CD INDEX(C)
 

アーティストの名前順に並んでいます。「TODAY'S CD」で紹介したものは紹介文が付いています(日付)。紹介文のないものは「おすすめCD」か「お気に入りのミュージシャン」の中で紹介されているもので、「Click Here!」をクリックすると該当のページにジャンプします。

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C.C. Adcock ; Lafayette Marquis ; YEP ROC YEP 2040 (2004.11.18)

2004年リリース。最近自分でもどうして買ったのか分からないCDがあって往生してるんですが、これも訳も分からないまま類似穴から届いたんです。多分タイトルで買ったんでしょう。さて最初の曲はアコースティックな感じですが、ちょっとグランジっぽいって言うか、感覚が若いですね。で続く「スティーリン・オール・デイ」、イントロのトレモロの聴いたリフがなんだかヴェンチャーズの「ダイヤモンド・ヘッド」みたいだなと思ってたら、なんだかZZトップ風の7th音が響き渡るんで、こりゃ面白いと思って聴いてました。フィドルが入ってぐっとラフィエっぽいのも出てきますが、全体に若者のロックですね。でもこれなら十分聴く気になります。「ラヴ・ン・コールド」なんて好きだな。全体に「Tejas」の頃のZZトップに通じるものを感じます。ラス前の曲、サニー・ランドレスみたいな音で、これで買ったのかと思いましたが、聞き違い。エフェクタかけたアコーディオンの音でした。でも図らずもサニーさんが何を狙ってあのタップ奏法をやってるのかも分かった気がします。また聴こうっと。



C.J. Chenier ; Step It Up! ; ALLIGATOR ALCD 4882 (2003. 1.22)

2001年リリース。C.J.はクリフトン・シェニエの息子で、父と同様ピアノキーのアコーディオンを弾きます。時にはブラスも交えながら、全体にファンクネスを感じるサウンドをバックに、野太い声とピアノキー特有のマイルドで多彩なフレーズのアコーディオンを聴くことができます。ただサウンドがブルース・イグロアの好みなのか、ちょっと今風に作られ過ぎている印象もありました。ストレートなロックンロール「イート・モア・クロウフィッシュ」あたりが面白かったな。またブルージーな「ロード・ドッグ」などはお手のものって感じですね。手堅い作品。



C.J. Chenier ; The Desperate Kingdom Of Love ; WORLD VILLAGE 468041 (2006. 8. 2)

2006年リリース。なんとボストン録音です。おそらくカトリーナに被災したんでしょうか。タイトル曲は水害についての歌ですし、父親のクリフトン作のインスト「ブーガルーサ・ブギ」は亡きゲイトマウス・ブラウンに捧げられています。C.J.は父親が発展させたブルースやR&Bをベースにしたオールドスタイルのザディコを正統に継承しています。父親の曲も多く取り上げていますし、三連系のシャッフルやスローといったもろにブルースなリズムの曲が圧倒的に多いです。そんな中ハンク・ウィリアムズの「ロスト・オン・ザ・リヴァー」、ヴァン・モリソンの「コンフォート・ユー」といった美しいバラードをじっくりと歌い上げているのが印象的でした。



Cab Calloway ; Hi De Ho Man ; SME SRCS 9622 (2003.11.20)

1935年から47年の録音を集めたベスト盤です。3回目だかの録音となる「ミニー・ザ・ムーチャー」他、タイトル曲、「セント・ジェイムズ病院」など代表曲がてんこ盛りです。しかし軽妙で仕掛けの多いエンターティナーぶりの背後に、とてつもない歌唱力を秘めていたことがよく分かりますね。声の張りとか艶とか絶品です。これを聴くとスクリーミン・ジェイ・ホーキンスはやっぱり本来はこの人のフォロワーだったんだなって感じます。ズートスーツを着て踊る様子をあしらったジャケットもグッドでした。



Cab Calloway ; 1949-1955 ; CLASSICS 1287 (2003. 5. 6)

いきなり「おもて寒いよね」の元歌?から始まり、「ハックルバック」の歌入りヴァージョン、ボクサーのジョー・ルイス讃歌とのっけから楽しませてくれます。続く「ユア・ヴォイス」はどう聴いても「ヤバイ!」だし。「クェ・パサ・チカ」の楽しげな雰囲気といい、堂々たる再録「ミニー・ザ・ムーチャー」といい、やはりキャブのエンターティナーぶりは素晴らしいです。終盤に「アンチェインド・メロディ」が出てきたときには何事かと思いましたが。さすが筋金入りのエンターティナー!



Cadillac Pete & The Heat ; Turn Up The Heat ; CPR no number (2009. 1.20)

2002年リリース。冒頭の「トーク・トゥ・ユア・ドーター」、J.B.ルノアの曲ではない、ご機嫌なロッキン・ブルースです。キャデラックはハーモニカ吹きで、サード・ポジションを上手く使ったプレイが印象的。曲もアップテンポにした「ブローク&ハングリー」や軽やかな「ライディン・イン・ザ・ムーンライト」、スピード感のある「ユー・ビロング・トゥ・ミー」など、なかなか良くこなれたカヴァーにオリジナルを混ぜるなど、ちょっとしたロカビリー風味の楽しいアルバムです。




Cadillac Pete & The Heat ; Steamroller ; CPR no number (2009. 1.24)

2008年リリース。如何にもベテランといった風情でジャケット写真に納まってる5人組、演奏は手堅く、オリジナルのブルースもよくまとまっています。前に聴いたアルバムよりちょっと重心が下がったかな。フロント3人が歌えるっていうのも変化が出ていいですね。スライドありアコースティックありで変化に富んでいて聴き飽きません。でもいまひとつガツンと来ないんですよね。曲のせいかなぁ。




Cal Valentine ; The Texas Rocker ; BLACK MAGIC CD 9027 (2000.12. 5)

1994年録音。1曲目、ちょっとたどたどしいけどテキサスしたストラトサウンドから、飛び出した歌は「ルーシー・メイ・ブルース」!ギミックのないまっすぐな歌と、テクニックに走るわけではないけどなかなか聴かせるギター、何だか草野球場でけっこういい球を投げるピッチャーを見かけて、思わず見とれてしまい、得したなって感じです。ライトニンの「モジョ・ハンド」はロックンロールに化けてました。1曲聴けるハープはルイジアナ風味です。ローカルで頑張ってるあんちゃんの良質な一作ですね。



Calvin Boze ; 1945-1952 ; BLUE MOON BMCD 6014 (2003. 4.27)

カルヴィン・ボーズはウエストコーストを中心に活動したジャイヴ系のヴォーカリストで、トランペットも吹くようです。この人はマンハッタン・トランスファーがカヴァーしている「サフロニア・B」のオリジネイタで、新旧2テイク収められていました。大きなヒットはこれしかないようですが、ルイ・ジョーダンやジャック・マクヴィーの影響を感じる洒落たスタイルで、歌い口はよりスムーズです。その分毒気はあまり感じません。録音にはマックスウェル・ディヴィスが絡んだものが多く、50年代になるとチャック・ノリスの結構えぐいギターなんかも入っています。



Calvin Leavy ; Cummins Prison Farm ; P-VINE PCD-2118 (2000. 3. 9)

アメリカ南部のローカルなレーベルのシングルを集めた、P-VINE の記念すべき初LPのCD化。1968〜76年録音。中古で購入。タイトルではカルヴィンの単独盤のように見えますが、何人かのオムニバスといえます。表題曲の歌詩の内容と、1968年という黒人のおかれた時代背景を考えると、この曲が南部黒人社会に受け入れられた訳がよく分かります。日暮氏の熱いライナーも感動的です。曲は今聴くとやっぱりB級と思えるものもありますが、まずは必聴盤でしょう。


Calvin Newborn ; New Born ; YELLOW DOG YDR 1159 (2007. 3.18)

2005年リリース。これはジャズアルバムです。バックはもちろん、カルヴィンのプレイもかなりオーソドックスなジャズのマナーに乗っ取ったものです。でも、この人のフレーズは情感が溢れているなと思いました。理屈でこねくり回すフレーズより、心でおもむくままのプレイをしているようです。ですからブルース好きの僕が聴いても、割合耳に馴染むような気がします。ただ、ソウル・ジャズとしてはもう少しオルガンにインパクトがあった方が面白いかな。



The Campbell Brothers ; Pass Me Not ; ARHOOLIE CD 461 (2003. 7.26)

1997年リリース。先日行われたライヴ会場で購入しました。ヴォーカルにケイティー・ジャクソンを加え、来日公演の時にやった「アイ・フィール・グッド」「ジャンプ・フォー・ジョイ」「モーニング・トレイン」「アイヴ・ゴット・ア・フィーリング」、そして「ワッツ・ヒズ・ネイム?...ジーザス!」が収録されており、あの時の感動が蘇ります。チャックのペダル・スティールが主役で、一部ディリックのラップスティールも加わります。ただ、録音御圧が低めなこともあり、ライヴ録音も含まれているんですが、あの生で聴いた圧倒的な迫力は再現しきれていませんでした。そういう意味でもライヴを見ておいて良かったなと思いました。



The Campbell Brothers ; Sacred Steel On Tour! ; ARHOOLIE CD 503 (2003. 9. 5)

2000〜2001年にかけて、主にニューヨークで行われたライヴを中心に収録。ヴォーカルにデニス・ブラウンやケイティ・ジャクソンなどを迎え、先日の来日公演を彷彿させる高揚感のある演奏が収められています。スティールギターが縦横に動き、どんどん盛り上がっていく感覚は、セイクリッド・スティールならではのもの。特にラスト3曲の「ジーザス」「モーニング・トレイン」「ウー・ウー」のハイテンションさはたまりません。



Campbell Brothers ; Can You Feel It? ; ROPEADOPE/P-VINE PCD-23638 (2005. 7.10)

2005年リリース。強烈なグルーヴを放つドラムを軸にしたサウンドをバックに、2本のスティールがスペイシーに絡み合うキャンベルブラザーズのサウンドは、一度聴くと癖になりますが、この新作はきっちりとプロデュースされ、彼らの魅力が十二分に引き出されたものとなりました。セイクリッドと名の付く以上もちろん宗教的な曲で、例えばデニス・ブラウンの歌う「ジャッジメント」はまさしく(神の)「審判」ですが、そんなことを忘れさせるようなダンサブルなサウンドに身をゆだねていると、確かにトランスしてくる自分がそこにいます。インストの「ア・チェインジ・イズ・ゴナ・カム」の豊かな表現、デリック・キャンベルがヴォーカルに加わる「パワー・ロード」の迫力、ブルースの香りが漂う「アメイジング・グレース」、フィル・キャンベルが素晴らしいブルースギターを披露する「ドント・レット・ザ・デヴィル・ライド」など、もう見事というしかありません。今から次作に期待しちゃいます。ことしのベスト5は確定でしょう。



Campbell Brothers ; Rallytime! - Live In New Orleans ; TULIP no number (2008. 8. 2)

2006年2月のライヴで、ゲストにカーク・ジョセフ、ティム・グリーン、マーク・アダムズなどニューオーリンズ名うてのミュージシャンが参加しています。躍動感溢れるリズムに支えられたチャックとデリック2本のスティールをバックに、デニース・ブラウンのソウルフルな歌が聞こえてくると、ふっとこれがゴスペルであることを忘れてしまいます。「ザ・ストーム・イズ・パッシング・オーヴァー」ではショーン・カーレイがセカンド・ヴォーカルとして参加、もちろんカトリーナにちなんだ歌ですね。さらにここにニューオーリンズ勢のブラスが加わってくると、その音の厚みは強烈で、特にグルーヴィーな「リアリータイム」はコール&レスポンスもあって、そのうねりは最高潮に達します。一方マーク・アダムズがオルガンで参加した「アンダースタンド・イット・ビター」は境界での演奏のよう。続く「スポンテニアス・プレイズ・ジャム」がこれまた強烈!スティールとオルガンのサウンドが束になって迫ってきます。最後はしっとりとスティールで「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」。被災した街への贈り物のような演奏でした。




Candi Staton ; Candi Staton ; CAPITOL 7243 594 4322 5 (2004. 1.31)

1969〜73年くらいの録音でしょうか。キャンディ・ステイトンは恥ずかしながら「スタンド・バイ・ユア・マン」くらいしか聴いたことがなかったんですが、ここにFAME時代の録音がまとめられたということで、早速聴きました。初期はジョージ・ジャクソン絡みのアップナンバーが多く、いかにもFAMEらしいどこか泥臭いバックにキャンディの素朴な感じの歌が良く合っているんですが、やっぱり彼女の魅力はカントリー・フレイヴァを感じさせるややゆったりした曲にあると思います。ゴスペルで鍛えた喉なんですが、暑苦しくなく、どこか少年のような爽やかさを感じる声は唯一無二です。「ラヴ・チェイン」のようなファンクネスを感じさせる曲もドロッとしないし、名バラード「ザッツ・ハウ・ストロング・マイ・ラヴ・イズ」も重たくならないのが彼女の味ですね。そしてカントリーの大名曲「スタンド・バイ・ユア・マン」の見事な消化具合、やっぱり絶品です。CDをリピートにして流しっぱなしにしていても全然疲れない、魅力的な作品群。本当に嬉しいリイシューですね。



Candi Staton ; His Hands ; ASTRALWERKS ASW 49832 (2006. 7. 4)

2006年の新譜です。いきなりカントリー・フレイヴァーたっぷりの曲(車に同乗して聞いていたカミサンに言わせると「襟裳岬」みたいとのこと)で、まあキャンディらしいって言えばそうなんですけど、ちょっと安直かな。それより続く「ホウェン・ハーツ・グロウ・コールド」のシンプルで落ち着いた演奏に、じっくり歌い上げる方がぐっと魅力的でした。全体に腰を据えて丁寧に歌っていて、キャンディの成熟した魅力が上手く出ていると思いました。随所に思わずぐっと来る歌い回しがあって。タイトル曲の切実な感じもさすがです。ブルージーな曲とカントリー系の曲をバランスよく入れて、そこにソロモン・バークの「クライ・トゥー・ミー」なんて曲があるんですが、意外と地味でした。でもこの地味だけど丁寧な歌がキャンディの魅力じゃないでしょうか。



Candi Staton ; Who's Hurting Now? ; HONEST JONS HJRCD37 (2009. 5. 1)

2009年リリース。バラードにしてもミディアムにしても、全体に内省的な歌い方で、じっくりと歌い込んでいる印象があります。その分印象は暗いんですが、これも彼女の持ち味なんでしょうね。背景にはゴスペルの味わいがたっぷりで、特に「ゲット・ユア・ハンド・ダーティ」「「ダスト・オン・マイ・ピロウ」あたりからはそうしたものを強く感じました。僕はどうしてもFAME時代のイメージから抜けられないんで、もう少し他の作品を聴いてみたいと思います。




Candye Kane ; Knockout ; ANTONE'S ANT0038 (2001.10.15)

1995年リリース。ヴォリュームたっぷりのボディと、ちょっとアンバランスな小娘風の顔立ちのキャンディですが、なかなかどうしていい歌を聴かせます。ブルースはやや明るめのトーンで曲を楽しんでいるって感じ。アイク・ターナーのキング・オヴ・リズムの十八番「ゲット・イット・オーヴァー・ベィビー」が出てきたときには思わずにんまりしてしまいました。この他ラテン調の曲、ロック系の歌も凄く素直に歌っていて好感を持ちました。僕は女性ヴォーカルはそれほど好きではないんですが、これは気持ちよく聴けます。



Cannonball Adderley ; Jazz Masters ; EMI JAZZ CDMFP 6305 (2000. 7.18)

「マーシー・マーシー・マーシー」のオリジナルかと思って買ってみたらライヴでした。おそらく1970年代前半くらいの録音ではないでしょうか。「ワークソング」はいかにもモダン・ジャズって感じでしたが、ジョー・ザヴィヌルがエレピを弾く「マーシー...」やステイプル・シンガーズの「ホワイ」は、ものすごくファンキーです。僕はフレーズ的にはジャンプ系のごり押しソロが好きなんですが、たまにはこういうのもいいですね。とっても熱いものを感じました。レコーディング・データの記載がないに等しいのが残念。


Captain Beefheart ; Trout Mask Replica ; REPRISE 927 196-2 (2007.10.18)

1970年リリース。鯉のお面をかぶった男という、実にインパクトのあるジャケットに惹かれて、ついつい買ってしまいました。う〜ん、何というのかな。確かにブルースの香りは感じるし、キャプテン自身が吹いているサックスは前衛ジャズみたいな雰囲気もあるんですが、全体にくぐもった音で、聴いているだけだと歌詞が分からないためどうも入り込めませんでした。これでリズムがもう少しグルーヴィーならいけちゃうんですが。ちなみに外盤なのに歌詞カードは付いてました。老眼にはちとつらいですけどね。



Captain Squeeze & The Zydeco Moshers ; Bayou Party Down Town ; GSM VOL.1004 (2005. 8.24)

2004年リリース。キャプテン・スクウィーズことグレッグ・スペックと息子のアレックはニューヨークはオールバニでC.J.シェニエのライヴを見て夢中になり、ついにバンドを作ってザディコをやるようになってしまいました。アコーディオンはなかなかいい感じなんですが、まずヴォーカルがかなり弱いなぁ。それ以上にギター、ドラム、ベースがルイジアナやテキサスのザディコとはまるで違います。かなり踊りにくいかな。ギターはフュージョンもやったエレキ小僧って感じのフレーズが連発ですし。でもこうしてザディコというスタイルを取り入れながらバンドがあちこちから出てくることは、違和感も含めて面白いことと言えるのかもしれません。



Captain Squeeze & The Zydeco Moshers ; Fine People Everyone ; CSZM no number (2010. 6.28)

2010年リリース。この人はどうやらニューヨーク界隈をベースにしているようです。「ギヴ・ヒム・コーブレッド」などを聴けば歴然ですが、音が全体に軽く、ハーモニカが入ってたりと、ルイジアナ直送ものに比べ善くも悪くも洗練されています。コーラスワークも妙に綺麗だし。毒気の抜けた上品なザディコって感じて、物足りないですね。




Carey Bell ; Carey Bell's Blues Harp ; DELMARK DE-622 (2005. 2.21)

1969年録音。今やシカゴのベテランハーモニカプレイヤーのキャリーですが、これがデビュー盤になるんだと思います。セッションはジミー・ドーキンスのややエグ味のあるギターにウィリー・ウィリアムズのつっこみ加減が強烈なドラムという、ワイルドな印象のものと、エディ・テイラーがかっちり脇を固める落ち着いたものに分かれますが、当時の弾けるようなキャリーのヴォーカルには、時々ずれちゃったりしますが、前者の方があってるかもしれません。ハーモニカの腕前はこの時代から素晴らしく、特にクロマチックはリトルウォルター直系の多彩なフレーズを聴くことが出来ます。やや荒いところもありますが、旬のサウンドは今聴き直しても結構いけますね。



Carey Bell ; Heartaches And Pain ; DELMARK DD-666 (2005. 3. 7)

1977年リリースのLPをストレートにCDにしたものです。アーロン・バートンにサム・レイといったリズム隊に支えられ、脂の乗り切ったキャリーの安定したハープと歌が心地好い好盤です。ギターには当時売り出し中の息子ルリー・ベルが参加していますが、しっかりとした端正なギターを弾いています。全体的に目立った「華」のあるアルバムではありませんが、この時代のシカゴブルースの良質な部分をきちんとスタジオで捉えている感じ。マジック・サムの録音のようなやっつけではなく、きちんとプロデュースが入りながら、ジャムセッションの味わいを残した雰囲気がなかなかいいです。



Carey & Lurrie Bell ; Son Of A Gun ; ROOSTER BLUES/P-VINE PCD-5248 (2002. 6. 3)

1984年リリースのアルバムのCD化です。バーゲン品で購入。巷では不仲が伝えられるベル親子の初共演盤で、ルリー売りだし中の時代の物です。ギターに若さが弾けていて、トーンの選択など何のそのといったプレイですが、いまひとつガツンと来ません。歌はけっこうしっかり歌っていて、青さを感じますが割と好きな感じです。一方キャリーは流石と思わせるクロマチックのプレイなど、いぶし銀のような技を随所に見せますが、今一アピールには欠けます。何だか共演でお互いが遠慮しているようにも感じました。



Carey Bell ; Harpslinger ; JSP 5102 (2007. 4.11)

キャリーの1988年録音と息子のルリーをメインにした1989年録音のカプリングです。キャリーのハープはいつも通り見事なテクニックで、特にサード・ポジションの音の深さはさすがです。時折聴かれる幽霊が出てきそうな「フォ〜〜〜〜」というヴォーカルをハープに乗せたフレーズが「スリンガー」なんでしょうかね。でもこのアルバムの目玉はルリーの方だと思います。パキンパキンと切れ味のいいギターに、情感のこもったヴォーカル、たった4曲ですけどすばらしいパフォーマンスだと思いました。



Carey Bell & Tough Luck ; Mellow Down Easy ; ABLIND BIG BP74291 (2010. 3. 2)

1991年リリース。バックを白人のバンドで固めた演奏です。キャリーの魅力はなんと言ってもサード・ポジションの表現力豊かなハーモニカで、例えば「ファイヴ・ロング・イヤーズ」などでいかんなく発揮されています。また、素朴な生ハープのインスト「セント・ルイス・ブルース」も、いわゆるドブルースマンはあまりやらない曲だけに新鮮でした。シカゴ・ブルースの名曲にオリジナルを配していますが、スタイルがはっきりしていますから破綻はありませんね。もっとファンキーな曲やったらいいなとは思いますが。




Carey & Lurrie Bell ; Second Nature ; ALLIGATOR ALCD 4898 (2004. 7.11)

2004年リリース、久々の親子共演盤は、アコースティックギターと生ハープでのものです。ほぼ交互に歌っており、キャリーのテクニックのしっかりしたハープとヴォーカルはもちろん、ルリーもしっかり歌っています。ただ演奏はおとなしめで、特にルリーは有名な曲のカヴァーが多いんですが、もうひとつ訴えてくるものがなかったです。やはりエレキでバリバリ弾いてこそ魅力が出るんじゃないでしょうか。全体に地味な印象を受けました。



Carey & Lurrie Bell ; Gettin' Up ; DELMARK/P-VINE PCD-23915 (2007. 5.12)

2006年6月と10月のライヴに、ルリーの自宅での録音を加えた作品で、残念ながらこれがキャリーの遺作となってしまったようです。まずローザズでのライヴでは、卒中と骨折から回復間もないキャリーを、ルリーが支えるように演奏する様子が痛いほど伝わってきます。ジュニア・ウェルズ、リトル・ウォルターといった先輩の曲を中心に、病み上がりのキャリーはそれでも精一杯ハーモニカを吹き、歌います。歌も思ったよりは良かったですけど、ハーモニカはさすがというしかありませんね。往年の切れ味はさすがにありませんが、インストの「ベルズ・バック」など、ルリーのパキパキしたギターに支えられて気持ちよさそうに吹いています。そのルリー、「プリーズ・ドント・ゴー」を歌いますが、ヴォーカルに味わいが増していますね。来日が期待できそう。さて10月のバディ・ガイ・レジェンドのライヴの方は、リズム隊のせいもあってか、全体に持ったりした感じ。気のせいかキャリーも元気がないように思いました。最後に4曲入ってるルリーの自宅でのセッションはローザでのライヴの翌日。リラックスした演奏が楽しめます。ラストにルリーが歌うゴスペル、素晴らしい歌で染み入ります。



Carl Martin & Brownie McGhee ; Carolina Blues ; WOLF WSE 114 CD (2000. 2.21)

カール・マーティンの1930〜36年の録音と、ブラウニー・マギーの1940〜41年の録音集。中古で購入。カール・マーティンといえば「クロウ・ジェーン」で、しっかり収録されてます。ブラウニーは戦後よりこの時代の方が素朴だけど好きです。彼など60年代以降「やらされ」た代表かもしれませんね。


Carl Weathersby ; Don't Lay Your Blues On Me ; EVUDENCE ECD 26075-2 (2000. 6.15)

1995年録音のカールのソロ第1弾。第1印象は「とっても素直」です。変にひねったプレイに走らず、ひたすら直球勝負といった感じです。ギターはアルバート・キングの影響をはっきり出しながらも、シカゴで鍛え抜いたタフなプレイを聴かせます。ヴォーカルは素直で暖かく、人柄を感じさせます。ソウル系の曲に特に魅力を感じました。ラストの「ファニー・メイ」、原曲よりずっと落ち着いた演奏で、この曲の良さを再認識させられました。とにかくほっとできるアルバムです。


Carl Weathersby ; Looking Out My Window ; EVUDENCE ECD 26089-2 2000. 6.16

1997年リリースのカールのソロ第2弾。前作と同じくまっすぐなブルースですが、ジミ・ヘンドリックスぽいサウンドをバックにした曲などもあり、よりヴァラエティに富んだ感じです。1曲目からインパクトが強く、ぐいぐい引き込まれました。そして後半、特にアルバート・キングのやっていた「ラヴ・ショック」の次に唄われる、ジョン・ハイアットの「フィールズ・ライク・レイン」、素晴らしいです。カールのハートウォームな声がマッチした佳曲です。尚、カールについては江戸川スリムさんの「BlueSlim」をご覧ください。


Carl Weathersby ; Restless Feeling ; EVUDENCE ECD 26099-2 (2000. 5.26)

現在来日中のカール1998年リリース作品。1曲目の「マッチボックス」、アルバート・キングの影響がギターだけでなく歌にもみられます。この他「ウィー・オール・ワナ・ブギー」もほぼオリジナル通りのスタイルで取り上げています。この他はファンキーなアレンジの曲が多いですが、意外にも、「こりゃロックです」というような曲を3曲やっています。演奏は結構はまっていて、アルキン・スタイルのギターが乗りやすいせいか自然に聴けました。ただ、ヴォーカル(声質)はロック系の曲にはあまり馴染まないようです。変化をつけるためか、ライトニン・ホプキンスの「グローリー・ビー」をアコースティックでやっていますが、アレンジなどオリジナルとは全然違います。これはいまいちに感じました。でも全体として意欲的な作品で印象は良かったです。


Carl Weathersby ; Come To Papa ; EVIDENCE ECD 26108-2 Click Here!

Carl Weathersby ; In The House ; CROSSCUT CCD 11078 (2004.11.20)

2002年スイスでのライヴです。とにかくのっけからバリバリ弾き倒すカールが強力。歌は丁寧に歌っていますが、本人のテンションがかなり高い感じを受けました。「イフ・ザット・エイント・ザ・ブルース」など、突っ込む部分とミュート奏法で押さえる部分のくっきりとしたコントラストなど、エモーショナルなのにちゃんと冷静に計算してサウンドメイクしているのが分かります。ゲストにビリー・ブランチとオーティス・クレイが入っていますが、なんだかカール自身に全部任せた方が良かったような気もします。ガツンと来る「エンジェル・オヴ・マーシー」からのアルバート・キング・ナンバー3連発は、とにかくそのギターに身をゆだねるのが一番かな。ラストのジミ・ヘンドリックス風オリジナルではアームプレイまで出す大サーヴィス。堪能しました。でもジャケット写真のES-335、ライヴでは別のを使ってたってことですね。



Carl Wethersby ; Hold On ; CARL WETHERSBY no number (2005. 1.15)

2004年リリース。先日聴いた2002年のライヴ盤はまさに弾き倒し状態だったんですが、このアルバムはEVIDENCE時代の、ソウルフルなヴォーカルを生かしたスタイルに戻っています。むしろ控えめとも言えるプロデュースで、カールそのものの素材の味を引き出そうとしているように感じました。カールの歌は派手さはないんですが、内面からしみ出るような暖かみがあり、特にソウルバラードの佳曲となったタイトル曲など、その良さがたっぷり出ています。それを引き継いで盛り上げるギターも素晴らしいし。全体として落ち着きがあり、ファンキーなナンバーもどっしり感があります。まあその分キャッチーな曲は少ないんですが、こうした作品はじっくり味わいたいですね。まさに自分の音楽性をじっくり見直して、安直に走ることなく作り上げた、いぶし銀の魅力溢れる作品だと思います。すでに4回目に突入してます。早くもベスト5入り確定です。



Carlos Del Junco ; Blues Mongrel ; NORTHERNBLUES NBM0026 (2005. 3. 4)

2005年リリース。いきなり耳に飛び込んで来るのはジョン・キャンベルを彷彿させるドロドロに歪んだスライドギター。これにバシャンとしたスネアの音がアクセントをつけ、ちょっとダメージド・ブルースを思わせましたけど、ハーモニカは端正で、歌はすっきり。このコントラストが不思議な感じです。ハーモニカはテクニカルで、歌心もたっぷりあり、ブルースの枠組みは完全に越えちゃってます。実際ラテンがかった曲やカントリー・テイストのもの、さらにジャズからスタンダードまで消化していて、万華鏡のようです。吹き語りの「ナイン・ビロウ・ゼロ」は力入ってますね。この辺が原点かしら。でもバンドのサウンドには一貫性があり、どんな曲でも適度にダーティ。こりゃつかみ所がないけど面白いですね。



Carlos Johnson ; My Name Is Carlos Johnson ; BLUES SPECIAL BSCD9503 (2001. 9.18)

2000年アルゼンチン録音。もうとにかく「エグい」の一言です。チューブの焦げつく臭いが漂いそうなファットなアンプを通して、ブルースの神様が宿ったようなギターフレーズが嵐のように押し寄せてきます。そこには計算とか妥協とかいうものはありません。アルゼンチンの地味だけど的確なバンドをバックに、おそらく一発録りで収録しただろうこのアルバム、ミストーンまで含め、カルロスの凄さをほぼ完璧に捉えています。ヴォーカルの弱さはこの際置いておきましょう。やっぱりブルースは歌って弾くんだっていうカルロスの姿勢をビンビン感じました。もっときちんとプロデュースしたら素晴らしい作品になるだろうなという思いを最初は感じましたが、何もたがをはめないこうした録音もそれはそれでいいと思いました。ブルースギターを弾いていて、フレーズにマンネリ化を覚えているあなた!これを聴いたら目、いや耳から鱗です。



Carlos Johnson ; In And Out ; MISTER KELLY'S no number (2004.10.19)

2004年リリース。カルロス入魂の一作です。まず印象的なのはそのギターのサウンド。ES-335を指弾きならではの粘りのある音で鳴らし、ややブースト気味のアンプで響かせるスタンスは、先日のオーティス・ラッシュの公演の時と同じです。とにかく「いい音」なんです。楽曲はご本人お気に入りの「スピリット」など、ファンクというよりフュージョン的なセンスのものが多く、一歩間違うと僕の趣味から離れるんですが、カルロスのギターは徳俵をぐっと踏み締めていて、バリバリ響いてきます。スローナンバーのギターの情感は鬼気迫るものがあります。オリジナルが多いんですが、「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」のようなスタンダードも、楽曲をなぞるのではなく、自身のセンスで再構築していて聴き応えがあります。歌も決して上手いとは言えませんが、心のこもったもので好感がもてます。一部バンドサウンドの整理が上手くついておらず、やや雑然とした印象の曲もありますが、そんなことはどうでも良くなるカルロスのギターの存在感は、さすがというほかありません。ことし5指に入りますね。



Carlos Johnson ; Live At B.L.U.E.S. On Halsted ; P-VINE PCD-25050 (2007. 2.10)

2006年6月に、二夜限りのメンバーを集めて敢行されたライヴ録音により、とうとうカルロスの本当の魅力が余すところなくとらえられました。冒頭のジャジーなインスト「C.J.ズ・スウィング」から、アンプの熱さが伝わってくるような粘りのあるギターサウンドと、自在に動き回るけど実にエモーショナルなフレーズが炸裂、これ1曲でもうノックアウトされてしまいました。彼が敬愛するオーティス・ラッシュやその先輩格に当たるアルバート・キングといったレフティ達の曲に、「エヴリディ」のようなスタンダード、そして乗りのいい「ハイ・ヒール・スニーカー」を織り交ぜていますが、腕達者なバックバンドが見事にサポートしていて、カルロスも伸びやかにプレイしています。また彼のヴォーカルも、声の力はそれほど感じないものの、情を込めた歌い回しなど、実に味わい深いです。そしてソウルとブルースのジャンル分けをあざ笑うかのようなインスト「ファッツ・ゴーイン・オン」、ギターが歌うってまさにこう言うことですね。ことしのベスト間違いなしでしょう。



Carlos Johnson ; Encore! Live At B.L.U.E.S. On Halsted ; P-VINE PCD-25092 (2009. 3.13)

2006年のライヴ録音で、以前出たアルバムに未収録の音源を集めたものですが、内容は決して聴き劣りしません。DVDとも重複が少なく、とても良心的な編集です。カルロスのギターの調子はもちろんいいんですが、やはり達者なバックがつくとより映えますね。ジョニー・ギター・ワトソンの「リアル・マザー・フォー・ヤ」は後半ボビー・ブランドの「ターン・オン・ユア・ラヴライト」に転じてかっこよく盛り上がりますし、何より嬉しかったのが「マーシー・マーシー・マーシー」。来日の時物足りない感じだったんですがこちらはすばらしく盛り上がります。ジミー・リードのメドレーなどシカゴらしさを出しながら、カルロスらしいモダンなセンスのギターがふんだんにつまったアルバムです。




Carol Fran & Clarence Hollimon ; Soul Sensation ; BLACK TOP BT-1071(2000. 8.23)

1992年リリース。中古で購入。ブルース界のオシドリ夫婦(残念ながら「元」になってしまいましたが)の8年前の作品ですが、これは本当に「オシドリ」しています。「ブルース・フォー・キャロル」なんて曲もあるし。キャロルの歌がかなり全面に押し出されていて、チャーミング。アコーディオンをフューチャーしたザディコ(と言っていいのかな)も2曲あり、さすが元ルイジアナの歌姫って感じです。ホリマンの職人ギターも比較的抑えめですが、いぶし銀の輝きを放っています。ベースにジョージ・ポーターの名前が見えますし、バックは当時のBLACK TOP オールスターズ。裏ジャケの写真、ひょっとしてこれがhiramatさんのイラストのネタかしら?


Carol Fran & Clarence Hollimon ; See There! ; BLACK TOP CD BT 1100 (2000. 3.19)

ブルース界のオシドリ夫婦、キャロルとクラレンスの1993年録音、N.O.を中心に活動していたキャロル姉御の、鍛えられた喉と、クラレンスの職人ギターの絡みが最高です。特筆したいのはやはりギター。セミアコのフロントマイクから紡ぎ出される暖かいサウンドと、トリッキーではないけど多彩なフレーズ回しは、何度聴いても飽きません。ぐいぐい引き込まれちゃいました。自分もギターが弾きたくなる1枚。


Carol Fran & Clarence Hollimon ; It's About Me ; JSP JSPCD2139 (2000. 3.20)

キャロルとクラレンスの新譜、2000年録音、全編でクラレンスのギターが縦横無尽に飛び交います。BLACK TOP 盤よりリヴァーブが深いサウンドになってる分、クラレンスのウォームな響きがそがれているようには感じますが、御機嫌なフレーズで溢れています。彼の歌もギター同様暖かいです。キャロル姉御の喉も健在ですが、4曲はちと寂しいな。プロデュースの差で僕は BLACK TOP 盤に軍配を上げますが、横綱相撲です。どっちも好きだよ。


Carol Fran ; Fran-tastic ; SONO 1056 (2002.11. 2)

2002年リリースの新譜です。連れ合いのクラレンス・ホリモンを亡くしてから、どうしているのか心配していたんですが、すごく元気な歌声を聴かせてくれました。ギター、ピアノ、ベース、ドラムのシンプルなバンドのジャジーな演奏をバックに、ゆったりと落ち着いた、でも丁寧な歌が素敵です。洒落ていて、でもお高くなく、どこか心温まる歌声で、リラックスするには最高です。またサポートするギターのセルウィン・クーパーも、よく歌うフレーズでフランに絡みつき、ムードたっぷり。全体にジャズ・フィーリングの溢れるゆったり目の曲が目立つんですが、アップの曲はしっかりスウィングしています。ニューオーリンズものを取り上げていて、「アイ・ノウ」はクレジットはバーバラ・ジョージになっていますが、歌詞、曲調とも別の曲になっています。ラスト3曲はかなりファンキーで、クリス・ケナーの「シック・アンド・タイアード」はちょっと「ジャスト・ア・リトル・ビット」風のアレンジでかっこいいです。でもラス前のフラン自作の「テイク・マイ・ハズバンド」、ちゃんと歌詞を聴き取れたらなぁ。



Carole King ; Tapestry ; ODE/ESCA 7770 <Click Here!

2010.10.12 Carolina Chocolate Drops ; Genuine Negro Jig ; NONESUCH 7559-79839-8 (2010.10.12)

2010年リリース。以前ミシシッピ・シークスのトリビュートで聴いて面白かったので、単独盤を聴いてみました。まず思ったことは、こうした古いスタイルを今やろうという黒人ミュージシャンはほとんどなくて、むしろ60年代から白人のフォーク畑の方が多かったわけで、いよいよ時代が変わってきたのかなと思います。つまり自分たちの生活に根付いた伝統の継承、あるいは生活に根付くゆえの拒絶ではなく、過去を振り返ってその音楽の面白さを再現していこうって姿勢を感じるんです。つまりかなりインテレクチャルなものがそこにあるように思います。このユニットはよく研究し、テクニックを磨き、その面白さを現代から未来に伝えようとする姿勢を感じました。だから古くささを感じないんです。楽曲もジグ・スタイルばかりでなく、リル・グリーンの「ホワイ・ドンチュー・ドゥー・ライト」をアンニュイにやってたりしますし。そして続く「キャンディ・ギャル」では素晴らしいバンジョーを聴くことができたり。注目したいユニットです。




Carpenters ; Now & Then ; A&M/UNIVERSAL UICY-90043 (2005.10.14)

1973年、カーペンターズの大ヒットアルバムです。セサミストリートの子供向け「シング」と、レオン・ラッセルの「マスカレード」というコントラストが見事なLPでいうA面は、「ジャンバラヤ」まで入るヒットパレード、一方これまた大ヒットの「イエスタディズ・ワンス・モア」で始まるLPのB面は、DJ仕立てでビーチボーイズからカントリー、ポップソングを並べたコンセプトサイドになってます。CDで通して聴いちゃうとこの辺の作りが分からないのが残念ですね。しかしカレンの声って、本当に癖がなく素晴らしいです。実は結構好きなんですよ。



The Carter Brothers ; Southern Country Boy - The JEWEL Sessions 1965-1969 ; JEWEL/P-VINE PCD-24049 (2001. 1.22)

かつてVIVIDやP-VINEから出されたカーター・ブラザーズのアルバムに曲をてんこ盛りして再発したもの。B.B.キングの影響をもろに受けたロマン・カーターのヴォーカル、でもローカルな雰囲気がたまりません。タイトル曲もですが、「ブーズ・イン・ザ・ボトル」とか噛めば噛むほど味わいの出る曲でいいです。LPで買った当時、流行ったり有名なもの以外にいいものがあるって感じた作品でした。追加された曲はオリジナルが多く、それはすごいと思いますが、何曲か毛色の違う曲も含まれているものの、新たな発見を感じるって程ではなかったです。



The Carter Brothers ; Since You've Come Into My Life ; P-VINE PCD-5539 (2000.7.21)

ことし録音のカーター・ブラザーズ久々の新譜です。さて、僕としては前作よりずっと素直に聴けたんですが、何か印象に薄いんですよね。ロマンのヴォーカルはややだみ声気味で、エネルギーは感じるんですけれど、僕の好みじゃないんです。アルバートのギターはB.B.キング・マナーで、はまると心地良いんですが、インパクトのあるソロはなかったです。結構ファンキーなアレンジの曲もあり、好き嫌いの分かれそうなアルバムですね。ちなみにこの兄弟、現在はふたりになりました。


Cassandra Wilson ; Belly Of The Sun ; BLUE NOTE 7243 5 35072 2 0 (2003. 1.19)

2002年リリース。1曲目にザ・バンドの「ザ・ウェイト」をやっているので興味を持って買ってみましたが、もう少しゴスペル調の人かと思ったら、低めの声で抑制の効いた歌い方をする人でした。言ってみればジャズヴォーカルのスタイルですね。でも演奏はリゾネイタを使ったスライドが結構表に出ていて、スタンダップ・ベースの自由なフレーズと絡むあたり、「ウォーターズ・オヴ・マーチ」なんてフィービ・スノウのデビュー作を彷彿させるものもありました。ボサノバっぽいギターにパーカッションがうねりを与えたり、「オンリー・ア・ドリーム・イン・リオ」では12弦バンジョーがスティールドラムを思わせ、「ドランク・アズ・クーター・ブラウン」ではスティールパンとマンドリンの相乗効果で、カリブの香りがいっぱいに。かなり面白く聴きました。確かに「ユー・ガッタ・ムーヴ」やロバート・ジョンソンの曲も入っているんですが、何でブルースコーナーにあったのかは不思議。おかげで聴くことができたんですけどね。



Catfish Keith ; Pepper In My Shoe ; FISH TAIL FTRCD001 (2007. 5.19)

1991年リリース。これが最初のアルバムになるのかな。基本的なスタイルはこの段階で完全に出来上がっています。ナショナルのメタルボディをスライドでプレイするのと、古いアコースティックギターをビンビンスラッピングして弾く感じは、サン・ハウスあたりからの影響が強いように感じました。歌い方も最近のものと同じような感じですけど、こちらはちょっと余裕がなく硬い感じがしますね。でも切れのいいフィンガーピッキングをバックに、結構エモーショナルに歌うストレートなブルースは、どこか切なさもあって初々しく聞こえました。



Catfish Keith ; Cherry Ball ; FIS TAIL FTRCD003 (2007. 7.27)

1993年リリース。いつもの通りリゾネイタを爪弾き、スライドを滑らせながら歌うキースですが、このアルバムではファルセットが印象に残りました。特にタイトル曲、まるでロバート・プラントみたいな歌い方です。ちょっとわざとらしく感じました。ギターのテクニックはいうことないんですが、なんか全体に曲調がせっかちに感じます。この辺が最近の作品との違いですね。まだ若いってことでしょう。



Catfish Keith ; Fresh Catfish ; FISH TAIL FTRCD004 (2007. 5.25)

1995年リリース。1曲目の「ハイ・ヒール・スニーカー」、クレジット見るまでトミー・タッカーのそれとは気付きませんでした。相変わらず切れのいいスラッピング気味のフィンがリングで、弦をピンピン鳴らしながらブルースを唸っていますが、ギターは上手いけれども表情がまだ足りず、歌も何かわざとらしさが耳につきます。やはり最近の作品の方が成熟度を増したってことなんでしょうね。ゆったりしたスライドが聴きたくなりました。



Catfish Keith ; Twist It. Babe! ; FISH TAIL FTRCD005 (2007. 3.10)

1997年リリース。いろんなタイプのリゾネイタを使い、これでもかとスライドやオープンチューニングのフィンガーピッキングを聴かせますが、まずギターが凄く上手いです。表面的なテクニック以上に、力強さと適度な粘りがあり、グッと引き込まれました。しかも歌もなかなか味があります。ファルセット気味でまるでスキップ・ジェイムズみたいに歌うかと思うと、色気たっぷりなタイトル曲、タフに歌う曲と、ギターに負けずヴォーカルもいろんなスタイルを聞かせ、しかも統一感があります。ブラインド・レモンの「ワン・カインド・フェイヴァー」のドライヴ感は弾き語りとは思えない迫力。ブラインド・ウィリー・ジョンソンの「ダーク・ワズ・ザ・ナイト」も、この曲のカヴァーとしては出色の出来だと思いました。久々にやられたって感じのアルバムです。



Catfish Keith ; Pony Run ; FISH TAIL FTRCD006 (2007. 4.25)

1999年リリース。オリジナルのタイトル曲やトラッドを自分なりにアレンジしたラグタイム調の曲で、ビンビンとスラッピングする弦の音に負けずとドスを利かせるヴォーカルがまず印象に残ります。もちろんスライドも披露しており、特に「バット・ダンス」ではユニークなフレーズも飛び出しているんですが、このアルバムはどちらかというとパーカッシヴに爪弾くギターの方が目立ちます。こういうメタルボディのリゾネイタの使い方もあるんだなと再認識。でももう少しスライドが多い方が、そしてヴォーカルがリラックスしてる方が好きですが。



Catfish Keith ; Rolling Sea ; FISH TAIL FTRCD007 (2007. 7.18)

2003年リリースかな。この人の音をここのところずっと追っかけて聴いてますが、このアルバムはかなり円熟してきた印象を受けます。スタイル自体に大きな変化があるわけじゃなく、演奏がゆったりし、またスライドなどのテクニックが演奏の中にきちんと溶け込んで来た印象です。だから以前のようにワンパターンが耳についたりしません。「マイ・リトル・ガール」ではスライドを用いずフィンガーピッキングとギターのボディをたたいているんですが、これも嫌味がないですね。全体にトラディッショナルをキースなりにアレンジした曲やオリジナルが多いんですが、ブルースなどを本当によく研究し、消化しています。このアルバムがベストかもしれません。



Catfish Keith ; Sweet Pea ; FISH TAIL FTRCD009 (2007. 3.11)

2005年リリース。多種多様のアコースティックギターに囲まれながら、トライコーンの12弦リゾを持ってにやつくキャットフィッシュの嬉しそうな顔から、アルバムの音が想像できます。ハーモニクスを入れながらグッと迫ってくるスローの「ライトニング・フラッシュ,サンダー・ロール」のえぐさ、ただものじゃありません。スキップ・ジェイムズやレッドベリーのナンバーの他、ガス・キャノンなどラグタイム調の曲などもありフィンガーピッカーとしての腕前もたしかですし、とても明るい響きのギターからスタートするロバート・ウィルキンスの「放蕩息子」も素晴らしいアレンジです。でもヴォーカルはちょっとわざとらしさを増した感じがしますね。



Catfish Keith ; If I Cold Holler ; FISH TAIL FTRCD010 (2008. 2. 1)

2007年リリース。まあこの人もスタイルが変わりませんね。リゾネイタを中心に、巧みなスライドとフィンガー・ピッキングをバックに、ややダミ声でブルースを唸ります。随所にハーモニクス気味のスライドも登場。つっかかるようなピッキングでリズムを強調するかと思うと、柔らかいフィンガー・ピックで滑らかにギターを鳴らしたりと、本当にギターの腕前は素晴らしいです。もっと注目されていいじゃないでしょうか。ただ、歌はどうもわざとらしさがますます増してきた感じで、こっちはちょっと苦手です。



The Cats And The Fiddle ; Killin' Jive ; DEE-JAY DJ-CD 55101 (2000.12.21)

1939〜40年のコンプリート集のvol.1。これは凄いです。小粋という言葉がぴったりのコーラスワークとギターソロ。リズムの跳ね方、楽器演奏の切れ味、スキャットの妙味、どれを取っても絶品です。スリム&スラムとかは好きだったんでジャイヴは少々かじってはいたんですが、この4人のコンビネーションは唯もう脱帽するしかありません。タイトル曲のお洒落具合なんてもう言葉が出ません。こんなのクラブで聴きながら一杯やれたら、至上の幸福だろうな。



The Cats And The Fiddle ; Start Jive Tlkin' ; DEE-JAY DJ-CD 55106(2000.11.19)

1947〜50年のコンプリート集のvol.3。ジャイヴのコンピなどで聴いたことはあったんですが、まとまったものを聴くのは初めてです。とにかくお洒落で都会的です。ギターとドラムくらいしかバックがなくても、コーラスでアンサンブルがしっかり構成されています。女声を含め、リードが変わるのも変化に富んでいて楽しいです。マンハッタン・トランスファーとかのコーラスって、こういったルーツがあったんだ。やっぱりいろいろ聴かなきゃ駄目ですね。



Cecil Gant ; The Complete Recordings Volume 1 1944 ; BLUE MOON BMCD 6022 (2000.11.30)

セシル・ギャント(佐々木健一さんによると、「シセル」または「シスル」のようですが)の「アイ・ワンダー」は、歴史的大ヒットとして多くの書物やライナーで取り上げられていたんですが、その音をなかなか聴くことができませんでした。僕がはじめて聴いたのはMCAの4枚組の「Mean Old World」というコンピに収録されていたもの(というか、これを聴くために買った)でした。その後、97年にFLYRIGHTが単独CDを出し、そのライナーで別ヴァージョンの存在に言及されており、98年にはP-VINEからもフルアルバムが出ていたんですが、この世紀末にコンプリート集が登場しました。「アイ・ワンダー」だけで5ヴァージョン!さすがヨーロッパの人(特にゲルマン系)はやることが違いますね。ギャントは「アイ・ワンダー」のようなバラードは、思い切りリラックスして、恋人に語りかけるように言葉を噛みしめるように唄いますが、ブギ・ナンバーではぐいぐいドライヴして気持ちがいいです。まさに典型的なテキサス〜ウエストコーストのピアニスト/エンターティナーです。でもさすがにこれだけ同じ曲が並ぶと、ちょっと飽きますが。



Cecil Gant ; The Complete Recordings Volume 2 1945 ; BLUE MOON BMCD 6023 (2000.12. 2)

11/30の続編です。段々ムーディな唄い方は洗練されているように聞こえました。もてるでしょうね。決して美声ではないんですが、独特の色気があります。「嫌らしい」とか「男らしい」とかではない、もっと自然体なものを感じます。「モップ・モップ」などジャイヴな曲もあり、また、「ルンバ・ブギウギ」など、時代の影響とともに、幅の広さを感じました。



Cedric Burnside & Lightnin' Malcom ; 2 Man Wrecking Crew ; DELTA GROOVE DGPCD-127 (2009. 2. 6)

2008年リリース。いきなり自分の祖父を歌う「R.L.バーンサイド」から、ヒル・カントリーのサウンドが溢れてきます。ギターはジャキッとした感じで、ロックやファンクもしっかり吸収しながら、ビヤンビヤンと響き渡る音はやはり彼の地の音ですね。ふたりとも元ドラマーだけあってリズムがうねっていて、心地良いです。歌はセドリックの方がいいなぁ。マルコムはちょっと線が細く、無理にがなろうとするとどこか力みがあってややわざとらしい感じです。「シー・ゴット・サムシン・オン・ミー」はアコースティックなスライドの響きに女性コーラスがかぶったちょっと不思議な印象の曲。こういう曲がもっと増えて来ると面白いと思いました。




Cedric Watson & Corey Ledet ; Goin' Down To Louisiana ; VALCOUR VAL-CD-0001 (2006. 9.15)

2006年リリース。セドリック・ワトソンのフィドルと、コリー・レデットのアコーディオンによる、クレオール・ミュージックのアルバムです。といっても冒頭の「ゴーイン・ダウン・トゥ・ルイジアナ」は軽快なブルースで、さしずめフィドル入りのザディコといっていいくらい、区別をすることに意味は感じません。クリフトン・シェニエやジョン・デラフォースのナンバーもかなり入っていますから。でもやっぱりザディコのアルバムとは雰囲気が違う曲が入っています。かといってケイジャンともちょっと違う感じの、ぐっとルーラルで土着な感じです。「コリンダ」などはラブボードがないこともあり、ケイジャンに近いかな。まあそんなことはどうでも良く、まず聴き所は二人の楽器がいい音出してるってことです。特にセドリックのフィドルは聴いていて気持ちがいいです。コリーも鍵盤アコを使っていて、ソロ作のような切れのいいビート感はちょっと薄れていますが、そのかわり響きの豊かな和音でフィドルを上手く支えています。丁寧な作りの好盤だと思いました。



Cedric Watson ; Cedric Watson ; VALCOUR VAL-CD-0004 (2008. 4.26)

2008年リリース。ベースにジェフリー・ブルッサー、ラブボードにはコリー・レデットといったザディコ界では名の通ったメンバーを集めながら、フィドルとアコーディオンでクレオール・ミュージックを奏でています。ザディコのトゥーステップももちろんやっているんですが、フィドルなども演奏し、ちょっと聴くと伝統の再現かなと思いました。ところがじっくり聴いていくと、実にアフリカなサウンドなんです。特に冒頭の「コション・デ・レイ」(でいいのかな)や、レゲエがかったバックに乗ってフィドルを奏でる「ゾゾ・ノア」など、かなりユニーク。ジョエル・サヴォイがどこかで聴いたようなギターソロを取ってるのも面白いです。油断すると聴き飛ばしそうなアルバムですが、どっこいなかなか深みがありますね。好盤です。



Cedric Watson Et Bijou Creole ; L'esprit Creole ; VALCOUR VAL-CD-0009 (2010. 3. 4)

2009年リリース。このヌーヴォー・ザディコ全盛期にあって、伝統の香りを色濃く残しながら、タイトにまとめていくセドリックの姿勢は重要だと思います。フランス語で歌われる楽曲はロックなどの影響を受けながらもくっきりとトゥーステップの味わいを残しています。フィドルが入ってケイジャンとの親和性の高い曲もありますし。やはりこの辺りはセドリックの巧みなアコーディオン・ワークが生きているように思います。そんな中「ザディコ・パラダイス」ではブラスが入ってまるでスカのようなラテン風味を出しており、懐の深さを感じました。またラストの「ブルーランナー」では見事なフィドルを聴かせています。好盤です。




Cedric Watson et Bijou Creole ; Creole Moon ; VALCOUR VAL-CD-0014 (2010.12. 2)

2010年リリースのライヴ盤です。スタジオ盤よりタイトなリズム隊をバックに、ライヴならではの勢いのあるトゥーステップからスタート。臨場感のある録音で、セドリックの熱さが良く伝わってきます。途中フィドルに持ち替えながら、ジョン・デラフォース、クリス・マギーからクりフトン・シェニエやボー・ジュックまで、ザディコやケイジャンの先達の曲をドライヴ感豊かに演奏していきます。クレオール・フレンチで歌われるワルツは特に独特の味わいがあって、セドリックの立ち位置をよく表しています。若手でありながら、伝統を大切にするこういうミュージシャンが一方にいることにより、ヌーヴォー・ザディコも花開くのかななんて勝手に思ってしまいました。好盤です。




Cedryl Ballou & The Zydeco Trendsetters ; Roll With It ; MAMBITO MR013 (2007. 7.16)

2002年リリース。これを出した頃のセドリルは18才くらいではないでしょうか。軽快なリズムに乗ったアコーディオンと、若々しい歌は血筋の良さを感じさせます。ちょっと音程が不安定なところがあるんですけど、一所懸命やってる感じはよく伝わってきます。あとアルバム収録曲がすべてオリジナルというのは、意欲と才能を感じさせますね。最近のアルバムより初々しくて面白いと思いました。



Cedryl Ballou & The Zydeco Trendsetters ; Eye Of The Tiger ; MAMBITO MR022 (2007. 5.16)

2005年リリース。クラッシー・バルーの孫でレイク・チャールズ生まれのセドリルは、タイトでやけにすっきりしたバンドをバックに演奏します。全曲オリジナルで固めるなど意欲的で、切れのいいリズムでダンサブルなんですけど、何か物足りないんですよ、この人。ひとつは歌が演奏からはがれているのと、ザディコとしては珍しく、ライヴ感覚を感じないスタジオワークで、グルーヴ感に欠けるんです。ビートルズナンバーをアレンジしてやるアルバムを出すなど、テクニックもあるとは思うんですが、パフォーマーとしては今ひとつって感じです。生で見たら違うのかもしれませんけどね。



Cedryl Ballou & The Zydeco Trendsetters ; The Truth ; SOUL WOOD S20008 (2007. 7.19)

2006年リリース。それまでのレーベルを離れてキース・フランクのSOUL WOODからのアルバムです。ベースに父親のセドリック、ギターに祖父のクラッシーと何と3世代バンド。サウンドは落ち着き、オーソドックスなザディコがたっぷり詰まっています。そのためやや単調な印象は否めませんが、アコーディオンの腕前は折り紙付きなので、安心して聴くことができます。ヴォーカルもしっとりしてきた印象ですね。「キープ・ア・ノッキン」のマイナー仕立てとかユニークだし。とにかく伝統の中でしっかりやっていこうというのがこの人のスタンスのように思いました。



Cephas & Wiggins ; Richmond Blues ; SMITHONIAN FOLKWAYS SFW CD 40179 (2008. 9. 9)

2008年リリース。ALLIGATOR を離れ、音作りが少し落ち着いた感じになったような気がします。古いトラッドの「ジョン・ヘンリー」からブラインド・ボーイ・フラーや「クロウ・ジェーン」のようなまさに東海岸の伝統的な曲を、適度にあっさりしたアレンジで次々とこなしていきます。またビッグ・ビル・ブルーンジーの曲を2曲取り上げていますが、ビッグ・ビルのラグタイム的要素がしっくりはまっています。面白かったのはファッツ・ドミノの「ゴーイン・トゥ・ザ・リヴァー」で、あののどかな曲をしっかりブルース仕立てにしていて、でもそれが違和感が全然ないんです。多彩なフレーズを繰り出すウィギンズのハーモニカのサポートも完璧で、じっくり腰を据えて作ったアルバムという印象を受けました。




Chase ; Chase ; EPIC SONY ESCA 7576 (2006. 2.21)

多分1971年の作品。ビル・チェイスを初めとする4人のトランペットのアンサンブルを軸にしたブラスロックバンドで、シカゴに比べその金管の強さが際立っています。ただリズムにはあまりファンクな感じはなく、代表曲「黒い炎」にしても、どす黒さは全くないですね。むしろマイルス・でぃヴィスなどジャズ的な要素を強く感じ、実は結構優等生たちが組んでるバンドなんじゃないかなと思いました。ラストは組曲になってます。これでリズムが強力だったら、ニューオーリンズものみたいになるかも。本当に残念な飛行機事故だったと思います。



Champion Jack Dupree ; Junker Blues ; KATCD145 (2000. 9.27)

1940〜50年録音。スリーヴではすべてシカゴ録音となっていますが、1945年以降はニューヨーク録音です。多くはCOLUMBIA/LEGACYとFLYRIGHTですでにCD化されていますが、この時期の録音を俯瞰するには良いアルバムです。ただし曲順がばらばらなので、変化を追うのにはちょっとつらいですが。タイトル曲のようなニューオーリンズの香りをさせる8小節物のイメージが強いですが、「ラム・コーラ・ブルース」などはピーティ・ウィートストロウのような「ウー・ウェルウェル」が登場し、シティ・ブルースっぽく、いろんな要素を含んだ人なんだなと思いました。もう少しあれこれじっくり聴いてみたいです。



Champion Jack Dupree ; Walkin' By Myself ; ZIRCON BLEU BLEU 504 (2001. 6. 1)

1945〜6年ニューヨーク録音。いわゆるジョー・ディヴィスのセッション20曲に、46年のブラウニィー・マギーとのセッションを加えたお買い得盤です。ジョー・ディヴィスのセッションはFLYRIGHT盤(FLY CD 22)などと曲目は重複しますが、別テイクの多い時期なので、何があるか分からない楽しみもあります。全体にピーティ・ウィーストロゥの「フー・ウェル・ウェル」の影響の強い、しかし力強いヴォーカルと、あまり技巧に走らないビートを強調するようなピアノがどんどん迫ってきますが、「ジャンカー・ブルース」スタイルの「ジン・ミル・サル」など、ルーツのニューオーリンズ風味を強く感じさせる曲もあります。ブラウニィーの共演では、ブルース・スタンダードを中心に、より定型的な演奏をしていますが、的確なギターのサポートもあり、落ち着いた作品になっています。ただ、このレーベルに共通して言えますが、、クレジットが不備なのが不満です。リイシューなんですから、データはしっかり示して欲しいな。



Champion Jack Dupree ; The Piano Blues ; MAGPIE PYCD 53 (2005. 3.19)

1960年イギリスでのピアノ弾き語り集です。サブタイトルに「ニューオーリンズ・バレルハウス」とあるように、独特の跳ねるリズムを持ったピアノに、ぼそぼそとつぶやくように語りが絡み、そして張りのある声で歌が乗ってきます。軽快な2ビート的なブギウギの「ミーン・オールド・フリスコ」のような曲も良いんですが、やっぱりあのややゆったりと大きな揺れを持つピアノが持ち味だと思います。「ティー・ナ・ナ」なんて思いっ切りニューオーリンズした8小節のスタイルで、この辺が好きだなぁ。地味なアルバムですがピアノ好きにはたまりませんね。



Charlie Morris ; Still Got 'Em ; BLUES PAGE 70005 (2003.12. 9)

2002年リリース。曲によっては一瞬女声かと思う澄んだハイトーンのテナーから、結構低音を響かせた歌まで、ジェイムズ・テイラーとかジム・クロウチなどに通じる美しい声質のヴォーカルに、枯れた味わいのスライドギターが絡むサンドは、時にゆったり、時にファンキーに響き、さらにはカントリーリックを繰り出した「アナザー・トレイン・ソング」と多彩で飽きません。ブルースとカントリーというグッド・アメリカン・ミュージックに両足をどっぷりつけた、遅れてきた?シンガー・ソングライターとでもいいましょうか。しかしbbさんはどっからこんな面白い盤を見つけてくるんでしょう。



Charles Brown ; The Very Best Of Charles Brown : KING/COLLECTABLES COL-CD-2891 (2005. 1. 7)

1960〜68年KINGに残した録音集です。「メリー・クリスマス・ベイビー」の大ヒットにあやかったのか、自作のクリスマス・ソングがたっぷり入っていますが、時代が時代なので、元々メロウなヴォーカルに、大甘のアレンジが施されているため、さすがにちょっとこってりしすぎな感じがします。でも「アイ・ワナ・ゴー・バック・ホーム」はサム・クックの「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥ・ミー」に大きな影響を与えたって言うのがよく分かりますし、味わい深いものもあります。さすがに25曲連続して聴くと辛いですけど。ラストの1968年リメイクの「ブラック・ナイト」「メリー・クリスマス・ベイビー」を聴くと、サウンドが変化しても変わることのない、チャールズの個性が浮き彫りになっていて思わず唸ってしまいました。



Charles Brown ; Someone To Love ; BULLSEYE BLUES CD BB 9514 (2005. 3.13)

1992年リリース。「復活」後、コンスタントにアルバムを出していたチャールズの1枚ですが、ジャズテイストが程良く効いたお洒落なアルバムです。冒頭のタイトル曲ではボニー・レイットとデュエットしていますが、これがなかなかはまっています。また「エヴリ・リトル・ビット・ハーツ」ではボニーらしいブルージーなボトルネックが絡みいい感じ。この他はベテランのバンドのジャジー名演奏に支えられ、落ち着いた渋い歌声を聴かせてくれます。ラストのオルガン弾き語りの「アイ・ドント・ウォント・トゥ・ゲット・アジャステド」がしんみり染みていいなぁ。



Charles Brown ; Honey Dripper ; GITANES JAZZ/VERVE 529 848-2 (2005.10.16)

1996年リリース。ワン&オンリーというのはまさにこういう人を言うんでしょう。テキサス〜西海岸流儀のギターと、自身のジャズの染みついたピアノをバックに、独特の、ちょっと投げやりな、でも聴けばすぐに分かる粘っこいバリトンヴォイスが実に似合います。ギターのダニー・カーロンはT-ボーン風だったりゲイトマウス風だったりと、わざと下敷きを見せているかのようですが、これが上手くはまっています。エッタ・ジェイムズとアイリーン・リードがそれぞれ1曲デュエットしてますが、御大を上手く引き立てている感じ。ジョー・リギンズのタイトル曲もブラウン節になっちゃうし、新しく歌詞を付け加えた「エヴリデイ・アイ・ハヴ・ザ・ブルース」もなかなかお洒落です。捨てがたい味のある1枚。



Charles Brown ; So Goes Love ; VERVE 314 539 967-2 (2005. 2.19)

1998年リリース。中古で購入。この人ほど自分のスタイルが変わらない人は相違ないと思わせる歌い出しです。声はややハスキーになっていますが、ムーディでメロウな歌い回しは健在ですし、ピアノも達者に弾いています。ダニー・ケイロンのギターもツボを心得た渋いサポートで、とにかく大人のムードたっぷり。ビリー・エクスタインの「ストーミー・マンディ」を取り上げるなどジャズテイストの曲もいいんですが、一番気に入ったのは「サムタイムズ・アイ・フィール・ライク・ア・マザーレス・チャイルド」ですね。一言一言噛みしめるような歌い口には参りました。



Charles Earland ; Black Talk! ; PRESTIGE PRCD-30082-2 (2007. 2.11)

1969年録音。ソウル・ジャズはかなり好きで、いろいろ聴きあさりつつあるんですが、これは当たりでした。軽快なノリのオルガンを弾くチャールズに、名手メルヴィン・スパークスのまだ若さを感じさせるギターや、これまた泥臭さのあるヒューストン・プレストンのテナーが絡みつくんですから、ど真ん中のストライクです。「マイティ・バーナー」のオルガンのリフからガツンとブレークしてテナーが切れ込んでくところなんて最高。「アクエリアス」も名曲を見事にファンキーに料理していて、オリジナルよりぐっと曲の「黒さ」が際立っていると思います。



Charles Hayes ; Raw Blues! ; ST. GEORGE STG 7713 (2008. 1.18)

2004年リリース。またまたこれはいなたいですねぇ。ダミ声でちょっと調子っぱずれに歌うんですが、その向こう側になるギターが不釣り合いに「弾け」てるんです。このアンバランス、思いっ切り場末です。選曲はシカゴ・クラシックといった感じのものが主で、そこそこ楽しめるんですが、オリジナルにはジミー・リード風からファンキー・ブルース、まであり、ラストの「マネーメイカー」風の高速シャッフル「リアル・ファイン・マム」まで、勢いのあるバックと乗りきれないヴォーカルという、ローカル丸出しの演奏でした。でもこういうのを面白がっちゃうってのは、やっぱり重症かしら。



Charles Pasi ; Mainly Blue ; SACEM 080283/1 (2007.11. 8)

2006年リリース。シャルル・パジは若干24才のフランス人ハーピスト。フランスのハーモニカと言えばすぐにジャン・ジャック・ミルトゥを思い出しますが、いきなりバーミュージック風のアコースティック・ブルースが飛び出し、その歌のちょっと軽いけどなかなかの味わいにまず引き込まれました。ハーモニカも達者で、ブルースをベースにしながらどこかヨーロッパの香りがします。「イフ・アイ・ムーヴ」や「ザ・プライヴェーツ・ラスト・ナイト」はウォッシュボード・チャズを思わせる軽快なナンバー。ジャジーな曲あり、泣きのハーモニカを聴かせるスローありですが、スタンダップ・ベースとかリゾネイタでのバックなど、結構ジャグ・バンド系が好みなんじゃないかなと思ったりもしました。面白いアルバムです。



Charles Pasi ; Uncaged ; SACEM no number (2010. 7.23)

2009年リリース。フランスの若手ハーピストとして注目を集めたパジですが、このアルバムではヴォーカリストとしても一皮むけた気がします。ガツンと来る「ロスト・ジェネレーション」に、なんとアーチー・シェッブのサックスが泣き叫ぶ「フェアウェル・マイ・ラヴ」あたりが特に強烈。特に後者はそのマイナーなメロディの向こうには、ボブ・ディランの香りを感じてしまうのですがいかがでしょうか。こんな失恋歌唄われちゃった暁にはねぇ。サニー・テリーの物まねから突入する軽いハープが印象的な「ベター・ウィズ・バター」もいいなぁ。同じようなハープは「リメンバー・ザ・ディ」でも聴くことができますが、とてもいい雰囲気を出していますね。とにかくブルース、ソウル、ジャズ、ロック、フォークとジャンルを軽くまたいで曲作りをするパジの才能は侮れません。




Charles Wilson ; If Heartaches Were Nickels ; DELMARK DE-711 (2004. 5.15)

2004年リリースの新譜です。1957年生まれと、僕と同世代のチャールズはリトル・ミルトンを叔父に持つシカゴの歌い手です。ゴスペルで鍛えた喉とウエストサイドでブルースに浸って育った経歴そのままに、柔らかさのあるソウルフルなタッチでブルースに取り組んでいます。冒頭の「カット・ユー・ア・ルース」では、往年のリッキー・アレンを彷彿させる、柔軟で艶やかな歌を聴かせますし、マジック・サムの「ユー・ビロング・トゥ・ミー」もぐっとソウルフルに仕立て、歌い手としての力量を感じさせます。また特筆すべきはバックでギターを弾いているカール・ウェザーズビーで、「アップ・アット・カールズ」というインストも含め、伸びやかなギターを披露しています。また叔父のミルトンも独特のギターを聴かせています。「フーチー・クーチー・マン」のような曲は必ずしもしっくりきているわけではないんですが、チャールズの個性をうまく引き出していて気に入りました。



Charley Musselwhite's South Side Band ; Stand Back! ; VANGUARD VMD 79232 (2010. 1. 6)

1967年リリース。多分マッセルホワイトのデビュー盤だと思います。タイトルから分かるように、当時のシカゴ・ブルース・シーンを意識した作品で、オーソドックスなブルース・ハープと、結構いける歌を聴かせます。どうしてもバターフィールド・ブルース・バンドと比べてしまいますが、ギタリストなどバックはいまひとつインパクトに欠けますね。そんな中サニーボーイやリトル・ウォルターに対する深い敬愛を感じるマッセルホワイトのプレイはひたむきさを感じます。




Charlie Musselwhite Blues Band ; Tennessee Woman ; VANGUARD 6528-2 (2010. 1. 8)

1969年リリース。「Stand Back!」に比べ、サウンドに幅が出て来ています。特にバック・ミュージシャンの違いによるのか、ロック色が増し、ジャズ的なアプローチも感じさせるようになっています。また、マッセルホワイトのハーモニカもフレーズが多彩になり、のちのスタイルの萌芽が見られます。ロッド・ピアッツァ、ティム・カイハツ、さらにはなんとフレッド・ルーレットが参加しているのも、シカゴ色を薄めている要因かもしれません。方向性がいまひとつはっきりしない感じもありますが、その後のマッセルホワイトにとって、言わばサナギのような時代だったのかもしれませんね。




Charlie Danniels Band ; The Essenthial Charlie Daniels Band ; EPIC/LEGACY EK 89074 (2006. 3.13)

1973〜89年録音。チャーリー・ダニエルズは1970年代にカントリーサイドからロックにアプローチをした代表的なミュージシャンと言えると思います。70年代当時聴いた頃はサザンロックに分類され、実際ジミー・カーター応援ライヴなどもやっていたわけですが、こうしてより幅広い時代のベストを聴いてみると、そのカントリールーツの濃さ、特にフィドルがメインのサウンドのユニークさがよく分かります。1989年の「シンプル・マン」なんてリゾネイタを利かせたアーシーな演奏で、俺達の音楽は時代に関係ないぞと言わんばかりで好感がもてます。好きなのは多分タイニー・ブラッドショウの「トレイン・ケプト・ア・ローリン」にインスパイアされた「ザ・サウス・ゴナ・ドゥー・イット・アゲイン」で、歌詞の中にZZトップなど当時のサザンロックバンドの名前がいっぱい出てくる御機嫌なナンバー。エンディングはサザン・オールスターズがちゃっかりパクってましたね。



Charmaine Neville Band ; It's About Time ; GIFT TOWN GT-1111 (2002. 8. 6)

1991年ニューオーリンズでのライヴ録音です。シャーメインはネヴィル一家の第2世代ですが、これを聴くとジャズ・サークルの人だなっていうのがよく分かります。ヴォイス・コントロールなどジャズ・ヴォーカルのトレーニングをやったのがはっきりする、テクニカルな歌い方です。ちょっとダイアン・リーヴスの線を細くしたような感じにも聞こえました。とは言え「朝日のようにさわやかに」のような典型的なジャズもありますが、ラテン・フュージョンといった感じのダンス・ナンバーがあったり、「サタディ・ナイト・フィッシュ・フライ」の思いっ切りパーティしたヴァージョンとか、理屈っぽくないのがいいです。レジー・ヒューストンのサックスもちょっと枯れたクールな味わいがありました。



Charmaine Neville ; Queen Of The Mardi Gras ; TEN BIRDS GT1120 (2002. 2. 4)

1998年リリース。チャールズ・ネヴィルの娘シャーメインの御機嫌なパーティ・アルバムです。シャーメインはライヴレポートなどを読むと、もっとジャズっぽい人かと思っていましたが、これはセカンドライン・フォンクに乗って、ニューオーリンズ・マルディグラ・クラシックをかなりポップな感じに仕立てています。ブラック・インディアン・チャント風の「シューフライ」から始まり、ゆったりしたフォンクの「マルディグラ・マンボ」、ドクター・ジョンのアレンジを下敷きにした「アイコ・アイコ」、そしてブラスもたっぷりの「マルディグラ・イン・ニューオーリンズ」と、大ダンスパーティです。ギターで参加の山岸潤史もなかなかの好サポート。スローの曲はちょっと線が細く感じましたが、とにかく楽しい作品です。



Chase The Sun ; Chase The Sun ; P-VINE PCD-93194 (2009. 4.21)

2007年リリース。それを最近オーストラリアに目のないP-VINEがボーナスにライヴ音源を1曲くっつけて出しました。のっけから気持ちのいいリゾネイタの響き!ドラムやベースが入っても、基本はアコースティック・ギターで、はやいフィンがリングとかスライドとか、ジェフ・ラングとはまた違った、でもどこか通じるアプローチをしています。唄はジョニー・ラングを思い出しました。「イン・マイ・ハンズ」は最初の歌い方がちょっとジェイムズ・テイラーを彷彿させたり。こういうのをオルタナって言うのかな。ジャンルで説明した気になるのが嫌いなんで、どうでもいいことですが。とにかくアコースティック・ギターでロックやるとこうなるって感じでしょうか。ベン・ハーパーとかを思い出しました。




Chet Atkins ; Guitar Man ; BMG 74321 754082 (2007.10.22)

1955〜1980年の作品集。「ギターマン」はまさにチェットにふさわしい称号ですが、このアルバムでは彼の妙技が満喫できます。コーデッツのコーラスをインスト化した「ミスター・サンドマン」に始まり、スコット・ジョプリンのピアノを巧みにギターに置き換えた「ジ・エンターティナー」、ジャズの名曲に挑戦した「テイク・ファイヴ」など、彼のギターテクニックが満喫できるだけでなく、その裾野の広さもたっぷり味わえます。エレキの他時にガットギターを抱え、ソロだったりバンドが入ったりしていますけど、彼自身の個性的なギターはどんな形でもその存在が際立っています。まさに名手中の名手ですね。



Chet Atkins & Merle Travis ; The Atkins - Travis Traveling Show ; RCA/BMG VICTOR BVCP-7396 (2007. 3. 9)

1974年の作品です。おそらくチェットが尊敬するマールを呼んでやったコラボレーションだと思いますが、語りの「ダウン・サウス・ブルース」から、まさに名手としか言いようのない二人のギターが絡んできて、耳を奪われます。でも何と言っても聴きものはマールの出すトゥービートにチェットの明るいフィンガリングやダブルストップがが絡む作品で、特に「キャノンボール・ラグ」のスピード感はすざまじいと言うしかないです。でも音色が美しいんです。この辺がブルース好きの僕にとっては、魅力は感じるけど異界の音楽になってしまうんですよね。ひねくれ者にとっては調和の取れすぎはかえって不安になるようです。でもラストのスタンダード「夢で会いましょう」のコラボレーションの素晴らしさは、流石にグッと来ました。



Chet Atkins C.G.P. ; Almost Alone ; COLUMBIA CK 67497 (2007. 2. 4)

1996年、チェット晩年の作品で、タイトル通りほぼソロプレイを聴かせています。まずは何といってもそのギターの音色の美しさが素晴らしいです。エレキギターを奏でているんですが、そのピッキングの切れ、ミュートの巧みさ、そして弦の鳴りと何を取っても完璧で、リラックスできる音楽なのに、ついつい耳がギターに引き寄せられていきます。「ハッピー・アゲイン」などでのエレガットの響きの美しさも特筆もの。時にはストリングを絡め、またアコースティック・ギターをバックに従え、自在に、でも決してテクニックをひけらかさないサウンドを生み出していきます。これが「本当に上手い」ってことなんでしょう。「ユー・ドゥ・サムシング・トゥ・ミー」の速いパッセージからゆったりしたギャロッピングへの変化、そしてラストの「アヴェ・マリア」、ギターを響かせきったプレイは、クラシックの名手とはまた違ったテイストがあります。名盤だと思います。



Chic ; The Very Best Of Chic ; ATLANTIC/EAST WEST AMCY-946 (2004. 4.16)

1977〜83年にかけての文字通りベストです。ディスコ全盛時代にあって、大ヒットを連発していたのでよく耳にしましたが、当時はリズムこそ凡百のディスコ曲よりイカしていると思いましたが、ストリングスが耳についてそんなに好きではありませんでした。もちろん「ラ・フリーク」は別格に好きだったんですが、ブルースにはまり始めた頃の僕にはポップすぎたんです。でも今こうして聴き直すと、ナイル・ロジャーズのセンスの良いカッティングと、練り込まれたプロデュースがやはり素晴らしいです。適度なファンクネスと、たっぷりのポップ感覚を詰め込みながら、ポスト・ディスコ時代を演出したサウンドは、気楽に聴くには最高ですね。たまにはこういうのもいいです。



Chicago ; The Very Best Of Chicago - Only The Beginning ; RHINO WPCR-11310~1 (2004. 9.23)

1970〜95年の彼らのほぼ全期間にわたるベスト盤。なにしろアルバム枚数が多いので、とっても全部追っかける気がしないのと、80年代以降の彼らのポップス路線には興味がなかったんで、古い名曲を聴こうと買ってきました。そうなるとやはり2枚組の1枚目前半に耳がいくわけで、「長い夜」「いったい現実を把握している者はいるのだろうか」「クエスチョンズ67/68」といった、ブラスロック全盛時代の、ソウルフルな曲にどうしても哀愁を覚えてしまいます。でもよく聴けば「サタディ・イン・ザ・パーク」だけでなく、「いったい現実...」あたりも、実はかなりポップな味付けだったんですね。バカラックの曲に近い部分を感じました。「愛ある別れ」以降のファルセットヴォイスの曲は、僕は苦手ですね。同じ頃ドゥビー・ブラザーズもマイケル・マクドナルドが全面に出て、同じようなサウンドになりましたが、やっぱりディスコ・ブーム以後のAORやフュージョンの時代の音は、僕にはあまり馴染みません。



Chick Willis ; Stoop Down baby...Let Your Daddy See ; COLLECTABLES COL-CD-5193 (2004.10.16)

1972年の同名のアルバムのストレートCDです。多分LPのA面全部を占めているタイトル曲が強烈ですね。ファンキーなR&Bなんですけど、そのアルバムジャケットにあるように、思いっ切りヒップで下世話です。ライヴ仕立てで、メンバー紹介を織り込みながら、何だか猥雑な雰囲気でどんどん盛り上げていく感じ、これはボビー・ラッシュと双璧かもしれません。2曲目以降は多分LPのB面で、スタジオ録音が並んでいます。ブルース系の曲は「ザ・シングス・アイ・ユースト・トゥ・ドゥ」に代表されるように、ギター・スリムの影響がもろですが、ファンキーな曲やドラマチックなバラードもあり、オールドスクールながら時代の中で懸命に勝負しているように思いました。



Chick Willis ; The Don Of The Blues ; CDS CDC 1007 (2008. 9.18)

2008年リリース。ボビー・ラッシュもそうですが、この人もチタリン・サーキットをしっかり回ってるって印象が強いです。アルバムにもそうしたライヴ感がよく出ていて、例えばサニーボーイ・ウィリアムソンの「ドント・スタート・ミー・トゥー・トーキン」やイスラエル・トルバートの「ビッグ・レッグ・ウーマン」の消化具合などさすがです。オリジナルのソウルフルな「ユア・キャット・イズ・キリング・マイ・ドッグ」なんて、猫の鳴きまねまで登場しますが、この歌どんな意味って考えちゃいますよね。自説ものにはファンキーな「オバマ」なんてのもあったりします。録音がチープなのがちょっと残念です。




Chief Smiley Ricks & The Indians Of The Nation ; Feathercraft ; 1.5 SOUND 15S 11501 (2001. 5.22)

2001年リリース。僕はニューオーリンズのブラック・インディアン・チャントものにはけっこう目がないんですが、これはちょっと不思議な雰囲気を持った作品です。ワイルド・マグノリアスのような、コール&レスポンスを突き詰めるなかでのファンクネスがあるものはよく聴きますが、こちらはもっと異種格闘技的な、ガンボ風と言ってもいいムードです。クールでジャジーなサックスが絡んだり、ブラスバンド顔負けのチューバによるベース、海の向こうはカリブ海だといわんばかりのスティールドラム、まさにニューオーリンズに溢れる音楽を貪欲に吸収しながら再構成したといえます。その分ビートが少し散漫になっている面もありますが、マルディグラはビートばかりじゃないのかもしれません。何度も聴いていくと味が出そうな気がします。



Chihana ; Sweet Nothings ; BLUE BAYOU BBR-002 (2009. 7.27)

2009年リリース。え?これが20才の歌?と思っちゃうくらい、ブルースの粘っこさを見事に出したヴォーカルと、かなり達者なスライドギター。こんな娘が出てくる時代になったんですねぇ。元村八分の加藤義明とのデュオ「コットン・フィールズ」も、丁寧な歌い方で好感がもてますし、アンニュイさの漂う「ユー・ガッタ・ムーヴ」もなかなか。「月光値千金」あたりはもう少し楽しげでもいいんじゃないかとは思いますが。まあこれからもっと成長すると思いますし、デビュー作としてのつかみは十分でしょう。注目したい人です。




Chris Ardoin And Double Clutchin' ; That's Da Lick! ; MAISON DE SOUL MDS 1051-2 (2002.10. 9)

これがデビュー盤かな?まだティーンエイジャーなりたてって感じのクリスの顔写真ですが、サウンドは充分に肥えたものとなっています。ヴォーカルはドラムで兄のショーンが担当していますが、これがまずイカしてます。サウンド的には伝統的なザディコ〜ケイジャンを踏襲していて、特有の「雄叫び」?もありますし、スリーコードのブルース進行が多いのもこの後のアルバムとは異なります。でもまるで「ディ・トリッパ」のようなリフの「アンジェリク」なんてやっぱり新世代なのかなって思えるし、「クリフトン」はシェニエのことを歌ってるのかなんて想像するのも楽しいです。ちなみに曲はすべてショーンの作。でもクリスをイニシャルにするのは、やっぱりアコーディオンを前面に出すザディコの伝統なんでしょうかね?Click Here!



Chris Ardoin And Double Clutchin' ; Lick It Up ; MAISON DE SOUL MDS-1058 Click Here!

Chris Ardoin And Double Clutchin' ; Gon' Be Jus' Fine ; ROUNDER CD 2127 (2002. 9.22)

1997年リリース。この時クリスは15才!まだまだヴォーカルのつやとかアコーディオンの響きとかに未熟なものも感じますが、音楽的にはおそらく兄のショーン(ドラム、ヴォーカル)のイニシアティヴもあって、すでにザディコ新世代とでもいうべきものを出しています。ビートを強調し、ケイジャンよりはレゲエに通じるコーラスワークを多用するなど、現在のサウンドの原型を聴くことができます。タイトル曲はバンドのテーマソングのようですが、こうした要素の塊で、実に新鮮。曲によってはちょっとゴスペル風味も感じ、一方ワルツではフランス語を用いケイジャンに近いルーツも見せます。方向が定まりきっていないようですが、この段階ですでに充分その才能は発揮されているようです。ボーナストラックの「ウィー・アー・ザ・ボーイズ」ではもはやザディコの枠を完全に越えたポップチューンになっています。Click Here!



Chris Ardoin And Double Clutchin' ; Turn The Page ; ROUNDER 11661-2157-2 (2002. 9.24)

1998年リリース。タイトルからも分かるように、かなり既成のザディコの枠を越えることを意識したアルバムだと思います。まずリズム隊の音処理にそれを感じます。前作「Gon' Be Jus' Fine」と同じく兄と思われるショーン・アルドワンのドラムとデレク・グリーンウッドのベースなんですが、とにかくキックとボトムが思いっ切り強調され、た、かなり縦ノリ感の強いビートが「新世代」を感じます。若者向けのクラブで大音量出かけたら結構似合うんじゃないかな。曲もいきなりジャッキー・ウィルソンの「ハイヤー&ハイヤー」の斬新な解釈から始まり、ブギ調の曲でもちょっとレゲエを感じるノリ。そんな中タイトル曲はちょっとポップなソウルナンバーで、クリスがギターも弾き、しっとり歌っています。前作より方向性がはっきりしてきたかな。とにかく面白いです。Click Here!



Chris Ardoin And Double Clutchin' ; Best Kept Secret ; ROUNDER 11661-2157-2 (2002. 9.25)

2000年リリース。リズム隊が変わり、特におそらくローBの5弦を多用したベースの隙間が増えたのと、ギターの刻むリズムがすごく後ノリになったせいか、よりレゲエに近い印象を受けました。カリブ海を挟んだ向かいの島の音楽がこうしてフランス語系のクレオール音楽にすごくなじむっていうのは、自然なことなのかも知れません。「ゲット・ゴーン」などアコーディオン入りのレゲエと言って差し支えのない曲。見事に消化していると思います。後面白いのは軽快な「パパ・ワズ・ア・ローリング・ストーン」、テンプテーションズがファンクの要素をたっぷり入れたニューソウルの名曲と言われるものを、実に軽やかにアレンジしてしまいます。楽しく踊れる感じなんです。それからほっぺたに張り付いた蚊を叩き落とす?擬音から始まる「ワット・イズ・ザット・バイユー?」なんてご当地ソングも面白い。どんどん進化していると思いました。Click Here!



Chris Ardoin And Double Clutchin' ; Life ; J&S JS-6106 (2002. 8.21)

2002年リリースの新譜です。いやぁ、これはきましたねぇ。完全にことしのベスト5入り。クリスはボタン式の小型アコーディオンをプレイする、ザディコサークルの若手だそうですが、その「若さ」が凄く前向きに出ています。ひょっとして10年にひとりの「革新者」になるかもしれません。オンビートでどっしりした重心で響くバスドラムは、ファンクからヒップホップまで消化した世代の証で、隙間だらけのフォンキーなベースとあいまって、モダンさを醸し出しています。アコーディオンのプレイは結構オーソドックスなんですが、上手くはまっているんですよね。レゲエやアフリカ音楽の影響も垣間見せながら、しっかりワルツもやっているんですが、曲ごとの肌合いにぶれがないのも魅力です。歌はちょっとざらついた感じの声質ですが、アーロン・ネヴィルの歌唱法に通じるものを感じるテクニカルな面もあり、これも一筋縄ではいきません。とにかく「未来指向」のザディコ/ケイジャン・ミュージックで、ひとつの「解」を示されたような気がしました。何度でも聴けます。Click Here!



Chris Ardoin & Double Clutchin' ; Save The Last Dance ; J&S JS-6110 (2004. 3. 4)

2004年リリースの待望の新作は、かなりソフトな印象を受けました。冒頭の「オール・アバウト・ユー」はカーリー・テイラーのアルバムタイトル曲を思わせるような雰囲気。でもボタンアコ特有のアーシーな感じがやっぱりクリスだな。それから強く感じたのは、歌が上手くなったことです。ざらっとした感じが取れて、輪郭のはっきりしたメロディを歌うようになりました。サム・クックの「チェンジ・イズ・ゴナ・カム」を取り上げたのは、歌うことに対する自信というか、欲求の表現かななんて。でもサウンド的にはパーカッシヴなアコーディオンを活かしたファンクネス溢れる演奏がちょっと影をひそめ、よりメロウでポップになったかな。歌とアコのバランスが替わりつつあるように思いました。因みにタイトル曲はドリフターズとは同名異曲です。Click Here!



Chris Ardoin And Nustep ; Sweat ; CHRIS ARDOIN no number (2005. 4.18)

2005年リリースのニューステップ名義の新譜が届きました。いきなりクールなファンク「ザ・ショウ」でスタート。全体にサウンドがよりソリッドになり、ぐっと引き締まっていて、タイトル曲など実にシャープでクリスの魅力が見事に開花しています。「フィーリン・ユー」はオルガンやエフェクターを利かせたギターの加わったレゲエテイストのナンバーですが、一瞬米米クラブの曲を思い出してしまいました。こうした中に「ノー・ラヴ・ワルツ」のような伝統を感じさせる曲をさりげなく挟んで変化をつけているあたりに、クリスの余裕を感じました。クリスの方向性は完全に定まったようです。ちなみにラストナンバーはライブ録音で、3ローを弾きながら歌うスローナンバーです。Click Here!



Chris Ardoin & NuStep ; M.V.P. ; NUSTEP4LIFE ENTERTAINMENT 2006 (2006.10.28)

2006年リリース。こういう方向になることは予想できていましたけど、ついに来たかって感じです。言ってみればヒップホップ・ザディコ。縦ノリのビートを強調し、クリスの歌とコーラスにラップを絡めた「スタリオン」から、アルバムを通してヒップなテイストが貫いています。今まではどこかザディコの伝統に後ろ髪を引かれるかのような、サウンド上の迷いと言うか徹底できていないものを感じたんですけど、ここではそうしたものはほとんど払拭されています。もちろん切れのいいボタン・アコは健在ですが、あくまでもサウンドの要素として組み込まれています。タイトル曲のクールさは今までのザディコにはないものです。トゥーステップもありますが、ダンス・ミュージックとして同じ土俵でやっていて違和感はありません。これがクリスがシーンの中でやりたいことなんでしょうね。2曲ライヴ録音が入っていて、若い女性の嬌声が入ってますけど、割合オーソドックスなトゥーステップ。でもクラブの演奏にもどんどんこのアルバムのスタイルが入っていくんでしょうね。ある意味問題作かも。



Chris Ardoin ; V.I.P. ; NUSTEP4LYFE no number (2008. 3.23)

2008年リリース。クリスの追求する音はどんどん今風になって来ました。例えばタイトル曲、後ろでアコーディオンは確かに鳴っているんですが、そしてラブボードのサウンドも確かに入ってるんですが、なんだかザディコからどんどん離れているように思います。ザディコ独特のダンス音楽としての良さが生きていないように思うんです。では今流行りのアーランビーとして聴いたときに、これにどれだけのおもしろさがあるかっていうと、いまひとつピンと来ないんですよね。クリスの歌い手としての魅力が出ていないというか、兄のショーンやカーリー・テイラーに比べて歌が弱いせいでしょうか。この方向ではザディコの発展というより、今の音楽シーンに埋もれていってしまうように思うんですが。多分ライヴだともっとアコーディオンが生きてくるのではとは思うんですけどね。



Chris Ardoin "Candyman" ; Alter Ego ; NUSTEP4LYFE ENTERTAINMENT no number (2009. 8.22)

2009年の新譜です。キャンディマンとなったクリスは、軸足をどんどんアーランビーの方に移して来ています。もちろん達者なアコーディオンはきちんとプレイしているんですが、だんだん隠し味的なサウンドになっています。マイナーの今風の音は好みが分かれるかもしれません。アプローチとしては「ワン・モア・キッス」のような伝統を感じさせるアコーディオンのイントロを上手く生かしたサウンドが面白いですね。あるいは「ロッキン・ザ・スタイレット」のようなトゥーステップの味わいを残した曲がクリスらしさを感じます。シンセを使い、サウンドをモダンにする中でアコーディオンの響きをどう生かすか。ラストの「ザディコ・フリーク」を聴いて、伝統にとらわれない新しいザディコの姿をクリスは一所懸命に模索しているように思いました。




Chris Bell & 100% Blues ; Blues 2001 ; SILVER BRIDGE no number (2005.10.28)

タイトルからして2001年録音でしょうか。この人は以前他のアルバムを聴いて、あんまりピンと来なかったんですが、これはいいです。最初のスライドプレイが格好いいシャッフル、一瞬オールマン・ブラザーズの「ステイツボロ・ブルース」を思わせましたが、インレイに「デュエイン・オールマンがお気に入り」とあり納得。この他マディやフレディ・キング、アルバート・キングの名に混じって、ジミ・ヘンドリックスやスティーヴィー・レイ・ヴォーンが上げられているあたりにこの人の方向が見えてきます。つまり完全な第三世代なんですよ。いわゆる黒人文化としてのブルースを直接継承するのではなく、スタイルとしてのブルースを、いかに格好良くプレイするかが重要なんですね。その点このアルバムは成功していると思います。中では落ち着いた小唄の「ワイン・クーラー」が特に気に入りました。



Chriss Bell & 100% Blues ; Hell Is Too Hot For Me ; SILVER BRIDGE SBCD 004 (2005.12. 3)

2002年リリース。この人の作品は凄くムラがあるんですが、これは出来の良いアルバムです。落ち着いたバックにヴォーカル、そして的確だけどなかなか切れのあるギターと、ベルの才能をしっかり引き出すことに成功していますね。曲もオリジナルで固め、アルバート・コリンズなどからの影響を感じさせながらも、ファンクネスを感じさせるサウンドがなかなか気持ちがいいです。「コールド・ハーテド・ウーマン」のギターなど、タイトル通りの冷たさを感じさせるもので、結構痺れました。ちょっとヴォーカルの力みが取れるといいかな。とにかくこの人はプロデュース次第だと思いました。



Chris Bell & 100% Blues ; Year Of Blues Live ; SILVER BRIDGE SBCD 005 (2005.10.30)

タイトル通り2003年カリフォルニアでのライヴです。前日飲み過ぎたかのような、潰れ気味のしゃがれ声と、ブーストしたギターでブルースを演じていきます。スティーヴィー・レイ・ヴォーン当たりから影響を受けたと思われるシャッフルからスタート。バンドにも勢いがあります。でも、「リコンシダー・ベイビー」とかのカヴァーは色気も感じられず、またハウリン・ウルフの「ラヴ・ミー・ダーリン」だったかのイントロをそのままパクった「メイ・アイ・ハヴ・ア・ウォーク・ウィズ・ユー」も、あのヒューバート・サムリンならではのトーンが魅力だったフレーズを、汚れた音色でやっても映えないなという印象だけが残りました。ジミ・ヘンドリックスを彷彿させるイントロの「フィール・ライク・レイン」やオリジナルのエイトビート系の方がいいな。とにかくこの人はちゃんとプロデュースしてスタジオで音を練った作品でないと、魅力が出ない気がしました。



Chris Daniels ; The Spark ; MOON VOYAGE/BUFFALO BUF-120 (2004. 7.29)

2004年リリース。いきなりサニー・ランドレスのギターが鳴り響きますが、それにブラスセクションが絡んで、ウエストコーストを感じるコーラスワークのさっぱりしたヴォーカルが乗ってくると、ぐっと湿度の低い音楽だなって思いました。それもそのはず、クリスはコロラドをベースに活動しており、キングスというバンドを率い、アコースティックサウンドにブラスを上手く絡めた独特のサウンドを作ります。ビル・ペインも参加しており、リトル・フィートがニューオーリンズを目指した音をもう少しカントリー寄りにして、気持ち良く跳ねさせたといえば良いでしょうか。ゲストも多彩で、スティーヴ・コン、スティーブ・ライリー、サム・ブルッサー、リッチー・フューレイ、サム・ブッシュなど豪華です。とにかくこのライトで適度にうねるサウンドは癖になります。



Chris Darrow ; Slides On In ; TAXIM TX 2058-2 TA (2008. 3.19)

2002年リリース。メタル・ボディのリゾネイタから出てくる音は、時におどろおどろしく、昔の西部劇の悪役の登場するときのような雰囲気です。これに低音のヴォーカルが忍び込むように乗っかってくるので、何とも言えない独特の雰囲気。基調はカントリーの人だと思いますが、ブルースも歌ってます。強烈なインパクトがある作品ではありませんけど、なんだか気になるんですよね。こういう音は。



Chris Duarte Group ; Sugar Texas / Strat Magik ; SILVERTONE 01241-41546-2 (2004.10.26)

1994年リリース。タイトルにあるように、スティーヴィー・レイ・ヴォーン直系のストラトキャスター・サウンドを全面に出したギター・アルバムで、入魂のスローブルース「シロー」はヴォーン兄弟に捧げられています。サウンド的にはスティーヴィーよりざらついた感じで、同じジミ・ヘンドリックスから影響を受けているタブ・ベノアに似た肌合いを感じる面もあります。ギター・スリムの「レター・フロム・マイ・ガールフレンド」などは伸びやかですし、おそらくフレディ・キングのヴァージョンに触発されたんだろうイスラエル・トルバートの「ビッグ・レッグド・ウーマン」のなかなかファンキーで格好良かったです。「トランプ」風の「C-バット・ロック」もなかなかイカしてるし。ただミーターズの「ジャスト・キスト・マイ・ベイビー」になると、隙間感が出せずに凡庸なロックになっちゃってるのが残念。



Chris Duarte Group ; Love Is Greater Then Me ; ZOE 011 431 016-2 (2004.10.31)

2000年リリース。今回はジャケットにレスポールを抱えた写真があり、音もぐっとヘヴィーなロックといった感じの曲が増えています。ジミ・ヘンドリックス信者ぶりも相変わらずで、「ワッチ・アウト」なんてもろですね。新しい試みとしては、レッド・ゼッペリンのオリエント〜北アフリカ趣味を思わせる、アコースティックな「メタファー・アコースティック」なんてのがあります。幅を広げようという意欲は感じましたが、僕の好みとしては「ブラン・ニュー・デイ」や「ハウ・ロング」といった、いかにもテキサスマナーなジャキッとした粘りのあるギターサウンドをもっと聴きたいな。



Chris Duatrte Group ; Romp ; ZOE 011 431 033-2 (2004.10.23)

2003年リリース。この人、yahooの掲示板でテキサス・ブルース・ギタリストとして評判が良かったんで聴いてみましたが、何だかあんまりテキサス臭は感じませんでした。確かに「B♭ブルース」あたりはかなり良質なテキサス・シャッフルで、そのしっかりしたリズム感と、奇をてらうことはないですが十分個性的なフレージングは面白かったです。でもむしろこの人はジミ・ヘンドリックスのブルース寄りのフォロアーといった印象でした。スティーヴィー・レイ・ヴォーンよりずっとロック的ですが、でもしっかりしたギターサウンドで、素敵なギターを聴かせます。インストと歌ものを交互に配置しているのも正解だと思いました。もう少し古い作品も聴いてみることにします。



Chris Duarte Group ; Blue Velocity ; BLUESBUREAU INTERNATIONAL BB 20572 (2007.10.12)

2007年リリース。ミディアムのアルバート・キング風の曲からスタート。シャッフルにしてもサウンド作りやフレーズ、さらに歌い方からスティヴィー・レイ・ヴォーンからの影響がくっきり。ロック系ブルース・アルバムとして、演奏は高水準にあるとは思いますが、どうも僕に入ってきません。まあレイ・ヴォーンに全く思い入れのない僕ですから当然かもしれませんが。中ではライトでちょっとタブ・ベノアみたいな「ドゥー・イット・アゲイン」がまあ良かったかな。



Chris Duarte ; Something Old, Something New, Something Borrowed, All Things Blue ; BLUES BUREAU INTERNATIONAL BB 2069-2 (2010. 1.14)

2007〜2009年の作品からのハイライトに、未発表だった「アウトサイド・マン」と、ブートレグと銘打たれたライヴ音源を加えたものです。ジミ・ヘンドリクス〜スティーヴィー・レイ・ヴォーン路線のクリスの特徴はよく捉えられていますね。ライヴ音源はあまり録音は良くないんですが、その分臨場感のあるノリが感じられます。クリスを初めて聴く人にはこれはいいかもしれません。




Chris Duarte Group ; Vintage Point ; BLUES BUREAU INTERNATIONAL BB20622 (2008.10.17)

2008年リリース。クリスのストラト・サウンドはスティーヴィー・レイ・ヴォーンに通じるようなグリッティなもので、時折交えるスライドも切れがいいです。ヴォーカルもレイ・ヴォーンによく似た声と歌い口で、かなり強い影響を受けている様子。バンドもタイトで、ブルース・ロック系、とりわけレイ・ヴォーンのお好きな方にはお薦めですね。アレンジの格好いいロックンロール「レッツ・ハヴ・ア・パーティ」あたりはノリもよく気持ち良かったです。「バビロン」はスライドを使ったロック・ナンバーで、この路線は結構面白いかも。とにかく勢いは感じました。




Chris Duarte & Bluestone Co. ; 396 ; P-VINE PCD-24213 (2009. 2. 8)

2009年リリース。ブルーストーン・カンパニーは前作にもクリス・デュアーテが参加していましたが、今回は全面的にフロントに押し立てています。とにかくスピード感があって気持ちのいい演奏ですね。バンドのノリは相当なもので、言ってみればブルースロックのあるべき姿ってこういう感じなんじゃないでしょうか。オリジナルの格好いいインスト「ファンキー・ママ」以外はクリスが歌を書いているのも意欲を感じます。クリス自身の名義のものより僕は好きです。




Chris Kenner ; The Chris Kenner Collection - Land Of 1000 Dances ; FUEL 2000 302 061 290 2 (2003. 7.12)

1960年代前半の、INSTANT時代の曲を24曲集めたものです。この時代のケナーはLPで持っていますが、CDが出ているのを見つけて購入しました。「アイ・ライク・イット・ライク・ザット」のヒット曲や、ウィルソン・ピケットのカヴァーで有名な「サムシング・ユー・ガット」後にATLANTICから出されてケナーの代表曲となった「ダンス天国」などが網羅されています。アレン・トゥーサンらしい味付けの演奏と、緩さ満点のケナーの歌が程よくマッチしていますが、全体を聴いて感じたのはケナーのゴスペルルーツです。「ダンス天国」の冒頭部分も収録されていますが、他の曲からもそのディープさが溢れていました。とにかく決定盤といっていいでしょう。



Chris Kenner ; Land Of 1000 Dances ; COLLECTORS' CHOICE MUSIC CCM-808-2 (2007.11.27)

詳しいクレジットはありませんが、いずれも1960年初期の録音でしょう。タイトル曲を始め、「アイ・ライク・イット・ライク・ザット」「サムシング・ユー・ゴット」といった、いかにもアラン・トゥーサンらしいゆったりしたロッキン・チューンは、クリスのちょっと投げやりな歌い方と見事にマッチしています。ブラス・セクションのアレンジも格好良く、また「ゴー・トゥル・ライフ」のようなバラードもあり、クリスの曲作りの上手さも感じられます。やはりこの時代のニューオーリンズものには外れがないですね。



Chris Powell ; 1949-1952 ; CLASSICS 5065 (2004. 4.15)

クリス・パウェル率いるファイヴ・ブルー・フレイムズの録音集です。最初の4曲は洒落たジャズ〜ジャイヴ・コーラスで、「ホットドッグ」なんて歌詞の意味を知りたいなぁ。「ロック・ザ・ジョイント」や「オン・ザ・サニーサイド・オヴ・ザ・ストリート」のような有名曲の御機嫌なカヴァーもありますが、後年になるにしたがってどんどんビートが強まっていきます。やはり時代が動いているってことでしょうか。OKEHで出されたものはムーディなコーラスからインストと幅広く、特に名手ビル・ジェニングスのギターが堪能できる「トーキング」は聴いて得した感じです。ラテンのリズムを取り入れた曲もあり、敏感にシーンに対応していたんでしょうね。その分狙い線が見えにくい気もしますが。



Chris Thomas King ; It's A Cold Ass World - The Beginning ; ARHOOLIE 9020 (2005.11.25)

1986年のクリスのデビュー作のようです。ジャケットの鼻髭の具合などから、この時代のクリスはどうやらジミ・ヘンドリクスにはまっていたようで、明らかにそれと分かるフレーズのギターを弾いていたり、やや肩で風を切ったような突っ張り具合も感じられますが、テンポの良い曲だと、どこかスティーヴィー・レイ・ヴォーンにも通じてたりして、やはりジミのフィルターを通したブルースは似た感じになるのかななんて思いました。こうした新しい音楽でブルースを再構築しようとする姿勢が当初からあったのがよく分かる1枚。好き嫌いはともかく、彼のそうした姿勢は評価したいです。役者としてもいいけどね。



Chris Thomas King ; Chris Thomas King ; SCOTTI BROS 72392 75526-2 (2002.10. 3)

1997年リリース。頂き物です。クリス・トーマス・キングといえば映画「オー・ブラザー!」でトミー・ジョンソンなるブルースマンを演じていましたが、ここでの彼はラスタヘアーにサングラスと今どきです。でもサングラスを外すと人の良さそうな彼の顔が出てきます。実はこのアルバム、そのジャケット通りの印象なんです。打ち込みを使ったヒップホップなどを意識したサウンドに、ディストーションのかかったギターとサウンド的にはかなり冒険している面もある(ちょっと中途半端にも感じますが)のですが、彼の歌はとっても優しいんです。オリジナル中心で意欲作なんですが、かなり歌える感じなので、もっと素直なソウル系の曲をやると生きるんじゃないかなって思いました。



Chris Thomas King ; Red Mud Sessions ; 21ST CENTURY BLUES 21CB-CD-2112 (2006. 4.26)

1998年の録音を2005年にリマスターしたものです。最近役者づいてるクリスらしい時代がかった写真から想像されるように、リゾネイタをかき鳴らしたロバート・ジョンソン・ナンバーなどのデルタ調の曲が中心を占めていて、達者な腕前とちょっと軽いけど味のある歌を聴かせてますが、こうしたやや懐古趣味的なものはあんまりピンと来ません。コリー・ハリスのようなひねりをどうしても望んでしまいます。そんな中にポツッと「アライヴ」なんてラップが入ってくるんですけど、どうもこのギャップが馴染めませんね。まさにこの間のところで何か出来ないのかななんて思っちゃいました。



Chris Thomas King ; Dirty South Hip-Hop Blues ; 21 CENTURY BLUES 21CB-CD-2106 (2002.12.23)

2002年の新譜です。クリスは基本的にこうした「新しいブルース」をやりたい人なんだってことが伝わってきます。タイトル通り、ラップやヒップホップの手法を用いて、ほぼひとりで録音したもののようです。僕はヒップホップはラジオから流れるものをたまに聴く程度ですから、良し悪しはよく分かりませんが、狙いは分かるんですが、ちょいと中途半端な印象を受けました。でもブルースサイドから見れば、こうした切り口は可能性を持っているとは思います。もっと多くのプレイヤーがトライしたらシーンに厚みは出るんでしょうね。因みにクリスはトラディッショナルなものにもしっかり未練はあるようで、リゾネイタの弾き語りなんてのも入っています。その分半端な印象も出ちゃってるんですけどね。でもこの動きは注目してみたいです。



Chris Thomas King ; Live On Beale Street ; 21ST. CCENTURY BLUES 21CB-CD-2115 (2008. 5.25)

1997年秋のライヴです。イントロダクションの後いきなりファンキーな「アイル・プレイ・ザ・ブルース・フォー・ユー」でスタート。なんだかヴォーカルはおっかなびっくりな感じもしますけど、古いスタイルにとらわれないぞという心意気は感じられます。ギターはロックの要素も取り入れた、エフェクターの効いたものですし、「ブルース・フロム・ダ・フッド」や「マイ・ペイン、ユア・プレージャー」ではラップも聴かせます。アコースティックな「L.A.エンジェル」、そしてラストはハードでラップな「クロスローズ」。ちょうど実験的なサウンドを目指し始めた頃でしょうか。でもライヴでこれだけやっていたんですね。



Chris Thomas King ; Why My Guitar Screams & Moans ; 21ST CENTURY BLUES 21CB-CD-2110 (2004.12.29)

2004年リリース。最近俳優業も板についてきたクリスの、自己レーベルからの新譜ですが、ここに来てようやくその狙いが的を捕らえ始めたようです。以前からヒップホップの手法を取り入れていましたが、いまひとつ垢抜けない印象がありました。しかし今作はその辺りの違和感が薄れてきたのと、ロック色の強いギターとリゾネータのいなたいサウンドが上手く混じっていて、彼の言う21世紀のブルースの輪郭がはっきりしてきた感があります。特に「キス」や美しいバラード「ア・ソング・フォー・ママ」なんて曲は、プリンスに通じる雰囲気が漂っていて、クリスの声がどの辺にマッチするかがはっきりしてきたようです。打ち込みの苦手な僕でも十分楽しめました。彼とかコリー・ハリスとかは本当にこれからが楽しみですね。



Chris Thomas King ; Rise ; 21 CENTURY BLUES 21CB-CD-2114 (2006. 7.16)

2006年リリース。ジャケットの瓦礫の山、「水」「ミシシッピ」「ハリケーン」と行ったテーマから容易に想像が付くように、これまたカトリーナ災害に対するレクイエムです。いつになくフォーク調の曲が多く、どちらかというと歌にウェイトをかけている感じ。モダンなアレンジの「セント・ジェイムズ病院」の悲しげなギターが結構耳に残りました。なお「ライク・ア・ハリケーン」はボブ・ディランの曲とは同名異曲です。途中ブッシュ大統領を名指しで歌ったり、メッセージ性が高いアルバムで、しっかり歌詞も載っています。



Chriss Thomas King ; Home ; P-VINE PCD-93255 (2009. 6.21)

2009年リリース。タイトル通り、エイトビートにアレンジされた「ベイスン・ストリート・ブルース」からラストのゆったりした「ナウリンズ」まで、自分の生活の地を歌っています。その意味では前作と対をなしていると言えるでしょう。ジャジーでアコースティックな曲、ストレートなブルースと、一時のヒップホップやロックに偏ったサウンドからずいぶんと違う方向に向いて来ていて、それはそれで悪くないんですが、器用貧乏と言うか、ジミ・ヘンドリクスの「ザ・ウィンド・クライズ・メアリ」をやっちゃったりするんで、どうも焦点がぼけてしまいます。それにヴォーカル、決して下手ではないと思うんですが、優しげな声を上手く生かしきっていないように思いますね。試行錯誤の時代に入っているんでしょうか。




Chris Thomas King ; Nawlins Callin' ; 21ST CENTURY BLUES 21CB-EP-2121 (2009.12.21)

2009年リリースのミニアルバムです。冒頭の「ベイスン・ストリート」ではB.B.キングばりのギターを聴かせたかと思うと、続く「イッツ・ユー」ではアコーディオンも交えたちょっとジャジーなアコースティック・サウンドになるなど、良く言えば変幻自在、悪く言えば器用貧乏なクリスらしいアルバムです。歌も丁寧に歌っているんですが、もともとあまり迫力のある人じゃないので、どこか線が細く感じてしまいます。一時のヒップホップ路線の方が面白かったんですけどね。




Chubby Carrier & The Bayou Swamp Band ; Who Stole The Hot Sauce? ; BLIND PIG BPCD 5032 (2004. 6.20)

1996年リリース。タイトル曲のブギがとにかくかっこいいです。バックウィートなどより軽さのある声とサウンドなんですけど、気持ち良くロッキンしています。オリジナルをかなり意識したクールな「シスコ・キッド」、ファンキーな「ウェイスティング・タイム」や「ヤー・ヤー」などかなり工夫もあり、またザディコ・クラシックの「ザディコ・ソン・パ・セール」なども含め、全体にポップな味付けが強く、それがチャビーには良く合っているようです。



Chubby Carrier & The Bayou Swamp Band ; Too Hot To Handle ; LOUISIANA RED HOT LRHR 1106 (2003. 4.28)

1998年ラフィエでのライヴ盤です。いきなりスピード感のあるインストのタイトルナンバーから乗せてくれます。ザディコと言ってもかなりソウルからの影響を受けており、「ターン・オン・ユア・ラヴライト」のイントロ部分のゆったりしたレゲエ風アレンジなど、コーラスも決まっていてなかなか聴かせます。そしてクールなサックスの絡む「シスコ・キッド」はコーラスやパーカッションの入り方など、ちょっとネヴィル・ブラザーズなどに通じる雰囲気も感じました。ポップな「ファイア・オン・ザ・マウンテン」からビリー・プレストンのヒットナンバー「ウィル・イット・ゴー・ラウンド・イン・サークルズ」と、何だかザディコ離れした選曲、疾走するメンバー紹介からラストは何と「ロック・ミー・ベイビー」!節操がないとも言えますが、エンターテインメントに溢れるライヴで楽しそうです。



Chubby Carrier & The Bayou Swamp Band ; Take Me To The Zydeco ; SWAMPADELLIC no number (2004. 6.12)

2001年リリース。ザディコのトゥーステップのリズムは、ノリの位置がちょっと違うんですが、スカに通じるものがあるなってずっと感じていたんですが、このアルバムではたっぷりのホーンセクションをフィーチュア、それがまさにスカそのものなんです。楽しげなリズムに楽しげな躍動するホーン、そこにウキウキするようなちょっと丸っこいチャビーのヴォーカルが乗ってくれば、自ずと身体は動き出します。チャビーのオリジナルの中にポンと「ロッキン・ロビン」が入っていたりするんですが、実にうまく溶け込んでいて、「これ、バンドでやってみたい」なんて思いました。楽しい1枚。



Chubby Carrier & The Bayou Swamp Band ; Bayou Road ; SWAMPADELLIC no number (2007. 2. 8)

おそらく2006年の新録でしょう。チャビーは以前からかなりポップなアプローチをしてきましたが、ここではファンクやロックのテイストを取り入れています。タイトル曲などWOWOWの利いたギターにボトムを強調したベースと、思いっ切りファンクしてますし、エフェクターをかませタスラッピングベースにスライドギターが唸る「アイ・ドント・ノウ・ワット・ユー・カム・トゥ・ドゥ」など、ファンクロックと言ってもいいくらい。「バッド・バッド・ガール」ではカーリー・テイラーの声が聞こえ、彼の作る音楽との共通点も感じさせます。セカンドラインしている「ゲット・イン・ザ・ポケット」など、ピアノが利いていてどこかリトル・フィートを思わせる雰囲気すら。そしてファンクの名曲「シスコ・キッド」の再録、リズムをややレゲエ調にして、むせび泣くサックスも絡み、格好いいなぁ。こうしたモダンな曲の合間に、乗りのいいトゥーステップがさりげなく挟んであるのが、チャビーのセンスの良さかな。好盤です。



Chubby Carrier & The Bayou Swamp Band ; Live At Knuckleheads, Kansas City ; CHUBBY CARRIER no number (2008. 4.11)

2007年のライヴです。まずはファンキーな「バイユー・ロード」でご挨拶。後はおそらくライヴ会場のフロアいっぱいにみんなが踊ってるんだろうなという感じで、ノリのいい曲が続きます。勢いのあるトゥーステップに得意の「シスコ・キッド」と、ダンス・ミュージックとしてのザディコの面白さが全開です。途中「ロック・ミー・ベイビー」を挟みながら、場内をどんどんヒートアップさせてライヴが進んでいく様子をよく捉えています。トゥーステップとファンク・ナンバーの程好く調和した、楽しいライヴアルバムです。



Chubby Checker ; The Best Of Chubby Checker ; ABCKO 18771-92252 (2005.12.25)

1959〜63年のCAMEO/PARKWAY時代のベスト盤です。この時代、ツイストブームに乗ったチャビーはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで、2度もポップチャートの1位に到達したハンク・バラードの「ザ・ツイスト」を初め、「ダンス・パーティ」「ツイスティン・USA」「ポニー・タイム」といったダンスチューンが満載です。またラテンフレイヴァー溢れる「リンボ・ロック」もヒット曲ですし、語呂の楽しい「フッカ・トゥッカ」など、タフな声をいかしたポップな曲が並んでいます。まあその分味わい深さに欠けるっていったらおしまいで、ここはひとつ楽しく乗りまくりましょう。そしてラストナンバーは「ジングル・ベル・ロック」というわけで、お後が宜しいようで。



Chuck Armstrong ; Shackin' Up ; R&R/P-VINE PCD-22234 (2006. 9.29)

1976年リリースのアルバムのストレート・リイシューです。ディスコ時代の迫った時代を感じさせるファンキーな演奏から始まりますが、ヴォーカルはかなりディープ。でも重すぎず、ストリングやコーラスでゴージャスに飾ったバックの中を見事に泳ぎ切っています。当時シングルカットされた「シー・ハッド・ザ・ライト」、こんな曲がカーラジオから飛びこんできたら、思わずぐっと身を乗り出しちゃうだろうなと思うミディアムスローの傑作です。全体にシャカシャカしたややオーヴァーレブ気味の録音ですが、ローファイなラジオで聴くとすごく格好いいのではと想像してしまいます。楽しめました。



Chuck Berry ; Blues ; MCA/CHESS B0000530-02 (2008. 4.10)

1955〜65年録音。チャック・ベリーの音楽自体がある種ブルースからは制したのは間違いがないんですが、ブルースのスタンダードを集めたのがこのコンピです。「イン・ザ・ウィー・ウィー・アワーズ」ではチャールズ・ブラウンばりのスモーキー・ヴォイスを聴かせていますが、「ドリフティン・ブルース」も取り上げるなど、結構お気に入りだったのかもしれません。一方レーベルメイトのマディの曲をやっても、どうしてもさらりとするあたりがチャックらしいところ。むしろエイモス・ミルバーンのナンバーや「ルート66」のほうがずっと似合います。ところで「ラン・アラウンド」のスライド、チャック自身なのでしょうか?それともマット・マーフィーなんでしょうか?



Chuck Carbo ; Chuck Carbo With Ed Frank's New Orleans R&B Band ; 504 CDS 22 (2009.12.14)

1988年録音。チャック・カーボのヴォーカルをウォルター&ニコラス・ペイトンを含むエド・フランクのバンドが支えて作られたアルバムのストレート・リいシューです。R&Bバンドとありますが、メンバーからして演奏はかなりジャズ的。またチャックも往年の声は出ていません。でもそれでもほのぼのと楽しめるのは、彼の地の音楽に対する愛情が感じられるからです。特にスローの「ブルー・マンデー」とかセカンドラインしている「ウィッチクラフト」、そしてクリス・ケナーの「サムシング・ユー・ガット」は聴いていてウキウキしました。またラストの「レッツ・アップス・アンド・ダウンズ」も、チャックの声がしっかりしていてしかも跳ねる感じが心地良かったです。




Chuck Carbo ; The Barber's Blues ; ROUNDER CD 2140 (2003.11.10)

1996年リリース。スパイダーズで歌っていたニューオーリンズのチャックのソロ作は、彼の暖かくてソフトな歌声が魅力です。セカンドライン系のナンバーではバンドのリズムを埋めるような感じで、またバラードナンバーではその優しげな歌が染み入ります。「アイド・ラザー・バッグ」なんてフワ〜っとした気分で最高ですね。「エヴリデイ」のようなブルース、「ヴェリー・ソート・オヴ・ユー」のようなスタンダードでもその味わいを十分に生かしていますが、やはりタイトル曲などドク・ポーマストドクター・ジョンの共作曲がしっくりきてます。すごく上手いって感じじゃないんですが、この声、癖になりそう。



Chuck Higgins ; Blows His Wig! COMBO/ACE CDCHD 1102 (2006. 6.18)

1952〜57年録音に未発表曲をたっぷりプラスしてあります。チャックと言えばロサンゼルスで活躍したサックス吹きで、「モーター・ヘッド・ベイビー」のようなジョニー・ギター・ワトソンがヴォーカルとギターを担当している曲もあります。ギターは一発でワトソンと分かりますね。しかしこの人のサックスも、ブロウ一発というより、ヒップでえげつなさすら感じさせるスタイル。こういうの大好きだなぁ。冒頭の「アイアン・パイプ」からブリっとしてて格好いいです。強烈なのが「ザ・ルースター」、「ナイト・トレイン」と「フライング・ホーム」のいいとこ取りをして、思いっ切り下世話にした感じ。場末のダンスホールの雰囲気かしら。



Chuck Higgins ; Pachuko Hop ; SPECIALTY SPCD-2175-2 (2001.11.25)

1954&56年録音。ジョニー・ギター・ワトソンとバンドを組んでいたこともあるサックスマンだけあって、とってもヒップです。まさにロックンロール時代のただ中で、女性コーラスを従えた楽曲はポップで軽いんですが、しっかりブロウ&ホンクの伝統?は踏まえています。「フライング・ホーム」などヒット曲のおいしいところをしっかりパクリながらの展開は思いっ切りダンスバンドで、狙い線も分かろうってもの。エンターティナーと割り切って聴くと、このライトな感じがかえって心地よいです。



Chuck Jackson ; Tribute To Rhythm & Blues Vol.1&2 ; WABD/KENT CDKEND 247 (2005. 7.29)

1966年に出されたカヴァーアルバムの2on1。サム・クックからSTAXサウンド、MOTOWNなど当時のR&Bの王道を行く曲をてんこ盛りにして歌っています。チャックは見かけによらず少しざらついたハスキーな声で、テナーの抜けるような感じはありませんが、様々な歌を自分の世界に取り込みながら歌い上げるのは気持ちいいですね。僕としては「ゲット・アウト・オヴ・マイ・ライフ・ウーマン」「ヤー・ヤー」といったリー・ドーシー・ナンバーをよりゆったりしたリズムで歌うのが結構はまっているように思いました。アップテンポな「ゲット・レディ〜ベアフッティン〜アップタイト〜クール・ジャーク」と続くメドレーは、彼の当時のライヴの様子を思わせます。いわゆるレビューな雰囲気たっぷりのアルバムです。



Chucky C. & Clealy Blue ; Live In Bregenz ; BREGENZ no number (2008. 3.22)

録音時期はよく分かりませんが、2001年くらいでしょうか。オーストリアでのライヴです。チャッキーはニューオーリンズの人ですが、ここでは割合オーソドックスでチトリン・サーキットで好まれるよな「ザ・ブルーズ・イズ・オールライト」「トゥー・メニー・クックス」「ティーニー・ウィーニー・ビット」などを取り上げています。またユーモラスな「ネクスト・タイム」、ジミー・スミスの「チキン・シャック」などライヴならではの選曲も。そんな中、伸び伸びと歌い上げる「スティール・アウェイ」がなかなかの好演だと思いました。



Chucky C & Clearly Blue ; From New Orleans To The World ; SOUND OF NEW ORLEANS SONO 1062 (2003.11.11)

2003年リリースニューオーリンズのサックスプレイヤーのソロ作は、いきなり「ブルース・イズ・オールライト」で始まり、「フーチー・クーチー・マン」といったシカゴ系の曲を取り上げているなど、選曲からいうと彼の地の人にしては珍しいかもしれません。全体に派手さのないかっちりした演奏で、ブルース曲よりラティモアの「レッツ・ストレイトゥン・イット・アウト」のようなソウルナンバーの方がしっくりきました。サックスの上手さは当然として、ヴァン・モリソンの「ムーン・ダンス」のフルートはなかなかきますね。「アンタッチャブル・グライド」「トゥー・メニー・クックス」「ストローキン」といったファンクナンバーは、なかなかファンクネスを感じる演奏ですが、ちょっとヴォーカルが軽い感じ。むしろ「スタンド・バイ・ミー」はオーソドックスですがこの人の上手さがよく出てます。多様な選曲も面白いんですが、もう少しファンクジャズ的な曲に焦点が絞られていた方が魅力が出たように思いました。



Clarence Carter ; Snatching It Back ; ATLANTIC/RHINO R2 70286 (2002. 5.16)

1965〜71年、マッスル・ショールズのフェイムスタジオで録音された、クラーレンス・カーターのベストです。元々「スリップ・アウェイ」「パッチーズ」など好きな曲だったんですが、「スナッチング・イット・バック」をW.C.クラークが取り上げていたんで、その原曲を聴こうと買ってきました。ゴスペル・フィーリング溢れるバラードと、軽快なアップ・ナンバーのコントラストが良く、深みのある声が魅力的です。「テル・ダディ」はのちにエタ・ジェィムズが「テル・ママ」としてヒットさせる元歌ですし、「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」もディープです。曲によってはデュエイン・オールマンのスライドも聴くことができ、この時代のフェイム・サウンドの面白さが凝縮されています。



Clarence Carter ; This Is Clarence Carter ; ATLANTIC/WARNER WPCR-25238 (2007. 2.27)

1968年リリースの彼のデビューアルバムのストレートリイシューです。録音はもちろんマッスル・ショールズのフェイム・スタジオで、軽快な「ルッキン・フォー・ア・フォックス」からカーターのソウルフルな歌が全開です。ジミー・ヒューズのカヴァーもオリジナルより豪快な感じで格好いいなぁ。笑い声まで豪快なのがその名も「ファンキー・フィーバー」。でも何といってもこのアルバムでの聴きものは「スリップ・アウェイ」ですね。かつて来日したときのライヴがFMで放送され、その時一番印象的だったのがこの歌なんですけど、何とも言えないもの悲しさがたまりません。思わずギターを抱えて歌うジャケットをじっと見てしまいました。



Clarence Carter ; The Dynamic Clarence Carter ; ATLANTIC/WARNER WPCR-25240 (2007. 2. 3)

1969年リリースのアルバムのCD化で、最近再発されました。このアルバムもLPで持っていましたが、こうして聴き直すと、いろいろ発見もあります。まず冒頭のバラードは、エッタ・ジェイムズのヴァージョンが素晴らしいですが、カーターの歌も彼自身盲目でありながらこれを歌い上げてしまう心境って、想像してしまいます。またドアーズの「ハートに火をつけて」のカヴァー等、サウンドがどんどん変化していたこの時代のソウルに対する、フェイムサウンドのひとつの答のようにも思います。「ザ・ロード・オヴ・ラヴ」ではデュエイン・オールマンのスライドも炸裂してます。でも何といっても素晴らしいのが「トゥー・ウィーク・トゥー・ファイト」。戦うには弱すぎるというラヴソング、そのフェイム・スタジオらしいカントリー・テイストと、カーターの十八番となるややミディアム気味のリズム、ちょっと語りかけるようなヴォーカルの味わいも素晴らしいです。



Clarence Carter ; Patches ; ATLANTIC/WARNER MUSIC JAPAN WPCR-25239 (2009. 3.23)

1970年リリース。もちろんフェイム・スタジオ録音です。このスタジオのちょっと明るめのサウンドとクラーレンスの歌声はよくマッチしています。タイトル曲は「レイニー・ナイト・イン・ジョージア」にちょっと通じるような印象的な曲調のナンバーで、歌の由来の語りから入ります。いかにも70年代といったメロディとサウンドを持っており、もう少し運が良かったらポップチャートの上位に食い込んでも不思議のない曲ですね。この他ゆったりとした「レット・イット・ビー」やブルースものもありますが、やはり彼の魅力は「アイ・キャント・リーヴ・ユア・ラヴ・アローン」や「イッツ・オール・イン・ユア・マインド」で聴かれるリズムものだと思います。




Clarence Dobbins ; The Uprising ; P-VINE PCD-93178 (2008.10.14)

2008年リリース。1957年生まれというから僕とほぼ同じ世代ですが、非常に深みのある歌を歌うソウル・シンガーです。ナッシュヴィルでフレディ・ウォーターズなどと活動していた人のようで、ソウルの名曲の名前が歌詞にちりばめられたブルーズン・ソウルなタイトル曲は、なかなか印象に残りますし、続くバラード「コール・オン・ミー」、ファンキーな「マター・オヴ・タイム」と、クラブでガッツリ鍛えられてきた歌という感じで、実に格好いいです。「ドント・ギブ・アップ・オン・ミー」の低音の語りに参っちゃう女性も結構いるんじゃないでしょうか。オリジナル中心の選曲の中に、ブルージーな有名ソウル・ナンバーのカヴァー「ドラウン・イン・マイ・オウン・ティアーズ」や「エイト・メン・アンド・フォー・ウィメン」を持ってくるあたりに彼の嗜好がはっきり出ていると思いました。ことしのベスト10に入れていいアルバムだと思います。




Clarence Edwards ; I Looked Down That Railroad ; LAST CALL 7422508 (2003. 1.20)

1996年リリース。1993年に亡くなっているクラレンスは、ルイジアナをベースにするギタリストで、そのビヤビヤとしたギターと、力強さの中にいかにもルイジアナといった緩さを感じるヴォーカルが魅力の人なんですが、これはおそらく彼の晩年の録音集でしょう。ニューオーリンズやバートン・ルージュでのスタジオ録音(ピアノにヘンリー・グレイ参加)に各地でのライヴ音源を交えたこのアルバムは、才能がありながら檜舞台に上がることのなかったクラレンスの魅力をしっかり捉えた好盤です。「スクラッチ・マイ・バック」から「サムワン・エルス・ビン・ステッピン・イン」といったブルースの名曲に自己名義を交えた演奏は、特に独特のビート感のあるギターが心地好く、ルーズなヴォーカルが心に染みます。やっぱりサザンビートの曲が特に気に入りました。



Clarence "Frogman" Henry ; I'm A Country Boy ; KINGS OF RHYTHM KRCD555 (2003.10.19)

1956〜65年のARGO、PARROTヘの吹き込みを集めたコンピで、代表曲「エイント・ガット・ノー・ホーム」を含む30曲てんこ盛り、決定盤と行ってもいいでしょう。クレジットなどデータが殆どないのが不満ですが、これだけ蛙声が満喫できれば文句なしです。でもこうして聴くと、この蛙男は、ファッツ・ドミノから多大な影響を受けているのがよく分かります。「ケイジャン・ハニー」なんて、油断すると間違えるくらいです。まあ声色の天才と言ってもいいくらいいろんな声を出しますから、一種の物まねなのかもしれません。全体にコーラス入りのポップチューンが楽しめました。好きだなぁ、こういうの。



Clarence Garlow ; Clarence Garlow ; LA CIENEGA LACGA701 (2003. 8.25)

1949〜57年録音。ガーロウと言えば「ボン・トン・ルーレ」で、新旧収録されていますが、やっぱり冒頭からあのルンバ調の演奏が始まるとウキウキします。ギターはT-ボーン系のテキサススタイルって感じですが、もう少しモッチャリした感じで、適度なローカル臭が嬉しいです。曲によってはアンプをブリブリに歪ませて、「オレのギターを聴いてくれ!」って気迫も感じます。ルイジアナとテキサスの音楽を行ったり来たりしているような雰囲気がたまりませんね。歌も渋めの声ながら愛敬もたっぷりで、ちょっとセクシーだったり、こりゃきっとモテたんでしょう。たまりませんなぁ。



Clarence "Gatemouth" Brown ; Guitar In My Hand ; CATFISH KATCD135 (2000. 8.15)

1947年ALADDINと1949年PEACOCKへの録音、つまりゲイトマウス最初期の16曲です。ALADDIN時代のゲイトマウスはすでにCD化されていましたが、L.A.でマックスウェル・デイヴィスのバンドをバックに吹き込んだもので、T-ボーン・ウォーカーからの影響を強く感じさせます。ただしヴォーカルはT-ボーンよりずっとワイルドです。ドン・ロビーはこのセッションをセッティングした後、ゲイトマウスを録音するためにPEACOCKを立ち上げる訳ですが、どんどんワイルドになっていく様子が分かります。同時に楽曲のインパクトも強くなっていきます。この時期のPEACOCK音源は待望のCD化でうれしい限りです。この後ゲイトマウスはPEACOCKで全開するわけですが、「ウィン・ウィズ・ミー・ベイビー」「シー・ウォークス・ライト・イン」といった名曲がCD化されることを期待しています。


Clarence Gatemouth Brown ; Rock My Blues Away ; MUSIC AVENUE 250168 (2007.10.11)

PEACOCK時代の代表曲を網羅したベスト盤で、「ギター・イン・マイ・ハンド」「ウィン・ウィズ・ミー・ベイビー」「シー・ウォークス・ライト・イン」から「ゲイツ・ソルティ・ブルース」「ブルース・ビフォア・ドーン」そして「オーキー・ドーキー・ストンプ」まで、選曲は申し分ありません。しかし音質が良くないんですよ。しっかりしたデータも入ってないし。ひょっとしたらアウトテイクが入ってる可能性もありますが、でなければ余りお薦めできる盤ではありませんね。



"Gatemouth" Brown ; 1952-1954 ; PEACOCK/CLASSICS 5127 (2005. 4. 7)

ゲイトマウス全盛期がようやくCDになって出揃ってきました。CLASSICSの前作と本作で代表曲はほぼ網羅されています。とにかく冒頭の「ベイビー・テイク・イット・イージー」から「ユー・ガット・マネー」「ミッドナイト・アワー」と、ゲイトの歌が素晴らしいです。どうしてもギターに注目がいくようですが、僕はこの時代のゲイトは歌、バンドアレンジ、ギターが三位一体になっているのが本当にすごいと思っています。スローブルースでの火の出るようなソロも、表の歌が強力だから引き立つんです。ホーンのアレンジも格好良く、バンドリーダーとしてのゲイトの才能が存分に発揮されていますね。そしてもちろん代表曲「オーキー・ドーキー・ストンプ」も収録。でもこの曲は歌なしですから魅力の半分しかないと思うのは僕だけでしょうか。ゲイトファン必聴の1枚だと思います。



Clarence "Gatemouth" Brown ; Sings Louis Jordan ; BLACK & BLUE BB 936.2 (2001. 6.13)

1973年フランス録音。「俺はブルースマンじゃない!」と言っているらしいゲイトマウスには、ルイ・ジョーダンはとっても似合います。ルイの絶妙な曲作り、ウィットに富んだ歌詞を、ゲイトマウスが見事なアイディアで再構成してみせます。アーネット・コブなども交え、洒落た演奏で、ライヴで見たい感じです。ブラスが入っていても、例えば「チューチューチ・ブギ」のエンディングをギター一本でさらっとやるところに、ゲイトマウス一流のセンスを感じます。BLACK&BLUE盤はP-VINEからも2枚出ていますが、こうしてルイ・ジョーダンものをを集めた企画に拍手!B.B.キングのものと聴き比べると、そのセンスとか発想の違いがよく分かります。「だから俺はブルースマンじゃないって!」と言わんばかりの。



Clarence "Gatemouth" Brown ; Down South In The Bayou Country ; BARCLEY/MAISON DE BLUES 983 211-2 (2006. 4. 5)

1974年リリース。ゲイトが全編フィドルを弾いたカントリー仕立てのアルバムで、アコースティックな音作りもあって、ゲイトの音楽の懐の深さを示したアルバムだと言えます。ドン・ブザードのスティールギターが実に良くはまってます。このアルバムからも「フォークス・バック・ホーム」などが遺作となった「Back To The Bogalusa」に取り上げられるなど、こうした音がゲイトのお好みだったことが分かります。次作の。「Bogaloosa Boogie Man」よりカントリー風味が強く、和みますが、時折フィドルで超絶テクニックを披露したりするのがゲイトらしいなぁ。



Clarence "Gatemouth" Brown ; Bogaloosa Boogie Man ; BARCLEY/MAISON DE BLUES 983 262-4 (2006. 3.31)

これは待望のCD化です。1975年のBARKLEY録音なんですが、今まで聴いたことがなかったんです。そしてこれを聴いてやっぱり遺作となった「Back To Bogaloosa」は、このアルバムへの回帰なんだなって強く感じました。タイトル曲のファンキーさも格好いいですし、全体に流れるルイジアナ風味の緩さが、実にいい感じ。「ディキシー・チキン」はやっぱりこっちの方がいいですね。これを聴いたらゲイトをブルースの狭い枠でくくることのおろかさがわかるってもんです。ボーナストラックとしてアコースティックの弾き語りが入ってますが、「フライング・ホーム」に「オーキー・ドーキー・ストンプ」ですから、ゲイトのギターが好きな人は必聴盤だと思いますね。



Clarence "Gatemouth" Brown ; Timeless ; HIGHTONE HCD8174 (2004.10.18)

録音日時の記載は無いんですが、参加メンバーからしておそらく1980年代後半録音の未発表音源集でしょう。「サテン・ドール」等は80年代半ばに来日したときにやっていた記憶があります。全編完璧なゲイト節で、ジャンルを問わない幅広さと、いつも通りのトリッキーなプレイが満載です。昨年来日したときやっていた「アンチェインド・メロディ」のインスト・ヴァージョンなんか、コードの砕き方とか本当に意表を突くもので、面白いです。「マーシー・マーシー・マーシー」もはまってますね。純然たるジャズものよりこうしたややファンキーなものの方がよりゲイトマウスらしくて好きです。フィドルもたっぷり聴くことが出来、「シックス・レヴェルズ・ビロウ・プラント・ライフ」では、ペダルスチールもからんで素敵なカントリーテイスト溢れる作品になってます。まさに「アメリカン・ミュージック・テキサス・スタイル」ですね。



Clarence "Gatemouth" Brown ; Back To Bogalusa ; BLUE THUMB 549 785-2 (2001. 8.15)

世紀をまたいで録音されたゲイトマウスの新譜は、思いっ切りルイジアナしています。曲によってはサニー・ランドレスのスライドやザッカリー・リチャードのアコーディオンを配し、バンドの適度な緩さもあり、ゆったりとした演奏になっています。老いたゲイトの声はさすがに全盛期の張りはありませんが、いつになく丁寧に歌っているように思えました。リトル・フィートの「ディキシー・チキン」も、唄い回しははるかにルーラルで、この辺りにゲイトのやりたいことが見えてきます。中に2曲バンドメンバーの作となるファンク・ナンバーが挟み込まれていますが、いいアクセント。僕にはここ2作のビッグバンドをバックにしたものよりゲイトの等身大の姿が見えるようで好感を持っています。ことしのベスト10入りは確実です。



Clarence "Gatemouth" Brown ; Recorded Live At The 2005 New Orleans Jazz & Heritage Festival ; MUNCKMIX no number (2005.10.18)

おそらくこれがゲイトのラストレコーディングでしょう。CD-Rですがことしのジャズフェスの音源は、カトリーナの件もあってかたくさん流通してます。ジョー・クラウンが中心となったバックバンドが御機嫌なインストを3発続けた後、いよいよゲイトです。流石に声やギターに往年の力はありませんが、バンドのそれこそ全力投球の支えもあり、病を押して生涯現役を貫いたゲイトのガッツがビシビシ伝わってきます。嬉しいのは「ボーン・イン・ルイジアナ」でフィドルを弾いてくれたことですね。得意の高音フレーズも披露してます。このサーヴィス精神がゲイトの素晴らしさです。ラストの「ジャンピン・ザ・ブルース」で思わず涙が出てきてしまいました。改めてご冥福をお祈りします。でもゲイトの音楽は永遠に不滅ですね。



Clarence "Guitar" Sims ; Born To Sing The Blues ; MOUNTAIN TOP MTP-9803-2 (2002. 1.24)

1987年にLPとして出された盤のCD化(曲は増えてるんじゃないかな)です。これはいいですよ。まずギター。ギブソン系だと思いますが、適度にコンプレスされたサウンドがのびやかに心地良く鳴ります。音色の素晴らしさもですが、そのフレージングがまたいい。流れるようなプレイが出たかと思うと、スケールの大きなフレーズが出て来たり、スタイル的には「王道」なんですが、実に気持ちのいいギターです。ヴォーカルはジミー・ジョンソンを艶やかにしたようなハイトーン。フレディ・ウォーターズにも近いですね。途中シャベクリなども交え、歌い上げるんですが、これもなかなか上手いです、ちょっと冗長な曲もありますが、オリジナルにスタンダード・ブルースを交え、曲間にちょっとしたおしゃべりや笑い声があったり、ラストにCD化された1998年のインタビューが入っていたりと、ちょっとした遊びもあります。



Filmore Slim ; Other Side Of The Road ; FEDORA FCD 5016 (2002. 4.11)

2000年リリース。フィルモア・スリムことクラーレンス・シムズの最近作だと思います。以前1987年のアルバムがMOUNTAIN TOPからCD化されたものを聴きましたが、バックにはその時のスリーブにも写真が出ていたパリス・スリムが参加しています。フィルモア・スリムの声は凄く特徴的で、まるで少年のようです。でもかなりタフな歌い回しでブルースを唸ります。これが僕のお気に入りです。ギターの切れ味は先に掲げたアルバムに比べるとかなり鈍った感じもしますが、いなたさがあって悪くありません。曲もオリジナルが中心ですが、ラストにファッツ・ドミノの「ブルー・マンディ」を軽快なアレンジでもって来ています。結構面白いアルバムでした。



Filmore Slim ; Funky Mama's House ; FEDORA FCD 5030 (2004. 4.14)

2004年リリース。フィルモア・スリムことクラーレンス・ギター・シムズの新作は、前作同様パリス・スリムことフランク・ゴールドワッサーの全面的サポートを得たアルバムです。少しシカゴのジミー・ジョンスンに通じるような、ハイトーンの歌と、ますます大股さに磨きがかかったというか、ある意味切れ味は全くなくなってきたけど、独特の風味だけはたっぷりあるといったギターを、タイトル通り結構ファンキーなサウンドで支えています。選曲も「ヤー・ヤー」や「ゾーズ・ロンリー・ロンリー・ナイツ」といったニューオーリンズものを取り上げ、おそらく追悼の意を表したんだろう「アール・キング」なんて曲までやってます。ニューオーリンズの多重構造のノリとは違いますが、フィルモア自身のいなたさと、バンドのちょっとタイトなところが、ユニークな混じり方をしているとも言えそうです。肌合いは先のジミー・ドーキンスに似ていますが、こっちの方が僕には合いました。



Fillmore Slim ; The Game ; MOUNTAIN TOP MTP69CD (2004. 7.14)

2004年リリース。最近FEDORAからアルバムを出したばかりのフィルモア・スリムことクラーレンス・シムズですが、今回もパリス・スリムのバックアップを得ています。でも決定的なさは、当人がギターを弾いていないこと。代わりにパリスとラスティ・ジンのギターにゲイリー・スミスのハーモニカという強力なバンドでフィルモアのヴォーカルを全面に出していますが、これが大正解です。フィルモアのギターは大股でいなたく、芯のあまりないヴォーカルとの相乗効果で、FEDORAではどこか田舎臭い雰囲気があったんですが、この作品ではそのヴォーカルが軽妙でヒップな感じになっているんです。ジョニー・ギター・ワトソンを意識しているようで、軽いファンク感がかえって新鮮。トップにラップ絡みの曲を持って来ていますが、上手くはまっています。つまりFEDORAでは等身大のフィルモアを出したのに対し、こちらでは計算されたプロデュースってことで、軍配は完全に後者に上がります。でもこの歌、耳に残るなぁ。



Filmore Slim ; Blues Man / King Of The Game ; The Legend Of Fillmore Slim ; MOUNTAIN TOP CD-MTP777 (2007. 1. 4)

2006年リリース。ジャケットでフライングVを持ってたたずむフィルモア・スリムことクラーレンス・シムズはけっこうな歳に見えるんですが、その独特な歌声はどこか少年のような張りがあります。いつものようにフランク・ゴールドワッサーの的確なギターのサポートを得て、自作のブルースを熱唱しています。好みの分かれる声ですが、僕は嫌いじゃないなぁ。今回は「マイ・フレンド・ブルー」「シー・ドント・ラヴ・ミー」の2曲でギターも弾いていますが、朴訥としたフレーズは決して上手くはないんですが、何とも味わいはあります。それより面白いのは「ブルース・フロム・ザ・ハート」で、T-ボーンやジョニー・ギター・ワトソンなど、いろいろなブルースマンを偲んでいるんですが、その名前が歌われると、ゴールドワッサーがすかさずギターで物まねを入れるという趣向です。ちなみにもうひとりのギターがジョー・ルイス・ウォーカーで、結構弾き倒してるのが彼らしいですね。MOUNTAIN TOPが力を入れているのがよく分かるアルバムです。



Clarence Samuels ; House Of Blues ; SAMUEL BROTHERS no number (2005. 1.13)

これは騙されました。クラーレンス・サミュエルと言えば、1947年CHESSの前身であるARISTCRATに初録音、以後FREEDOMやEXCELLOに録音を残したR&Bシンガーで、チープな作りのジャケットから、その手の録音を集めたベストコンピだと思ったんです。ところが本人の録音は4曲のみの収録で、しかも音質は悪く、頭の部分が乱れています。それにすべて持っている音でしたし。残りの部分はプロデューサーのカール・マーシャルなる人物が、サミュエルの曲を打ち込みで自演していますが、これまたお寒いサウンドで、歌はまあまあなんですが、はっきり言って何の魅力も感じませんでした。まあこれが現地調達のスリリングな部分なんですけどね。まあこんなもんもあるってことで。



Clarence Williams ; 1930-1941 'Thriller Blues' ; FROG DGF57 (2006. 5. 6)

PERFECT,BANNER,DECCAなどに残されたニューヨーク録音集です。クラーレンスはヴォーカル、ジャグの他後期にはピアノも担当していますが、彼のオーケストラによる「ホット・ラヴィン」「パパ・ディ・ダ・ダ」はスキャットとコーラスが絡んだ、ジャグバンドの音楽をジャズバンドに持ってきたって感じです。「シャウト・シスター・シャウト」は後にシスター・ロゼッタ・サープで有名になる曲、御機嫌なバンドサウンドをバックにエヴァ・テイラーが落ち着いた歌を聴かせます。アラバマ・ジャグ・バンドにはアイキー・ロビンソンやウィリー・ザ・ライオン・スミスの名前が見えます。かなり洗練されたジャグバンドで、なんだか懐かしい感じ。メイミー・スミスで有名な「クレイジー・ブルース」なんてやってます。バーミングハム・セレネーダーズではクラーレンスはピアノも担当、何とココモ・アーノルドの「ミルク・カウ・ブルース」やジョー・プラムの「ブラック・ギャル」など当時流行ったブルースをやってます。この他トリオなど小編成での演奏も収録。このジャズとジャグバンドとブルースがミックスした音楽、ジャンルで聴いちゃいけないなという代表かもしれませんね。面白かったです。



Classie Ballou ; Blues 101 ; YEAH BABY no number (2007. 7.15)

2007年リリース。ザディコ界のベテランギタリストがブルースアルバムを作ったんですが、なんだかスタジオでのセッションをそのまま音源にしたって趣です。音のバランスも良くないし、歌えてはいるんですがなんかこちらに伝わってこないヴォーカル、ギターは少しディストーションがかかっていて色艶に欠けます。シンセサイザもとってつけたような音だし。女性ヴォーカルがうたう歌はちょっと聴けませんでした。面白かったのはスネアの音がザディコなところかな。外れでした。



Claudia Bettinaglio ; Saving All My Love - A Tribute To Tom Waits ; HERMAN'S HE 024-2 (2002.10.27)

2001年リリース。ナッシュヴィル録音です。これはかなり面白いと思いました。サブタイトル通りトム・ウェイツの曲をやっているんですが、実は僕、トムは飲み屋のBGM程度にしか聴いたことがないんです。なんとなく酔いどれ気味の渋みあるヴォーカルって印象(間違っていたら御免なさい)なんですが、クラウディアは時にドスの効いたジャジーな、時にはすっきりした力強い声で歌い上げます。いろいろなタイプの曲があるんですが、アレンジやバックの演奏もなかなかしっかりしていて、特にキーボード兼プロデュースのメアリ・アン・ブランドンのセンスには光るものを感じます。ブックレットにはクラウディアが曲のイメージをイラストにしたものが入っているんですが、これがなかなかトムに対するリスペクトが感じられ素敵です。トムを買って聴かなきゃ!



Claudia Bettinaglio ; Sometimes... ; CROSSCUT CCD 12006 (2003.11.28)

2003年リリースの新譜です。この人はスイスの人のようで、ちょっとドイツ語訛の英語で歌いますが、芯のある、うっすらとハスキーな声と歌い回しは、かなり癖になります。バラード系の陰のあるメロディや、ちょっとヒスも入るクラリネットの使い方なども彼女の歌声にしっくりきていて、その独特の世界はワン&オンリーなのではと思えます。特に「トロフィー」が印象的で気に入りました。何曲かファンク系やレゲエも混じっていますが、一瞬サニー・ランドレスを思わせるスライド、誰かと思えばハンク・シゾーでした。



Cleveland Fats ; The Way Things Go ; P-VINE PCD-23876 (2007. 2.15)

2006年録音で、12弦ギターで参加しているファッツの師匠、ロバート・ロックウッドの遺作でもあります。ファッツは70年代から80年代にかけてロックッドのバンドでギターを弾いていた人で、TRIXの「Does 12」に参加していたマーク・ハーンのことだそうです。冒頭のモダンなシャッフルでは「あれ?」と思いましたけど、続く曲ではスライドも織り交ぜながら、ロックウッド直伝のコードワークを連発、そこに師匠が12弦で入ってくると、ちょっと区別がつかなくなる場面もありました。ビリー・ブランチ、アリヨ、アーロン・バートンといった手練なメンバーに支えられ、リラックスした歌、伸びやかなソロともなかなかのもの。サニー・トンプソンの「ロング・ゴーン」をロックウッドっぽく解釈するなんて、お洒落です。「ベイキン・ファッツ」のスピーディな演奏も、丹精じゃなくて適度に突っかかったようになるのが味を感じます。どっぷりブルースに浸かりきった人ならではのギターワークは聴き所が多く楽しめました。



Cleo Brown ; Here Comes Cleo ; HEP CD 1034 (2006. 3.16)

1935〜36年録音。クレオについては以前CLASSICSの盤を取り上げたんですが、そちらは50年代まで網羅されていました。こちらはそれと18曲ダブりますが、1936年のL.A.録音を9曲加えてあり、より彼女の全盛期に焦点を当てたものになっています。軽妙なピアノと歌が絶妙に絡み合い、小唄を軽く唄っていきます。こんな歌が夜な夜なクラブの片隅で流れていたんでしょうか?何気ない歌の表現方法とか、力を抜きつつもしっかり声にしていく技は一級品だと思います。こんな風に歌えたらいいなぁ。



Cleo Brown ; 1935〜1951 ; CLASSICS 1252 (2002.10.13)

ジャケットの一角にある愛敬を感じる顔写真につられて買ったんですが、これ、面白いです。クレオはピアニストでジャイヴィーな小唄を唄う人なんですが、ピアノはラグタイム調からブギウギまで器用にこなし、歌は囁くような声からサッチモの影響を受けたのかちょっとしゃがれたような喉遣いまで表情豊かです。いわゆるジャズヴォーカルの流儀なんでしょうが、独特の愛らしさを感じ、凄く引き込まれました。歌い回しも軽妙だし、曲も楽しげながら時折人種絡みの刺のある歌もあったりして。病気のためかブランクも長く、特に40年代末〜51年のものはちょっと高音にきつさも感じられますが、ジャズヴォーカルをほとんど聴かない僕にはとっても新鮮でした。



Cleo Page ; Leaving Mississippi ; JSP/P-VINE PCD-23893 (2007. 3.26)

1970年代にロサンゼルスで録音されたものです。この人は全く知りませんでした。冒頭のタイトル曲、ミシシッピというよりはテキサスブルースの香りが強く、どこかライトニンに通じるギターをバックにブロークンで煽るような歌が印象的です。曲調にはモダンなものもあり、「アイ・ゴット・ア・ガール」は「ネクスト・タイム・ユー・シー・ミー」の替え歌だし、「ワイン」なんてエイトビートはリトル・ジョー・ワシントンを一瞬思い出しちゃいました。「カリフォルニア・スタイル」なんてどこがって感じですけど、ドタバタしたエイトビートが何ともいえない味わい。「ギター・ララバイ」って、これじゃ寝た子も起きちゃいますよ。フルソンの影響も強く、「リコンシダー・ベイビー」のギターソロのフルコピーが2度も出てきちゃったりするあたりが、究極のB級といった感じです。ラストの「ディス・トレイン」の改作「グッディ・トレイン」の摩訶不思議さに酔ってください。



Clifford Hayes' Louisville Stompers ; Frog Hop ; FROG DGF10 (2002. 4. 2)

1927〜29年録音。中古で購入。ジャケットを見たらピアニストかと思いましたが、ヴァイオリニストのアルバムです。こういうのをアーリー・ジャズっていうんでしょうね。ヴァイオリンやサックスを奏でるクリフォード・ヘイズにカル・スミスのギター、それにピアノが絡みます。ギターはロニー・ジョンソンなどに通じますが、もう少しおとなしめかな?ヴァイオリン自体はステファン・グラッペリのようなロマ風味はなく、ややブルージー。クラシック・ブルースのバックにありそうな感じです。ラストにシッピー・ウォレスの曲も収録。無声映画のバックみたいなCDでした。



Clifton Chenier ; Bayou Soul (The Crazy Cajun Recordings) ; CRAZY CAJUN/EDSEL EDCD 596 (2000. 5.15.)

1960年代後半の録音でしょう。シェニエといえば ARHOOLIE の結構しっかりした音作りのイメージが強いんですが、このアルバムはずっとユルイ感じです。いきなりケイジャン・フレンチ判「アイ・ガット・ア・ウーマン」でスタート。途中「ジー・ジー・ばあさん」の語り?の入った曲(ひとつは「ベイビー・スクラッチ・マイ・バック」と同じです)があったり、この他ちゃんとリリースされたんじゃないと思われるものも混じってますが、変に緊張感がないのがかえって気持ちよかったです。


Clifton Chenier ; Clifton Sings The Blues ; ARHOOLIE CD 351 (2000. 9.18)

1969年と1977年の録音。中古で購入。タイトル通りのブルース色の強いアルバムです。車に同乗した同僚が、「ブルースっていいねぇ」というので、ザディコを説明したんですが、さすがにこれを聴きながらだと、フランス語の歌があるとか、アコーディオンとラヴボードだとかいう、ある種表面的な説明になってしまいました。ブルースの好きな人がザディコを聴き始めるには入りやすいアルバムです。「イン・ザ・ムード」なんて曲もやってて、親しみやすいですし。



Clifton Chenier ; Frenchin' The Boogie ; BARCLAY/VERVE 519 724-2 (2004. 8.27)

1976年ルイジアナ録音です。タイトル通りフランス語によるブギやブルース集といった感じで、タイトルもフランス語のものが多いですが、「ミルク・カウ・ブルース」「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・メイク・ラヴ・トゥ・ユー」と、ブルースど真ん中と言った曲を取り上げています。また「ゴーイン・ダウン・スロウ」もやってたり。シェニエは元々クレオールにブルースを融合させてザディコを確立したといえる人なので、当然といえるんですが、ここまでドロドロの選曲は珍しいです。でもこの盤の目玉はそちらではなく、ルイ・ジョーダン・ナンバーですね。「カレドニア」「チュー・チュー・チ・ブギ」に、自身の曲としても有名な「レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール」つまり「ボン・トン・ルーレ」を軽快にやってます。バンドのうねりがちょっと不足気味ですが、シェニエの嗜好の一端がはっきり伺えて面白かったです。



Clifton Chenier ; King Of Zydeco ; ACE CDCH 234 (2007. 8.21)

1985年にアーフリーからリリースされたアルバムをCD化したもののようです。クリフトンとクリーヴランドの兄弟が中心になって、オリジナルの他「ドリフティン・ブルース」や「トゥッティ・フルッティ」「ワッド・アイ・セイ」なんて曲もやってます。ホーンセクション入り。サックスにギターが結構モダンで、特にギターは結構弾けてます。誰なんだろう。また「ザディコ・ジャズ」、このメロディ、誰のパクリだろう。良く聴きます。とにかく彼の最晩年の録音ですが、元気なところを聴かせています。



Cluster Lee ; Sweet Home New Orleans ; SOUND OF NEW ORLEANS SONO 1070 (2010. 3. 1)

2009年リリースです。クラスター・リーはニューオーリンズのブルースマンで、いわゆるモダンスタイルの破綻のないブルースをやります。かと思うと「ワット・ア・ディファレンス・ア・ディ・メイクス」なんてジャズ・ナンバーやロギンズ&メッシーナの「ママはダンスを踊らない」、「ヴァレンタイン」「マエストロ」なんてソウル・ナンバーをやってますけど、どうなんでしょ。笑ってしまうのがタイトル曲やら「グッド・タイムズ・イズ・オールライト」などの替え歌をオリジナルとしちゃってるところ。さすがに「ショットガン・サリー」はサー・マック・ライスのクレジットにしてますけど、途中で「ショットガン」そのものになっちゃってるんでいいんですかねぇ。何とも節操のないB級ブルースマンて感じ。このレーベルはけっこう外れがあるのよね。




Clyde McPhatter & The Drifters ; Money Honey 1953-58 ; GREAT VOICES OF THE CENTURY GVC 2027 (2009.11.28)

ATLANTICに残されたドリフターズとクライド・マクファーターのシングル盤を集めた2枚組コンピです。まずは初期のクライドとドリフターズが一体となっていた時代がかっこよく、冒頭のタイトル曲を始め、季節ものの「ホワイト・クリスマス」など、クライドの伸びやかなテナーを見事なコーラスで支えています。リズムメイカーズとして、ルース・ブラウンと組んだ仕事も収録されています。後半別々に活動するようになっても、ドリフターズは「ルビー・ベイビー」などのヒットを出していたりしますが、やはり方向性がはっきりしなくなっていますね。ベン・E.キングの加入を待たねばならなかったようです。一方クライドの方はソロでも着実な活躍をしている様子がよく分かります。2枚目には伸びやかなバラード「トレジュア・オヴ・ラヴ」「ロング・ロンリー・ナイツ」といったNo.1ヒットが入っていますが、この他軽快なナンバーもこなしています。




Coco Montoya ; Dirty Deal ; ALLIGATOR ALCD 4913 (2006.12.15)

クレジットは2007年となってますが、もちろん2006年の盤です。ココはジョン・メイオールとの活動で知られていますが、このアルバムでは「ラスト・ダーティ・ディール」や「ハウ・ドゥー・ユー・スリープ・アット・ナイト?」のような、どこかロバート・クレイに通じる、ちょっと内省的なメロディを持った曲を中心に演奏しています。ストラトらしい音を上手く生かし、ちょっと線の細いその歌ともなかなかよくマッチしています。オーティス・ラッシュの「イット・テイクス・タイム」やアルバート・コリンズの「プット・ザ・シュー・オン・ジ・アザー・フット」では、彼のフェィヴァリットであったアルバート・コリンズのばりのギターが満喫できてこれも聴きもの。選曲もジョン・ムーニーからジョニー・コープランドと幅広く、スライドも披露するなどかなりの意欲作です。



2010. 8. 2 Coco Montoya ; I Want It All Back ; RUF 1153 (2010. 8. 2)

2010年リリース。冒頭の「ヘイ・セニョリータ」で、あれ、いつものモントーヤと違うなという感じを受けました。ロックっぽさが押さえられ、ラテンな香りたっぷりのピアノに絡みつくギターが的確で、とても心地良いんです。よく跳ねるリズム隊と、適度な隙間感のあるサウンドメイクが素晴らしく、いいプロデュースに当たったなと思ってみれば、なんとケブ・モでした。モントーヤの人柄を感じさせるオリジナル楽曲の数々は、ブルース色を押さえたもの。一方ゆったりしたアレンジの「ファニー・メイ」ではきちんとブルース魂を感じさせていますが、これに彩りを添えているのがロッド・ピアッツァのいぶし銀のハープです。この方向性、僕は好きです。




Colin Linden ; Casin' Back To Tennessee ; CROSSCUT CCD 11091 (2007. 4.26)

2006年リリース。この人はカナダをベースにしているようで、達者なフィンガーピッキングをバックに、ハイノートの哀愁を帯びたブルースを歌います。またブルース以外のフォーク調の曲もやっていますが、丁寧な歌い方で詩情を感じさせます。またタンパ・レッドの「ユー・キャント・ゲット・ザ・スタッフ・ノー・モア」やサン・ハウスの「ドライ・スペル・ブルース」では軽快なスライドを聴かせますがこの腕前もかなりのもの。全体的に端正でお行儀がいい感じですけど、憂いを帯びた声は癖になりますね。



Con Funk Shun ; The Collection ; SPECTRUM 544 617-2 (2002.11.25)

1979〜93年の曲を集めたベストです。最近ホイットバーンの「Top R&B Singles」なんてチャート本を買ってしまったんで、あまり聴いていなかったアーティストのベストをぼちぼち買ってきては聴いているんですが、いかにもディスコ直後の尻抜けファンクって感じです。軽い軽い。とっても上手いしポップなんですけど、毒気が全然ないのよね。これならEW&Fの方がずっと面白いかな?ちょっとがっかり。



Cookie McGee ; Right Place ; JSP JSPCD 2113 (2001. 2.20)

テキサスの若手?ブルース・レディの1998年録音作。ギブソンのSGをレフティに抱えるジャケットから、気のいい姉さんて感じですが、出てくる音も人の良さそうなローカル・サウンドです。タイトル曲はイントロから「おお!」と腰が持ち上がる傑作(自作)で、のびやかな歌、なじみやすいメロディ、ストレートなメロディと三拍子揃っています。ただ、他の曲、特に自作以外の曲ではリハーサル不足を感じました。ギタープレイは素直で好感が持てるんですが、歌が「借りてきた猫」のようだったり、いまひとつ相性の悪い音域(低めの声の音程がちょっと不安定)だったりして、もう少しこなれてるといいなって思いました。制作費の問題かな?むしろ生で見てみたいですね。



Cookin' The Blues ; Tribute To Albert King ; OLD SCHOOL PRODUCTIONS no number (2007. 4. 2)

2006年リリース。ジャッケス・サックスマン・ジョンソンのバンドにビル・クラークのハモンドB3を加えた分厚いサウンドに乗って、チック・ウィリスのギターが炸裂しています。彼のギターは一音一音が粒だっていて、バックのサウンドに埋もれることなく自己主張しています。特にタイトルにあるアルバート・キングの曲では、物真似ではない味のあるギターが楽しめます。他方4曲ほどではジャッケス・ジョンソン・ジュニアがギターを担当。チックに比べまろやかな音でインパクトは薄いですが、チックがもっぱらアルバート・キングの曲をやっているのに対し、よりバンドのブラスセクションを生かしたソウル・ジャズ的な曲をやっていて、どちらかというとこちらの方がバンド本来のサウンドじゃないかなと思いました。なかなか聴き所の多い好盤です。



Cool Riddim & Sista Teedy ; Pledge To My People ; NYNO 9610-2 (2007.12.11)

1998年リリース。ヴォーカルにトリシア・ブッテで、アラン・トゥーサンがプロデュースし、シー・セイント・スタジオにニューオーリンズの腕利きミュージシャン、例えばトロンボーンにクレイグ・クレイン、ベースにマット・ペリネなどを集めて作ったアルバムと聞いたらどんな音を想像するでしょうか?これが何とレゲエなんです。トリシアはジャズ畑で活躍するヴォーカリストですが、七色の声を使い分け、時にはまるでシンディ・ローパーかと思うような雰囲気まで出しています。オリジナルにボブ・マーレィの曲まで加え、カリブ海の向こう側に浮かぶ島から鳴り響く音を増幅して聞かせるような感じ。海を渡った分隈雑さは抑えられ、むしろラテン・フレィヴァーが増しているのが面白いところです。やっぱりトゥーサンて侮れません。



Coolbone Swing Troupe ; Bone Swing ; LOUISIANA RED HOT LRHR 1122 (2001. 4.14)

ニューオーリンズのブラスバンドの1999年録音。このバンド、いわゆるセカンドラインのバンドというよりは、ジャズ・バンドといった方がいいかな?スタンダードのジャズやブルースをやってるんですが、ドラム・チューバのリズム隊を除くと全然タイトじゃないんです。アンサンブルもきっちりしてないし、ヴォーカルも心もとない。でも良い感じなんですよね。ここのソロはジャズの素養がたっぷり感じられるけど、ルーズな分頭でっかちでないし、かといってごり押しでもないから楽に聴けました。こんなのストリートでやってたら立ち止まって聴き惚れちゃうかも。



Coolbone Brass Band ; Mardi Gras In New Orleans ; SONO 1057 (2002.12.28)

2002年リリースの新譜です。スティーヴン・クールボーン・ジョンソン率いるブラスバンドで、ストリート感覚たっぷりです。タイトル曲や「ダウン・バイ・ザ・リヴァーサイド」などのニューオーリンズ・クラシックをラフでタフに演奏しているのを聴くと、彼らの後について踊りながら歩いて行きたい気分になります。ワイワイガヤガヤした雰囲気が街角で演奏しているようで、実にライヴ!セカンドラインした「キャラバン」もクールさと熱さが同居したような演奏で、楽しめます。タイトなアンサンブルを求める向きにはちょっとといった面もありますが、ライヴ感覚の素晴らしさがたまりません。



Corey Arceneaux & The Zydeco Hot Peppers ; 20/20 ; HPEPPER 1002 (2008. 8.25)

2008年リリース。鍵盤アコから繰り出されるザディコは、かなり明るくポップな印象です。1975年生まれと油の乗りきった時期と言えますが、僕が聴いたのはこれが最初。どうやらもう1枚はアルバムが出ているようですね。分かり易いトゥーステップが中心で、新しいザディコを担おうとか、改革をしようとかいうタイプではなく、目の前の人たちを踊らせたいと考えているように思います。それでも合いの手などに新世代ザディコの影響を感じるわけで、それだけクリスなどの試みが拡がってきたってことかもしれません。




Corey Arceneaux & The Zydeco Hot Peppers ; Nu Band Nu Sound ; HPEPPERS 1003 (2009. 7. 1)

書いてありませんがおそらく2009年リリースでしょう。前作と同様の明るいサウンドが持ち味のトゥーステップ中心のザディコで、「レッツ・ゲット・イット・オン」のようなソウル・ナンバーをやっていますが、基本はオーソドックスなザディコです。10年くらい前のクリスの音をもうちょっと柔らかくした感じに近いでしょうか。歌も軽めの声で、ボタンアコとよく合っています。ただ、それ以上の個性を感じないのが残念です。いいプロデューサがついたら化ける可能性もありそうなんですけどね。




Corey Harris & Henry Butler ; Vu-Du Manz ; ALLIGATOR ALCD 4872

2000年リリース。パークタワーの会場で購入。コリー・ハリスは初めて聴きますが、リゾネイタでボトルネックを駆使する、「カントリーブルース」タイプの多分若手ミュージシャンです。ケブ・モとかと近い肌合いを感じました。泥臭さを感じないんですよね。一方ヘンリー・バトラーは盲目のニューオーリンズ・ピアニストですが、スタイルの幅が広く、こちらも都会的なため、けっこう上手くマッチしていると思いました。何ていうのかな、既成のブルースのイメージを捨てて、新しいルーツ的な音楽として聴くとなかなかいけます。でも、僕の好みではありませんでした。きれいすぎます。



Corey Harris ; Downhome Sophisticate ; ROUNDER 11661-3194-2
(2002. 5.26)

2002年リリースのバリバリの新譜です。コリー・ハリスはシャープなアコースティック・ギターを弾く若手カントリー・ブルースマンかなと思っていましたが、いやはやとんでもなかったです。ファズ・トーンとも言うべきギターサウンドは出てくるは、クールなラップは決めるは、アフリカ的なサウンドを交えるはと、まさにニューエイジ。どことなくオル・ダラに通じるかなて思ってライナーを読んでみたら、その当人も参加してます。でもオル・ダラよりざらついた野性的な部分や、よりストリートに近い肌触りを感じました。スライドも巧みだし、ふだんあんまり聴かないタイプの音楽ですが、ちょっと癖になるかも。



Corey Harris ; Misssissippi To Mali ; ROUNDER 11661 3198-2 (2003.12.26)

2003年の新譜です。これはもうまさにタイトル通りですね。ミシシッピのデルタ・スタイルやさらにもっとプリミティヴなスタイルのブルースに、ファイフ&ドラム・バンドを絡めたりしているんですが、そこに西アフリカのマリのアリ・ファルカ・トゥーレが入ってきても全然違和感がないんです。そしてブルースの持つ原初的なエネルギーを見事に再生していきます。ベースはウルフの「44ブルース」に新しい息吹が吹き込まれ、「キャットフィッシュ・ブルース」はその背後にジョン・リー・フッカーを感じさせるような強烈なテイクとなっています。これは面白いですよ。



Corey Harris ; Daily Bread ; ROUNDER 11661-3219-2 (2005. 7.22)

2005年リリース。先日ブルースのイヴェントに呼ばれて来日していましたが、コリーの生み出すサウンドは決して従来のブルースの枠組みには収まらず、ルーツを意識しながらどんどん幅を広げているように思います。タイトル曲からしてアフリカや地中海の香りがしますし、なんとそこには沖縄に通じる感覚も。この他レゲエ、ラテン、フォーク、ボサノヴァ、ジャズなど、それこそありとあらゆる要素を詰め込みながら、でも決して先祖帰りするのではなく、新しい音楽を生み出そうとする姿勢を強く感じます。ゲストに入っているオル・ダラはもちろん、ベン・ハーパーなどの目指す方向に近いものがあるのかな。でもその向こう側には「Desire」の頃のボブ・ディランが見え隠れするのは気のせいでしょうか。



Corey Harris ; Zion Crossroads ; TELARC CD-83656 (2007. 9.30)

2007年リリース。西アフリカの音楽を探求していたと思ったら、コリーは今度はジャマイカに行ったようです。録音はヴァージニアとニューヨークで行われていますが、サウンドは完全にレゲエ。でもサックスの入り方とかはちょっとスカ風で、サウンドの向こうにしっかりアフリカが見えているのがいいですね。こういう辿り方ってコリーらしいですね。あいにくレゲエはあんまり聴かないんですが、これは僕には馴染めました。



Corey Harris ; Blu.Black ; TELARC TEL-31795-02 (2009.12.22)

2009年リリース。ブルースからアフリカ、レゲエと渡り歩いてきたコリーの新譜は、ぐっと内省的な雰囲気になってきました。冒頭の「ブラック」、美しいアコースティック・ギターの音色を生かした「マイ・ソング」と押さえた演奏の後は、ヒップホップ風ありレゲエありと多彩さを増しています。アコースティック弾き語りのレゲエと言っていい「コロンブス」あたり何を歌ってるんでしょうか。歌い方からはアフリカ的なものを強く感じますね。後半はレゲエが続きますが、ラストにどブルースを持ってくるあたりが、自分の根っこを忘れまいとする姿勢なんでしょうか。だんだん出口が見えてきたように思えるアルバムでした。




Corey Ledet & His Zydeco Band ; 3 Years 2 Late ; COREY LEDET no number (2004.10.17)

2003年リリース。本人が手売りしているものを買ってきてもらいました。コリー・リル・ポップ・レデットのアコーディオンの腕前は相当なもので、特にブギやブルースでの細かいフレーズは切れもよく、そのリズム感の良さもあって、かなりインパクトがあります。どちらかというと泥臭さのあるサウンドで、クリス・アルドワンなどに通じる曲もありますが、方向性はかなり違うように思いました。レオン・サムの曲を2曲やっていますが、1曲はサックスソロを利かせた少し古いソウルのダンスチューンの雰囲気ですし、ラストにクルセイダーズの「ウェイ・バック・ホーム」を持って来ていても、洗練した感じより、好きな曲をやってますという感じ。全体に明るさがあり、「ディギ・リギ・ロー」(カントリーの曲とは同名異曲のオリジナル)ではフィドルも絡めて気持ちのいいダンスナンバーとなってます。軽快なブーズー・シェイヴィスの「ドゥ・イット・オール・ナイト」、リトル・ウォルターの「マイ・ベイブ」など、カヴァーの解釈も面白いです。決して伝統回帰の音じゃないんですが、ザディコ・サークルから無理に飛び出そうとせず、その中で好きな音を取り入れてやってる印象ですね。面白いです。



Corey Ledet ; A Matter Of Time ; COREY LEDET no number (2009. 8.23)

2009年リリース。芸名の「リル・ポップ」が取れても、コリーのザディコは全開です。切れのいいボタンアコーディオンのプレイにはますます磨きがかかり、トゥーステップとワルツをバランス良く配置した選曲で、思わず腰が動いちゃいます。面白かったのはプレスリー晩年のヒット「バーニング・ラヴ」をほぼそのままザディコ化しているもので、切れの良さが際立っています。この他ジョンとジノのデラフォース親子の曲を両方取り上げたりと、ザディコの伝統に根差した作品が多く、楽しめました。




Corey And The Zydeco Teens ; Corey And The Zydeco Teens ; J&S JS-6108 (2002. 9.16)

2002年リリース。この間クリス・アルドワンを聴いてぐいっと引き込まれたんですが、こちらはタイトル通りまだ10代のメンバーによるザディコアルバム。しかも曲はすべてアコーディオンとおそらくヴォーカルのコリー・ヤングのオリジナルです。曲のタイプはボー・ジョックやクリスのような、どちらかというとダンサブルにワンコードで押しまくる感じですが、リズムはタイトでやっぱり新世代を感じました。特にドラムのキックの入り方は斬新で、緊張感を伴います。まだまだ熟成は不足しているとは思いますが、将来性は感じました。むしろ新しい感性に期待大です。



Cousin Joe ; Vol.1 1945-1946 ; BLUE MOON BMCD 6001

BLUE MOON 6000番代の1枚目で、3枚のシリーズです。因みに全部揃えるとNIGHT TRAINの3枚組の箱と一部曲順が違うだけで同内容。すべてニューヨーク録音で、この頃のカズン・ジョーはヴォーカルに専念していて、サミー・プライスのピアノをバックにした弾き語りでは、いわゆるシティ・ブルース的なアプローチで、ちょっとおとなしすぎに感じました。しかしその後はバンドをバックにしていて、「マイ・ラヴ・カム・タンブリン・ダウン」あたりから溌剌とした感じが出てきます。1946年のSAVOY録音からは、ざらついた声をいっぱいに張り上げた力強いヴォーカルが炸裂、続くGOTHUM録音になると、アール・ボスティックの強力なアルトサックスとのコントラストも見事で、脂の乗り切った歌を聴かせます。これがこのあとどう枯れていくのか楽しみですね。



Craig Klein ; New Orleans Trombonisms ; RUGALATOR RR0401
(2005. 1.20)

2004年リリース。ちょっと聴いた感じは割合オーソドックスなジャズとセカンドライン風味たっぷりの曲が混じり合ったアルバムなんですが、参加ミュージシャンが豪勢です。トランペットにリロイ・ジョーンズと、なんとディヴ・バーソロミュー、さらに「マリー・ラヴー」ではジョン・ブッテが語るような、「ミニー・ザ・ムーチャー」を思わせるようなヴォーカルを入れてたりしますし、「ライト・ザ・ウェイ」ではコンガの"チーフ"スマイリー・リックが一瞬チャントを入れたりします。クレイグのトロンボーンは丸みのある音ですが、フレーズに粘りがあり、「サマータイム」のような「ディア・オールド・サウスランド」では肺いっぱいに吸い込んだ空気を、思いを込めてマウスピースに吹き込みながら、ネチっとしたフレーズを吹き上げています。あちこちに隠し味のある、非常に面白いアルバムです。



Crazy Ken Band ; Crazy Ken Band Best - Oldies But Goodies ; SUBSTANCE BSCL-30024 (2006. 2. 9)

2004年に出されたベスト盤です。この人達は全く聴いたことがなかったんですよ。もっとロケンロールしてるのかと思ったら、ボサノヴァとかジャズとかを下敷きにしたような、かなり洒落たサウンドで、バンドのテクニックは確かです。しかし、しかしですよ!そこに乗ってくるケンさんの歌詞の下世話はなんでしょ!最高ですね。湘南あたりの正しい不良をやって来た人達の、雰囲気が手に取るように分かる、キザでカッコつけで、でもちょっと垢抜けないどことなく愛すべきキャラクターが、そのまんま大人になっちゃいましたって感じ。たまりません。車と女を愛する万年不良少年の音楽は、やっぱり格好いいです。



The Creole Zydeco Farmers ; ...On The Road ; MAISON DE SOUL MDS-1072 (2006. 9.21)

1999年リリース。ワーレン・プレジーンとモーリス・フランシスという二人のフロントマンを擁したこのバンドは、ザディコというスタイルにアメリカ音楽をポンポン放り込んで料理している様子です。どこかほのぼのした「ユー・ドント・ミス・ユア・ウォーター」やスワンプ・ポップ丸出しの「ティー・ナ・ナ」などいわゆるトゥーステップとは雰囲気が異なり、この他シャッフルありルンバありで楽しい演奏です。このローカルな感じ、好きだなぁ。地元のフェスティヴァルあたりでは、「みんなの知ってる曲だよ」とか言いながら、お客さんをどんどん踊らせてるんじゃないでしょうか。とにかく楽しみましょうというメンバーの気持ちが伝わってくるアルバムです。



Creole Zydeco Farmers ; Zydeco Y2K ; J&S 6100 (2002.12.27)

タイトル通り2000年リリース。ラフィエのバンドですが、コテコテのザディコの香りの背後に、どこかサザンソウルのテイストが感じられます。「ジーズ・アームズ・オヴ・マイン」なんてモロな曲もありますが、その他もドラミングやベースの音処理にソウルよりのアプローチを感じました。トラディッショナルな「スタガー・リー」の軽快なアレンジなど、全体に気持ち良く跳ねる感じがあり、取っ付きやすいサウンドです。



Creole Zydeco Farmers ; My Big Foot Woman ; SOUND OF NEW ORLEANS SONO 1068 (2005. 7.21)

2005年リリース。鍵盤アコのモーリス・フランシスとボタンアコのウォーレン・プレジャンというふたりのフロントをもつこのバンドは、どことなくほんわかした感じのザディコを奏でます。伝統的なトゥーステップの他、タイトル曲や「C.C.ライダー」といったブルース色の強い曲もレパートリーにしていて、曲によって歌い分け、弾き分けるふたりのコントラストがなかなか面白いです。「ウッドペッカー・ソング」のキツツキを思わせるスタッカートの効いた演奏がユーモラス。またプレスリーのヴァージョンを下敷きにした「ハウンドドッグ」、2テイク入っていますがいずれもノリのよい演奏で、これでみんなを踊らせるんでしょうね。



Crown Prince Waterford ; 1946-1950 ; CLASSICS 5024 (2002. 2.27)

主にウエストコーストで活躍したシャウター、クラウン・プリンスの成長記のようなアルバムです。初期のシカゴ録音ではかしこまっていていまひとつ魅力が出ていないんですが、ウエストコーストに行ってから、小さめのコンボをバックに歌い出すとどんどん面白くなります。彼の歌はややライトタッチで、初期はお行儀の良い歌い方ですが、だんだん譜面の範囲を飛び越した独特の歌い回しになっていきます。特に合いの手を入れ、リズムを強調しだした1950年の録音は、さしずめ「ロックン・ロール」の萌芽期の一翼を狙っていたんじゃないかとも思えます。



The Crusaders ; Scratch ; MCA MCAD-37072(2005. 4.13)

1974年リリースのライヴ盤です。ギターにラリー・カールトンを迎えていた時期です。実はこのバンド、以前はフュージョンということで敬遠していたんですが、FMで「ウェイ・バック・ホーム」を聴き、そのファンキーな感じで魅力を感じて聴き直そうと思っていたんです。タイトル曲などまさにそうしたタイプの曲で、ゆったりした大きなうねりのリズムがテキサスならではのものを感じさせます。ビートルズの「エリナー・リグビー」、や「ハード・タイムズ」は大きな乗り、一方キャロル・キングの「ソー・ファー・アウェイ」は倍テンポのリズムですがシンコペーションを生かしたアレンジが格好いいです。そして「ウェイ・バック・ホーム」、メンバー紹介からなだれ込んでいくんですが、郷愁を感じますね。気に入りました。



The Crusaders ; Those Southern Knights ; MCA VICTOR MVCM-20030 (2005. 4.15)

1976年リリース。若い頃飲み屋で良くかかっていたアルバムで、「スパイラル」などの軽さがどうも苦手だったんですが、その原因は実はラリー・カールトンのギターにあったのかもしれません。どうもこの手のフュージョンは苦手なんですよ。音楽的には秀逸なアレンジと高い演奏技術で、よくこなれていているとは思うんですが。でも改めて聴き直すと、「キープ・ザット・セイム・オールド・フィーリング」や「マイ・ママ・トールド・ミー・ソー」「フィーリング・ファンキー」には結構ファンクネスを感じ、洒落たフュージョン的コードワークやリフとの微妙なバランスが面白いと言えます。やっぱり自分の耳が変わってきたのかな。心から受け入れられる音楽じゃないけど、面白さは感じるようになりました。



Cubanismo ; Mardi Gras Mambo ; HANNIBAL HNCD 1441 (2008. 7.28)

2000年リリース。カリブ海を挟んで位置するキューバのラテン・サウンドとニューオーリンズ・ミュージックを融合させるプロジェクトで、ヴォーカルにジョン・ブッテをフューチュア、クライグ・クレインやティム・グリーンなども参加しています。ラテン・テイスト溢れる「マザー・イン・ロウ」のはまり具合が見事ですし、タイトル曲に至っては元々こういう演奏の曲だったんじゃないかと思われるくらいの出来で、最高に楽しいです。「モンテオーリンズ」という短い挿入曲は、両方の土地の共通項であるアフリカのリズムが意識され、両者の近さを表していますし、「アレマニーズ・ブーガルー」はサルサとセカンドラインの融合、「キューボーリンズ」はクレイグのチューバが効いていて、まるでブラスバンドによるキューバン・ミュージックといった趣。見事なコラボです。




Cum'Cum' ; Cum'Cum' ; POLYSTAR PSCR-5922 (2001. 1.20)

活動を休止した憂歌団の「天使のだみ声」木村充揮が結成した新バンドのデビュー作。2000年リリース。ドラムに正木五郎を迎え、ストレートなロック・アルバムとなりました。気持ちよくドライヴするミディアムのロックと、ゆったりしたバラード、秩父のライヴハウスや田んぼの畔道に軽トラックや働く男を唄い込む歌詞。木村充揮がやりたかった音楽をまっすぐやっていて好感がもてます。ドラムがすごく前に出ているのが、憂歌団時代との大きな違いでしょうか。生で見てみたいです。



Curley Taylor & Zydeco Trouble ; Country Boy ; LOUISIANA SOUL no number (2003.11. 2)

2003年リリース。カーリーはジノ・デラフォースのところのドラムですが、ここでは自らピアノ・アコーディオンを操って歌っています。全体にアレンジがクールで、特にリズム処理が気持ち良く、すいすい引き込まれます。タイトル曲なんていい意味でポップで素敵。そんなに強力ではないけれどもソウルを感じる歌と、適度に優しげなアコの音を、かなりパワフルなリズム隊がしっかりサポートしていて、かっこいいな。レゲエからの影響も感じますが、きっちり消化されていて、可能性を感じるサウンドになっています。これは大当たりの1枚。



Curley Taylor & Zydeco Trouble ; Free Your Mind / Close To Midnight ; CURLEY TAYLOR no number (2006. 3. 9)

2006年リリース。前作で素晴らしいザディコの未来を見せたカーリーが、それを完全に形にしてきました。クリス・アルドワンがザディコの側から変革を目指すようなアプローチで、それはそれで格好いいんですが、カーリーの場合はより直接的に今のR&Bとザディコを融合させようとしているように思いました。そしてその答えをここではっきり出してきましたね。J.ポール・ジュニアほどすれた感じはなく、ほわっとした鍵盤アコに乗せて適度にポップなメロディで歌いますが、その後にはリズムにしろサウンドにしろ、しっかりとザディコの香りを感じさせます。2枚組のもう1枚は、アコーディオン抜きのR&Bだけが収められており、これはこれで僕は好きなんですが、カーリーがやりたいことをやった以上のものは感じませんでした。やっぱりアコのサウンドと「今」の音楽の融合が面白いし、実際カーリーの目指すところなんじゃないでしょうか?この都会的なシャープさもあるけれど、どこかほんわりした手触り、魅力的だなぁ。快作です。



Curley Taylor & Zydeco Trouble ; Nothin Feels Like This ; LOUISIANA SOUL no number (2007. 6.30)

2007年リリース。快調なペースでアルバムを発表するカーリーの新譜は、オハイオ・プレイヤーズの向こうを張ったような火事ソングでスタート。ファンクネスの溢れる新世代ザディコなんですが、カーリーの場合は歌が上手く、その分余裕を持ってやっている気がします。サウンド作りはますますモダンになり、選曲もソウルフルになりながら、どこかさらっと聴けるのはこの辺が理由ではないかしら。JBヘのトリビュートと思われる「ア・マンズ・ワールド」はリミックスまで入れてますが、完璧にザディコ化してるのがすごいなぁ。またさらっと「ハレルヤ・アイ・ラヴ・ハー・ソー」なんて曲ができるのも歌に自信があるからでしょうね。でも僕のお気に入りは「ナッシン・フィールズ・ライク・ディス」や「オー・ヤエ・ヤエ・アイム・ソー・タイアード」といったポップなセンスの光るザディコナンバーです。この路線で全国スターになって欲しいなぁ。



Curley Taylor & Zydeco Trouble ; Zydeco Heart And Soul ; LOUISIANA SOUL no number (2009. 8.26)

2009年リリース。もともと歌の上手い人で、また曲作りも達者ですが、アコーディオンの腕前もどんどん上がって来ている気がします。特にボタンアコを使ったのは初めて聴く気がします。落ち着いたアーランビーの要素の強い、しかもキャッチーでポップな曲はカーリーの独壇場で、ヒップホップに引っ張られない分聴きやすいサウンドになっています。タイトなバンド、ザディコには珍しいきちんとしたスタジオワークなど、毎回完成度の高い作品を出すカーリー、今から次作を期待しちゃいます。




Curtis Mayfield ; Live ; CURTOM CUR 9506 Click Here!

Curtis Mayfield ; Superfly +11 ; CURTOM/VICTOR VICP-11681 (2009. 7.17)

1972年リリース。言うまでもなくブラック・ムーヴィーの代表作につけられたサントラ盤で、別テイクなどを加えたエディションになっています。カーティスが最も油の乗っている時代で、映画のストーリーに合わせた歌詞を、クールなファンク・サウンドに乗せて、あのかすれるような、何とも味わい深いファルセットで歌っていきます。サントラで歌ものが使われるというのは当時としてはあまり例がなかったんじゃないでしょうか。でもそれが厭味にならないのは、カーティスの歌声が変な自己主張をしていないからだと思います。歌詞は十分意味を持っていても、劇中では邪魔をしないだろうなと想像できます。映画を見ていないので是非見たいですね。そしてこのアルバム全体が、アンチコカインで貫かれています。これはカーティスのテーマでもあり、映画のコカイン・ディーラーの立場で詞を書きながら、決して美化していないのが伝わってきます。別テイクは劇中で実際に使われたものやデモなど。そしてタイトル曲は何度聴いても格好いい!




Curtis Mayfield ; There's No Place Like America Today ; CURTOM/VICTOR VICP-60383 (2007.10.19)

1975年、アメリカがウォーターゲート事件とベトナム撤退でボロボロになった頃の作品です。音楽的にはディスコ前夜、でも同じファルセットでもビージーズのそれとは違い、ゴージャスなラヴソング「ソー・イン・ラヴ」を除けば甘さは微塵もありません。そぎ落とされた演奏をバックに、心の奥底から絞り出すような声で、自分の街の現実をシリアスに歌っています。ライヴの「ストーン・ジャンキー」を思い出しました。ゴスペル・タッチの「ジーザス」も、「ピープル・ゲット・レディ」のような高揚感はなく、ジャケット同様同胞の厳しい現実を見据えています。でもその歌からは、負け犬の遠吠え的なものは感じられません。じっと身構え、パワーをため込もうとしているかのようです。



The Curtis Sumter Project ; Trials And Tribukations ; NO COVER NCP-016 (2003. 1.30)

2001年にリリース。カーティス・サムターのディープなヴォーカルとドラムに、キャシー・ディヴィスのヴォーカルを加えたデトロイトのファンク・ブルース・ユニットは、印象としてはカール・ウェザーズビーのソロ作に近い線を狙った雰囲気です。ジョッシュ・フォードがダビングを含むギターを担当していますが、シャープなカッティングとブルージーだけどプレイシーなソロが、うまくバンドの音を引き締めています。ホーンやキーボードをゲストに加え、厚みを増したのもいい感じ。でもリズムはちょっと軽めで、もっとうねりが欲しいかな。バラードなどではしっかりした歌を聴かせていますし、もう少しプロデュースをしっかりしたらぐっといい音を出すバンドだと思いました。



Cyndi Lauper ; Memphis Blues ; MERCER STREET DWT70166 (2010. 8.23)

2010年リリース。シンディのブルース・アルバムっていうので聴いてみました。彼女は歌に対して真摯な姿勢で向かっている印象があったので、どうかなと思いましたが、フルソンの「シャッタード・ドリームズ」の思ったより素直な解釈を聴いて、期待通りだなと思いました。ゲストにチャーリー・マッセルホワイト、アラン・トゥーサン、B.B.キングが参加。特にB.B.とやるルイ・ジョーダンの「アーリー・イン・ザ・モーニン」の力の抜け方がすごく心地良かったです。一方「ローリン・アンド・タンブリン」ではアン・ピーブルズと共演してますが、この場面にアンが出てくるとその真っ黒具合が余計目立ちますね。ジョニー・ラングが2曲弾いてますが、「クロスロード」はいまいちでした。




Cyril Neville ; Soulo ; E.S. 1706 (2002. 7.16)

1998年リリースです。シリルはネヴィルズきっての社会派ですが、このアルバムでもそうした側面が前面に出ています。例えば「キャント・ストップ・ア・ドリーマー」はタイトル通りルーサー・キングの演説「アイ・ハヴ・ア・ドリーム」をコラージュしているし、「ノー・ジャスティス、ノー・ピース」なんて、タイトルから一瞬ボブ・マーリーを思い出しました。演奏はモダンなフォンクでヒップホップの手法を取り入れているあたりもネヴィルズの「若手」らしいです。しかしシリルの歌の上手さは本当にすごいと思います。ラストの「ビー・マイ・レィディ」、染み入りました。



Cyril Neville ; New Orleans Cookin' ; TIPITINA'S ENSP 1707/P-VINE PCD-24037 (2000.11.18)

2000年リリースの新譜です。もともとは自主制作のようですが、これはいいです。タイトル通りニューオーリンズ・クラシックをシリル料理長が自在に味付けしています。「ティピティーナ」でのフェスの物まねは、さすが尊敬する師匠に対する敬愛がにじみ出ていますし、ライヴ・ヴァージョンの「フォーチューン・テラー」は重厚なバラードに見事に変身しています。久々に正統セカンドラインともいえる、気持ちのいい跳ねかたをするバックで、奔放に唄うシリル、やってる方が楽しんでいるのが聴き手にビンビン伝わってきます。僕のことしの10本指に入ります。



Cyril Neville ; Brand New Blues ; M.C. MC0064 (2009. 5. 9)

2009年リリース。いやいや、驚きました!シリルがブルース・アルバムを出すなんて。もちろんニューオーリンズ・テイストやファンクネスはたっぷり感じるんですが、でもこれはまごうことのないブルースです。特に「ミーン・ボス・ブルース」はかなり重厚な出来映え。かっこいいギターだなと思ったらタブ・ベノアで、ハーモニカはジョニー・サンソンでした。その他のバックトラックはプロデューサーのブライアン・Jが担当していますが、ちょっと無機的なところもありますが上手くサウンドをまとめています。そしてシリルの歌がいつもよりくぐもりのあるディープな感じ。彼の別の魅力を見せてくれたかな。




Cyril Neville ; The Essential Cyril Neville 1994-2007 ; M.C. MC-0065 (2010. 2.12)

ソロ作のベストです。ずっと追っかけてきた人なんでほぼすべての音を聴いてますけど、例えば軽快なパーカッションから始まる「フォクシー・レディ」などは斬新です。「アイティ」のポップな感覚、ブラスを生かした楽しい「ニューオーリンズ・クッキン」といった陽性な面があるかと思うと、訴えかけるような「フォーチューン・テラー」、超弩級のファンクネス溢れたラップの「プロジェクト」、そしてブラック・インディアン・チャントの流れを汲む「インディアンズ・ゴット・ザット・ファイア」など、多彩な才能を上手く捉えています。何より歌が上手いのが魅力ですね。シリル入門にうってつけです。




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