブラス・アレンジに続く「オン・ユア・ウェイ・ダウン」は作者のアラン・トゥーサンも参加してますが、このヒップなアレンジといったら!現在進行形のヒップホップ感覚をしっかり取り込みながら、一方でニューオーリンズならではのブラスの使い方、さらにはフォンクなリズムもあって、タイトル曲など最高にクールです。一辺にマイルス・ディヴィスの打ち立てたジャズの頂点を見ながら、他辺ではしっかりクレッセント・シティな香りを残している、素晴らしい作品だと思います。ことしのベスト5に間違いなく入りますね。




Trudy Lynn ; Trudy's Blues ; ISABEL IS 640102 (2002.10.21)

2001年12月のおそらくクリスマス・ショウとしてパリで録音されたライヴです。ホテルのクラブのようで、客の数は多くないですが、歌と演奏は熱いです。トゥルディは1996年に来日もした(見ていません)テキサスのブルーズン・ソウル・ウーマンで、ドスの効いたパワフルな声とディープな唄い回しが魅力ですが、このアルバムではそれが見事に捉えられています。バックにはなんとカール・ウェザーズビーがギターで参加していて、しっかり弾きまくっているんですが、それに全く負けないトゥルディの歌が場を圧倒しています。ショウということで、長尺のメドレーが中心(オリジナルとされているタイトル曲も「コールド・コールド・フィーリング」〜「パート・タイム・ラヴ」などのメドレー)ですが、とにかく迫力満点です。中ではジミー・ヒューズの「スティール・アウェイ」のしっとりとした、でも情熱溢れる熱唱が一番ぐっと来ました。



Trudy Lynn with The Calvin Owens Orchestra ; I'm Still Here ; SAWDUST ALLEY 52334 (2007. 1. 2)

2006年リリースだと思いますが、クレジットにクラレンス・ホリモンの名前が見えますからもっと前の録音でしょう。タイトル通りカルヴィン・オーウェンスのバンドをバックに、トゥルディーは伸びやかに歌います。バンドはホーンだけでなく曲によってはストリングまで入るゴージャスなものですが、このくらいパワーのある人にとってはちょうどいいかな。中盤はネルソン・ミルスとのデュオになり、また「ブギ・ブギ・ガンボ」ではアコーディオンの入ったザディコ仕立てになっています。これだけオリジナル曲を中心にぐいぐい押せるってのは、やはり実力があるってことですね。こういう人を日本に呼んで欲しいなぁ。



Truckstop Honeymoon ; Delivery Boy ; SQUIRREL 1051 (2007.12.16)

2005年リリース。このバンドはケイティ・ユーリスのベース、ピアノ、パーカッションにマイク・ウェストのギター、バンジョーというデュオで、この他ドラムやジーナ・フォーサイスのフィドルが加わっています。トランペットにはオオハシサトルという名前も。冒頭の「ジョニー&ジューン」を聴くともろにカントリーロック・タッチで、少女のようなケイティの歌にいかにもテリーといったグリッティなギターがかぶってきます。「エンジェルズ」では軽快なブルーグラス・スタイルを聴かせますし、タイトル曲はドライヴ感のあるロケンロール。久々に底抜けに明るいアルバムに出会ったって気分です。



Truckstop Honeymoon ; Great Big Family ; SQUIRREL 1054 CD (2009. 4. 1)

2008年リリース。冒頭の「マルディ・グラ・イン・カンザス」のややセカンドラインした感じから、タイトル曲のオールド・タイミーなジャズの香りなど、ヴォーカルを聴く限り下地はカントリーやブルーグラスにあるんですが、その範疇にとどまらないサウンド作りをしています。バンジョーやマンドリンなども達者に操り、ケイティとマイクが交互に歌っていく感じですが、アコースティックの良さを存分に生かしていて、なんだかほっとできる音になっています。




Truckstop Honeymoon ; Homemade haircut ; SQUIRREL 1055 (2010. 8.16)

2010年リリース。カントリー、ブルーグラス、ウエスタン・スウィングにジャズの要素を取り込んだサウンドはいつ聴いてもほっとさせるものがあります。隙間感がたっぷりあるリズムが心地良くって、ついついはまってしまいますね。「チャイルドフッド・メモリーズ」なんてブルーグラスな曲を聴くと、高い演奏力をバックに、何とも身近な感じのヴォーカルがいい感じ。ロッキンな「バーゲン・ハンティング」も楽しい曲。マンドリンが美しい「ロマンティック・カンヴァセイションズ」にも癒されました。




Isidore 'Tuts' Washington ; New Orleans Piano ; 504 cd 32 (2007. 8. 6)

1960年ニューオーリンズ録音。タッツ・ワシントンのピアノは、独特の突っかかるようなリズムと、右手の華麗な装飾音が魅力です。冒頭を飾る「オン・ザ・サニー・サイド・オヴ・ザ・ストリート」のメロディの解釈からしてすごく自由なものを感じます。また「ヤンシー・スペシャル」「カウ・カウ・ブルース」「パイントップス・ブギ」などの名曲をやっても、リズムのノリがいかにもニューオーリンズなんですよね。フェスやジェイムズ・ブッカーヘの影響を伺わせます。バンジョーを弾いて歌うリトル・レッド・ラジョーのひなびた味も仲々です。



Tuts Washington ; Live At Tipitina's '78 ; NIGHT TRAIN NTI CD 7101 (2002.12. 1)

ショウを楽しみながら一杯やろうといった、くつろいだ雰囲気の中、トゥッツ独特のつっかえるようなピアノのブルースで幕開けです。続く「ホンキー・トンク」、ピアノでギターソロの部分をやって雰囲気たっぷり。「ヤンシー・スペシャル」のようなブギウギあり、ラグタイムあり、「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」「ブルー・ムーン」「誰かが君に恋してる」等のスタンダードありで、大きくうねりながら、力強いタッチときらびやかなフレーズをちりばめるトゥッツの魅力がたっぷりつまっています。音質は良くないけれど、あっと言う間の19曲。ラストが「アフター・アワーズ」ってのが泣けますねぇ。



Tuts Washington ; New Orleans Piano Professor ; ROUNDER CD 11501(2000. 9. 7)

1983年録音。読み方が一時話題になってたピアニストのソロです。きらびやかな音使い、独特の突っかかるような左手のリフと、ファジーなリズムが印象的でした。ブギウギやフェスのようにドライヴして踊らせるというよりは、ラグタイムやジャズの小唄のようなイメージで、スタンダード(「ホワイト・クリスマス」や「スターダスト」など)からオリジナルのブルースまで、何をやっても自分の世界にしてしまっています。ラストの自作のブルースで聴かれる唯一のヴォーカルも、枯れた味わいです。



Tyrone Davis ; The Best Of Tyrone Davis ; RHINO R2 76630 (2003.10. 3)

1967年から91年までの、タイロンのヒット曲を網羅した決定盤で、タイロン自身が「とてもいいレコードだ」と謝辞を寄せています。シカゴを代表するソウルシンガーの、ゴスペルフィール溢れる初期の作品から、「ターン・バック・ザ・ハンズ・オヴ・タイム」などの代表曲で聴かれる艶やかなヴォーカルは本当に素晴らしいです。面白いのは「アー・ユー・シリアス」で、この曲、何だか同じ年に流行ったボズ・スキャッグスの「ジョジョ」に似てるんですよね。1980年の流行りなのかもしれません。でも90年代に入ると歌はともかく、キーボードとシンセ中心のバックの音が、なんだか「チンケ」に感じるのは僕だけでしょうか。



BACK ・ NEXT ・ HOME ・ 音楽の部屋